日本史・採点基準

日本史・採点基準
◆添削記号◆
東大本番レベル模試・日本史の採点では,次のような添削記号を用いています。
1.<□□□□>
加点ポイント
2.R1/R2
論理構成点
3.□□□□×
事実(史実)に誤認あり
4.□□□□?
文意不明
∨
5.□□ □□
論理に飛躍あり
6.「□□□□」
この部分不要/問題の要求とズレあり
✔
7.□□ □□
誤字あり/脱字あり(略字を含む)
◆共通の基準◆
1.★太字・アミカケ☐☐は各3点,☆二重線□□は各2点,✧下線□□は各1点。ただし,採点に際
しては常に前後の文脈に留意する。
2.表現が不十分な場合,あるいはあいまいな場合,その箇所については,それぞれの配点未満の得点
とする。
(★太字・アミカケ☐☐→2点,二重線□□→1点,下線□□→0点)
3.歴史的名辞*についての誤字・当て字(漢字で記すべき語句の平仮名使用を含む)は,それが加点ポ
イントに直接関係する場合,1点減点。同一語句がくりかえし誤っている場合は,それぞれを減点
の対象とするのではなく,まとめて1点減点とする。その他の部分に誤字・当て字があった場合,
今回は減点しない。
4.設問記号を明記していなかったり,欄外に設問記号を記したりした答案や,句読点のはみだしなど
字数がわずかに超過している答案。
本番では,問題冊子「注意事項」から判断すると無効答案になる可能性もある。しかし今回は,受
験生の学力を正確に測定するという観点から,あまりにも明白に指定条件を無視している場合を除
き,その部分について注意を与えた上で,採点の対象とする。
5.✍論理構成点(R)のおおよその基準は,優れた論理展開がなされている→2点,問題の要求に
応じた論理が用いられている→1点,論理展開に難がある→0点。
6.各問とも満点(各 15 点)を超える得点は与えない。
~1~
◆設問別基準◆
第1問 文字文化の広がり(基準の合計 19 点→ 15 点満点 )
*地方官人層と民衆
★〔7 世紀後半=文章(1)〕
(
「徳島県……官人が手習いのために書き写した」→)地方官人(層)
に文字(文化)普及
……… 3点以内
※地方官人を意味する表現が用いられていれば,3点与える。
※文章(1)「官人」がそのまま用いられている場合は,2点のみ与える。
★〔律令制下①=文章(2)〕
(
「郡司の子弟を対象とする学校」→)文字(文化)に習熟した地方官
人(郡司層)を再生産
……… 3点以内
✧〔再生産のための機関=文章(2)〕
(
「郡司の子弟を対象とする学校」→)国学*(が設置された)
……… 1点以内
★〔律令制下②=文章(3)〕
(
「戸の代表者が文書を作成して提出する」原則→戸籍などの作成にあ
たって)民衆(公民・農民・庶民・人々)にも文書提出を義務づけた/(庶民レベルにまで)
文書主義(文書行政)の徹底(を図った)
……… 3点以内
☆〔律令制下③=文章(3)・(4)〕
(
「実際には……地方の官人たちが作成」
「木簡の作成や記入をおこ
なったのも地方の官人」→戸籍・計帳・木簡など現実には)地方官人(郡司層)が作成
……… 2点以内
★〔律令制下④(②・③の統合)=文章(3)・(4)〕
(律令制下において)民衆(公民・農民・庶民・
人々)に文字(文化)は浸透せず/(庶民の)識字率は高まらず
……… 3点以内
☆〔9 世紀=文章(5)〕
(
「郡司が立て札の内容を人びとに口頭で伝達」→9 世紀になっても)民衆
(公民・農民・庶民・人々)に文字(文化)が浸透しない状況が継続/(庶民の)識字率が向
上しない状況が継続
……… 2点以内
