close

Enter

Log in using OpenID

死刑制度について

embedDownload
2005・春学期・基礎演習2
火曜1限・小川富之
04****・現代社会法学科2年
****
テーマ
「死刑制度について」
理由
死刑に対する考え方が対称的に二つに分かれている、これがこのテーマを選
んだ理由である。廃止すべきか、存置すべきか。それは、とても重要なことで
ある。私は死刑制度を廃止すべきだという側に立って考えている。しかし、死
刑制度の存置を訴える人々の考えにはどのようなものがあるのか、とても興味
がある。死刑制度の存置、廃止それぞれの立場の主張、いずれの立場が有力か
調べてみたい。
日本の裁判所はどのような場合に死刑判決を下してきたのであろうか。ま
た、ここ数年のあいだに何人の犯罪者が死刑判決を受け、それが執行されてい
るのだろう。
中国や他の国々に死刑制度があるのかどうか、それぞれの制度の主旨につい
ても言及し、日本の死刑制度と関連付けてまとめたいと思う。
テーマ「死刑制度について」章立て
第1章
はじめに
第1節
死刑制度の意義
第2節
近年の死刑判決
1,死刑該当罪名一覧
2,司法統計年報
第2章
死刑判決
死刑制度の一般認識
第1節
死刑制度存置論
1,応報、あるいは復讐
2,威嚇力(抑制力・犯罪抑止力、一般予防的観点)を理由とする存置
論
3,社会契約説を理由とする存置論
第2節
死刑制度廃止論
1,人道主義的見地から
2,復讐と刑法
3,死刑による威嚇力(抑制力・犯罪防止力)の不存在を理由とする廃止論
4,社会契約説を理由とする廃止
5,とりかえしにつかない刑罰
第3節
誤判
存置論と廃止論に対する世論の現状
第3章
外国の死刑制度
第1節
死刑制度存置国
中国
1,中国の死刑緩期執行制度
2,死刑猶予制度の問題点
第2節
死刑制度廃止国
フランス
第3節
死刑廃止国(通常犯罪についてのみ死刑廃止を経て)
カナダ
1,死刑廃止までの経緯
2,死刑廃止後の処置
第4節
世界の死刑制度存廃の現状
第4章
おわりに
第1章
はじめに
第1節
死刑制度の意義
死刑は人間の生命を奪いさり、そのすべての存在を未来永劫に消去すること
を目的とする刑罰である。したがって、死刑制度はいつの時代においても、そ
の存在意義が問われてきた。それは「人を殺すな」という規範と対立し、人道
主義と対立した。すなわち、死刑制度は常にこの対立を超えるものであるべき
であるとの運命を背負わされ、その対立を乗りこえて、その存続を強力に維持
しなければならないものであった。
今日、この死刑制度の合理性、正当性が再検討されようとしている。いうま
でもなく、死刑の問題が、人間の生命に直接にかかわりのある重要な問題であ
り、人の世界観につらなる極めて理論的であるとともに実践的な問題であるこ
とは明らかである。
第2節
近年の死刑判決
1,死刑該当罪名一覧
(刑
法)
・内乱罪の首謀者
・外患援助罪
77条1項 ・外患誘致罪
82条 ・現住建造物等放火罪
・激発物破裂罪
81条(絶対死刑)
108条
117条1項 ・現住建造物等侵害罪
・列車転覆致死罪
119条
126条3項 ・往来危険汽車電車転覆破壊罪1
27条
・水道毒物混入致死罪
146条後段 ・殺人罪
199条
・強盗殺人、同致死罪
240条後段 ・強盗強姦致死罪
241条
(特別法)
爆
発物使用 (爆発物取締罰則1条)
l 決闘殺人 (決闘罪に関する件 3 条)
l 航空機墜落致死 (航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する
法律 2 条 3 項)
l 航空機強取等致死 (航空機の強取等の処罰に関する法律 2 条)
l 人質殺害 (人質による強要行為などの処罰に関する法律 4 条)
<例外>
少年法第 51 条
「罪を犯すとき 18 歳に満たない者に対しては、死刑をもって処断すべきとき
は無期刑を科する。無期刑をもって処断すべきときであっても、有期の懲役又
は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、10 年以上 15 年
以下において言い渡す。
」
2,司法統計年報
死刑判決
1999年 2000年 2001年
2002年 2003年
地方裁判所
8人
18人
13人
高等裁判所
3人
4人
21人
最高裁判所 4人
3人
3人
14人
10人
4人
15人
4人
2人
表を見ると、大半の死刑の言い渡しを受けた者が上訴した結果、上訴審で死
刑から軽い刑に変更されたことがわかる。なお、死刑の判決がどの審級で確定
したかをみると、その大半が上告審である最高裁判所で確定しており、死刑と
いう極めて重大な刑が確定するまでには、その大部分が上告審までの審判を受
けていることがわかる。
殺人の罪、強盗致死傷の罪をした者が、ここ最近死刑という有罪判決を通常
第一審事件で受けている。
わが国における死刑は、卑劣な動機に基づき、計画的意思をもって、あるい
は残虐な方法で人を殺害し、大きな社会不安をもたらした凶悪な殺人犯とい
う、ごく限られたものにたいして科せられ、しかも、極めて慎重に言い渡さ
れ、確定され、そして執行されていることがわかる。このことからわが国にお
いては、刑法典に死刑はあっても、死刑が適用されない時代が来ると推論する
学者もある。
第2章
死刑制度の一般認識
第1節
死刑制度存置論
1,応報、あるいは復讐
今日、死刑存置の強力な根拠の一つは、悪に対して悪をもって報いる応報の
感情である。すなわち、犯罪者は死に値するために、死刑に処せられなければ
ならないということである。応報、あるいは復讐という自然の衝動はおそらく
死刑を支持する最も強い動機と考えられる。
