Vol.291 Vol.291 今週のTOPIC HEADLINES 中国 中国 インドネシア

2012.9.14
Vol.291
Vol.291
HEADLINES
■インドネシア:自爆テロを計画した容疑者
仏教センターも標的か
■インド:ムンバイ周辺の石油精製所でテロ攻撃の脅威か
■スペイン:バルセロナ
カタルーニャ州の独立を求める大規模デモ
■シリア:反体制派の支配下でフランスが住民への直接支援を開始
■リビア:米領事館襲撃
駐リビア米国大使が死亡
今週のTOPIC
インドネシア:自爆テロを計画した容疑者
インドネシア国家警察の報道官は10日、自爆テロを
計画していたとして9日に警察当局に自首した容疑者
の男が「ジャカルタ首都圏の仏教センターを標的のひ
とつとしていた」と供述していることを明らかにした。
男は、5日に警察が西ジャカルタ・タンボラ地区にあ
るイスラム過激派の「爆弾製造所」を急襲する直前に
現場から逃走していた。
同報道官によると、警察の取り調べに対し、男は、
①西ジャワ州デポック市の警察機動隊(BriMob)本部、
②国家警察対テロ特殊部隊(Densus 88)本部、③中
央ジャカルタ・サレンバ地区の警察関連ビル、④仏教
センターのいずれかを標的にした自爆テロを今月10
日に決行する予定だったと供述した。
仏教センターも標的か
また、男が自首した際には爆弾を装着した「自爆ベル
ト」を着用しており、家族に宛てた遺書も残していたとい
う。男がなぜテロ計画を放棄して自首するに至ったのか
については現時点では不明。
男は、仏教センターを標的にした理由について、ミャン
マーの多数派である仏教徒が同国西部ラカイン州内で
イスラム教徒住民(ロヒンジャ)を迫害していることに不
満をもっており、仏教徒社会に報復する意図があったと
話している。
インドネシアのイスラム過激派組織などはロヒンジャ問
題に関連して反ミャンマー・反仏教徒感情を強めており、
今後はテロリストが仏教徒やその権益を狙ったテロを実
行する可能性も懸念される。
ASIA
中国
中国
湖南省 ライスヌードルを食べた住民が食中毒
湖南省湘潭市当局は12日、同市にある食品加工
工場で製造されたライスヌードルを食べた住民52
人が11日に嘔吐や下痢などの症状を示し、入院し
たことを明らかにした。命に別条はなく、すでに退
院した住民もいるという。
現在、同加工工場の社長が当局の取り調べを受
けている。詳細は明らかになっていない。
北京空港 液体を機内に持ち込もうとした米国人逮捕
中国民用航空局は10日、北京首都国際空港で9月
5日午後1時ごろ、米国人が液体のクロトン酸メチル
の入ったボトルを隠し持って北京発ミュンヘン行き中
国国際航空(エアチャイナ)CA961便に搭乗しようとし
た直前に逮捕されたことを明らかにした。
中国では、クロトン酸メチルの航空機への持ち込み
は禁止されており、男は10日間の拘留処分となった。
湖南省 遺伝子組み換え米を子どもに試食させる
中国疾病対策予防センター(CCDC)は10日、同セン
ターの研究者らがベータカロチンを多く含む遺伝子組み
換え米「黄金米」を子どもに食べさせ、ビタミンAを効果的
に摂取できるかを調べる実験を行ったとされる問題で、
関与していた研究者を解雇したことを明らかにした。これ
は、米国タフツ大学と同センターが合同で行っている研
究の一環で、湖南省の6歳から8歳までの24人の子ども
が実験の対象になったという。
国際環境保護団体「グリーンピース」がこの問題を指摘
し、明らかになった。タフツ大学の研究責任者は両国の
関係機関の承認を得て研究を行っていると説明している。
気象観測施設の保護に向けた新法令を施行へ
中国政府当局は6日、気象観測の環境と関連施設を保
護し、気象関連情報の精度を高めるため、新たな法令を
制定し、ウェブサイトで公開した。
この法令は今年12月から施行され、気象観測施設の
保護だけでなく、気象観測に関する技術的な基準なども
設けられている。
また、同法令は、気象観測施設付近で掘削することや
建物を破壊すること、土砂を持ち出すことなどを禁止して
いる。観測所が出す電波を妨害することも禁止される。
違反した場合、5,000元(約6万円)から5万元(約60万
円)の罰金が科せられる。
インド
インド
ムンバイ周辺の石油精製所でテロ攻撃の脅威か
7日付けの一部報道がによると、インドの情報機関は、
