朝日新聞に対する抗議書

朝日新聞1月27日朝刊『報われぬ国』に対する抗議書を提出
2月14日,朝日新聞東京本社に対し,土浦市として,朝日新聞1月27日朝刊『報わ
れぬ国―高齢者放り出す自治体―』に対する抗議書を提出しました。
提出した抗議書は,次のとおりです。
平成26年 2月14日
土 社 発 第 197 号
株式会社 朝日新聞
代表取締役社長
殿
東京本社編集局長 殿
土浦市長
中 川
清
平成26年1月27日付、貴社紙上における『報われぬ国―高齢者放り出す自冶体―』記事中の
本市に係る内容は、貴社記者の取材に対する本市の説明と相違しており、説明全体の一部文言だけ
を切り取り、また、一部文言を繋ぎ合せ、憶測に基づく表現となっております。
この結果、読者及び市民に対して、本市への不信や疑念を不当に抱かせるものとなっていること
から、ここに、平成26年1月16日の取材内容の概要を示し、記事の訂正を求めるとともに、厳
重に抗議するものです。
1.訂正を求める記事内容について
(1)『わずかに手元に残ったお金は「俺、やくざだから」とすごむ入居者にとられた。粗相をし
た入居者は施設の管理人に殴られていた。
』
(2)『昨年5月、宿泊所を逃げ出し、土浦市に助けを求めた。だが、担当者は「では、生活保護
も打ち切りですよ」と言うだけ。結局、野宿生活に追い込まれた。4か月が過ぎ、たどり着い
た水戸市に相談すると、養護に入る措置をしてくれた。』
(3)
『担当者は「住まいがない人は無料の低額宿泊所を探す以外にない。措置は時間もかかるし、
予算の関係もある」と説明する。
』
2.訂正を求める理由
(1)入所施設での事実について
二人が入所していた無料低額宿泊施設は、茨城県が定める指針に基づき届け出があった施設
で、本市も施設の状況を把握したうえで入所を斡旋したものです。建物は築20年が経過して
いるものの、十分な広さを確保した専用の居室や共用スペースも確保し、記事のように「壁が
はがれ、塗料もはがれたまま。冬は寒さで震えていた」というような劣悪施設ではありません。
二人の入所後は、本市担当者が定期的に訪問調査を実施しており、部屋の状況や対象者の生
活状況を把握したうえで経過観察をしてきました。訪問時の二人との会話のやり取りの中でも、
金銭を脅し取られたという事実や他の入居者に対する施設長の暴力行為についても一切語ら
れたことはありません。
本件が新聞紙上に掲載された1月27日以降、『やくざの入居者にお金を取られた』や『粗
相をした人が管理者から殴られていた』ということについて、改めて施設長に状況確認をした
ところ、「事実無根」であるという報告を受けています。さらに、施設長からは、二人が他の
入居者3人からそれぞれ数千円を借金しており、その返済がないまま姿を消してしまったこと、
また、本件記事を掲載するにあたり、記者からの直接取材はもちろんのこと、電話による問い
合わせも全く行われていなかったという詳細なる報告を受けているところであります。
(2)入所施設退所後の事実について
本件対象者のように、居住地が明らかでない方については、生活保護の相談があった際、必
ず本人と面接し、意思を確認のうえ生活保護を開始することになっています。
平成24年10月17日の午前中、マモル氏が最初に社会福祉課に相談に訪れた際、生活保
護を申請したいという旨の意思表示があったため、住所を確定する必要があることやその方法
等についての説明を行いました。約1時間のやり取りを経て、最終的に無料低額宿泊施設へ行
くことが決定し、その日の夕方、施設職員の送迎により入所に至ったものです。
入所後、4回の定期訪問でも、二人からは「何から何まですみません。」、「施設はとても住
みやすくて感謝しています。」という言葉をいただいていました。施設長からも「施設で管理
している畑の手伝いもしてくれるので助かっています。」との報告も受けていましたので、施
設での生活ぶりは快適なものと確信していました。
ところが、「宿泊所を逃げ出し、土浦市に助けを求めてきた」という記事になっていました
ので、これまでの対象者及び施設側の話から判断しても、記事は信憑性に欠ける内容になって
います。
また、「昨年5月」とありますが、施設から姿が見えないという連絡が入ったのが6月6日
で、本市に相談に訪れた日は6月13日であり、事実とはまったく異なった記事と言えます。
さらに、
『担当者は「では、生活保護も打ち切りですよ」と言うだけ。』という記事に関して