2,威嚇力(抑制力・犯罪抑止力、一般予防的観点)を理由とする存置論
人の生命は、ひとたび失われると、これを生き返らせることは不可能である。
そこで、生命の保護のためには、あらかじめ生命を奪うような行為には重い刑
罰、すなわち、死刑を科することで威嚇して、このような行為にでることを防
止しなければならないとするのが、一般的な見解として今日まで主張されてい
る。すなわち、社会の安全のために死刑は必要であるというのである。潜在的
な犯罪者に対して、死刑をもって威嚇しようというのである。
3,社会契約説を理由とする存置論
刑罰の本質から死刑の正当性を近代的な思想で基礎づけたルソー、カントの
主張と同じ立場に立って、死刑の存置を主張されるのが竹中直平博士である。
生命を侵害しないという約束の担保として、死刑を正当化し、「人間は本来利
己的恣意的な行動を為す傾向を有するので、他人からの不侵害の約束と、その
約束の遵守を有効に担保する方法とが提供されない限り、何人も自己の生命や
自由・幸福の安全を確保することができない。ところが、他人からの不侵害の
約束を得るためには、先ず自己の側から凡ての他人の生命や自由・幸福を尊重
し侵害しない旨の約束と、この約束の遵守を有効に担保する方法とを提供せね
ばならない。これが立法者として立ち現れた場合の国民相互の立場であるとい
わねばならない。このような相互の立場を理性的に認識して、各人の可能的最
大の自由と平和共存共栄の条件の確立をする為に、各人の間に取交わされた相
互的不侵害の約束が自然法学者の謂うところの『社会契約』である。
」そして
「この社会契約締結の際に、すなわち、われわれが『立法者としての立場』に
立った場合に、人間に有するあらゆる価値の中、至高至重であると考えられる
『生命』を侵害しないという相互不侵害の約束を有効かつ正義にかなった方法
で担保するには、違約者(殺人犯人)自らそれに相当する価値、すなわち自己
の『生命』を提供すると約束するのが相当であるか、生命よりも価値の低い
『代用物』の提供を約するのが相当であるかという問題が、『立法における死
刑』を存置すべきか廃止すべきかの問題である。この場合に『私はあなたを殺
さないことを一応約束する。しかし私は恣意的にこの約束に違反してあなたを
殺すことがあっても、あなたは予め私を殺さないという約束を与えよ』と要求
するのが死刑廃止論の主張であるといわねばならない。もしこの要求を承認す
る立法が為されたならば、利己的恣意的な殺人犯人の生命は、彼の犠牲となる
適法な人間の生命よりも価値高く評価せられ、より厚く保護する旨を予め法定
したことになるのではなかろうか。このような悪人悪優遇を予約する法は、す
べての人間の生命と人権との平等尊重を理念とする近代法の精神に調和しうる
であろうか。これが廃止論に対する私の根本的な疑念である。」とされる。
第2節
死刑制度廃止論
1,人道主義的見地から
多くの論者が、死刑は野蛮であり残酷であって、人道上許されないことを根
拠として廃止を主張する。死刑は野蛮時代の遺物である。十八世紀後半以降、
人道主義的思想に基づいて、死刑は法の名のもとの殺人であり殺人が許されな
いのと同じく死刑もまた許されない、とする死刑廃止論が強力に展開された。
この廃止論は、キリスト教思想から出発する。人間が人間の生命を絶つという
ことは、それが悪人たる犯罪人の生命であるとしても決して許されるものでは
ない。すなわち神の名において、人間が人間を殺すことが罪悪であるとする考
え方から死刑を否定するものである。このような感覚は、死刑廃止論のもっと
も重要な基礎をなすものである。
2,復讐と刑法
応報、あるいは復讐という自然の衝動はおそらく死刑存置を支持する最も強
い動機と考えられるが、復讐することが望ましいかどうかは、徳目として自身
の見解を正当化することは認められるが、結局は議論では解決できない対立す
る価値の問題である。このような立場の場では、だれが「悪」でだれが「善」
かを簡単に証明することはできない。しかし、復讐が感情的な無意識のうちの
反動であるという限度で、復讐の願望は法制定の主要な主導力となってはなら
ないことは明らかである。合州国最高裁判所のブラック判事は「復讐はもはや
刑法の支配的な目的ではない。犯罪者の矯正と社会復帰が、刑法の分野で重要
な目標になりつつある」と多数意見の中で書いている。
3,死刑による威嚇力(抑制力・犯罪防止力)の不存在を理由とする廃止論
死刑に威嚇力があるのか。死刑は極刑といわれ、たしかに恐ろしい刑であ
る。そのことから死刑を科せられるという恐怖感を介して、死刑に犯罪抑止力
があると一般にひろく、そう信じられているだけではないのか。イタリアのト
マソ・ナタレは死刑廃止の理由として、「死刑は犯罪を防ぐこと、犯罪を根こ
そぎにすること、犯罪をやめるべく人々に恐怖心を起こさすことは不十分であ
るという実際上の理由によって、反対するにすぎない。死刑は他人にとって
は、あたかも芝居のようなものであって、恐怖や悲痛を感ぜさすよりも、好奇
心をそそるところの快楽感を刺戟するに過ぎない。同情深い人は、その刹那に
一時的の衝動を受けることもあろうが、かようなことの多くは、受刑者の親
族、友人、知人の間にみられる現象にほかならない。一歩を譲って、死刑に威
嚇の効果があるとしても、これはただ、眼前の印象を鮮やかにするに止まり、
到底遠き将来に犯すこともあろう悪行を予防するには足らない。」とし、死刑
の威嚇力を疑念している。
4、社会契約説を理由とする廃止
人は社会契約を結ぶとき、生命に対する権利まで主権者に預託してはいない
と提議する。刑罰制度を社会契約に求めた結果、死刑のごときは、そもそも社
会契約の本来的趣旨に反すると主張する者もいる。すなわち、生命は、あらゆ
る人間の利益のなかで最大のものであり、国民が自分の生命をあらかじめ放棄
