地域専門病院おける高齢者介護予防への先進的な取り組み

地域専門病院おける高齢者介護予防への先進的な取り組み
advanced trial for prevention of take care of elderly person
at professional hospital of local area
猪田邦雄1、清水新悟 2、對馬 明 3、戸田
矢澤浩成3、富永敬三3、細川厚子3
香3、宮本靖義3、
Kunio IDA, Shingo SHIMIZU, Akira TUSHIMA, Kaoru TODA,
Yasunori MIYAMOTO, Hironari YAZAWA, Keizou TOMINAGA,
Atsuko HOSOKAWA
要旨
急性期病院や開業医ではできない地域専門病院の役割があると考え、医師と多くの専門職
がチームを組んで高齢者の介護予防事業に取り組んできた。通所による週 1 回の個別の運動
機能を重視したリハビリテーションは、運動機能の向上という一定の成果を挙げることがで
き、地域貢献の一助ともなっている。一方、参加者は春日井市在住高齢者の一部に過ぎず、
介護予防事業の費用対効果と質の向上や長期的効果、在宅高齢者の生活機能低下に及ぼす影
響などの医療と介護の連携における課題を残している。
高齢者の在宅や維持期の生活機能の向上には、春日井市総合福祉計画のなかで触れられて
いない地域専門病院の専門職と大学の専門的な知識、人材が活用できるような連携の方策が
必要であり、その中心的機能を果たすと考えられる中部大学地域医療・障害者支援研究セン
ターの役割が期待される。
キーワード:介護予防、通所リハビリテーション、特定高齢者リハビリテーション、大学と
地域の連携
Ⅰ.はじめに
2000 年に「自立支援」を基本理念とし、
齢者が要介護状態になることをできる限り
防ぐ(発生を予防する)こと、②要介護状態
高齢者の生活・人生を尊重し、できる限り自
になっても、それ以上に悪化しないようにす
立した生活を送れるように支援するための
る(維持・改善を図る)ことであり、そのた
介護保険が実施された。5 年毎の制度の見直
めの介護予防事業をスタートさせた。それに
しに当り、それまでのデータを検証し、要介
伴い、介護認定もそれまでの要支援、要介護
護状態になる前の介護予備群への介入がも
1~5 までの 6 段階から、要支援を 1 と 2 に分
っとも費用対効果に優れていたことから、
けて7段階とし、元気高齢者の中から、介護
2005 年には介護予防の重要性が強調される
予備群としての特定高齢者を規定した。介護
に到った。厚生労働省は、介護予防とは①高
認定とは別に 25 項目の判定基準を用い、積
1:中部大学生命健康科学研究所 - Research Institute of Life and Health Sciences, Chubu University
2:三仁会春日井整形外科 - Sanjinkai Kasugai Orthopedic Clinic
3:中部大学技術医療専門学校 - Department of Techno-medical College, Chubu University
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生命健康科学研究所紀要
第 6 号 2010
猪田邦雄
宮本靖義
清水新悟
矢澤浩成
對馬 明
富永敬三
戸田 香
細川厚子
極的な介入として特定高齢者介護予防事業
ている。運動器の機能低下により生活機能が
を市町村が行うようにした。また、それ以前
低下し、動かないことによる身体機能の衰え
からあった要介護度の軽度者と要支援者を
が意欲低下を招き、更なる活動性の低下をき
対象とした通所リハビリテーション(以下リ
たし、介護を受けることになる。この状態は
ハビリテーションはリハと略す)の機能を強
生活不活発病と呼ばれ、高齢者の生活機能低
化した。
下による要介護要因の重要な部分を占める
特定高齢者に対しては、週 1 回の通所によ
に到っている。4)
る特定高齢者介護予防事業を行い、従来の介
以上述べたことを背景に、筆者らは高齢者
護認定軽度者の介護通所リハの二つを通所
には薬、湿布や温熱治療に頼るより、通所に
