安全の手引 理学研究科では,就学上の安全のため、以下の内容をweb上でも掲載しております。 (http://www.sci.kyoto-u.ac.jp/ja/inuniv/safety/_file/safety.pdf) 2016 年 4 月現在 目 次 まえがき 1章.緊急連絡先 1節.火災 2節.人身事故 3節.火災・盗難・交通事故等の警察への届け出 4節.その他の連絡先 2章.火災・地震災害等 1節.火災 2節.地震 3節.都市ガスによる災害 3章.電気 1節.電気機器使用上の一般的注意 2節.感電防止と感電時の処置 3節.電気火災と爆発の防止 4章.機械・熔接作業 1節.作業服および保護具 2節.整理整頓と災害防止 3節.ホイスト,チェーンブロックなどによる吊上げ作業 4節.手工具による作業の注意事項 5節.工作機械使用に当たっての注意事項 6節.アーク熔接作業における注意事項 5章.高圧ガス・液化ガス 1節.高圧ガス 2節.液化ガス 6章.化学薬品 1節.化学薬品の取扱い 2節.化学薬品の廃棄 7章.化学実験 1節.加熱 2節.蒸留 3節.減圧 4節.加圧 8章.ガラス器具 1節.ガラス器具の使用 2節.封管および密閉容器の開封 3節.ガラス細工 9章.爆発 1節.ガス爆発 2節.分解爆発性ガス 3節.爆発性物質 10章.放射性同位元素、放射線発生装置およびエックス線発生装置 1節.一般的注意 2節.放射性同位元素等を取扱う場合の自己点検 3節.エックス線発生装置の取扱い 4節.エックス線発生装置を取扱う場合の自己点検 11章.レーザー 1節.レーザーによる障害 2節.レーザーの危険度 3節.安全確保 12章.生物(実験動物・微生物) 1節.実験動物の取扱い 2節.微生物の取扱い 13章.フィールドワーク 1節.国内でのフィールドワーク 2節.国外でのフィールドワーク 1章 緊急連絡先 1節 火災 火災の状況により、発見者は直ちに下記の順で電話通報する。 1)消防署 119(学内電話からは 0119) 2)時計台正門守衛室(学内電話からは0なしの119)守衛室の非常用受話器に1日24時間を通じてつながる。 (守衛室からの連絡により京都大学自衛消防団が出動し、消防署の消火に協力すると共に、現場保存にあたる態勢になってい る。) 3)RI 管理区域内または近くの火災の場合 下記の RI 取扱主任者のうちの一人。 長谷あきら (総括) 内線 4123 谷森 達 (物理) 内線 3858 三宅 亮 (地鉱) 内線 4183 長谷あきら (動物・植物) 内線 4123 山本 隆司 (生物) 内線 3909 4)理学研究科責任者(研究科長又は事務長) 研究科長 森脇 淳 内線 3601 事 務 長 中村 一也 内線 3602 5)専攻長・副専攻長・施設長 数 学 山口 孝男 内線 3735 物 一 石田 憲二 内線 3752 物 二 谷森 達 内線 3858 宇 宙 長田 哲也 内線 3903 地 球 中西 一郎 内線 3927 地 鉱 田上 高広 内線 4153 化 学 林 重彦 内線 4006 動 物 沼田 英治 内線 4073 植 物 田村 実 内線 4134 生 物 杤尾 豪人 内線 4215 天 文 台 柴田 一成 581-1235 地 磁 気 家森 俊彦 内線 3949 2節 人身事故 1)救急車を呼ぶ必要がある場合 119(学内電話からは0119) 2)救急車を呼ぶ必要がない場合 京都大学医学部附属病院(代表 751-3111) 附属病院の診療時間以外は京都大学理学研究科に最寄りの下記救急指定病院 京都民医連第二中央病院(旧安井病院)(Tel.701-6111)(24時間受付) 3節 火災・盗難・交通事故等の警察への届出 火災・盗難・交通事故等の場合、警察に被害届けを出すことになり、警察の学内立入には、大学側の立会等が必須となります。そ のため、原則として、専攻長等への連絡を優先させるようにしてください。なお、夜間は理学研究科緊急連絡先 090-525 3-5226または075-753-2255を使って専攻長等への連絡を行ってください。 被害届の提出先 下鴨警察署 北白川警察官派出所 Tel.781-3240 4節 その他の連絡先 火災発生時以外の施設関係緊急連絡先 1)ガス漏れ: 大阪ガス(24時間受付 Tel.314-1241, 0120-8-19424) 2)電気事故: 吉商電工(24時間受付 Tel.872-8492 携帯電話 090-3708-9767)(吉田) 扶桑電気(Tel.561-9171 携帯電話 090-8795-3461(金子) 3)給排水・ポンプ 影近メンテ(Tel.752-0591)(平日夜間及び休日は電話転送され、休日担当者が対応します) 山中冷機(Tel.592-0520 携帯電話 090-3728-6800,080-1463-1188) 4)1)~3)のいずれの場合も必ず 北部構内事務部 施設安全課設備掛 (内線 3617)に速やかに連絡すること。 5)エレベーター 勤務時間外に、閉じ込められた場合、非常用ボタンを押して待機。(しばらく押し続けてください) 契約業者(総合警備保障(株)京都支社、Tel 343-5171)に直接非常ベルがつながるが、エレベーター内からの会話は出来ない。 6)その他事故の報告 事故発生時や事故が起きそうになった事例(ヒヤリ・ハット incident)があれば、再発事故防止のため、担当教員を通じ て、北部構内事務部 施設安全課安全管理掛(勤務時間内 内線 3693)まで連絡すること。 2章 火災・地震災害等 1節 火災 1)火災発生の際の処置 1 躊躇せず、「火事だ!火事だ!・・・」と大声で知らせる。火災警報器の場所が判れば火災警報器を鳴らす。 2 可能ならば初期消火に努める。その際、下の i)~iii)を心がける。ただし、炎が天井にまで達すれば初期消火はあきら め、避難する。 3 火勢が強く消火が困難な場合には1章-1節の連絡方法に従い電話連絡。 ⅰ.火元の器具、装置等のスイッチ、元栓を閉じて、手許の消火器で消火に努める。(理学研究科に配備されている消火器は、 原則、油火災、電気火災にも対応したものだが、身の回りの消火器が実際に対応しているかどうかは、普段から表示を確認し ておく) ⅱ.衣服等に火が着けば、直ちに水をかぶる。あるいは床に転がり消火を試みる。 ⅲ.燃えやすい物を火元から遠ざける。 ⅳ. 避難する際は延焼を防ぐため、扉を閉めて逃げる。研究室に所属している者は災害時アクションカードに則って避難する。 ⅴ. 避難途中の他の部屋にも火災が発生したことを知らせる。 ⅵ. 階段は走らない。集団雪崩の原因となるため。 ⅶ. 煙を避けて避難する。どうしても煙の中を通らなければならないときは濡らした布地等を口に当て、ほふく前進等出来る だけ低い姿勢で煙を吸わないようにして避難する。 2)火災の予防 1 出火の可能性の高い所には、水を張った容器または用途に応じた消火器を用意しておく。 2 消火器、消火栓および火災報知器の所在と使用方法を平素から確認、熟知しておく。 3 火気のそばに燃えやすい物を置かない。 4 電気器具、ガス器具等の点検を怠らず、所定の方法で使用する。 5 ヒーター、ガスバーナー等を点火したまま部屋を離れない。退室時には、電源および元栓を閉じる。 6 実験室をはじめ建物内の整理整頓に留意し、安全な避難路を平素から確保しておく。 7 普段から避難できる階段を2カ所以上確認しておく。 8 喫煙は、火災の発生を招かないよう注意をして行う。特に吸殻の始末に注意する。 2節 地震 1)地震発生の際の処置 1 自分の身を守る。頭をカバン、本等の手近にあるもので保護する。移動出来れば、丈夫な机等の下にとりあえず避難する。 ガラスの側や倒れやすい物には近寄らない。 2 火気を断つ。ガスの元栓やバルブを閉じる。家具が移動や転倒する規模以上の地震であれば、電源ブレーカーを落とし、 漏電による火災発生を防ぐ。(電源の復帰は電源コードや機器類に異常がない事を確認してから。通電後も半日~一日程度 は焦げ臭い匂いがしないかどうか気をつける。) 