経済都市ムンバイ周辺にある「バーラト石油会社」と「ヒ
ンズスタン石油会社」の石油精製施設がテロ攻撃に遭う
可能性があるとして、両施設での警備態勢を強化する
措置をとった。
両施設に対するテロ計画について記された手紙が警
察に届いたため、情報機関が警備態勢を強化する措置
を決定したという。
この手紙に関する詳しい情報は明らかにされていない。
両社の石油施設では、年間2,000万トンの石油を精製し
ている。
福建省 観光客7人が一時行方不明に
福建省の消防局は9日、前日から同省福州の山岳
地帯でウォーキング中に24時間以上連絡が取れなく
なっていた中国人3人、フランス人男性3人、ロシア人
女性1人の計7人が、9日午後7時半に渓谷で無事保
護されたことを明らかにした。
7人は8日朝9時にガイドと別れたあと、同日午後2
時に福州で待ち合わせる予定だったが現れなかった
という。7人は週末を利用して福州を観光に訪れてい
た。7人の体調に問題はないという。
フィリピン
フィリピン
カロオカン市警 偽ペソ紙幣に注意呼びかけ
マニラ首都圏カロオカン市の警察本部は11日、同
市内で偽ペソ紙幣が再び出回る可能性があるとし
て市民に注意を呼びかけている。
同市警は9日、同市カイビガ地区にある闘鶏場の
入場料を支払う際、偽造された1,000ペソ(約1,900
円)紙幣1枚を使用しようとした男2人(41歳と44
歳)を逮捕し、2人が所持していた同紙幣13枚を押
収した。サントス同市警本部長によると、紙幣の偽
造を専門とする組織が再び活動を始めた疑いがあ
る。
タミルナド州 原発稼働に反対するデモ
南部タミルナド州クダンクラムで10日、インド最大規
模といわれるクダンクラム原子力発電所の稼働に反対
する住民約4,000人が警官隊に投石し、警察官数人が
負傷した。また、一部の住民らは幹線道路や線路に障
害物を置いたり、地元政府施設に放火したりするなど
暴徒化した。警察は威嚇射撃を行うなどデモの沈静に
当たり、住民1人が死亡した。
同原発は、数週間後に稼働開始を予定している。稼
動すれば数百万世帯へ電気を供給することができ、同
州の電力不足緩和につながるとみられている。
同国では、今年7月に世界最大規模といわれる停電
が起きており、ほかにも原子力発電所の建設が進めら
れる見通し。
タイ
タイ
最南部 分離独立派メンバー91人が治安当局に投降
最南部の治安当局が12日に発表したところによると、
同地域で長年テロ活動を行ってきたイスラム分離独立
派組織のメンバー計91人が11日にタイ陸軍第4軍管区
司令部に投降した。
投降者らは今後、同国の安全保障関連法または刑法
に違反した容疑で起訴されることになるが、政府当局は
投降した事実を考慮したうえで寛大な措置をとることを
示唆している。
91人はナラティワート県内の3つの郡を中心にテロ活
動を行ってきた。リーダー格である通称「ジェ・アリ」容疑
者は、2004年1月にナラティワート県で起きた「陸軍武
器庫襲撃事件」の主犯格とみられている。
この事件を契機として最南部でテロ攻撃が激化したと
いわれているが、同容疑者は投降に際し、「テロ攻撃で
は(最南部の独立という)目的が達成されないことがわ
かった」として「今後は普通の仕事について平和な生活
を送りたい」と語った。また、「身の安全が保証されるの
であれば、投降を望んでいる過激派分子がまだ数百人
はいる」としている。
2004年以降でこれだけの人数の過激派分子が治安
当局に投降したのは初めてで、政府にとっては治安政
策上での重要な成果といえる。ただ、最南部でテロを実
行しているイスラム武装勢力には数千人規模のメン
バーがいるとみられており、今回の投降が同勢力にど
の程度の影響を与えるかは不明。
インドネシア
インドネシア
西ジャワ州 デポック市内で爆発6人負傷
首都ジャカルタに隣接する西ジャワ州デポック市に
ある建物で8日夜、大規模な爆発が発生し、屋内にい
た男3人と近隣住民3人(うち1人は女性)の計6人が
負傷した。屋内にいた男1人は爆発で左腕が吹き飛
ばされたうえ、全身に火傷を負って意識不明の重体。
また、目撃者によると、別の男2人が爆発直後にバイ
クに乗って現場から逃走したという。
国家警察当局は9日、警察が現場からパイプ爆弾6
個や手りゅう弾3個、小型機関銃2丁などを発見、押
収したことから、この部屋が「テロ組織の隠れ家兼爆
