児童生徒の心理ケア

児童生徒の心理ケア
今井 遥
私が中学3年生の頃、私の友人はクラスでの友人関係が上手くいかないことや高校受験
のことなどが重なり、様々なことに悩んでいた。そんな友人に対して何もしてあげること
ができなかった。そんなときに友人が頼っていたのは、養護教諭だったのだ。当時、私の
通っていた学校では保健室が3年の教室と同じ階に設置されており、悩みがある生徒たち
が何人も話をしに出入りしていて、
私たちにとってとても身近な場所であった。
そのうえ、
担当の養護教諭は私たちの目線で物事を考えてくれ、生徒の相談にも親身なって聞いてく
れるような先生だったのだ。私の友人は、その養護教諭がいる保健室という場所に何度も
助けられていたのだ。私は、そんな友人や養護教諭の様子を見て、友人に何もしてあげる
ことができなかった自分に対して、力不足を感じたと同時に、私の友人のように悩みを持
った生徒たちに対して、その養護教諭のように手助けをしたいと思ったのである。
そのような経験から、私は、養護教諭を目指している。怪我や病気の治療をするという
本来の仕事をこなしつつ、生徒の悩みを聞き、心のケアもすることができる養護教諭にな
ることが理想である。学校に通っている子ども達は、成長・発達途上である。よって、個
人差はあるが、多くの子どもが様々な心の問題を抱えている。そして、その心の問題は、
体調不良という形で現れる場合もある。そのため、体調不良に悩まされたり、学生にとっ
て学ぶべき時間である授業に参加できなかったり、というような事態が起きる可能性があ
るのだ。そんな事態を避けるためにも、養護教諭が生徒たちの悩みを聞き、少しでも気持
ちを軽くして身体も心も健やかに育ってほしいのだ。多くの人は、心のケアなどを養護教
諭が行う必要はない、各学校にいる心理カウンセラーが行えば良いと言うのであろう。だ
がしかし、現状では常に心理カウンセラーが来校している学校は少なく、週に2、3回程
度しか来校しないという場合が多いのである。このことが、心理カウンセラーへの敷居を
高くしている原因の1つなのだ。このように、生徒と心理カウンセラーの距離が遠いこと
によって、生徒にとって心理カウンセラーには、悩みを相談しづらいという状況ができあ
がってしまうのである。だからこそ、心理カウンセラーよりも生徒との距離が近い養護教
諭が生徒の心のケアをするべきだと私は考えるのである。だからといって、心理カウンセ
ラーが必要ないといっている訳ではないのだ。深い心の病を抱えてしまった場合などの、
本当に心理カウンセラーを必要としている生徒でなかったときに、生徒自身が心理カウン
セラーの相談するほどの大げさな悩みではないと判断することもあるだろう。
そのときに、
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頼るべき相手が養護教諭であってほしいということを私は主張したいのである。
児童生徒の心理的安定は教育を受ける前提として重要である。なぜなら、良好な心理状
態を保つことは、より良い学習をするために必要だと考えるからだ。よく、悩みを抱えて
いると集中できないということがあるだろう。これは大人だけに限ったことではなく、子
どもも同様である。では、児童生徒の教育を妨げる問題について述べていく。
現代社会では、中学生でも携帯やスマートホンを持つなど、インターネットの普及が加
速しているように見受けられる。それによって、昔とはコミュニケーションのとり方が異
なっているのだ。それが原因で人間関係に悩む児童生徒も多くいる。まず、多く取り上げ
られる問題として、不登校やいじめによる自殺などがある。このような問題に行き当たっ
たときの教師の行動として大切なことは、妥協しないことや生徒の気持ちになって考える
などといった精神である。よって、教師には強い精神力が必要である。例えば、生徒の気
持ちになって考えることは重要である。しかし、その生徒の気持ちに自分の精神がやられ
てしまった場合。また、教師が冷静な判断をすることができない状態になってしまった場
合も同様に、問題解決につながらなくなってしまうのだ。常に冷静な判断をし、どの生徒
に対しても公平に接することができるように、精神力を強くしておく必要があるのだ。こ
のように、インターネットの普及やいじめ問題などといった、時代による社会の変化が教
育にも大きく関わっているのだ。
さて、不登校やいじめによる自殺などが問題視されていることを前述したが、その原因
