「インド南部の工業団地概況」(REPORT2014 vol.155)

インド南部の 工業団地概況
本年6月、
インド南部の主要都市、
バンガロールとチェンナイ近郊の工業団地を視察した。
本稿ではこの現地視
察を基にインド南部の工業団地の概況を報告する。調査対象地とした2都市は、
いずれも東海地域の主要産業
である自動車産業のインドにおける集積地であり、今後も東海地域からの企業進出が続くと考えられる。
B.チェンナイ
タミル・ナドゥ州の州都であるチェンナイは、
かつてマドラス
(1)調査の概要
と呼ばれ、古くからの港町として栄えてきた。海に面している
今回の現地調査は図表1のとおり、主に日本企業の現地
ため高温多湿な気候である。
法人やインド現地企業の工場、現地政府の投資誘致機関
現在では、
東南アジアに面した良港を活かし、
世界中から
や日本貿易振興機構(JETRO)現地事務所などを対象に
製造業企業が集まっている。特に、韓国の現代や日産自
聞き取りや視察を行った。
また、民間工業団地では、
その開
動車、
ダイムラーなどの自動車工場があり、現地企業や外
発・運営を行っている企業に聞き取りを行った。
資系企業などの自動車部品メーカーの工場が集積して
いる。
また、
自動車産業だけでなく、電子機器産業の工場も
(2)調査地の概要(図表2、3)
多く、
サムスン電子やノキアなどの現地工場がある。
A.バンガロール
以下では今回訪問した工業団地を事例として報告し、
カルナータカ州の州都であるバンガロールは、高原にある
ためインドの中では比較的気温が高くなく、湿度も低いため
過ごしやすい。
また、気候は穏やかで暴風雨や洪水なども
最後にインド南部の工業団地の概況をまとめる。
図表2 バンガロールおよびチェンナイの概要
バンガロール
チェンナイ
カルナータカ州
タミル・ナドゥ州
(2011年)
962万人
(6,
110万人)
465万人
(7,
215万人)
インドの現地企業をはじめ、マイクロソフトやグーグルな
州内総生産 (2013年度)
(一人あたり州内純生産)
963億ドル
(1,
400ドル)
1,
412億ドル
(1,
862ドル)
どグローバル企業、
ソニーや東芝など日本企業がソフト
進出日本企業 (2013年10月)
160社
208社
ウェアの研究・開発拠点をおいている。
また、IT産業以
特徴
世界的なIT産業の集積地
インドの自動車産業の集積地の一つ
気候
高原なので涼しく、湿気も少ない
海岸部で高温多湿
少ない地域である。
州
IT産業が集積した街として有名なバンガロールには、
外にも、
トヨタ自動車の現地工場があり、
日本の自動車部
品メーカーの現地工場も集積している。
また、本田技研
工 業 がオートバイ工 場を設 置し、オートバイ関 連 部 品
人口
(州人口)
出所:インド国勢調査2011およびインド中央統計庁資料、在インド日本大使館資料より
共立総合研究所にて作成
図表3 インドの自動車産業集積地と主な自動車メーカー
メーカーの進出も増えている。
デリー
グルガーオン
図表1 調査概要
調査期間
日本企業
バンガロール
チェンナイ
2014年6月18−20日
2014年6月23−25日
製造業
(自動車関連)4社
非製造業
(サービス・金融)2社
調査対象
現地企業
工業団地
−
公営工業団地 4ヵ所
カルナータカ州産業友好局
投資誘致機関
(KUM)
JETRO
バンガロール事務所
出所:共立総合研究所にて作成
27
製造業
(自動車関連)2社
製造業
(金属加工関連)2社
公営工業団地 1ヵ所
民間工業団地 2ヵ所 タミル・ナドゥ州産業誘致・輸出促進局
(ガイダンス・ビューロー)
チェンナイ事務所
デリー・グルガオン周辺
◆マルチ
・スズキ・インディア
◆ホンダ
・カーズ・インディア
◆ BMWイ
ンディア
コルカタ
ムンバイ・プネ周辺
◆ゼネラル
・モーターズ・インディア
◆タタ
・モーターズ
◆メ
ルセデス・ベンツ・インディア
◆フ
ィアッ
ト・インディア・オート
モビールズ
◆フォルクス
・ワーゲン・インディア
◆シュ
コダ・オート・インディア
◆マヒ
ンドラ&マヒンドラ
ムンバイ
プネ
コルカタ周辺
◆ヒン
ドゥスタン・モーターズ
チェンナイ
バンガロール
バンガロール・チェンナイ周辺
◆
トヨタ・キルロスカ・モーター
◆ 現代モーター
・インディア
◆ダイムラー
・インディア
◆ルノー
・日産インド自動車製造会社
出所:インド自動車工業会(SIAM)
