物理エン ジ ン と 有限要素法の連携可能性 環境構造工学講座 1. 研究背景と 目的 近年、 広く 研究成果を 一般に 広めた り 、 防災教育 12859 近藤 高誉 担当教員 後藤 文彦 表–1 各球の反発係数 左から の順番 1 √ 反発係数 e 2 0.00 √ 3 0.25 √ 4 0.50 √ 5 0.75 √ 1.00 の現場で 利用し た り する う え で 、 数値計算の可視 化、 そ の中でも 、 と り わけ 3DCG に よ る 動画化が 必要と な っ て き て いる 。 し かし 、 現状では数値計算 と 3DCG 動画作成は、 人も 使用ソ フ ト も 全く 独立 し て おり 、 相互の連携がス ム ーズではな い。 そ こ で今回は、 3DCG 動画作成で使われる オープ ン ソ ー ス か つ 無償の 3DCG ソ フ ト ”Blender”が内 蔵す る 物理エ ン ジ ン ”Bullet physics”に 着目し た 。 図–1 反発係数 物理エン ジン と は、 古典力学的な 法則を コ ン ピ ュ ー タ 上でシミ ュ レ ーショ ン する ソ フ ト ウ ェ ア のこ と を いい、 3DCG を 利用し たア ニメ ーショ ン やゲーム の 作成現場のみで利用さ れて いる 。 本研究では、 数値計算結果の 3DCG ソ フ ト への 連携を 視野に 入れ、 3DCG 動画作成に おけ る 物理エ ン ジン の利用方法を 模索し た 。 2. 物理エン ジン Bullet physics の検証 (1) 反発係数の確認 反発係数の確認を する た め 、 反発係数 e を 表-1 (2) 摩擦係数の確認 摩擦係数の確認を する た め 、 摩擦係数を 表-2 の よ う に 変化さ せ、 45◦ 傾斜し た 斜面に 剛体の立方体 を 静置する 。 剛体の立方体が滑動し て いる 様子が図-2 であ る 。 左側の立方体ほど 、 よ く 滑っ て いる こ と が分かる 。 ま た 、 右の 2 つは滑り が悪く 、 回転し て いる 。 こ れら の挙動を 見る に 、 摩擦や回転も かな り よ く 表現でき て いる と 言え る 。 表–2 各立方体の摩擦係数 のよ う に 変化さ せて 、 同じ 高さ から 剛体の球を 自由 左から の順番 1 2 3 4 5 落下さ せる 。 こ こ でいう 剛体は、 変形し な いと いう 摩擦係数 µ 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 意味だが、 反発係数に 応じ て 反発はする 。 剛体の球 が反発し て いる 様子が図-1 で あ る 。 左端の球は全 く 跳ね返ら ず、 逆に 右端の球は落下さ せた 初めの高 さ ま で跳ね上がっ て いる 。 ま た 、 跳ね返っ た 球の高 さ は一直線上を な し て いる 。 跳ね返る 高さ h は、 元 の落下高さ を ho と する と 、 h = e2 ho と な る こ と か ら 、 反発係数がこ の式に 忠実に 反映さ れて いる こ と が分かる 。 図–2 摩擦係数 キ ーワ ード : 物理エン ジン , 有限要素法, 可視化, 3DCG ソ フ ト , オープン ソ ース 変形の確認 表–3 ラ ーメ ン の変形パラ メ ータ (3) 3. 数値解析の結果の動画化 前章の検証から 、 物理エン ジン は、 剛体の摩擦や 項目 値 摩擦 0.000 反発計算を 得意と し て いる が、 個々 の物体の変形を 重さ 3.000 表現する のは苦手な こ と が分かっ た 。 そ のた め、 柔 ばね 引く 0.900 ら かい部材に 関し て は、 有限要素法な ど の数値計算 ばね 押す 0.900 ばね 曲げ 0.900 の結果から 3DCG 動画を 作成する 必要があ る 。 梁の 曲げ と 柱の 圧縮の 挙動を 確認す る た め に 、 ラ ーメ ン に 表-3 に 示す変形のパラ メ ータ を 与え る 。 パラ メ ータ はヤ ン グ率やポア ソ ン 比と は違い、 曖昧 な 値であ る 。 ま た 、 変形も 定量的な 値が出力さ れな いた め、 目視で判断する 。 図–9 FEM 時刻 t 図–10 FEM 時刻 t+δt そ こ で図-9, 図-10 のよ う に 、 有限要素法に よ る 初期状態では、 ラ ーメ ン の輪郭を 表すエッ ジ (線 分) は図-3 のよ う に ほと んど 生成さ れて いな い。 こ の状態では、 柱部分が上下に 揺れる だけ で、 梁部分 の曲げは見ら れな い (図-4)。 次に 、 表面のエッ ジを 過渡応答解析の結果を δt 時間毎に 計算・ 可視化し 、 コ マ 撮り ア ニメ と し て 繋げる こ と で gif 形式の動画 に する こ と が出来た 。 し かし 、 可視化し た 構造物の gif 動画を 人物や背景な ど の画像と 重ね合わせる こ と は困難な た め、 防災教育目的の動画に 整形する に は至ら な かっ た 。 な お、 過渡応答解析に はオープン ソ ース の Salome-Meca を 使用し た 。 図–3 エッ ジ :初期状態 図–4 変形:初期状態 4. まとめ Blender の機能で自動細分化し て みる (図-5)。 こ の 状態では、 梁の曲げも 確認でき る が、 柱部根元に 見 ら れる よ う に 断面形状を 維持でき て いな い (図-6)。 そ こ で、 ラ ーメ ン 内部に も 格子メ ッ シュ 状に エッ ジ 図–11 石積護岸の斜面 図–12 石積の崩壊 3DCG ソ フ ト の物理エン ジン は、「 目視でそ れ自 体の変形が分から な いも の」 や「 剛体的な 要素が重 図–5 エッ ジ :表面 図–6 変形:表面 な り 合っ て いる も の」 を 扱う のに は向いて いる た を 生成し て みる (図-7)。 する と こ の状態では、 柱の め 、 例え ば図-11, 図-12 の石積み護岸に 見ら れる 圧縮と 梁の曲げ も 確認で き 、 断面形状も 比較的 維 斜面のよ う に 、 やわら かい土に 対し て 剛な 石が変形 持さ れて いる (図-8)。 し かし 、 エッ ジの生成や計算 せずに 崩れた り する よ う な 挙動を 表現する のに は向 速度、 変形の正確さ な ど で有限要素法よ り も 劣っ て いて いる かも し れな い。 し かし 、 土部分の変形のよ いる 。 う に 「 目視で分かる ほど 変形する も の」 や「 見た 目 に は連続体と し て 扱え る も の」 に ついて は、 有限要 素法を 使用する のが適し て いる と 考え ら れる 。 よ っ て 、 今後の課題と し て 、 有限要素法な ど の数値解析 図–7 エッ ジ :内部 図–8 変形:内部 結果を 、 3DCG ソ フ ト に イ ン ポート 可能な 形式に 変 換する 方法を 模索し て いき た い。
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