会話から始めよう ~モチベーションを高める実践的な英語学習~ 徳永 優子 <語学の現状> 現在日本人の英語学習期間は中学校から高校の6年間、長ければ大学生までの10年間で す。しかしペーパー試験では英語上級者と判定される方でも、街中で英語で話しかけられ て一言も発せないということも珍しくありません。例えば世界で最も広く受け入れられて いる TOEFL という英語能力試験の speaking の得点でも、2013年度の日本の平均点はアジ ア数十カ国の中で最下位となっています。現在の英語学習に加えて、話す力の向上が必須 だと考えます。 個人的な経験ではありますが、高校の修学旅行でオーストラリアに行った帰りや道で外 国の方と英語でコミュニケーションを取った時など、その後には、もっとこう話したかっ た、この言い回しはなんと言えばいいか、など頭がフル回転し勉強という感覚ではなくと にかく「話したい!」という気持ちから英語学習へのモチベーションが非常に高まりまし た。 このような経験は留学経験をお持 ちの方や海外旅行へ行かれた方の意 見でも圧倒的に多いかと思います。 PRECIDENT が行った TOEIC 受験者へ の調査で「効果があった学習方法 は?」という問いに対して「留学、 海外での語学研修に参加する」や 「英語、英会話レッスンを受ける」 という答え がずば抜け て高い結果 となってい ました。 同様に、 Benesse が 行った調査で教職員の方が自己研鑽として「Q 英語力の向上または維持のために、自己研 鑽として行っていることがありますか。」という問いに対して「外国の人とのコミュニケ ーションを積極的にとる」が78%で1位でした。 現在の英語教育において、話す力向上のためには現在の授業にプラスして「英語を話す外 国の人とのコミュニケーションを積極的にとる」ことが必須と言えるのではないでしょう か。 <提案> 英語を話す外国の方と話す機会を持つのは現地に行くことが最も有効ですが、コストを 考えると現実的ではありません。しかし現在ではインターネットを通じてのビデオ通話 (skype など)のツールが安価で容易に利用できるため、それらを利用しての会話が非常 に有効なのではないかと考えました。 すでに学校に設置されているパソコンに web カメラとマイクを設置しても1セット2000 円以内と非常に低価格で取り入れられます。試験的に中高の英語クラブや大学のゼミなど で行い、そこから授業に持ち込んでみることがいいのではないかと考えています。 私が住んでいる渋川市ではオーストラリアのローガン市との姉妹都市を提携していて交 換留学を行うなど、群馬県でも前橋市を始めいくつかの市でオーストラリアと親交があり ます。そして2012年の調査ではオーストラリアでの日本語を勉強している人の数は 296,672人と世界4位で、その95%が初等中等教育に集中しています。同年代でお互いの言 葉を勉強している相手とコミュニケーションを取ることはとても良い刺激になることを考 えるとオーストラリアの小中学校との連携がいいのではないかと考えています。 <具体的には> 3〜6人のグループを作り、それぞれ事前に自己紹介または日本や群馬県の紹介文を考え1 人あたり1〜3分程度の文章として組み立て音読の練習をします。最終的に skype などを使 用してカメラ越しの相手(数人)に向けて話します。ALT の先生の授業で一部の生徒のみ が話したり1対多とは違い、必ず全員が話すようにすることが重要と考えています。 <導入、事前の文章作成、練習>が2〜3時間程度、<実践>が1時間、<振り返り>が1 時間で計5時間程度の設定です。 最後に5〜10分程度のフリータイムを設けて日本語・英語やボディランゲージ含め予想さ れる質問や「質問はありますか?」「すみません、聞き取れませんでした」「調べておきま す」など実際に会話に使われる会話文も合わせて学習しておくことでぐっと英会話が身近 になるかと思います。 発展としては、ビデオ通話後に相手に手紙やメールを書くことです。通話時に話せなか ったフォローにもつながり、英文の手紙・メールの形式の学習にもなり大変実践的です。 実際に会話してみる言葉が出てこなくてもどかしい思いをするかと思います。しかし、 一度でも話してみるという経験が、後々の英語を勉強するというモチベーションにおおい に関わってくることは想像に難くありません。こういった取り組みを生徒個人が行うのは 難しいかもしれませんが、こういった枠組の中で体験するということで安心感が生まれの びのびとコミュニケーションを重ねるきっかけになるのではないでしょうか。 回数を重ねていくうちに、実際にどの程度話せるかである、とか相手にもこの程度のス ピーキング力であることを事前に伝えておいてもらう、など取り組む側の経験が蓄積され ていくため先がけて少しでも早く取り組みを開始することが大切だと考えています。 <まとめ> 教員の方へのアンケートでは、指導で重要だと思うことのうち、 2位「英語はコミュニケーションの手段となることを意識して指導する」は77%、 3位「生徒が自分の考えを英語で表現する機会を作る」は76.6%がとても重要だと答えてい ます。ですが、十分実行しているとの回答はそれぞれ35.1%と17.5%にとどまっています。 とても重要とは考えられていますが、十分実行したくてもできないのが現実のようです。 今回の授業案では、事前に考える文章もある程度定型のものが使用でき、グループ学習や 生徒同士の自主学習が行え、話相手が別にいるためそれを補助するという役割で教員の方 の負担を少なくし、かつ英語で表現する機会の不足を補える方法と言えるのではないでし ょうか。 英語も様々ななまりがあるといいます。イギリスアメリカの違いを初め、中国なまりやイ ンドなまりなどです。しかし彼らは堂々とそれを話しています。日本人は間違ってはいけ ない、きれいに話さなければいけないと思い込むあまり無口になってしまうこと多いです。 日本なまりの英語も日本人がどんどん海外に出て話していくことで伝わりやすくなってく るのではないでしょうか。 大人より柔軟性のある小中学・高校・また大学生が実際に話し、コミュニケーションを図 ることを通じて、英語を学ぶのが楽しいと思える生徒が増えることを期待しています。 (参考・引用) 『Benesse 第1回中学校英語に関する 基本調査[教員調査 ]』 http://berd.benesse.jp/up_images/research/data_00_(2).pdf http://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/chu_eigo/kyouin_soku/soku_6.html http://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/chu_eigo/kyouin_soku/soku_9.html 『2012年度 日本語教育機関調査』 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey_2012/2012_s_exc erpt_j.pdf 『市町村の国際化施策(平成26年度版)』 http://www.pref.gunma.jp/contents/000308893.pdf 『Test and Score Data Summary for TOEFL iBT® Tests』 https://www.ets.org/s/toefl/pdf/94227_unlweb.pdf 『1000人調査! 一番使える英語教材、裏切られた学習法』 http://president.jp/articles/-/8633?page=3
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