することは、あり得ないとして、少なくとも国家の正常な状態においては廃止
されるべきと主張している。先ほどの、死刑制度存置論の竹田直平博士の主張
に対して、宮澤浩一博士は「事柄を少し民事法的に考えられすぎているのでは
ないか」とされ「侵害という結果のみを重視することは、故意責任と過失責任
を峻別する現代の責任主義に反しはしないだろうか」と刑罰を単純に等価交換
的にみるものであると批判される。
5,とりかえしのつかない刑罰
誤判
改めていうまでもなく、誤判問題は、死刑存廃論議の中心的な課題である。
とくに、誤判の可能性を理由とした廃止論は、近年の再審、無罪の判決がなさ
れるなかで現実味を帯び、説得力に富むものであるといえよう。裁判も三審制
度を採用するが、人間の行うものである以上は、絶対に誤りを犯さないとは断
言することができない。その場合、他の刑罰ならまだしも、死刑は一度執行さ
れると絶対に回復できないし、それこそとりかえしのつかない不正義となり、
国家自身が罪悪を犯すことになる。しかも、歴史上誤判の事実も少なからず存
在する。また、わが国の再審事件によっても、そのことを知ることができよ
う。免田、財田川、松山、島田の各事件が死刑再審無罪事件としてあげられ
る。
第3節
存置論と廃止論の世論の現状
1, 死刑制度の存廃
死刑制度に関して,「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」,「場合に
よっては死刑もやむを得ない」という意見があるが,どちらの意見に賛成か聞
いたところ,
「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」と答えた者の割合が
6.0%,「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた者の割合が 81.4%と
なっている。なお,「わからない・一概に言えない」と答えた者の割合が
12.5%となっている。
前回の調査結果と比較して見ると,「どんな場合でも死刑は廃止すべきであ
る」(8.8%→6.0%)と答えた者の割合が低下している。
性別に見ると,「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた者の割合は
男性で高くなっている。
年齢別に見ると,「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」と答えた者の
割合は 20 歳代,40 歳代で高くなっている。(図2)
ア
死刑制度を廃止する理由
「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」と答えた者(123 人)に,その
理由を聞いたところ,「生かしておいて罪の償いをさせた方がよい」を挙げた
者の割合が 50.4%,「裁判に誤りがあったとき,死刑にしてしまうと取り返
しがつかない」を挙げた者の割合が 39.0%,「国家であっても人を殺すこと
は許されない」を挙げた者の割合が 35.0%,「死刑を廃止しても,そのため
に凶悪な犯罪が増加するとは思わない」を挙げた者の割合が 31.7%,「人を
殺すことは刑罰であっても人道に反し,野蛮である」を挙げた者の割合が
28.5%,「凶悪な犯罪を犯した者でも,更生の可能性がある」を挙げた者の
割合が 25.2%となっている。(複数回答)
前回の調査結果と比較して見ると,「生かしておいて罪の償いをさせた方が
よい」(38.9%→50.4%)を挙げた者の割合が上昇している。(図3,
)
イ
即時死刑廃止か,いずれ死刑廃止か
「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」と答えた者(123 人)に,死刑
を廃止する場合には,すぐに全面的に廃止するのがよいと思うか,それともだ
んだんに死刑を減らしていって,いずれ廃止する方がよいと思うか聞いたとこ
ろ,「すぐに,全面的に廃止する」と答えた者の割合が 39.8%,「だんだん
死刑を減らしていき,いずれ廃止する」と答えた者の割合が 53.7%となって
いる。
前回の調査結果と比較して見ると,大きな変化は見られない。(図4)
ウ
死刑制度を存置する理由
「場合によっては死刑もやむを得ない」とする者(1,668 人)に,その理由
を聞いたところ,「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」を挙げた者の割合が
54.7%,「死刑を廃止すれば,凶悪な犯罪が増える」を挙げた者の割合が
53.3%,「死刑を廃止すれば,被害を受けた人やその家族の気持ちがおさま
らない」を挙げた者の割合が 50.7%と高く,以下「凶悪な犯罪を犯す人は生
かしておくと,また同じような犯罪を犯す危険がある」(45.0%)の順とな
っている。(複数回答)
前回の調査結果と比較して見ると,「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」
(49.3%→54.7%),「死刑を廃止すれば,凶悪な犯罪が増える」(48.2%
→53.3%)を挙げた者の割合が上昇している。
都市規模別に見ると,
「凶悪な犯罪を犯す人は生かしておくと,また同じよ
うな犯罪を犯す危険がある」を挙げた者の割合は大都市で高くなっている。
性別に見ると,「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」を挙げた者の割合は
男性で高くなっている。
年齢別に見ると,「死刑を廃止すれば,凶悪な犯罪が増える」を挙げた者の
割合は 70 歳以上で,「死刑を廃止すれば,被害を受けた人やその家族の気持
