Vol.289 Vol.289 今週のTOPIC HEADLINES 中国 中国 米国:西ナイル

2012.8.31
Vol.289
Vol.289
HEADLINES
■米国:西ナイル熱
さらに感染が拡大
66人死亡
■ミャンマー:民主活動家ら約2,000人を要監視人物の対象外に
■インド:石炭採掘権の払い下げをめぐる抗議デモ
■シリア:アサド大統領
「勝利には時間がかかる」と発言
■ドイツ:3つのネオナチグループを非合法化へ
今週のTOPIC
米国:西ナイル熱
さらに感染が拡大
米疾病対策センター(CDC)は29日、西ナイル熱
の感染が依然として拡大しており、感染者数は先
週の1,118人から1,590人に、死亡した人は41人か
ら66人に増加したことを明らかにした。CDCは、引
き続き感染が拡大する傾向にあると警告している。
これまでに全米50州のうち43州で感染が報告さ
れているが、なかでも、テキサス、サウスダコタ、ミ
シシッピ、オクラホマ、ルイジアナおよびミシガンの
66人死亡
6州における感染が70%以上を占めているという。
一方、カリフォルニア州の保健当局は28日、73人
が食中毒を発症したサルモネラ菌感染の感染源を
調査していることを明らかにした。当局が感染者と
の対面調査を実施したところ、67%がマンゴーを食
べたと答えたという。マンゴーは、メキシコを含め、
複数のルートを経て流通していたことが判明してい
るため、当局では流通ルートの特定を急いでいる。
ASIA
中国
中国
北京大学元教授 ブログで教授らのセクハラを暴露
北京大学経済学部の元教授が21日、同大学の学部
長や教授らが学内のレストランで働く店員に対しセクハ
ラを行っているという内容をミニブログ「微博(ウェイ
ボー)」に実名で書き込み、波紋を呼んでいる。
真相を究明すべきとの声がネット上で高まったため、
大学側は23日、内部調査を開始すると発表した。元教
授はハーバード大学に留学後、同大学の教授として勤
務していたが、2007年に解雇されている。
大学側は、レストランの従業員全員に聴き取り調査を
したところ、そのような事実は見当たらず、元教授とも
連絡がとれていないとしている。
中国国際航空機 脅迫を受け引き返す
中国国際航空は29日、同社のウェブサイトで、米
国ニューヨークに向かうため北京首都国際空港を
29日午後1時30分に離陸したCA981便が、離陸
後に脅迫を受けたとして、乗客の安全を確保する
ため引き返し、同空港に同日午後8時26分に着陸
したことを明らかにした。同社は脅迫の内容や同機
の乗員・乗客数などを明らかにしていない。
同空港で乗客とその荷物を再検査したところ不審
物などは発見されなかったため、同機は30日午前
0時31分に再度離陸し、目的地であるジョン・F・ケ
ネディ国際空港に向かった。
著作権違反のビデオなど60万点以上を押収
わいせつ物や違法出版物などの取り締まりを行う関係
当局は24日、著作権違反のビデオ60万点以上を押収し、
製造・販売に関わっていたグループの容疑者10人を逮
捕したことを明らかにした。
江蘇省南京市当局は、露天商から海賊版ビデオの流
通に関する情報を入手し、同市江寧地区で海賊版ビデ
オの卸売センター2ヶ所を摘発、容疑者7人を逮捕した。
また、容疑者に対する取り調べや押収したコンピュー
ターなどから山東省煙台市にビデオ製造拠点があること
が判明し、地元警察と協力して同施設を摘発、閉鎖した
うえ、容疑者3人を逮捕した。
公安省 偽造食品などに対する取り締まりを実施
公安省は23日、2011年8月以降1年間にわたって、偽
造された、または著しく品質の低い食品および薬品に対
する取り締まりを行い、18万5,000件に上る違法行為を