✍ 論理構成点(R)のポイント
☆文字文化の普及(地方官人層・支配層)とその限界(民衆・被支配層)がつかめているか
……… 2点以内
~2~
第2問 治承・寿永の乱と承久の乱(基準の合計 17 点→ 15 点満点 )
A 東国兵士が佐竹氏との戦闘を望んだ理由(基準の合計 8 点→ 6点満点 )
*メリットとデメリット
☆〔源氏の状況=文章(1)〕
(
「石橋山の戦い」で敗北→平氏との戦闘は)敗北の危険が伴う(確実
に勝利できるとは限らない)/(
「源氏は,昔は主であったが今は敵である」→源氏が形成した
……… 2点以内
主従関係は)不安定
★〔東国武士の意向=文章(1)・(2)〕
(
「今は平氏の御恩をうけている」
「所領を没収して東国武士た
ちに分与」→東国武士は)新恩給与*(新しい所領・所領の拡大)を望んだ ……… 3点以内
※「東国支配の強化を図った」などと記している場合は,1点のみ与える。
★〔地理的な条件=文章(2)〕
(
「平氏軍を追って一気に京都まで進軍しようとしたが」→)平氏*
の基盤は遠隔地(西国*)/(
「常陸国に出撃」→佐竹氏との戦闘は)東国*での(直接的な)勝
利(所領獲得)が想定しやすい
……… 3点以内
B 後鳥羽上皇が想定した事態(基準の合計 8 点→ 6点満点 )
*承久の乱直前
☆〔
「当時の鎌倉幕府の状況」①=文章(3)〕
(
「今の鎌倉には自分の主として仰ぎたい人はいない」
……… 2点以内
→)源氏*将軍(源氏*の正統)断絶
☆〔
「当時の鎌倉幕府の状況」②=文章(3)〕
(
「幕府を好き勝手に支配」→)北条氏*台頭/北条氏*,
有力御家人*を排斥(打倒)
……… 2点以内
※「北条氏が有力武士を排斥した」などと記している場合は,1点のみ与える。
☆〔想定➊=文章(3)〕
(
「三浦義村も……味方につくだろう」→上皇側は)御家人*の不満が高まっ
ている(幕府が弱体化している)と想定
……… 2点以内
※「武士の不満が高まった」などと記している場合は,1点のみ与える。
☆〔想定 ➋=文章(3)〕
(
「全国の守護・地頭に対して」→上皇側は)御家人*が寝返る(味方につく・
幕府を裏切る)事態を想定
……… 2点以内
※「武士が寝返る事態を想定した」などと記している場合は,1点のみ与える。
C 北条政子の演説(基準の合計 3 点→ 3点満点 )
*想起させたこと
★〔人から制度へ〕
(
「故右大将軍朝敵を征罰し,関東を草創してより以降,官位と云ひ俸禄と云
ひ,其の恩既に山岳よりも高く,溟渤よりも深し。報謝の志浅からんや」→政子は)頼朝*が給
与した御恩*(恩賞)の大きさ(を思い起こさせた)
……… 3点以内
※「かつての御家人の地位の低さを思い起こさせた」などと記している場合は,1点のみ与える。
✍ 論理構成点(R)のポイント
☆C 歴史書『吾妻鏡』の記述(北条政子の演説)をふまえた内容になっているか
……… 2点以内
~3~
第3問 近世に成立した農村のあり方(基準の合計 22 点→ 15 点満点 )
*中世の惣村
☆〔特徴①=文章(1)〕
(
「寄合で定めた掟によって村の秩序が維持され,宮座を中心に村の祭祀や
……… 2点以内
年中行事などがおこなわれた」→地縁的)自治組織(共同体的結合)
☆〔特徴②=文章(1)〕
(
「村が処罰をおこなった」→)司法・警察的機能を保持/地下検断*(自検
断*)を実施
……… 2点以内
☆〔特徴③=文章(2)〕
(
「種々の武器を所有する」→)実力行使に及んだ/武力(軍事力)を保持
/外部勢力の介入の排除(支配に対する抵抗)を試みた/一揆の母体に/自立性が強かった
