第9章 教授系列の設計 カリキュラム(curriculum) • カリキュラム(あるいはコース) – 前提条件となる能力を学習し,より複雑な能力を学習 する一連の能力の組み合わせを,カリキュラム(ある いはコース)と呼ぶ. – カリキュラムやコース内では,目標を系列化 (sequencing)することが必要である. – 系列は単純なスキルから複雑なスキルの順に並べる. • 精緻化理論(elaboration theory) – 概念・手続き・原理の縮図(epitome)を提示することに よって,系列を構造化する手法である. 本章で取り上げる系列化の問題 • 効果的な系列化について – 一般的なものからより特殊な目標へ,全体から細部 にわたってコースを編成する. – 異なる学習のタイプ間の機能的な関係を利用する. • 3つの基本的なタイプについて – 階層型 – 知識基盤型 – 螺旋型 • 多様かつ異なった目標の統合について カリキュラムの目標 • 目標の設定 – コース単元が明確化できる. – コース単元は,学習に数週間が必要な単位である. – 最もレベルの高いものは,コースの最終目標のため の前提条件となる技能である. • 単元目標 – 支援目標,下位目標に分類され,レッスン単位にグ ループ化される. – 各レッスンに割り当てられた目標を分析し,その下の 支援目標,下位目標が列挙される. パフォーマンスの結果 • 5つのレベルで表現 – 生涯目標(life‐long objective) • コース終了後も継続して将来的に利用する. – コースの最終目標(end‐of‐course objective) • コース終了後,すぐに期待されるパフォーマンス. – 単元目標(unit objective) • トピック群として単元ごとに期待されるパフォーマンス. – 特定のパフォーマンス目標(specific performance objective) • 一定のまとまりで得られる特定の学習成果である. – 下位目標(enabling objective) • 必須あるいは支援的な前提条件である. コースとカリキュラムの系列化 • コース系列の決定 – 「どの系列で単元を提示するか?」に答えることが主な 作業となる. – トピックに対する前提条件となる言語情報と知的技能が, 前もって確実に学習できている必要がある. • いくつかの例 – 算数「分数の足し算」 • 整数の掛け算と割り算を学んだ後に置かれている. • 分数の足し算は,より簡単な計算が必要となる. – 理科「変数間の関係を図示する」 • 変数を測定するスキルを学ばせる. – 社会科「多文化間の家族構成の比較」 • 文化の概念を理解していることを期待される. コース内における系列化のモデル • マクロレベルでの系列化 – ライゲルースとステイン(精緻化理論) – 概念,手続き,原理を扱う. – 縮図(epitome)で概観を示す. • 一般的かつ単純,基本的な例を含むようにする. • 縮図を精緻化した,より詳細な例を提示する. • 縮図を復習し,最も精緻化された事例とそれ以前に提示さ れた事例との関係を説明して行く. • 縮図・精緻化・要約・統合のパターンを,すべての側面を 網羅するまで続けていく. コースとカリキュラムの系列 • 領域と系列(scope and sequence)の表に示される. – 1つのコース全体あるいは複数のコースを通じて学ば れるトピックがすべて挙げられている. – 内容トピックにまたがる異なったスキルレベルを定義 する初めの段階として良いものである. – コンピュータ入門コースの例(表9-2) コンピュータ入門コースの例 • 教授カリキュラムマップ(図9-1) – 単元2から7を学ぶ順番は,あまり重要でない. – 単元1で学ぶスキルは,単元2から7の前提条件と なっている. • トピック内のスキルの系列 – マイクロコンピュータの構成要素を同定する. – どのようにコンピュータを起動させ,アプリケーション を動かすかを演示(例示)する. – 周辺機器やソフトウェアを壊さないように取り扱うこと を選択する. トピック目標を分析 • 単元1:オペレーティングシステムの例 – どんなレッスンを必要とされているかを決定する必要 がある. – 多くの下位目標や支援的(補助的)な前提条件があ る場合,作業が複雑になる. – アウトラインは広範囲に保ち,単元の主要な目標だ けを特定する(図9-1). – 単元1のICMは,図9-2のように示される. – コースマップ(図9-1 )と単元マップ(図9-2 )は, 地球儀と各国の平面地図のような関係にある. レッスンの同定 • レッスン – 定められた時間の中で成立する. • 学習者は,あるレッスンのために一定の時間を過ごすこと を期待されている. • レッスン時間の長さは,さまざまである. – 目標毎にレッスンを用意することは現実的でない. – 複数の目標をグループ化して1つのレッスンを組み 立てることが一般的である. – 学習成果の混在を心配するよりも,パフォーマンス 目標の学習が最もよく進む順番にレッスンを配列す ることの方がより重要である。 