摘発したことを明らかにした。また、これらの食品や薬品
を製造、販売していた14万7,000ヶ所の拠点を閉鎖した。
湖南省 元従業員が水道局に放火 幹部2人死亡
湖南省昭陽市当局は、27日朝、同市水道局で、元
従業員の女が、幹部らが会議をしていた部屋に押し
入り、ガソリンをまいて放火したことを明らかにした。
幹部2人が死亡したほか、3人が負傷した。女は放
火後、6階の窓から飛び降り負傷した。
同局に勤務する息子の待遇や、2人目の息子が同
局に採用されなかったことに対する不満が犯行の動
機とみられている。
北京 HIV汚染の注射器 タクシーに放置される
北京市警察当局が27日明らかにしたところによる
と、21日、市内海淀区で、タクシーの座席に放置さ
れていた注射器の針が乗客に刺さる事件が発生し
た。注射器内に液体が入っていたため、乗客が警察
に届け出て明らかになった。
検査の結果、この液体がHIVウイルスに汚染され
ていることが判明した。警察は、目撃情報などの手
掛かりを求めて捜査を行っている。
ミャンマー
ミャンマー
中国当局 カチン族住民を戦闘地域に強制送還
ミャンマーの反政府少数民族組織「カチン独立機構
(KIO)」の報道官は24日、中国当局が同日までに、北
部カチン州と中国雲南省の国境地帯にある中国領内
に避難しているカチン族住民の一部をミャンマー領内
へ強制送還したと発表した。
同報道官によると、中国領内には、国境地帯におけ
る「カチン独立軍(KIA:KIOの軍事組織)」とミャンマー
政府軍の戦闘から逃れてきた約5,000人のカチン族住
民が避難しているが、中国当局が22日から3日間で約
1,800人を戦闘地域に強制的に送還したという。
また、同報道官は「住民らは(戦闘地域にある)自分
たちの村に戻ることもできず、絶望的な状況にある」と
インド
インド
石炭採掘権の払い下げをめぐる抗議デモ
ニューデリーで26日、石炭採掘権をめぐる政府と
民間企業の癒着に抗議する市民グループのデモ
が実施され、数百人のデモ隊と警官隊が衝突する
事件が発生した。
政府が石炭採掘権に対する競争入札を実施せ
ず、民間企業に有利な条件で払い下げるなどした
ため、2004年から2009年の間に最大で330億ドル
(約2兆6,000億円)の国庫損失が発生したとして、
野党が当時鉱山相を務めていたシン首相の退陣
を求め、デモを主導したという。
デモ隊は、シン首相の公邸へ向かう途中、待機し
ていた警官隊によって強制排除された。また、同様
のデモが与党「国民会議」のソニア議長の公邸前
でも実施された。
語った。中国外務省は同日、「住民らは自発的に(ミャ
ンマー領内に)帰った」との声明を出したが、米国に拠
点を置く国際的人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」
の広報担当者は同日、住民が強制的に送還されたこと
を確認するとともに、中国当局の措置を非人道的だとし
て非難した。
KIOとミャンマー旧軍事政権との間には停戦合意が結
ばれており、17年間にわたって停戦状態が続いていた
が、テイン・セイン現政権成立直後の昨年6月に同合意
は破棄された。それ以降、KIOと現政権との間で「仕切
り直し」のための和平交渉が数度にわたり開催されて
いるが、現在まで合意に至っていない。
民主活動家ら約2,000人を要監視人物の対象外に
ミャンマー治安当局は27日までに、政府が要監視
人物として出入国などを禁止している「ブラックリスト」
掲載者6,165人のうち、約3分の1に当たる2,082人を
リストから削除した。
この削除については、28日付けの国営紙も事実の
みを短く報道し、「民主化の一環」であり「国外に居住