ちがおさまらない」を挙げた者の割合は 50 歳代で,それぞれ高くなってい
る。(図5)
エ
将来も死刑存置か
「場合によっては死刑もやむを得ない」とする者(1,668 人)に,将来も死
刑を廃止しない方がよいと思うか,それとも,状況が変われば,将来的には,
死刑を廃止してもよいと思うか聞いたところ,
「将来も死刑を廃止しない」と
答えた者の割合が 61.7%,「状況が変われば,将来的には,死刑を廃止して
もよい」と答えた者の割合が 31.8%となっている。
前回の調査と比較して見ると,「将来も死刑を廃止しない」(56.5%→
61.7%)と答えた者の割合が上昇し,「状況が変われば,将来的には,死刑
を廃止してもよい」(37.8%→31.8%)と答えた者の割合が低下している。
都市規模別に見ると,大きな差異は見られない。
性別に見ると,「将来も死刑を廃止しない」と答えた者の割合は男性で,
「状況が変われば,将来的には,死刑を廃止してもよい」と答えた者の割合は
女性で,それぞれ高くなっている。
年齢別に見ると,「将来も死刑を廃止しない」と答えた者の割合は 70 歳以
上で,「状況が変われば,将来的には,死刑を廃止してもよい」と答えた者の
割合は 20 歳代,40 歳代で,それぞれ高くなっている。(図6)
2, 死刑の犯罪抑止力
死刑がなくなった場合,凶悪な犯罪が増えるという意見と増えないという意
見があるが,どのように考えるか聞いたところ,「増える」と答えた者の割合
が 60.3%,「増えない」と答えた者の割合が 6.0%,「一概には言えない」と
答えた者の割合が 29.0%となっている。
前回の調査結果と比較して見ると,「増える」(54.4%→60.3%)と答え
た者の割合が上昇し,「増えない」(8.4%→6.0%),「一概には言えな
い」(32.4%→29.0%)と答えた者の割合が低下している。
都市規模別に見ると,
「増えない」と答えた者の割合は中都市で高くなって
いる。
性別に見ると,「増える」と答えた者の割合は男性で高くなっている。
年齢別に見ると,「増える」と答えた者の割合は 70 歳以上で,「一概には
言えない」と答えた者の割合は 30 歳代で,それぞれ高くなっている。
第3章
第1節
外国の死刑制度
死刑制度存置国
中国
1,中国の死刑緩期執行制度
死刑執行猶予制度(死刑緩期執行制度)は、
「死緩」制度と略称されてい
る。この制度は、中国独自のものであり、建国初期に反革命を鎮圧するにあた
り、一九五〇年から翌年にかけての「決定」で採用されたものであり、法制度
として確立されたのは一九八〇年の刑法によってである。反革命勢力を分化さ
せ、国家建設事業に必要な労働力を保持するために、そして、懲罰と寛大さと
を結合させるという社会主義的人道主義の見地から採用されたものであり、犯
罪者に対する燐憫の情に基づくものではないとされている。死刑の執行を少な
くするという政策を堅持し、直ちに処刑する必要のない者に労働改造を実施す
ることによって、新しい人間に生まれ変わる機会を与えようとするものであ
り、犯罪者本人の主体性を重視している。さらに、将来、死刑を廃止するまで
の過渡的な制度として有益であるとも主張されている。法的性質としては死刑
と無期懲役の間にある独立した刑罰ではなく、死刑の一形態と解されている
が、生命刑と自由刑の二つの機能を兼ね備えているということができる。
2,死刑猶予制度の問題点
死刑の執行猶予制度は、死刑の執行を減少させる可能性は有しているが、こ
の制度が存在することによって、安易に死刑判決を言い渡すことにもなりかね
ず、中国の現状が示している通り、その運用の実際をみても死刑廃止へ向かう
過渡的な措置とならない制度と思われる。また、再審にそなえることができる
ことから誤判の防止につながるとも主張されるが、猶予期間中に無実であると
主張して再審の準備をするということ自体が、行状が良くないと評価されない
とも限らない。さらに、猶予期間中死刑が執行されるかどうかわからない状態
に置くことは、受刑者にとって精神的苦痛が大きく、人道的なものとはいえな
い。しかし、だからといって原則的に減刑することになれば、実際は自由刑と
変わらなくなり、この制度の存在意義が問われることになる。
第2節
死刑制度廃止国
フランス
一九八一年五月一〇日に選出された社会党のミッテラン大統領は、選挙公約
にも死刑廃止を掲げ、死刑廃止をミッテラン政権の最優先課題の一つとした。
八月二六日に、閣議で、死刑の廃止とそれに代わる無期刑の制定を定めた法案
が採決された。死刑廃止運動の中心的人物であり、この死刑廃止法案の作成に
尽力したロベール・バタンテール司法大臣は、
「明日、皆様のおかげで、フラ
ンスの正義はもはや人殺しの正義ではなくなるでしょう。明日、皆様のおかげ
で、我々共通の恥辱である、フランスの監獄で、黒い天蓋の下で、明け方にこ
っそり行われる死刑の執行はもうなくなることでしょう。明日、我々の正義の
血塗られた頁は終わりを告げることでしょう。
」と演説した。一部の犯罪に対
する死刑の存置を求めた意義も出されたが、それらは却下され、一九八一年一
〇月九日法律第九〇八号として成立、翌一〇月一〇日に発効し、死刑が全面的
に廃止されることになった。死刑廃止法第一条は「死刑は、廃止する」と規定
し、第三条は「死刑を定めているすべての現行法において、当該犯罪の性質に
したがって、無期懲役または無期禁錮と読みかえるものとされる」と定めてお
り、特別な代替措置は設けられなかった。その結果、廃止前に存在した重罪間
の刑の軽重の差が一定範囲において消滅することになった。「犯罪者であれ、
人を終局的に排外することは許されない」という考え(法案提出理由書)が、
特別の代替刑を設けない大きな理由になったという。