および各社ホームページより共立総合研究所にて作成
図表4 バンガロール近郊の工業団地
公営工業団地
バンガロール近郊の工業団地(図表4)
(1)
ビダディ工業団地
国道
28km、古都マイソールへ続く幹線道路である州道17号線
バンガロール中心部
沿いにある。車で中心部から1時間程度かかる。
カルナータカ
団地である。
ジア諸国の工業団地のようにゲートがあるわけではなく、工
線
号
17
道
州
工業団地の入口には、小さな看板があるだけで、東南ア
カルナータカ州
業団地への出入りは管理されていない。
また、幹線道路か
ていないため土や泥のままである。
ナルサプル工業団地
ビダディ工業団地
州工業団地開発局(KIADB)
が開発、運営する公営工業
ら工業団地へ続く道は舗装されているが、路肩は整備され
線
4号
バンガロール郊外の南西部に位置し、中心部から約
タミル・ナドゥ州
出所:JETRO資料より共立総合研究所にて作成
工業団地内の道路は、団地の中央に位置する道路は中
ディーゼル発電機を4台とインド製の2,000kVAの発電機
央分離帯のある片側二車線の立派なものであるが、その
1台の計6,000kVAの発電能力を有している。排水処理
他の道路は中央分離帯のない片側一車線のものである。
については食堂やトイレなど生活排水の処理は共同で行
1990年代後半に開発され、2000年代に拡張されたこ
の工業団地は、分譲用地約511万㎡で既に完売している。
い、工場からの排水はそれぞれの工場の施設で行って
いる。
団地内には空き地も見られるが、資金繰りなどの理由から
TTPIでは、従業員の送迎バスを共同運行しており、車
工場が建設されていないか、投資目的で購入されている
や運転手の手配は業者に委託しているが、安全運行のた
ためである。
めの運転手の研修や毎朝のミーティング、
スピード制限装
ビダディ工業団地には、
トヨタ自動車のインド現地法人、
置の装着などの運転管理をTTPIが徹底している。
また、食
トヨタ・キルロスカ・モーターの工場が立地している。年間で
堂もTTPIが業者に委託して運営しており、1日約2,000食を
約17万台を生産し、世界戦略車(IMV)
であるイノーバや
提供している。衛生などに注意を払うだけでなく、従業員に
エティオスなどを生産している。
よる食堂委員会での意見を基に味の向上にも努めている。
また、当工業団地にはトヨタ系列の部品メーカーの現
TTPI内の各社の工場は独立しているが、事務棟は共
地工場が集まっている。その中でも、豊田合成、豊田鉄
有であり、1つの事務棟の中に各社の事務所が置かれ、情
工、尾張精機、
ジェイテクトの現地工場は、豊田通商が運
報の共有などに役立っているようである。
営するトヨタ・テクノ・パーク・インディ
ア
(TTPI)
という共同の敷地内に立
地している。TTPIでは敷地を共有す
るだけでなく、工場運営に必要なサー
ビスをTTPIが提供している。例えば、
自家 発 電 装 置や給 排 水 施 設 、食 堂
や送迎バスの運営などである。自家
発電装置は、
日本製の1,000kVAの
ビダディ工業団地内の中央道路
筆者撮影
(以下全写真筆者撮影)
TTPIが共同運行する送迎バス
28
インド南部の工業団地概況
(2)
ナルサプル工業団地
バンガロールの東部郊外、中心部か
ら約55km、車で約2時間、チェンナイへ
続く国道4号線沿いに位置している。国
道4号線はバンガロール市内では渋滞
しているが、郊外に出ればスムーズな片
側1車線の道路で、一部は片側2車線に
ナルサプル工業団地の入口に立つ看板
拡幅され、
中央分離帯もある整備された道路である。
ナルサプル工業団地内の工場敷地内に残る巨岩
チェンナイ港は、
インド第2位の港だが取扱量が限界
当工業団地もKIADBが開発、運営する公営工業団地
にきており、周辺道路の渋滞が深刻化している。
これに
であり、本田技研工業のオートバイ工場が進出していること
代わって、チェンナイの北部にあるエンノール港が完成
から、部品メーカーなど複数の日本企業の現地工場が立地
自動 車の輸 出 港として活 用されており、日産自動 車や
している。
トヨタ自動 車はここから輸出している。市 内を通らずに
第1期開発区域181万㎡の分譲がほぼ終わり、第2期の
分譲が始まっている。計画では第3期開発区域まであり、第
エンノール港へつながる道が計画されてはいるが完成
は当分先になりそうである。
2期と第3期は総開発面積がそれぞれ599万㎡と809万㎡と
