二中だより

二中だより
中学生の夢と可能性は無限大
校 長
近藤 道範
ワールドカップドイツ大会で優勝した「なでしこジャパン」の活躍は、被災地の復興に
取り組む日本全体を勇気づけるとともに、日本人に自信を取り戻させる契機になったよう
に思います。2004 年のアテネオリンピック予選から使われるようになったサッカー日本
代表女子チームの愛称「なでしこジャパン」は、日本古来の草花である大和撫子(やまと
なでしこ)に由来しています。大和撫子の大和は、5 ~ 6 世紀日本の古代王権である大和
政権からきているため、全日本のジャパンにぴったりということで、
「なでしこジャパン」
という愛称が決まったそうです。また、大和撫子は、可憐で繊細でありながら心は強い日
本女性の褒め言葉として江戸時代から使われていましたから、イメージ的にもぴったりだ
ったようです。
この夏「なでしこジャパン」の活躍ぶりを耳にするたびに、今から 16 年前に担当した
学年の女子生徒A子を思い出しました。A子は3年生の秋に、埼玉県の高校を受検したい
という希望を担任に伝えました。埼玉県の高校を選ぶ理由は、新潟県内には女子サッカー
を本格的に行っている高校がないからでした。A子は中学校でバスケットボール部のレギ
ュラーとして活躍する一方、週2回、社会体育でサッカーにも取り組んでいました。
恥ずかしながら当時の私は、「女子でサッカーのために県外の高校に進学するなんて珍
しいな。県内でバスケットボールを続ければ活躍できるのに。」というような認識でした。
自分の不明を弁解するようですが、当時はJリーグが結成されて3年目、サッカー人気は
高まりを見せ始めていましたが、女子サッカーはまだまだマイナーな時代でした。
今回のワールドカップ優勝で女子サッカー選手の実情が報道されるようになりました。
多くの選手が働きながら練習に打ち込んでおり、完全なプロとして生活が成り立つ選手は
ほとんどいない状況です。そんな厳しい状況の中で掴んだ世界№1という結果が、日本国
民に一層大きな感動を与えたのかも知れません。
A子は、「なでしこジャパン」のエース澤穂希選手の2歳年下です。残念ながらA子の
名前は「なでしこジャパン」の名簿にも「アルビレックスレディース」の名簿にも掲載さ
れていません。現在、サッカーを続けているかどうかも分かりません。しかし、A子のよ
うにサッカーを愛する女性達が、情熱を傾けて日本各地で必死にプレーし続けてきたこと
が日本女子サッカーのレベルを着実に上げ、現在の「なでしこジャパン」を支えているこ
とは確かなことです。
あの時、もっとA子の話に耳を傾け、
「中学生の夢と可能性は無限大で、日本をも大き
く変える力がある」と励ましてあげれば良かったと自責の念に駆られています。改めて教
育の現場は、子どもたちの夢を大切にし、その可能性を信じ、最大限に応援する場であら
なければならないと感じた夏でした。