の1つとして「中 1 ギャップ」が挙げられる。私は、中学生になってすぐ、部活内での友
人関係に悩んだ事がある。部活内の 1 年生で同じ小学校出身の人がおらず、馴染むことが
できずにいた。その上、自分が何をした訳でもないのに、部活内の 1 年生から無視をされ
てしまったのだ。その当時は、ただのいじめだと認識していたのだが、今になって考える
と、それは「中 1 ギャップ」だったのではないかと思うのだ。
中1ギャップとは、児童が小学生から中学1年生に進級した際に、心理や学問、文化的
なギャップと、それによるショックを受けるというものだ。これらを引き起こす原因とし
て、小学生の頃にはない先輩後輩関係や、いじめの激化、異なった小学校から集まった人
間同士での人間関係の再編成、小学校よりも勉強の難易度が上がるなどといったことがあ
る。結果として、学校に適応できなくなってしまった子どもが、不登校や引きこもりにな
ったり、いじめを受け、最悪の場合には自殺をしてしまうことがある。
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では、
「中1ギャップ」を予防するために教師はどうすればいいのだろうか。私は、様々
な人や機関と連携することが重要であると考える。まず、中学校と小学校との連携だ。小
学校で誰と仲良くしていたのか、成績はどのくらいだったのか、などといった情報を事前
に得ることで、中1の段階では仲の良い友達と一緒のクラスにするなど、クラス分けを考
慮することでギャップを最小限にすることができるだろう。また、小学校で過ごす6年間
で、人間関係づくりの能力を育成しておくことも重要である。次に考えられるのは、小学
校同士の連携だ。同じ中学校に進学する小学校同士が行事などで交流することで、入学前
から別の小学校の雰囲気を感じることができ、文化的なギャップを感じることを予防でき
るだろう。それから、入学前の子ども達や保護者に向けた、入学説明会や体験入学を行な
うことも効果的だ。入学説明会を行なうことで、中学校の年間行事や定期テストなど中学
校の流れについて理解しておくことで、事前に心構えをしておけば、ギャップによるショ
ックを受けることもないだろう。保護者も中学校のことについて理解しておくことで、子
どもに中学校への入学準備をさせる際に役立つだろう。さらに、体験入学を行なうことで、
中学校の雰囲気を直に感じ、耐性をつけることができる。
しかし、予防していても「中1ギャップ」は起こってしまう。もし、
「中1ギャップ」が
起こってしまった場合、どのように改善すべきだろうか。まず、担任の先生が生徒の様子
をよく観察することが大切だ。また、養護教諭や他の教師とも情報交換をし、常に生徒一
人一人の状況を把握しておく。友人関係に悩む生徒に気づいたら声をかけ、生徒が相談し
やすいような環境をつくる。そして、上手な人間関係を築けるように指導する。不登校生
徒がいた場合、その生徒の保護者と定期的に連絡をとるようにし、学校へ登校出来るよう
促す。それから、授業に追いつけない生徒がいた場合、授業に関する質問を受け付ける時
間を増やしたり、自由参加の課外授業を行なうなどの指導方法が考えられる。
以上のことから、
「中 1 ギャップ」については、様々な人や機関と連携することが重要で
あると言える。小学校から中学校へ進学するという状況から、
「中 1 ギャップ」とは、中学
校だけの問題ではないのだ。よって、担任だけ、中学校だけ、といった個々での対応では
不十分なのだ。特に、小学校との連携は重要だ。なぜなら、中学校入学前の予防対策が、
特に大切であると考えられるからだ。事前に予防対策をしておくことで、
「中 1 ギャップ」
が起こる可能性を最小限にすることができるのだ。人生の中で大切な中学校生活を有意義
に過ごすために、スタートの 1 年間を嫌な思い出にしないに越したことはないだろう。教
師は、
「中 1 ギャップ」への正しい理解を持ち、適切な対応や指導を行なうことが必要にな
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るのだ。
「中1ギャップ」に関連して、教育システムについて述べていく。不登校やいじめ、暴
力、学級崩壊といった無秩序な状態のことをアノミー化現象と言う。要因は、国の教育政
策、行政の学校運営の誤り、教員の質の低下などといわれていたが、近代以降は、発展・