型介護予防事業とした。従事者として理学療
よるリハの実践こそが、転倒予防や運動器疾
法士、看護師などの専門職が関与し、送迎の
患の治療に成ると考え、リハ専門医でもあり、
ほか筋力強化、転倒予防などを行うこととし
運動器の専門医でもある整形外科の知識を
た。特定高齢者対象事業では、言語聴覚士、
基に、コメディカルの専門職とチームを組み、
管理栄養士などによる口腔ケア、栄養指導な
春日井市とともに介護予防事業に取り組ん
ども加えられた。
できている。5)この結果をまとめ、春日井市
著者の勤務する三仁会あさひ病院は整形
全体の介護予防事業の質の向上に向けて大
外科病院を母体として、二つのクリニックを
学がどのように関与し、地域と連携するべき
持ち、運動器疾患の診断・治療、高度な手術
かなどを考察し、中部大学が地域の大学とし
を 37 床の一般病床で行い、それに加えて回
て果たすべき役割を検討した。
復期リハ病棟 37 床を有しており、地域にお
ける骨・関節疾患の専門的治療とリハを行っ
Ⅱ.研究方法
ている。一方、運動器疾患では 2006 年に運
1)特定高齢者介護予防事業(生き生き健康
動器疾患による運動器の廃用、高頻度転倒を
教室)
来たす状態を歩行・移動機能障害と捉える
事業の目的は、「要介護状態及び要支援状
「運動器不安定症」が診療報酬で認められ、
態になる恐れがある高齢者(介護予備軍)が、
2008 年には日本整形外科学会でも、運動器
要介護(要介護状態、要支援状態)になるこ
の機能障害により要介護状態になるリスク
とを予防し、その居宅において自立した日常
が高い状態を運動器機能不全と考える「ロコ
生活を営むことができるよう、特定高齢者
モーティブシンドローム(運動器症候群)」
個々の状態に合わせた支援を行うこと」とな
を提唱し、薬や温熱療法に頼る治療より運動
っている。
器の機能不全の改善・予防のためのロコトレ
を行うべきとした。
1,2,3)
中学の学区により春日井市を 4 つに分け、
それぞれに 1 つの事業所を指定して合計 4
実際に介護を受ける原因は、がん、心筋梗
事業所で行う。(図1)著者らの引き受ける
塞、脳血管障害の 3 大死亡原因とは異なり転
範囲は図の赤と青色の地区で、希望者には送
倒・骨折によるものや骨・関節の障害、筋力
迎を行う。地域包括支援センターが窓口で、
の衰えなどによる老衰などの運動器の障害
傷害保険と資料代の計 2 千円が個人負担と
が多くなってきている。特に後期高齢者では
なっている。
これらの要因が増加し、要介護の原因となっ
37
従事者については機能運動訓練員(理学療
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法士、看護師、健康運動指導士等)が事前・
断基準になっている、開眼片脚起立時間 15
事後のアセスメント、運動指導を行う。身体
秒未満と 3mTUG11 秒以上のいずれかに該
状況の把握やリスクマネジメントは看護師
当する場合をコツコツコースとし、それ以外
が行う。管理栄養士は個別栄養相談や集団で
をチャキチャキコースとした。2)チャキチャ
の栄養教育を行い、口腔機能向上のために歯
キコースは 24 名で平均年齢 72.5±4.5 歳、
科医師、歯科衛生士又は言語聴覚士、看護師
コツコツコースは 25 名で平均年齢 75.2±
等が専門的ケアや日常的セルフケアの実施
6.1 歳と約 3 歳高齢であった。49 名全体の平
指導などを行うこととなっている。
均年齢は 73.9±5.5 歳で男性 14 名、女性が
35 名であった。
春
日
井
リ
ハ
ビ
リ
鳥
居
岩野町 大手田酉町
大手町 上田楽町
下原町 鷲来町
田楽町 西山町
東野町 東野町西
東山町 町屋町
南下原町 桃山町
メ
デ
ィ
カ
ル
フ
ィ
ッ
ト
ネ
ス
テ
|
シ
ョ
ン
病
院
春日井整形外科
白山フィットネス
浅山町 穴橋町 梅ヶ坪町 小木田町 己輪町 管大臣町 貴舟町
篠木町 十三塚町 関田町 大泉寺町 中央通 林島町 東野新町
不二ヶ丘 割塚町
図1.特定高齢者介護予防事業の地区割りと
地域包括支援センター
・②が3点以上
・③が2点以上
・④が2点以上
・①+②+③+④+⑤=10点以上
図2.特定高齢者の基本チェックリスト
