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第28回「健康な町づくり」シンポジウム
□開
期日
平成23年8月25日(木)
会場
日本教育会館「一ツ橋ホール」
会
主催者挨拶
国民健康保険中央会理事長
柴田雅人
皆さん、おはようございます。国保中央会の理事長の柴田でございます。
開会のご挨拶に入る前に、このたびの東日本大震災によりまして被災された皆様方には
心からお見舞いを申し上げたいと思います。そして、被災地での一刻も早い復興をお祈り
申し上げたいと思います。
本日ここに第 28 回「健康な町づくり」シンポジウムを開催いたしましたところ、全国
各地からこのように多数の方々のご参集をいただき、まことにうれしく思いますとともに、
関係各位に厚く御礼を申し上げる次第でございます。
また、皆様方におかれましては、国民健康保険事業の運営あるいは地域住民の方々の健
康づくりということに日ごろから大変なご尽力・ご苦労をいただいておりまして、心から
敬意を表する次第でございます。
今回 28 回目となりますこのシンポジウムでありますけれども、その原点は、地域住民
が住みなれた場所で健康で安心して暮らしていける町づくりを目指すということでありま
した。この「健康な町づくり」を進めるためには、保健師さんあるいは行政の担当者はも
ちろんでありますけれども、医師、看護師、専門職、こういう方々の頑張りだけで何とか
なるというものではないと思います。地域が持っている力を引き出す、そして関係者が協
力して地域づくりに取り組むということが大切ではないかと思っております。そのために
は、地域にはいろいろな社会資源がございます。そういう社会資源を生かしたり、それか
ら、ともすれば健康関係の組織というものに目がいきがちでありますけれども、それ以外
でも、防犯・防災活動とか、あるいは福祉活動を通じて、人のつながりというのが地域に
はいろいろな形でできております。こういうものを生かしていくことにもっと力を入れて
いってもいいのではないかと思っております。このような意味で、きょう午前中の座談会
では、岐阜県の大垣市社協の事務局長さんや青森県薬剤師会の木村会長にご参加いただい
ております。そういう意味でまたきょうはお聞き取りをいただければ、また活発なご意見
をいただければと思います。そういう取り組みの中で、国保の医療費についてもいい影響
が出てくるのではないかと思っております。
それから、私ども国保中央会といたしましても、いろいろな形で各市町村の取り組みを
応援したいと思っております。このような本日の行事もその一環ではございますけれども、
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今、国保連合会は、いろいろな特定健診、それから医療、それから介護のデータを保有し
ております。これを有効活用する。そして、地域で取り組むべき課題は何かという、その
課題を把握して、その取り組みの効果を図るということを通じて、根拠に基づいた医療・
保健・介護の展開というものをお手伝いできたらなと思っております。
それからもう一つ、各地ではいろいろなすばらしい取り組みがございます。すばらしい
というときに、何がすばらしいのかということを客観化していく必要があるのではないか
と思っております。そういう意味で、着目すべき点を明らかにするということと同時に、
今までは事例集というのは頭から見ないとなかなか中身がわからないということでありま
すけれども、各事例にこのような着目すべき点というものをインデックスとしてつけると
いうことで皆様方の検索を容易にするといったことも考えていきたいと思っております。
何が着目すべき点なのかということを明らかにする。これは、いろいろ議論することによ
ってよりいい形になっていくと思いますけれども、そういう面から質の面での評価方法の
確立にも将来的にはつながるのではないかと思っております。
きょうのシンポジウムでは、午前中は、医事評論家の水野肇先生の司会のもとに、「地
域の健康づくりの推進と連携~保健師、医師等関係者の連携~」と題しまして座談会を行
います。また、午後は、医事評論家の行天良雄先生の司会のもとに、「これからの健康な
町づくり~健康・長寿
暮らしやすい町づくりをめざして~」と題しまして、日ごろから
保険者として積極的に保健活動を展開しておられます自治体から、保健事業のいろいろな
実情というものをお話しいただこうと思っております。水野先生あるいは行天先生、お二
方とも、このシンポジウムが始まったころからずっと私ども国保中央会を見守っていただ
いている先生でございますけれども、きょうも引き続きこのお二方にお願いしております。
会場からのご発言も遠慮なくいただきたいと思います。そして、せっかく皆さんにご参
集いただきましたので、実りあるシンポジウムになりますことを期待しております。
本日は、皆様方、この天気の悪い中をお集まりいただきましたけれども、これからの保
健事業にとって大いに役立つということを祈念いたしまして、私の挨拶とさせていただき
ます。
ありがとうございました。(拍手)
来賓挨拶
厚生労働省保険局国民健康保険課長
濱谷浩樹
皆さん、おはようございます。ただいまご紹介いただきました、7月 29 日付で国民健
康保険課長を拝命いたしました濱谷浩樹と申します。よろしくお願い申し上げます。
まず、今回の東日本大震災で被災された方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、
被災の復興に関する皆様方のご尽力に対しまして、心から敬意を表したいと存じます。
第 28 回「健康な町づくり」シンポジウムの開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上
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げます。
本日お集まりの皆様方におかれましては、日ごろから国民健康保険事業の円滑な運営と
地域住民の健康保持・増進に対しまして格別のご尽力を賜り、厚く御礼申し上げます。
ことしは、国民皆保険 50 周年の記念すべき年であります。我が国は、国民皆保険のも
と、関係者のご尽力によりまして、だれもが安心して医療を受けることができる医療保険
制度を実現してまいりました。一方で、近年では急速な少子高齢化の進展、経済の低迷、
国民生活や意識の変化など、医療を取り巻く環境は大きく変化いたしており、さまざまな
改革がご案内のとおり検討されている状況でございます。
まず、社会保障改革の現状でございますけれども、昨年末に、高齢者医療制度に関し、
高齢者医療制度改革会議の取りまとめが行われております。その中では新たな高齢者医療
制度や市町村国保の広域化のあり方について提言がなされているわけでございますけれど
も、この点に関しましては関係者からさまざまなご意見があり、引き続き関係者と調整を
行っている状況でございます。
そういった問題とも関連いたしますけれども、本年2月から、厚生労働省、知事会、市
長会、町村会から構成されます国民健康保険制度の基盤強化のための国と地方の協議の場
を開催いたしまして、国保のさまざまな構造的な問題を中心に議論を行っているところで
ございます。また、ご案内のとおり、政府におきましては、この6月 30 日に社会保障と
税の一体改革の成案が取りまとめられております。この中で、医療・介護における改革の
方向性といたしまして、第1点といたしまして、地域の実情に応じたサービスの提供体制
の効率化・重点化、それから機能強化を図る観点から、病院・病床の機能分化と連携、地
域包括ケアシステムの構築、マンパワーの増強、ICT活用による重複受診・重複検査等
の削減、介護予防・重症化予防といったこと、第2点目といたしまして、保険者機能の強
化を通じて、医療・介護保険制度のセーフティネット機能の強化・給付の観点から、国保
の財政基盤の安定化・強化・広域化、高度・長期医療への対応、定額負担の導入といった、
サービスの提供体制と保険制度の安定化といった両面から取り組んでいくことが内容に盛
り込まれております。
また、医療費適正化、特定健診・保健指導の関係でございますけれども、特定健診・保
健指導につきましては、開始から4年目を迎えております。その進捗状況につきましては、
第1期の医療費適正化計画の進捗状況といたしまして、中間評価を公表いたしております。
特定健診の受診率、保健指導の実施率については、まだまだ課題がある状況でございまし
て、4月には保険者による健診・保健指導等に関する検討会を設置いたしまして、健診項
目、それから保健指導の方法、インセンティブ付与のあり方など、円滑な実施に向けた検
討を再開いたしております。検討結果につきましては、平成 25 年以降の第2期の医療費
適正化計画に反映させていく方針となっております。
このように、社会保障、それから国民健康保険を取り巻くさまざまな改革が検討されて
いる状況でございますけれども、こういった中で、国民健康保険につきましては、これま
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で半世紀にわたりまして地域に密着し住民健康づくりを担ってきた実績がございます。こ
うした経験を生かし、それぞれの地域の特性を踏まえた創意工夫による健康な町づくりの
取り組みにつきましては、今後ますます重要性が高まるものと考えておりまして、国とし
ても支援してまいりたいと考えております。市町村の皆様方におかれましては、保健事業
につきまして、地域における健康づくりの取り組みのさらなる推進に向けまして、これま
でどおり積極的に取り組んでいただきたいと考えております。
本日は、都道府県・市町村における保健事業や健康づくりを担う皆様方が一堂に会され、
地域の健康づくりの推進と連携に関する座談会、健康な町づくりに積極的に取り組んでお
られます市町村からの発表が行われると伺っております。本日のシンポジウムが今後の地
域における健康づくりに広く生かされることを大いに期待いたしているところでございま
す。
最後になりましたけれども、本日ご参集の皆様方のご健勝、ご活躍と、国民健康保険事
業のますますのご発展を祈念いたしまして、私の挨拶とさせていただきます。
本日はどうもありがとうございます。(拍手)
□座談会
「地域の健康づくりの推進と連携
~保健師、医師等関係者の連携~」
司会者
医事評論家
水野
肇
氏
伊藤
雅治
氏
高知県安芸市市民課健康ふれあい係長
国藤美紀子
氏
熊本県和水町税務住民課国保年金係長
前渕
康彦
氏
岐阜県大垣市社会福祉協議会事務局長
早崎
正人
氏
青森県薬剤師会会長
木村
隆次
氏
宮城県涌谷町町民医療福祉センター長
青沼
孝徳
氏
助言者
全国社会保険協会連合会理事長
発言者
【水野】
ご紹介いただきました水野でございます。毎年同じ顔が出てきて、あまり映え
ないのですが、僕は、ことしはたった一つ救いがあると思いますのは、あの倒れかかる、
今にも地震が来たら危ないという気持ちで司会をしておりました建物とは全く違いまして、
これは少々の地震が来ても大丈夫だというところなので、きょうは新鮮な気分で出させて
いただきました。
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それでは、要らないことを言う前に、ご出席の方々をご紹介いたします。ご紹介順は発
言順でございますので、まず私のほうから言うと左隣、皆さんから言うと右隣に、高知県
安芸市市民課健康ふれあい係長、保健師さんですが、国藤美紀子さんでございます。(拍
手)
それからそのお隣が、熊本県和水町税務住民課国保年金係長の前渕康彦さんでございま
す。(拍手)
それから、岐阜県大垣市社会福祉協議会事務局長の早崎正人でございます。(拍手)
それから、青森県薬剤師会会長の木村隆次先生です。(拍手)
それから最後に、伊藤先生を除いて最後になったんですが、宮城県涌谷町町民医療福祉
センター長、お医者さんですが、青沼孝徳先生です。(拍手)
それから、そのちょっと向こうに、皆さんよくご存じの伊藤雅治先生がいらっしゃいま
す。現在は全国社会保険協会連合会理事長さんです。お医者さんです。(拍手)
それで、簡単にしゃべらせていただきたいのは、きょうは、最初におっしゃいましたよ
うに、これからは、単に病になった人を治すという話ではなくて、病気にならないという
方向にぼちぼちかじを切っていかなければならない時期、これは本当はもっとずっと前か
らそれが来ているんですけれども、これは、今までは保健師さんなどが一生懸命やってい
ただいていたんですが、私どもは、保健師さんの努力は非常によくわかりますけれども、
それだけではなくて、みんな、例えば市町村の方あるいは医師会の先生あるいは病院の先
生といった、つまり医療従事者みんなが協力しなければ、私はこういうヘルス事業という
のはうまくいかないのではないかとかねがね思っております。しかし、実際にはなかなか
難しくて、これは間違いなくうまくいっていますというところは、私はそんなにたくさん
ないんじゃないかと思うんです。そこできょうは、どうやればうまくいくかという話が多
分中心になるのではないかと思いますが、あまりこだわらずに、言いたい放題、なるべく
おっしゃっていただければと思います。
やり方といたしましては、大体お1人 15 分ずつしゃべっていただきまして、それから
壇上の討論があれば壇上で討論していただいて、その後、私はこのシンポジウムというの
はお見えになった方々のご意見を拝聴しなければあまり意味がないと思うんです。したが
いまして、奮って質問していただきたいと思います。そして最後に伊藤先生に、これはち
ょっと 20 分ぐらい、少し時間をお願いして、全体的にどうやればいいかと。伊藤先生は
厚生省のOBですし、長年そちらに関係してこられた方でございますので、非常に透徹し
たご意見もお持ちです。そのあたりからいろいろ聞いて、そして最後にちょろっと私がエ
ンディングみたいな話をさせてただいて終わりたいと思います。大体 12 時半までござい
まして、毎年よりはきょうはちょっと時間が長いわけなので、のんびりとやらせていただ
きたいと思います。
それでは、国藤さんから、どうぞよろしく。
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高知県安芸市市民課健康ふれあい係長
国藤美紀子
皆様、おはようございます。高知県龍馬空港から東へ車で 40 分、ぜひ秋季キャンプに
も来ていただきたい阪神タイガースのキャンプ地、そして昨年のNHK大河ドラマ「龍馬
伝」で、もう1人の主人公、岩﨑弥太郎の出身地でもございます高知県安芸市より参りま
した国藤と申します。本日は、テーマに沿った内容になるかどうかわかりませんですけれ
ども、健康づくりの推進と連携について、私どもで取り組んでいる活動についてご紹介し
ていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、安芸市では、平成 10 年度に健康文化と快適な暮らしのまちづくりプランを策定
いたしました。そして、11 年4月には、まちの保健活動の拠点として、市町村保健センタ
ー機能を持つ健康ふれあいセンター「元気館」を開設いたしました。「ひとが元気
が元気
まち
健康一番・安芸」をキャッチフレーズに、健康文化都市づくりを目指す理念、そ
して巨額な費用を投入した活動拠点を得て、その投入にふさわしい効果、実を上げなけれ
ばならない状況の中で、平成 14 年度から 18 年度にかけまして、行財政改革で安芸市職員
数を4分の3に削減いたしております。そうした中、保健師も、保健衛生部門、そして介
護保険部門、障害福祉部門に分散配置されるようになりました。このような中で、最少の
力で最大の効果を上げていく工夫をしなければならない状況になってまいりました。
そこで私どもが取り組んだこと。このために平成 18 年度に健康文化都市づくりの推進
のためのワーキング・グループとして、健康づくり連絡会を発足いたしました。保健・福
祉の担当部署の事務職の方、そして専門職は保健師・管理栄養士・社会福祉士で構成した
会でした。何をしたかということなんですが、まず健康課題を明確にするということで、
健診のデータ、医療費のデータ、介護給付費のデータ、死亡統計、これらを総合的に分析
いたしまして健康課題を明確にし、そして検討を行いました。健康づくりを再検討いたし
まして、ターゲットの絞り込みをいたしました。そして、そういった絞り込みができた。
ではこれを具体的にどうしていくのか。このため、平成 19 年度には、市長を本部長とい
たします健康づくり推進対策チーム、庁内の横断的な体制づくりに取り組みました。この
推進チームでは、特定健診等実施計画、体制整備の一環といたしまして、国保ヘルスアッ
プ事業、そして健康増進計画の策定に取り組んでおります。この健康増進計画の対象分野
の一つを生活習慣病予防ということで、カテゴリー、位置づけをいたしまして、受診率の
数値目標、市民の行動計画というものを体系化しています。あと、健康づくり推進対策チ
ームは、副本部長に副市長、そして対策本部につきましては、保健・福祉部門だけではな
くて、教育、経済、産業、そして企画、まちづくりの担当部署の課長。実際に核となって
実働する部隊といたしまして、その対策本部の下に健康づくり推進チーム、それぞれの関
係課の係長、そして実務者レベルを配置しております。また、車の両輪として、外部評価
団体、一緒に健康づくりを歩んでいっていただく団体としまして、健康ふれあいセンター
運営委員会の皆さん、国保運営協議会の皆さん、小中PTA連合協議会の皆さん、そして
安芸市保育所保護者会の皆さんを位置づけております。また、連携を図っていくために、
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関係機関といたしまして、高知県は県保健所になっておりますけれども、保健所、医師会、
歯科医師会、そして内容によりましては薬剤師会の先生方、そして社会福祉協議会の職員
の皆様方とも連携を図っているところでございます。
ふだんの保健事業全般にわたりまして、医師会、歯科医師会、薬剤師会、社会福祉協議
会等々、本当に大変お世話になっているところなんですけれども、特定保健指導の開始に
よりまして、特定保健指導の集団支援を実施する場合の講義をそれぞれの先生方にお願い
させていただいております。ですので、以前よりも特定健診等の実施を契機にしまして、
その連携の内容は本当に関係深く、色濃くなってきているというところでございます。地
元の先生方にお話をしていただきますと、住民の皆様方は本当に心強く、安心が得られる
ということで、大変感謝しているところです。特に安芸地区医師会の先生方とは、年1回
合同会議を開催し、行政報告や意見交換を実施しております。特定健診から災害時の医療
救護活動まで、実に幅広くご意見・ご提案をちょうだいしています。この会議を通して、
地区医師会、行政が、町の健康づくりの課題を、そして目標をお互いに確認し合い、共通
認識を形成しているところです。会議の後の飲みゅニケーションでは、ひざを交えまして
ざっくばらんに日ごろの連携について語り合っております。ですので、本当に大変連携が
スムーズになってきているところです。
取り組みの一つをご紹介したいと思います。特定健診で、服薬治療中の方にどのように
働きかけをしていくのかということが非常に課題になっていたところなんですけれども、
これは医療機関側にも同じように課題を持っていらっしゃった。どんなことかということ
なんですが、特に安芸市は、糖尿病を中心とする生活習慣病予防対策をターゲットという
ことで絞り込みをして取り組んでおりますけれども、そうしたときに、良好な血糖のコン
トロールのためには当然食生活が非常に重要になるんですけれども、ではそれを診療の中
でどのようにできるのかということになりますと、非常に限界がございます。それは何か。
それは、調理実習ができる設備がないということで、診療所の先生方からはお話をいただ
いております。言葉で話すだけではなく、実際に体験する、味わうということは大変重要
になってまいりますけれども、そういった設備が不十分だという課題があった。そこで、
地区医師会、それから地域住民組織の皆様、そして行政の合同で栄養指導を、国保ヘルス
アップ事業費を活用いたしまして実施しております。
どんなことをするのかということなんですが、食事の前後に血糖をはかります。それか
ら先生方のご講義ということでしていっているんです。それをやることでどういった効果
があるのかということなんですけれども、食前後の血糖をはかることで、その日は栄養計
算された一定のカロリー、決まった内容を食していただきます。そうしますと、ではこの
くらいのカロリーを食べた後、血糖では具体的にお一人お一人がどのくらい上がるのかと
いうのが目に見えてわかるわけです。そうしますと、診療の現場でお話を聞いていて、
「そんなに食べてないのにこんなに上がるなんておかしいですね」と言っていたことが、
実はそうではないということが実際にわかってまいりまして、客観的に自分の状態を把握
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できる物差しを得ることができたということです。ですので、これをふだんの生活場面、
診療場面で活用するということは、患者ご本人にとりましても、診療スタッフの皆様にと
りましても、非常によかったということで好評をいただいております。我が町のことを我
がこととして熱意を持って一緒に汗を流していただける関係というのは、本当にありがた
いことです。
あと、合同で運営に携わっていただいた住民組織は、食生活改善推進員さんと生活習慣
病自主グループつくし会の皆さんです。安芸市では、この自主グループ活動支援に力を入
れております。つくし会の皆さんは、月2回、元気館のほうに参集されまして、ご自分た
ちで運動・栄養の学習・実習に取り組んでいらっしゃいます。この皆さん方と一緒にやっ
たわけなんです。このようにいろいろな方々とやっているとどういうことが効果としてあ
るのかということなんですが、耳で聞くよりも、目で見て、この方たちはこういう活動を
していらっしゃる方たちなんだということが語らずとも見てわかるということで、それぞ
れの活動の理解が非常に進みまして、ネットワークが広がっております。
そして、一緒に事業をしていっているわけなんですけれども、安芸市には、つくし会だ
けではなくて、活発に活動する既存の住民組織活動があります。横のつながりを持ってネ
ットワークを生かし連携する動きは、先ほどご紹介しましたが、元気ふれあい会議という
ものが発足いたしまして、非常に充実してきました。それ以前は余り活発ではありません
でした。健康づくり推進員をそれぞれ自治体で養成されているところもあろうかと思いま
すけれども、そういった方々を新たに養成するのかという議論もありましたけれども、既
存の組織の充実なくして健康づくりの充実はないと考えまして、既存組織の充実を図るべ
く、平成 13 年度、地域保健特別推進事業費を活用して、健康づくりをともに考えるため
に、関係する住民組織の方、そして個人の方々にお声がけをしまして、元気ふれあい会議
が発足いたしました。元気ふれあい会議では、もう 10 年間ぐらい活動いたしまして、昨
年度、高知県の国保保健賞団体の部を受賞されました。副賞金をちょうだいいたしまして、
どう使うかということだったんですけれども、おそろいのジャンパーをつくりまして、ま
すますパワーアップしているということです。
この元気ふれあい会議の目的というのがございます。4つご紹介いたします。1、各組
織間の活動理解と横の連携強化。2、安芸市の健康課題と健康づくりの確認。3、個人や
地域で実現可能な活動は何かを検討。そしてそれを、4、各地区に広げ、市民の生活に根
づく習慣づくり。こういうすばらしい4つの目的を決められまして、これに沿って、初年
度は運動習慣づくりということで、市内を皆様方が実際に歩いて、歩きやすいウオーキン
グコースを選定し、ウオーキングマップを作成いたしました。このウオーキングマップを
活用したウオーキング大会というものを主催してきたわけです。13 年度からですので、何
年も毎年ウオーキング大会を主催してきておりますと、何とこれがウオーキング大会をす
ることが目的化してしまっているという状況が生まれてきたわけです。そうなってきます
と、それ以外に会議の役割を発揮できずに、何のために何をする会議なのか、見直しが必
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要になってまいりました。平成 18 年度、このことを確認いたしまして、各組織に聞き取
りを行い、全体の会合時に目的をもう一回確認し合ったところです。そして、平成 19 年
度には、健康増進計画の住民を代表する策定ワーキングメンバーとして、元気ふれあい会
議の皆様方と計画をつくり上げてきました。
また、特定健診受診率向上に向けて、組織に対して説明をしましたり、それを学習され
た皆様が住民の皆様へ口コミでお伝えしていっていただいたり、あと啓発パレードとか、
公民館を単位に地域住民が主体的に受診勧奨を実施していただくといった活動に広がって
まいりました。安芸市では、国保ヘルスアップ事業を活用いたしまして、公民館を単位に
地域住民が主体的に取り組む健康増進活動ということで、元気アップ推進事業という名称
でお取り組みいただいておりますけれども、昨年度 17 カ所にまで広がってきています。
住民の皆さんとの協働による健康づくり活動を通しまして、職員自身の目的意識の低さが
そのまま事業にあらわれていたということを反省いたしました。住民の皆様方は、本気を
向けると本気を返していただけます。そして、住民流にまさるものはなく、アイデアいっ
ぱいの知恵袋であるということを学びました。この点について、特に健康づくり推進対策
チームの重点事業でもあります特定健診等の受診率向上対策について、もう少し詳しくご
紹介したいと思います。