現行法の無期刑は、一定の条件の下で仮釈放を認めており、絶対的無期刑で
はない。死刑廃止法第二条は「本法の実施にあたっては、刑法の一部改正法に
おいて、所要の調整を行うものとされる」と規定しており、代替措置に関して
は、将来の刑法改正の際の検討課題とされたのである。また、被害者保護に関
しては、一九八三年七月八日の法律で制度的保障を強化した。
第3節 死刑制度廃止国(通常犯罪のみ死刑廃止を経て)カナダ
1,死刑廃止までの経緯
一九七六年六月一五日、トゥルード首相は、「不法に他人の生命を奪った者に
は、必ず長期の拘禁刑を科し、かつ彼らに対する仮釈放規定を厳格にして、こ
れらのもの非常に長い期間にわたって一般市民から隔離する一方、殺人に最も
よく使われる銃砲の入手を制限し、さらに犯罪事件の発生を防止し、それを解
決するため、警察力を強化する規定を別に設けるならば、社会はその必要とす
る安全を保障されるであろう。それに引きかえ、死刑がこのような保障を提供
することはない。今や議会が刑法典から死刑を削除するか否かを決定すべきと
きがきたのは、正に上述の理由によるのである。議員はその所属する党の意見
に拘束されることなく、自由に投票することができるが、法案に反対の一票を
投じた議員は、法案が不成立となって絞首刑が執行される場合の個人的責任を
免れることはできない。
」として死刑廃止法案を議会に提出した。議会での白
熱した討論の末、七月、自由投票によって死刑相当犯罪に対する死刑が廃止さ
れ、刑法から死刑を廃止し、極刑相当の謀殺に対する刑は仮釈放なしの二十五
年の絶対的拘束刑にかえられた。一九七六年七月二六日に、国王の裁可が与え
られた。
カナダでは、一九五十年国家防衛法により、軍犯罪につき(その多くは敵に
占領された際に犯す犯罪であるが)死刑が存置されていた。そのいくつかは絶
対的である。死刑は陪審員の全員一致の評決によって科される。国家防衛法
は、再審、上訴および総督諮問委員会が承認したときにのみ処刑を行うと定め
る。しかし、アムネスティ・インターナショナルの最新の情報によれば、一九
九八年に死刑は全面的に廃止された。
2,死刑廃止後の処置
第一級の謀殺については二五年、謀殺以外の第二級殺人については十年の拘
禁刑を定め、第一の殺人犯は十年服役した後に、三人の裁判官からなる委員会
が同人の仮釈放について勧告することができることにした。
死刑に代わる絶対的拘禁刑に服する受刑者が増加するにつれて、刑務所内の
暴力、殺人も増加しているという。一九七六年から八一年の間に、カナダの矯
正施設の殺人数は二倍に増加した。なかでも、最も殺人が増加しているのは、
重警備施設である。
仮釈放なしの二五年の絶対的拘禁刑は、死刑よりも厳しく残酷な刑罰である
と、この刑を科されている受刑者からも主張されている。
死刑が廃止されても、議会では、死刑に関する議論は続いた。一九七七年か
ら一九八七年までの間に、下院では、多くの議員が、死刑復活法案を提出した
り、その問題に関する国民投票を求めたりしたが、成功しなかった。
そして、一九九八年に全面的に死刑は廃止となった。
第4節
世界の死刑制度存廃の現状
1. 死刑廃止国と死刑存置国
世界の半数以上の国が、法律上、または事実上死刑を廃止している。アムネス
ティ・インターナショナルの最新の情報によれば、廃止国、存置国の数は以下
のとおりである。
あらゆる犯罪に対して死刑を廃止している国:84 カ国
通常の犯罪に対してのみ死刑を廃止している国:12 カ国
事実上の死刑廃止国:24 カ国
法律上、事実上の死刑廃止国の合計:120 カ国
存置国:76 カ国
下記は、死刑を全面的に廃止した国、通常犯罪のみ廃止した国、事実上廃止し
た国、存置国、という 4 つの分類における国別のリストである。
最後にあるのは 1976 年以降に死刑を廃止した国のリストである。リストは、
この 10 年間で死刑を法律上廃止した国、または通常の犯罪については廃止し
ていたがすべての犯罪について廃止することになった国が、平均して年に 3 カ
国を超えることを示している。
ア. 全面的に廃止した国
(法律上、いかなる犯罪に対しても死刑を規定していない国)
アンドラ、アンゴラ、アルメニア、オーストラリア、オーストリア、アゼルバ
イジャン、ベルギー、ブータン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、カ
ンボジア、カナダ、カボベルデ、コロンビア、コスタリカ、コートジボアー
ル、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、ジブチ、ドミニカ共
和国、東チモール、エクアドル、エストニア、フィンランド、フランス、グル
ジア、ドイツ、ギリシャ、ギニアビサウ、ハイチ、ホンジュラス、ハンガリ
ー、アイスランド、アイルランド、イタリア、キリバス、リヒテンシュタイ
ン、リトアニア、ルクセンブルク、マケドニア(旧ユーゴスラビア)
、マル
タ、マーシャル諸島、モーリシャス、ミクロネシア(連邦)、モルドバ、モナ
コ、モザンビーク、ナミビア、ネパール、オランダ、ニュージーランド、ニカ
ラグア、ニウエ、ノルウェー、パラウ、パナマ、パラグアイ、ポーランド、ポ
ルトガル、ルーマニア、サモア、サンマリノ、サントメプリンシペ、セネガ
ル、セルビア・モンテネグロ、セーシェル、スロバキア共和国、スロベニア、
ソロモン諸島、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、トル
クメニスタン、ツバル、ウクライナ、英国、ウルグアイ、バヌアツ、バチカン
市国、ベネズエラ
イ. 通常犯罪のみ廃止した国
(軍法下の犯罪や特異な状況における犯罪のような例外的な犯罪にのみ、法律
で死刑を規定している国)