は、窓口に来た際、施設を抜け出した理由について尋ねても「入所者とのトラブルがあり、施
設に戻る気はない」という答えのみでした。その後、再三にわたって施設に戻ることを勧め、
その他の方法や今後の生活などについても話し合い(40分~50分程度)をしましたが、対
象者の意思も固く、しっかりした口調で「手持金もあり生まれ育った茨城町ならば生活する目
途がある」という言葉と生活保護の「辞退届」をいただいたため、最終的に生活保護の「辞退
届」を受理しました。
『結局、野宿生活に追い込まれた。
』という記事に関しては、前述したとおり、
「辞退届」は
受理しましたが、受理日からわずか8日後の6月21日には水戸市に生活相談に出向き、6月
24日から、水戸市内の異なる養護老人ホームにおいてそれぞれ短期宿泊(ショートステイ)
の利用を開始し、8月1日からは養護老人ホーム入所に切り替わっています。
4カ月間の野宿生活をした後、水戸市に相談に行き、措置入所になったという記事を読んだ
読者は、「確かにこの時点で施設に入ることができなかったら、二人の生命に危険が及んでい
たのではないか」ということを想像するかもしれませんが、
「自立」期間は実質7日間であり、
記事とは全く異なった内容であります。
本件のように、宿泊所を無断で退所した場合、原則、生活保護は廃止となりますが、本人の
意思を確認し、助言や指導を行いますので、本人の意思に反して直ちに生活保護を廃止するこ
とはありません。記事の表現は、本市の生活保護事務執行が、本人の意思を無視して独断的に
行われ、不適切な対応をしているなど誤解を招くようなものでありますが、どのような方に対
しても、生活保護の申請及び廃止のときには、本人に対して十分な説明をしていますので、一
方的に通告するようなことは一切ありません。
(3)貴社記者の対応について
平成26年1月16日、本市での記者の質問に対し、担当者が回答している「措置には時間
もかかる」については、養護老人ホームへの入所措置が入所判定委員会の開催など、諸手続き
が必要であることから、
「生活保護の手続きより時間がかかる」という意味のものです。
また、「予算の関係もある」については、記者の「市町村が措置を進めないのは、予算の関
係もあるのでしょうね」という、いわば誘導的な質問に対し、「そういうことも一つの要因と
考えられるかもしれません」とお答えしたに過ぎません。
実際、横枕記者とのやり取りは40分程度でしたが、本件のように、住むところがない方が
生活保護を受ける場合、相談があったら直ちに無料定額宿泊施設に入所してもらうということ
だけではなく、養護老人ホーム等への措置入所についても検討した事例があったことのほか、
多岐にわたって説明をしています。しかしながら、記事の内容は、その中の一部、一例にすぎ
ず、全体の説明とは大きく食い違っていることは否めない事実であります。
上記3点のほか、
『水戸市の関係者は「どう考えても養護に入れるケースだ」と首をかしげ
ていた。』という匿名でのコメントを引用して締めくくった記事も、低所得者等への本市の対
応がいかにも事務的で冷酷無比であることを強調したものであり、すべての市民及び本市の福
祉行政に携わるすべての関係者の名誉を著しく損ねる内容となっており、憤りを覚えています。
加えて、今回の新聞記事により、市議会議員や市民、福祉団体関係者からの問い合わせも数
多く寄せられ、全国の朝日新聞読者が、本市に対する不信感と疑念を抱いたことや、記事の信
憑性を疑う市民が貴社に対する怒りを露わにしていることは紛れもない事実で、誠に遺憾であ
ります。
つきましては、多くの方々が抱いた不信感と疑念、そして怒りを払拭すべく、名誉回復のた
め「訂正記事」の掲載など、貴社の誠意ある対応を求めるものです。
今回,朝日新聞の記事をお読みになり,市民の皆様には,たいへんご心配をおかけしま
した。中には,憤りを感じた方もいらしたことと思いますが,本件につきましては,抗議
書のとおり,本市の対応は迅速かつ適切な対応でありました。決して「低所得者等への対
応がいかにも事務的で冷酷無比」というものではございません。
本市といたしましては,今後とも引き続き,地域における様々な生活課題に対応し,市
民一人ひとりが安心して心豊かに暮らすことができるよう,福祉サービスの充実した,思
いやりと優しさにあふれた福祉のまちづくりを進めてまいりますので,ご理解の程よろし
くお願いいたします。