3 落下物が発生する規模以上の地震であれば、周囲に怪我人や身動きの取れなくなった人がいないかを確認する。 4 火災が発生したら周囲の人に知らせ、消火に努める。 (火災発生の際の処置を参照) 5 けが人が出たら、周囲の人に知らせ、救出に努める。しかし、救出が困難なとき、危険が伴うときは自身の安全確保を優先 し、消防署等に救助を要請し、指示を仰ぐ。 6 不用意に戸外に避難しない。避難は周囲の状況をよく見て判断する。エレベーターは使わない。 7 避難する際はガス元栓、電源ブレーカーを遮断する。研究室に所属している者は災害時アクションカードに則って避難する。 8 屋外では、ビルや塀、建物の側から離れる。壁面やガラスが落下するおそれが有るため。 9 車に乗っているときは路肩に寄せ、停車する。 10 沿岸部では津波情報に注意する。 2)地震災害の予防 1 危険物は、日常的に使用する物でも、倒れたり、落下したり、振動しないような状態にして管理する。 2 重い装置や書架等は、床、壁あるいは柱等に固定する。 3 ガラス戸、ガラス窓には飛散防止フィルムを貼る。 4 消火器、消火栓、電源ブレーカーおよび火災報知器の所在と使用方法を平素から確認しておく。 5 実験室はじめ建物内の整理整頓に留意し、安全な避難路を二つ以上平素から確保しておく。 6 避難時は手と頭を負傷するケースが多い。軍手やヘルメットがあると良いが、ヘルメットの代わりに座布団やカバン等の代 用も考えておく。 7 普段から、地震等の災害が起きたことを想定し、どういった被害がでるか?どのように対応すればよいか?をシミュレーシ ョンしておく。 3節 都市ガスによる災害 1)ガス漏れ発生時の処置 1 火気を断つ。 2 元栓を閉じる。 3 換気をする。換気扇は始動させない。電気スイッチ、金属には触れない。放電や静電気放電で着火することがあるため。 4 処置不能の場合は、静電気や火花による着火に気をつけて、避難する。 5 所定の箇所へ通報する。(1章-3節を参照) 2)ガス漏れ予防 1 ガス管等の点検を怠らず、所定の使用方法に従う。 2 装置、家具類の移動の際には、ガスコックや管等を破損しないように注意する。 3 元栓の所在と操作方法を平素から確認しておく。 3章 電気 1節 電気機器使用上の一般的注意 電気機器は実験室で日常茶飯事に使用するだけに、ともすれば注意がおろそかになりがちである。災害や事故は機器の安全装置の 故障や不適切な使用方法が原因になっていることが多い。従って、普段の点検と正しい使用を常に心掛けることが肝要である。 1 実験室の配電盤に付いているヒューズは、表示されている電流値のものを使うこと。その電流値以上のヒューズは絶対に使 ってはならない。2次側端子の配線に許容電流に見合った太さのケーブル(下記の表1を参照)を使い、接続には圧着端子を 使用して固くネジ止めすること。ビニールコードは使用しない。 表1.ケーブルの太さと許容電流の早見表 銅単線 ビニールコード 直径(mm) 許容電流(A) 公称断面積 より線構成 許容電流 1.0~1.2 16 (mm2) (本/直径 mm) (A) 1.2~1.6 19 0.75 30/0.18 7 1.6~2.0 27 1.25 50/0.18 12 2.0~2.6 35 2.0 37/0.26 17 2.6~3.2 48 3.5 45/0.32 23 3.2~4.0 62 5.5 70/0.32 35 4.0~5.0 81 5.0以上 107 2 電気機器を使用するときは電源やコードの容量を越えないようにしなければならない。また、器具コード、テーブルタップ による「タコ足配線」は危険であるので行ってはならない。なお、テーブルタップに使われているビニールコードの許容電流 は7アンペアであることを心得ておくこと(前頁表1参照)。 3 ビニールコードの接続は、差し込みプラグを使用し、ハンダ付け等で接続しないこと。 4 電気機器および電気材料は、安全認定証票の表示がある規格品を使用すること。 5 電工ドラムのコードを巻いたままで使用すると、焼損につながるので避けること。 6 電気機器には個別の電源スイッチを付け、使用ヒューズの定格電流値を表示しておくこと。 7 ケーブルまたはコードの配線は、踏みつけたり、引っかけたりすることのないようにすること。被覆が破れたコード、劣化 したコードは感電事故や火災を引き起こすため、使用してはならない。 8 薬品やガスを使う環境では、機器および配線コードが侵されないよう注意すること。 9 大電流で励磁中のマグネットは、漏れ磁界により鉄製品を吸引し、非常に危険なので注意すること。心臓のペースメーカー をつけている人は絶対に近づいてはならない。 10 電気機器の運転にあたっては、その使用方法・性能を把握することなくスイッチに触れてはならない。 11 電気機器には、必ずアース(接地)を完全に取ること。水道管およびガス管からは絶対にアースをとってはならない。配電 盤に付いているアース端子を使用すること。 12 実験を終了して退室するときは、使用の終った電気機器の電源スイッチを切ること。夜間の無人運転の場合は退室する前に 安全を充分確認すること。また、停電のため実験を中断して退室するときには、電源を切る操作を忘れがちであるので、注意 すること。また、夜間の停電に備え、懐中電灯を常備しておくこと。 13 コンセントの埃は、漏電による発火(トラッキング)が起きることがあるため、定期的に清掃すること。 2節 感電防止と感電時の処置 1)感電防止 感電による災害は、配線や電気機器の通電部または帯電部への接近・接触等により、人体を通して大地に電流が流れることによ り起こる。また、高電圧の場合、直接接触がなくとも気中放電により感電する。感電防止の方策を以下に述べる。 1 電気機器のアースを完全にすること。特に高電圧・大電流機器に対するアースは数オーム以下にする。 2 高電圧や大電流の通電部あるいは帯電部への接触を避けるため、絶縁物で遮蔽すると共に、危険区域である旨を表示するこ と。運転時は赤色警報灯を点灯すること。 3 高電圧機器を操作するときには2人以上で行い、手順に関する詳細で分かりやすいマニュアルを準備しておくこと。 4 電気機器の通電部・帯電部に直接触れる必要があるときは、電源を切ってアース棒等により充分放電した後で作業を行うこ と。 5 感電を避けるため、濡れた場所や濡れた手で作業しないことはもちろんのこと、必要に応じて体がアースにならないように 安全帽、キズのないゴム手袋やゴム靴を適宜着用すること。 6 電気機器からの漏洩電流を避けるため、付着したゴミや油を取り去って機器を清潔に保つこと。 2)感電時の応急処置 感電によるショック(電撃)の強さは一般的に「通電電流の自乗と通電時間の積」で決まるが、そのほか電圧の高低、周波数の 波形、電流の体内通過路等によっても異なる。目安としては50~60Hz の交流電源で感電した場合、10ミリアンペアで筋硬直を 起こし、100ミリアンペアでは致命的な心臓障害により電撃死をひきおこす。電撃を受けた人を見つけた場合には次の処置をと る。 1 直ちに電源を切ってから、救護活動に入ること。やむを得ず通電状態のままで、感電している電線や電気機器から身体を引 き離す場合は、乾燥した木や竹の棒、ゴム手袋等を使用しなければならない。これらの物品の場所を事前に確認しておくこと。 2 現場近くの静養に適した場所に移して、着衣をゆるめ、身体全体を楽にさせると共に、直ちに救急車を呼んで病院へ運ぶ こと。 3 ショック状態になり呼吸や心臓が停止している場合は、大声で応援を求めると共に、救命講習受講者に指示を仰ぐ。救命講 習受講者が居なければ、救急車の要請と AED の手配、救命講習受講者の探索を近くの人を指名して頼み、救急車か救命講習受 講者が到着するまで、100回/分のペースで心臓マッサージを続けること。 3節 電気火災と爆発の防止 電気に起因する火災は、過負荷あるいは通常の漏洩電流によるジュール熱で、木材等発火しやすい部分の発熱から起こる通常火災 と、爆発性のガスや粉塵に電気火花から引火する爆発火災に大別される。 