カナダ人女性誘拐事件 警察官 12人が関

2012.9.21
Vol.292
Vol.292
HEADLINES
■フィリピン:カナダ人女性誘拐事件 警察官12人が関与か
■メキシコ:麻薬組織「ガルフ・カルテル」の首領を逮捕
■オーストラリア:メルボルン
テロ関連捜査で男を逮捕
■シリア:アサド大統領がブラヒミ特使と初会合
■エジプト:海外在住のコプト教徒らを検察が起訴
今週のTOPIC
フィリピン:カナダ人女性誘拐事件
首 都 圏 管 区 警 察 ( NCRPO ) マ ニ ラ 方 面 本 部
(MPD)は18日、フィリピン系カナダ人の女性(53)
を誘拐、監禁したうえ100万ペソ(188万円)を脅し
取ったとして、MPD第4警察署の署長ら現職警察
官計12人を容疑者と断定し、12人全員を法的措置
が確定するまで停職とする処分を行った。現在、12
人のうち署長を含む11人の行方がわかっておらず、
当局は速やかに出頭するよう呼びかけている。
この事件は、容疑者の1人で被害女性の知人の
警察官が「自分の娘(22)を狙った殺人未遂事件
警察官12人が関与か
に女性が関与した」として、ほかの警察官11人とと
もに女性を逮捕し、第4警察署内に拘禁したもの。
逮捕に際し、逮捕状は請求されていなかったという。
警察官らに「殺人未遂事件の容疑をもみ消したけ
れば100万ペソを支払え」と脅迫された女性は、現
金を警察署に持ってくるよう甥に依頼し、警察官ら
に現金を渡したという。女性は翌日解放された。
解放後、女性が被害に遭ったことをリム・マニラ
市長に訴え出たため、同市長の命令でMPDによる
捜査が進められ、今回の犯行が明らかになった。
ASIA
中国
中国
違法鉱山を2015年までに閉鎖へ
中国国家安全生産監督管理総局は19日、
無許可で操業していた鉱山や安全性が確認
できない鉱山2万ヶ所を2015年までに閉鎖す
ることを明らかにした。
同国には石炭鉱山以外の鉱山が9万ヶ所
以上あるが、そのうち95%は小規模かつ設備
が整っておらず、構造設計基準を満たしてい
ない鉱山や採掘技術の安全性に問題がある
鉱山がほとんどだという。
反日デモ 一部の日系企業が一時操業停止に
満州事変の発端となった1931年の柳条湖事件から81年目
に当たる18日、中国全土で尖閣諸島をめぐる反日抗議行動
が再燃した。中国に進出している一部の大手日系企業が一
時操業停止に追い込まれるなどの影響を受けた。また同日、
尖閣諸島に2人の日本人が上陸したというニュースが中国内
でも大きく報道され、さらに反発が高まった。
一方、広東省広州の日本国総領事館は17日、深セン市内
のフェリーターミナルで日本人男性が中国人の男にいきなり
足を蹴られる暴力事件が発生したことを明らかにした。また、
日本人の夫婦が東莞市内の市場で買物をしていたところ、2
∼3人の中国人グループに突然背後から暴行を受け、夫が
軽傷を負う事件も発生した。
習近平国家副主席が日本の対応を批判
次期国家主席に内定している習近平国家副主席は19
日、パネッタ米国防長官との会談で尖閣諸島問題に言及
し、日本は行動を慎み、中国の領有権を侵す行為は止め
るべきだと語った。また、日本政府が民間人から尖閣諸
島の土地を購入したことを批判した。
一方、19日に米国務省が明らかにしたところによると、
18日に北京で反日デモに参加していた約50人が、米国
大使館に入ろうとした駐中国米国大使を乗せた公用車を
取り囲んだ。中国人の警備員が群衆を排除し、大使は無
事だったが、車が一部破損した。
また、広東省広州市の警察は19日、16日の反日デモ
の最中に破壊行為を行った容疑で18人を逮捕した。18人
は、日本車の窓ガラスや商店のガラスを割るなど、破壊
行為に関与した疑いがもたれている。
強盗殺人の容疑で少年2人を逮捕
