損害保険法 ドイツ職業保険組合(BG)のあらまし

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損害保険法
ドイツ職業保険組合(BG)のあらまし
No.3-1/2002.3/Ms-Ka
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BG 発展の背景と役割
ドイツ職業保険組合(Gewerbliche Berufsgenossenschaften)は永年にわたり、伝統と経験を培ってきている。
工業化が進む過程で、労働災害数が上昇しても雇用者の私的責任を追及する被害者がめったにいなかった頃、
社会法制定の一貫として 1884 年 7 月 8 日、損害保険法が公布された。この損害保険法はこの種の法律では
世界初のものだった。被害者は、労働災害または職業病の損害賠償を職業保険組合で要求することができた。
というのも、職業保険組合が個々の経営者の賠償義務を支えたからである。
このような背景から、職業保険組合の会費は専ら各産業部門の企業から捻出されている。職業保険組合は
集まった資金を元に、雇用者が予想した通りの業績をあげている。職業保険組合は 35 の部門に枝分かれし、
組合下で被用者は労働災害や職業病、通勤時の事故に対して保障されることになる。農業従事者には農業職
業保険組合による保障があり、公務従事者は公共の損害保険業者の手に委ねられる。
ドイツの損害保険法システムに特徴的なのは次の通り:
z 災害防止(予防)
z 健康および労働力の再生(リハビリテーション)
z 給付保障(年金等)
これらを一手に引き受けるのが職業保険組合である。このシステムにより、就業者は広範囲に保護され、社
会的に高度な保全が可能になる。
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安全と健康保護
設立以来、職業保険組合は安全と健康保護を目的とした様々なシステム(予防)を職場に確立してきた:
z 規定、規則集
z 技術監督
z 安全技術相談および労働医療相談
z 教育
規定集とは職業保険組合規定(災害防止規定)のことであり、職業保険組合の自治組織から発布される。全
ての分野に該当する規定もいくつかある(BGV,VBG)、例えば災害防止規定「一般規定」(BGV A1; VBG
1)や、災害防止規定「電気設備機器」(BGV A4; VBG 4)などである。その他の災害防止規定は一定の機
械装置、作業方法や分野向けに制定されている。職業保険組合規定では保護目標を挙げ、国家法規の転換に
役立っている、つまり、職業保険組合規定は行政当局指令と同等なのである。職業保険組合規定に対する違
反は、職業保険組合により、過料の対象となる。
職業保険組合規定を補足するのが、規則(BGR)や職場関連文書(BGI)等の職業保険組合規則である。
これらの文書により、抽象的な規格が実際の企業に置き換え易くなるはずである。各職業保険組合には、技
術監督業務(TAD)がある。この TAD 担当者は、企業の実務活動経験者であり、特に予防分野で特訓を受
けた経験豊かな専門家である。TAD 担当者は、安全と健康保護のあらゆる問題について企業に助言するこ
とを、最重要任務と心得ている。TAD 担当者には他に次のような任務がある:
z 企業において災害防止規定が順守されているか監視する
z ドイツおよび EU 圏内で、安全技術規則および規格制定に参画する
z 製造者職業保険組合の専門委員会を通じて、安全技術問題および人間工学問題の解決に際して助言する
z 安全機器の試験を実施
z 職業病の疑いを通知する際に、該当者の職場において公表されている危険状態があるかを捜査する
z 職業保険組合の教育部門や、専門単科大学や大学に講師として従事
¾ 教育、情報、モティベーション
知は身を守る。危険を知る者だけが、危険を防止できるのである。しかし経験によれば、知識を伝えるだ
けでは不十分なことも明らかである。就業者は自己知識を活用し、運転作業中も安全に行動するよう動機づ
けられていなければならない。そのため労働安全と健康保護は、教育と情報そしてモティベーション抜きに
は考えられない。職業保険組合は、細かく等級分けされた教育システムを開発してきた。
Ⓒエラン・シュメアザール日本支社
URL:http://www.elanjp.com
〒167-0054
東京都杉並区松庵 3-39-8
Tel. 03-3247-0519 Fax. 03-3247-0537
教育・研究対象となるのは次の通り:
z 安全の専門家(Sicherheitsfachkraefte)
z 安全全権委員(Sicherheitsbeauftragte)
z 経営者および幹部
z 事業所、従業員
職業保険組合には、ビデオシステムやコンピュータ、シミュレータなどのあらゆる最新メディアを備えた独
自の研修所がある。企業内教育の場で経営者や上役、安全専門家をサポートするために、職業保険組合では
次のようなものを提供している:
z ポスター、掲示、雑誌、冊子
z フィルム、ビデオ、CD‑ROM、インターネット
z 教材および教授手引
z コンピュータによる教育・情報プログラム
z 危険状態の評価をサポートするチェックリスト
¾ 保険事故
社会安全に関わるネットワークの中で、職業保険組合は次の分野に従事している:
z 労働災害
z 通勤時の事故
z 職業病
これら3種の保険事故に対して、職業保険組合は保険保護と相応の給付を行う。
労働災害: 労働災害とは、被保険者(通常は各職業保険組合加盟企業の従業員)がその労働中および通勤