1)火災防止 1 電線や電気機器に許容量以上の電流を流さないこと等、3章-1節で述べた「一般的注意」の各項を守ること。 2 電線間がショート(短絡)すると過電流が流れ、ヒューズやブレーカー(遮断器)により電流が断たれるが、ショートした ときの火花によって可熱物に着火することがある。電線や機器の周囲にはできるだけ可燃性のものを置かないこと。 3 定期的に絶縁抵抗テストをして、電線や電気機器からの漏電の早期発見に努めると共に、日常の保守点検を充分にすること。 4 電線の接続部分の接触不良による発熱が発火の原因になる。ネジ止めの場合は、一度過熱するとますます接触状態が悪くな るので、定期的に増し締めをする必要がある。特に、配電盤の点検では、配線の緩み、過熱、唸り等の異常音、破損の有無等 に注意すること。 5 火災事故は夜間の無人の状態で起きやすいので、退室時には必ず電源を切るという習慣をつけること。無人運転する場合は 退室の前に安全を充分確かめること。 2)爆発防止 可熱性ガス、引火性の液体蒸気および粉塵が実験室に充満しないように、万全の注意を払わなければならない。実験で爆発性 ガスを使用するときには、ガス検知器を設置し、安全基準を熟知して行うことが必要である。さらに、電源スイッチを入れる ときには、正常なスイッチでもスパークやアークを発生するので、防爆型のスイッチ・機器を使用することを考慮しなければ ならない。 最近、各種の高絶縁性の材料が多く用いられるようになってきたが、それに伴い静電気の発生が増大しており、その静電気の 放電スパークが、爆発の点火源になる危険性もまた増えてきた。これらの防止のためには、帯電物の遮蔽、絶縁物の導体化、 帯電量の減少を図るアースの方法、および除電装置の設置等の対策を取るべきである。 3)消火時の注意 電気火災の消火は、通電、帯電時に至近距離から水をかけたりすると、感電する恐れがあるので注意を要する。注水ホースや消 火器のノズルをアースしておくと安全度が増す。電気火災用消火器を用いること。 4章 機械・熔接作業 1節 作業服および保護具 1 作業服は体に合った軽快なものを着る。袖口を締め、上着の裾をズボンの中に入れる。大きなポケットのないものがよい。 白衣は着用しないこと。 2 機械や動力伝達装置の付近で作業するときは、頭によく合った作業帽で頭髪を包むこと。頭部の傷害が起こる可能性のある 環境では安全帽を着用すること。 3 サンダル、草履、スリッパで作業しないこと。滑りやすい履物をさけること。足のけがは意外に多いので、JIS 規格の安全 靴を履くことが望ましい。 4 回転部分、高速往復部分を持つ機械では手袋を使用してはならない。 5 引火しやすいもの、尖ったものをポケットに入れないこと。 6 危険が予想されるときは、それぞれの作業に適した以下の保護具を使用すること。 ⅰ グラインダ作業やバリ取り作業等で飛散する切り粉や粉塵、あるいは有害薬液の飛沫が目に入ることを防止するため、防 塵眼鏡、防塵マスク、保護面等を使用のこと。 ⅱ 熔接作業等で発生する有害光線の遮光のためには、遮光眼鏡、遮光面、革製手袋、革製足カバー、革製前掛等を使用のこ と。 2節 整理整頓と災害防止 作業室の整理整頓は、物品管理、作業能率のほか災害防止にも役立つ。安全な通路は常に確保しておかねばならない。 1 使用者全員が協力して常に最良の状態に保つよう管理する。 2 全ての物の正しい置き場所と置き方を決める。機械、器具、工具の置き場と通路を区分する。機械の間に設ける通路は幅 80cm 以上取ること。 3 作業スペースは広く取り、作業の障害になる物は取り除くこと。加工材料、工具等は足元に置かず、適当な台の上に置く。 4 機器の安全マニュアルには必ず一度は目を通す事。また、新規機器使用前と人員が入れ替わった時、そういった機会がなく とも、少なくとも年に一度は、リスクアセスメント(起こりうる事故の予想、事故による被害の評価、その事故を起こさない ようにするための安全対策・安全行動の検討・実施・確認)及び事故発生時の対応の検討・確認を全員の使用者が行い、災害 防止に関する知識・安全意識の共有を行い、毎作業時には、安全対策・安全行動・事故発生時の対応の確認を行うこと。 3節 ホイスト,チェーンブロック等による吊上げ作業 一般に吊上げ荷重1t以上の場合は、特別教育修了者または免許所持者以外作業できない。1t以下の場合でも経験者の指示に従う ことが必要である。特に注意することは次の通りである。 1 チェーンブロックを仮設物や構造物に取り付けるときは、その強度や変形程度を確かめ、補強を行うこと。支柱の足が滑ら ぬように対策をたてること。 2 作業前にチェーンブロック本体、およびロープ等の玉掛け用具類を点検すること。素線の多くが切断しているロープ、キン ク・変形・腐食等で損傷しているロープを使用してはならない。 3 用具には制限重量を表示すること。吊上物の重量を正確に把握し、定められた制限以上の荷をかけてはならない。 4 ロープで荷物を吊るときは、ロープに働く張力を軽減するためロープの開きを小さくすること。一本吊りは避けること。 5 作業は2人以上で行い、1人は荷物を注視し、その合図を受けてチェーンを操作すること。 6 移動用のリフトを使う場合も、荷物の上昇・下降時にはキャスターをロックして、リフトが動かないようにする。また、運 搬の場合は重心を低く保つこと。 4節 手工具による作業の注意事項 1 使用前に工具に欠陥がないかよく点検すること。摩耗、変形、切れ味にも注意する。 2 工具の油はよく拭き取って、滑らないようにすること。 3 本来の用途以外に使用しないこと。 4 ドライバー、スパナ、パイプレンチ等は、ねじ、ナット、パイプの大きさに応じて適当な力が出せるような形状と寸法にな っている。補助具を使う等して過大な力を与えると、ねじがねじ切れるので注意する。 レバー等も同様に、普通の力で締めれば充分な力が出るよう設計されている。過度の力を入れると、破損や手が滑ったりし、 けがのもとになる。 6 フランジ等のように多くのねじで取り付けるときは、回し締めによって次々と締めていくこと。緩める場合も品物を落下さ せない工夫がいる。 5 5節 工作機械使用に当たっての注意事項 1 使用機械について、加工原理・作業方法・取扱いに関する知識を持つこと。初めて使うときは、熟練者の実地指導を受ける こと。 2 部屋の中で、1人で作業することは避ける。 3 電源スイッチを入れる前に機械の状態を点検すること。空転させてみて異常のないことを確認すること。 4 加工物を確実に取り付けること。特に、回転体では偏心やバランスに注意する。 5 作業内容に応じて刃物を選択し、確実に取り付けること。 6 工具や測定具は定められた場所に置くこと。チャックの締め具やスパナ等を突っ込んだままにしておくと、運転開始時に大 事故を起こすことになる。 7 作業内容に適した切削油を選び、作業中に発煙するときは排気すること。 8 回転している物には、絶対に手を触れないこと。手袋の使用は厳禁である。また、加工物の寸法測定は機械を停止してから 行う。 9 機械を停止するときは、刃物を機械から離してからにすること。 10 停電したときは、まずスイッチを切る。続いてベルト、クラッチ送り装置を遊びの位置に移すこと。 12 機械を整備する際は必ず主電源を落とすこと。また、コンセントにつながっているものはコンセントから電源コードを抜く こと。誤って電源が入り、巻き込まれた事例がある。 6節 アーク熔接作業における注意事項 1)装置の点検 熔接機の電源スイッチが開かれていることを確認したあと、以下の事項を点検する。 1 アーク熔接機、熔接物、被熔接物等を結線する。1次側、2次側ケーブルの接続、アースの接地方法等に誤りはないか確認す る。水道管・ガス管・建物等にアースしてはならない。 2 熔接機ホルダの絶縁物の破損、ねじのゆるみ、熔接ケーブルの損傷の有無を点検する。不良品は補修するか新品に替えてお く。ホルダ、ケーブルともに JIS 規格に適合したものであること。(ケーブル径は下記の表1を参照) 表1.