雲南省公安当局は14日、9月6日に広東省深セン市で
湖南省出身の10代の若者2人を強盗殺人の容疑で逮捕
したことを明らかにした。
2人は雲南省で8月30日、ホテル経営者で妊娠5ヶ月の
女性とその2歳の子どもを含む3人を殺害した容疑が持
たれている。取り調べの中で、2人は8月に湖南省と広東
省で夫婦2組を殺害したことについても認めているという。
いずれも金を奪うことを目的とした強盗殺人事件として捜
査が進められている。
武漢 工事現場のエレベーターが墜落 19人死亡
湖北省武漢市の高層アパート建築現場で13日午
後1時頃、建物に設置されている工事用エレベー
ターが地上約100メートルの地点から落下し、乗って
いた塗装工の19人全員が死亡した。
エレベーターは上昇中に突然停止し、ケーブルが
切れて落下したとみられている。現場に到着した消
防士がエレベーターをこじ開けて救出しようとしたが、
すでに生存者はいなかったという。
エレベーターの定員は12人で、使用期限を今年
「6月23日」とする表示があったとの一部報道もある。
市当局は事故原因を調査中とする一方、事故の責
任者を処罰することを明らかにした。また、この事故
を受けて、同市のすべての建設現場で安全点検を
実施することを決定した。
国家安全生産監督管理総局によると、2011年に
中国で起きた労働災害件数は34万7,000件で、計7
万5,500人以上が死亡している。
河北省 花火工場で爆発事故 違法操業か
河北省秦皇島市で17日午前11時頃、自宅を改造
した簡易作業場で花火を製造中に爆発する事故が
発生した。
この事故で、作業をしていた夫婦とその親類3人
の計5人が死亡した。この作業場では、花火を違法
に製造していたとみられる。
タイ
タイ
麻薬統制委員会 麻薬押収量が増加傾向にあると発表
麻薬統制委員会事務局(ONCB)は19日、ONCB主
導で行っている全国規模の麻薬取り締まりについて、
「顕著な成果」が上がっていることを明らかにした。
特に、覚せい剤(メタンフェタミン)の2011年の押収量
は7,300万錠で、2010年の4,500万錠から大幅に増加
し た。また、結 晶状覚 せい 剤 の2011年 の押収量は
1,446キロで、2010年の1,058キロから増加した。麻薬
関連の資産を没収した件数は、2011年には4,686件
( 16 億 5,000 万 バ ー ツ ( 約 42 億 円 ) 相当)に 上り 、
2010年の1,984件(10億1,000万バーツ(約26億円)
相当)と比較すると、2倍以上の件数となった。
アドゥンONCB事務局長(次期国家警察庁長官に
内定)によると、タイ当局は麻薬の原料となる化学物
質の密輸出について取り締まりを強化しており、また、
隣国のミャンマー当局と以前より密接に協力しながら
麻薬撲滅に向けた取り組みを進めている。
EUROPE
フランス
フランス
週刊誌がムハンマドの風刺画を掲載
フランスの風刺専門週刊誌「シャルリーエブド」は19
日、イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱する内容の
風刺画を掲載した。
これを受けて、パリ最大規模のモスクの聖職者やフ
ランスのイスラム評議会関係者は、同国内のイスラム
教徒400万人に対し、冷静な対応を呼びかけた。しか
し、一部のウェブサイトでは、22日にパリやマルセイユ
など主要都市で抗議デモを行うよう呼びかけている。
一方、海外におけるフランス権益に対する安全対策
が強化されている。在外公館や文化センター、イン
ターナショナルスクールなどが約20ヶ国で一時閉
鎖されることとなった。
政府は同誌に対する懸念を示したが、表現の自
由は守るとしており、暴動対策のため警官隊が警
備に当たっている。
同誌は昨年11月にもムハンマドの風刺画を掲載