整備されてきた学校教育のシステムそのものであるといわれている。その背景には、教育
の全てを学校に任せている「学校化社会」がある。学校化社会では、ほとんど全ての人が
12 年間の長期にわたり学校に通っている。これは、数字でも分かることで、平成 16 年進
学率の調査では、高校進学が 97%、大学進学が 48%となっている。そして、1日のほとん
どを学校で過ごしている。学校化社会の特徴は、日常のほとんどを学校または学校に関係
することをしているということである。そのため、時間にゆとりがなく疲れている。つま
り、大人の社会が子供の社会にそのまま移行しているといえる。また、勉強に追われてい
て、自由時間がないために、決まったことをこなすという自由のない社会となっている。
結果、校内暴力は長期的に増加しており、いじめはなくならず、不登校は増加している。
また、日本では、1人の教師がやることが多く多忙であり、1つのことに専念しづらい。
よって、何を優先させるかが重要とされている。教師と子どもは合わせ鏡であり、教師の
行動が子どもの行動となり、逆に子どもの行動は教師の行動となるともいわれている。よ
って、教師が多忙であることが合わせ鏡となって、子どもも追われる日常を送っているの
ではないかとも考えられる。このアノミー化現象が問題視されているのだ。
以上のように、教育システムがこの現象の要因であるのだ。現在の教育システムは、小
学校が6年間、中学校が3年間、そして高校が3年間という6・3・3制となっている。
しかし、この学制が導入された当時よりも現代の子どもは、発達が早期化していると言わ
れており、現代の子どもの発達段階には見合っていないといえる。また、子どもたちに対
する意識調査において、自己肯定感の低さが指摘されているなど、現在の学校制度が、効
果的な制度であるとはいえない。そのため、子どもの自信や可能性、能力を引き出す教育
を行うことができるシステムの構築が必要である。そこで、考えられるのが小中一貫教育
である。
小中一貫教育にすることでこれらの問題を解決できるだけでなく、
「中1ギャップ」
が起こる可能性も軽減することができるのだ。つまり、小学校の友人関係を引き継ぐこと
ができ、新たに人間関係を構築する必要がなくなるため、
「中1ギャップ」が起こりにくく
なるのだ。
以上のことから、学校には様々な問題があることがいえる。
児童生徒の心理ケアを行い、
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これらの問題を解決していくことが児童生徒の学習の質を高めることに繋がるのだ。
よって、私の理想は、生徒に頼ってもらえる相手となる養護教諭になることである。そ
のためには、生徒が相談しやすい環境をつくることが大切だ。良い環境が整っていないと
最悪の場合、誰にも相談することができず学校に来ることができなくなり不登校という扱
いになってしまうだろう。せめて、そのような生徒を保健室登校にする。また、不登校に
なってしまう生徒をなくすためにも、私の中学生時代の養護教諭のように生徒の目線で物
事を考え、生徒に対して親身になることが重要なのだと思う。そして、常日頃から生徒を
観察し、変化に気づいてあげることも重要だ。しかし、相談に乗る上でやってはいけない
ことは、自分の思うことを生徒に押し付けてしまうことである。そうすると、上からもの
を言っているようになってしまう。そうではなく、相談してきた生徒の立場にたって、そ
の生徒と同じ気持ちになって話を聞いてあげるといったことをすることで心の距離が縮ま
り、同じ目線にたつことができるだろう。そうすることによって、生徒に対して自然と親
身になることができるのだ。そして、
「この先生は私のことを理解してくれる」と生徒に思
ってもらうことが重要なのだ。そのように思ってもらうことで、私が目指す、生徒が悩み
を相談しやすい相手や環境になるのではないだろうか。
このように、生徒の目線で物事を考え、生徒に対して親身であること。そして、生徒と
の距離を近くし、悩みを話しやすい環境づくりを心がけ、生徒の心のケアを行うことがで
きることが、私が思う理想の養護教諭である。理想の養護教諭になれるよう、これからも
カウンセリングの方法や教育についてしっかり学んでいきたい。
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