安芸市では、受診率向上対策について、この機会を大いに活用し、市民の財産である健
康を守るためにはどんなことでもやっていこうという覚悟で取り組んでおります。その結
果、平成 19 年度、基本健康診査中、国保被保険者 40~74 歳の受診率 18.1%が、平成 20
年度に 32.1%、そして 21 年度に 37.2%と、倍増することができました。22 年度は法定報
告では 43%になる見込みということで、65%も夢ではないのではないかということで日々
工夫を重ねているところです。平成 20 年度の取り組み当初には、24 年度に 65%達成を掲
げて、元気ふれあい会議、各地区の元気アップ推進会議で住民の皆様方に説明をしていく
わけなんですが、そういった会場で住民の方から、「18.1%を 65%にしようなどと本気で
思っているの」と言われるんです。「市が本気でやるんだったら、では本気で協力するよ。
どうか」と問われました。「はい、本気です」と答えました。そう答えざるを得ないとい
うか、答えました、「本気です」と。そうしましたら何と返されたか。「本気はわからな
いといけない。本気度が見えないといけない」。皆様だったらどうされるでしょうか。
「どうやったらいいんですか」と聞きました。そうしましたら、「「本気」と書いて歩き
なさい」と言われましたもので、では本気度を伝えるTシャツを作成しようということに
なりました。きょう着用しておりますこの赤のTシャツが、本気度を伝える本気Tシャツ
です。すみません、立ちます。
「本気で元気」ということで本気度を伝える。そして「受診率 65%」、「安芸の元気に
着てみいや」と、こちらはメーカーなので、ちょっとなくしておきますけれども、夏はい
いのですが、そういうことで本気Tシャツをつくりました。安芸市は書道が盛んな町で、
昭和 57 年に全国初の公立書道美術館を建設した町です。県立安芸高等学校の書道部の皆
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さんに、本気を伝えたいので、本気を伝える文字を書いてくださいと頼みました。そして、
特定健診とは何か、なぜ受診率向上対策に取り組むのか、ご説明をしましたところ、7名
の方が書いてくださいまして、7名の中から書を並べまして健康文化都市記念講演会で人
気投票していただきました。そして、大人気だったこの「本気で元気」に決定したわけで
す。これを健康福祉祭「あき元気フェスタ」と申しますが、年1回の祭りで表彰しました。
市長から感謝状贈呈をしております。というこの一連のプロセスがすべて啓発です。市長
を初め、職員も、住民の皆様方も、これは自前で購入しまして、クールビズも本気Tシャ
ツを着用しておりますと、この「受診率 65%」とは何と聞かれるんです。待ってましたと
いう感じで、関心を持っていただけます。そして、これをもう3年間も着続けております
けれども、着続けておりますと、見かけた方が、「これは忘れてた。健診を受けなければ
いけないね」と声をかけていただけるということでございます。
このようなさまざまな知恵をいただきまして、いただいたご意見は、まずやってみて、
住民の方にお返しする、そしてまたご意見をいただいて実行するの繰り返しです。こうし
て受診率が向上してまいりましたが、受診率を上げるのが目的ではございません。市民の
皆様方が特定健診等を活用されてご自分の健康状態を正しく知り、自分の健康づくりのた
めに健診を活用して受診する。その保健行動のあらわれが受診率としてあらわれていると
考えております。
時間が超過してしまって申しわけございません。最後に重要なポイントをお話ししたい
ところなんですけれども、お構いなければ1分ほどちょうだいしてもよろしいでしょうか。
【水野】
どうぞ。
【国藤】
ありがとうございます。すごく原稿を短くして 15 分をしっかり守りますと宣
言してこちらに来させていただいたんですが、結局守れずじまいで申しわけないですが。
この町で健康課題を共有し、目的を確認し合い、目標に向かって力を注ぐ。そして、そ
のそれぞれの立場、持ち場で役割を発揮し合うために大事にしていることが安芸市ではあ
ります。それは、当事者、住民主体が根幹であること。そして、住民や庁内の他部門、関
係機関と対等な関係を築くこと。そして、どんな小さなことでも、一人でも多くの方に携
わっていただいて実行するということ。そして最後に、数値化できてわかりやすい指標を
用いることです。楽しむ、評価できる仕事づくりをモットーといたしまして、チームのメ
ンバーと語り合っていることがあります。皆様方は健康づくりが当たり前になり過ぎて、
健康づくり対策をしない町になりたいねということで、これから先も皆様方とご意見を交
えながら、苦楽をともにして挑戦していきたいなと思っております。
つたない話ではございましたが、これで私の発言を終わらせていただきます。ご清聴あ
りがとうございました。(拍手)
【水野】
どうもありがとうございました。
それでは次に、前渕さん、よろしくお願いします。
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熊本県和水町税務住民課国保年金係長
前渕康彦
熊本県和水町の前渕と申します。こんな格好で大変失礼いたします。驚かれているかと
思いますが、一応これも私の正装でございまして、この話は後ほどさせていただきたいと
思います。きょうは、国保年金係という事務職の立場からお話をさせていただきます。
熊本県の和水町は、平成の大合併におきまして2つの小さな町が合併いたしまして、合
併した今も人口が1万 1,500 人という小さな町でございます。正月恒例の箱根駅伝がござ
いますが、その開催に尽力しまして日本マラソンの父と言われている金栗四三が生まれ育
った町として有名です。毎年、箱根駅伝の最優秀選手に対して、うちの町長が金栗四三杯
を贈呈しております。また、この金栗四三でございますが、世界一遅いマラソン記録、54
年8カ月6日、5時間 32 分 20 秒3という記録保持者でございまして、そのゴール後、
「長い道のりでした。この間に孫が5人できました。」というおもしろいスピーチを残し
ている方でございます。
このマラソンと同じように、町づくりも長い道のりだと感じております。和水町の町づ
くりの課題は、過疎化、少子化、そして高齢化です。合併して6年目、「希望(ゆめ)あ
ふれ人と地域が輝くまち」を目指しておりますが、果たして夢とは何なのか、人と地域が
輝くとはどんなことなのかと、よく最近自問自答を繰り返しているところです。過疎化・
少子化・高齢化という課題に対しまして、私どもは、この5年間で、特に過疎化対策とし
ての定住促進と少子化対策としての子育て支援の充実を図ってまいりました。残念ながら
人口は今も減り続けています。明るい兆しは、出生数が若干増えまして、それまでの減少
傾向に一定の歯どめがかかった状況となったことでございますが、町全体で年間 70 人前
後という出生数でございますので、少子化という厳しい現実に変わりはございません。
一方、高齢化の問題でございます。高齢化率は 34.9%で、3人に1人が高齢者という超
高齢社会であります。このような厳しい現状の中、課題を解決していくために求められる
ものは、私は地域力であると思います。地域力とは、地域住民が自立し、行政と協働体制
をとりながら、ないものねだりではなく、地域の現状を認識し受け入れ、地域にあるもの
を宝として、問題の解決や価値を創造していくための力です。地域力には、人の誘致、育
成、ネットワークといった人づくりが重要であり、脱行政主導、脱補助金行政といった自
治に対する地域住民の覚悟、そして行政と地域住民の情報共有が大事であると考えます。
現在、和水町の最重要課題は、明日を開く人材を育てる教育環境の充実としております。
これは、複式学級の解消と小中一貫教育の推進ということでありますが、まさしく地域力
に欠かせない人づくりであると思っております。そして、この人づくり、人が自分らしく
生きる、自ら明日を切り開いていくための土台となるのが、まずは健康であることだと思
います。だからこそ、和水町の2番目に重要な課題は健康づくりであると考えます。まち
づくり総合計画策定時にとりました町民アンケートでは、実に 74.2%の方が「保健・医
療・福祉サービスの充実」を挙げておられますが、行政がこれからできることは、人も財
源も限られていますので、いかにして住民が行政から自立して、住民主体の地域力という
11
力で健康づくりができるかということが大事だと思います。そして、行政も、住民の自
立・協働と責任を促す施策に転換し、行政の守備範囲を見直して、本当に行政がしなけれ
ばならないことに集約していけるかということだと思っております。住民が健康であるこ
と、たとえ病気であっても生きがいを持って暮らせること、そして健康的な暮らしの中で
の人づくり、自分づくりこそ、「希望(ゆめ)あふれ人と地域が輝くまち」を創ることが
できると信じています。
さて、ここからは健康づくりの本題に入ります。和水町の健康課題は、予防が可能な慢
性腎臓病です。慢性腎臓病を予防して医療費と介護給付費を抑制することが目標です。国
保医療費は、平成 20 年度から毎年度7%、約1億円ずつ増加しています。1人当たり医
療費は、21 年度で 32 万円、22 年度で 34 万 7,000 円であり、21 年度の全国平均 27 万
9,000 円と比較してもかなり高めの数値となっております。国保会計は2年連続で単年度
収支赤字です。このまま医療費が増加すれば、いずれ繰越金と基金が底をつき、保険税を
値上げせざるを得ません。また、近年、介護給付費は毎年度約 5,000 万円前後増加してい
ます。65 歳以上1人当たり介護費用額は、21 年度全国平均 23 万 8,000 円と比較しますと
約 10 万円高い数字となっております。介護保険料も、基準額が 4,960 円であり、全国平
均 4,160 円から 800 円も高いのです。21 年度新規介護認定者の 36%がロコモ、21%が脳
血管疾患となっており、若い世代からの生活習慣病予防対策は介護予防にも効果があると
思っております。
日本慢性腎臓病対策協議会によりますと、日本人の成人のうち8人に1人は慢性腎臓病
であると言われています。慢性腎臓病は生活習慣病と深くかかわっており、生活習慣病は
生活習慣の改善により予防が可能です。日本人の3大死因は、がん、心疾患及び脳血管疾
患ですが、最近の傾向として、その危険因子である高血圧、高血糖、高脂血症、高尿酸症
及び糖尿病等の生活習慣病になる人が増えています。町の医療データを分析してみますと、
実にレセプトの半数以上が生活習慣病となっており、また近年、新規人工透析患者も毎年
2人~4人程度いる状況です。このような現状の中、慢性腎臓病を予防すれば、心疾患や
脳血管疾患、そして生活習慣病を予防することになり、やれば必ず効果が上がると頑張っ
ているところです。
ではどうやって慢性腎臓病を予防していくかでありますが、和水町は行政主導で健康づ
くりを推進していくのではなく、住民が自らの健康課題に気づき、学び、自ら問題を解決
していく努力の過程に、限られた予算と人材を最大限に活かしながら、行政が支援する、
住民主体の健康づくりを推進していきたいと思っております。そこで、本日は、住民主体
の健康づくりの中で、まず住民主体の保健予防支援と健康増進活動の2つについてご紹介
します。
最初に、住民主体の保健予防支援ですが、住民の健康づくりは住民自身がその答えを持
っているという考えに立ち、保健指導ではなく、保健支援と呼んでおります。保健支援は、
図式化された理解しやすい教材を使いまして、住民自身が自分の健診結果等のデータを落
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とし込み、自分の体の状態を数値で知ることから始めます。数値の意味を理解できれば、
ではどうしたらいいんだろうとか、今のうちに何とかしなければという住民の主体的な動
機づけが行われます。動機づけができれば、将来の見通しを立て、行動変容へとつなげる
ことができるというものです。これは、健診結果のデータから住民が自主的に始める生活
習慣の改善です。住民の自主性を尊重しながら、寄り添う役割を果たすのが、保健師や栄
養士となります。
しかし、少し前までは、保健支援ではなく、一方的に話しかける、おせっかいと思われ
がちになる、知識の押し売りである等の保健指導をしておりました。本日偉そうなことを
申し上げておりますが、これまで和水町では、合併前後を挟み、保健師本来の業務である
この保健予防支援になかなか力を入れられなかった、失われた 10 年というものがござい
ます。合併協議や調整、新町での計画策定など、机上の仕事に追われてしまったのです。
そして、先ほど申し上げたような医療費や介護給付費が増えて、これは大変だということ
で、いま一度保健師の本来の仕事、役割とは何かを自らに問いかけ、事務職とともに力量
アップを図っているところでございます。住民自身の気づきや問題解決策を後押しできる
技術の取得、研さんは欠かせないと思います。役場から毎日外に飛び出す保健師と、それ
を補佐する事務職の役割分担の見直しや意識改革が必要です。あわせて、住民の意識改革
を図るため、健診結果から始める健康づくりという出前講座を、各地区の健康推進員やJ
A、商工会等と連携してやっていきたいと思います。
次に、住民主体の自主的な健康増進活動についてお話しいたします。これはまさに脱行
政主導の取り組みであり、健康づくりの責任は地域や住民にあるという責任の明確化であ
り、地域における地域力や人づくり力が試されるものであると思っております。住民が自
発的に取り組んでいるものは、継続性があり、健康づくりの効果も上げやすいと思います。
そこで、代表的なものがございます。それはペタンクです。ペタンクはフランスで生ま
れたスポーツで、氷の上で行われるカーリングというスポーツに近い、その陸上版と思っ
ていただければと思います。ペタンクは皆様方にはなじみの薄いスポーツかと思いますが、
和水町における競技人口は 1,100 人を超えておりまして、人口1万 1,500 人でございます
ので、競技人口率約 10%となっております。恐らく日本一ではないかと自負しているとこ
ろです。ペタンクは、だれでもどこでも少人数で気軽にゲームを行うことができ、また地
域の公民館の敷地などで老若男女が平等に遊ぶことができるスポーツです。地区の公民館
に毎日出かけるだけで介護予防になると思います。そこで友達と話したり笑ったりすれば、
気分もすきっとしてストレス解消となるのではないでしょうか。これぞ住民主体の自主的
な健康増進活動と言えると思います。今年度、町では、国保ヘルスアップ事業の予算を活
用して、ペタンクの健康増進に対する効果検証を行っているところです。恐らく全国初で
はないかというところで、結果を期待しているのですが、今年 10 月にねんりんピック熊
本ふれ愛熊本が開催されますが、そのペタンク交流大会が本町で開催されますので、そこ
で検証結果を全国に向けて、ペタンクの魅力とともに公表し、情報を発信していきたいと
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思います。
ここで一つお伝えしたいことがございます。それは、町の職員がボランティアでペタン
ク協会の事務局、裏方として住民の活動を後方支援しているということです。職員は地域
住民でもあります。私は、職員が日常の公務を離れ、職場を飛び出して、地域住民の一人
として地域に根差した活動を展開していくことは、今後、行政と住民が協働しながら自立
した地域社会を創り上げていく上で欠かせないものであると思います。貴重な戦力です。
それからもう一つ、住民が自主的に取り組んでいる健康増進活動で、最近和水町でも盛
んになってきているユニークな取り組みを紹介します。それは、ひょっとこ踊りです。ひ
ょっとこ踊りの由来は全国各地にあるようですが、中でも宮崎県日向市に伝わるひょっと
こ踊りが有名です。子宝、豊作、商売繁盛を願い、きつね、おかめ、ひょっとこが繰り広
げる、一度見たら忘れられないユーモラスな踊りの愛好者は、今や宮崎にとどまらず、全
国で増え続けているところです。高齢者版のよさこい踊りと思っていただければいいと思
います。そう言われてもよくわからないという方のために、出しゃばりまして、ここで少
し踊りを披露したいと思います。
(踊り)
ちょっと息が切れましたが、ありがとうございます。お騒がせいたしました。(拍手)
とにかくこのひょっとこ踊りですけれども、笑う門には福が来ると言います。ひょっと
こ踊りには笑いがあり、笑いは免疫力を高めると言われており、踊り手も見る人も健康寿
命が延びているのではないかと思います。和水町にも昨年8月に愛好会が結成され、上は
88 歳から下は4歳まで、老若男女がそれぞれ強制されることなく、自発的に楽しみながら、
健康づくりと地域づくりに貢献しております。やはりここでも、自発的に、そして楽しみ
ながらというのが鍵ではないかと考えております。私もこの愛好会のメンバーであり、ボ
ランティアで踊りのインストラクターをさせていただいております。地域に飛び出して、
地域に根差す公務員として、自らも楽しみながら、今後も健康づくりと地域づくりのお手
伝いができればと考えております。
それでは最後に、保健師、医療機関等の連携について、3つポイントを申し上げたいと
思います。1つは、行政が医療関係者と協議・調整を重ねて連携を深めていくよりも、住
民主体で、住民が要となって医療関係者と連携を深めていくほうが効果的ではないかとい
うことです。そのためには、もちろん住民の健康に対する意識や知識をさらに高めていく
ことが必要です。具体的な連携方法は、健診結果から自分の体の状態に気づいた住民が、
かかりつけ医等に対して、保健師や栄養士が情報を提供した資料を使って相談していくと
いうものです。これこそ保健・医療・福祉の連携を円滑に進めていくための近道ではない
かと思っております。住民が要となり、医療関係者と保健師等がつながっていくためには、
情報を共有できるツールが必要です。このツールとして、全国保健師自主研究会の腎ノー
ト、これを使っているところです。
2つ目は、今年度、健診結果から保健支援を実施している住民のうち、ヘモグロビンA
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1c5.5~6.0 の値の人またはメタボ該当者で、希望した人 106 人の方々に対して、75 グ
ラム糖負荷検査を実施しています。この検査機関は町立病院であり、検査には糖尿病専門
医が携わっています。糖尿病専門医と保健師が連携して、その後の継続的な保健支援方法
等について協議し、より効果的なものになるよう努力しているところです。
3つ目は、特定健診における連携です。これまでは健診の専門機関である町立病院及び
町内医療機関の限定した実施機関で行ってきましたが、8月8日現在における平成 23 年
度の特定健診受診率は 55.1%でございます。来年度までにはぜひ 65%を達成したいと思
いますが、あと 10%上げるためには、治療中だからと断る方に、治療中だからこそ受けて
いただく動機づけが必要であると思っております。ですから、これまで以上に、かかりつ
け医で治療中の町民の利便性の向上を図るため、24 年度以降は医師会と連携し、住民の生
活圏である近隣市町村のかかりつけ医においても特定健診を受診できる体制の構築を急い
でいるところでございます。なお、そのかかりつけ医から住民に対して特定健診の受診を
勧奨していただけるような、さらに強力な協力体制が構築できたら最高です。
以上、本日はいろいろとお話をさせていただきましたが、金栗四三の言葉に「体力、気
力、努力」という言葉があります。まさにこれからの健康づくりは、住民自身の「体力、
気力、努力」が問われてくると思います。
ご清聴ありがとうございました。(拍手)
【水野】
どうもありがとうございました。熱演も含めて、ご苦労さんでしたと言いたい
ところです。
それでは、次に早崎さん、よろしくお願いします。
岐阜県大垣市社会福祉協議会事務局長
早崎正人
岐阜県の大垣市社会福祉協議会から参加させていただきました早崎と申します。
社会福祉協議会は、全国の区市町村に社会福祉法人という人格を持って設置されており
ますので、ご参加の皆さんはご存じかと思います。ただ、民間という立場ですので、場違
いのような気はしますけれども、少しお話をさせていただきます。
全国社会福祉協議会の呼びかけに応じ、3月 11 日に発生しました東日本大震災につい
て、改めてあらゆる全国のボランティアの皆様方のご支援と敏速な対応、また地域の皆様
方のきずなと地域力のすばらしさを感じさせていただいております。全国社会福祉協議会
は、全国の市町村社会福祉協議会を通じて支援の活動をおこなっています。私たちは大垣
市、7月 25 日からこの9月 11 日まで、690 名の市民の皆様方を岩手県の大槌町にボラン
ティア隊として現在も派遣させていただいております。そういう活動もしているわけです
けれども、社会福祉協議会は、住民の自助活動、また互助・共助・公助の活動を積極的に
推進するために、地域包括支援センターを運営しております。本日は、その地域包括支援
センターの活動について、地域の役割を担っております地区の社会福祉推進協議会と連携
した地域支援事業について少し発表させていただきます。
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初めに、地域住民の地域福祉活動を支えております市社協と地区社協の活動についてお
話しいたします。古い話ですけれども、昭和 50 年、地域住民主体の理念に基づいた、だ
れでもが安心して暮らすことのできる推進母体の福祉コミュニティづくりということで、
小学校区 20 地区を主体に、自治会を中心にした住民による地区の社会福祉推進協議会を
組織化してまいりました。これまで大垣市社協は、住民組織の福祉コミュニティづくりと
ともに、住民による地域支援活動として、よく言われます制度外サービスを実施してまい
りました。昭和 55 年から始まりましたひとり暮らし高齢者等の地域住民による手づくり
の食事サービス、配食するわけですけれども、制度外サービスの先駆的な役割を担ってい
くことができました。また、調理に携わるボランティアの皆様方は、保健センターが指導
して、地域での食生活の改善活動を推進しております食生活改善協議会の皆さんでありま
す。今では、20 地区すべての地区で 1,263 名のボランティアの皆様方が 345 名の高齢者
等の皆様方に配食をされております。これは地区によって変わりますけれども、月1から
週1の活動になります。また、地域で食事をしながら交流するという、ひとり暮らし高齢
者を囲む会は、小学校区にあります地区センターを中心に 1,994 名の参加が昨年はござい
ました。従来は、既存の地縁団体であります自治会、婦人会、日赤奉仕団、また福祉関係
者であります民生・児童委員が中心になって地域での支援活動を行っておりました。しか
し、高齢社会の社会的な問題として、ひとり暮らし高齢者、高齢者夫婦世帯、認知症高齢
者の増加とともに、家庭や地域で支える人の減少が挙げられるようになってきました。
平成3年には、当時の厚生省がモデル指定事業ということで、ふれあいのまちづくり推
進事業を実施いたしました。自治会ごとに、地域での住民による支援活動、予防的福祉活
動を推進し、地域づくりの役割を担う福祉推進員制度を設置いたしました。第1期の平成
3年には 410 の自治会に 442 名の福祉推進員が設置され、ことし 11 期目の 23 年には 490
自治会すべてに 858 名の推進員が設置されております。これまでの活動を通じて、高齢者
には自治会単位の小地域でのふれあい交流活動のほうが参加しやすいという声もありまし
て、平成 14 年から福祉推進委員によります「ふれあい・いきいきサロン」が始まりまし
た。現在は 207 カ所でサロンの活動が行われております。これはすべて地区社協参加の自
治会の主催で実施されています。
一方、平成 16 年、大垣市は、市民主体のまちづくり、共生・協働によるまちづくり、
一人ひとりが自己実現できるまちづくりを基本目標に、地域福祉計画を策定いたしました。
市社協は、市の地域福祉計画の基本目標に沿い、すべての市民が住みなれた地域で安心し
て暮らせるまちづくりの実現を目指し、総合的なサービスを展開するために、地域福祉活
動計画「みんなでいいまちつくろうよ」というテーマで策定いたしました。また、16 年か
ら 19 年の4年間をかけて、地域福祉活動計画に基づく地区社協を基盤にした、地区社協
と協働し、地域での福祉課題を明らかにするため、20 地区の社会福祉協議会の活動計画も
策定いたしました。多くの地区社協での身近な課題に対する問題解決を図るための施策と
しては、地域での見守りネットワーク活動や「ふれあい・いきいきサロン」の強化、災害
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に備えた地域づくりが重点目標に掲げられました。こうした計画を地域ごとに推進するた
め、平成 20 年から 22 年の3年計画で、地区社協を基盤に、自治会を単位とした、ひとり
暮らし高齢者、高齢者世帯、障害者の方が住みなれた地域の中で安心した生活ができる体
制をつくるために、住民による「あんしん見守りネットワーク事業」が始まりました。現
在、344 自治会で 2,982 名の対象者の方々に、見守りや話し相手の活動が行われています。
一方、平成 18 年4月には地域包括支援センターが設置され、自治会単位の「いきい
き・ふれあいサロン」の取り組みに保健師等がかかわり、健康講座や認知症予防講座に講
師として参加し、住民との信頼関係を築いてまいりました。従来の介護保険、保健行政の
介護予防事業の取り組みに、地域包括支援センターが媒体となり、住民参加の地区社協が
連携・協力した地域支援事業の取り組みが、少しですけれども、でき上がってまいりまし
た。
また、市社協では、介護と医療分野との連携を図るため、訪問介護事業と訪問看護ステ