弾製造所」として使用していたと断定した。部屋は孤
児院として登録されていた。
当局は、爆発は、現在重体の男が首都圏でのテロ
計画の実行に向けて同「孤児院」内で手製爆弾(IED)
を製造していた最中に誤って起爆させたために起きた
とみている。
首都圏では5日にも、西ジャカルタ・タンボラ地区で
別の「爆弾製造所」が摘発され、塩化ビニール製パイ
プや爆薬など、IEDの材料とみられる多数の薬品が
押収されている。
一方、西ジャワ州ソロ市内で発生した「警察官銃撃
テロ事件」など一連の事件に関与したテロ組織のメン
バーの男が5日にデポック市内で逮捕され、男の供
述などから、同組織が中央ジャカルタの国会議事堂
を狙ったテロを計画していたことが判明した。
8月下旬以降、ソロと首都圏で発生したこれら一連
のテロ事件の容疑者らは、同一のテロ組織に属する
か、何らかの関係がある可能性が浮上してきた。対
テロ当局は、特に「爆弾製造所」2ヶ所が摘発された
ことに重大な危機感を抱いており、首都圏の警備態
勢を強化している。
EUROPE
ドイツ
ドイツ
スペイン
スペイン
バルセロナ カタルーニャ州の独立を求める大規模デモ
北東部カタルーニャ州の州都バルセロナで11日、住民ら約
150万人が同州の分離独立を要求する大規模デモを実施し
た。デモは、同州のスペインからの分離独立を目指しロビー
活動を行う「カタルーニャ国民会議(ANC)」が組織した。デモ
は平和裏に行われたが、大勢の参加者らが同市内を行進し
たため、主要道路の一部が封鎖された。
デモは、スペインの財政問題に触発されたものとみられ、住
民は、同州における自治権拡大を求めている。カタルーニャ
州の人口は全体の15%程度だが、経済規模は同国全体の
20%を占めており、同州は比較的裕福な州として知られてい
る。そのため、同州では、住民らが支払っている税金額に見
合った社会福祉サービスを受けていないとして、中央政府に
対する不満が広がっているという。
マンハイム フェスティバル会場で衝突
バーデン・ビュルテンベルク州マンハイムで
開かれていたクルド民族フェスティバルの会場
で8日、参加者数千人のうち数百人が暴徒化
し、警官隊と衝突した。この衝突で、警察官80
人が負傷、警察車両13台が破損し、31人が逮
捕された。
14歳の少年が違法化されたシンボルマーク
を付けた旗を持ってフェスティバルに参加しよ
うとしたところ、警備に当たっていた民間警備
会社の警備員と言い争いになり、警備員が警
察に通報したことが発端とみられる。
警官隊が会場に入ろうとした際、参加者の一
部が警官隊に向けて石や瓶を投げつけたた
め、警官隊は催涙弾などで応戦し、2時間後
に沈静化した。このフェスティバルには約4万
人が参加していた。
MIDDLE EAST
シリア
シリア
反体制派の支配下でフランスが住民への直接支援を開始
6日付報道によると、フランスは、シリアの反体
制派が支配している5都市の住民に対し、金銭援
助を含む直接的な支援を8月31日に開始した。欧
米諸国による直接的な支援開始はこれが初めて。
フランスは、支援開始に当たって、シリアの反体
制派と密接に連絡していたとみられる。主に、内戦
で打撃を受けた水の供給源や商店、学校の復興
を支援することにより、これらの都市の住民が自ら
都市機能や生活を維持できるようになることを目
的とする。フランス側は、5都市について具体的な
名前を挙げていないが、支援の対象となる5都市
には計70万人が居住しているという。
一方、フランスは、これまでシリアの反体制派に
通信機器などを提供しているが、国際社会の承認
がなければ、今後も武器などは供給しないとして
いる。
トルコ
トルコ
イエメン
イエメン
イスタンブール 警察署で極左メンバーによる自爆テロ
イスタンブール北部の住宅街にある警察署で11日、自爆テロが発
生し、警察官1人が死亡、警察官4人と市民3人が負傷した。
自爆犯は、警察署に入った直後、受付にいた警察官らに手りゅう
弾1発を投げつけた。手りゅう弾は爆発せず、死亡した警察官が自
爆犯に向けて2回発砲したところ、自爆犯が体に巻きつけていた爆
弾を起爆させたという。事件後、自爆犯は非合法社会主義政党「革
命人民解放党斜線戦線(DHKP-C)」のメンバーであることが判明し
た。
同国では、主に南東部で反政府武装組織「クルド労働者党