使用電流とケーブル断面積 2次電流 推奨ケーブルの断面積#) 150A 以下 22mm2 250A 以下 38mm2 400A 以下 60mm2 600A 以下 100mm2 (様式―奨1) #)定格使用率50%の場合 2)服装・保護具 感電、アーク焼け、火傷等の危険を避けるため、以下のことに注意する。 1 できるだけ乾いた衣服を着用し、汗等による濡れがないように気をつける。 2 必ず絶縁の安全な靴(ゴム底等)を着用し、スリッパ等では作業しない。 3 作業に当たっては必ず革製の乾いた熔接用手袋を着用すること。 4 使用電流に対応した遮光度のプレートを入れた遮光面を使用する。遮光ガラスの両面には汚れを落とした透明ガラスを入れ ておく。 5章 高圧ガス・液化ガス 高圧ガス・液化ガスの使用者は高圧ガス・液化ガス取扱についての基礎的知識を得るため、年に数回行われる寒剤利用者講習会 の受講が望ましい。 1節 高圧ガス ボンベは3年ごとの耐圧試験が義務付けられている。特に必要がない限り、業者からレンタルとして借りた方がよい。危険なガス は絶対にレンタルにして、使用後、あるいは長期間使用しないときには、ガスが残っていても返却した方が安全である。硫化水素 のボンベが腐食したため、決死的な処理を行った例がある。 減圧弁の取り付け、その他、使用法等については、必ず習熟者の指示をうけること。絶対に安易な気持で使用してはならない。ガ スボンベは普通150気圧のガスが充填されていることを承知して必ず架台に立てること。架台は耐震対策の観点から床や壁(出来 れば両方)に固定し、ボンベには上下2箇所にチェーンを掛けて固定すること。また、40度以下に保ち、入口には必ず「高圧ガス 置場」「毒」「燃」等の表示をすること。 支燃性(20%以上の酸素を含有するもの)、可燃性、毒性のガスは取扱いやその場所に特に注意を要する。これらのボンベを屋内 で使用・保管する場合は万が一の漏出に備え、シリンダーキャビネット内に保管することが義務付けられている。一酸化炭素はヘ モグロビンに強く結合するので、特に危険であるからドラフト中でのみ扱う。特に毒性ガスを扱うときには必ず防毒マスクを用意 すること。可燃性ガスは換気扇を回すと着火することがあることも承知しておくこと。 高濃度の酸素ガスの場合は特にバルブを開くときに出来るだけゆっくり開くようにする。配管接続時に管内にでた金属粉が断熱圧 縮で発生した高温で燃焼し、爆発した事例が学内でもある。 不活性ガスの窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等も酸欠をおこすので、部屋の換気には充分に注意すること。一般に高圧ガ ス入りの気体は密閉した部屋(冷凍室等)で使用してはならない。ガス漏れを起こした部屋に不用意に入らないこと。万一、ガス 漏れを起こしたときは全ての火気を消し、窓を開けてすみやかに換気につとめる。 ガスの種類はボンベの色で次のように区別される。 水素(赤) 塩素(黄) 二酸化炭素(緑) 酸素(黒) アセチレン(褐) アンモニア(白) その他(灰) 減圧調整器のネジには右ネジと左ネジがあり、一般に可燃性ガスでは左ネジ、その他は右ネジである。これは混用を防ぐためであ る。ヘリウムガスも左ネジだが、ネジ山のピッチが 、可燃性ガスのそれと異なる。ガスに見合った減圧器を用い、絶対に他の ガス用の減圧器を流用しないこと。3気圧くらいになったらボンベは交換すること。漏れている減圧弁は無理して締めすぎないこ と。元栓を締めて直ちに交換すること。 2節 液化ガス 液化ガスは気化する時急冷するから凍傷に注意すること。水で濡れた手袋は使わない。手袋は、使用時にはすぐ脱げるようにして おくこと。 酸素の方が窒素より沸点が高いので、長時間放置後の液体窒素には必ず酸素が混じっている。この様な古い液体窒素を有機物と接 触させると爆発する危険性が高い。 液化ガスが気体になると、約1000倍の体積になることを忘れないこと。液体窒素でも酸欠の危険性を秘めていることに注意するこ と。最近も液体窒素で窒息死した例が報道された。エレベーターも一種の密室であるから、液体窒素の運搬にエレベーターを使用 する時は人と容器を一緒にエレベーターに乗せてはいけない。(学内規程) 液化ヘリウムの容器は特に口が狭く、周囲を液化窒素で冷却しているため、入口に氷がついて詰まることがある。その結果、気化 した液化ヘリウムが逃げ場を失い爆発することになる。 ガラス製魔法瓶はショックで爆発することがあるので、注意して使うこと。 6章 化学薬品 危険な薬品や装置を取扱うときの基礎知識をまとめた参考書としては、「実験を安全に行うために」(化学同人)、「続 実験を 安全に行うために」(化学同人)、「化学実験の安全指針」(日本化学会)、「化学実験室の災害防止」(三共出版)、「公害と 毒・危険物 総論編」(三共出版)、「公害と毒・危険物 無機編」(三共出版)、「公害と毒・危険物 有機編」(三共出版) 等がある。特に、「実験を安全に行うために」は基礎知識を学ぶのに適しているので、熟読の上、実験に取りかかること。 1節 化学薬品の取扱い 化学薬品には、爆発性、引火性、発火性、毒性、腐食性をもつものが多い。化学薬品の性質をよく知ったうえで、指導者の指示 に従って取扱うこと。取扱いの際には、必ず保護眼鏡をかけ、ゴム手袋を使用すること。 また、化学物質等安全性データシート(以下、MSDS)は、化管法により制度化されている、指定化学物質や指定化学物質が 含まれる薬品などを安全に取り扱うために必要な情報を記載したものであるが、法的な規制、使用すべき保護具、その材質、取扱 時の注意事項や暴露時の対応など当該化学薬品を取り扱う上で最低限必要な安全に関する情報が載っているので、薬品販売業者か ら取り寄せるか、インターネットで検索し、使用する化学薬品については熟読しておくこと。 1)危険物 消防法による危険物は、火災発生の危険につながる性質を持つ物で、その性質によって次頁の表1の1類から6類に分類されてい る。消防法によれば、危険物の取扱いは危険物取扱者免状を取得した危険物取扱者でなければ行ってはならず、それ以外の者が 取扱う場合には危険物取扱者の立会が必要とされている。多量の危険物は、 『理学研究科危険物屋内貯蔵所』に貯蔵することが 義務付けられている。 2)実験室でよく使われる化学薬品 化学薬品の取扱いには、保護眼鏡、ゴム手袋、薬さじ、ピンセット等を使用し、できるだけドラフト(フード)内で行うこと。 1 引火性物質、可燃性物質 エーテル類、二硫化炭素、石油エーテル、ベンゼン、アルコール類、アセトンは引火点が低く、火災の原因となりやすい。こ れらの蒸気は空気より重いので、実験台や床を這って流れ、ガスバーナー等から引火しやすい。 例:エーテルの入ったフラスコを冷蔵庫に入れておいたところ、エーテルの蒸気に引火し、冷蔵庫の扉が吹き飛んだという事 故が多い。 2 ナトリウム、カリウム、ナトリウムアミド、水素化リチウムアルミニウム等は、空気、あるいは水に触れると発火する。こ の他、ラネーニッケル、還元パラジウム等も空気に触れると発火する。 3 爆発性物質 過酸化物、オゾニド、塩素酸、過塩素酸とその塩および、それらのエステル、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロソアミ ン、アミンオキシド、ニトロ化合物、アミン硝酸塩、亜アミン硝酸塩、ヒドラジン、ジアゾ化合物、アジ化物、雷酸塩、アセ チリドは不安定で、熱や衝撃によって爆発する。ジエチルエーテルやテトラヒドロフランのようなエーテル類は空気と触れて 爆発性の過酸化物を生成しやすいので、還元剤で過酸化物を分解してから蒸留する。(7章-2節-3を参照のこと)。 表1 種別 品 名 性 質 火災予防と消火方法 1 酸 化 性 固 体 塩 素 酸 ナ ト リ ウ 過 塩 素 酸 カ リ ウ 亜 塩 素 酸 ナ ト リ ウ 臭 素 酸 カ リ ウ 過 酸 化 ナ ト リ ウ 過 マ ン ガ ン 酸 カ リ ウ 重 ク ロ ム 酸 ナ ト リ ウ ヨ ウ 素 酸 カ リ ウ 亜 硝 酸 カ リ ウ ト リ ク ロ ロ イ ソ シ ア ヌ ル 次 亜 塩 素 酸 カ ル シ ウ 三 酸 化 ク ロ メ タ 過 ヨ ウ 素 硝 酸 ア ル ミ ニ ウ ペ ル オ キ ソ 二 酸 化 ナ ト リ ウ その他 ム 加熱、摩擦、衝撃により爆発する物がある。 