ーションを実施し、365 日 24 時間体制で運営を行っております。特に訪問看護事業につ
きましては、大垣市医師会・市民病院の先生方、保健センター、行政機関に参加していた
だいて、運営委員会を年2回、専門委員会を年4回設けて、在宅医療のあり方について協
議を行っております。
それでは、地域の健康づくりの推進と連携について、住民組織が公的施策と協働して支
える内容について、少しお話をいたします。介護保険事業の地域支援事業は、介護予防事
業、包括的支援事業及びその他の地域支援事業を行うことにより、被保険者が要介護状態
または要支援状態になることを予防するとともに、要介護状態になった場合においても、
可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援するということ
を目的として実施されております。大垣市では、22 年度まで、介護予防支援事業に基づく
高齢者の健康状態の確認を、国が定めた介護予防のための生活元気度チェックに基いて、
65 歳以上で要支援・要介護の認定を受けていない高齢者に、誕生月別に一律に郵送で基本
チェックリストを送付して、返信封筒で返信されるという方法で実施してきましたけれど
も、基本チェックリストによる対象者把握の問題として、いろいろ挙げられることが起こ
りました。
1つには、基本チェックリストを個別に郵送するため、客観性に欠け、ハイリスク者の
把握が不十分となり、特定高齢者候補者の医療機関での介護予防健診の受診者が少なくな
る。高齢者自身の健康に対する問題意識が日ごろから希薄であるということは挙げられま
すけれども、健診を促進する工夫が欠ける要因もあります。22 年度の 65 歳以上の大垣の
高齢者人口は3万 6,827 人、基本チェックリスト回収率は 71.8%と高いほうです。その中
で、特定高齢者候補者は 18.3%です。その対象者が主治医による生活機能検査を受けます
のは 6.2%と低くなっております。
2つ目に、基本チェックリストの対象者は、誕生月で郵送するため、近隣の友人と一緒
に介護予防教室に行けない等で参加意識が低下いたします。また、介護予防教室の開催案
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内も同様に、対象者に郵送にて案内をいたします。指定された特定の会場で開催されてい
るため、介護予防教室への参加が少ない状況が続いておりました。こういう状況の反省に
基づきまして、23 年度から、保健センターと地域包括支援センター、市社協とが協力し、
本日のテーマであります、住民組織が地域の健康づくりの推進を協働して支え、連携した
地域支援事業をどのように行っているのか、少しお話をいたします。
初めに、二次予防事業の対象者把握は、これまでの画一的な郵送方法を改め、3年をか
けて 20 地区社協の指定を行い、自治会単位ごとに開催しております「ふれあい・いきい
きサロン」会場を活用し、地域包括支援センター及び保健センターの職員が出向いて基本
チェックリストのチェックを行うことにいたしました。ことしの対象8地区のチェック対
象者は1万 1,705 人で、調査期間中に実施されておりました 74 のサロン参加者は 896 人
でした。回収率はもちろん 100%です。サロンに参加していない郵送の対象者の回収率は
66.5%になりました。
ここで明らかになりましたのは、サロン参加者の二次予防事業対象者につきましては
38.6%です。郵送による二次予防事業対象者は 29.1%となっております。サロン参加者の
二次予防事業対象者が 9.5%も多いことがわかりました。ここまで、これまで問題になっ
ておりました基本チェックリストを個別に郵送するため、客観性に欠け、ハイリスク者の
把握が不十分となるという問題は「ふれあい・いきいきサロン」を活用することで克服さ
れる可能性を実証できたのではないかと思います。2つ目に、地区社協の組織の自治会が
開催する「ふれあい・いきいきサロン」会場を利用することにより、高齢者は基本チェッ
クリストを保健師と相談しながら回答することができるようになりました。同時に、介護
予防教室の参加希望を尋ねることも可能となりました。参加意識の問題であった基本チェ
ックリストの対象者は、誕生日で郵送するため、近所の友人と一緒に介護教室に行けない
等で参加意識が低下しておりましたが、これまで特定高齢者の介護予防教室の参加者は
165 人の 10%でした。サロン参加者の調査から見ると、「参加したい」と答えた人がサロ
ン参加者全体の 492 名、54.9%と高い率を占めており、介護予防教室への参加意識が低下
しているという問題も、「ふれあい・いきいきサロン」活動を活用することで克服する可
能性が実証できたのではないかと思います。
このように、地域の「ふれあい・いきいきサロン」を活用した基本チェックリストの確
認は、実施する側と受ける側の双方にメリットがあります。こうした事業の取り組みは、
これまでの問題の解決に大きなヒントを与えてくれていると思います。1つ、「ふれあ
い・いきいきサロン」の催しは事前に自治会から回覧されるために、高齢者を含めてお互
いに声をかけ合って一緒に参加することができるようになりました。2つ目に、地域包括
支援センターの保健師も、20~30 人の高齢者に詳しく内容を説明しながら、反応を確認し
ながら対応することができ、地域のボランティアの皆さんにも二次予防事業の理解と協力
を得ることができるようになりました。3つ目に、この事業では一次予防事業も並行して
開催しております。事業の案内も自治会を通じて回覧されておりますので、お互いに声を
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かけ、誘い合って参加することができるようになりました。4つ目に、地域住民による
「ふれあい・いきいきサロン」活動に介護予防の基本チェックリストなどで生活機能チェ
ックをすることにより、地域でのひとり暮らしの高齢者や高齢者世帯の要介護状態や認知
症、閉じこもり、孤立、孤独の把握につながってきております。5つ目に、地域で「ふれ
あい・いきいきサロン」、「あんしん見守りネットワーク」活動を通じて見守りが行われ
ておりますけれども、地域ではどうしても解決できない課題もあり、今後は住民と専門機
関との連携が必要となっております。
23 年度から3年計画で、こうした問題の解決を図るため、20 地区社協と地区地域包括
支援センターと連携した地域支援ネットワーク委員会を設置して、1、支援を必要とする
人のニーズ把握、2、支援を必要とする人を漏れなくカバーする体制づくり、3、困難ケ
ース等を総合的に受けとめ支援するための体制整備や、解決方策の検討や、情報の共有を
図る事業を現在進めております。
以上で発表は終わりますけれども、来年は岐阜県で国体が開催されます。関係されます
皆様方にはぜひ岐阜県においでいただきたいと思います。歓迎いたしますので、よろしく
お願いいたします。
以上で発表を終わります。(拍手)
【水野】
ありがとうございました。
それでは、木村さん、どうぞ。
青森県薬剤師会会長
木村隆次
こんにちは、よろしくお願いします。
私はきょう、「健康介護まちかど相談薬局」のお話をしたいと思ってここに座っていま
す。もともと平成 14 年ぐらいから、日本薬剤師会と国保中央会さんとの連携事業、もっ
と具体的に言うと、各都道府県国保連合会さんと都道府県の薬剤師会との連携事業でスタ
ートしてきたものでありますが、いろいろなやり方があるということで、きょうは私の地
元の青森県の事業内容を説明したいと思っています。15 分ということですので、1つ目は
青森県の平均寿命とか喫煙率とかはどういうことになっているかというバックグラウンド
と、それに対してこのようなまちかど相談薬局事業という仕組みをつくって、今その事業
内容がどれだけ進化したかということを説明したいと思います。スライドを使って説明す
るのが一番わかりやすいと思っていたのですが、きょうは使えないということですので、
12 ページの私の発言要旨をごらんいただきながら進めていきたいと思います。
まず、青森県「健康あおもり 21」は、「健康日本 21」の青森県バージョンでございま
すが、現在、生活習慣病対策とこころの健康づくり対策を柱として、肥満予防、喫煙防止、
自殺予防を重点的に取り組んでいます。
この背景をお話ししますと、喫煙防止は、2007 年のデータで成人喫煙率が何と男性1位、
女性4位でありまして、これを何とかせねばならないと。釈迦に説法ですから、喫煙して
19
いるとどうなっていくかということはもうご案内のとおりでありまして、そこを薬局薬剤
師としてどのように取り組んでいけるか、つまりたばこをやめさせていくのにどうしてい
くかというところに着眼しました。
もう一つは、自殺予防でございます。過去3年ぐらい見ても、青森県は、全国でワース
ト3に入っています。いろいろな要因がありますけれども、ここはうつ対策等々、それか
ら過量投薬等々の対応ということで、薬剤師がどう取り組んでいくかということを昨年か
ら始めているところであります。これは、国保中央会の柴田理事長さんと昨年の春にお会
いした際、自殺予防に関して何とかならないかという話で、先ほど早崎さんがお話しされ
た介護予防のところの「基本チェックリスト」の活用で対策ができるということをもとも
とやっていたものですから、さらに後ほど述べますけれども、ゲートキーパー事業を県か
ら委託を受けて、取り組んでいるところであります。
次に、1位ばかりでもう嫌なんですけれども、悪いほうの1位ですが、全国 47 都道府
県のうちで平均介護保険料は高い方の1等賞であります。ですから、適切な介護サービス
がきちんと入っていくということは求められるわけでありますが、それよりも介護予防に
きちんと政策を打っていこうということでありまして、これから話をする基本チェックリ
ストを活用して薬局の中でチェックしていくということを考えたわけであります。結果的
に保険料を下げていきたいとは思っているのですが、ちなみに青森県の場合は 40 市町村
あるのですが、そのうち、1,700 ぐらいある全国市町村のランクの中のベストテンに入っ
ているのが5自治体あるんです。それぐらい介護保険料の高いところだと。そういう青森
県の事情というか、そこに薬剤師会として、また薬局薬剤師としてどうトライアルしてい
くかという発想で話が進んできました。
では、仕組みの話をさせていただきます。私の発言要旨の下に6つほど「・」を入れて
おいたんですけれども、まず真ん中の「基本チェックリスト」と「脳の健康チェックリス
ト」の話をしたいと思います。
本来、基本チェックリストは、早崎さんが今お話しされたように、2 次予防対象者発見
のため地域包括支援センターの方々が日常生活圏域内の 65 歳以上の方に郵送したりとか、
日常生活圏域をぐるぐる回って発見するなど、自治体として保険者としてどのようにやっ
ていくかということはいろいろあるわけでありますが、我々は、お薬をもらいに立ち寄っ
たときに基本チェックリストをやろうではないかと。そのことを 18 年4月に青森県庁さ
んのほうに提言しまして、青森県の場合は、県庁さんと連携を取った効用があります。当
時は青森県内にまだ 60 ぐらい自治体があったと思うんですが、今は 40 ですけれども、保
険者の皆さんに青森県庁さんから、私ら薬局がチェックした基本チェックリストを住所地
の地域包括支援センターへ FAX で送りますので、受けてもらえるかどうかという意向調
査をしてもらいました。ですから、この事業の市町村との窓口は、県庁さんへお願いする。
我々薬局側は、質を担保するために毎年1回研修をやりますよと。その研修に出ている薬
剤師がいるところでないとこの事業をやらないということで質の担保をやって、県内に今
20
500 薬局ぐらいありますが、半分ぐらいの薬局が参加して、260 人ぐらいの薬剤師が毎年
研修を受けて更新しているという形です。
ここで振り返ると、なぜ住所地なのかというところです。よく、受診してお薬をもらい
に来てと、一連のことが市の中で完結するということをイメージされるかもしれませんけ
れども、これは難しいのです。住民の受診する医療機関は市をまたいでどんどん違うとこ
ろへ行きます。ですから、これは青森県庁さんにお願いして、患者さんはいろいろ動くけ
れども、どこの薬局でチェックしても住所地の地域包括支援センターに送って、そしてそ
この地域包括支援センターのスタッフから支援させていくということを仕組みとしてやり
ました。まず仕組みは大体できました。またファクスを送るわけですが、個人情報ですか
ら、同意をもらってとか、情報提供のシート等を作成しマニュアル作成をしてやりました。
これは手前みそですけれども、ここに載っている私の本の下のほうに今の仕組みが全部書
いてありますので、もしよろしければごらんいただければと思います。
そこからさらに進化させて、青森県が、皆様方の県で言う老人福祉計画、それから県の
介護保険事業支援計画の中に今の仕組みを書き込んでいただいて、さらに、今は第4期の
計画実行中ですが、そこに認知症かもしれないという方々を探し出す仕組みをこの事業で
やっていくと3年前から検討しておりました。そのシートが昨年完成しまして、そのシー
トも使いましょうと。正確に言うと、基本チェックリストの中にも、認知症症状があるか
どうかということをチェックする欄はあります。それと青森県が開発した「脳の健康チェ
ックリスト」の両方でひっかけまして、今ほど話したような仕組みで住所地のところに送
っていく。そしてその後を保健師さん、主任介護支援専門員などにフォローアップしても
らう。医療機関の受診勧奨等も、薬剤師がやる場合と、地域包括支援センターがやる場合
という形の仕組みが完成したわけであります。
ただ、40 市町村全部受けられるかとなりますと、どうしても仕事が忙しくなるので嫌だ
といった問題があります。それから、今度は薬剤師側も、今窓口でやることがものすごく
あるものですから、なかなかチェックを勧められないとか、いろいろな問題はありますけ
れども、これはじっくり前に進めていかなければいけないと思っているわけであります。
まとめますと、県庁さんと市町村さんのコラボレーション、そこに職能団体として薬剤
師会がちゃんとかんで質も担保して、そういう仕組みをつくって、今進めているというこ
とであります。
今度は事業内容ということで、この一番下のところをごらんいただくと、介護保険関係
のという意味なんですけれども、公的苦情相談窓口。これは国保中央会さんがつくってく
れた苦情処理のマニュアルの中に「健康介護まちかど相談薬局」というのが記載されてお
りまして、そういうことで、苦情の相談というよりも、窓口を紹介するという機能を持っ
て、事業開始からずっとこれはやってきております。
それから、下から2番目のところでございますが、これだけ自殺の問題が大きくなって
きているところで、これはオールジャパンで薬局機能、薬剤師機能を使って、自殺防止、
21
自殺予防に対してトライアルしていこうということで、昨年、記憶にあると思うんですけ
れども、「お父さん眠れてますか」と、あのポスターを内閣府のほうからの配慮もあって
薬局に張り出して、眠れているか、眠れていないか、例えば、一般用医薬品の中で、眠れ
ないときに飲むようなお薬を頻繁に買っていくとかというときには、逆に声がけをして、
しっかり相談に乗って、専門医のところに紹介するとか、そういうことを今進めようとし
ているところであります。ここはことしの1月に研修会を終わって、また、7月にも1回
終わっていまして、これから具体的にトライアルしていくという話であります。
それと、事業内容のところの上から2つ目、セルフメディケーション。どうしても調剤
専門の薬局というのが多くなっていまして、一般用医薬品の販売というのはなかなかでき
ていないという現状がありますが、薬事法が平成 18 年から変わりまして、第1類薬は薬
局薬剤師しか販売できないんです。それで、先ほどのたばこの話になりますが、ニコチン
パッチとか、あれは第1類になりますので、そういう一般用医薬品をしっかり使って禁煙
指導していくということに特に絞り込んで今トライアルしています。まさにかかりつけ薬
剤師・かかりつけ薬局を目指してやっていっているところであります。
あと残り時間4分ほどですので、一番お伝えしなければいけない、多分主催者側はここ
からの話をしろということだと思うんですが、基本チェックリストを帰ってから確認して
いただければ結構だと思うんですが、21 番から 25 番はうつのところをチェックするよう
になっております。自分がやる気がないとか、そういうことがチェックされていて、青森
県の場合は、先ほど来言っている自殺の問題がありますので、ほかの項目がチェックされ
なくても、21 番から 25 番の中で2個チェックされたら、必ず地域包括支援センターに報
告するというルールを決めました。それから、うつ状態を起こす薬剤は結構あるんです。
ですからそこのところを、薬剤性のものなのか、そういうこともチェックすることができ
ます。
それから、認知症とダブっていくところになりますと、薬剤性せん妄、薬のせいでせん
妄状態になるというところも、疑いをチェックリストのほうでチェックされていたら、薬
剤師がどんどん聞いていって調べてみるとわかります。
それから、飲み込みのところもあるんです。水でむせるとか、そういうところです。そ
うすると、粉薬でいいのかとか、それから飲ませ方はこれでいいのかとか、そういうこと
がチェックできます。それから、口が乾く。ずっと口が乾いた状態だと、舌が割れたりし
て、味に変化が出て食欲が落ちたりとか、要するに薬剤からいろいろな影響が出ていない
のかと。きわめつけは、階段を手すりを使わないで上れるかとか、いすから何もつかまな
いで立ち上がれるかと。そこで、実際あったことですが、筋弛緩剤、肩凝りの薬とかが効
き過ぎて、それで立ち上がれなくなるとか、それから利尿剤をいっぱい飲んでいてカリウ
ムが落ちますと、体に力が入らなくなります。そのことによって、急に立ち上がれなくな
るとか、ふらふらするとか、そのようなことです。基本チェックリストの 25 項目ですが、
これは生活機能そのものに着目していますけれども、そこに薬剤が影響している。そうい
22
うことを薬剤師の専門性としてきちんと見ていくということも、これはベースにある話で
して、そこに応用編で、先ほどの自殺の話やら、認知症かもしれないというチェックやら、
そういうことに取り組んできているわけであります。ですから、これからはしっかりこう
いうものをどれだけ地域包括支援センターへ報告して、どれだけ対応があって、どのよう
に改善していったかとか、そういうデータをこれからきちんととっていかなければいけな
いなと思っているわけであります。
ゲートキーパーのところと「脳の健康チェックリスト」のところは、青森県だけでやっ
ていることになるかもしれませんが、ほかのところは、それぞれ皆様方の地元の県薬剤師
会に、木村がそういう話をしていたということで相談していただければ、日本薬剤師会と
して、そのマニュアル等々も示して、みんなでやろうよということをずっとやってきてお
りますので、要するに地域の薬局というもの、それから薬剤師というものをうまく活用し
ていただければなと思っています。
時間が来ましたけれども、今後に向けてということで、2025 年、これは団塊の方々が
75 歳になる年でありまして、そこに向かって日常生活圏域ごとに地域包括ケアシステムを
つくっていくという中で、当然、介護予防、健康づくり等々、それから生活支援サービス
とか、そういうこともきちんと組み込んでやっていかなければいけないわけでありますが、
何とか、もともとあった薬局の機能をきちんと使って、地域住民の健康づくり、介護予防
等々に貢献できたらなと思っております。
時間が来ましたので、これで終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
【水野】
ありがとうございました。
それでは、最後になりましたが、青沼先生、よろしく。
宮城県涌谷町町民医療福祉センター長
青沼孝徳
宮城県の涌谷町から参りました青沼でございます。
まず最初に、今回私たちのところは被災地でございます。そういう中で、全国各地から
いろいろな意味で被災した東北3県、岩手・宮城・福島に、全国の皆様から本当に心温ま
る、物心両面にわたる多大なご支援をいただいたことにまず本当に感謝申し上げたいと思
います。東北人はみんな感謝しております。
私の町は、人口1万 8,000 人ほどの町で、日本で一番最初に金が採れた町ということが
売りでございまして、金が取れたからといって今も金持ちだというわけではないんですけ
れども、平成の大合併に当たっては、自分たちがつくり上げたこの地域医療のシステムを
壊したくないという思いもあって、合併をしなかった町でございます。
私は、昭和 63 年にこの町に奉職したわけですけれども、この町に奉職するに当たって、
地域の住民の皆さんと我々職員が、多職種協働ですが、そういう人たちと一緒になって地
域包括ケアというものの確立を目指した町づくりをしてまいりました。こういったことが
疾病、特に生活習慣病の発症の抑制とか、医療費の抑制に大変効果的であったということ
23
をお話ししたいと思っています。また、こういった町づくりが今回の東日本大震災に当た
っても大変役に立ったということをちょっとお話ししたいと思います。
まちづくりというか、医療福祉センターをつくるときに、私が先頭を切ってこの町に行
ったわけですが、そのときに町民の皆さんと、どういった町づくりをしようかということ
で、ワークショップ形式で随分時間をかけて目標を立てました。結果、その目標は非常に
単純なものでございまして、涌谷の町に住んでよかった、ほかの町からも住んでみたい、
こんな町づくりがいいのではないのかと、もう言い古された言葉ですけれども、こんなこ
とを目標にしました。ただ、このフレーズだけでは非常に漠然としているので、具体的に、
ではどうすればこの町に住んでよかったんだということを示すのかという意味で、いわゆ
る基本方針というか、基本理念的なものをわかりやすくつくった言葉が、町民一人一人が
安らかに生まれ、健やかに育ち、朗らかに働き、和やかに老いることを通して、この方が
この世に生を受けて、本当に自分の人生に悔いなしと、そのような人生を送れることが一
番幸せなのではないのかと。ただ、こういったことを実現するためには、これは医療者に
だけ任せておいてはできないんだと。私がお願いしたことは、町民の皆さんに、個人は自
分の健康に責任を持つ、それから家族は役割を分かち合う、そして地域は手をとり合う、
こういったことがないと、本当に健康づくり、そしてこの世に生を受けてよかったという
ことにはならないのではないでしょうかと。こんな目標を立てて今まで仕事をしてきたわ
けです。
一つ私の組織の特徴といいますのは、非常に新しい組織でしたので、ある意味、全国の
いろいろな先進地域をモデルにしたということもございますが、あえて申し上げれば、保
健事業、医療、福祉、当時はまだ介護というものはございませんでしたけれども、こうい
うものを統合した行政組織をつくることができました。これは、当時の町長さんにもご理
解をいただいて、役場が持っているいわゆる保健部門とか、それから医療は、当時町にあ
りませんでしたので、なかったですけれども、福祉とか、そういう部門も私たちの医療福
祉センターに入れました。これは大変機能的でした。今私たちが健康づくりをする上で、
この行政と一体になってやっているということが大変有意義でございます。同時に、今大
垣の会長さんもおっしゃられました社会福祉協議会もあわせて福祉という意味で一つ屋根
の下に入ったということが大変意味があったと私は思っています。そして、町長さんから、
私が今センター長をしておりますけれども、センター長がこういう保健・医療・福祉・介
護の部門に関しては事務委任をされて、ありとあらゆる部門が基本的には私のところで方
針を立てて、議会の承認さえ得られれば、そういうものが実行できるという体制が非常に
機能的であったと私は思っております。
こういう複合的な施設をつくりまして、今現在、私たちのセンターには、13 名の保健師
さんを含めて、21 の職種と 382 名の職員がいます。ある意味、非常に大きな雇用の場に
もなっているわけです。地域では工場を誘致するのはなかなか難しい中で、高齢者の方々
を支える健康づくりをするためには多くの人材が必要です。こういう方々を私たち医療福
24
祉が町の職員として雇用しているというのは、大変大きなものだろうと私は思っておりま
す。
さて、涌谷町の健康づくりということを話すときは、職員が一生懸命やらなくてはいけ
ないことはもちろんなんですけれども、今からお話しする組織を話さずにはおられない組
織が私たちの町にはございます。これは健康推進員という組織です。これは、どこの町に
もある保健協力員さんと食生活改善推進員という組織を、私が涌谷に着任して 2 年目、つ
まり平成元年ですけれども、発展的に統合して一つの組織にしました。それはどういうこ
とかというと、保健協力員と食生活改善推進員の方々というのは、もちろんそれぞれ頑張
っているわけですが、ある意味、非常にライバル視しまして、割と同じようなことをする
割にはなかなかうまくいかないことがあったので、これを一つにしました。そして、この
人たちが地域住民の皆さんに情報提供をしたり、高齢者の支援とか安否の確認をしてくれ
たり、地域の健康教室を自主的に開催したり、また健康づくり事業、今回の特定健診など
でも大変大きな役割を果たしてもらっていますけれども、こういう健診事業に協力してく
れる。そういう組織をつくりました。これは、大体 17~18 世帯にお1人いらっしゃいま
す。ですから、涌谷町には現在 316 名の健康推進員さんがいらっしゃって、この方々が涌
谷町の健康づくりの非常に大きな力になっているということはだれも否定できるものでは
ありません。
そういう中で、私たちがどんな活動をこの人たちとしたかといいますと、まず私が涌谷