国が決めた項目で、①~⑤の 20 項目中 10
町名毎に決められた包括支援センターが窓口
点以上、または各項目ごとに②が 3 点、③
となり、指定の事業所でリハを受ける。1 事業
が 2 点、④が 2 点以上でも該当する。⑥は
所で 1 回 15 名、年 4 回、春日井市では 4 事業
参考とする。
所の合計で 360 名が参加する。
2.方法
1.対象
事業の実施は 1 回 15 名以内とし、週 1 回
特定高齢者基本チェックリスト(図 2)に
2 時間程度、合計 12 回を 1 クールとするの
より選別された 65 歳以上の特定高齢者 36
で、約 3 ヶ月で終了する。なお毎回、健康チ
名及びそれに準ずる高齢者 13 名に対し、春
ェックの後、30 分程度の講義があり、医師、
日井市の提唱する「生き生き健康教室」を実
理学療法士、言語聴覚士、管理栄養士が分担
施した。2008 年 7 月から 2009 年 9 月まで
して行う。講義の後、健康チェック、準備運
の事業参加者 49 名を対象とした。
(選別は春
動、トレーニング、整理体操、健康チェック
日井市及び地域包括支援センターが行う。)
を行う。最終日には終了式を行い、終了証を
高齢者では運動能力などに個人差が大きい
渡す。(表 1)
ので、初期評価時の片脚起立時間により能力
表1.特定高齢者リハビリテーションの講義
の高い群を「チャキチャキコース」
(H 群)
テーマと副題
とし、それより能力の低い群を「コツコツコ
ース」(L 群)に分けて運動プログラムを実
施した。具体的には「運動器不安定症」の診
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對馬 明
富永敬三
戸田 香
細川厚子
歩行速度、⑦全身反応時間を初回と3ヶ月終
第1回:運動と健康寿命
第7回 :骨盤底筋群体操1
-ピンピンコロリの為に-
第2回:栄養指導
-尿失禁予防の知識-
第8回 :骨盤底筋群体操2
-快適な運動と水分補給-
第3回:転倒予防Ⅰ
-尿失禁予防の体操-
第9回 :正しい姿勢と歩行
-転ばない為の知識-
第4回:転倒予防Ⅱ
-快適に歩く為に-
第10回:栄養指導
-転ばない為の体操-
第5回:転倒予防Ⅲ
-自分に合ったエネルギ-
第11回:腰背部痛予防
-転ばない為の工夫-
第6回:口腔機能の向上
-腰の負担を減らす為に-
第12回:修了式
-口の寝たきりを予防しよう-
了時にそれぞれ 2 回計測し平均値を算出し
た。独自のものとしては⑧転倒自己効力感尺
度(FES:Falls Efficacy Scale)8)、⑨SF8
による QOL と 8 つの下位尺度(身体機能
PF、日常役割機能・身体 RP、体の痛み BP、
全身的健康感 GH、活力 VT、社会生活機能
毎回 30 分程度の講義を行う。そのつど理
解しやすい資料を配布する。
SF、日常役割機能・精神 RE、心の健康 MH)
9)、了解の得られた
22 名には⑩ライフコー
ダによる生活活動度の評価もおこなった。さ
事業内容は、(1)健康チェック(問診、
らに、個別相談として医師による医療相談、
血圧測定、脈拍など)、
(2)専門スタッフに
管理栄養士による栄養相談、言語聴覚士によ
よるアセスメント、(3)個別サービス計画
る口腔ケアなども適宜行った。
からなり、集団での実施以外に個別サービス
2)介護通所リハビリテーション
として行う①運動器の機能向上プログラム
目的は要介護認定者で要支援1・2、や要
(週 1 回、12 回を 1 クール)
、②栄養改善プ
介護1・2程度の軽度の高齢者に対し、介護
ログラム(集団で 1 回、個別は月 1 回、6 ヶ
保険を利用して週に1~2回、3時間程度の
月を1クール)、③口腔機能向上プログラム
運動を行い、転倒予防や運動器の機能低下に
(個別に月 2 回、3 ヶ月を 1 クール)の 3 つ
よる生活機能低下を予防・改善を目指す。
が主な柱となっている。これらは、厚生労働
省が一定の効果ありとしたものである。
通所のためには運動可能かどうかの主治
医の健康診断書、介護認定が必要で、それぞ
①では骨折の予防と加齢に伴う運動器の
れのケアマネージャーが窓口となる。希望者
機能低下の予防・向上を目的に、ストッレチ、