当工業団地には日産自動車の現地工場が立地し、
ダイ
計画されているが、分譲面積は未定である。
ホームページ
ムラーのトラック工場もある。
また、
アポロ・タイヤなど自動車
に公開されている分譲価格は約3,600∼5,800円/㎡
関連製品メーカーや部品メーカーなどの工場が多数進出
(1ルピー=1.7円)である。
電力は州電力公社の変電所が工業団地内に設置され
ているとともに、停電に備えて各工場ごとに自家発電装置
が設置されている。訪問した工場では停電時間はまちまち
だが一日に一回は停電するとのことで、
自家発電がコストを
また、訪問した工場の敷地には、大きな岩が地中からむき
出しになっており、工場関係者の話では土地の造成工事が
難航したそうである。
ており、
日本の自動車部品メーカーが進出している。
図表5 チェンナイ近郊の工業団地
スリ・シティ工業団地
線
5号
国道
押し上げているそうだ。
している。
日産自動車のサプライヤー・パークが整備され
アンドラ・プラデシュ州
エンノール港
タミル・ナドゥ州
チェンナイ近郊の工業団地(図表5)
チェンナイ港
チェンナイ中心部
IT産業回廊
(1)
オラガダム工業団地
タミル・ナドゥ州産業振興公社(SIPCOT)が開発、運営
する公営工業団地であり、
チェンナイの南西部、
中心部より
約40km、車で約1時間半の州道48、57号線沿いにある。
工業団地からチェンナイ港へ続く道は市内を横断する
ため、渋滞やトラックの市内交通規制から非常に時間が
かかる。
29
オラガダム工業団地
州道48号線
州道57号線
ワンハブ・チェンナイ工業団地
出所:
JETRO資料より共立総合研究所にて作成
計画中の道路
公営工業団地
民間工業団地
ど世 界 各 地で工 業 団 地の開 発・運
営を行っている。
このノウハウと経験
を活かして、
アセンダスが共同事業体
の中で、開発・運営の中心的な役割
を担っている。
オラガダム工業団地内にある工場の排水蒸散施設
オラガダム工業団地内の道路
当工 業 団 地は、チェンナイ中心 部
から南へ約50kmの位置にある。チェ
分譲された工場用地は1,189万㎡と大規模だが、現在は
ンナイからの道路は国道や州道ではないが、幹線道路の
完売で空きはない。
ただし、第2期の開発計画があり、総面
一つで、チェンナイ市街に隣接した区間はIT産業回廊と
積249万㎡が予定されている。JETROのホームページに
も呼ばれ、IT関連企業の近代的なビルが並んでいる。
よると分譲価格は約3,400円/㎡
(1ルピー=1.7円)
である。
開発総面積は商業地区や居住地区を含めて587万㎡で
工業団地内に変電所があるが、
チェンナイでは電力需給
ある。
このうち、30%までが道路や電力、給排水施設などの
がひっ迫しており、停電が日常化している。電力不足のため、
インフラ設備やオープンスペースにあてられる予定である。
2013年10月から2014年5月までは工場などの高電圧を
第1期開発区域として130万㎡が分譲されており、
これまで
利用する事業者への割当電力量をピーク時(午後6時∼
に日本企業では日立オートモーティブシステムズや味の素、
10時)
には90%制限し、
オフピーク時でも20%制限して来た。
高砂香料工業などの進出が決まっている。分譲価格は様々
2014年6月1日以降、
この制限は解除されているが、今後の
な条件で違ってくるが、
約13,500∼15,000円/㎡である。
見通しは厳しい。各工場では自家発電装置を備えている。
公営工業団地とは違い、現在はまだ仮設だが工業団地
また、電力公社以外の民間電力会社からバックアップとして
の入り口にはゲートが設置されており、出入りが管理されて
電力を購入している企業もあった。
いる。
また、工業団地内の道路はしっかりと舗装され、主要
給水については問題は聞かれなかったが、排水につい
ては、環境規制により工場からの排水は禁止されており、
工場で独自に排水処理が必要である。各工場では、排水を
道路は中央分離帯のある複数車線となっており、
また、路肩
には縁石が置かれるなど立派な仕様となっている。
電力供給は工業団地内に電力公社の変電施設がある
独自に処理した後、ため池に貯めて蒸発させたり、蒸散
が、電力不足のため各工場で自家発電装置を備えている。
施設で蒸発させている。
また、給水については工業団地内に1,000㎥の地上タンク
2基と5,000㎥の地下タンク1基が整備されている。
(2)
ワンハブ・チェンナイ工業団地