アルバニア、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、クック諸島、エルサ
ルバドル、フィジー、イスラエル、ラトビア、メキシコ、ペルー
ウ. 事実上の廃止国
(殺人のような通常の犯罪に対して死刑制度を存置しているが、過去 10 年間
に執行がなされておらず、死刑執行をしない政策または確立した慣例を持って
いると思われる国。死刑を適用しないという条項のある国際規約等を批准して
いる国も含まれる。)
アルジェリア、ベニン、ブルネイ・ダルサラーム、ブルキナファソ、中央アフ
リカ共和国、コンゴ共和国、ガンビア、グレナダ、ケニア、マダガスカル、モ
ルディブ、マリ、モーリタニア、モロッコ、ビルマ(ミャンマー)、ナウル、
ニジェール、パプアニューギニア、ロシア、スリランカ、スリナム、トーゴ、
トンガ、チュニジア
エ. 存置国
(通常の犯罪に対して死刑を存置している国)
アフガニスタン、アンティグアバーブーダ、バハマ、バーレーン、バングラデ
シュ、バルバドス、ベラルーシ、ベリーズ、ボツワナ、ブルンジ、カメルー
ン、チャド、中国、コモロ、コンゴ民主共和国、キューバ、ドミニカ、エジプ
ト、赤道ギニア、エリトリア、エチオピア、ガボン、ガーナ、グアテマラ、ギ
ニア、ガイアナ、インド、インドネシア、イラン、イラク、ジャマイカ、日
本、ヨルダン、カザフスタン、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国、クウェー
ト、キルギスタン、ラオス、レバノン、レソト、リベリア、リビア、マラウ
ィ、マレーシア、モンゴル、ナイジェリア、オマーン、パキスタン、パレスチ
ナ自治政府、フィリピン、カタール、ルワンダ、セントクリストファーネビ
ス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サウジアラビア、シ
エラレオネ、シンガポール、ソマリア、スーダン、スワジランド、シリア、台
湾、タジキスタン、タンザニア、タイ、トリニダード・トバゴ、ウガンダ、ア
ラブ首長国連邦、米国、ウズベキスタン、ベトナム、イエメン、ザンビア、ジ
ンバブエ
1976 年以降死刑を廃止した国
1976:
ポルトガル(すべての犯罪に対して)
1978:
デンマーク(すべての犯罪に対して)
1979:
ルクセンブルク、ニカラグア、ノルウェー(すべての犯罪に対して)
ブラジル、フィジー、ペルー(通常の犯罪に対して)
1981:
フランス、カボベルデ(すべての犯罪に対して)
1982:
オランダ(すべての犯罪に対して)
1983: キプロス、エルサルバドル(通常の犯罪に対して)
1984: アルゼンチン(通常の犯罪に対して)
1985: オーストラリア(すべての犯罪に対して)
1987:
ハイチ、リヒテンシュタイン、ドイツ民主主義共和国(注 1)(すべ
ての犯罪に対して)
1989:
カンボジア、ニュージーランド、ルーマニア、スロベニア(注 2)
(すべての犯罪に対して)
1990:
アンドラ、クロアチア(注 2)、チェコスロバキア連邦共和国(注
3)、ハンガリー、アイルランド、モザンビーク、ナミビア、サントメプリン
シペ(すべての犯罪に対して)
1992:
アンゴラ、パラグアイ、スイス(すべての犯罪に対して)
1993:
ギニアビサウ、香港(注 4)、セーシェル(すべての犯罪に対して)
ギリシャ(通常の犯罪に対して)
1994:
1995:
イタリア(すべての犯罪に対して)
ジブチ、モーリシャス、モルドバ、スペイン(すべての犯罪に対し
て)
1996: ベルギー(すべての犯罪に対して)
1997:
グルジア、ネパール、ポーランド、南アフリカ(すべての犯罪に対
して)
ボリビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ(通常の犯罪に対して)
1998:
アゼルバイジャン、ブルガリア、カナダ、エストニア、リトアニア、
イギリス(すべての犯罪に対して)
1999:
東チモール、トルクメニスタン、ウクライナ(すべての犯罪に対し
て)
ラトビア(注 5)(通常の犯罪に対して)
2000: コートジボアール、マルタ(すべての犯罪に対して)
アルバニア(注 6)(通常の犯罪に対して)
2001:
ボスニア・ヘルツェゴビナ(注 7)(すべての犯罪に対して)
チリ(通常の犯罪に対して)
2002:
キプロス、ユーゴスラビア(後のセルビア・モンテネグロ)(すべて
の犯罪に対して)
2003:
アルメニア(すべての犯罪に対して)
2004:
ブータン、ギリシャ、サモア、セネガル、トルコ(すべての犯罪に対
して)
注:
(1) 1990 年に、ドイツ民主主義共和国はドイツ連邦共和国(1949 年に死刑
を廃止)に統一された。
(2) スロベニアとクロアチアは両国がまだユーゴスラビア社会主義連邦共
和国であった間に死刑を廃止した。両国は 1991 年に独立した。
(3) 1993 年にチェコスロバキア連邦共和国はふたつの国に分かれ、チェコ
共和国とスロバキアになった。
(4) 1997 年、香港は中国に特別区として返還された。アムネスティ・イン
ターナショナルは、香港はいまでも死刑廃止国であると解している。
(5) 1999 年、ラトビア国会は、平時の犯罪に対する死刑を廃止している欧
州人権条約第 6 議定書を批准することを決議した。
(6) 2000 年、アルバニアは、平時の犯罪に対する死刑を廃止している欧州
人権条約第 6 議定書を批准した。
(7)2001 年、ボスニア・ヘルツェゴビナは、すべての犯罪に対して死刑を廃
止している「市民的および政治的権利に関する国際規約の第 2 選択議定書」を
批准した。
2. 世界的な死刑廃止へ向けての前進