……… 2点以内
☆〔特徴④〕
(潅漑用水や惣有地などを)共同管理した/地下請*(村請*・百姓請*)を実現した
……… 2点以内
*近世の農村
✧〔前提=文章(3)〕
(
「豊臣政権や幕藩体制」
「検地」→)兵農分離*実現
……… 1点以内
☆〔共通点〕自治的(共同体的)性格は継承
……… 2点以内
☆〔相違点①=文章(3)〕
(
「検地」→幕藩体制下の農村は)統一的に把握された/石高が明示され
た/検地帳に(支配に必要な情報が)記載された
……… 2点以内
☆〔相違点②=文章(3)〕
(
「検地」→幕藩体制下の農村では)村請制*(で年貢・諸役が徴収された)
……… 2点以内
☆〔相違点③=文章(3)〕
(
「村の境界を確定する村切り」
「法令を伝達」→幕藩体制下の農村は)行
政単位とされた
……… 2点以内
☆〔相違点④=文章(3)〕
(
「連帯責任をとらせる制度を浸透させた」+刀狩など→幕藩体制下の農
村は)抵抗の母体としての(武力行使できる)力を弱めた/支配の末端に位置づけられた
……… 2点以内
✧〔相違点④の具体例=文章(3)〕
(
「連帯責任をとらせる制度」→幕藩体制下の農村では)五人組*
(が形成された)
……… 1点以内
✍ 論理構成点(R)のポイント
☆「比較」
(共通点と相違点・継承と変化)の視点を明確に示せているか
~4~
……… 2点以内
第4問 尾崎行雄の議会演説(基準の合計 17 点→ 15 点満点 )
A 下線部①の意味(基準の合計 14 点→ 10 点満点 )
*政変の開始
✧〔時期〕1912 年(末)/大正元年(初年)
☆〔
「前内閣」
〕
(第 2 次)西園寺(公望)内閣*
☆〔
「倒閣を生じさせた争点」①〕行財政整理か軍備拡張か
……… 1点以内
……… 2点以内
……… 2点以内
☆〔
「倒閣を生じさせた争点」②〕2 個師団*増設(増師)問題/(内閣→)2 個師団*増設を認め
ず
……… 2点以内
☆〔「不法なる手段,陰険なる方法」➊〕
(上原勇作)陸相(陸軍大臣)が天皇に(単独で)辞表
を提出/陸相(陸軍大臣)辞任
……… 2点以内
✧〔上原陸相の行動の意味〕
(陸相単独辞任→)帷幄上奏権*の乱用
……… 1点以内
☆〔「不法なる手段,陰険なる方法」➋〕陸軍(省)
,
(後任)陸相を推薦せず(出さず)
……… 2点以内
☆〔陸軍省の行動の意味〕
(陸相推薦拒否→)軍部大臣現役武官制*(により陸相を補充できず内
閣総辞職)
……… 2点以内
B 下線部③「内閣総理大臣」の意図〔基準の合計 8 点→ 5点満点 )
*3度目の組閣
☆〔
「下線部②の事態」
〕
(第一次)護憲(憲政擁護)運動*
……… 2点以内
☆〔
「内閣総理大臣」
〕桂(太郎*)
……… 2点以内
☆〔
「然る後政党の組織に着手」した意図 ➊
〕
(桂→)内閣のもつ(非立憲的・閥族的・山県閥的・
非政党内閣的)性格を変えようとした/(桂→)政党内閣の体裁をとろうとした
……… 2点以内
☆〔
「然る後政党の組織に着手」した意図 ➋〕
(内閣の性格を変えることで)
護憲運動*に対抗しよ
うとした(護憲運動*を鎮めようとした・批判をかわそうとした)
……… 2点以内
※「(内閣の性格を変えることで)政権(議会運営)の安定を試みた」などと記している場合は,
1点のみ与える。
✍ 論理構成点(R)のポイント
☆A・B 下線部にそって忠実な思考を重ねているか(A→「不法なる手段,陰険なる方法」の意
味,B→「内閣総理大臣の地位に立つて,然る後政党の組織に着手すると云ふが如き」の意図)
……… 2点以内
~5~