インドではまだ多くない民間企業が開発した工業団地で
(3)
スリ・シティ工業団地
ある。
ワンハブ・チェンナイ工業団地のもう一つの特徴は、
チェンナイから北部へ約55km、国道5号線沿いに位置
その開発に日揮とみずほ銀行が資本参加した日系工業
するチェンナイ郊外の民間工業団地の一つである。
しかし、
団地であるという点だ。
これら日本企業とともに共同事業体
チェンナイの属するタミル・ナドゥ州ではなく、
アンドラ・プラ
を組むのは、
シンガポールの不動産開発業者、
アセンダスと
デシュ州に属している。
チェンナイ郊外の工業団地の多くは
在外インド人が中心となって運営している不動産開発
南西部に集中しているが、
この工業団地は北部に位置して
ファンド、
アイレオである。
いるため、
自動車産業や電子機器産業の集積地である南
アセンダスは、
シンガポールのジュロン工業団地を運営
するジュロン都市公社の子会社であり、ベトナムや中国な
西部の工業団地群へのアクセスはチェンナイ市内の渋滞な
どが障害となっている。
30
インド南部の工業団地概況
一方、
この地理的な特徴が、市北部のもう一つの完成自
発 、運 営は基 本 的にカルナータカ州 工 業 団 地 開 発 局
動車積出港として最近注目されているエンノール港へ近い
(KIADB)
が行っている。
チェンナイのあるタミル・ナドゥ州で
など利点ともなっている。
チェンナイからの国道5号線は高架、複線化の工事が
も、多くの工業団地の開発、運営はタミル・ナドゥ州産業振興
公社(SIPCOT)
が行っている。
進んでいる。国道からの工業団地入り口は立派なゲート
加えて、チェンナイ郊外には、民間で開発、運営してい
があり、先述のワンハブ・チェンナイ工業団地と同じく、出
る工業団地が主に4つある。本稿で紹介したワンハブ・
入りが管理されている。
また、工業団地内の道路はしっか
チェンナイ工業団地とスリ・シティ工業団地の他に、マヒン
り整備されており、公営工業団地と比べるとかなり立派で
ドラワールドシティ工業団地と双日マザーソン工業団地が
ある。
ある。マヒンドラワールドシティ工業団地はインド現地資本
開発面積は2,428万㎡で、工業地区のほか、住居地区や
が開発し、評判の高い工 業 団 地だがすでに分 譲 用 地
商業地区も計画されている。
また、環境負荷を軽減するた
は完 売している。双日マザーソン工業団地は日本の商
め、総面積の12.5%は緑地帯を設ける計画である。分譲価
社とインドの大手自動車部品メーカーとの合弁で開発が
格は条件によって違ってくるが、約3,400円/㎡である。
進められている。
工業地区のうち、国内市場向けの製造拠点としての国
内関税地区(Domestic Tariff Zone)
と分けて、海外輸出
のため部材の輸入関税が免除される経済特区(Special
(2)
インフラ整備の状況
東南アジア諸国の工業団地とのもう一つの違いは、
イン
Economic Zone)
と自由貿易倉庫区(Free Trade and
フラ整備の状況である。
インド南部の公営工業団地でも、
Warehousing Zone)
とを設置しており、保税措置のため、
基本的には土地の収用や団地内道路の整備、
電力設備や
国内関税地区との間にもゲートが設置されており、
出入りが
上下水道などのインフラ整備は開発、運営機関が行うが、
管理されている。
インフラ整備の状況は不十分である。例えば、団地内の道
進出している日本企業は、2014年6月現在で14社あり、主な
路は舗装されてはいるが、路肩が整備されていないため、
企業はコベルコ建機や愛三工業、いすゞ自動車などである。
土や泥での汚れが目立つ。
ただし、民間が開発・運営する
また、欧米やタイなどの外資系企業も15社が進出している。
工業団地はこの点ではかなり改善されており、東南アジア
諸国の工業団地に近いと言える。
まとめ
最後に、今回の調査で明らかとなったインド南部の工業
団地の概況を以下に整理する
(図表6)。
電力は、公営、民間いずれでも工業団地としては管理し
ていないため、州政府の電力公社と直接やり取りをすること
になり、停電が日常的に発生している。
そのため、敷地内で
の自家発電装置はそれぞれの工場が独自に備えなければ
ならない。
(1)工業団地の開発・運営主体
インド南部の工業団地は、
タイやインドネシアなど東南
アジア諸国の工業団地と大きく異なっている。その違いの
一つが、運営主体である。東南アジア諸国では、工業団地
