建設請負業の法的手引メモ - Pinsent Masons

建設請負業の
建設請負業の法的手引メモ
法的手引メモ
2007 年春
建設請負業者の
建設請負業者の法的手引き
法的手引きメモ
現地法の
現地法のリスク管理
リスク管理の
管理の方法
範囲
今回の CLGN では、国際契約においてプロジェクトの結果に不測の悪影
響を与える可能性がある現地法を検討し、次にこの事象に伴うリスクを見
分けて管理するための実践的なアドバイスを述べる。
現地法とは
現地法とは?
とは?
現在世界には約 197 の民族国家と多数の他の準民族国家があり、合計で
は 300 以上の領土管轄権が存在する。各民族国家は世界の他の諸国との
関係に適用する独自の法律を有している。これらの法律は「国際法」とし
て知られている普遍的な法律集合体の一部を構成している。同時に、各々
の民族国家と準民族国家はその領土管轄権における個人(外国人の私的及
び商業的行為を含む)に適用する、それぞれ異なった法律を有している。
世界の
世界の法律の
法律の系統
民族国家の多さから想像できるように、領土管轄権にまたがる現地法の多様性は国際請負事業の計画と管
理に対して大きな課題を突きつけている。この課題を理解するには分類的な方法を取ると分かりやすい:
何百という領土管轄権の各々は独自の特徴を示してはいるものの、一般的に言って世界には 7 つの主な
法律系統がある。これらの法律系統の基本的理解は、国際的な環境で請負事業を計画する時には、何等か
の一般的手引となる。7つの主な系統は下記の通りである:
1.
従来の英国系統(約 81 の管轄権)
2.
米国慣習法系統(約 61 の管轄権)
3.
ローマ法/慣習法混合系統(約 16 の管轄権)
4.
ゲルマン及びスカンジナビア系統(約 14 の管轄権)
5.
フランス
6.
従来のフランス
7.
シャリア(イスラム法)系統(約 23 の管轄権)
ラテン・ゲルマン混合系統(約 17 の管轄権)
ラテン系統(約 84 の管轄権)
7 つの主要法律系統を理解することは、貴社の国際契約戦略が堅固な法的戦略という基礎に基づくことを
補助するはずである。国際的な法律地図は広大であり且つまだらになっていることから、理解にはかなり
な困難を伴う。また他の多くの要素も考慮に入れる必要がある。例えば下記である:
1.
一国の法律制度は、例え二つの国が同じ主要法律系統に属していたとしても、他国とは大きく
異なっている。それはその国の歴史、文化的要素、宗教、及び倫理によって、法律制度の基礎
となっている価値観が国から国へと大きく異なるからである。
2.
多くの法律制度はハイブリッドである;例えばボツワナ、フィリピン、スコットランド、南ア
フリカ、タイ、ジンバブウェの法律制度は民法と慣習法系統の両方の要素を持っている。欧州
連合においては裁判所は民法(条約に基づき)と判例法に重要性を置いた混合である。
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3.
一部の特定の諸国の法律慣習は正にその国独自のものとなっている。これは特にアフリカの一
部の諸国、南アジア、及びオセアニアに見られるが、それらの諸国では程度の差こそあれ部族
慣習法が未だに守られている。バーレーン、バングラデシュ、ガンビア、インド、オマーン、
ナイジェリア、パキスタン、カタール、シンガポール等の慣習法諸国の一部は、宗教法をその
慣習法制度に取り入れている。アルジェリア、コモロ、シブティ、エジプト、エリトリア、イ
ンドネシア、モロッコは民法と宗教法を組み合わせている。
4.
「制定法」と「実施法」との間にはしばしば相違があることがある。従って多数の国々が近代
的で、西欧化された商法を定めているが、その解釈と適用においては一貫性にやや欠けてい
る。例えばビジネス取引に適用される非宗教法律が存在する(国際的なビジネスに携わる者にと
っては安心できる)多数のイスラム国家では、それにも係わらずイスラム法の原則が優先され
る。非宗教裁判制度の裁判官の大半は宗教研修を受けており、裁判官の判決はイスラム法の教
えと一致していることを確実にする商事評議会によって審査される。商事紛争への宗教原則の
適用と侵入は散発的ではあるが、いずれにせよ当事者は商事評議会の審査手続きに訴えること
によって、商法をベースにした判決を打開することを追求する可能性がある。この影響はどん
なものかと言うと、イスラム諸国における商法の文言は必ずしも法的結果を規定するものでは
なく、そのため必ずしも商業結果を規定するものではないということである。
5.