(PKK)」によるテロの脅威があるが、過去には極左グループやイス
ラム過激派がイスタンブールでテロ攻撃を敢行している。
2010年10月には、イスタンブールのタクシム広場で自爆テロがあ
り、32人が負傷した。
AFRICA
エジプト
エジプト
カイロ ムハマンドを侮辱する米国映画に抗議
カイロで11日、米国で製作された映画が、イスラ
ム教の預言者ムハマンドを侮辱する内容だとして、
イスラム原理主義者らを中心とする市民約2,000
人が米大使館に押しかけ、抗議を行った。約20人
のデモ参加者が大使館の塀をよじ登り、米国旗を
引きずりおろして黒の旗に代えるなどした。
米大使館は同日、「イスラム教徒など他宗教の信
者の感情を害する誤った考えを持つ個人を非難す
る」という声明を出し、同映画の内容を批判した。
米大使館関係者は、エジプト治安当局と協力し、
大使館の安全対策を講じると述べたほか、エジプト
外務省は、すべての外国大使館・領事館に必要な
警備を提供するとの声明を出した。
AMERICA
米国
米国
FBI おとり捜査で収賄容疑の市長逮捕
米連邦捜査局(FBI)は9日、ニュージャージー
州トレントン市長を逮捕した。同市長は2010年
7月に市長に就任したが、収賄の容疑で同年9
月から捜査の対象とされていたという。FBIは、
同市所有の敷地にガレージを建設するという架
空のプロジェクトを立ち上げ、不動産開発業者
を使っておとり捜査を行った。
実際、同市長は、同プロジェクトを発注する見
返りに11万9,000ドル(約900万円)の現金を不
動産開発業者から受け取ったとされる。市長の
親族1人と市長の後援者1人も逮捕された。
同市長は、仲介役を雇い、連絡には電話では
なく暗号を使用するなどの証拠隠滅を図った疑
いもあるという。
北部 AQAP副司令官が死亡
イエメン当局が10日明らかにしたとこ
ろによると、イエメンを拠点とするアル
カイダ系武装勢力「アラビア半島のア
ルカイダ(AQAP)」のサイドアルシヒリ
副司令官(サウジアラビア国籍)と同組
織のメンバー6人が殺害された。
当局は、北部ハドラマウトで行われた
イエメン軍の軍事作戦で死亡したとして
いるが、米軍無人機による攻撃で死亡
したとする情報もある。
サイドアルシヒリ氏は、グアンタナモ
米軍基地に収監されていたことがあり、
2007年に釈放されていた。
リビア
リビア
米領事館襲撃 駐リビア米国大使が死亡
東部ベンガジで11日夜、群集による米領事館への攻
撃を受け、車で避難しようとしていたスティーブンス駐リ
ビア米国大使と大使館職員らが自動小銃やロケット弾な
どで襲撃され、スティーブンス大使を含む4人が死亡、大
使館員2人が負傷した。また、一部報道によると、武装
集団との交戦により、リビア人の護衛官10人も死亡した。
同大使は同日、ベンガジを訪問中で、米領事館に立ち
寄ったとみられる。
当初、イスラエル系米国人が米国カリフォルニアで製
作した映画がイスラム教の預言者ムハンマドを冒涜して
いるとして抗議するデモが今回の襲撃の発端とみられて
いたが、自動小銃やロケット弾が予め準備されていたこ
となどから、米当局は12日、隣国エジプトの首都カイロで
11日に起きた米大使館前の抗議デモとは異なり、突発
的に暴徒化したものではなく、武装集団が計画的に攻撃
した可能性を示唆した。
事件の前日、国際テロ組織アルカイダの指導者、アイ
マン・ザワヒリ容疑者によるビデオ声明がインターネット
上に公開され、同組織のナンバー2でリビア出身の指導
者アブヤヒヤ・リビ容疑者が死亡したことを確認するとと
もに、リビア国民に対し、聖戦を呼びかけていた。リビ容
疑者は今年6月4日、パキスタン国内で米中央情報局
(CIA)の無人機攻撃によって死亡している。
米オバマ大統領は、「卑劣な攻撃」として事件を強く非
難するとともに、各国に駐在する米外交官の安全対策を
強化するよう命じた。今後、問題の映画への反発が他の
イスラム教国に広がる可能性が懸念される。
NY市警 キリスト教コプト教会での警備を強化
ニューヨーク市警は12日、市内のキリスト教コプト教会が攻撃
を受ける恐れがあるとして、教会での警備態勢を強化した。
イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱する内容の米国映画に
対する抗議行動がエジプトやリビアで過激化するなかで、米国
