日本カトリック正義と平和協議会 Japan Catholic Council for Justice

 日本カトリック正義と平和協議会
Japan Catholic Council for Justice and Peace
内閣総理大臣 安倍 晋三 様 法務大臣 金田 勝年 様 Prot. JP-d 16-05
2016 年11 月11 日
日本カトリック正義と平和協議会 死刑廃止を求める部会 部会長 ホアン・マシア神父 2016年11月11日の死刑執行に対する抗議声明 私たち日本カトリック正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」は、世界人権宣言と日本国憲法
を尊重する者として、またイエスの愛の教え(福音)を信じ、すべての「命の尊厳」を守るキリスト
者として、2016年11月11日に、福岡拘置所の田尻賢一さん(45歳)に死刑が執行され、その尊い命が
国家の手によって奪われたことに対して強く抗議します。 今回の執行によって、安倍晋三政権下では第一次内閣で10名、第二・三次で17名、あわせて27名の
大量の人命が処刑されたことになります。特に今回は、本年8月に就任した金田勝年法務大臣による
初の執行です。就任からわずか3か月しか経っていない中で、田尻賢一さんの記録が疑いの余地のな
いほどに精査されたとは思えず、金田法相の言うような「慎重な検討を加えたうえでの執行」であっ
たかどうかは極めて疑問です。 実際に田尻賢一さんの死刑判決を巡っては、自首をどう評価するか、一般の人が多数決によって被
告人の命を奪うかどうかを判断する「裁判員制度」、上告を取り下げることによって不十分な審理の
まま死刑判決が確定してしまう裁判制度の不備など、様々な問題点が存在しています。いずれにせ
よ、自らの罪を認め悔いる人間を死刑に処したところで事件の本質的解決にはつながらず、むしろ国
家による新たな殺人を重ねることで、社会に対して残虐な暴力のメッセージを発することになりま
す。私たちは「正義」の名によって行われるこうした殺人を、断じて許すことはできません。 約1か月前の10月7日、日本弁護士連合会は福井市で開催した人権擁護大会において「死刑制度の廃
止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択しました。単に「2020年までに死刑制度の廃止を
目指すべき」と宣言しただけでなく、その前提として「刑罰制度は、犯罪への応報であることにとど
まらず、罪を犯した人を人間として尊重することを基本とし、その人間性の回復と、自由な社会への
社会復帰と社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)に資するものでなければならない」という
見解を示したことから、私たちはこの宣言を高く評価するとともに、その実現のために共に働く決意
を固めました。宣言によって死刑制度に対する国民の関心が高まりつつある矢先での執行は、いかな
る意見にも耳を貸すつもりはないという政府の不誠実な回答だと判断されても仕方ありません。 現在、世界中のカトリック教会は「いつくしみの特別聖年」を過ごしています。教皇フランシスコ
の呼びかけ(2016年2月21日)に呼応し、私たちも少なくともこの聖年期間中、日本での死刑執行が
停止されることを願っていました。まもなく聖年が閉じようとしている中で、この一年間に3度の執
行がなされ、5名の生きる権利――神から与えられた不可侵の権利――が国家によって侵されたこと
に深い悲しみを覚えつつ、人権を軽視し人命をいたずらに弄ぶその姿勢に強く抗議します。 135-8585 東京都江東区潮見 2-10-10
T: 03-5632-4444
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