中華人民共和国、ヴェトナム社会主義共和国、ミャンマー連邦等の、旧ソ連圏国家と中央計画
経済下や社会主義的法律制度下のままである諸国の法律は多くの場合分かり難い。旧ソ連圏諸
国の大半の法律制度は、国際機構に加盟するに従って膨大な変更が行なわれており、加えて政
府の司法組織及び準司法組織の開発能力が追いつかず、これはしばしば実体法及び手続法が未
だに過渡期にあることを意味しており、その執行における一貫性も不明である。
現地法の想定される差異の多くは本質ではなく微妙な差異であることは事実である;即ち、7 つの主要法
律制度間で驚くほどのレベルの一致が見られるのであり、それは特に商取引のサポートの仕方という点で
一致している。例えば、イスラム法は商業の振興よりは主として倫理に関わる道徳規範であるが、イスラ
ム法の多くの原則は民法や商法に見られる原則と違ってはいないのである。例えば、イスラム法は契約の
神聖さを守る。
加えて、かなりの間いわゆる「新商慣習法」と呼ばれる、一体化された国際商法へと収斂化するというト
レンドが台頭しており、多くのレベルでの作業が見られる。国際コンサルティング・エンジニヤ連盟
(FIDIC)によって発行されている契約ひな型の広範な利用、及び国際商工会議所(ICC)、統一規則、統
一慣習・慣行及び契約ひな型の頻繁な採用等で裏付けられている、国際インフラ整備セクターにおける国
際商慣習法の台頭が見られる。Yearbook Commercial Arbitration(商事仲裁年鑑)及び Journal du
Droit International(国際法ジャーナル)等、国際商事仲裁の裁定に関する増加する刊行物や引用は、
国内法に直接的に関連しない国際商事法律学の発展を示している。国際投資紛争解決センターの仲裁裁判
の公表されている裁定は、国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約の第 25.1 条の意
味において、建設契約は「投資」であるという最近の判決を考慮すると、国際請負業者にとって重要な判
例の貴重な情報源を提供している。
最後に、国際商事法を一体化した国際条約及び協定の制定において重要な展開があったが、それらは例え
ば UNIDROIT 国際商事契約原則、国連動産売買条約、欧州連合の改訂欧州契約法原則である。
油断の
油断の落とし穴
とし穴
国際法の統一化に向けての上記に延べた多くの前進はあるが、国際的に契約を締結する時には現地法のリ
スクを正しく認識し、適切な対策を策定して実施することはやはり重要である。
基本的に契約法の手堅い知識は最も重要であり、これは特に契約に影響を与える可能性のある少なくとも
3 つの法律 - 第 1 当事者の現地法、第 2 当事者の現地法、あるいは商慣習法の原則 – が存在する国際契
約をドラフトする時に重要である。我々は不充分な契約ドラフト方法が招いた、最適とは言えない商結果
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を何度も見てきている。これは多くの場合、起草者が実体的契約法の実践的な知識を応用しなかったこ
と、及び必須の現地法を考慮することを怠ったことに帰している。
準拠法の選択条項は、特定の契約に影響を与える現地法の知識不足を切り抜けようとする方法として用い
られることが多い。これはしばしば状況に取り組む実用的な方法ではあるが、関連外国法律制度に見られ
る必須の又は不変の規則や規制は理解しておかなければならないし、準拠法の選択条項自体の適用可能性
を支配する規則はなおさらである。準拠法の選択条項の起草に際してこれらの規則を満たすことを怠るこ
とは、極端な場合には準拠法選択条項が意図した効果とは全く反対である、失効になりやすい結果を招
く。これは例えば準拠法条項にて明記されている管轄権と当事者または取引との間に実質的な関連が存在
しない場合、当事者の特定の法律の選択に対する合理的な根拠が存在しない場合、又は選択された管轄権
の法律適用が、その取引に更に重大な関係を有する国の公共政策に反している場合に起こりがちである。
現地法リスク
現地法リスクの
リスクの識別と
識別と管理のための
管理のための実践的
のための実践的アドバイス
実践的アドバイス
現地法の多様性を考慮すると、外国契約書類は高度な注意を払って取り組むべきである。当事務所は下記
の 8 つの実践的な対策を提案する。その一部は特に現地法リスクの発生に起因しており、また一部は一
般的な重要性を有している。
1.
例え法的に要求されていない場合でも、契約条件の全てを書面にしておくこと。よくありがち
な形式ばったドラフトの寄せ集め、往復書簡の綴じ込み付録、及び別個の覚書は避けること。
これら種々の契約書類の束は素早く集めることが可能かも知れないが、精通した法律制度であ
ってさえ、せいぜい法的取決めを混乱させるだけであり、最悪の場合には請負業者に対する法
的落とし穴を隠していることがある。
2.
法的表現の明白な選択を交渉し、満足できる法律制度を選択すること。準拠法選択条項を起草
する前に、相手側当事者(又は複数の当事者)の国内法(又は準国内法)における法律の抵触
の規則 – 特にその法律制度下で法律の選択の法的強制力を評価するために用いられる要素を明
確に理解することを確保するべきである。
3.
契約の主題に国際条約や協定が適用されるかを検討し、適用される場合には契約に包含するか
排除するかを明白に定めること。
4.
明白な不可抗力条項を交渉すること。慣習法制度は概して不可抗力の論理を認めておらず、従
って併発する極端な出来事の場合には、一般的に契約条項の厳密な運用を和らげるための介入
をしない。
5.
スライド価格条項の交渉を追求すること。
6.
L/C(信用状)、契約履行保証、及び銀行保証等、第三者手段を通じて貴社に対する支払及び契
約相手による他の点の履行を確保することを追求すること。この点で、実施可能な場合には適
切な ICC 統一規則の採択を奨励するべく努めること。
7.
通貨の為替レート変動リスクが明確に定められていることを確実にし、また可能な場合には同
リスクをヘッジする目的での適切な対策を導入しておくこと。多くの法律制度は為替リスクの
明白な配分に介入しない。
また他にも紛争解決規定を交渉する時に考慮する必要がある特定のアドバイスがあるが、それらについて
は今後の CLGN で議論したい。
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どんな場合でも、有能な国内弁護士と連携しての経験豊富なインフラの弁護士のアドバイスは、特定プロ
ジェクトに影響を与えたり、またプロジェクトに関わる全ての問題点を浮き彫りにし、次に適切なリスク
管理対策を提案するはずである。
上記の問題につき更に詳しい情報をお求めの場合には、いつでもニコラス A.ブラ
ウン ([email protected] 電話 852-2251-5621) か又は
貴社担当のピンセントメイソン弁護士までご連絡ください。
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