1990 年以来、40 を超える国がすべての犯罪に対する死刑を廃止した。それら
の中には、アフリカ(最近の例ではコートジボアール、セネガル)、南北アメ
リカ(カナダ、パラグアイ)、アジア太平洋地域(ブータン、サモア、トルク
メニスタン)
、そしてヨーロッパおよび南コーカサス(アルメニア、ボスニ
ア・ヘルツェゴビナ、キプロス、ギリシャ、セルビアモンテネグロ、トルコ)
などの国々が含まれる。
3. 死刑再導入の動き
いったん死刑が廃止されると再導入されることはめったにない。1985 年以
来、法律で死刑を廃止した国、または、通常犯罪に対してはそれ以前から廃止
していたが、すべての犯罪に対して廃止した国の数は 50 を超える。同期間
中、死刑を再導入した国は 4 カ国しかない。そのうちのひとつ、ネパールは、
その後、再度死刑を廃止した。フィリピンでは執行を再開したが、その後中断
している。その他の 2 カ国(ガンビア、パプアニューギニア)では執行がな
い。
4. 死刑判決と執行
2004 年中に、25 カ国において少なくとも 3,797 人が処刑され、64 カ国において
少なくとも 7,395 人が死刑の判決を受けた。これらの数字はアムネスティ・イ
ンターナショナルに知らされた事例のみであり、実際の数字は確実にこれを上
回る。
2004 年においては、判明しているすべての執行の 97 パーセントが、中国、イ
ラン、ベトナム、米国で行なわれた。その年の終わりにアムネスティ・インタ
ーナショナルが入手した限られた不十分な記録によると、中国では少なくとも
3,400 人が処刑されたが、実際の数字はこれをはるかに上回ると考えられる。
2004 年 3 月、全国人民代表大会の代表者の一人は、中国は毎年「1 万人近く」
の人々を処刑していると述べた。イランは少なくとも 159 人、ベトナムは少な
くとも 64 人を処刑した。米国では 2003 年の 65 件から減った 59 件の執行があっ
た。
第4章
おわりに
第2章で取り上げた死刑存廃論が、私の最も興味のあった部分であったのだ
が、それぞれをまとめていくと、それぞれの理論の根拠が同一であるというこ
とがわかった。つまり、一つずつ説明していくと、人道主義の立場にある立論
は、感情的側面に立つ議論あって、それが感情的議論である以上、その廃止論
が可能な程度において存置論も可能であるというべきであり、消極的・積極的
の双方の主張はともに成り立ちうるものとなるのである。社会契約説を根拠と
するものも、社会契約を拠りどころにしながらも、それは死刑の存廃のいずれ
にも用いられるもののようである。死刑の犯罪抑止力効果の問題も、死刑存廃
論争の中心となってきわめて重要な論拠とされているが、存廃論の両者とも
に、犯罪抑止効果という共通の基盤の上に立って全く相反する主張を行うので
ある。このような状況で明らかにされる問題は、「誰が正しいか」と「どのよ
うにして答えを得るか」に答えることである。
日本の世論調査を見てみると、廃止論も重要視されているが、やはり存置論
を主張する人々が大多数であった。しかし、世界では少しずつ死刑を廃止する
国が増えてきていることが第3章でわかる。カナダを見てみると、廃止に至る
までに試行錯誤を繰り返したのがわかる。死刑を廃止してからも、死刑存置の
復活案が出ているのである。カナダの場合、最終的には全面的に死刑を廃止に
したのであるのだが。一方、アムネスティ・インターナショナルによると、存
置国は死刑の執行をし続けている。中国のような特殊な死刑制度を存置してい
る国があるのにも注目してほしいところである。
以上の結果から、やはり私は死刑廃止の理論の立場に立っている。きれい事
を言っているわけではない。加害者の人々に生きて罪を償ってほしいからであ
る。死刑というものは、特に復讐の念が強いと私は思う。しかし、死刑が執行
されたところで、この世にいないかもしれない被害者は納得するのか。推測に
しかすぎないが、被害者は加害者が、犯した罪を見つめなおし、過ちに気づ
き、それを一生をもって償い、生命の尊さを感じてほしいのではないかと私は
思う。死刑制度のレポートを作成する以前もそのように思っていた。廃止論、
存置論の両方をまとめたが、その考えは変わらない。現在、日本は死刑存置の
理論の立場に立っている。人々が存置論、廃止論のどちらの立場に立つのかわ
からないが、それぞれの主張に耳をかすべきである。今までと異なる発見がで
きるかもしれないからだ。そのような発見を改めてしなければならないほど、
死刑制度の存廃問題は私たちにとって重要なものである。
参考文献
1、三原
憲三
『死刑存廃論の系譜
(成文堂
2、辻本
義男
第五版』
2003年)
『死刑論』
(丸善プラネット株式会社
1994年)
3,http://www8.cao.go.jp/survey/h16/h16-houseido/2-2.html
4,http://homepage2.nifty.com/shihai/shiryou/facts&figures.html
5,http://www.amnesty.or.jp/6,http://courtdomino2.courts.go.jp/tokei_y.nsf?OpenDatabase
概要
第1章
はじめに
第1節
死刑制度では、死刑の意義をまとめ、その存在意義を見つめなおす。第2節
近年の死刑判決では、死刑該当罪名一覧を表にし、司法統計年報をもとに、最近の死刑判
決数についてまとめた。
第1節
死刑制度の意義
死刑は人間の生命を奪いさり、そのすべての存在を未来永劫に消去することを目的とす
る刑罰である。
第2節
近年の死刑判決
1,死刑該当罪名一覧
刑法、殺人罪
199条など。特別法、決闘殺人 (決闘罪に関する件 3 条)など。例
外、少年法51条。