し、同誌の編集部があるパリの事務所に火炎瓶が
投げつけられるなどして、全焼している。
英国
英国
マンチェスター 女性警官殺害で男を逮捕
マンチェスター郊外で18日、強盗に関する偽
の通報を受けて現場に駆けつけた広域マン
チェスター警察の女性警察官2人が、銃と手
りゅう弾による攻撃を受け、死亡する事件が発
生した。現場近くにいた住民によると、13回も
の発砲音と爆発音が聞こえた。
犯人の男(29)は、その後警察に出頭し、逮捕
された。男は、今年5月と8月に発生した2件の
殺人事件についても容疑がかけられていた。
アイルランド
アイルランド
「真のIRA」メンバー17人逮捕
警察は13日、東部ダブリン州と隣接するキルデア州およ
びミース州で、カトリック系過激派組織「アイルランド共和
軍(IRA)」の分派「真のIRA」のメンバー17人を逮捕した。
白昼に銃撃され殺害された「真のIRA」幹部の葬儀が行
われていた会場で、覆面をしたメンバーらが勢力誇示のた
めに銃を乱射したという。けが人はなかった。
この事件の発生を受けて、メンバーの自宅など30ヶ所を
警察が家宅捜索し、逮捕に至った。主な容疑は銃の所持
および反政府的な活動とされている。
AMERICA
メキシコ
メキシコ
麻薬組織「ガルフ・カルテル」の首領を逮捕
メキシコ治安当局が12日夜に明らかにしたところによると、
北東部タマウリパス州マタモロスに拠点を置く麻薬組織「ガル
フ・カルテル」の首領とみられる男が、同州タンピコの自宅で
逮捕された。逮捕時、男は抵抗しなかったという。
男は、メキシコのほか、米国でも最重要指名手配されており、
米国当局が逮捕につながる情報の提供に対して懸賞金500
万ドル(約4億円)がかけていた。最近逮捕された「ガルフ・カ
ルテル」のメンバーから得られた情報も今回の逮捕につな
がったという。
「ガルフ・カルテル」はメキシコ最大の麻薬組織の一つで、米
国への密輸ルートを確保し、コカインやメタンフェタミン(覚せ
い剤)、ヘロイン、マリファナの密輸を行っている。
OCEANIA
オーストラリア
オーストラリア
メルボルン テロ関連捜査で男を逮捕
オーストラリア連邦警察とビクトリア
州警察は12日、メルボルンの郊外6ヶ
所に対する家宅捜索を同時に実施し、
テロを計画した容疑で男(23)を逮捕し
た。男は13日に起訴された。
警察は男を逮捕した際、武器やパソ
コン、USBメモリなどを押収した。有罪
が確定すれば、最高15年の禁錮刑が
言い渡される。
警察の捜査対象には、イスラム教関
連の書籍を売る書店や図書館のほか、
礼拝やイスラム教に関する講義を行う
イスラム情報センターなどが含まれて
いたとみられている。
米国
米国
コプト教司教とイスラム団体幹部 ムハンマド映像を非難
カリフォルニア州ロサンゼルスで17日、コプト正教会ロサンゼ
ルス司教と米国のイスラム教徒の権利擁護を推進する団体
「ムスリム公共問題審議会(MPAC)」幹部は、共同で記者会
見を開き、コプト教徒が制作したとされるイスラム教の預言者
ムハンマドを侮辱する内容の映像作品と、これに起因してイス
ラム圏で発生している暴力を伴う抗議行動を非難した。
コプト正教会の司教は、一部の無知な信者の行動は、多くの
コプト教徒の見解を代表するものでないとした。また、司教は、
双方のコミュニティには緊張が存在しているとしたうえで、問題
の映像のためにコプト教徒が攻撃を受ける正当な理由はなく、
このようなことが起こった場合、対話で解決することが重要だ
と述べた。
一方、MPACの幹部は、問題の映像作品の制作者を、嫌悪
と無知に満ち溢れていると非難したうえで、このような「意味の
ない映像作品」に対し、中東諸国で起きている抗議行動は無
意味かつ理性的でないと語った。
米国には約30万人のコプト教徒が住んでいる。その多くがエ
