容積率割増と容積率売買と借地権設定売買とバーター取引

2002年10月21日
第420号 株式会社バード財産コンサルタンツ
160-0023東京都新宿区西新宿7-15-8 ニッパンビル
電話 03-5389-0988 FAX 03-5389-0933 月額2100円
月8回 FAX発行 http://www.bird-net.co.jp/
容積率割増と容積率売買と借地権設定売買とバーター取引
三菱商事ビル別館は元々は三
菱地所さんが土地建物とも所有
していました。ビル名は「三菱商
事」でも三菱商事さんは賃借人
だったのです。(以下敬称略)
容積率の移転
この商事ビル別館は最近オー
プンして話題沸騰の三菱地所所
有の丸の内ビルと道路を挟んで
隣接地です。丸の内ビルの建替
えにあたり両ビル敷地を一体開
発するとして容積率割増を受け、
本来の容積率1000%が1300%に
なりました。そして商事ビル別
館敷地分に対して割増を受けた
割増容積率のほとんどを道路を
挟んだ丸の内ビルで使いました。
(日経新聞1998.4.13)
建築基準法等は「容積率移転」
の定めはしても、それに対する
対価の設定つまり「容積率売買」
には無関心な法律です。対価を
付すか否かは自由であり対価を
付せばそれが「容積率売買」です。
借地権付建物売買
商事ビル別館の借地権付ビル
建物売買(借地権設定+建物売
買)が行われていました。1998
年3月に三菱地所に土地を残し
たままから三菱商事へ513億円
で売却。(ビル経営1998.5.1号)
お互いの信頼関係からなのか
建物の所有権移転登記はしませ
ん。取り壊し予定建物ですから
登録免許税は払わないのです。
この別館敷地への割増容積率
300%分は一体いくらの価値が
あるのでしょうか。敷地1㎡の
容積率100%あたりを100万円と
みれば100億円を下りません。
商事ビル別館の権利者からす
ればこの割増容積率は降ってわ
いたような財産です。なおこの
ケースでこの財産を誰のものと
し、幾らと認識し、売買価格に
反映したのか否かは不明です。
底地の売買
さて借地権付ビル売買から4
年後の2002年に商事ビル別館の
底地が三菱地所から三菱商事に
208億円で売却されました(日経
不動産マーケット情報2002.10
月号)。税務での借地権割合は
90%の地域。借地権付ビルの対
価は513億円でしたが、底地が
208億円は高いのか安いのか?
容積率割増と容積率移転と借
地権付ビル建物売買と底地売買
のステップを踏み別館は三菱商
事の所有権ビルとなりました。
反対売買の実行
またこの底地売買と同時に逆
の売買も行われました。三菱重
工ビル他について三菱商事が所
有する区分所有権を三菱地所に
260億円で売却しました。
このビルは80%を三菱地所が
所有、残20%を三菱商事が所有
でした。この20%部分の売買に
よりこのビルは三菱地所の単独
所有となります。決済額は商事
ビル別館底地売買との差額だけ
となったのではないでしょうか。
様々な教訓が見えてきます。
(1)「容積率割増」。容積率割増
等を受けられるのか。
地域によっては努力次第で総
合設計等により「普通のマンシ
ョン用地」が「超高層マンション
用地」に大化けもするでしょう。
(2)「容積率移転」。その土地の
容積率だけで開発するのでなく
近隣敷地の容積率も使うこと。
駅舎の余剰容積率も売買され
る時代です。連担建築物設計制
度や特定容積率制度により近所
の既存建物の余剰容積率を移転
できる制度ができています。
(3)土地所有権(底地)を残し
たままでの借地権付建物の売買。
建物使用収益権が移転できます。
時期を見て底地売買も可能で
すし権利金 や地代設定により
様々な調整もが可能となります。
定期借地や定期借家の組み合
わせで無限の可能性が広がりま
す。借地権の設定や売買なら登
録免許税不動産取得税不要です。
(4)バーター取引。土地が欲し
いときに現金で買うのではなく
土地建物等を対価にできないか。
土地建物を対価にすれば、税
務上で「交換特例」「買換特例」
等の適用によって税負担を圧縮
することも可能になるでしょう。
特例適用でも決算書上におい
ては売却益計上して決算上のお
化粧をすることさえも可能です。
(5)グループ間の資産再構築。
しっかりしたプランで時間をか
けてじっくり進めることです。