2,司法統計年報
死刑判決
大半の死刑の言い渡しを受けた者が上訴した結果、上訴審で死刑から軽い刑に変更され
たことがわかる。
第2章
死刑制度の一般認識
第1節、第2節とも様々な学説をとりあげて、両理論の根拠を同じとするものも、その差
異をわかるようにまとめた。第3節
存置論と廃止論に対する世論の現状では、世論調査
報告書平成 16 年 12 月 基本的法制度に関する世論調査内閣府大臣官房政府広報室をもと
に、世論が死刑存廃問題に対していずれが有力か、またその理由について示す。
第1節
死刑制度存置論
1,応報、あるいは復讐
今日、死刑存置の強力な根拠の一つは、悪に対して悪をもって報いる応報の感情である。
2,威嚇力(抑制力・犯罪抑止力、一般予防的観点)を理由とする存置論
生命の保護のためには、あらかじめ生命を奪うような行為には重い刑罰、すなわち、死
刑を科することで威嚇して、このような行為にでることを防止しなければならない。
3,社会契約説を理由とする存置論
刑罰の本質から死刑の正当性を近代的な思想で基礎づけたルソー、カントの主張と同じ立
場に立って、死刑の存置を主張されるのが竹中直平博士である。竹中博士の主張をとりあ
げる。
第2節
死刑制度廃止論
1,人道主義的見地から
多くの論者が、死刑は野蛮であり残酷であって、人道上許されないことを根拠として廃止
を主張する。死刑は野蛮時代の遺物である。
2,復讐と刑法
復讐が感情的な無意識のうちの反動であるという限度で、復讐の願望は法制定の主要な主
導力となってはならないことは明らかである。
3,死刑による威嚇力(抑制力・犯罪防止力)の不存在を理由とする廃止論
死刑に威嚇力があるのか。死刑を科せられるという恐怖感を介して、死刑に犯罪抑止力が
あると一般にひろく、そう信じられているだけではないのか。
4,社会契約説を理由とする廃止
人は社会契約を結ぶとき、生命に対する権利まで主権者に預託してはいないと提議する。
刑罰制度を社会契約に求めた結果、死刑のごときは、そもそも社会契約の本来的趣旨に反
すると主張する者もいる。
5,とりかえしにつかない刑罰
誤判
改めていうまでもなく、誤判問題は、死刑存廃論議の中心的な課題である。とくに、誤判
の可能性を理由とした廃止論は、近年の再審、無罪の判決がなされるなかで現実味を帯
び、説得力に富むものであるといえよう。
第3節
存置論と廃止論に対する世論の現状
死刑制度に関して,「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」,「場合によっては死刑
もやむを得ない」という意見があるが,どちらの意見に賛成か聞いたところ,「どんな場
合でも死刑は廃止すべきである」と答えた者の割合が 6.0%,「場合によっては死刑もや
むを得ない」と答えた者の割合が 81.4%となっている。なお,「わからない・一概に言え
ない」と答えた者の割合が 12.5%となっている。
第3章
外国の死刑制度
第1節
死刑制度存置国では、日本と同じ存置国だが特殊な死刑制度、死刑緩期執行制度
を設けている中国をとりあげる。
一方第2節
死刑制度廃止国ではフランス、第3節
死刑制度廃止国(通常
犯罪のみ死刑廃止を経て)では、カナダをとりあげ、どのように死刑制度廃止に至った
か、また死刑制度を廃止にしてどのように国家は変わったかまとめた。
第4節
世界の死刑制度存廃の現状では、アムネスティ・インターナショナルの統計を
もとにした。
第1節
死刑制度存置国
中国
1,中国の死刑緩期執行制度
死刑の執行を少なくするという政策を堅持し、直ちに処刑する必要のない者に労働改造を
実施することによって、新しい人間に生まれ変わる機会を与えようとするものであり、犯
罪者本人の主体性を重視している制度。
2,死刑猶予制度の問題点
猶予期間中死刑が執行されるかどうかわからない状態に置くことは、受刑者にとって精
神的苦痛が大きく、人道的なものとはいえない。
第2節
死刑制度廃止国
フランス
死刑廃止法第一条は「死刑は、廃止する」と規定し、第三条は「死刑を定めているすべ
ての現行法において、当該犯罪の性質にしたがって、無期懲役または無期禁錮と読みかえ
るものとされる」と定めており、特別な代替措置は設けられなかった。
第3節
死刑制度廃止国(通常犯罪のみ死刑廃止を経て)カナダ
1,死刑廃止までの経緯
議会での白熱した討論の末、一九七六年七月、自由投票によって死刑相当犯罪に対する死
刑が廃止され、刑法から死刑を廃止し、極刑相当の謀殺に対する刑は仮釈放なしの二十五
年の絶対的拘束刑にかえられた。
2,死刑廃止後の処置
死刑が廃止されても、議会では、死刑に関する議論は続いた。一九七七年から一九八七年
までの間に、下院では、多くの議員が、死刑復活法案を提出したり、その問題に関する国
民投票を求めたりしたが、成功しなかった。
そして、一九九八年に全面的に死刑は廃止となった。
第4節
世界の死刑制度存廃の現状
あらゆる犯罪に対して死刑を廃止している国:84 カ国
通常の犯罪に対してのみ死刑を廃止している国:12 カ国
事実上の死刑廃止国:24 カ国
法律上、事実上の死刑廃止国の合計:120 カ国
存置国:76 カ国
第4章
おわりに
現在、日本は死刑存置の理論の立場に立っている。人々が存置論、廃止論のどちらの立
場に立つのかわからないが、それぞれの主張に耳をかすべきである。今までと異なる発見
ができるかもしれないからだ。そのような発見を改めてしなければならないほど、死刑制
度の存廃問題は私たちにとって重要なものである。
Author
Document
Category
Uncategorized
Views
1
File Size
89 KB
Tags
1/--pages
Report inappropriate content