ジプトにおける差別待遇を逃れて米国に移住したといわれて
いる。
シカゴ テロ未遂で18 歳の少年を逮捕
シカゴで14日、米連邦捜査局(FBI)のお
とり捜査により、18歳の少年がテロ未遂で
逮捕された。
FBIは今年5月ごろ、「聖戦(ジハード)」
や米国人の殺害計画などについて自身の
考えをインターネット上に掲載していた同
少年に注目し、おとり捜査官が少年とやり
取りをするなど、内偵を進めていたという。
その過程で、少年がテロ攻撃を仕掛けて
米国人を殺害する計画を立てていることを
確認した。これを受けて、おとり捜査官が
少年に偽の爆弾を渡したところ、少年は、
その爆弾を使ってシカゴの繁華街にある
バーの外で車両を爆破しようとしたため、
逮捕された。
MIDDLE EAST
アフガニスタン
アフガニスタン
カブール国際空港近くで自爆テロ
カブール郊外にあるカブール国際空港
近くで18日、南アフリカのチャーター便運
行会社の従業員らが乗る小型バスを狙っ
た自爆テロが発生し、同社の南アフリカ人
従業員8人を含む約12人が死亡した。
対テロ当局関係者によると、犯人は22
歳の女で、自爆ベストを着て車を運転し、
バスに近づいたところで爆弾を起爆させた
とみられる。
事件後、アフガニスタンのイスラム過激
派組織「ヒズビイスラミ」が、イスラム教の
預言者ムハンマドを侮辱する内容の映像
作品が制作されたことに対する報復攻撃
だとする犯行声明を出した。
シリア
シリア
アサド大統領がブラヒミ特使と初会合
現地メディアの15日付の報道によると、アサド大統領は、
シリア問題に関する国連とアラブ連盟の共同特別代表に就
任したラクダル・ブラヒミ氏との初会合で、和平調停が中立
的な立場に立って進められるのであれば、シリアの危機を
解決するよう努力する用意があるとした。
その一方で、そうした政治的な努力が実を結ぶには、反
体制派に資金を援助し、反体制派の戦闘部隊に訓練や武
器を提供する国に対し、それを阻止する圧力をかけること
も必要だと述べた。
一方、国連人権委員会により任命された独立組織の調査
委員会は17日、シリアでは聖戦主義者を含む外国勢力の
活動が増加していることを認める報告を行った。一部は、反
体制派部隊に合流し、ほかは独自に活動しているとしてい
る。また、こうした外国勢力の活動は、シリアの反体制派戦
闘部隊の動きをより先鋭化させることにつながっているとの
見方もある。
AFRICA
エジプト
エジプト
海外在住のコプト教徒らを検察が起訴
エジプト検察は18日、イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱
した内容の映像の制作や宣伝に関与したとされる在外エジプ
ト人のコプト教徒7人と米国フロリダ州在住の米国人キリスト
教福音派牧師1人をイスラム教冒涜などの罪で起訴した。起
訴されたエジプト人は、カナダに居住する1人を除き、6人が
米国に居住しているという。フロリダ州の牧師は、過去にもイ
スラム教の聖典コーランを焼却したことがある。
8人はエジプト国外に居住しており、エジプトに帰国する可
能性が低いため、裁判には出廷しない見込み。しかし、エジプ
ト検察は、何らかの法的措置をとることにより、同映像に対す
るイスラム教徒の怒りを和らげようとする狙いがあるものとみ
られる。8人の容疑は、国民和合に対する危害やイスラム教
に対する公の場での侮辱と攻撃などで、有罪となった場合は
死刑判決が下される可能性もあるという。
マリ
マリ
AQIMがフランス人の人質を殺害すると脅迫
一部報道が19日伝えたところによると、「イスラム・マグレブ
諸国のアルカイダ(AQIM)」は、フランス政府がAQIMなどの過
激派組織をマリ北部から追放する目的で軍の派遣を決定した
場合、AQIMが人質としているフランス人を殺害すると脅迫した。