ム (例:過塩素酸ナトリウム) ム 可燃物に混合すると燃焼を促進させ、衝撃により爆発する。 ム (例:塩素酸ナトリウム) ム ム ム ム ム 酸 ム ム 酸 ム ム 2 可 燃 性 固 体 硫 赤 硫 鉄 ア ル 亜 マ グ 固 形 ゴ その他 ン燃 え や す い 固 形 物 質 。 酸化剤との接触を避ける。 ン 硫黄リン、赤リン、硫黄等のように燃焼すると有毒ガスを発生するも 金属粉は水や酸と反応するのでこれらとの接触を避ける。 黄 のがある。 消火には、大量の水、泡消火器、粉末消火器、乾燥砂等を用い 粉 る。 粉 粉 粉 ル り 3 自 然 発 火 性 物 質 及 び 禁 水 性 物 質 A. 自 然 発 火 性 ・ 禁 水 性 物 カ リ ウ ナ ト リ ウ ア ル キ ル ア ル ミ ニ ウ ア ル キ ル リ チ ウ バ リ ウ カ ル シ ウ リ ン 化 カ ル シ ウ 水 素 化 ナ ト リ ウ 水 素 化 リ チ ウ 水 素 化 カ ル シ ウ ト リ ク ロ ロ シ ラ その他 B.禁水性物質 リチウム C.自然発火性物質 黄リン 質 自 然 発 火 性 物 質 は 空 気 中 の 酸 素 と 反 応 し て 自 然 発 火 す る 。 自然発火性・禁水性物質は水と接触させないこと。 ム 禁水性物質は水と接触すると直ちに発火するもの、可燃性ガスを出す 消火には、特性粉末消火器あるいは、乾燥砂を使用する。 ム ものがある。 自然発火性物質は空気と接触させないこと。 ム (例:ナトリウム、カリウム、リン化カルシウム等) 消火には、水、泡消火器を用いる。 ム ム ム ム ム ム ム ン ] 引火性、可燃性のある液体で、その蒸気は空気より重い物が多く、地 炎、花火、高温物体を近づけないこと。 ル 表を漂うため、遠くの火元からも引火しやすく危険である。特にジエ 消火には、泡消火器、粉末消火器、二酸化炭素消火器、ハロゲ 素 チルエーテルや二硫化炭素は引火点が極めて低いため引火には充分注 ン消火器、乾燥砂を用いる。 ド 意すること。 ン 4 引 火 性 液 体 [ A. 引 火 点 が -20 度 以 下 の 液 体 ジ エ チ ル エ ー テ 二 硫 化 炭 ア セ ト ア ル デ ヒ 酸 化 プ ロ ピ レ ペンタン [B.引火点が21度以下の液体] ガソリン 石油ベンジン ヘキサン ベンゼン トルエン アセトン アクリロニトリル アクロレイン エチルアミン [C.アルコール類] メチルアルコール エチルアルコール プロピルアルコール [D.引火点が21度 ~ 70度未満の液体] 灯油 軽油 キシレン ぎ酸 さく酸 [E.引火点が70度以上の液体] 重油 グリセリン ギアー油 [F.植物性油類] なたね油 やし油 ごま油 その他 5 自 己 反 応 性 物 質 過 酸 化 ベ ニ ト ロ セ ピ ク リ ト リ ニ ト ロ ア ゾ ビ ス イ ソ ブ ア ジ 化 ナ 硫 酸 ヒ ド 硝 酸 グ ア その他 ル 酸素の供給がなくても燃焼する。(例:ジイソプロピルペルオキシカ 注水消火、あるいは乾燥砂による。 ス ーボナート、ベンゾイルペルオキシド等) 酸 加熱、摩擦、衝撃により爆発する物(例:ベンゾイルペイルオキシド ン 等)もある。 ル ム ン ン 6 酸 化 性 液 体 過 過 酸 五 フ 硝 その他 化 リ リ ミ ニ 鉛 シ ル ネ ア ム ム ウ コ の ム ー ン ル ゾ イ ロ ー ン ト ル エ チ ロ ニ ト リ ト リ ウ ラ ジ ニ ジ 塩 素 化 ッ ウ 水 化 ヨ 素 ウ 酸 強い酸性を持つ。 水 可燃物と接触させると発熱、発火させることがある。 素 酸 加熱、摩擦、衝撃を避けること。 分解を促進させる物質と接触させないこと。 消火には、大量の水、泡消化器、粉末消火器、乾燥砂等を用い る。 可燃物や分解を促進させる物質との接触を避ける。 消火には、水、泡消火器、乾燥砂等を用いる。 4 爆発性混合物 単独では安定な物質であっても混合すると爆発性を示すものがある。 ⅰ 酸化物と可燃物(例:過塩素酸とジメチルスルホキシド) ⅱ アンモニアと硝酸銀溶液 ⅲ アルカリ金属と四塩化炭素やクロロホルム 5 有毒物質 比較的よく使用し、かつ危険な有毒物質には次のようなものがある。 ⅰ 塩素ガスや硫化水素ガスのような毒性ガス ⅱ シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、水銀のような毒物 ⅲ 水酸化ナトリウム、硝酸、硫酸のような劇物 これらの有毒物質を取扱うときには防毒マスク等を準備する。特に、腐食性ガスのボンベでは、ゲージが腐食され、有毒ガスが 漏れて中毒をおこすことが多い。有毒ガス、あるいは悪臭を発生することが予想される実験では、ドラフトチャンバー内で行うな ど、あらかじめそれらを除去する手段をとること。 ⅳ フッ酸(フッ化水素酸) フッ酸は暴露経路に関わらず体内へ容易に吸収され、体内でカルシウムと速やかに結合し、低カルシウム血症を引きおこし、死 に至ることもある化学薬品である。しかし、低濃度(20%以下)の場合、付着直後は強い症状がでず、数時間から一日以内に初 めて激しい痛みが出るため、手遅れになることがある。フッ酸が皮膚に付着した場合は流水で15分以上皮膚から洗い流し、グル コン酸カルシウムと水溶性ジェルの混合物を塗布し(近くにある場合)、速やかに医師にフッ酸に暴露したことを伝え、必ず受診 すること。特に事前に医療機関にフッ酸の暴露を伝えることは重要で、単なる化学熱傷として処置された場合、重症化することが ある。 2節 化学薬品の廃棄 化学薬品は原則として、流し、ゴミ捨て場、あるいは大気中に捨ててはならない。「京都大学実験廃液・廃棄物の管理及び処理等の 実施に関する要項」に従って処理すること。 1)有機化学薬品 有機化学薬品は原則として回収し、「京都大学有機廃液処理実行委員会」の指示に従って分類、貯蔵する。有機廃液の処理につ いては、理学研究科では外部業者に委託している。詳細については、北部構内事務部 施設安全課安全管理掛 (内線 3693)に問い 合わせる。 2)無機化学薬品 無機化学薬品は「京都大学無機廃液処理装置(KMS)の利用の手引き」に従って分類、貯蔵、または処理する。 7章 化学実験 化学実験を行うときは、必ず保護眼鏡をかけること。実験をしていなくても、実験室内では保護メガネをかけることが望ましい。本 人が実験していなくても、近くで実験していた人のフラスコが爆発し、飛散したガラス片が顔面に突き刺さった事例がある。一人で 実験してはいけない。必要に応じてゴム手袋、防護面、防護スクリーン、防毒マスク、防塵マスクを用いること。化学実験操作法に 関しては、「続 実験を安全に行うために」 (化学同人)を参考にすること。特に注意すべき実験操作について述べる。 1節 加熱 1 加熱する前に、反応装置が密閉系になっていないことを確かめる。(※) 2 ガラス容器を直火で加熱しないこと。 3 加熱は徐々に行うこと。 (※ 学内でもここ3年、毎年1件程度のペースで加熱あるいは化学反応の発熱による爆発事故が起きている。いずれも密閉系で 起きている) 2節 蒸留 1 突沸を防ぐため、沸騰の核となる沸騰石を始めに入れておく。 2 蒸留を中断し、再び加熱を始める前にも新しい沸騰石を入れる。 3 エーテル類を蒸留するときは、ヨウ化カリウム・でんぷん紙で過酸化物が存在していないことを確かめたうえ蒸留する。蒸留 の際には残留物を決して乾固してはならない。 3節 減圧 1 減圧中には反応装置に力や衝撃を加えてはならない。 2 耐圧性のガラス器具を用いること。 3 減圧した反応装置を常圧に戻す時は、装置の温度を室温に下げてから徐々に行う。 4節 加圧 加圧には、金属性耐圧管、オートクレープを用いる。オートクレープの操作には危険が伴うので、専門家の指導を受けること。 1 オートクレープは指定の場所で使用する。 