町へ行ったときは、ご存じのとおり、東北地方は割と脳卒中の多い地域でございます。私
は昭和 62 年に涌谷町に奉職しましたけれども、このころ涌谷町の死因の第1位はがんで
した。その次が脳卒中だったんです。日本は、当時も今もそうですけれども、死因の1番
はがんで、2番が心臓病、3番目が脳卒中です。涌谷町では昭和 62 年のころは脳卒中が
死因の2番でした。この脳卒中の原因は何か。私は非常に単純に考えまして、血圧が高い
からだろうと。血圧の原因は何か。これは、東北地方は非常に塩辛いものをとるので、塩
だろうということで、健康推進員の皆さんと一緒になって減塩運動に取り組みました。当
時からずっと健康教室などを通して、町民の皆さんに、とにかく塩を食うな、しょっぱい
ものを食うなという話をある意味徹底してやってきたわけです。その一つのエピソードと
して、病院に来て、「あなた、血圧が高いね」と言うと、「いや、先生、私はしょっぱい
ものは食っていない」と、そんなことを言う患者さんがいたりして、そういう意味では減
塩運動というのはある程度町民の方々に浸透していったんだろうと私は思うんです。これ
をやれたのは保健師並びに健康推進員の皆さんの役割というか活躍だったと思うんですが、
そういう活動をしてまいりましたら、大体 10 年ぐらい、平成 10 年ぐらいから、脳卒中で
亡くなる方が非常に少なくなってまいりました。現在は、涌谷町の死因の1番はがんです。
2番目は肺炎です。高齢者が多いですから。3番目が心臓です。4番目が脳卒中です。こ
ういう公衆衛生活動というのは、ある程度時間がかかります。私も地域で経験して感じた
ことですが、1年、2年の活動ではなかなか成果はでません。10 年ぐらいのスパンが必要
25
だと思っています。
こういうことがもう一つ医療費という面でも非常に関係しておりまして、涌谷町に私が
行ったころは、医療費は西高東低というか、北海道を除いて関西のほうが高くて、東北地
方はそんなに高くはないのですが、まさにその通りで、宮城県の医療費というのは全国平
均よりちょっと低いんです。涌谷町は当時、宮城県の平均とほとんど同じでございました。
昭和 57~58 年ごろでしょうか、医療費亡国論という、伊藤先生などはご存じだと思いま
すけれども、保険局長さんが、医療費が非常にふえて困ると。このままふえていくと、日
本の国は大変なことになる。そういう意味で医療費を抑制しなくてはいけない。でも、吉
村さんという方ですけれども、この方は多分、ただ医療費のことを言ったのではなくて、
予防活動が必要だということを言っているんですが、そこが余り強調されないで、医療費
が国を滅ぼすといった話のみが協調され、そのころから、医師、要するに病院が多いのが
まずいのだとか、医者をふやすと医療費がふえるといった形で、医学部の定数なども減ら
してまいったわけです。私たちの町は、もともと公的な病院がないところに我々が行って、
こういう予防活動をしてきて、昭和 62~63 年のころは、私たちの国民健康保険の1人当
たりの医療費は宮城県平均とほとんど同じでございました。
ただ、これは、10 年ぐらい、要するに脳卒中が減ったころからです。これはグラフにす
ると、非常に皆さんにお示ししやすいんですけれども、平成 10 年ごろから宮城県の平均
よりも医療費が下がりました。その後ずっと、今ももちろん宮城県の国保の1人当たりの
医療費は日本全国の平均より低いんですが、さらに宮城県の中で私たちの町は県平均と比
べて1人当たりの医療費が4~5万円低いんです。今、宮城県も、合併によって 72 の町
村が 36 になりましたけれども、涌谷町は、新たに我々が行って医者がふえて、病院がで
きても、医療費は宮城県の平均より3~4万円低いんです。そして、国保の医療費は宮城
県の中では下から3番目です。ですから、必ずしも医者がふえたからとか、病院がふえた
から医療費がふえるということではなくて、純粋に確かに医療だけをしていますと、受診
機会がふえますので、医療費がふえる可能性はあるんですけれども、きちんと予防活動を
含めた医療を提供していけば、必ずしもこれは医療費の増高につながらないということを
私は強調したい。それはもちろん医師だけではできません。いろいろな職種の人たちが力
を合わせて健康づくりをするということが、非常に医療費の抑制にもつながるということ
を私は強調しておきたいと思います。
時間が押しておりますが、今回の震災は3月 11 日 14 時 46 分でした。マグニチュード
9です。記録に残っているものでは世界で4番目に強い地震だったと思います。私たちの
町でも震度6強でございました。東日本大震災と呼ばれる大変大きな震災がございました。
私たちの町でも、町内で全壊した家が 124 棟ございました。ほぼ全壊に近いのが 140 棟ぐ
らいで、地震でのそれなりの被害はあったわけです。そして、亡くなった方がお1人。た
だ、こう言ってはなんですが、大きい地震の割には、我が町では、今回はけがをした方と
か亡くなった方は非常に少なかった。ところが、津波が来たところでは多くの方がお亡く
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なりになりました。今回の地震は、津波が来たところと来ないところでは天と地の違いが
ございます。そういう意味で、私は今回の震災というのは本当に阪神・淡路とは大きな違
いのある震災だっただろうと思っております。私たちのところも当然被災しまして、電気
もとまりました。ライフラインはすべてとまりました。電気も水道もガスも、それから通
信もダメでした。電気などは2、3日すれば来るものだと思っていましたけれども、結局
8日間電気は来ませんでした。通信もできませんでした。まさに陸の孤島のような状態で、
すべての市町村がそうだったと思います。
そういう中で地域の人たちは、健康推進員さんなどを中心に、避難所が 18 カ所できま
したけれども、そこに私たちは翌日から、医師と保健師を含めて、健康チェックなどに行
ってまいりました。そこの地域に行きますと、これは大変不思議なもので、ある意味、こ
う言ってはちょっと不謹慎かもしれませんが、多くの人が集まって、いろいろなものを持
ち寄って、地域によっては大変和気あいあいと楽しげに暮らしているといいますか、近所
の人たちと炊き出しをして、本当に地域の力といいますか、私たちが行くと、病院には食
う物がないだろうからと言って、おかずをくれたり、そんなこともございました。その中
で保健師さんたちが果たした役割は大変大きいです。地域住民のどこに老々夫婦がいるか
とか、ひとり暮らしの老人の方がいるかとか、それから障害を持った方、精神的な障害を
持った方、こういう方々をすべて把握しているのは保健師です。彼女らがすべて悉皆調査
のような形で町を全部歩きまして、うちの町には 13 人しかいませんけれども、彼女らは
一生懸命それをやってくれました。
その中で一つ、例として挙げれば、非常に重要な大変な薬を飲んでいる人たちがいます。
ただ、交通手段もすべて途絶えましたので、病院に来ることもできない方々がいたんです。
こういう方々に、特にステロイドとか、抗血栓薬ワーファリンとか、インシュリンを打っ
ている人たち、ぜんそくの患者さんたち、こういう方々をすべて訪問してチェックしまし
た。そして、もちろんどんな薬を飲んでいるかわかりませんので、少なくともうちの病院
にかかっていれば、カルテを調べて、そこからどういう薬がいつごろ切れるかということ
がすべてわかります。それを町民の皆さんの必要な人に配ることができた。こういう意味
での保健師の役割というのは大変大きかった。
そしてまた、石巻市、これは多分今回の震災では市町村単位では最も大きな被害を受け
たところで、宮城県では第2の都市、17 万人のところですが、ここが大きな被害を受けま
して、病院はほとんど壊滅しました。たった1つ赤十字病院というのが残りまして、そこ
のところはほぼ満床になって、患者さんを受け入れられなかったんです。そこを私たちが
後方支援病院として、職員が力を合わせてこれを受け入れられたというのは、私は職員の
力に感謝していますし、また大変よくやってくれたと思っております。病床も大体 15%ぐ
らいふやして受け入れましたけれども、だれ一人、そういうものに文句を言わなかった。
人の力強さというか、そういうものを本当に感じた次第でございます。
そういう中で、私は今回の震災に当たって一つ考えたことがございます。これを最後に
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皆さんにもお話しさせていただいて、ご意見をいただけるとありがたいんですが、今回の
震災で非常に大事なキーワードは、ガバナンスです。統治、行政機能がほぼ麻痺しました。
だけれども、きちんとやった町もあります。そういうのができなかった町もあります。残
念ながら、町村合併したところは大変難しかったと私は感じております。そういう意味で
のガバナンスというのは大事でした。それからもう一つはリーダーシップです。リーダー
シップというのは非常に大事です。そして、もう一つ、最後はコミュニティです。このコ
ミュニティの力があるところは、こういう災害とか不測の事態、いわゆる想定外のことが
おこった時に大変重要です。想定外という言葉が非常にはやりましたけれども、私はこう
いう想定外ということはある一定の確率で起こり得るんだと思うんです。それを想定外と
言わないで、これはこういうものなのだと受け入れて、どうそれに対応して解決していく
かということが人間の知恵だと思っております。
そういう中で、提言は、コミュニティの大事さというものを感じたときに、余り大きな
地域ではコミュニティというのは無理です。せいぜい1万 5,000 とか2万。幾ら自治体が
大きくとも、1万か2万単位で一つのコミュニティをつくっておく。そこには、いわゆる
保健とか医療とか福祉とか介護を包括的に提供できる場所とか、学校も含めて、あと役所
の機能もある程度こういうところに持っていないと、今からの高齢社会はなかなか移動が
大変ですから、こういうコミュニティ単位できちんとそういう役所機能を持たせる。そう
いうエリアを1~2万の地域につくる。幾つかそういうコミュニティをつくる中で、10 万
なり 20 万の都市が、最終的には中枢機能としても、役所としては管理部門を置くとか、
それからいわゆる臓器別の大きな病院はこういう 10 万~20 万単位に1つあればいい。そ
れを中心に2万人ぐらいのコミュニティをきちんとつくっていけば、これからの災害に当
たっても大変強い町になるのではないかと思っております。
ちょっと時間も押しておりますので、私の発表はこれで終わらせていただきます。どう
もご清聴ありがとうございました。(拍手)
【水野】
どうもありがとうございました。
これで一応スピーカーのお話は終わったんですが、ちょっと時間も押しておりますので、
早速会場の方のご意見を拝聴したいと思うんです。それで、まずご自分の所属とお名前を
おっしゃって、だれに質問したいかというのをおっしゃった上で、できるだけ簡潔におっ
しゃっていただきたいと思います。こちらからは光の関係でよく見えないので、すみませ
んが、ご希望の方は挙手をしてください。どうぞ。
【高塚・静岡県国保連合会】
こんにちは、静岡県の国保連合会の高塚と申します。きょ
うは貴重な発表をありがとうございました。
安芸市の国藤さんと、それから薬剤師会の木村先生に質問させていただきたいんですが、
よろしいでしょうか。
まず国藤さんにお伺いしたいんですが、これだけ多くの組織を育ててこられた。そして、
健康づくりを住民主体でやってこられた。このときに、その組織の活動に対して、活動費
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の補助金や支援金といった財源的な支援はどのようにされてきたのかということと、19 年
からあのチームができて、5年目を迎えられて、住民の方たちの意識の変化、そしてお医
者さんへのかかり方の変化、そしてできれば医療費の変化がどのようにあったのかという
ことを教えていただきたいと思います。
そして、木村先生、薬剤師さんでいらっしゃるので、ちょっと発表の要旨からそれてし
まうかもしれませんが、ジェネリックのことについて、行政との連携、医師会との連携で、
青森県ではどのようにされているのか、教えていただきたいと思います。
以上です。
【水野】
それでは、どうぞ。簡単にお答えください。
【国藤】
まず、安芸市の国藤よりご回答申し上げます。活動に対しての補助金というこ
となんですが、安芸市は、財政健全化団体に入るようなところを脱したところで、非常に
行財政が厳しく、アクションプランで補助金団体はつくらないということで頑張ってきて
いるところです。必要なことは、その団体に業務委託ということで活動していただいてお
ります。具体的には、健康づくり婦人会さん、食生活改善推進協議会さんと内容を詰めま
して、それにふさわしい委託料を業務委託という形でお支払いしております。補助金とし
ましては、恐らく皆様方の自治体と同じだと思うんですけれども、老人クラブ連合会さん
の活動補助金というものを補助金としてお支払いしているというところです。元気ふれあ
い会議は会計を持っておりません。副賞金 10 万円は余すことなくジャンパーにかわりま
した。というところで、お金、財政的な支援というのはほとんどない。人の知恵と力のみ、
それぞれの手弁当でというところでございます。ただ、国保ヘルスアップ事業費を活用し
まして、各公民館単位に取り組む元気アップ推進事業につきましては、その経費を直接的
に市が支弁するということで、制度の枠組みをつくっております。
住民意識の変化ということなんですけれども、どこへ行きましても、「一番わかってい
らっしゃるのは住民の皆さん方ご自身なんですよ。今できることから始めませんか。今や
らないと手おくれになってしまうんですよ」ということでお話をしてきておりますので、
自分たちがやらなくてはいけないんだとお考えいただけているようです。
ドクターへのかかり方の変化ということですが、すべてこちらがお伝えする情報につい
ては、かかりつけの先生がいらっしゃる皆様には「かかりつけの先生とご相談ください」
ということでお返しをしておりまして、地区の医師会の先生方も、この患者さんについて
どうなんだろうといったことがあった場合、保健センターにご連絡があるということで、
双方連携して住民主体の健康づくりを進めているんだということが根づいてきているかと
思います。
医療費の変化につきましては、先ほど 10 年スパンというお話もありましたが、まだま
だ成果としては上がってきておりません。
以上でございます。
【水野】
ありがとうございました。
29
それでは、木村先生、一言。
【木村】
ジェネリックに関しては、医師会と薬剤師会で特に調整することなどはないの
ですが、ジェネリックは結構、47 都道府県の中で青森県は使われているほうだと思います。
それで、大事なのは情報共有だということで、青森県医師会・歯科医師会・薬剤師会の3
師会でお薬手帳をつくりました。そこに全部情報を載せて、医療機関または薬局に行くと
きに必ずこのお薬手帳を出していただいて、その情報共有をしていこうということでやっ
ていっています。保険者側では、保険者のほうの協議会で、医師会・歯科医師会・薬剤師
会等の構成メンバーで会議を設けると言っていたんですけれども、たしか青森県ではこれ
もまだできていなかったかなと思います。しかしながら、ねらいはジェネリックの使用促
進に向けて走っていけばいいということですので、現状はそういう状況だということです。
以上です。
【水野】
ありがとうございました。今ご質問のあった方、よろしゅうございますか。
【高塚・静岡県国保連合会】
【水野】
はい。ありがとうございました。
大変残念なんですが、時間が押しておりますので、ここで伊藤先生に総括のよ
うな話をお伺いしたいと思います。伊藤先生、よろしく。
【伊藤】
私に与えられた役割は、全体を通して、今後連携を推進していくためにはどう
したらいいかというアドバイスをしてくれということなんです。それで、5人の方の発表
を聞かせていただきまして、大変広範囲にわたっていますので、なかなか整理するのが大
変だったんですが、何点かポイントを申し上げたいと思います。
まず、前渕さん、それから国藤さんのほうからご指摘いただいた、特定健診・保健指導
が一つのテーマであったのではないかと思います。これは、平成 18 年度の医療制度改革
で保険者に義務づけられてございますが、きょうお話をお聞きしていまして、今、厚労省
の検討会でも、この3年の実績を踏まえてどうするかということを検討されていると思う
んですが、私は、最大の問題は、服薬中の人たちに対する保健指導をどうするかという問
題ではないかと思います。これは、制度設計の段階では、いわゆるポピュレーション・ア
プローチとハイリスク・アプローチは保険者が直接、保健師・管理栄養士等が保健指導す
ると。そして、服薬中の人に対しては、主としてかかりつけの医師の指導のもとでという
ことで、原則、保健師・管理栄養士はそこへ手を出さないという制度設計になっていると
思うんですが、これは、お話をお伺いしていて、今後の制度改正の中で、服薬中の人たち
に対する保健指導をもっと強化していく体制をつくるにはどうしたらいいかという観点で、
この地域の仕組みをつくっていく必要があるのではないかなと思います。
これは、ちょうど国保連合会で、服薬治療中の者に対する保健指導の効果について私が
座長で3年間検討させていただいて、たまたま国保の直営診療所で治療中の人たちに対す
る保健指導をきちんとやった成果が、これは対照群を 250 人ずつ2群に分けてきちんとや
りますと、通常の保健指導をやったグループと、強力に指導をやったグループでは、明ら
かに強力にやったグループが、外来の医療費も下がりますし、検査データも下がりました。
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明らかに医療費の効果までこの検討会で報告されているわけです。そういうことを考えま
すと、国保の直営診療所という特殊な条件のもとでしたけれども、例えば、かかりつけの
先生にかかっていたとしても、保険者としての保健指導を地域の中でどうつくっていくか
というあたり、これが今後一つ大きな課題ではないかということをまず第1点に申し上げ
ておきたいと思います。
それからもう一つは、保健指導に関連して、これは前渕さんからもお話がございました
が、指導ではなくて支援だと。これは非常に基本的な概念で、ややもすると保健師・管理
栄養士の講義形式の、ああしろ、こうしろという形から、きちんと住民自身にいかに行動
変容していくかということを考えさせる保健指導。これは、講義形式より、実際は例えば
少人数でグループ方式でセミナー方式などで、保健師さんとか管理栄養士さんが司会役の
ような形で、どうしたらいいんだろうといった形で、そのような工夫をしながら進めてい
くということが一つあるのではないかなと思います。
それから、早崎さん、それから木村さんからもお話がございましたが、チェックリスト
の、例えば社協としての取り組み、また薬剤師会としての取り組みのお話がございました。
このチェックリストの後、いかにこのチェックリストで拾い上げられたというか、問題点
を把握した対象者に対して、迅速に行動につなげていくような体制をつくれるかどうかと
いうことが、今後地域での体制づくりの一つの課題になっていくのではないかなと思いま
す。そういう意味から、木村さんの、住所地のところにきちんと連絡する仕組みをつくっ
てきちんとフォローしていくというやり方、これは今後連携を進めていく上で一つ大きな
モデルではないかなと思っております。
それと関連して、木村さんのご発表の中で、今、保健・医療・福祉・介護を含めて、地
域でどういう体制をつくっていくかという中で、「まちかど相談薬局」、この薬剤師の役
割を具体的に地域で展開していくということから申し上げますと、これは全国的に見ても、
地域での体制づくりの一つのモデルケースではないかなと思っていますので、ぜひひとつ
今後とも、いかにこの青森の例を全国的に普及していくかということを念頭に置いて、き
ちんと青森の取り組みの結果がこうなったというエビデンスを少し積極的に公表していく
ような取り組みをぜひお願いしたいと思います。
それから、最後に青沼先生から、大変な、言ってみれば町全体でどう取り組むかという
一つの事例だったと思うんですが、最終的には私は、病気を持っていても、障害を持って
いても、いかに地域で継続して住み続けることができる町づくりをしていくかという、本
当にそういう一つのモデルだと思っております。そういう中で、実は私は何点か青沼先生
のお話からきょう指摘させていただきたいことは、3.11 の東日本大震災の後の対応の話が
ございましたけれども、やはりここで保健師の役割というのをもう一度再認識すべきでは
ないかなと思うんです。今ややもすると、保健師の問題というのが、かつての保健師は、
市町村役場の婦長さんのもとに、全部一つのセクションに固まって、いろいろ教育指導を
受けながら成長していったという形になっているんですが、今は非常に保健師の担当する
31
分野が広がって、いわゆる分散配置になってきていて、そして保健師自身が、母子保健担
当だとか、お年寄りの介護担当だとか、精神担当だとか、言ってみれば非常に分散配置の
もとで、かつての地区担当で地域全体を見ていくという力がだんだん少し弱まってきてい
るのではないかという問題もあると思うんです。したがって、今後そういう保健師の活動
分野が広がっていく中で、分散配置が進んでいく中で、保健師の地域を見て対応する能力
をどういう形で再教育していくのかということ、これは一つ取り組まなければいけないと
思います。
それから、もう一つ青沼先生のお話の中で、総合医の役割の重要性というのをご指摘い
ただいたと思うんです。今、医師の養成についても、臓器別の専門医が非常に医師養成の
主流になっていますので、特に今回の東日本大震災の後でも一番必要とされたのはこの総
合医の役割なんです。DMATが駆けつけましたけれども、阪神・淡路のモデルでつくら
れたDMATが三陸海岸へ行っても、ほとんどやる仕事がなかったと。一番大きな役割を
果たした、総合的に患者さんを診られるドクター、こういう総合医の養成をどうしていく
かというのか、究極的な安心して住み続ける町づくりの非常に大きなファクターになって
いくのではないかなと思うんです。そういう意味で今、きょう司会をやっていただいてお
ります水野先生が中心になって、国保中央会が本当に今の日本のこれからの医師養成制度
の中で、臓器別の専門医だけではなくて、総合医の養成にきちんと対応して、そして住民
が安心して住み続けられる町、医療の体制をつくっていく。そういうことで今、水野先生
が中心になって、総合医をどうやって普及していくかといった取り組みが始まっています
ので、ぜひひとつきょうは会場の皆さん方にそのことにも関心を持っていただいて、総合
医の体制づくりが一つの大きな課題だというのを認識していただきたいなと思っておりま
す。
私の立場から甚だ取りとめがないことを申し上げましたが、まだいろいろ触れなければ
ならないことを落としているかもわかりませんが、ちょっと時間の関係もございますので、
以上を申し上げまして私のコメントとさせていただきたいと思います。(拍手)
【水野】
どうもありがとうございました。
それで、あと3分になったので、これでまとめないといけないんですが、とてもではな
いが、まとめようがないと思います。それで、私がちょっと感想的になことを言わせてい
ただきますと、私もこういう仕事をしていますから、保健師さんの大ベテランのすごい人
というのはたくさん存じ上げている。そういう人たちにたまたま会うことがあると、皆さ
んこうおっしゃるんです。「私は 30 年」とか、あるいは人によっては「40 年」とか、
「地域の住民に、こうやらないとだめだということをものすごく口を酸っぱくして言って
きた。しかし、あれは何の効果もなかったということが今よくわかる」とおっしゃる方が
非常に多いんです。きょうも保健師さんが大分お見えになっていると思いますが、私はそ
ういうことが本当はこの問題には大きな問題としてあるのではないかと思うんです。それ
で、その結論は、保健師さんが皆さん僕におっしゃるのは、「本人がやろうと思わない限
32
りは、私どもが何を言っても、それは意味がないということがわかった」ということです。
私は、これはひょっとしたら卓見ではないかと思うんです。私は、この問題というのは、
どういうインセンティブを与えるかということに尽きると思うんです。それで、いろいろ
な話を総合的考えてみますと、公衆衛生でよく言われる、馬を水のほとりに連れてくるこ
とはできるけれども、水を飲むのは馬自身であるという言葉がある。私は、そのとおりだ
と思うんです。本当に水を飲むのは馬自身なので、健康に関心を持って受けてみようと思
う人しか受けない。だから、私はそこのところが、どういう方法が一番いいのかというと、
私のささやかな経験から言いますと、一番いいのは、自分が非常に信頼している人の中で
は、例えば総合医の先生あるいは保健師さんとか、そういう人たちと非常に密接な人間関
係を持っていて、その人の言うことには耳を傾けるんだという相手の先生から「あなたは
受けたほうがいいよ」と言われたら、僕は受けに行くと思うんです。そこは、医者と患者
の人間関係という言葉がありますが、それが今だんだん廃れてきているのではないかと思
います。
先ほども青沼先生がおっしゃったように、私も聞いた話では、たくさんの医者が災害地
に行きました。けれども、神戸の場合も同じでしたけれども、今度の場合も、役に立って
いるのは総合医なんです。専門医というのは、それは皆さん大変な技術をお持ちかもしれ
ませんけれども、例えば、機械がないから診られないとか、データが出ないからだめだと
か、検査をやらないとわからないとかということで何もならないわけです。だけれども、
総合医の先生は、訴えなどから見て、「あなたはこうやったらいいんじゃないか」と言う