AQIMは現在、2年前にニジェールで誘拐したフランス人4人
と、ほかのフランス人2人の計6人を拘束している。かつて、同
地域を植民地としていたフランスなど欧米諸国とアフリカ諸国
は、合同でマリ北部に軍を派遣し、AQIMなど過激派の追放作
戦を展開している。
AQIMは、人質の解放に9,000万ユーロ(約90億円)の身代
金を要求したが、フランス政府はAQIMと交渉を行うことを拒否
している。
イスラム過激派が治安部隊を攻撃
エジプト当局によると、16日、イスラム過
激派の武装グループが、北部シナイ半島ア
ルアリッシュにある治安部隊指令本部を自
動小銃やロケット弾で攻撃する事件が発生
した。治安部隊が応戦したところ銃撃戦とな
り、兵士1人が死亡、7人が負傷した。
同日未明にエジプトの治安部隊がイスラ
エル国境近くの村を襲撃し、武装グループ
の幹部10人を逮捕したことに対する報復と
みられる。
一方、パレスチナ自治区ガザ地区などで
も、治安部隊とイスラム過激派グループに
よる戦闘が発生し、治安部隊員3人が負傷
した。
ケニア
ケニア
ナイロビ アルシャバブのテロ計画阻止
ナイロビ警察は14日、同市イーストレ
イ地区のアパートを急襲し、ソマリア人
の男2人をテロ計画の容疑で逮捕した。
うち1人は17日、法廷において、ソマリ
アのアルカイダ系過激派組織「アルシャ
バブ(AS)」のメンバーであり、自爆用の
爆弾を詰め込んだベストや銃、銃弾481
発を所持していることを認める供述をし
たという。
一方、もう1人の容疑者は、武器の所
持およびテロ計画についての容疑をす
べて否認している。
今週のコメント:海外邦人援護統計と安全対策
先月、2011年の海外邦人援護統計が外務省から公表され、外務省海
外安全ホームページに掲載された。援護統計は、日本の在外公館および
交流協会が、海外において事件(加害および被害)や事故、災害などに遭
遇した邦人を援護した件数および人数を年ごとに取りまとめたものである。
海外での邦人被害の援護実態がわかり、海外安全対策を進める上でも
有効な資料である。2011年統計によれば、総援護件数は1万7,093件
(対前年比2.4%減)、総援護人数は1万9,533人(対前年比1.8%減)と
なっている。
援護統計の対象となる2011年の海外渡航者数は1,699万4,200人(対
前年比1.8%減)、また、同年10月1日現在の在留邦人数は118万2,557
人(対前年比3.4%増)だった。
1.2011年援護統計の主な特徴
①邦人が2011年に海外で犯罪被害に遭った件数は、ここ3年間で最も少
なかった(2009年5,495件、2010年5,589件、2011年5,267件)。全体の
80%を占める窃盗被害と同じく6%を占める強盗・強姦被害がそれぞれ
減少したことが影響した(2011年の窃盗被害は4,225件で対前年比3.8%
減、また強盗・強姦被害は326件で対前年比29.3%減)。
②脅迫も2011年は49件で対前年比46.2%減となった。また、誘拐は
2009年に6件、2010件に7件発生したが、2011年は0件で、誘拐の発生
がなかったのはここ10年間で初めてである。テロは前年と同じく2件発生
した。フィリピンのミンダナオ島で新人民軍に日系金属鉱山会社が襲われ
た事例(2011年10月)とアフガニスタンのカブール市内のホテルが武装グ
ループに襲撃された際、宿泊中の邦人が一時行動を制限された事例
(2011年6月)であるが、幸いいずれも邦人に直接的被害はなかった。
③事故・災害被害件数も、ここ3年間で最少だった(2009年356件、2010
年353件 、 2011 年271件)。交通 事故が減少したことが影響している
(2009年207件、2010年187件、2011年165件)。事故・災害被害の件数