を開発、運営している主体は民間企業が主だが、
インド
南部では州政府の機関が多い。
バンガロールのあるカルナータカ州では、工業団地の開
31
ワンハブ・チェンナイ工業団地内の道路
ワンハブ・チェンナイ工業団地の建設中の
給排水施設
また、排水については、環境規制のため工場外へ出すこ
図表6 インド南部の工業団地と東南アジア諸国
(タイやインドネシアなど)
の工業団地との比較
とが出来ないため、工場敷地内で処理施設や蒸散施設、
再利用施設などを作らなければならない。
インド南部の工業団地
工業団地の
開発・運営主体
(3)工場運営に付帯するサービス
東南アジア諸国の工業団地との違いの3つ目は、工場運
営に付帯して必要なサービスを東南アジア諸国の工業団
地では団地開発、運営者が提供しているが、
インド南部の
公営工業団地では一切提供していないという点である。
インフラ整備の
状況
東南アジア諸国(タイやインドネシアなど)の工業団地
政府の開発公社などが主。
民間の開発した工業団地が多い。
民間の工業団地もあるが少ない。チェン タイでは、工業団地公社が共同開発したり、
ナイには民間工業団地が主に4つある。 認定した民間工業団地もある。
道路や電力、上水道は最低限あるが整備が
道路や電力、上下水道などが整備さ
不十分である。下水は環境規制により工場
れている。
内で処理し、工場外へ出してはいけない。
公営工業団地では各工場が自前で手配 工業団地内の従業員を対象とした送迎
する。民間工業団地では団地開発・運営 バスなど交通手段や寮など居住施設、商
付帯するサービス 会社がサービスを提供するところもある。 業施設などが整備されていることが多い。
工場運営に
出所:共立総合研究所にて作成
象徴的なのはゲートの有無である。東南アジア諸国の工
職員は州政府の各省から出向しており、人的なネットワーク
業団地は入り口にゲートがあって出入りが管理され、工業
が各省とあることが強みである。各種の申請書などをすべ
団地内の土地と周囲の土地が分けられているのが一般的
てKUMで受け付け、共通審査会で審査、承認を行ってい
である。一方、
インド南部の公営工業団地では入り口にゲー
る。
ただし、公害管理審査は別組織が行う。
トはなく、周囲もフェンスなどでは囲まれていないので、
どこか
らどこまでが工業団地なのかは一見して分からない。
また、K U Mには日本 企 業の誘 致 担当者が2 人おり、
日本 企 業 への工 場 進 出などでの期 待は高い。日本 大
ただし、民間が開発した工業団地では東南アジア諸国
使 館 、J E T R O 、バンガロール日本 商 工 会 議 所とカル
の工業団地と同じく、工場運営に付帯する各種のサービスを
ナータカ州 政 府 高 官との間での協 議 会も定 期 的に開
提供している。
また、
ビダディ工業団地の中で報告したTTPI
かれている。
のように工場運営に付帯して必要となるサービスを共同で運
タミル・ナドゥ州でも、海外からの事業投資の問い合わせ
営する方式は、
インドの公営工業団地では有効である。チェ
などを一元的に受け付ける窓口機関として「ガイダンス・
ンナイに工場を建設しているヤマハ発動機へ部品を供給す
ビューロー」
と呼ばれる機関がある。正式名称はタミル・
る部品メーカーがこの方式を採用するそうである。
ナドゥ州産業誘致・輸出促進局(Tamil Nadu Industrial
Guidance and Export Promotion Bureau)
である。
こち
(4)州政府の投資誘致機関
らでも各種の申請を一元的に受け付けるサービスを提供し
カルナータカ州およびタミル・ナドゥ州ではいずれも海外か
ているが有料であり、かつこのサービスを利用できるのは
らの企業を誘致するための窓口機関を設置し、進出企業の
投資額が1億ルピー
(1億6,800万円、7月18日現在)以上の
便宜を図っている。
製造業企業に限られる。
カルナータカ州ではカルナータカ州産業友好局(KUM)
を設置し、海外からの事業投資の窓口としている。KUMの
以上、バンガロールとチェンナイ近郊の工業団地を事例
にインド南部の工業団地の概況をまとめた。人口大国とし
て豊富な労働力や有望な市場を期待されるインドだが、
電力不足などインフラ面では工場進出の障害も大きい。
しかし、状況は改善されつつあり、今後の変化を注視して
いきたい。
スリ・シティ工業団地の入り口
スリ・シティ工業団地の管理事務所
(2014.7.18)共立総合研究所 調査部 市來 圭
32