と、それで非常に喜んでやって、よくなるわけなんです。そこのところで僕は総合医時代
が今来たと思うんです。その総合医の先生が積極的に保健指導というものに取り組んでい
ただきたい。私はそのために十分な医療費を提供すればいいと思うんです。僕は、金の問
題というのは、そういう使い方をしていくべきなのではないかと思いますので、無駄なこ
とをやってもしようがないでしょう。
だから、今はふらっと大学病院の外来に行く患者が多過ぎます。例えば、東京で言えば
慶応大学附属病院。それは立派な病院ですが、あそこの外来に毎日 5,500 人近く来るんで
す。5,500 人も、慶応でないと診てもらえない、あるいは治らない患者がそんなにいるか。
僕は、それは幾ら東京が広い、あちこちから見える方もあると言われても、そんなにはい
ないと思うんです。来ている人の中には、風邪引き、腹痛、二日酔い、切り傷のような人
も来ているに違いないんです。私は、そういうことではなくて、総合医の先生がちゃんと
最初に診て、そしてこの人はこの際専門医に診てもらわないといけないという人をやって
いる。ヨーロッパの場合にはこれは 10%なんです。だから、そういうところからこういう
ヘルス事業に積極的に取り組んでいただけるドクターが出てくる。もちろん、保健師さん
などは一生懸命やっていただいている。それから、地域のお役人の方々も皆さん一生懸命
取り組んでくださっているわけです。だから、僕は、当然総合医の先生もお願いしたいと
いうことをこの際特に強調したいと思います。
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結論だけを言うと、伊藤先生とやや似たようなことになりましたけれども、私もそのよ
うに考えておりますし、どうか皆さん方もこの際、総合医が地域の医療の中のヘルス事業
について、どのように受け持って接触していただけるとありがたいかということをちょっ
と考えていく時代が来ているのではないだろうかと思います。
きょうは、いろいろご不満な点がたくさんあったと思うんです。もっとあれを聞きたか
ったとか、いろいろあったと思うんです。しかし、それはすべて司会の私の手際が悪かっ
たということでございまして、みんな私が悪いんですということではありますが、一応こ
れで終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)
午前の部
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(了)
第28回「健康な町づくり」シンポジウム
期日
平成23年8月25日(木)
会場
日本教育会館「一ツ橋ホール」
午後13:30
シンポジウム
「これからの健康な町づくり
~健康・長寿
暮らしやすい町をめざして~」
司会者
医事評論家
行天
良雄
氏
安村
誠司
氏
山口
道子
氏
石川県内灘町長
八十出泰成
氏
長野県東御市長
花岡
氏
鹿児島県伊仙町長
大久保
助言者
福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座教授
厚生労働省保険局国民健康保険課
在宅医療・健康管理技術推進専門官
発表者
【司会】
利夫
明
氏
それでは、ただいまより午後の部を始めます。
「これからの健康な町づくり~健康・長寿
暮らしやすい町をめざして~」と題しまし
たシンポジウムでございます。
シンポジウムの司会は、医事評論家の行天良雄先生でございます。先生のご略歴につい
ては、受付にて配布いたしましたプログラムの中に記載させていただいております。先生
におかれましては、本シンポジウムの第1回目より午後の部の司会をお願いしております。
ことしで 28 回目の司会となります。そのほかのご出席の皆様のご紹介は先生にお願いす
ることといたしまして、それでは行天先生、よろしくお願いいたします。
【行天】
今ご紹介いただきました行天と申します。ご紹介のとおり、伺っておりますと、
28 回ずっと司会をしたということなので、褒められているのか、非常に疑問視されている
のか、大変難しいところでございますけれども、どちらにしましても 28 を引いていただ
きますと、私がどのくらいの年かということは、お手元に配ってありますパンフレットで
ご理解いただけると思います。
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唯一の取り柄は、国保並びに日本の医療保険制度全体に対しまして、外からと申します
し、実は中なんでございますけれども、中にいながらその変動というものをずっと見続け
てまいりました。そして、何といっても、きょう午前中のお話にも出ましたけれども、今
回の東北を中心といたします大きな災難あるいは災害と申しますか、こういった問題が、
日本の各地の自治体のあり方とか、市町村というものはどういう役割を真剣に考えていか
なければならないか、特に医療そのほかの問題に関しては実に重大なつながりがあるとい
うことが嫌になるほどわかりつつあるところです。
この問題につきましては、助言できょうお越しいただいております安村先生は直接今福
島においでになりますので、十分に後でお話しいただけると思います。また、皆様方のと
ころでも、現実に多かれ少なかれ、何らかの影響をお受けになっていらっしゃるところか
らお越しいただいている方々は、さてどうしたものかなと。はっきり申しまして、一番上
の国の方針や何かに対して、大変なぐらつきがございまして、世界では相当その問題に関
しては疑問視している国々も多いわけでございます。そして、その中で現実に嫌な思い、
あるいはひどい目、もしくは大変苦しい思いになっていらっしゃる方、あるいはご家族そ
のほかを失ったという悲痛きわまりないお立場の方々に対して、どういう対応をしていっ
たらいいかという問題を含めまして、次にいつまた同じようなことが起こるかわからない
し、あるいはそれ以上に、もっと明るく積極的に地域というものを盛り立てていく道があ
るのではないかということを、各3人の方々のお話と助言の先生方のアドバイスをいただ
きまして考えさせていただきたいと思っております。
すぐきょうお話の方々をご紹介申し上げたりなどすればいいんですけれども、ちょっと
時間をいただきまして、私は 28 回もやったということでお許しいただいて、この3月 11
日前後の私、そして今日までの私のあり方に関して少しお話しさせていただき、何らかの
お役に立てていただければと思っておりますので、ちょっとお耳とお時間をいただきたい
と思います。
実は3月 11 日、私は中国におりました。当たり前でございますけれども、地震そのほ
かに関しては、微動だにいたしませんし、何の関係もなかったわけでございますけれども、
アジア地域の高齢化問題を中心とするシンポジウムに出ておりまして、何かざわざわとい
った感じがロビーのほうでは聞こえておりましたけれども、それはわからないで、やがて
コーヒーブレイクになりましてから、テレビの前に皆さんお集まりになっておりましたら、
BBCの放送が流れておりまして、それが日本のNHKとネットを組んでおりまして、中
継そのほかが入っていたわけです。やたらとリポーターが「東京、東京」ということを言
っていたものですから、それで黒い煙がもくもくと出ておりました。これは、例の木更津
あたりの石油のコンビナートがちょっとぐらついて火が出た程度のものであったわけです
けれども、それを見ておりますと、何もほかのことが聞こえなくてわからなくて、リポー
ターだけが「東京、東京」と言っているので、何事が起こったのかなという感じがござい
ました。
36
でも、会のほうはそのまま進んでおりまして、夕方になって食事ということになったら、
もうこれははっきりテレビがつきまして、しかも向こうの人の話では、要するに東京から
北のほうにかけて非常に大きな地震と津波が同時にやってきたといったことで、その時点
では地震と津波だけでございました。ほかの方たちがテレビの前に私を押し出してくれて、
「まあ見ろ」と言うので見ておりましたら、やがてものすごい拍手が起こったわけです。
何かなと思いまして、私も改めてテレビに目をくぎづけにするようにして見てまいりまし
たら、時差が1時間ございますから、もう既に夜になっておりました。そして、雪みたい
なものがサッサッと降っている中を、ハイビジョンのせいか、割合ぼんやりと映っていた
んですけれども、一斉にまた拍手が起こりましたのは、大勢の人たちが寒い雪の中で行列
しておりまして、何かよくわからないんですけれども、何らかのパンかおにぎりかと缶に
入れたお茶のようなものを配っているんですけれども、お一人、年寄りのような方がよろ
よろしていらっしゃいまして、その方を周りの方が抱えながらその人の手にお茶などを渡
しているシーンだったんです。すごい拍手が起こりまして、日本から行っていたのは私の
ほかに2~3人でございましたけれども、大変な礼賛を受けまして、すごい国だと激賛さ
れました。特にある教授の方は、四川の大きな地震の後にすぐ現地入りなさった方でして、
そのときに略奪、暴行そのほかというのを見ているので、こんなに礼節と礼儀を正しくし
ている国などない、すばらしい国だということで激賛されました。
みんな心配して、すぐ帰れということで私は飛行場まで送られたんですけれども、飛行
場へ行ったら、日本の飛行機ばかりなんです。こんなにいっぱいいるのだったら心配ない
なと思ったらとんでもない話でして、飛行機の中で一晩泊められました。というのは、肝
心かなめの羽田にしても、成田にしても、関空までがストップしておりまして、飛行機が
入れないわけです。仕方がないから現地で待っていて、30 時間かけて私もうちへ帰ってき
たんです。
それで電話をかけまくったんですけれども、どこも通じませんで、全然だめでございま
したけれども、都内そのほかはもちろんかかりますので、間もなく私がずっと務めており
ましたNHKから電話があって、ちょっと手伝ってくれないかと言うので、どういうこと
かなと思いましたら、私は 1960 年のチリ地震津波のときに、宮城県の少し海寄り、三陸
寄りになってまいります、あのあたりにずっと3カ月ほど仕事で住み込んでおりました。
そこではたくさんいろいろな方たちにお世話になったんですけれども、その方たちの安否
というよりも、その方たち自身がもう既にお年で、大半がお亡くなりになっていて、残っ
ていたのはほんのわずかな方だけだったんです。それでも、土地勘とかいろいろな問題が
あるし、志津川の大きな津波の問題はよく知っているだろうから、行ってくれと言うので、
私としても、心配でしたから、行ってみたいということで、行きました。
それから後、今日まで、点々と何回も行ったり来たり行ったり来たりをやっております。
北は結局岩手、宮城、福島、茨城、そして千葉のほう、これがまた意外にたくさんござい
ます。それから、ディズニーランドのあります浦安周辺も、液状化現象というのがありま
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して、今度の地震の影響で随分ひどい目に遭っております。そんなところを点々として、
行ったり来たり行ったり来たりを繰り返しております。
ただし、ここで一つ鮮烈な思い出があるわけでございます。最初に行きましたのが3月
16 日の夜だったと思うんですが、現地までヘリコプターそのほかを使って行ったところが、
私がちょっとだけ面識のあった開業医の先生がちっとも見当たらないので、いろいろな人
に、あの先生はどうしているかということを聞いたら、うちも流された、診療所も流され
た、それから奥さんも行方不明だし、看護婦さんたちも2、3人流されてしまったみたい
だといった話を漠然と聞いていたんですけれども、やがて彼が見つかったものですから、
私は飛んでいって「先生」と言っても、ぼうっとしていまして、典型的な痴呆老人の顔だ
ったんです。何を言ったって返事もしない。これはどうかしてしまったのではないかなと
思って大変心配いたしました。しかし、ご存じだと思いますが、そのころ、連日と言って
いいぐらい、あるいは連日どころではない、連時間で強烈な余震が繰り返されておりまし
た。ですから、地震は一遍来て、マグニチュード9が大きくアタックしましたけれどもそ
の後頻々とすごい余震が繰り返されたわけですけれども、真っ暗と言っていいような状況
の避難所の中で、揺れるたびに子供が泣き出すわけです。それまでは人がいないみたいに
静まりかえっているところで、急に子供が泣き出しまして、「ワーッ」と言って、すごい
声を上げながら子供が近くの大人に飛びかかっていくわけです。つかまるわけです。その
ときに私は非常に驚きましたのは、もう痴呆老人ではないかと思っていたそのドクターが
突然立ち上がりまして、子供が大人をめがけて駆け回って、そこにまつわりついて、大人
は実はうろうろしておりまして、おばあちゃんどころではないくらいにみんなが地面にひ
れ伏したりなどしているときに、すっくとその人が立ち上がって、子供をぐっと抱き寄せ
たんです。それで何か言っていました。よくそんなことを覚えていないんですけれども、
半ば暗闇と言っていいような中で、もうよぼよぼになっていて、間違いなく痴呆だと思っ
ていたその開業医が、すっくと立って、「大丈夫だ」と何か一言言ったらしいんです。あ
と子供たちがワーッと寄せ集まっておりまして、みんなに頼られているたった一本の柱み
たいなその開業医を見たときに、私はつくづく衝撃を受けたわけです。それこそ、医事評
論家などと言って 28 回もこの会の司会をさせていただいているよりも、こういうところ
でここの地域に生きた一人の医者として地域医療を守っていたほうが、自分にとっては幸
せだったのではないかなということを心底からそのときは思いました。そして、地域医療
というものはこんなにもすばらしいものなのかと思ったわけです。
以後のことに関しては、私自身も手伝いましたから、余りとやかく言えないのですけれ
ども、方々の大学などからいろいろなことでたくさんの人たちが次々と見えました。見え
ても、この方たちは地縁血縁がほとんどないんです。確かにいろいろなものを持ってきて
くださいました。でも、一番欲しかったのは、水であり、ガソリンだったんです。しかし、
それを最優先で持ってきたのは日赤だけでございまして、余りそれがなくて、薬だの何だ
のを持ってこられたので、それも大事なんですけれども、一番大事だったのは水であり、
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それからガソリンであったということだけは、今後の問題として皆様方もよく今ご検討に
なっていると思います。
現に東京都の場合でございますと、先日も会議があったんですけれども、何としても井
戸を掘りたい。基幹病院に関しては、各病院に全部井戸を掘らせる。そして、井戸が数本
ないことには、ストックなどはできないわけです。
それから、これは後の話になりますけれども、3月 11 日に津波と地震、両方のダブル
アタックで、津波のほうに関しては、何と申しますか、生き残った方たちが、何で自分が
助かったのだろう、何であの人が死んだのだろうという罪悪感みたいなものを皆さんとて
も強くお持ちでございまして、もうその時点でも、寄り添って抱きしめてあげる以外には
治療の方法などは全くなかった医療対象だったんです。
しかし、同時に、多少政府の隠蔽というのはあったんですけれども、もう 16 日、17 日
ぐらいには、つまり私が北のほうに行きました時点で、東京では放射能の旋風が大体来て
おりました。そのために、東大にしても、日赤医療センターにしましても、もう危険を察
知しまして、特に日赤医療センターは産科が非常に充実している施設でございますので、
赤ちゃんに関しては、粉ミルクで、水は全部井戸の水を使えと、あるいは熊本のほうから
送ってもらった水で必ず赤ちゃんの哺乳をするようにということを、院長が決断して命令
しております。事ほどさように、次に来るものが何かということに関して決断したリーダ
ーというのがいたところは幸せです。市町村でも全部そうです。
その後、私は今何をやっているかといいますと、ほとんど放射能問題に明け暮れており
まして、北から南までいろいろな先生方にお会いしたり、またその先生方のご意見を伺っ
ておりますけれども、こればかりは全然わからない。ただ言えることは、風評被害、風評
被害と言っておりますけれども、風評被害などというものは一つもございませんね。全部、
後になったら本物です。みんなが、住民が口々に自分たちで伝え、そして聞きまくってい
ることは、自分たちの命と生活に関することですから、そんな甘っちょろいことをやって
いないんです。被災していない方たちにとりましては単なる風評かもしれませんけれども、
被災地の人々にとりましては、風評ではなくて、まさに生活であり、現実だということだ
けは、ぜひ覚えていただきたい。こういう不幸はめったにないと言われております。
1,000 年に一度などということが言われましたけれども、よくよく調べられたら 1,000 年
に一度どころではございませんで、100 年どころか、さきの津波で私が申しましたのは
1960 年に私は行っておりますが、その後また軽い津波が幾回か来ております。それでもそ
の町、そのところが好きだという方たちは、そこで暮らしていらっしゃるわけで、そこで
の生活を持っていこうとしている。そうすると、そこでの地元、市町村というものが、そ
この方たちをいかに盛り育て、そしてもとのとおりの豊かさというもの、心の穏やかさを
持っていけるかどうかということが、一番大きな首長の課題になっていることは間違いな
いわけですけれども、皆様方も新聞そのほかでいろいろとお聞きになっていると思います。
特に今一番よくわかりますのは、インターネットを見ておりますと、県知事を初めとして、
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どこの町長さん、どこの市長さんが、どういう行政でどういう手段を講じていらっしゃっ
ているか、決断をとっていらっしゃるかということは、非常によく飛び交っております。
ですから、皆様方もぜひインターネットそのほかをごらんいただきますと、現実問題とし
て何が大事かということがおわかりいただけると思います。
ちょっと長い話になりましたけれども、きょうはそういったもので、たくさんの体験と、
そして現実問題をお抱えになっていらっしゃる3人の首長の方にお話をいただきます。
これはもう、肩書とかご経歴に関しましては、皆様方のこのパンフレットにございます
ので、これをゆっくりごらんいただきたいと思います。
大変お待たせいたしましたが、早速、健康な町づくりについて
暮らしやすい町、村を
目指して自分たちがどのようにやってきたかという実績そのほかを、その首長さんのお口
から、ご自分の体験からお話をいただきたいと思っております。
では、石川県の内灘町長でいらっしゃる八十出泰成町長さんにまずお話をいただきたい
と思います。よろしくお願いいたします。
□発表者
石川県内灘町長
八十出
泰成
皆さん、こんにちは。ただいまご紹介をいただきました、恋人の聖地の町、石川県の内
灘町長、八十出でございます。きょうは、このように多くの皆さんの前で発表できますこ
と、本当に心から感謝をしているところでございます。
本日は、「連携による健康な町づくりを目指して」と題しまして、医療機関や地域と連
携した健康事業につきましてご報告させていただきたいと思っているところでございます。
まず、発表する前に、今ほども司会者の行天さんからお話のありました、3月 11 日に
東日本大震災という未曾有の災害が起きたわけでございます。被災されてお亡くなりにな
られた皆さん、そして今もなお厳しい避難生活を余儀なくされている皆さんに、心から哀
悼の意を表しますとともに、心からのお見舞いを申し上げたいと思っているところでござ
います。私ども内灘町も、全国の皆さんの「頑張れ日本、頑張れ東北」を合言葉に、でき
得る限りの支援をこれからも続けていく所存でございます。日本人は皆、心は一つ、とも
にあしたへ、互いに手を携え、困難を乗り越えていきましょう。
それでは、早速発表に移らせていただきます。最初は、内灘町の概要でございます。内
灘町は、能登半島のつけ根に位置しまして、金沢市の北側に隣接しているところでござい
ます。西に日本海、東に 600 ヘクタールの広大な河北潟を擁し、白山連峰や 3,000 メート
ル級の山々が連なる立山連峰を望む光あふれる砂丘の町でございます。
私たちが自慢の内灘海岸は、四季を通じ多くの人でにぎわい、日本海に沈むすばらしい
夕日を眺めることができるわけでございます。この内灘海岸とサンセットブリッジ内灘の
周辺一帯は、一昨年4月に「恋人の聖地」に選定されました。そして、この地を磨くため
に今一生懸命に頑張っているところでございます。
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また、町の中心に町役場と隣接し、金沢医科大学及び大学病院があります。
町の人口ですが、昭和 37 年の町制施行時には 7,600 人でございましたが、平成 23 年6
月現在で2万 7,000 人を超えたわけでございます。これは、主に昭和 40 年代から 60 年代
までの間に金沢市のベッドタウンとして宅地開発が進み、現在の 50 歳~64 歳人口が急激
に増加したものであります。現在のところ、高齢化は 19.4%、石川県平均よりも低い率と
なっているところでございますが、これから5年後には 26%を超えることが予測されるわ
けでございます。そして高齢化がますます進行するということであります。内灘町といた
しましては、こうした状況に対処するために、中長期の視野に立って、さまざまな施策を
相互に関連づけながら効率的に実施する必要があるわけでございます。
こうしたことから従来から「健康」「教育」「環境」「子育て支援」「活力」の5つの
K、頭文字がカ行でありますのでそう言っているわけでありますが、その5つのKを町活
性化の基本テーマとして取り組んでいるところであります。特に「健康」につきましては、
マンパワーの充実を最優先にしながら、保健師を平成 22 年までに7名増員いたしまして、
現在 12 名が各種の健康施策に取り組んでいるところでございます。今回は、このうち金
沢医科大学との連携をもとにいたしました「健康」と「教育」「子育て支援」を中心とし
た各種事業の一端をご紹介させていただきます。
次に、内灘町の国保の概要でございます。国民健康保険の被保険者数は、平成 22 年度
末で 6,662 人であり、人口に占める加入率は 24.8%になっているところでございます。被
保険者数、人口に占める加入率ともに増加傾向にあります。これは、団塊世代の加入によ
る被保険者数の増加が大きな要因となっているわけであります。そして、この傾向は、町
の人口構成から今後 10 年間は続くものと考えられているところでございます。
平成 22 年度の1人当たりの医療費は、一般・退職分計で 31 万 7,071 円。前年度比では
1%の伸びであります。年々増加傾向にありますが、今後も団塊世代の加入に伴い1人当
たり医療費及び総医療費は今以上増加することが予想されるところでございます。
次に、金沢医科大学を核といたしました地域医療機関との連携についてであります。金
沢医科大学は、昭和 47 年に、日本海側では唯一の私立医科大学として、内灘町に設立さ
れた大学でございます。その2年後の昭和 49 年に大学病院が開設されています。この大
学と病院は、町にとっての大きな地域資源であります。これまでは、健康や教育の分野で
個々にご協力いただいておりましたが、住民福祉の充実のためにも、内灘町の発展のため
にも、互いの協力関係を強化することが重要でありました。こうしたことから、相互の人
的及び物的資源の活用により、まちづくり、保健、医療、教育等の充実によって広く地域
社会の発展に資することを目的に、平成 18 年 10 月に町と大学との包括連携協定を締結し
たわけでございます。その成果として、今回は、健康等に関する主な事業を紹介いたしま
す。そのほかの連携項目につきましては、この画面をごらんいただきたいと思っておりま
す。
まず、国保ヘルスアップ事業について申し上げたいと思います。内灘町の健康状況は、
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国民健康保険の医療費分析では、国保全体の被保険者の3割である 65 歳以上の方が医療
費全体の 53%を占めております。疾病分類別では、循環器疾患と糖尿病を含む内分泌疾患
や腎症が 65 歳以上の医療費の約4割となっているところでございます。また、高額医療
となる人工透析患者が年々増加しておりまして、透析に至る原因として糖尿病性腎症が多
い状況でございます。
特定健診につきましては、平成 22 年度の受診者数は 1,800 人余りでありまして、受診
率は 41.1%、特定保健指導実施者は 110 人、実施率は 47%となっている次第でございま
す。特定健診の結果から見ますと、受診者のうち特定保健指導の対象となる人は1割でご
ざいまして、治療中の人を含めて、特定保健指導は非該当であっても何らかの保健指導が
必要な人が全体の7割を占めているわけでございます。特に糖尿病検査であるヘモグロビ
ンA1cの値では、有所見者が7割おいでになるわけでございます。
これらのことから、本町の場合は、特定保健指導も重要ですが、糖尿病の発症予防・重
症化予防対策が重要な課題と言えるわけでございます。
次に、ヘルスアップ事業の概要でございます。内灘町では、平成 17 年度から国保連合
会のモデル事業やヘルスアップ事業を利用しながら、長期間の継続的な糖尿病セミナーを
企画・実施いたしました。こうした事業では、参加者の多くが生活習慣の改善ができ、検
査結果も改善するなどの成果を上げることができたわけでございます。しかしながら、健
診制度が変更されたため、特定保健指導の実施だけでは、糖尿病予備軍の人たちに対する
対策や受診中の方々の生活習慣の改善も不十分となることが考えられるわけでございます。