として、交通事故に次いで多いのがレジャー・スポーツ事故で、2011年は
50件発生し、内訳は水難26件、登山14件、スポーツ7件などとなっている。
④他方、海外で亡くなる人が年々増加している(2009年513人、2010年
549人、2011年592人)。2011年の死者の内訳は、傷病409人、自殺63
人、交通機関事故25人などとなっている。自殺・同未遂の件数は2009年
68件、2010年80件、2011年77件と高いレベルにあることが注目される。
2.2011年に邦人が遭遇した主な事件・事故・災害被害例
①アラブの春関連: 2011年初頭から、チュニジアを発端に、エジプト、リ
ビア、イエメン、バーレーン、シリアなどで次々と発生した政変により現地
情勢が緊迫化し、各国で邦人の保護や国外退避支援が行われ、被害は6
件、598人に及んだ。なお、現在に至っても多くの国で政情不安が続いて
おり、警戒が必要だ。
【外務省発出渡航情報】
「渡航情報」は、渡航、滞在にあたって特
に注意が必要な場合に発出される情報
で、治安情勢や安全対策の目安を示す
「危険情報」、限定された期間、場所、事
項について速報的に発出される「スポット
情報」、複数の国や地域にまたがる範囲
に発出される「広域情報」があります。各
情報の詳細は以下のとおりです。
・外務省海外安全ホームページ:
http://www.anzen.mofa.go.jp/
(各国機関リンク)
・米国国務省:
http://travel.state.gov/travel/cis_pa_tw/
tw/tw_1764.html
・英国外務省:
http://www.fco.gov.uk/
②自然災害: 邦人が自然災害に見舞われる被害が4件あった。ニュー
ジーランド・クライストチャーチ付近で2月22日、地震によるビルの崩壊な
どにより日本人28人を含む180人以上が犠牲となった。またトルコ東部で
も10月に地震が発生し、ボランティア活動中の邦人1名が死亡、1名が負
傷した。昨秋のタイの大規模洪水では日系企業約450社にも被害が及び、
邦人家族が避難のため一時帰国する事態も生じた。タイでは、今年も9月
に入って北部スコタイや中部アユタヤなどで洪水被害が出ている。イン
ラック首相は、これまでも「バンコクや工業団地の安全は確保する」などと
強調しているが、大洪水発生により大被害が生じないか懸念が残る。
③詐欺被害: 自称シンガポール人と称する女性により、タイ・バンコクで
邦人男性がクレジットカードを使ったキャッシング詐欺被害に遭う事件が
2011年春ごろから続発。外務省・スポット情報により特に注意喚起が行わ
れている。
④強盗、殺人被害: ベネズエラ・カラカスのマイケティア国際空港に邦人
出張者が到着した際,現地日系企業が出迎えに用意したタクシー運転手
と接触できず、到着ロビーの中で運転手を探していたところ、現地人の男
があたかも出迎えの運転手のように話しかけてきた。男に案内されるまま
に乗車し、郊外に連れて行かれ、現金やキャッシュカードなどを強奪され
た(10月)。ベネズエラでは治安が悪化しており、邦人が強盗、短期型誘
拐などの凶悪犯罪に遭うケースが多発しているので、一層の防犯対策が
必要である。また、9月にミャンマーの観光名所・パガン近郊において、単
独旅行中の邦人女性がバイクタクシー運転手に殺害される事件が発生し
た。単独で旅行する女性が襲われる事件は各地で多発している。見知ら
ぬ男性と2人きりになる状況は極力避ける用心が必要だ。
3. 援護統計のデータを予防に活かす
①海外における邦人犯罪被害の8割は窃盗である。「不審者が周囲にい
ないか警戒する」、「荷物から目を離さない」などの常識的注意により防げ
るものが大半である。盗難への注意により、強盗や詐欺などを防ぐ波及