2 オートクレープを開ける時は、常温もしくは低温にしたのち、常圧に戻してから行う。 3 用いる薬品の量は内容積の1/3以下にすること。 8章 ガラス器具 1節 ガラス器具の使用 1 ガラスに傷のあるものをさける。 2 ガラス管、ガラス棒をゴム栓、ゴム管、ビニール管に連結するとき、けがをすることが多い。ガラス管の端にできるだけ近い 部分を持ち、水、アルコール、ワセリン、真空グリース等を塗り、栓の方を回しながら少しずつ押し込む。この時、皮の手袋等 で保護するとよい。 3 デュワー瓶の中に素手を入れないこと。氷やドライアイスを入れるときは瓶に傷を付けないよう注意する。僅かな傷でも爆発 的に破損し、けがをすることがある。 4 ガラス製コックは破損しやすいので、開閉するときは両手で行うこと。 2節 封管および密閉容器の開封 1 試薬の入ったアンプルは内圧がかかっていないことがわかれば、やすりをかけて、アンプルを開ける。 2 アンモニア水の入った容器を開ける時は、冷却しておかないと内容物が噴き出すことがある。 3節 ガラス細工 ガラス細工の技術的なこと、およびガラスの性質については「続 実験を安全に行うために」(化学同人)第2章を参照のこと。 9章 爆発 1節 ガス爆発 水素、都市ガス、LP ガス、ジボラン、アルシン、エーテル類、ガソリン等は空気と混合すると引火によって爆発するので、これら のガスの取扱いは指導者のもとで、換気設備の整った実験室で行うこと。モノシランの取扱いには「特定高圧ガス取扱主任者」の資 格が必要である。 2節 分解爆発性ガス アセチレン、ジアセチレン、モノビニルアセチレン、酸化エチレンは空気や酸素の混合がなくても充分な着火エネルギー(圧力等) があれば分解爆発する。これらのガスの取扱いは危険を伴うので、必ず専門家の指導を受けること。 3節 爆発性物質 爆発性物質については6章-1節-2)-3の爆発性物質を参照のこと。 10章 放射性同位元素、放射線発生装置およびエックス線発生装置 放射性同位元素、放射線発生装置およびエックス線発生装置を取扱う場合には「京都大学放射線障害予防規定」および同施行細則に 基づいて行うことになっており、理学研究科ではこれにあわせて「理学研究科放射線障害予防内規」および「各教室放射性同位元素 等及びエックス線発生装置使用注意」が定められている。使用法を誤れば重大な放射線障害を起こす危険があり、また汚染した場合 には本人のみならず他人や環境にも大きな影響を与える。放射性同位元素や放射線は、人間の五感によっては感知することができず、 微量であってもそれ相応の影響があるものと考えられている。放射性同位元素等の使用に際して、実験者は勿論、周囲の安全の確保 を他の全てに優先し、慎重に使用する必要がある。 1節 一般的注意 1 放射性同位元素等を取扱う場合には、取扱者として必ず登録すること。 放射性同位元素等の取扱者として登録された者(「取扱者証」が交付される)以外は、放射性同位元素等を使用することができ ない。学部学生が実験実習、特別研究等でやむを得ず放射性同位元素等を使用しなければならないときは、あらかじめ関係教 員と相談すること。 2 使用に先立って、必要な教育・訓練を受けること。 関連法令や規則、放射線障害の発生防止、放射線同位元素等の安全取扱技術等の教育・訓練のために、京都大学放射線障害予 防小委員会、放射性同位元素総合センター、理学研究科、関係教室等が開催する講習会等には積極的に参加し、その知識・技 術の習得に努めること。 3 関連法令や規則、安全確保を目的とする取り決めを遵守すること。 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法令、京都大学放射線障害予防規程、理学研究科で定めた内規のほか、本 安全の手引き、各教室や放射性同位元素等使用施設ごとに安全確保を目的に定められた各種取り決めを熟知し、その遵守に努 める。 4 放射性同位元素等の使用に際しては、使用経験の豊富な者の直接指導を受け、所定の健康診断を受診すると共に放射線障害の 防止に努めること。使用することが認められたら、定められた場所・方法で使用し、これ以外の場所・方法で使用してはならな い。使用方法については主任者、副主任者等の指示を受け、これを忠実に守ること。また所定の健康診断(血液検査および眼お よび皮層の検査)を必ず受診すること。実験中はガラスバッチまたはポケットチェンバー等の放射線測定用具を着用して、個人 被曝による線量当量を測定するほか、必要に応じてサーベイメーター等を用いて作業環境の線量当量率を測定する。 5 被曝放射線の量の低減に努めること。 常に被曝しないようにコールドラン等を必ず行って、使用方法・使用手順等の改善に努めること。 6 疑問点等があれば、放射線取扱主任者・エックス線作業主任者および副主任者に尋ねること。 放射性同位元素等による放射線障害の発生を防止することを目的に、法令に基づいて放射線取扱主任者等が任命されている。 使用室等の関係教員を通じて、放射線障害の発生防止に関する指導・助言を得ると共に、主任者および副主任者が行う指示に 従う。 2節 放射性同位元素等を取扱う場合の自己点検 施設の点検のうち、取扱者自身が行う項目の例は次の通りである。ただし、施設の状況に応じて省略してよい項目もある。 1 密封放射性同位元素使用施設(比較的放射能の弱い線源) ⅰ 線源の存在の確認(場所、数)。 ⅱ 線源の近くでの線量当量率の測定値。 ⅲ 密封状態の観察(表面に汚染が生じるような変化がないか)。 ⅳ 表面汚染の有無の測定(スミアテスト) 。 ⅴ 線源表面(機器に装着されている場合は機器表面)に標識(管理区域、放射能マーク等)があるか。 ⅵ 使用の帳簿、保管の帳簿が備えられているか。 ⅶ 同上帳簿への記帳が適切か。 ⅷ 使用室ドア等に標識(放射性同位元素使用室)があるか。 ⅸ 注意事項が掲示されているか。 2 照射施設(密封大線源) ⅰ 照射室内ならびに操作室内における照射中および線源格納中の空間線量当量が正常か。 ⅱ インターロックが正常に作動するか。 ⅲ 非常の際の出入口は正常に開閉可能か。 ⅳ 自動表示装置が正常に作動するか。 ⅴ 標識(照射室入口、施設入口、施設境界)がついているか。 ⅵ 注意事項が掲示されているか。 ⅶ ⅷ 使用の帳簿、保管の帳簿は備えられているか。 同上帳簿への記帳が適切か。 3 非密封放射性同位元素使用施設 ⅰ 使用後の放射性同位元素が長期間放置されていないか。 ⅱ 流しや排水管の下等に水漏れの形跡がないか。 ⅲ フード等、排気の空気の流れが正常か。線香の煙等で空気を引き込んでいることを確認する。 ⅳ 床のビニールシート等、破れている部分がないか。 ⅴ 壁等に亀裂がないか。 ⅵ 実験室入口付近に標識(放射性同位元素使用室)がついているか。 ⅶ 汚染検査室に洗浄器具が備えられているか。 ⅷ 施設入口付近に標識がついているか。 ⅸ 施設入口付近に注意事項が掲示されているか。 ⅹ 使用の帳簿、保管の帳簿、廃棄の帳簿が備えられているか。 xⅰ 同上帳簿への記帳が適切か。 xⅱ 放射性同位元素で汚染した物品を実験室等使用室内に放置していないか。 xⅲ 持ち出し物品の表面における線量当量が所定の値以下であるか。 xⅳ 持ち出し物品の表面汚染密度が所定の値以下であるか。 xⅴ 譲渡、譲受の場合、受入れ施設の能力の確認がなされているか。放射線取扱主任者の承認を得ているか。 xⅵ 譲渡、譲受の場合、その記録記帳、および運搬の記録が適切か。 4 放射線発生装置使用施設 ⅰ インターロックが正常に作動するか。 ⅱ 自動表示装置が正常に作動し、かつ表示ランプ等が断線していないか。 ⅲ 放送設備、室内監視設備が正常に作動するか。 ⅳ 安全スイッチが正常に作動するか。 ⅴ 非常の際の出入口(緊急脱出口等)が正常に開閉可能か。 ⅵ 標識や注意事項が掲示されているか。 ⅶ エリアモニタが作動しているか。またその指示値は運転時・停止時とも通常の値を示しているか。 ⅷ 遮蔽の状況が変化していないか。 ⅸ 放射化されたものの管理がなされているか。 ⅹ 使用の帳簿が備えられているか。 