するミャンマー人は安全に帰国できる」としている。国
営紙によると、「ブラックリスト」掲載者は「ジャーナリ
ストを含むあらゆる分野の個人」で、なかには企業名
も含まれているという。
海外のミャンマー問題専門家らは、掲載者の大半
は軍政時代に身の危険を感じて国外へ脱出した亡命
者や民主活動家だとしている。
テイン・セイン政権には、民主活動家らに帰国を促
すことで、民主化政策の推進を国際社会にアピール
する狙いがあるものとみられている。
AMERICA
米国
米国
ハンタウイルス感染により2人死亡
カリフォルニア州中部の観光地、ヨセミテ国立公
園内の宿泊施設に滞在した観光客4人が、野生の
ネズミが媒介するハンタウイルスに感染し、「ハンタ
ウイルス肺症候群」を発症、27日までに同州在住
の男性(37)1人を含む2人の死亡が確認された。
4人の感染者はいずれも、6月10日から20日ま
でに同公園「カリー・ビレッジ」にあるテント型宿泊
施設に宿泊したとみられている。
ハンタウイルス肺症候群は、野生ネズミの糞尿中
に含まれるウイルスによる感染症で、ウイルスに汚
染された土ぼこりなどを吸い込むことによって感染
し、発熱や頭痛、悪寒などの症状を示す。呼吸困
難などに陥った場合、死亡することもあるという。
国立公園局は27日、今年6月から8月までに同
施設を利用した観光客1,700人に対し、症状がみら
れる場合は直ちに病院を受診するよう促す注意喚
起メールを配信した。また、6月に最初の感染者が
出た時点で、同公園局は全施設の消毒作業を実
施し、利用客に対しネズミなどの小動物に触れな
いよう注意を呼びかけていたという。
ヨセミテ国立公園は年間400万人もの外国人観
光客が訪れることでも知られており、同公園局は海
外諸国に対しても同様の注意喚起を出すよう要請
するか検討している。
エンパイアステートビル前で銃撃戦 9人負傷
ニューヨーク市のエンパイアステートビル前で24
日朝、拳銃を所持した男と警察官による銃撃戦が
あり、通行人9人が負傷した。男は警察官に射殺さ
れた。
男は1年前に同ビル内に入居する会社を解雇さ
れたことに恨みを抱き、出勤途中だった元同僚を
待ち伏せして射殺、逃走しようとしたところ、駆けつ
けた警察官らと銃撃戦となった。
ニューヨーク市警察(NYPD)によると、警察官2
人が男と鉢合わせになり、銃撃されそうになったた
め男を射殺した。1人は9発、もう1人は7発撃った
という。その際、銃弾が通行中の3人に命中したほ
か、銃弾の破片が6人に当たり、9人が負傷した。
男は1991年にフロリダ州で銃を合法的に購入し
たが、ニューヨーク州では銃の所持免許を取得して
いなかった。現場となったエンパイアステートビル
は、事件発生当時、観光客らで混雑していたという。
インドネシア
インドネシア
フランス人テロリスト イスラム寄宿学校に潜伏計画か
フランスの警察当局が27日までにインドネシアの国家
対テロ庁(BNPT)に通報したところによると、今年3月に
フランスのトゥールーズとパリで発生した一連のテロ事件
(犯人1人を含む8人死亡)に関与したイスラム過激派の
フランス人の男3人が犯行後にインドネシア・中部ジャワ
州ソロのイスラム寄宿学校に潜伏する計画だったという。
この学校は、東南アジアの広域テロ組織「ジェマー・イ
スラミア(JI)」の「精神的指導者」とされるアブバカル・バ
アシル師(テロ罪で禁固15年の判決を受け服役中)が創
設した「アルムクミン・イスラム寄宿学校」で、通称「グル
キ学校」。
3人のうち首謀格であるフレデリック・サルヴィ容疑者
(国際手配中)は過去数年間、インドネシア国内でイスラ
ム過激派の活動に参加した経歴がある。
この潜伏計画の発覚でインドネシアとフランスにまたが