中に被る災害のことである。ここには次例のような事故も含まれる:
z 作業機器の修理時または運搬時
z 会社所有車両の運転時(通勤・出張中の事故)
z 試合ではない、企業内スポーツ時
z 帰省時
z 企業主催の社員旅行および式典時
通勤時の事故: これは、職場との間を直接往復した場合に起きた事故のことである。次のような必要に迫
られた回り道は保障される:
z 就業時間中子供を預けるため(幼稚園、ベビーシッターなどへの道中)
z 自動車関連協会
z 迂回路
z 長距離の道を利用した方が職場に早く着ける場合
意図的に惹き起こされた事故、酩酊または私事が原因の事故は、職業保険組合の保険対象とはならない。こ
れは労働災害にも通勤時事故にも該当する。
職業病: 職業病として認められる一定の病気とは、当事者がその労働により、健康を損なう影響を他の全
住民に比べひどく被っている場合の病気を言う。これらの病気は、職業保険組合リストに職業病指令の一部
として挙げられている。さらに、新たな認識に基づき、職業病指令の前提が満たされている場合には、他の
病気が認められることもある。
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事故および職業病の通知
従業員が死亡また3日以上働けない傷害を被った場合、経営者はこれらの労働災害または通勤中の事故を
職業保険組合に通知しなければならない。届出には記入用紙が用意されており、職業病の届出は誰にでもつ
まり当事者自らからもできる。単に職業病の疑いがあるだけの場合も、通知ができるようでなければならな
い。職業保険組合には、嫌疑ある届出を全て調査する義務がある。被保険者側にコストは発生しない。
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リハビリテーション
職業保険組合があらゆる予防措置に尽力しても、労働災害と職業病を完全に排除することは不可能である。
この事は、防止できるかが被保険者自身の手にかかっている移動中の事故に特に当てはまる。職業保険組合
の原則によれば、「年金生活者になる前のリハビリテーション」である。つまり、職業および社会的再適合
と切り離せない、負傷者または病人にできるだけよい医療を供給することを最優先することである。
医療上のリハビリテーション:労働災害にあった就業者は全て、応急手当後、医師の病院または災害クリ
ニックで診察を受ける。この一時担当医は職業保険組合に認められた、事故医療に関する資格と相応の技術
および人的評価を持った医師である。一時担当医は負傷者をケアし、専門医へ回すなどその後の加療につい
て決定する。
入院加療:重傷者は病院で診療を受ける。この診療を行えるのは、災害負傷者の診療病院として職業保険
組合が認可している、職業保険組合加盟の災害クリニックまたは病院に限られる。これらの病院の医師の質、
医療技術設備ならびにスタッフは特にレベルが高い。こうして、負傷者または職業病患者に対する最適なケ
アが保障されることになる。職業保険組合の治療にはあらゆる適切な処置が含まれるが、特に次のものが挙
げられる:
z 医師および歯科医による治療
z 薬および包帯
z 医療体操、運動療法、言語療法、作業療法を含む治療方法
z 義肢、整形用機材やその他の機材
z 負荷試験および作業療法
z 身寄りのない者の世話
職業および社会的再適合:医療上のリハビリテーションと、職業・社会的再適合の両面をつなぐ重要な役
割を果たすのが、職業保険組合の職業ヘルパーである。職業ヘルパーは入院加療の段階から既に、負傷者の
今後の職業上の可能性について相談にのる。後遺症のために従来の職場への復帰が考えられない場合、また
は追加処置を講じないと復帰が実現しない場合は、職業サポート措置がとられる。このサポート措置は、負
傷者の能力や適正、傾向、従来の活動を考慮の上、負傷者をできるだけ長く再び職場復帰させることを目標
としている。これは、職業病を患う患者にも当てはまることである。
職業サポートに特に盛り込まれているサポートは次の通り:
z 職場の維持および獲得のサポート
z 職探し、職業試験、職業準備の対策
z 再訓練、研修、教育
さらに、生じた障害のタイプにより、次の場合は援助が行われる:
z 住宅の改装
z 衛生設備の改装
z 広い幅員の扉、エレベータ、アプローチの取付け
z 特殊乗用車の購入または改造
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コスト
職業保険組合は、治療費用ならびに職業・社会的再適合のための費用を負担する。さらに、負傷者または
病人には、その労働できなかった期間について、手取り賃金相当の金額が支払われる。職業再適合措置がと
られている間、職業保険組合は一時金を支払う。このいずれも、雇用者からの賃金が引き続き支払われてな
い場合に支払われる。
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年金
治療終了後も就業能力が引き続き 20%以上低下する場合、職業保険組合は損害年金を支払う。職業能力
の低下が 100%の場合の年金全額は、病気または負傷前の年収の3分の2である(所得変動により時折変更
される上限がある)。職業能力が部分的に低下する場合、職業能力が 50%低下した場合は以前の賃金の3
分の1等、年金額は変化の度合いに対応する。
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