xⅰ 同上帳簿への記帳が適切か。 3節 エックス線発生装置の取扱い エックス線発生装置の使用も、放射性同位元素の場合と同じで、実験実習や特別研究等で必要な場合に限られる。しかも使用に際し ては主任者又は副主任者の指示に従って行動しなければならない。 ここで該当するエックス線装置とは(1)1メガ電子ボルト未満のエックス線を発生する装置で定格管電圧10キロボルト以上のエック ス線装置、(2)定格加速電圧100キロボルト以上の電子顕微鏡のことをいう。 特に、長期にわたる発生装置の使用が必要となった場合には、所定の教育訓練、健康診断を受診し、エックス線装置取扱者として登 録されなければならない。作業に当たっては、各自エックス線用ガラスバッジを必ず着用すること。また、実験の性格上、手の指等 が直射エックス線を受ける恐れがある場合には主任者又は副主任者に相談すること。実験後は所定の記録用紙に必要事項を記入しな ければならない。 また、エックス線発生装置や電子顕微鏡を使用する実験室には、あらかじめそれらの装置が作動状態にあるとき、実測された線量当 量率の空間分布図(マップ)が備えられているので、装置使用に先立ってマップを必ず充分に検討し、種々の工夫や操作によって安 全な実験を計画すること。 4節 エックス線発生装置を取扱う場合の自己点検 ⅰ エックス線発生装置・電子顕微鏡の標識およびエックス線・電子顕微鏡使用室の標識があるか。 ⅱ エックス線装置使用中がわかるようにしてあるか。定格管電圧150キロボルト以上の場合は、自動警報装置があるか。 ⅲ 実験室に使用上および緊急連絡体制の注意事項が掲示されているか。 ⅳ 定格使用時の実測された線量当量率の空間分布図(マップ)の掲示がなされているか。 ⅴ 安全装置が正常に働くか。 ⅵ 遮蔽の状況が変化していないか。 ⅶ 使用状況を変える場合は主任者又は副主任者に相談すること。 ⅷ 出入りおよび使用の記帳が備えられているか。 ⅸ 同上帳簿への記帳が適切か。 注意: (1)放射線による近年の被曝事故はエックス線発生装置に関するものが殆どである。 (2)近年、放射線同位元素の取扱いに関しての事故は殆どないが、洗液の不注意な取扱いや線源が放置されていることが多いので 取扱いを正しくすることが必要である。 11章 レーザー 1節 レーザーによる障害 1)眼障害 レーザー光は、位相の揃った指向性に優れた電磁波であるため、通常の光源からの光に比べ、高いエネルギー密度を持つ。現在、 使用されているレーザーには、100nm 程度の短波長のものから、mm 域に及ぶ長波長のものまであるが、いずれも生体に対する透過力 は低く、レーザー光の人体に与える影響は目または上皮組織に限られる。下記の表1は、過度のレーザー光に露光したときの眼障害 をまとめたものである。眼障害のうち、最も深刻なものは網膜損傷等、眼底に及ぶものであり、400nm から1400nm の波長域の可視光 または近赤外光により誘発される。この波長の光は単に眼球を透過するばかりではなく、水晶体のレンズ作用により集光されるため、 眼底に大きな影響を及ぼす。400nm より短波長の紫外光や1400nm より長波長の赤外光は、殆どのエネルギーが角膜表層に吸収される ため、角膜障害の原因となりうる。 2)皮膚障害 皮層にレーザー光を浴びた場合の障害には、熱反応と非熱反応がある。熱反応はレーザーのエネルギーにより皮膚温度が上昇し、 皮層に発赤や炭化等の反応、すなわち火傷が生じることである。非熱反応は、温度上昇を伴わないもので、紫外線照射による色素 沈着等がこれに含まれる。また、320nm 以下の波長の光は発ガン性を持つと考えられている。 3)その他の障害 レーザー装置には一般に、高圧電源が用いられているので、感電等の電気災害が起こりうる。また、例えばエキシマーレーザーに はレーザー媒質としてハロゲンガスが使用され、色素レーザーには有害な有機物質が色素として用いられている。これらの有害物 質の取扱いにも充分な注意が必要である。 2節 レーザーの危険度 1)危険度による分類 通常の環境のもとで、人体に照射しても有害な影響を与えることが無いレーザー放射レベルの最大値を、最大許容露光量と呼ぶ。 この最大許容露光量を基準にして、個々のレーザーから放出されるレーザー光の危険度が評価され、それに従ってレーザーが1、2、 3、4のクラスに分類される。クラス3は更に3A と3B のサブクラスに分けられる。以下に各クラスを簡単に説明する。[ ]内のワッ ト数は大体の目安であり、厳密にはレーザーの波長や放出持続時間に依存する。 クラス1 : [0.39マイクロワット以下のレーザー] 通常の動作条件では全く危険がない。 [1mW 以下のレーザー] 目に長時間照射すると障害を起こすが、通常は眩しくて0.25秒以内には目を閉じるので、 危険度は低い。 [5mW 以下のレーザー] 直接光を双眼鏡等を用いて集光して目に入れた場合、障害のおそれがある。なお、3A クラ クラス3A : ス以上のレーザーには鍵がつけられており、鍵を抜いた状態では発振できないようになっている。 [0.5W 以下のレーザー] 直接光または鏡面反射光を目に入れた場合、障害につながる。保護眼鏡を使用しなければ クラス3B : ならない。 直接光はもとより、拡散反射光でも人体に障害を与える。また、火災を起こす危険性もある。保護眼鏡を使用しな クラス4 : ければならない。 2)危険度の表示 レーザー装置には、危険度に応じて警告ラベル、説明ラベル、開口ラベル等を貼りつけねばならない。但し、クラス1のレーザー には警告ラベルは不要である。警告ラベル、説明ラベルの例を図1に示す。また、表2に説明ラベルの記載事項をクラス別に列挙す る。 クラス2 : メーカーから新品のレーザーを購入する場合には、通常これらのラベルが付いてくる。 3節 安全確保 1)一般注意事項 レーザーを使用するに当り、次のような注意が必要である。 1 レーザーを使用する前に熟練者から安全教育を受け、レーザーのクラス(危険度)、レーザーの構造(特に光の出口の位置)、 レーザーの使用方法等について、充分に熟知していなければならない。 2 レーザー光の光路は目の高さを避ける。また、腕時計やガラス器具等鏡面反射を起こす物体を、光の近くに持ち込まない。 3 予期せぬ方向にレーザー光が飛ばないように、光路の終端には遮蔽物(不燃物で鏡面反射が起こらないもの)を置く。 4 光学調整は、レーザー光の強度を弱めて行う。また、可能な限り明るい場所で行う。これは、暗所では瞳孔が大きく開くため、 網膜に達する光量が多くなり危険であるからである。 5 クラス3B、4の大出力レーザーを使用する際には、必ずそのレーザーの波長にマッチした保護眼鏡を着用する。保護眼鏡とし ては、目の横や上からレーザー光が入らないように、ゴーグル型のものが望ましい。保護眼鏡には、Optical Density(OD)が2 程度の一部透過型や、OD が10以上の完全吸収型まで種々のものがある。また複数のレーザー光に対応できる保護眼鏡も市販さ れている。しかし保護眼鏡を装着しても、絶対にレーザービームをのぞき込んではいけない。 6 レーザーを使用する際には、警告のための立札等を掲げ、周囲の人に注意を喚起する。 2)不可視光レーザーの取扱い 最近我国で報告されているレーザーによる事故の大部分は、YAG レーザーによる眼障害である。この原因として、YAG レーザーか ら放出される光の波長が1064nm で、すなわち不可視光であることが挙げられる。YAG レーザーは大出力であることが多く、その取 扱いには、3節-1)で述べた一般的な事柄の他に、以下のような注意が必要である。ここでは、エキシマーレーザー等、紫外光レ ーザーの取扱いも併せて述べる。 1 光路の予備的な調整は、弱い可視光を用いて行う。 2 レーザー光照射により燐光を発する試験紙を用いて、不可視レーザー光路を調べることができる。赤外光については、例えば コダック社から IR フォスファーという試験紙が市販されている。紫外光については上質紙(名刺でよい)にレーザー光を当て てみれば、青色の光が発光し、試験紙として用いることができる。 