るテロ・ネットワークの存在が判明した。アンシャド・ムバ
イBNPT長官は27日、BNPTはフランス当局と密接に情
報交換しながら同寄宿学校の活動を監視下に置いてい
ることを明らかにした。
アトランタ 米兵らによる国家転覆計画が裁判で明らかに
アトランタで27日、昨年12月5日に元兵士(19)とその知人
女性(17)を殺害した疑いがもたれているジョージア州フォー
ト・スチュワート基地所属の兵士4人に対する裁判が行われ、
この殺人事件に隠された犯行動機があったことが明らかに
なった。
兵士たちは、オバマ政権打倒を標榜する無政府主義の民
兵組織に加わっており、同組織が企てていた大統領暗殺計
画の存在を2人に察知されたため、殺害したという。
この民兵組織は、オバマ大統領の暗殺に加え、陸軍基地と
ワシントン州のダムへの攻撃や同州のリンゴ畑への毒物散
布などを計画していたとみられている。
メリーランド州 高校で発砲事件 生徒1人重傷
メリーランド州ボルチモア近郊にある高校のカフェテリアで
27日昼、発砲事件があり、男子生徒1人が重傷を負ったほか、
数人が負傷した。
他校の男子生徒が突然現れ、所持していた拳銃を発砲した
ため、近くにいた教師2人が同生徒を取り押さえようとしたと
ころ、同生徒が再度発砲したという。
カフェテリアには当時生徒ら約200人がいたが、全員が近く
のショッピングセンターへ一時避難した。警察の調べによれ
ば、同生徒が無差別に銃を乱射する計画を立てていた可能
性があるという。犯行の動機については現時点で不明。
コロンビア
コロンビア
政府と「コロンビア革命軍(FARC)」がキューバで和平に向けて予備交渉
サントス大統領が27日にテレビで明らかにしたところ
によると、政府は、左翼ゲリラ「コロンビア革命軍
(FARC)」との半世紀に及ぶ戦闘に終止符を打つことを
目指し、双方がその可能性を探る予備交渉に入ってい
ることを認めた。
政府とFARCがキューバで和平交渉を行っているとの
噂が広まったため、交渉を行っていることを大統領が認
めるかたちとなった。数日中に予備交渉の結果が出る
とみられる。政府は過去にも数度にわたってFARCとの
交渉を行っているが、いずれも不調に終わっている。
MIDDLE EAST
シリア
シリア
アサド大統領 「勝利には時間がかかる」と発言
アサド大統領は29日午後、政府系のテレビ局でインタ
ビューに応じ、シリアの内戦について「戦況が中東地域
や世界にも影響を及ぼす」としたほか、「政府軍が全兵
力を傾ければ、反体制派に占拠されている地域から反
体制派を一掃できるが、このような攻撃の決定はできな
い状態だ」と述べた。一部では、アサド大統領はむしろ
戦闘が長期化することを望んでいるという見方もある。
アサド支持派に爆弾攻撃 政府側の自演か
ダマスカス郊外で28日、アサド政権の支持者2人の
葬儀で車両爆弾1発が爆発し、12人が死亡、48人が
負傷した。2人は、27日に爆発で死亡したという。シリ
ア国営メディアは、政府軍がダマスカス東部で戦闘機
を使用した爆撃を強めていることに対する反体制派の
報復攻撃だと報道した。
一 方 、 反 体 制 派の主 要組 織「シ リ ア国 民評議 会
(SNC)」は、先週、ダマスカス郊外のスンニ派住民居
住地域を政府軍が襲撃し、数百人が死亡した事件に
対する国民の批判をかわすために、アサド政権側が
自らの支持者を攻撃したと主張した。
EUROPE
ドイツ
ドイツ
3つのネオナチグループを非合法化へ
ドイツ当局は23日、3つのネオナチグループを
非合法化するとともに、西部ノルトライン・ヴェス
トファーレン州でメンバー数十人の自宅と集会場
所を家宅捜索した。
約900人の警察官が同州各地で家宅捜索にあ