そのために、このたびヘルスアップ事業の指定を受けまして、金沢医科大学病院を初めと
する近隣の医療機関とのさらなる連携を図りまして、糖尿病の発症予防・重症化予防の支
援体制を確立したいと考えた次第でございます。
具体的には、次のように事業を進めているところであります。1つ目には、保健医療の
支援連携体制の構築。2つ目には、保健指導対象者の選定とヘルスアップ保健指導の実施。
3つ目には、保健指導プログラムの検討と構築。4つ目には、保健指導評価の検討であり
ます。
事業実施に当たりまして、町と医療機関等による専門部会を設置いたしまして、糖尿病
予防という共通目標を掲げ、連携しながら事業を実施する体制を構築することができた次
第でございます。具体的には、糖尿病予防の二次検査を保険診療で行い、その結果、必要
な方は治療につなげ、保健指導についても医療機関で実施していくこととしたわけでござ
います。
特に金沢医科大学病院の生活習慣病センターでは、運動と栄養について6カ月間にわた
り専門家によるきめ細かな指導を受けることができます。画面は、センターでの指導プロ
グラムの概要でございます。一方、開業医での指導は、同じ期間で、医師や看護師が担当
し、栄養については町の保健センターで実施する糖尿病栄養指導も取り入れながらの指導
プログラムとなっているところでございます。
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医療機関との連携が充実し、治療中の方も含めて、継続的な保健指導が実施されること
で、生活習慣の改善と糖尿病予防に効果を上げられるものとこれからに期待しているとこ
ろでございます。このように、今回のヘルスアップ事業の指定を受け、金沢医科大学を初
め、地域の医療機関と行政が連携いたしまして、糖尿病予防事業を実施できる体制をつく
ることができたわけでございます。地域の医療機関に予防医療の推進についてご協力いた
だいたことは、これからの超高齢化の進展を考えたときに、大変有意義なことであると考
えているところでございます。
次に、ライフ・ケア・オン・デマンド事業でございます。健康で明るい家庭のキーパー
ソンは、母となる女性であります。妊娠・出産・子育てなどのライフステージにおきまし
て、周産期を含めた健診データや子供の健康情報をみずから登録・蓄積・活用できる仕組
みをICTの利活用により提供することを金沢医科大学准教授らが提唱、指導いたしまし
て、町が平成 21 年度、総務省の補助を活用して実施したものであります。
この事業は2つのサイトからできております。1つ目、健康情報発信サイト「うち
Lico」は、住民サービスの一環として、健康、子育て支援に関するさまざまな情報を提供
し、町民の皆様が安心して暮らせるよう、お手伝いをしているところでございます。2つ
目、健康手帳サイト「けんこうバンク Lico」は、個々に散在する健康情報をみずからが蓄
積・管理・活用するシステムであります。男女を問わずどなたでもご利用可能であります。
現在、運営業務は、事業に賛同する企業からの協賛金により事業を継続するため一般社団
法人に委託しているところでございます。
そして、手帳は、次の4つであります。健康手帳は、毎日測定する動的な測定データか
ら健診データを記録・閲覧できる手帳でございます。健康メモ帳は、病気・けが、処方薬、
ダイエット、禁煙など多岐にわたる健康情報を記録できる手帳でございます。ママ手帳は、
母子健康手帳を網羅した内容で、妊娠から出産までの記録を管理できる手帳でございます。
赤ちゃん手帳は、出生時からデータを記録、6歳になり健康手帳へ切りかえることで、出
生から生涯にわたる健康情報の蓄積・管理ができる手帳でございます。
このサイトは、個人情報を取り扱うために、個人の特定は行わずに、性別・生年月日・
郵便番号・ニックネーム・フリーアドレス・パスワードで登録ができるわけでございます。
「けんこうバンク Lico」は、パソコンや携帯電話から、いつでもどこからでも、日本じゅ
うどなたでもご利用が可能でございます。健康管理に、妊娠記録などの一括管理などに、
また災害に備え病歴やいつも服用している常用薬を記録する手帳として、健康情報を登録
し、ぜひともご利用いただければと思っているところでございます。
なお、アドレスなどの詳しい説明は、お手元のリーフレットにしたためてありますので、
ごらんいただきたいと思います。
次に、ロマンチックウォークであります。アカシアの白い花が咲く5月は、内灘町の林
帯が花と緑で最も美しく輝く季節であり、甘い香りが薫風に乗って町中を漂います。この
風光明媚な自然を満喫し、内灘の魅力を広く発信する恋人の聖地・内灘ロマンチックウォ
43
ークを平成 22 年度から開催いたしました。このイベントは、町のウオーキング協会と金
沢医科大学の全面的協力を得まして医師や看護師とともに歩くものであります。また、開
会式の隣接会場で健康チェックも盛り込んだ「健康フェア」と一体的に開催するなど、ユ
ニークなウオーキング大会でございます。昨年度は、あいにくの雨模様ではありましたが、
1,000 人を超える多くの参加がありまして、「アカシアの花が咲く最高にロマンチックな
コースですね」との参加者からの声が聞かれたわけであります。本年度も5月 22 日に第
2回の恋人の聖地・内灘ロマンチックウォークが開催されました。役場庁舎内に設置され
た金沢医科大学健康づくりブースでは、医師や学生による体脂肪・骨密度・足指力などの
測定や健康相談・栄養相談・禁煙相談などが行われ、ステージでは糖尿病予防のための運
動の実践と食事の指導が行われたわけでございます。このように、大学と地域と行政が互
いに連携し、参加者の皆さんおのおのの健康づくりのきっかけづくりや実践方法などに関
するイベントを実施していくことは、大変重要なことであると考えております。
最後にご紹介する事業は、5歳児健診であります。内灘町では、平成 20 年度から就学
前の健診として5歳児健診を開始いたしました。この事業を実施しているのは、北陸では
唯一我が内灘町だけであると聞いているところでございます。この5歳児健診の実施に当
たりまして、金沢医科大学小児科のご協力は不可欠でありました。具体的には、5歳児健
診での問診や専門的な診察内容などについての検討と指導をいただいたほか、保育士や保
健師の事前研修会の講師を派遣していただきました。また、健診後の支援体制を構築する
ため、療育機関等との連携についても助言をいただいたわけでございます。
内灘町の5歳児健診の主たる目的は、発達障害の早期発見という視点だけでなく、内灘
町の親子が楽しく、そして安心して就学期を迎える準備を始める契機とするとし、次の項
目を掲げました。1つ目には、保護者が子供の成長を確認すること。2つ目には、保護者
の育児不安を軽減すること。3つ目には、就学に向けて基本的な生活習慣を見直すこと。
4つ目には、発達障害から生じる不登校やひきこもりなどの二次障害を防ぐため、発達障
害の早期発見、早期療育を行い、適切な就学支援につなげること。5つ目に、健診を通し
て、保育所、幼稚園、学校、関係機関との連携充実を図り、乳幼児から学童までの一貫し
た支援体制を図ることであります。
具体的な健診内容は、この画面をごらんいただきたいと思っているところでございます。
この事業につきましては、学校や保育園とも、健診項目の決定など、事業の立ち上げから
実施まで連携しているところでございます。具体的には、健診は保育所単位で実施し、ま
た小学校の教師による「学校教育ミニ講座」をメニューに取り入れました。早寝早起きや
朝ごはんを食べることの大切さなど、就学までに身につけたい生活習慣についてお話しし
ていただいているわけでございます。このほか、栄養相談などの講座は、保護者の皆様か
らご好評をいただいているところでございます。そして、この5歳児健診を契機に、当初
の目的である、保育所、幼稚園、学校など関係機関との連携が充実いたしました。具体的
には、保育所単位で、支援会議の設置、幼児発達相談の実施や就学前の保護者相談会の開
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催など、各種の会議や相談事業を実施してまいりました。その結果として、乳幼児から児
童まで一貫した支援体制を構築し、発達障害などの児童に対する就学支援に成果を上げて
きているわけでございます。
以上のまとめといたしまして、本日は、健康をテーマといたしまして、それに関連した
教育や子育て支援事業における地域との連携の一部をご紹介いたしました。以上の各事業
におきまして、いずれも金沢医科大学を初め地域の医療機関や学校などの多くの機関の皆
さんに、事業の立ち上げから実施に至るまで多大なご協力をいただいているところでござ
います。
さて、私は、町長就任以来、子育て支援センターの設置、病児保育施設「すまいる」の
開設、学童保育の充実、5歳児健診の実施など、各種の子育て支援に取り組んでまいった
わけでございます。また、小学校低学年の 30 人以下学級を導入し、児童・生徒たちが安
全・安心な環境で学べるよう、町内すべての小中学校の耐震化を石川県で最初に完了する
など、教育の振興にも力を注いでまいったところでございます。このように、子供を産み
やすく育てやすい町を目指し、子育て環境を充実させることで、町の活性化と定住人口の
増加を図るため、各種施策を実施してまいったところでございます。
一方、先ほど本町の人口構成についての説明の際に申し上げましたとおり、我が町にと
っても高齢化対策は喫緊の課題であります。今後は、この超高齢化社会到来に備えた施策
にさらに積極的に取り組んでまいる所存でございます。内灘町には、幸いにいたしまして、
地域の大学を初めとした医療機関やさまざまな分野で活動するボランティアの皆さん、17
町会すべての地区公民館で地域に根差して活躍する各世代にわたる住民の皆さんなど、豊
かな地域の力があります。そんな意味で高齢化は、ピンチではなく、むしろチャンスとと
らえ、学校や企業などを含めたすべての町民のご協力をいただきながら、世代間交流・地
域間交流を推進したいと考えているところでございます。このような町づくりを通して、
体も心も健康で、子供から高齢者の皆さんまでが安心して暮らせる町づくり、脱無縁社会
を目指して、これからも町民の皆様とともに歩んでまいる所存であります。
以上、雑駁ではありますが、内灘町からのご報告にしたいと思います。ご清聴ありがと
うございました。(拍手)
【行天】
どうもありがとうございました。八十出泰成内灘町長のお話でした。
町長さん、ちょっとあそこにいていただきたいんですが、二、三お伺いしたいので、す
みません。大変失礼ですけれども、余りすばらしい町なので、引っ越したいなと思うぐら
いなんですけれども、まじめな話で、町長さんは今何期目でいらっしゃるんですか。
【八十出】
【行天】
2期目なんです。
【八十出】
その前は内灘のほうはずっとご関係はおありでしたか。
【行天】
ええ、県議を4期しておりました。
【八十出】
何年ぐらいやっていらっしゃったんですか。
4期途中まででございます。
45
【行天】
それでは。何かずっと伺っておりまして、金沢医科大学というのをまるで町立
病院みたいにうまく使っていらっしゃるという感じがしたもので、うらやましいを通り越
して、随分ならつ腕を振るっていらっしゃるなと思いましてね。それともう一つ、北陸新
幹線は来年ですか。
【八十出】
3年後です。
【行天】
3年後ですか。そうすると、町長がご心配になっているように、高齢化がもの
すごい勢いで来るだろうとおっしゃるんですが、むしろベッドタウンとしてもっともっと
現在のような人口構成を引きずっていくんじゃないですか。
【八十出】
【行天】
そうですね。
そうでございましょう。
【八十出】
はい、そうです。
【行天】
だから、悪いことは何もないんですよ。それで町立病院に巨大大学を持ってい
るわけですから、ちょっとうらやまし過ぎて、これは同じような全国でお医者さんがいな
いので困っている市町村ばかりでございますので、全然そんなことではお困りにならない
でしょう。
【八十出】
そうです。たくさんの医師はもちろんですが、看護師もたくさんおります。
県内で能登方面では医師不足・看護師不足が盛んに言われまして、知事と面談するたびに
医師の配置について要望しているところでありますから、そんなことを思いますと、非常
に恵まれているなと感じているところでございます。
【行天】
それで、内灘町の方たちは、その面に関しては明らかに恵まれ過ぎているんだ
ということはわかっていらっしゃるんでしょうか。
【八十出】
【行天】
多分わかっているんじゃないかなと思うんですけれども。
そうですか。うらやましい話ですけれども、これは安村先生、どうでしょうか、
お聞きになっていて、福島のほうと比較なさって、ちょっと夢物語みたいな一面があるも
のですから。
【安村】
そうですね。うらやましいというか、うちは逆に大学病院側ですけれども、ほ
かの医科大学とか附属病院もそうだと思うんですけれども、地域とどのくらい密着して大
学病院がかかわっているかというと、ここまで積極的にかかわっているところはないなと
反省しながら聞いていたところです。
【行天】
【八十出】
ありがとうございました。どうもいろいろとありがとうございました。
【行天】
ありがとうございました。
どうぞますますよりよい町づくりに向かっていただきたいと思います。ありが
とうございました。
【八十出】
【行天】
はい。ありがとうございました。(拍手)
ありがとうございました。
それから、今のお話で私、申し上げるのを忘れていたんですが、さっき透析の問題がち
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ょっと出ておりましたけれども、透析に関する水の補給というのは非常に大事でございま
すので、よその市町村の方もぜひ頭の中に入れておいていただきたいんです。大量に水を
使いまして、しかも透析の方は休むわけにはいかないので、何か事があったときには透析
の面で大変困るということがございます。今のお話のように、大学病院全体を町立病院み
たいにうまくお互いに連携していらっしゃるというのは、非常に恵まれた環境でございま
すけれども、さっきちょっとお話しさせていただいたように、救援で日赤を初めとしてた
くさんのほうぼうの大学などから大勢東北などにいらっしゃってくださったんですけれど
も、そこで一番困っているのは、まず3~4日しかいらっしゃらない、平均的に。もう疲
れ果ててしまうのは無理もないんですけれども、3~4日しかいらっしゃらない。だから、
地縁、それから人間関係がなかなかうまくできないんです。そこへもってきて方言が使え
ない。これは決定的でございます。だから、方言が使えて、しかもじっとそこにいるとい
う地域定着型のドクターというものをぜひ大事にしておいていただきたい。一朝事あった
ときにこれくらい底力を発揮するものはないということをもう一遍申し上げまして、2番
目のお話に移させていただきます。
今度は、長野県の東御市の市長の花岡利夫さんにお話をいただきます。
東御は、私、佐久病院などの関係で割合に参りまして、ついこの間、ちょっと県は離れ
ますが、直線的には近い山梨のほうで菅原文太さんという役者さんが有機農業のことで一
生懸命やっていらっしゃるので、そこへちょっとお邪魔したんですけれども、あそことほ
とんど地続きでございますね。
【花岡】
そうですね。近いですね。
【行天】
だから、随分おいしい野菜を召し上がっていらっしゃるらしくて、大変いいお
話を伺えると思いますので、どうぞ。
長野県東御市長
花岡利夫
ただいまご紹介いただきました長野県の東御市の市長の花岡利夫と申します。きょうは
大変いい勉強をさせていただき、またこのような発表の機会をいただきましたこと、国民
健康保険中央会の皆様を初め、関係者に厚く御礼申し上げたいと思います。
私たちの東御市は、平成 16 年4月1日に「さわやかな風と出会いの元気発信都市」を
基本理念に、健康な町づくりを目指していこうということで頑張っております。先ほどち
ょっと出ておりました写真は、市内の千曲川側から北のほうの浅間連峰を写した写真でご
ざいます。
市の概要といたしましては、先ほど言いましたように、平成 16 年4月1日に上田地域
の小県郡東部町と佐久地域の北佐久郡北御牧村の2町村が合併して発足いたしました。小
学校の数といたしましては、旧東部町が4校、旧北御牧村が1校ということで、ちょうど
4,000~6,000 人規模の5つが集まって3万人規模の市を構成したということになろうかと
思います。世帯数が1万 1,000 強、それから面積が 110 平方キロメートルで、東西、南北
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それぞれ約 15 キロずつの広袤があるという地域でございます。長野県の東部ということ
で、北のほう、先ほど申しました浅間連山のほうが上信越高原国立公園になっております。
また、南側が蓼科・八ヶ岳連峰の雄大な山並みに囲まれている地域でございまして、島崎
藤村が詩に歌に詠んだ千曲川と鹿曲川の清流が織りなす豊かな風土と歴史を持っている地
域であるとご説明できるかなと思います。
私ども東御市の魅力というときに、ランドスケープ的には、標高が 500 メートルから
2,200 メートルぐらいの大きな標高差を持っているところでございまして、800 メートル
前後の亜高原田園地帯と今我々が呼んでいる地域には、地ビールとか、ワイン特区をとら
せていただいて、玉村豊男先生のワイナリーがあったり、また特区でのリュードヴァンと
かハスミファームとかという小さなワイナリーが集積を始めていたり、またアトリエ・
ド・フロマージュというチーズ屋さんがその地域に店を構えていたり、それに付随してイ
タリアンやフレンチ、そば、そして温泉、また、食とはちょっと変わりますけれども、刀
かじで 14 年ぶりに正宗賞をおとりになった宮入刀匠がそこで作刀されていたり、美術館
があったりという、すがすがしさというか、ランドスケープが開けている地域であって、
冷涼な気候ということが一つの特徴かなと。そして、この標高差が織りなす多種多様な農
作物、果樹、穀類、野菜というものが非常においしい地域であると自負しております。
そして、特徴的には、金沢の殿様が参勤交代で江戸に向かわれた北国街道を中心に、千
曲川沿いに街道文化と言えるような地域が一つ形成されている。それから、北側には、こ
れも 800 メートル地域なんですけれども、直轄領といいますか、天領がありまして、江戸
の文化が持ち込まれている地域があって、そして北御牧側、千曲川を挟んで南側の台地の
上には、新田開発という形の中で数十キロにわたって蓼科から江戸時代に用水を引いてき
て、そしてみんなで力を合わせて非常に良質な水田をつくり上げていったという、農業者
の持っている新田耕作に向けた文化といった、地域づくりにかかわった江戸時代からのい
ろいろなタイプのコミュニティーが存在しているかなと思っています。
さて、本題の国保の状況ということでご説明させていただきます。平成 22 年度末の被
保険者数が 8,522 人、加入率が 27.1%、加入世帯数が 4,677 世帯となっております。平成
22 年度国保税の現年課税分調定額は、1世帯当たり 14 万 8,551 円、1人当たり8万
1,527 円で、一般と退職を合わせた全体の収納率が 93.8%でした。平成 22 年度決算状況
は、歳入総額約 30 億円、歳出総額約 28 億円ですが、歳入の中に基金からの繰入金 9,000
万円を含んでおり、運営自体は厳しいと思っております。
それから、市の健康課題ということでここに書かせていただいております。先ほどいろ
いろご指摘いただいたことではありますけれども、死亡原因では脳血管疾患の率が圧倒的
に高いということが大きな特徴かなと思います。あわせて心疾患も国・県に比べて若干高
目ということで、がんに関しては低いという状況であります。さらに加えて、長野県には
19 市あるわけでありますけれども、肥満とか中性脂肪、また血糖値という生活習慣病のメ
ルクマールとされる値がいずれもワースト5に入っている。これはとんでもないというこ
48
とで、保健師が私のところで怒るわけですけれども、私も怒られても困って、どうしてそ
ういう数字があって、それに対して一体どうしたいのかという話をよくするわけです。で
は一体全体、平均寿命はそんなに低いのかというと、長野県は長寿県と言われております
けれども、当市も決してそれほど低いわけではないということですから、人はだれもお亡
くなりになるわけでありますので、一応ある程度平均がクリアされていれば、地域として
は健康問題に関してはいいんじゃなかろうかなとも思うわけですけれども、だめなんだと
いうことです。
こういう場所でこういう話をしていいかどうかわかりませんけれども、がんに関しては、
うまくいけば助かるし、うまくいかなかったらお亡くなりになるということで、ある意味
では二者択一。「ピンピンコロリ」ということで、うちのおやじもそうでしたけれども、
心筋梗塞というのはちょっとあこがれるかな、家族にとってはちょっとつらいかなといっ
た面があるわけですけれども、脳血管疾患というか、脳血栓症に関しては、第三の道があ
り得るということの中で、決して地域住民の方が望んでいないといいますか、本人も一生
懸命頑張らなければいけないということではありますけれども、家族もある意味では大変
な状況になる第三者の道があり得るということで、この原因を除去してあげるということ
ができるならば、それはやっていかなければいけないのではないかという結論に至ってい
るということでございます。
長野県でありますので、善光寺に善男善女がいらっしゃって、まず疾病平癒もしくは健
康でありますように、病気が治りますように、病気になりませんようにとお祈りになる。
そして次に商売繁盛、経済的に何とかやっていけるようにということをお祈りになる。そ
れからもう一つ、家内安全、私の場合は家内優しくということをよく言うんですけれども、
災害から家族が免れますようにということ。この3つを主にお祈りになると言われており
まして、行政の役割は道をつくったり箱ものをつくったりするということで、健康とか財
産の問題とか災害の問題に関しては仏様に任せておけばいいのかなとも思うわけですけれ
ども、最近はどうもそうも言ってはいられないというか、極めて市民の願いを行政として
どうかかわりどう実現していくかということが政治の課題になってきている。そういうこ
とを考えますと、「ピンピンコロリ」といいますか、特にこの地域において脳血管疾患で
亡くなられる方が多いということに関しては、原因を除去していかなければいけないし、
予防していかなければいけないと結論づけられるわけでございます。
そういう状態の中で、東御市の健康づくり事業ということで、予防活動の軸となる特定
健診の受診率ということですけれども、大変厳しい状態にあると言わざるを得ません。平
成 20 年度から 22 年度まで、約 35%よりやや高い率をおおむね横ばいで推移している。
また、特定保健指導の実施率も 20%前後と、同様に横ばいに推移しておりまして、目的達
成には至っていない。未受診者対策としては、前年度に保健師が未受診者への訪問活動を
行って地域の声に耳を傾けるなどの取り組みを行ってまいったということでございます。
また、個別健診への一本化による医療機関との連携強化を図ったり、広報やコミュニティ
49
FM放送を通じたり、住民組織の力をおかりしたりといった活動をやってきております。
加えまして、人工透析の予備軍への保健指導ができるように、主治医との連携体制づくり
を模索しましたり、生活習慣の改善を希望する住民に対して保健指導ができるスタッフ体
制をつくっていき、今後も持続可能な形で住民の健康支援ができる体制づくりに取り組ん
でいくということでございます。
あわせて地域医療の現在といいますか、歩んできた道は、東御市は基本的に、有名な佐
久総合病院の若月先生が提唱された農村の医療を充実させていくという影響を色濃く受け
ている地域であります。また、その中で上田には、現在は名前が変わりまして独立行政法
人信州上田医療センターということで旧国立長野病院があるという環境にありますけれど
も、市といたしましても、小さな 60 床ほどの市民病院、それから北御牧地域には市立の
診療所が1軒ございます。そういう中で、12 の民間の医療機関の皆さんと一緒になって、
医人会という形で、地域のお医者様が情報交換しながら市民の健康のためにご活動いただ
いているというこれまでの経緯があります。
また、助産所とうみということで、公立の助産所としては日本で2番目だと教えていた
だきましたけれども、妊娠したら自分で産む覚悟を固めて、出産に向かって精神的・体力
的な準備を整えてみずからの力で産んでいくという、赤ちゃんと母親の最も理想的な形で
の出会いを何とか実現していきたいということで、平成 22 年4月にオープンいたしまし
た。目標は1年間で 120 という数字になったのですけれども、初年度には 118 人の赤ちゃ
んが生まれたということで、初年度からほぼ目標を達成しているという状態の中で、いい
形の親子の出発がなされているという評価をいただいておりまして、親子関係を考えてい
く上でも、いい話題提供にはなっているかなと考えております。
そういう中で、これから先ほどの脳血管障害に対する闘いということの中で、まず第一
の決意として、健診に関しまして、個別健診に一本化していくということを決意しました。
当然といいますか、受診率が下がるというリスクを非常に持っているかなということの中
で、ただ、将来この問題を見たときに、地域のお医者様が病気に対する治療だけでなくて、
予防ということを地域のお医者様挙げて踏み切ったという大きなターニングポイントと言
っていただけるのではなかろうか、もしくはそうなるようにこれから努力していこうとい
う決意を固めて、そのことを実践していくということを決めました。この中で、これから
東御市がさらに健康な町と言っていただけるその礎が、地域の医療機関が挙げて予防健診
に取り組む、さらに現在闘病中の皆様方の健診に関しても積極的にかかわっていただくと