3 高価であるが、赤外または紫外光を可視像に変換するイメージコンバータを内蔵した観察装置が市販されている。 <<参考文献>> 1)大阪大学学生生活委員会編 安全のための手引(実験科学)1993年版 pp.68-78 2)小沢哲磨、保科直美著 新版レーザーハンドブック 第15章(矢島、霜田、稲葉、 難波編、朝倉書店、1989年) その他、メーカーのカタログ 12章 生物(実験動物・微生物) 1節 実験動物の取扱い 理学研究科で研究対象とする実験動物には、種々の野生動物(wild animals)と、人工的に純系化された狭義の実験動物 (laboratory animals)とがある。前者には脊椎動物と無脊椎動物のどれもがなり得るので、それら全てにわたってここで言及する ことは事実上不可能である。共通して言えるのは、取扱う動物の性状を熟知し、飼育者・研究者の安全を期することぐらいである。 それゆえ、ここでは後者についてのみ述べる。なお以下、実験動物と言えば laboratory animals を指すことにする。 実験動物のうち、理学研究科で通常に飼育可能なものは、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、アフリカツメガエル、ショウジョ ウバエ、カイコ等、少数の動物種に限られる。その他の実験動物、たとえばサル、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタ等の飼育には、 それぞれ特有の設備が必要であり、周到な準備がなされなければならない。通常飼育の実験動物については、それらの動物の健康維 持管理には細心の注意を払わなければならないが、取扱い者には、清潔さを保ってさえいれば安全上の問題は特にない。実験動物の 取扱法と注意に関しては、それぞれの動物向けの専門書を参照されたい。 取扱い者の安全に関しては、ラットから感染の可能性のある腎症候性出血熱(HFRS)だけについては、特に述べておきたい。HFRS ウイルスはヒトに強い病原性があり、腎障害を伴う高発熱により、死をもたらすことがある。野鼠の多くは HFRS ウイルスのキャリ アであり、ラット飼育室の周辺の野鼠から直接あるいは間接的にそのウイルスが、実験用ラットに感染する。それゆえ、飼育室周辺 から野鼠を駆除できない場合には、ラットの飼育を避けるのがのぞましい。また、たとえ飼育環境が整備されていたとしてもそこへ 搬入する直前にラットの血液検査が必須である。それには、市販されているラットは、できるだけ信用のある業者から検査直後のも のを購入すること、市販されていない系統のラットを他の研究者から分与される場合には、搬入予定のラットの検査について、医学 部附属動物実験施設に相談することを忘れてはならない。 2節 微生物の取扱い 理学研究科では細菌やウイルスは、ヒトヘの病原性が極めて低いものが、主として分子生物学の対象あるいは技術材料として用いら れ、病原微生物の病原性の研究に真正面から取り組むことは稀である。事故への対処の点から考えると、後者の研究は理学研究科で は避けたほうが賢明である。もしどうしても必要ならば、医学関係者との綿密な連携を保って行うべきである。 とは言え、病原性の皆無な微生物はないと思っておくべきである。それゆえ、使用する微生物の他の実験材料への混入は絶対に避け るべきである。微生物の入っている容器には、微生物名、使用者名、年月日等を明記して保存し、微生物が漏れださないように微生 物専用の保存容器を用意することが必要である。その他の重要なこととしては、実験中に専用の白衣を着用すること、ピペットは絶 対に口で吸わないこと、用いた器具および有菌培地はオートクレープ等で殺菌してから洗浄あるいは廃棄すること、遠心操作では、 遠心管に必ず蓋をすること、実験後の手洗いを励行すること等があげられる。 その他、特別な例として、微生物を用いた遺伝子組み換え実験の場合には、専用の研究施設で行わなければならない。 ヒト血液取扱い上の特別の注意 ヒトの血液を扱う実験は、ウイルス等の感染の危険があるため、必ずゴム又はプラスチック手袋を使用し、充分に注意して扱うこ と。傷があるときには特に注意すること。 使用した容器は5%次亜塩素酸ナトリウム(アンチホルミン)で処理したあと洗浄する。 13章 フィールドワーク フィールドにおける調査や研究には、学内の場合とは異なった種々の危険に遭遇することが多いので、特別の注意を必要とする。 1節 国内でのフィールドワーク 1 あらかじめ実際の行動計画を綿密に作成する。 2 たえず付きまとう危険のため、傷害保険、生命保険等には必ず加入しておく。 3 現今、フィールドワークで最も多発する事故は交通事故である。無理のない計画を立て、慣れない土地での車の運転には特に 注意すること。事故にあったときは、必ず警察に届け出る。 4 調査では、危険な場所に立ち入ったり、危険な行動を余儀なくしなければならなかったりすることもあるので、格段の注意が 必要である。必要に応じてヘルメット等も着用する。また潜水を行う際には、水圧変化に伴う障害等についても熟知し、ボンベ 等潜水器具の取扱いにも注意する。 5 野外地下観測室等は高湿度のため漏電の危険がある。ゴム長靴等絶縁性の高い靴を履くこと。 6 危害を加える動物(毒蛇、スズメバチ、サメ等)については、それらの習性について熟知しておき、事故にあったときの対策 (血清の使用法、病院への移動方法等)も講じておくこと。 7 危急の場合でも救急車を呼べないことがある。従って一応の救急処置は必ず心得ておく。救急医療品も携行する。 8 ラジオ等で絶えず天気予報に注意する。一夜のうちに大洪水等に見舞われることがある。 9 危険な場所や夜の調査では、極力単独行動を避ける。やむを得ず単独行動を行う場合は事前に届け、いつでも連絡が取れるよ うに心がけること。携帯電話やトランシーバーの使用が便利なこともある。 2節 国外でのフィールドワーク 国外でのフィールドワークでは国内での注意以外に、さらに次の事項に留意する必要がある。 1)一般的な安全対策 1 外国では一般にすり、ひったくり、盗難等に遭うことが日本よりも多い。特に夜間の外出や甘い誘いには注意する。都市部で やむを得ず夜に外出するときは、必ず車を使う。 2 ホテルでは就寝前に、火災に備え非常口と脱出方法を確認する。 3 国外でも携帯電話やトランシーバーの使用が可能なこともあるが、日本国内仕様の機材は使用できない。また国によって規制 が異なるので、あらかじめ調査しておくこと。 4 相手国の習慣等を熟知しておくこと。特に写真撮影には注意を要する。国によっては軍事的理由から駅、橋、港湾等の撮影を 禁止している所がある。また、習慣の違いから人物の無断撮影はトラブルを引き起こすことが多い。 5 政治情勢の不安定な国においてはクーデター、反乱等トラブルに巻き込まれないよう注意する。 2)健康の注意 1 食物や虫さされ等から病気にかかることが多い。特に寄生虫、肝炎ウイルス、マラリア、伝染病等に注意する。場合によって は、出国前に必要な予防処置を取ることが望ましい。 2 “flying doctor”制度のある国ではそれを利用する(一種の保険で、数十ドルの年会費を払うと、重病のときに、大都市か ら医師が飛行機で現地まで迎えに来る)。 3 国内の場合よりも多くの救急および基本的医療品を携行する。またウイルス性肝炎、エイズ予防のため、ディスポーザブルの 注射器や注射針を持参すると好都合なこともある。 4 一般に自然環境(温度、湿度等)や住環境(食物、習慣等)の違いからストレスによる疲労が蓄積しやすい。健康管理に充分 注意する。 5 帰国後、時間がたってから発病することもあるので、随時健康診断を受ける。 以上、1)、2)の場合とも、事前に現地の政府機関や商社から充分な情報を収集して対策を立てておくことが望ましい。また、大事 故の場合は現地の日本領事館にも通報する。
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