在住のコプト教徒がこの映画の製作費を提供したという情報が
あり、この措置がとられたという。NY市警はエジプトのコプト教
会からこの情報を得たとしているが、現在のところ、同市内では
具体的な攻撃に関する情報はないとしている。
今週のコメント:海外でのもう一つのリスク
「ドイツの国道で路肩に車を停車させて写真を撮影。車に戻るた
め道路を横断しようとしたところ、走行中の車にはねられて死亡」、
「最近ではレンタカーやレンタルバイクを利用する旅行者が急増し
てきました。それに伴い毎年多くの日本人が交通事故で命を落と
しています・・・」(いずれも、「外務省海外安全邦人事件簿」から)。
出張者や赴任者は海外の渡航先で殺人や強盗、すりなどの犯
罪被害に遭わないように特段の注意をする。しかし、見過ごしが
ちなのが、交通事故である。毎年、渡航先の交通事故で負傷し、
死亡する人の数はかなりに上っている。ちなみに、最近3年間の
海外における交通事故による死者と負傷者は(( )内は負傷者
数)、2009年は30(149)人、2010年は35(203)人、2011年は25
(25)人となっている。一方、海外で殺人、強盗、傷害などで死亡
した、もしくは負傷された邦人数は、2009年に16(155)人、2010
年には10(160)人、2011年には14(77)人となっており、交通事
故による死亡者あるいは負傷者がいかに多いかがわかる。
本年3月11日、中国広州日報は、「2011年中の中国の交通事
故亡者数は、6万2,000人であった。全国政協委員の陳建功氏は
『(中国は)自動車保有台数は世界首位ではないが、自動車事故
死亡者数は世界最多。この原因には、交通法規違反に関する法
的処罰が軽すぎること、ドライバーの道徳教育が行きわたってい
ないことの2点がある』として、道路交通法の改正を求めている。」
と報道した。
しかし、海外で交通事故の犠牲となる人が多いのは、中国など
のように急激に発展している途上国だけではない。経済協力開発
機構(OECD)が、2007年中に各国で起きた交通事故を分析し、
人口100万人当たり、あるいは車両100万台当たりの交通事故死
亡者数を比較した。その結果、世界で最も危険な国のトップ10は、
次のようになった。(国名のあとの数字は人口百万人当たりの交
通事故死亡者を、( )内は車両百万台当たりの死亡者数を表す。
順位は両者を勘案して定めている。)
1. ロシア
2. スロバキア
3. ポーランド
4. トルコ
5. ハンガリー
235(939)人
122 (426)人
147(310)人
68(594)人
123(347)人
6. 韓国
127(226)人
7. ギリシャ 121(226)人
8. 米国
136(163)人
9. チェコ
118(235)人
10. ベルギー 100(168)人
【外務省発出渡航情報】
「渡航情報」は、渡航、滞在にあたって特
に注意が必要な場合に発出される情報
で、治安情勢や安全対策の目安を示す
「危険情報」、限定された期間、場所、事
項について速報的に発出される「スポット
情報」、複数の国や地域にまたがる範囲
に発出される「広域情報」があります。各
情報の詳細は以下のとおりです。
・外務省海外安全ホームページ:
http://www.anzen.mofa.go.jp/
(各国機関リンク)
・米国国務省:
http://travel.state.gov/travel/cis_pa_tw/
tw/tw_1764.html
・英国外務省:
http://www.fco.gov.uk/
交通事故への注意を
中国は交通量の多さとマナーの悪さで交通事故発生危険国の
一つと思われているが、このランキングには入ってこない。
中国の1年間の交通事故死亡者数6万2,000人は絶対数としては、
世界一の驚くべき数字だが、13億4,000万人の人口があるので、
100万人当たりの死者数は約46人となり、ワースト10には入らな
い。
ワースト10の8番にランクされている米国の交通事故死亡者の
4万2,000人は、中国の3分の2だが、米国の人口は3億1,500万
人であり、100万人当たりの数字は130人強となる。
日本はどうかというと、昨年1年間の交通事故死亡者は、4,612
人であった。人口100万人当たりに直すと36人である。日本の交
通事故死者数は大幅に減少したといわれる。1年に4,612人も亡