いうことをそこに重きを置いてしっかりやっていこうと。
これからそういう中で、当然、さらに言えば、食の問題、そして運動の問題ということ
が課題になってくるということで、運動の問題に関しまして、もちろん小さい子供から体
を動かすことの楽しさ、喜びを感じていただくということをやっていかなければいけない
し、スポーツを振興していくということが前提ではありますけれども、体を動かさなくな
っているお年寄りをどうやって一緒に健康のためにといいますか、動いていただくか、運
50
動していただくかということが課題になってくるかなと。そういう中で、温泉活用という
ことを一つの手段として、高齢者が楽しく体を動かすということができてくるのではなか
ろうかと思います。国民健康保険中央会の「医療・介護保険制度下における温泉の役割や
活用方策に関する研究」において、当時の北御牧村が1人当たりの国保老人医療費の減少
率が最も高かった自治体として注目された過去がございます。平成7年に開設した保健・
医療・福祉の総合施設ケアポートみまきを拠点に、介護保険サービスの総合的な提供、公
立診療所での地域医療に加えて、温泉を活用した健康づくり・リハビリテーションに取り
組んできた成果であり、今もその仕組みは地域住民の健康支援に大きく貢献しております。
また、ケアポートを拠点に東御市内だけでなく幅広く活動する身体教育医学研究所は、平
成 11 年に開所いたしまして、現在は東御市が設立した公益財団法人として、地域住民へ
の健康づくりの啓発と、市の健康政策に貢献するためのシンクタンク的機能を持たせて、
頑張っていただいているということでございます。事業内容としては、生活習慣病だけで
なく、メンタルヘルス対策、子供の発達支援、高齢者の介護予防、障害者の健康支援など
にかかわり、地域全体の健康づくりの推進に寄与するために活動しております。現在市は
4つの温泉施設を所有しておりまして、頭痛の種でもあるわけでございますけれども、そ
れぞれ、観光、宿泊、健康増進、地域福祉と特徴ある温泉として健全運営に取り組くんで
いるということで努力しているところでございます。特に、市の中心部に位置する健康増
進の温泉施設は、規模は大きくありませんけれども、健康づくり、介護予防、リハビリテ
ーションなど、ケアポートみまきと同様に、国保中央会が示したモデルになり得ると考え
ている活動をやっているところでございます。住民が立ち寄りやすい場所で気軽に健康相
談や日常的な生活習慣改善のアドバイスを受けることができ、なおかつ医療機関との連携
による保健指導も可能な、住民の健康支援の拠点としてこれらの温泉施設が機能すれば、
住民が多様な選択肢の中でみずから選択、決定できる健康づくりの環境が整うということ
で、まず体を動かす。子供も大人も当然ですけれども、お年寄りも体を動かすということ
が、何よりも生活習慣病予防に対する重要なことであろう。それも強制されてなどという
ことではなくて、温泉に来て、知らず知らずのうちにといったことが実現するといいなと。
そのためのシンクタンク組織を、小さな市としては非常にすばらしい施設を持っていると
いうか、非常に大切なシンクタンクを引き継いできていると言えるかと思います。
次に、先ほど標高差ということの中で、いろいろな農作物が多品種にわたってつくられ
ております。東御市には、クルミ、巨峰、白土馬鈴薯、スイートコーン、薬用人参、また
八重原米と言われる非常においしいお米や葉物野菜というものが非常に有名でございます。
余談になりますけれども、実はこの巨峰の団地が中屋敷(区名)に 2.5 ヘクタールほど
あるわけですけれども、昭和 35 年の国の事業で団地化のモデル事業とされて、当時の皇
太子殿下が昭和 38 年にいらっしゃって、きのう天皇陛下と皇后陛下が同じ農場を見たい
ということでお見えになったというぐらい、巨峰栽培に関しては 50 年にわたって日本の
トップを走り続けてきたということでございます。この巨峰の甘さが天下一品ということ
51
なんですけれども、そういうこのフルーツのすばらしさが、逆に言うとメタボな市民をつ
くりかねないという状況にあって、しっかりとした食生活といいますか、食育をやってい
かないと、せっかくのおいしさがあだになってしまうということになりかねないというこ
との中で、多くの皆様方のお力をいただきながら、より健康的な形で食生活をよくしてい
かなければいけないということも認識しております。
私の学生時代に信州大学の教育学部の教授であった、今名誉教授をやられている高野悦
子先生が、長野県において、特に野沢菜を「棺桶漬け」と呼ばれて、塩分で漬けておいて、
そしてそれをしょうゆをかけて食べるということで、本当に何とかせよということを一生
懸命やられていたことをよく覚えています。そういう意味においても一から点検しながら、
よりおいしく、よりよい形で素材を生かした健康的な食べ物にしていかなければいけない
ということであろうかと思います。
そして、そういう状況の中ではありますけれども、決して東御市が不健康な町というわ
けではなくて、そういう中でしっかりとお年寄りが元気な地域を形成しているということ
に関しては、自信を持って言うことができるわけであります。
最後に、住民力と健康な町づくりについてお話しさせていただきたいと思います。豊か
な自然環境と多くの健康資源に恵まれていますけれども、これらを生かしてきた地元の人
たちの住民力。全国組織である食生活改善推進協議会や、長野県の組織である保健補導員
会だけでなく、非常に女性が元気で、農産物の加工施設も地域の皆さんの健康に直結する
形で提供したいという中で、いち早く農産物の加工所等を立ち上げられました。また、農
家と言えば、その収入の多くはJAさんからの振り込みによって現金収入がなされるとい
うことで、通帳は一家に一つということで、すべての金銭をあるじが握っているという経
済的な状況がずっとあったわけですけれども、直売所や加工所をつくることを通して、主
婦が、農家の皆さんが、はぶきもの(規格外)に対する現金収入とかパート収入を得るこ
とを通して、さらに飛躍的に元気になられたと考えています。そして、この元気な農家の
お母ちゃん方は、本当に健康のために一生懸命骨身を惜しまず頑張ってくださっている。
そういう地域であると言えるかなと思います。その女性同士のつながりが組織化されて、
地域の医療・保健・福祉の充実や健康づくりの推進を含むさまざまな地域づくりに貢献し
ていただいてきた。こうした人と人とのつながりも社会の変化とともに徐々に希薄化しか
ねないという状態がある中で、地域として、また行政として、このパワーをどのような形
で生かしていくかということがまた新たな課題として浮かび上がってきているという側面
も否めないということであります。
健診・保健指導の実施、健康管理のしやすい環境の整備、健康づくりの啓発といった、
行政が主体的に住民に提供する公助の充実を図っていくことは、今後も継続して取り組む
べき私たちの重要な課題です。しかし、健康とは一人一人の住民の暮らしの中にあり、み
ずからの健康管理ができる自助の力をつけることや、そうした力を互いに高め合ったり、
支え合ったり、助け合える共助の関係をつくることは、健康な町づくりを進める上で常に
52
念頭に置くべきことと考えます。住民同士だけでなく、行政関係者等も含め、人と人との
つながりの中でともに育ち合う環境ができれば、持続可能な元気発信都市東御市が実現す
るに違いないと確信しております。
ご清聴どうもありがとうございました。(拍手)
【行天】
ありがとうございました。ちょっとそこにいらっしゃってくださいませ。
長野県東御市の花岡利夫市長のお話でございました。大変気楽に気安くお話しいただい
たんですけれども、市長さんは実際に市の方に、先ほどおっしゃったように、例えばがん
での死亡で、人は必ずいつかは亡くなるものだし、平均的以上に幸せで生きたほうがいい
んじゃないかとかと、ああいうニュアンスのお話はなさっているんですか。
【花岡】
そうですね。もっと権威がないといけないかもしれないんですけれども、キャ
ラクターがこのキャラクターですので、そのままやっております。
【行天】
そうですか。いや、なかなか心に思っていてもおっしゃる方は少ないし、市長
さんのちょっと北のほうの松本の市長さんは、ドクターですけれども、非常に気楽にそう
やって市民に呼びかけていらっしゃるものですから。
【花岡】
そうですね。かわいがっていただいていますけれども、大先輩です。
【行天】
それで、長野というと必ず、医療費は随分安い、そのくせ寿命が延びている、
みんな元気だ、医療機関にかかるのも比較的少ないし、人口割りもいいし、あるいはベッ
ドそのほかの数も云々というので、理想的な健康県と言うとおかしいんですが、医療費面
から見ても猛烈にいいと言われているんです。市長さんはご自分のところで見回されまし
て、今度、さっきおっしゃった厚生連の佐久の病院が大きく建てかえられますけれども、
そんなことなどで、さっきの内灘のように、例えば佐久病院でもどこでもいいんですけれ
ども、つながりを強めていって、広域の健康づくりみたいなものはお考えでございますか。
【花岡】
ええ。定住自立圏といいますか、どこでもしっかりとした医療が受けられると
いうことが住民の幸せに直結しているものですから、それに対してどのような形で高度医
療センターにお運びいただけるかというか、連携がとれるかということは、非常に大きな
課題であるといいますか、やらなければいけないことだと思っていますし、盛岡先生にも
尻をたたかれながら、私の立場でできる範囲で、実現に向かって協力しているつもりでお
りますけれども。
【行天】
そうですか。ちょっと別のことなんですけれども、温泉は4つ施設をお持ちで
すけれども、名前は何という温泉なんでしょうか。
【花岡】
田中という元の信越線、今はしなの鉄道になりましたけれども、その駅前にゆ
うふる tanaka という温泉がありまして、この源泉は千曲川温泉とかという名前だと思い
ましたけれども、対岸には旧北御牧村が持っております御牧乃湯という源泉があります。
それから、北御牧側の八重原台地に、800 メートルぐらいのところなんですけれども、明
神館という源泉。もう一つは湯楽里館で、これはちょっと源泉の名前は忘れましたけれど
も、すみません、大室源泉とかという、そういう源泉は全部別々の温泉です。
53
【行天】
そうでございますか。私は個人的には割合温泉が好きなものですから、今伺っ
ていると、どっちかというと秘湯というほうのカテゴリーに入ると言うといけませんかね。
もっと大々的に。
【花岡】
もうウルグアイラウンドで調子に乗ってつくったというのが正直なところでご
ざいますので、全く新しいという形ですね。
【行天】
そうですか。ありがとうございました。余計なことで足をとめまして、どうも
すみませんでした。
【花岡】
いえいえ。ありがとうございました。(拍手)
【行天】
それでは、お待たせして申しわけございませんでした。鹿児島県伊仙町の大久
保明町長にお話をいただきたいと思います。
伊仙町は、先ほどもちょっとこのパンフレットで皆様方はおわかりのとおりに、何とい
ったって徳之島でございます。徳之島というのはお医者さんが結構たくさん育っておりま
して、有名な方ばかりが2~3人いらっしゃるんです。そのお医者さんになられた大きな
理由のほとんどが、徳田先生を初めとして、自分のご両親やご親族などが、お医者さんが
いなかったために大変苦労した。それで自分も医者になって断固この島を幸せにするんだ
ということで、徳田先生以外にも3人ほど私が存じ上げている先生は、非常に一生懸命地
域に尽くしていらっしゃるんですが、その一番南でございますね。
【大久保】
【行天】
そうです。
そうですね。そこでどういう健康づくりが行われているか、ぜひお話を伺わせ
ていただきたいと思います。お待たせしました。どうぞ。
鹿児島県伊仙町長
大久保
明
会場の皆さん、こんにちは。鹿児島県の徳之島の伊仙町長の大久保でございます。よろ
しくお願いいたします。今回このシンポジウムに参加させていただきまして、大変光栄に
思っております。
今、行天先生がお話しされたように、今から徳之島の地図が地球儀の中から出てきます
けれども、鹿児島から南のほうに 450 キロ行った、沖縄県にすぐ近い地域でございます。
去年は、突然民主党の鳩山前総理が米軍基地を徳之島に移設したいということで、私たち
はびっくりいたしまして大反対しました。その反対する理由は、徳之島は徳の光輝く島だ
と勝手に考えております。これは何といっても、長寿世界一を日本で2人輩出しましたけ
れども、2人とも徳之島の南部のほうの伊仙町の出身でございます。そういうこともあっ
て、平成 16 年度に2人目の長寿世界一になられました本郷かまとさんを記念いたしまし
て、長寿シンポジウムを開催いたしました。そのときに何と明らかになってきたことは、
我々の世代はこれから長生きできないのではないかといった現実的に非常に厳しいデータ
が出てまいりまして、長寿世界一の島をこれからも維持するために、健康の町づくりを推
進していこうということを決定した次第でございます。
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これはグーグルで伊仙町を空から見ています。真ん中のほうに役場があるんですけれど
も、高台にあって、隆起サンゴ礁の中にある、ほとんど集落ではなくて山村形態をなして
いる地域でございます。徳之島は、徳之島町、天城町、伊仙町の3つの町で構成されてお
りまして、面積は 247 平方キロメートル、そして人口が以前は5万人以上いましたけれど
も、今はちょうど半分近くの2万 7,000 人前後の人口を3町で有しております。
これは何だと思いますか。書いてありますね。サトウキビです。皆さんはサトウキビを
見たことはないと思いますけれども、以前は全国各地で黒糖の原料としてつくっていまし
た。徳之島はこのサトウキビの面積が耕地面積の半分以上であります。あらゆる農産物が
できる亜熱帯の地域ですけれども、台風とか塩害に強いということで、サトウキビ中心で
あります。実はこのサトウキビが長寿の大きな要因であるということも判明いたしました。
それは、この奄美群島、そして沖縄も含めて、長寿の島々だと言われておりました。しか
し、今は予防医療・地域医療を徹底した長野県に抜かれましたけれども、私たちはまた抜
き返さなければいけないという責任があると思っております。実は、ミネラル豊富な海水
が降り注ぐと、そこにある大地からサトウキビが栄養分をすべて吸収して、それを食べる
ことによってバランスのいいミネラルも微量元素もあるということが判明いたしました。
そして、この南西諸島は隆起石灰岩の地域ですから、カルシウム分が非常に多いというこ
とも判明しております。ですから、骨折もしにくいとか、そういうことも長寿の一つの要
因であると思います。
これは、この前、小笠原諸島が世界自然遺産に認められました。その前には知床半島で
したけれども、実はこの南西諸島、琉球諸島というのは、それ以前に環境省やユネスコか
ら世界自然遺産の大きな候補地だということで言われておりました。ただ、自治体が沖縄
県も含めて 20 近くあるので、なかなか足並みがそろわないという、県と県の協力もなか
なかできないというのが現状でありました。いろいろな固有種、ハブとかルリカケス、そ
れから先ほど出ましアマミノクロウサギとか、本土にはない固有種がいっぱいあるという
のは、大陸から切り離されたりくっついたりしている間にそこに固有種が生まれたり残っ
たりしたということでございます。
次は、皆さんご存じの、向こう側が昭和 61 年に 120 歳と 256 日で亡くなられました泉
重千代翁でございます。この方は、たばこも吸うし、お酒も大好きだったらしいです。僕
は一回拝見しました。この方は、みんなが取材に来て、ある人が「理想の女性はどういう
女性ですか」と聞いたときに「年上の女性」と答えたそうです。年上の女性はいませんけ
れども、そういうお話がございます。
こちら側の本郷かまとさんは、平成 14 年に長寿世界一になりました。晩年は鹿児島市
在住でしたけれども、この方は2日寝て2日起きているということで大変話題になったお
ばあちゃんです。
このように、長寿世界一を2人輩出した。これは奇跡に近い確率ですけれども、現時点
でも、例えば伊仙町に関して言えば、7,000 人弱の人口の中で常時 100 歳以上の方が 20
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人以上いるということは大変な確率であります。90 歳以上の方が 200 人近くいるという
ことは、これから 20 年ぐらいはずっと 100 以上の方が 20 人前後いるという確率になるし、
驚くべきことに、80 歳以上の方の平均余命は間違いなく群を抜いて日本一でございます。
ですから、きょうのテーマの一つである、うちの澤所長が長寿シンポジウムで調査した
ときに、我々の世代は完全なメタボリック症候群で、特に町の職員は、相撲部屋と思える
ような人たちがいっぱいいます。なぜかといいますと、徳之島は、先ほど徳田虎雄先生を
輩出したと。先ほどの市長さんのお話にあった盛岡先生という長野県の厚生連の理事長も
伊仙町の出身であります。そういった有名な方々もいますけれども、第 46 代横綱朝潮と
いう胸毛のある朝潮は余り記憶にないかもしれません。最近では筋肉質の旭道山という相
撲取りとか、最近ではちょっと八百長でやめた旭南海という人もいましたけれども、その
ように相撲も非常に盛んなところです。後ほど闘牛というのが出ますけれども、そういっ
た非常に特徴のある島でございます。
これは、町の紹介がちょっと長くなりますけれども、いいですね。この南西諸島という
のは、本土と隔絶しておりまして、琉球王朝の支配下にあったり、薩摩藩の支配下にあっ
たりしていましたけれども、実は南西諸島、琉球一帯で今から 1,000 年ぐらい前に類須恵
器という陶磁器が発見されました。これは本土か韓国で生産されていたのではないかとい
うことでしたけれども、実は徳之島でその遺跡が発見されました。これは近代日本史の中
でも大変な発見だということで、南西諸島は独自の文化を持っていたということを示す貴
重な発見でございました。
これは、私たちは長寿世界一だと思っていたら、何と徳之島3町が前回の出生率で全国
1・2・3位を占めたんです。出生率というのは、5年間の平均の女性が産む人数ですけ
れども、これは 20 年前から調査してありまして、それを振り返って調べてみたら、ずっ
と徳之島地域は地域としては日本で1番の出生率の地域でございました。これはよくわか
りませんけれども、少子・高齢化の中で、例えば長寿と出生率が高いというのは相関関係
があるのではないかということを言い出す先生方も出てまいりました。
これは、徳之島といったら、皆さん、徳之島はどこにあるか、知っている方は手を挙げ
てもらえますか。さっきの地図を見る前にですよ。(笑)ほとんど知らない。僕らが言っ
たら、徳之島というのは徳島県と間違えられたり、沖縄県と間違えられたりしましたけれ
ども、長寿も世界一だし、それから出生率も日本一ですけれども、この徳之島の伝統芸能
である闘牛というのは、間違いなく世界一の闘牛であります。なぜ出したかといいますと、
出生率の一番の原因は闘牛だという結果が出てきたんです。これは冗談みたいな話ですけ
れども、島の青少年は小さいころから闘牛を育てて、動物愛護です。そして一生懸命闘牛
に愛情を注いで、家族と同じような形でやっていきます。そして、徳之島の全島一チャン
ピオンを持つということは何よりも名誉なことです。ですから、みんな、高校を出たら都
会へ出ていきますけれども、帰って強い闘牛を育てようという夢を持っております。です
から、みんな、最近非常に就職も厳しいから帰ってきて、家で農業を手伝いながら闘牛を
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持っていく。そうすると、20 代前半でかなりの人が結婚して子供を産んでいます。この
20 代前半の早婚というのかな、昔はそうでしたけれども、そういうグループと、それから
晩婚という2つの波があります。ですから、闘牛を育てながら一生懸命島で生活して、島
に愛情を持っていくということになっていますので、闘牛文化というのは出生率の高い一
番の要因であると、闘牛協会長がいつも言っております。
もう一つ、これは伝統文化。なぜ長寿で出生率が高いかというのは、例えば出生率は、
先ほど成分分析をした鹿児島大学が調べたものによりますと、最近はいろいろな海水に浸
かると健康になるとか、それは、人間の血液の成分とか羊水の成分はほとんど海水と同じ
であると、海から発生したことの根拠になると思いますけれども、もう一つは文化力です。
地域力という言葉がよく出ます。先ほど住民力という話も出ましたけれども、例えば闘牛
などをするときは、前の前の日からみんなで大騒ぎするんです。一族郎党集まってお祝い
して、そして勝ったら、さっきのひょっとこ踊りのように、「わいど、わいど」と言って
みんなで大騒ぎするわけです。そのような文化力とか、例えばそういうものがまだ残って
いる。今、本土では冠婚葬祭もみんな、家族葬とかといって小ぢんまりしている。徳之島
では、冠婚葬祭は集落の人がみんな集まってやるわけです。例えば、結婚式などは 400 人、
500 人単位でやる。そういった地域力、文化力が残っている。
ですから、去年、おととし、長寿・子宝シンポジウムをしてアンケートをとったら、子
ども手当は間違いだというのがはっきりわかりましたよ。経済力とは全然関係ない。逆だ
という結果が判明いたしました。アンケート結果は後で出ます。例えば8人、9人いる家
に行きますと、大体傾向がわかりました。お母さんがめちゃくちゃに働く人です。お父さ
んは余り働かない。(笑)いや、実際にそうですね。家に行ったら、足の踏み場もないぐ
らい、子供がごろごろしているわけです。だけれども、それは、親戚が野菜やお米を持っ
てくるのではなくて、間違いなく地域の人たちが持ってきて、そして世話をしたり育てて
おります。ですから、これからの都会よりも地域のほうが力がある。そういう家族のきず
なや地域のきずなが間違いなく残っているということです。
伊仙町はこの2年間、毎年、何と人口がふえてきました。それは、90 歳以上の人が 200
人もいるわけですから、どんどん亡くなっていきますけれども、生まれる人は 80 人~90
人です。だけれども、それでもプラスマイナスすれば減るんですけれども、実はIターン、
Uターンの方々が相当帰ってきています。それは、もう時間がありませんので、後で……。
これは、今から3年前にオープンいたしました健康増進施設です。こちら側が温水プー
ルで、真ん中がサウナで、事務所があったり、これはトレーニングジムです。向こうのほ
うは、伊仙町には交流ホールがなかったので、いろいろなイベントなどをする「癒てぃな
ホール」というので、こちら側のほうに、次に出ます「百菜」という直売所。これは、鹿
児島県で初めて地域交付金事業というものを活用してこの事業をしました。島の食材は、
自慢ではありませんけれども、先ほど申し上げたサトウキビと同じように、例えば同じピ
ーマンでも、本土より 1.5 倍、いろいろな栄養素が含まれているということもわかりまし
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た。そういうものを全部地産地消していこうという直売所の「百菜」です。
これは文化祭ということで、実はうちの保健センターの所長が今ここで、外に出ません
けれども、非常に優秀な方で、彼女があちこちで早世のデータを出したり、それから島の
伝統食材をレシピ集にして2回も出して、鹿児島県では割と有名になっております。です
から、地域の伝統文化である食べ物を食べていくということが非常に大事だということで
あります。
これは、去年の子宝シンポジウムで、阿部知子先生にも来ていただきました。実は阿部
先生は徳洲会病院の小児科の先生だったので、徳之島徳洲会病院に来ていただいて講演し
ていただいたという縁があります。
この選手はわかりますか。有名な、中学生でバルセロナで平泳ぎで金メダルをとった岩
崎恭子先生です。去年来て水泳教室を開いていただきました。今、国保税の話がありまし
たけれども、これからが本題ですけれども、医療費をいかに下げていくかということを話
していこうと思います。プールで泳ぐということは、ひざや腰に対する負担が浮力でなく
なって、しかも前進しようということで全身の筋肉を使う。また、泳ぐことで腹筋・背筋
でバシッと脊椎を安定させるということで、腰痛、そしてひざの痛み、足首の痛みが治る
という大変な効果があります。今もほーらい館に多いときには1日に 500 人ほど全島から
来ますけれども、皆さんもよくわかっているとおり、病院に行かなくなります。温水プー
ルで運動することは、間違いなく腰・ひざを治すわけです。そうすると、病院に行って注
射を打ったり、湿布したり、リハビリしたり、手術したりする必要もないわけです。これ
は本当に笑い話で、だれかが病院に行かなくなったら、病院のサロンで「あの人は入院し
たんじゃないか」という冗談があります。
先ほどのは長寿ウオーキングでしたけれども、これは去年テレビで見られたと思います
けれども、我々は、基地が来ると、子育てもできないと女性は大変だと、それから島の農
業は壊滅的になるということで、絶対反対だということを言ったときに、「沖縄の方々に
また全部押しつけるんですか」と必ずマスコミの方は言いますから、「いや、そうではあ
りません。沖縄と奄美は歴史的、文化的、地理的にも民俗学的にも同胞です」ということ
などを言いましたけれども、要するにこういうのはとんでもない地域力ですよね。島の人
が1万 6,000 人ぐらい集まりましたから、島はまとまって反対していこうというときには
団結する。だけれども、以前は、伊仙町などは特に、選挙のたびに機動隊が入ってきて、
機動隊が来ないとまともな選挙はできないということで有名でした。今はそういうことは
完全になくなりましたけれども、そのように、まとまると強い力を出す地域であります。