たり、武器やコンピューターなどを押収したという。
今回は逮捕者は出なかったが、今後は容疑者
の逮捕に乗り出すとしている。当局関係者は、こ
れらの組織が若者らに自らの主義を植えつけよ
うとしているとして警戒感を示した。
今回の家宅捜索は、極右勢力に対し圧力をか
けるだけでなく、現時点では合法的に存在してい
る極右系の「国家民主党」の非合法化に向けた
取り組みの一環として行われたとみられている。
オランダ
オランダ
アムステルダム スキポール空港でスペイン機強制着陸
スペインのマラガからオランダ・アムステルダムのスキ
ポール国際空港に向かっていたスペインの格安航空会社ブ
エリング航空の旅客機がハイジャックされた恐れがあるとし
て、オランダ軍がF16戦闘機2機を緊急発進させた。同機は
戦闘機に誘導され同空港に着陸したが、治安部隊が一時
旅客機の周りを取り囲む騒ぎとなった。
一方、同航空会社はハイジャックを否定し、管制塔と機長
との交信ミスによるものとした。空港当局もそれを確認し、一
件落着となった。空港当局は、パイロットが管制塔の呼びか
けに応じず交信が一時途絶したことから、規則に従い軍の
出動を要請したことを明らかにした。
AFRICA
ナイジェリア
ナイジェリア
ニジェールデルタ 誘拐された石油関連会社従業員解放
ナイジェリア海軍当局は23日、今月4日に南部ニジェールデル
タ沖で、石油採掘に関わる総合サービスを提供する多国籍会社
のバージ船が海賊の襲撃を受け、外国人乗組員4人が誘拐され
た事件に関し、同日朝、4人が無事解放されたことを明らかにし
た。4人は、インドネシア人、タイ人、マレーシア人およびイラン人。
同社は、4人は健康状態に問題はないとしている。身代金の支
払いの有無や解放に至った経緯については明らかにされていな
い。海賊は同船を襲撃した際、乗組員らを銃撃し、乗組員2人が
死亡、2人が負傷した。
誘拐された中国石油会社従業員 無事救出
ナイジェリア軍当局は26日、南東部クロスリ
バー州の州都カラバル郊外で23日に同地域の
犯罪組織「Lapto Marine Force」に誘拐された
中国の石油会社「シノペック」のナイジェリア人
従業員28人のうち、27人を24日夜、無事救出
したことを明らかにした。1人の行方は依然とし
て不明。
海軍と陸軍の合同捜索チームが、クロス川に
ある同組織の拠点を急襲し、27人を救出した。
同組織のメンバーは全員逃亡したため、銃撃
戦などは発生しなかった。現在、当局が同組織
のメンバーらの行方を追跡している。
ケニア
ケニア
モンバサ イスラム過激派指導者の射殺を受けて暴動が発生
モンバサで27日、イスラム教過激派指導者が車で家
族と移動中に武装グループに射殺される事件が発生し
た。同指導者は、ソマリアのイスラム過激派組織「アル
シャバブ(AS)」とつながりがあるとみられる組織「アル
ヒジラ(Al Hijra)」の精神的指導者で、今年1月に武器
の不法所持容疑で逮捕され、その後保釈されていた。
この事件の直後、イスラム教徒の若者ら数千人が路
上に集結し、当局が指導者を暗殺したと非難するデモ
を実施した。
商店から商品を略奪し、警察車両を放火するなど一
部が暴徒化したという。1人が刃物で殺害されたという
情報もある。警察は催涙ガスを使用し、暴動を鎮圧した。
今週のコメント:インドのマオイストの実態
7月18日、ニューデリー郊外のスズキ自動車インド法人「マル
チ・スズキ」のマネサール工場で、労使間のトラブルから、暴動に
発展し、インド人幹部1人が死亡、日本人社員2人をはじめ多数
の負傷者が出る事態となった。マネサール工場は事件の1ヶ月
後に操業を再開しているが、従来の生産体制に戻るにはまだ時
間がかかりそうである。