くなれば、4年間で1万8,448人となる計算だ。4年ごとに、東日本
大震災の死亡者1万5,854人を優に超える数の人が交通事故で
命を落とすこととなる。国内の大問題だ。
交通事故死亡者の定義が国によって異なっているため公平な
比較は難しいし、単純に比較することには無理がある。例えば、
日本の交通事故死亡者は、事故発生後24時間以内に死亡した
人を指すが、国によっては事故発生後30日以内に死亡した人を
含めるところもある。また、数字で表される危険性と数字化できな
い 肌 で 感 じ る 危 険 性 も ある。 上記の中国がよい例であろ う。
外務省の「海外安全邦人事件簿」では、「発展途上国のうち、特
に経済発展の目覚ましい国々では、自動車やオートバイが急増
する一方、交通関係法令やインフラ整備が追いついていないこと
に加え、ドライバーへの交通安全教育の遅れから、歩行者の安全
に対する配慮が十分とはいえない車優先社会となっている場合
があり、日本人観光客などが巻き込まれる事故がたびたび報告さ
れています。」と注意を喚起している。
海外への旅行者や出張者、駐在員、さらにはその家族の命は
何物にも代えがたい。出張者や駐在員の海外安全に責任を有す
る各企業は、赴任前研修や出張者研修を活用して、本人や家族
に繰り返し注意を促されたい。
◆日本外務省:9月14日発出渡航情報(最新情報7日分)◆
■危険情報:コモロ、マリ、フィジー
■スポット情報:アフガニスタン(カブール市内の自爆テロに関する注意喚起)、シリア(ダマスカスにおける爆
発事件の発生に伴う注意喚起)、イラク(バグダッドを含むイラク各地における爆弾テロ等の発生に伴う注意喚
起)、スペイン(政府の政策等に反対する抗議活動に対する注意喚起)、パキスタン(インダス川流域を中心と
する豪雨による洪水発生に伴う注意喚起)、中国全土(最近の日中関係の動きに係る注意喚起(その2))、台
湾(最近の日台関係の動きに係る注意喚起)、トルコ(イスタンブールにおける自爆テロの発生に伴う注意喚
起)、イエメン(サヌア市内における国防相暗殺未遂爆弾テロの発生に伴う注意喚起)、ケニア(タナ・リバー県
における虐殺事件発生に伴う注意喚起)
◆米国国務省、英・豪・加国外務省:9月14日発出渡航情報(7日分) ◆
■エリトリア、イスラエル、カメルーン:地域により「渡航の延期をお勧め」(英)■ケニア、トルコ、イラク:地域に
より「渡航の是非を検討」(英)■マリ:「渡航の延期をお勧め」(英)■マダガスカル、タイ、エジプト:地域により
「渡航の延期をお勧め」及び「渡航の是非を検討」(英)■ハイチ、シエラレオネ:地域により「渡航の是非を検
討」(加)■イスラエル:地域により「渡航の延期をお勧め」及び「渡航の是非を検討」(加)■イラン:「渡航の延
期をお勧め」(加)■スーダン:地域により「渡航の延期をお勧め」■南スーダン:「渡航の延期をお勧め」(米)
■リビア:地域により「渡航の延期をお勧」及び「渡航の是非を検討」(英)(加)■ベネズエラ:地域により「渡航
の延期をお勧め」(加)■ギニアビサウ:「渡航の是非を検討」(英)■ケニア:地域により「渡航の延期をお勧
め」及び「渡航の是非を検討」(豪)■インドネシア:地域により「渡航の是非を検討」(豪)■リビア:「渡航の延
期をお勧め」(米)
■本情報配信についてのご意見、ご質問、配信先の
変更、配信停止のご希望がございましたら右記までお
問い合わせください。
■特定地域の治安状況や感染症に関する情報をお知
りになりたい方には、別途調査のうえ情報提供をいた
します。
■なお本Letterは複製又はご登録企業様以外の第三
者に再配信することは差し控えていただくようお願い致
します。
発行・編集
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リスクコンサルティング事業本部
ERM部 企画グループ
〒160-0023
東京都新宿区西新宿1-24-1
エステック情報ビル27F
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Tel: 03-3349-9316
情報提供
・(株)オオコシセキュリティコンサルタンツ
その他情報ソース
・各国外務省(日本、米国、英国)
・WHO、米疾病対策センター(CDC)
・(社)日本在外企業協会、その他サイト