これは、夕日がありまして、向こうは東シナ海ですけれども、ここに塔があります。こ
れは実は戦艦大和の慰霊塔です。「戦艦大和ノ最期」という本を書いた吉田満さんという
方が、徳之島の西方沖で沈んだということを記してあったのですが、実際はもっと北のほ
うでしたけれども、これは、二度と戦争をしてはいけないという平和のシンボルの慰霊塔
で、高さが 26 メートルぐらいあって、何とこの制作者は文化勲章を授与された中村晋也
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先生という有名な先生でした。これはその断崖です。
これは、先ほどの内灘町とは全然違いますけれども、高齢者というか、逆ピラミッドに
近いような形です。高校を卒業した 10 代後半はほとんど島にいませんから、こうです。
これをまた昔のようなピラミッド型にまで戻すことはできませんけれども、もうちょっと
スマートというか、安定した形に戻していかなければいけないと今考えております。これ
から出生率はもっともっと、実は 10 年前は 3.1~3.2 ぐらいだったんです。それが下がっ
てきていますけれども、それでもまだ日本一ですから、こういった人口構成だということ
です。
次はどんどんお願いします。これは、いろいろ調べてみたら、伊仙町がメタボリックが
進んでいる。それから、ちゃんと治療していなかったということです。病院に行ったこと
もないという人がいっぱいいたということであります。
これは、早世ということで……。
【行天】
どうぞ、大丈夫ですから、落ちついてゆっくりお話しになってください。
【大久保】
もう時間がなくなってきたので。これは、早世というデータがはっきり出ま
した。運動不足と、食事に脂っこいものや糖分がふえてきたということです。僕らもまさ
にそうなりそうですから、運動は今していますけれども、予防、そういう結果が出たとい
うことです。
医療費は、今1人当たり 36 万円台ということです。しかし、これは先ほどの町より高
いんですけれども、鹿児島県では徳之島の3カ町がみんなベスト5に入っているんです。
それはなぜかといいますと、内灘町には金沢医科大学があって、長野県には佐久総合病院
があるのですけれども、徳之島にも徳之島徳洲会病院というのがあるんです。実は私はそ
こに 15 年勤務して、地域医療をやっていました。そのときに気がついたことは、我々が
島に昭和 61 年に帰ったときに、末期がんの人とか、血圧の高い人、高血圧性脳内出血で
亡くなる人も多かったし、麻痺になる人も圧倒的に多かったわけです。しかも、腹膜炎、
虫垂炎とか胆のう炎で亡くなる人もいたわけです。ですから、そのときに感じたのは、待
っていてはいけないということです。絶対に地域に出て医療講演をして予防医学を徹底し
てやっていくということで、徳之島全体で 60 以上の集落がありますから、毎週のように
各集落で夕方に医療スタッフみんなと一緒に医療講演をしていったら、本当に病院に行っ
ていない方々、糖尿病で意識がふらふらしている方でも病院に行ったことはないとか、も
のすごく元気だったけれども、最近どうも痔が治らないで行って貧血だと言ったら、痔で
はなくてがんだったとか、いろいろな医療講演をしたときに感じたことはそういうことで、
徹底した予防医学をやってまいりました。
ですから、先ほど午前中の話の中で、総合医が絶対必要だということを話していました
けれども、僕らはそれは 20 年前から痛感しておりました。離島での医療というのは、専
門医の先生をみんな集めなさいといっても、絶対に集めることはできないわけです。です
から、私は外科を専攻していましたけれども、島に帰ってからは、それは何でもしないと
59
いけない。内科の患者さんも診ないといけない。それから、例えば外科のノウハウ・技術
があれば、緊急の帝王切開とか、脳挫傷とか、開頭とか、整形外科の骨折とか、基本的な
手技は一般外科医であればしなければいけない。それを、頭の外傷の人が来たら、ほとん
ど急性硬膜外血腫というのは、開頭しただけでその時点で治るわけです。そういうことで
これから夜中にヘリコプターを呼ぶとか、救急搬送するとかということはほとんどなくな
ってしまうわけです。ですから、プライマリーケアとか、家庭医とか、そういうことがい
かに大事であるかということを痛感して、私たちは島で完結型の医療をやっていこうとい
うことでやってまいりました。しかし、それは徳洲会という大きな病院があったからでき
たということでもあります。これから医師の科による偏在と地域による偏在の問題が出て
まいりますけれども、長野県がやったように、徹底した予防医学をやっていきながら、そ
の中で総合医を育てていくということが、日本の医師不足解消の最短の方法だと思ってお
ります。
実は、来月、徳之島で全国離島地域医療サミットというのを開催して、全国の医療機関、
特に離島にこだわるわけではありませんけれども、離島の関係の人たちが集まって、今の
離島ではもうお産ができないとか、そういう状況にだんだんなってきますので、それを解
消するために、全国の離島が共同歩調で国に提言しようという目的でこういったことをや
っていくこともこれから重要ではないかと思っております。
きょうは、ちょっと頭を整理しないで話をして、大変支離滅裂な部分もあったと思いま
すけれども、これから国保連合会が、そして中央会が、世界に冠たる日本の医療保険制度
をもっと充実させて、そして医療というのは、福祉というのは、どこでも平等に受けられ
なければなりません。例えば、手術の名人がいるとか、ある人にしかできないとかという
医療は、間違っているわけです。どこでもできるような医療体制ができることをまた祈念
申し上げまして、私のつたない話といたします。きょうはご清聴ありがとうございました。
(拍手)
【行天】
鹿児島県の伊仙町の町長、大久保明さんのお話でした。ありがとうございまし
た。
それでは、真ん中に出ていただいて、会場の皆様方、残りの時間が少ないんですけれど
も、大体の予定でちゃんと4時に終わりますので、お帰りのアクセスなどに関してはご心
配にならないでください。外は暑いですから、もうちょっとゆっくりこの涼しいところに
いらっしゃったほうがいいんじゃないかと思います。
残り時間がわずかでございますけれども、先ほど助言という立場でお話しいただきまし
た安村誠司先生、それから今度は厚労省の山口道子先生にお話を伺うことにいたします。
まず山口専門官、3カ所のお話を聞いていただいたんですけれども、いずれもうらやま
しいようなお話ばかりで、非常に個性的な首長さんが自信満々でお話しになったので、ど
うでしょう、どこかに住んでみたいとお思いになりましたか。
【山口】
ありがとうございます。率直に言って、先生方のお話しぶりに、コメントを考
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えなければという気持ちでいたんですけれども、すっかりそれを忘れて聞いておりました。
自然が豊かであったり、あるいはビジュアルで見たところでいろいろと思ったところでは、
病院、金沢医科大学と位置的に物理的に近いとか、そういったところとか、あるいは東御
の助産院というところで命のスタートから見守っていくという姿勢とか、あと伊仙町の自
然と、住民力というのですか、すごい力強さを感じたというところで、選び切れないとい
うのが率直な気持ちです。
【行天】
それで、どこが一番気に入りましたか。(笑)難しいですね。
【山口】
どちらにでも住んでみたいという気持ちなんですけれども、実は私は助産師と
して働いていた経験もありまして、そういう意味で東御の取り組みには個人的に関心があ
りますので、順番からいいますと、そういうことになるでしょうか。
【行天】
さっきのお話で、闘牛が出産率の上昇に役立ったというから、私はてっきり、
やみくもに突っ込むんだと思っていたんですけれども、どうもお話はそうじゃなくて、あ
る年齢層を確保するということで、大変ユニークなことをなさっていたんですけれども、
どこだということはおっしゃらなくても大体わかりますので、ありがとうございました。
それでは、また全体を通しまして、安村先生、ゆっくりお話しになってください。それ
ぞれ全然カラーが違いますけれども、特に最後に伊仙町長がお話しになりましたように、
専門医志向みたいにいろいろと言われているけれども、これからの健康とかいろいろな意
味でいったら、全体を診て、ちゃんと指導して、しかも自分も実践してくれるような地域
定着型のお医者さんというものを大事にしていきたいといったことを、ご自分の体験を含
めておっしゃっていたわけです。特に長野県の場合は、さっきお話ししましたように、松
本市長さんもそうですし、お医者さんもだんだん現実の場に出ていくような方と、それか
ら象牙の塔と言われている大学のほうで専門医志向の方と、二極にだんだん分かれている
ような気がしますが、先生は何か、まとめてどうぞ。
【安村】
先生がおっしゃられるとおり、学生を指導していても、専門医を志向するとい
うのは、各学会ごとにそれぞれ専門医をとらせる、専門医を目指すようにさせているとい
う傾向が実際にありますから、それは一方で仕方がないと思います。福島医大にもそうで
すが、多くの大学で地域医療部とか総合内科とか、うちの大学では地域・家庭医療学講座
ということで、家庭医を養成するという講座があります。それもある意味では地域医療の
専門ということでの専門性だと思いますが、そちらを志向する学生というか、研修をした
いという学生も全国から来る傾向もありますので、一方で専門家志向もありますけれども、
地域医療の専門家としてやろうと思っている学生・研修医もいるのではないかなというこ
とで、これは光ではないかと思っています。
ただ、そうは申しましても、若い医師には、最近始まりました卒後臨床研修制度では都
会志向が非常に多くて、なかなか地方にということがないということで、そこをどうにか
しなければいけないということはもちろんあります。きょうのお話を聞いていて思うのは、
先ほどありました、地域力という言葉は非常にいいなと思いました。地域を支えていくの
61
は何も、最後のとりでは医師というところは確かにあると思うんですが、入り口のところ
では保健・予防の部分というのは保健師さんを中心とした行政が、すべてではなく公助と
いう前には共助、自助というのがあると思いますけれども予防・保健というところできち
んと体制をつくっていく。そのときに、地域力と言われているような地域資源をいかにう
まく取り込んでというか、使っていくかというところが、今回3市町のご説明がありまし
たが、それぞれが地元にある資源をうまく活用してやっているのではないかなと、聞いて
いて思いました。まとめて、まず私のコメントとさせていただきたいと思います。どうも
ありがとうございます。
【行天】
3人の演者の方は、何か、それぞれでご質問とか、この点をもうちょっと聞き
たいということはございますか。お3人の話、よろしゅうございますか。どうぞ。
1つだけ、一番大事なことを忘れましたので。特定健診率を 75%に持ってい
【大久保】
こうということで目標を立てて、今回、このシンポジウムにも出るということで、実際に
65%達成できました。これは、先ほど話をした厚生連の健診ではいつも三十数%でしたけ
れども、各集落で町の集落担当職員と婦人会とかあらゆる団体にお願いして、厚生連の健
診などで漏れた人を全員チェックして、保健センターの職員や保健福祉課の職員総動員で
各集落を回って集めて、要するに特定健診は血液検査と心電図ですから、それをクリニッ
クの先生と私も行って、朝7時から、その前に説明会をして、健診や検査を受けていない
方々にお願いしたら、もうあっという間に 65%まで今回出ましたので、ヒントになると思
います。
【行天】
ほかにはございませんか。よろしゅうございますか。
では、会場の方で、何かちょっとここを聞きたいということがございましたら、ちょっ
とお手を挙げていただきたいんですが、マイクロフォンが参りますから。私のほうからは
ちょっと見えにくいんですけれども、挙げていらっしゃる方はいらっしゃいますか。余り
に圧倒的ないいお話だったものですから、声も出ないというくらいに。いらっしゃいませ
んか。
では、時間がもったいないので、皆様方には十分おわかりいただいたという前提で、再
び安村先生、何か先生のお考えを少しここで。特に福島ですから、先ほどちょっとお話が
出ました卒後研修の問題で、私はちょっとタッチしているんですけれども、最初に放射能
問題が出ましたときに、福島のほうの病院そのほかにご希望を出していらっしゃった方が、
親御さんのほうのご心配とかいろいろな問題でちょっと遠慮したいという方が2人ほど出
られたんです。その後お話ししましたら、全部了解して、今は元気に行っていらっしゃる
わけですけれども、そういったいろいろな問題が定着型で、そういうところへこそ行って
みたいという方も逆に言えば出ているくらいでございまして、プラスマイナス、個人差に
よって随分あると思うんですよ。それは、きょうの3人の首長のお話を伺っていて、リー
ダーがしっかりいろいろなことで方向を立てていらっしゃると、行ってみてそこで働きた
いなというお医者さんもいるし、保健師さんもいるし、助産師さんもいらっしゃるのは当
62
然だろうと思うので、リーダーが必要じゃないかという気がするんでございますけれども。
【安村】
本当にそのとおりだと思いますのは、今日はそういう話をするとは思っていな
かったんですけれども、実際にうちの大学自体は、被ばく医療機関としては二次被ばく医
療機関ということで病院自体が位置づけられていましたけれども、一次医療機関はすべて
壊滅したところもありまして、そういう意味では大学が全部受け入れなければいけないと
いう状況の中で、トップの判断というのは非常に大きかったと思っています。最もトップ
は多分県知事だと思いますが、うちは県立医大といいましても法人化しましたので、厳密
には違いますけれども、実質的には財政的にも県立という形で動いています。その当初か
ら知事が、県としてしっかりした対応をする、かつ県立医大の附属病院、大学が最終的に
はすべて受け入れて対応するという方針を理事長、学長が明確に出しました。それで、全
員を集めて、「そういう方針でここで頑張る。私たちはそのためにここの大学にいるんだ。
この病院で働くということはそういうことだ」ということで、先頭に立ってその意思表示
をちゃんとしたということは、緊急時であって当然と言えば当然ですけれども、平時でも、
トップの方の判断というか、姿勢というのが、下がついていくか、きちんと行動できるか
ということにつながるのではないかなと思っています。
あとは、大学以外でも、これは郡山の病院ですが、建物が一部倒壊した病院の理事長が、
職員を集めて、2日後ぐらいだったとお聞きしていますけれども、「解雇は一切しないで
全職員の雇用を維持する」と。病院がかなり壊れたので、実際に外来部門とか入院部門と
かがたがたで、職員も動揺していましたけれども、トップがこの病院でみんなを守ってい
くということを示したことで、患者さんも、この病院は今ちょっと大変だけれども、大丈
夫なんだと。そういう意味でも上の人の判断というのが職員、患者さん、地域の住民へ安
心感を与えていったのではないかなと思っています。
そういう姿勢で少し落ちついてきた中で、うちの大学の病院としては、単に地域医療を
担うというだけではなくて、災害に強い大学として、災害医療を担おうと考えました。救
急も含め、被ばく医療等も含めてですけれども、むしろこういう現場でしか人を養成でき
ないだろうということで、災害医療拠点ということで今立て直すということをしておりま
す。実際にきのう、放射線に関する講座を2つ立ち上げるということで、教授選をしたと
ころです。震災は、いいことは何もありません。ただ、今、立て直すための準備をし、そ
して災害医療に興味がある若手の医師を募集して、そういう災害に強い医師、実践家が全
国にいなければ、何かあったときに原発のことはこれからあるかどうかわかりませんけれ
どもいろいろな災害があったときに、災害に対応できる医師、看護師を含め、医療従事者
がいないということは後に大変大きな禍根を残すことになると思います。平時から全国の
医療機関の先生方、また医療職の方には、そういう災害の部分に関してもきちんと対応で
きる体制、人づくりというのをしておいていただくといいのかなと思っております。
【行天】
ありがとうございました。
ちょっとそれに関連して、先生、きょう皆様方は全国からおいでになっているので、今
63
私自身がちょっとタッチしているようなことで、例えば岩手県の場合でございますと、今
度の復興の問題で特区申請そのほかというのができるので、どんなに頑張りましても、岩
手の場合、今度津波に遭ったような地区というのは、医師の定住を期待するような医師増
員というのはほとんど不可能なんです。県全体がとにかく医者がいなくて困っていて、い
わゆる無医地区・過疎地区というので大騒ぎしていたところへダブルパンチどころではな
いものを食ったので、もう今後とも医師の派遣・増強、それも定着する医師の定住という
のはもうほとんど不可能と見たので、そこは結局情報ネットワークでつながざるを得ない。
大学なら大学にセンターを置いて、そこで専門のお医者さんたちが全部集まって、それぞ
れの出先の診療所、今まで 200 ベッドぐらいあった病院を増強して、病院などという形だ
けとるよりも、むしろそこのところに保健師さんや助産師さんなどで地元の方がいれば、
その方たちにいていただいて、司会というか、アレンジをしていただいて、時間を決めて、
1日に4時間でも5時間でも教授たちを全部集めてやりたいと、一つの考えだと思うんで
す。今は 200 ベッド以下でないと保険点数がつかないんですけれども、今度は特区申請す
れば、500 ベッドだろうが 600 ベッドだろうが、そういうものに集中して保険診療が可能
になるのではないかというので特区申請が今行われているわけです。きょう、あすのうち
に具体的ないろいろな制度が出てくるとは思いますけれども、福島の場合は、岩手などと
違って、状況としては随分よろしゅうございますね。僻地といっても、会津の奥のほうな
どは別ですけれども、浜通りのほうはそんなに医師が行かないというところではなくて、
むしろ放射能問題でのことはちょっと別でございますけれども。
【安村】
そのとおりですが、プラスマイナスいろいろあるのは、結果的に今、避難区域
というところは当然避難しなければいけないので、機能していない。その周辺にある幾つ
かの病院はもちろん機能しているんですが、人がいないと医療機関というのは立ち行かな
いので、医者が戻っても、結局患者がいないという状態というところも実際にあります。
結果的に幾つかの中小病院の医療再編を促すことにはなっているというのが現状です。つ
まり、幾つかの小さい病院を統廃合しなければいけない。公的病院はこれからどうするの
か。似たようなところが幾つかあるというところで、なかなか今まではどうにもならなか
ったのが、医師が少なくなったこともありますけれども、ニーズとの対応も考えると、や
はり再編ということが実際に動いていると思います。
あとは、今先生がおっしゃられたように、ITの活用ということは、ファイバー等を使
って大学等のネットワークをより充実させるということで動いているということを考える
と、今、医療という面でいうと、当初の急性期のころの避難所等での問題とかは二次避難、
三次避難で少し落ちついてきています。しかし、しっかりとした医療体制を本当に構築す
るような形で避難民が地元へ戻れるかどうかというところがまだちょっと見えないという
ところだと思います。
【行天】
ちょっと乱暴な質問なんですけれども、先生、日本全体で見たときに、きょう
お集まりの、村は少ないんですけれども、町や市の関係の方たちが、医師確保という問題
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で、それぞれお持ちになっている町立病院・市立病院というものにいかに医師を充足させ
るかということで、大学にそれこそ三拝九拝といったことを現在でもやっていらっしゃる
方がいるわけです。それで、首長さんは、医者を十分持ってくるというと、それだけで非
常に大きなプラスファクターになる地域もあるわけですけれども、どうなのかなと。こん
なことを繰り返ししていてもしようがないので、東北のいわゆる根本的な復興体制という
のは、今までのそういった概念などとは地域の人たちも考え方を変えて、自分たちの健康
というのは自分たちが守っていかなければいけないし、逆に言うと、結局人間はいつかは
死ぬんだから、死ぬまで元気で楽しく過ごせるような村づくり・町づくりというものを考
えたほうがいいんじゃないかという意見も国会などでも随分出ているわけです。先生はそ
の渦中にいらっしゃって、両方のお立場を持っていらっしゃるんですけれども、急に一言
で言うというのは難しいんですが、方向性としてはどうなんでしょうかね。今までみたい
なことばかりやっていても、ますます医者は足りなくなるし、当然でございますよね。
【安村】
日本全体などという話は私にはとてもできる能力も知識もありませんが、旧来
の方法でも間違っていないというか、その方法が有効ではないかと思うのは、私が大学に
いるからではないですけれども、しっかりと大学で専門教育もプライマリーも教えられる
ような魅力ある大学病院・附属病院として人をきちんと養成して、そこから、玉突き方式
と福島では言っているんですけれども、大きな基幹病院に人を出して、基幹病院からさら
に診療所という形で、そして若い医師も基幹病院できちんとそれなりの専門技術をできる、
そして診療所等ではプライマリーもやれる、そしてまた大学に戻ってこられるといった循
環型のような研修システムというのをうちの大学などでも取り入れているんです。そうす
ると、ずっと何か、言い方は悪いですけれども、僻地に行っても、いつ戻れるかわからな
いというのでもなく、また基幹病院でずっと長くだけでは専門のみになってしまうので、
地域に行く、もっと診療所に行く。そういうシステムは、今も当然あると思うんですけれ
ども、もっとそれを明確にというか、充実させていくというのが一つあるのではないかな
と思っています。
ただ、きょうの国保の関係で申しますと、福島の避難区域に指定された区域の 20 万人
の人たちは、特定健診・保健指導も一時は全くできない状況で、今は何とか、7月末ぐら
いからぼちぼち特定健診に関して、主にというか、ほとんど全部が集団健診方式で健診機
関との契約で行われておりますので、やっとその契約行為ができるようになりまして、今
幾つか健診がスタートしている。放射線のこともありますけれども、健康が一番だという
ことで、皆さんに行政のほうからも、国保からも、自分の健康を守るための前提としては
きちんと健診を受けましょうというメッセージを出しています。受診率のことはまだ聞い
てはおりませんけれども、住民の方たちにも、怖がってばかりいても何も始まらない、ま
ずきちんと自分の健康状態を知るということが大事だという認識は伝わっているようであ
りますし、市町村の国保もそのためになるべく早く健診をやりたいということで進めてお
りまして、大体 10 月をめどに、10 月ですべて終わるとは限りませんけれども、遅くとも、
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年内には特定健診はすべての避難民に対してもやれる方向で今準備しているというところ
です。
【行天】
ありがとうございました。
山口先生に最後にちょっとお伺いしたいんですけれども、昔はその地域で育っていた保
健師さんとか助産師さんがその地区を守ってくださったんですけれども、今度、例えば東
北などですと、これは特例かもしれませんけれども、肝心要の保健師さんや助産師さんで
亡くなった方がたくさんいらっしゃるわけです。それで、その後を埋めるということがで
きないために、看護協会などでも相当のお金を用意して、もしそこで1年でも2年でも定
住していってくださる方がいればという呼びかけを全国的にやっているわけですけれども、
どうでしょうか、出てきそうでしょうか、そういう方は。心配して意気に燃えていらっし
ゃる方は随分いらっしゃるように思うんですけれども。
【山口】
この質問に直接お答えすることは立場上難しいと思っているんですけれども、
保健師さんたちの活動が本当に今回のことでクローズアップされて、大事だというメッセ
ージは強く私も感じておりますし、恐らく一般の住民の方々が強くそれを感じられている
んじゃないかと思っております。そういう意味で、不足があるところに手当てされるよう
な仕組みがこれから必要だということを、強く感じております。
【行天】
ありがとうございました。
ちょうど4時になりましたので、これで終わりにしたいと思いますけれども、初めに私
が長々と話させていただいたように、もうこういう事が起こったときに、一旦緩急のとき
に、その地区に根差していらっしゃるお医者さんとか保健師さんというものが、この日本
の国保事業並びに医療制度に関しては決定的に大事だということを繰り返して申し上げて、
先ほど大久保町長さんがお話しになったんですか、何といったって地元を大事にする人を
根本的に育てて、日本の国民皆保険というものをいつまでも守るように努力しようではな
いかというメッセージで終わらせていただきたいと思います。
どうも長い時間いろいろとありがとうございました。(拍手)
【司会】
ありがとうございました。
司会の行天先生を初め、助言者の先生方、発表者の皆様におかれましては、長時間にわ
たり貴重かつ有意義なお話を賜り、これからの進むべき道筋を示していただいたような気
がいたします。まことにありがとうございました。
皆様、もう一度盛大なる拍手をお願いいたします。(拍手)
以上をもちまして、第 28 回「健康な町づくり」シンポジウムの全日程が終了いたしま
した。
ここで閉会とさせていただきます。
(了)
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