日本カトリック正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」 ホアン・マシア部会長の談話 日本弁護士連合会の「死刑廃止宣言」を歓迎します 日本弁護士連合会(日弁連)は 2016 年 10 月 7 日、福井市で開催した第 59 回人権擁護 大会において「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択しました。 わたしたち日本カトリック正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」は、日弁連のこ の「死刑廃止宣言」を喜びをもって受け止めました。 わたしたちは、現代カトリック教会の基本的な立場に立ち、これまで次のような点を強 調しながら死刑廃止を訴えてきました。 (a) あらゆるいのちの尊厳を擁護します。 (b) 悪に対して悪で応じるのではなく、一切の暴力の連鎖を断ち切ることを望みます。 (c) 犯罪者が罪を認め、回心して更生し、ゆるしと和解への道を歩める機会が与えら れることを願います。 (d) 復讐によってではなく、ゆるし合いと修復の正義によって、犯罪の償いおよび加 害者と被害者双方の癒しが実現するよう祈り求めます。 また、わたしたちはこれらの主張を他の諸宗教とも共有し、死刑廃止を求める多くの宗 教者・信仰者と連帯しながら訴え続けてきました。 それと同時に、わたしたちは宗教的な動機付けによってだけではなく、人類共通の倫理 および人権擁護の立場から、死刑廃止と刑罰制度の改善を訴え続けてきました。そのため、 基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする日弁連が、このたび「2020 年までに死刑 制度の廃止を目指すべき」と明確に宣言したことを心から歓迎します。 なお、日弁連の宣言の中で、わたしたちは次の点を特に評価しています。 (A) 悲惨な犯罪被害者・遺族の支援は、社会全体の責務であると述べたこと。 (B) 犯罪者となってしまった人であっても、適切な働き掛けと本人の気付きにより、 罪を悔い、変わり得る存在であると、刑事弁護の実践において、日々痛感してい ること。刑罰制度は、罪を犯した人を人間として尊重することを基本とし、その 人間性の回復と、自由な社会への社会復帰と社会的包摂(ソーシャル・インクル ージョン)の達成に資するものでなければならず、このような考え方は、再犯の 防止に役立ち、社会全体の安全に資するものであると理解していること。 (C) 相次ぐ冤罪(えんざい)事件の発覚が強調されていること。1980 年代には 4 つ の死刑確定事件において再審無罪が確定し、2014 年 3 月には袴田事件の再審開 始決定がなされたことから、現在の刑事司法制度では冤罪の危険性が重大である と危惧し、冤罪で死刑が執行されてしまえば、二度と取り返しがつかないと懸念 していること。 わたしたちは、日弁連によるこの宣言をきっかけに、教会内においても、犯罪の予防方 法や犯罪の償い方、被害者と加害者双方が癒される道などについての話し合いが行われる ようになることを期待します。犯罪に対してわたしたちが、市民としても信仰者としても、 いったいどのように向き合ったらよいのか考え続け、それによって死刑廃止および刑罰制 度の改善に向かって歩み続けることができるよう願っています。 2016 年 11 月 6 日 「いつくしみの特別聖年」の「受刑者の聖年」にあたって 犯罪の被害者および受刑者を偲ぶミサにて ホアン・マシア SJ
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