単元におけるレッスンの系列化 • 系列化の要求 – 新しい学習が前提となる学習によって支援される. – 系列を守って教えられるスキルがどれであるかを決定す るためには,学習分析が行われる. – 系列は完成していなければならない. – 関係無い目標は,除外されるか異なる時間に教えられる. • トピックの系列化の留意点(表9-3) • レッスンマップ – レッスン内におけるスキルの系列(図9-4) – 単元マップ(図9-3)とレッスンマップ(図9-4)は,アメ リカの地図とある州の道路地図のような関係にある. レッスンマップ • レッスンの目標 – 単元マップから,1つ以上の目標を持ってくる. – 対象となる目標の到達に関連する下位目標がレッス ンマップに含まれる. • 下位目標 – 「これらの新しいスキルを学ぶために知らなければ ならないことは何か?」に答えることで導き出せる. • 支援目標 – 「新しいスキルを学ぶ際に助けとなることについて, 学習者は何を知っているか?」にも答える必要があ る. 学習階層図と教授系列 • 知的技能の本質 – 学習の条件を詳細に設計することを可能にする点に ある. – 学習のプロセスは学習者に強い強化を与える. • 以前はどのようにするのか知らなかったことができるよう になったということに気付く. • ドリルや機械的復唱とは,まるで正反対の刺激である. • 学習階層図 – 知的技能目標が前提条件間の関連性に従って配列 されている. • 力の水平成分と垂直成分を求める物理学の例(図9ー5) 前提条件とは? • 前提スキル – もし学習者にその前提条件がない場合,上位目標を 達成することができないスキルをさす. – 前提条件の同定は,「学習者がこの(新しい)スキル を学ぶために必要なスキルで,それなしには学習が 不可能になるようなスキルとは何か」 • 物理学の例 – 「反作用する力を同定できない」「三角形の一部とし て力を表現できない」「三角法の関係を同定できな い」場合は,力の水平・垂直要素を求められない. 系列化のその他のタイプ • 知識ベースの系列化 – ハイパーメディアを活用したナビゲーション – Webを用いたインストラクション – ソフトウェア工学,ID,ハイパーメディアデザイン,人 間モデリング等の分野にまたがる. • コース教材の自動系列化 – メタデータの標準化 • オンライン学習での系列化 – 行動観察の記録 – ユーザーの類似度 – 教材の閲覧記録 螺旋型の系列化(spiral sequencing) • 螺旋型系列化モデル – 基盤から上部まで上昇しながら円を描くバネの構造. – 外国語のコースや職業スキルにおいて顕著である. – コンピテンシー(能力)が積み上げられる. • 言語学習モデル – 語彙(言語情報),文法(ルール活用),発音(ルール 活用と運動技能),会話(ルール活用と問題解決)等 のスキルが含まれている. – 拡張していく螺旋型(図9-6). • 初回で学べた者は自分の学習をより強固に,学べなかっ た者は学ぶための多くの機会を得られる. 螺旋型の系列化(spiral sequencing) • 学習は動的なプロセス(ブルーナー ) – 課題別系列化 • ある1つのトピックについて,要求される理解・能力の深さ まで1度に学び終えてから次のトピックに進む. • 精緻化理論(Elaboration Theory) – 螺旋型系列化 • ある1つのトピックを複数に分け,他の学習を織り交ぜな がら,徐々に難易度を高めて学習する. • コースを構造化する時は,単純なものから複雑なもの,一 般的なものから詳細へ,抽象的なものから具体的なもの へ編成する. • ICMづくりや知的技能の系列化ルールと両立する. • 学習の前提条件となる系列にしたがう. 複数の学習目標の統合 • 1つのレッスン – 異なる目標があることは珍しくない – (例)大きな古時計の時報機能をセットするための手 続き的なルールを学ぶためのレッスンまたはトピック. • 前提条件は学習階層図による表現が有効である. • 時報機能を調整することについて学ぶ – 時報機能の種類と特徴(言語情報) – 注意深さ,正確さ,危険回避等(態度) • 教授カリキュラムマップによって,異なるタイプ目標の相互 関連を見せることが可能になる. • 学習目的をスキーマとして記述する(8章).
© Copyright 2024 Paperzz