同社によると、マネサール工場で18日朝、工場幹部に暴力をふ
るった従業員を懲戒処分すると通告したことから、労働組合側が
その撤回を求めていた。就業時間終了後、役員や管理職が退社
しようとしたところ従業員側が出口を封鎖し、役員らを工場内に
閉じ込め、両者の話し合いの途中に、従業員側が会社幹部にい
きなり暴力をふるい、施設などを破壊し始めた。その後、大半の
従業員が工場の門に殺到して同日夜、事務所に放火し、消防車
約25台も出動した。
インド警察は、労組幹部ら約100人を殺人などの容疑で逮捕し、
逃走した容疑者の捜索など、捜査を続けている。7月23日付けの
ヒンズー紙は、同国内務省が情報当局などに、極左武装組織イ
ンド共産党毛沢東主義派(以下、マオイスト)の関与を調査するよ
う指示したと報じた。
インド内務省がマオイストの関与の調査を指示した背景には、
「スズキ・マネサール工場がある地域では、マオイストの支持者ら
が所属する労働組合が存在し、工場を閉鎖に追い込むため、暴
動を起こそうとしていたとの情報があったこと」、「スズキ幹部が従
業員に対し、カースト的差別言動があったと労組が糾弾している
が、これはマオイストの常套手段であり、事実、契約社員の中に
は低カースト出身者もいること」などがあると想定されるが、いま
だスズキ暴動事件でのマオイストの関与の有無は明らかになっ
ていない。
インド・マオイストは、1967 年に西ベンガル州のナクサルバリで、
貧しい農民が中心となり、貧困の改善やカースト制度による差別
の撤廃を求めて武力蜂起をしたナクサライト運動を起源としてい
る。マオイストは、ネパール国境からインド中南部の20州以上に
及ぶ地域(特に山間部)に浸透し、大規模集団による治安部隊や
住民への襲撃事件、住民の誘拐事件などを多発させ、現在もそ
の活動範囲を拡大させている。
日本の外務省は、特にマオイストの活動が活発な地域である
東部州と中部州のチャッティースガル州、ジャールカンド州、ビ
ハール州、オリッサ州に、「渡航の是非を検討」するよう渡航情報
を発出している。
【外務省発出渡航情報】
「渡航情報」は、渡航、滞在にあたって特に注意が
必要な場合に発出される情報で、治安情勢や安
全対策の目安を示す「危険情報」、限定された期
間、場所、事項について速報的に発出される「ス
ポット情報」、複数の国や地域にまたがる範囲に
発出される「広域情報」があります。各情報の詳細
は以下のとおりです。
・外務省海外安全ホームページ:
http://www.anzen.mofa.go.jp/
(各国機関リンク)
・米国国務省:
http://travel.state.gov/travel/cis_pa_tw/tw/tw_1
764.html
・英国外務省:
http://www.fco.gov.uk/
しかし、近年、マオイストは勢力を増強し、都市部でも活動範囲
を広げている。今回のスズキの事例にあるように、マオイストが大
企業の従業員として潜入し、過激な労働運動を扇動して、企業を
攪乱させる手法を講じているとされ、社会の敵ともみられている。
インド・シン首相は、マオイストを「国内安全保障の最大の脅威」
と位置付け、マオイストに対する取り締まりを強化しているものの、
2010年4月にはマオイストの待ち伏せ攻撃で警察官76人が殺害
されている。その後も取り締まりの先手をとって、治安部隊への襲
撃を繰り返している。また、通信・発電所、道路などのインフラ攻
撃、鉄道爆破事件も発生させており、マオイストの活動地域である
チャッティースガル州の道路建設計画はとん挫したままである。
マオイストは寄付や税収を資金源としている。企業などに税金を
強要するいわゆる「革命税」の徴収である。その他、資金を得るた