効果もある。赴任前研修などで地域別の盗難発生データを示し、受講者
に注意を喚起すれば強いアピールとなる。
②2011年は誘拐被害が発生しなかったと述べたが、この誘拐は身代金
目的の誘拐を指す。身代金目的の誘拐事件は世界で年間2∼3万件くら
い発生しているので、邦人に被害がなかったのは、よく誘拐が発生してい
る中南米やフィリピンのみならず、その他の地域でも誘拐を防ぐ3原則(目
立たない、行動を予知されない、用心を怠らない)がそれなりに守られた
ためと推測される。3原則の遵守は、その他の犯罪防止にも役立つので、
周知・徹底が望まれる。
③自殺・同未遂件数が高レベルにあることに関連し、例えば中国・上海で
は邦人の突然死・自殺事例が、2009年29件、2010年39件、2011年は51
件(うち企業の駐在員・出張者が30件)と増加傾向にある。駐在員・出張
者の健康管理にも十分な配慮や対策が求められることを示している。
◆日本外務省:9月21日発出渡航情報(最新情報7日分)◆
■危険情報:ルワンダ
■スポット情報:ポルトガル(政府の政策などへの抗議活動に関する注意喚起)、米国(ヨセミテ国立公園におけるハンタウイ
ルス肺症候群発生について)、中国全土(最近の日中関係の動きにかかる注意喚起(その3))、インド(コルカタにおけるデン
グ熱の流行)、アフガニスタン(治安情勢)、ケニア(タナ・リバー県における虐殺事件発生に伴う注意喚起)
◆米国国務省、英・豪・加国外務省:9月21日発出渡航情報(7日分) ◆
■グルジア、インド、アフガニスタン、スーダン、エチオピア、パキスタン、コンゴ、ロシア、中央アフリカ:地域により「渡航の延
期をお勧め」及び「渡航の是非を検討」(英)■キルギス、インドネシア、ウズベキスタン、バングラデシ、コートジボワール:地
域により「渡航の是非を検討」(英)■ウガンダ、タジキスタン、ジブチ、エクアドル:地域により「渡航の延期をお勧め」(英)■イ
ンドネシア:地域により「渡航の是非を検討」(英)(加)■イエメン:「渡航の延期をお勧め」(英)(加)■ナイジェリア、アルジェリ
ア、パキスタン、インド、レバノン、エジプト:「渡航の是非を検討」及び地域により「渡航の延期をお勧め」(加)■シリア、スーダ
ン、アフガニスタン、イエメン:「渡航の延期をお勧め」(加)■ザンビア:地域により「渡航の是非を検討」(加)■バングラデシュ、
エクアドル:地域により「渡航の延期をお勧め」(加)■メキシコ:「渡航の是非を検討」(加)■レバノン、チュニジア:「渡航の延
期をお勧め」(米)■チュニジア:地域により「渡航の是非を検討」(豪)■スーダン:「渡航の延期をお勧め」及び地域により「渡
航の是非を検討」(豪)■アルジェリア:「渡航の是非を検討」及び地域により「渡航の延期をお勧め」(豪)■イエメン、リビア:
「渡航の延期をお勧め」(豪)■サウジアラビア:「渡航の是非を検討」(豪)
■本情報配信についてのご意見、ご質問、配信先の
変更、配信停止のご希望がございましたら右記までお
問い合わせください。
■特定地域の治安状況や感染症に関する情報をお知
りになりたい方には、別途調査のうえ情報提供をいた
します。
■なお本Letterは複製又はご登録企業様以外の第三
者に再配信することは差し控えていただくようお願い致
します。
発行・編集
NKSJリスクマネジメント株式会社
リスクコンサルティング事業本部
ERM部 企画グループ
〒160-0023
東京都新宿区西新宿1−24−1
エステック情報ビル27F
URL:http://www.nksj-rm.co.jp
Tel: 03-3349-9316
情報提供
・(株)オオコシセキュリティコンサルタンツ
その他情報ソース
・各国外務省(日本、米国、英国)
・WHO、米疾病対策センター(CDC)
・(社)日本在外企業協会、その他サイト