めに身代金誘拐や銀行襲撃なども行い、麻薬栽培も主な収入源
となっている。また、ネパール・マオイストとフィリピン・マオイスト
(フィリピン共産党新人民軍・NPA)との連携も指摘されていたが、
最近、幹部同士の交流や共同の軍事訓練も実施するなど関係を
強化していることが明らかになっている。
さらに、マオイストの源である中国との関係であるが、中国政府
は海外のマオイスト支援はまったく行っていないとの見解を明らか
にしているが、中国共産党からの支援があるというのがもっぱら
の見方である。このようにインド・マオイストの資金は豊富であり、
引き続き武器調達やメンバーリクルートを行って、全国的に反政
府ゲリラ・テロ活動を展開していくものとみられる。
経済成長が著しいインドへの日本企業の進出が続いており、最
近は地方への進出も顕著となっているが、進出に当たって以下の
ことを励行する必要がある。
(1) 誘致や減税、格安な広大な土地に惹かれても、マオイストの
活動地域である中部・東部の各州の山間部には絶対に立ち入ら
ない、進出しない。
(2) 沿岸部、都市部の安全な地域とされていても、マオイストの活
動状況などを周辺の治安状況をよく調査する。
(3) 労働組合と定期的に話し合いなどで、組合の動向を把握する。
過激なストライキの兆候があれば、警備員の増員、警察への警備
要請など事前対策を講じ、従業員の雇用にあたっては、事前に人
物調査を実施する。
◆日本外務省:8月31日発出渡航情報(最新情報7日分)◆
■危険情報:モザンビーク、ガーナ
■スポット情報:アメリカ合衆国(ウエストナイル熱・脳炎の流行)、済州及び韓国全域(台風15号の接
近に伴う注意喚起)、シエラレオネ(コレラの流行)、コンゴ民主共和国(エボラ出血熱の発生)、モルディ
ブ(マレ島における大規模抗議デモに対する注意喚起)、アンゴラ(総選挙に向けての治安情勢に関す
る注意喚起(その2))、ケニア(モンバサにおける暴動の発生に伴う注意喚起)、パキスタン(ギルギッ
ト・バルチスタン(GB)地域における宗派間抗争等による治安情勢悪化に関する注意喚起)
◆米国国務省、英・豪・加国外務省:8月31日発出渡航情報(7日分) ◆
■アンゴラ:地域により「渡航の是非を検討」(英)(加)■ケニア、リベリア、アルメニア:地域により「渡航
の是非を検討」(英)■イスラエル、アゼルバイジャン、ジブチ:地域により「渡航の延期をお勧め」(英)
■イラン:「渡航の延期をお勧め」(英)■日本、パキスタン:地域により「渡航の延期をお勧め」及び「渡
航の是非を検討」(英)■レバノン:「渡航の是非を検討」及び地域により「渡航の延期をお勧め」(加)■
アメリカ:地域により「渡航の是非を検討」(加)■トルコ、マレーシア:地域により「渡航の是非を検討」
(豪)■コロンビア、ケニア:地域により「渡航の延期をお勧め」及び「渡航の是非を検討」(豪)■シリア、
マリ:「渡航の延期をお勧め」(米)■リビア: 「渡航の是非を検討」(米)
■本情報配信についてのご意見、ご質問、配信先の
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■特定地域の治安状況や感染症に関する情報をお知
りになりたい方には、別途調査のうえ情報提供をいた
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者に再配信することは差し控えていただくようお願い致
します。
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その他情報ソース
・各国外務省(日本、米国、英国)
・WHO、米疾病対策センター(CDC)
・(社)日本在外企業協会、その他サイト