には送迎を行い、費用は介護保険を利用する
有酸素運動、簡易な器具を用いた運動等を行
ので介護度により異なるが、1割負担が原則
うこととなっている。実際の内容は事業所ご
となっている。利用料金は介護度、利用回数、
とに異なるが、著者らは二つのコースに分け
期間などにより異なるため、利用者により多
て、より効果が期待できるものとした。トレ
少違ってくる。原則的には週何回でも利用可
ーニングとしては高負荷で行う包括的高齢
能であるが、施設の受け入れからは週 1 回な
者運動トレーニング(CGT:Comprehensive
いし 2 回としている。凡そは要支援1が週 1
Geriatric Training)に準じ、マシーン 7 機
回、月 4 回利用で 1 回当り 680 円、要支援
種による筋力増強運動のほか、マット上での
2が 1276 円、
要介護1では 486 円~586 円、
筋力強化運動、各種のバランス訓練、振動刺
要介護2で 563 円~663 円、要介護 3 で 640
激、任天堂 wii を用いた訓練、自宅での運動
円~740 円程度の自己負担となる。なお、送
指導などを行った。
6)
評価は高齢者に広く行われている①開眼
迎は約 6 割以上の人が利用しており、施設の
大きな負担となっている。
片脚起立時間 、②3mTUG(timed up and
従事者等の施設認定に関わる基準がある
go test)、③FR(functional reach)、④長座
が、上述の特定高齢者と同様に運動指導のた
位体前屈、⑤5m通常歩行速度、⑥5m最大
めのスタッフ、機器、面積等が必要である。
7)
39
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著者らの施設では特定高齢者事業と同じ専
任の理学療法士、看護師、介護福祉士、健康
運動指導員等が受け持っている。
き生き健康教室)
3 ヶ月した教室終了時点で、H 群で有意に
改善した項目は握力(右、左)、右片脚立ち
1.対象
(p<0.05)TUG、FR、長座位体前屈、5m
著者らの施設では 2007 年 4 月から本事業
通常歩行(p<0.01)であった。有意に改善し
を開始し、
常時 100 名以上が利用している。
なかった項目は左片脚立ち、5m 最大歩行速
今回は特定高齢者と同じ評価者で比較する
度、全身反応時間であった。L 群で有意に改
ため 2008 年 4 月 1 日から 2009 年 4 月 30
善した項目は左片脚立ち、右握力(p<0.05)、
日までの期間に通所リハを新規に開始した
右片脚立ち、TUG、FR、5m 通常歩行速度、
33 名を対象とした。平均年齢は 77.5±7.4
5m最大歩行速度(p<0.01)であった。(表
歳で、男性 8 名、平均年齢 73 歳、女性 25
2)49 名全員で見ると握力(右)
、右片脚起
名、平均年齢 79 歳で、介護認定は要支援 1
立時間、3mTUG、FR、長座位体前屈、5m
が 14 名、
要支援 2 が 8 名、
要介護1が 9 名、
最大歩行速度、5m通常歩行速度で有意差
要介護 2 が 2 名であった。
(p<0.01)を持って改善していた。片脚起立
2.方法
時間の左足で有意差(p<0.05)がやや小さか
原則週 1 回、午前か午後の約 3 時間の運動
ったものの、約 7 秒の伸びであった。一方、
を行う。プログラムは集団で行う健康チェッ
ランプが点いてから飛び上がるまでの時間
ク、準備体操、運動トレーニング、整理体操、
を測る全身反応時間では、有意差が見られな
健康チェックを行う。運動トレーニングの内
かったが、増大傾向を示した。また FES で
容はヒップアブダクション、レッグプレス、
は L 群で有意な改善(p<0.05)が得られた。
レッグエクステンション、トーソフレクショ
(表3)
ン、チェストプレス、ローイングの 7 機種の
ライフコーダによる毎日の平均歩数でも、
マシーンと振動刺激、低負荷で行う高齢者運
当初の 1 週間が 6900 歩で終了前の 1 週が
動トレーニングとボール、マット、平行棒な
7100 歩と増加を示したが有意差はなかった。
どによる各種のバランス訓練、wii を用いた
QOL でも多くの指数が改善していた。H
腹式呼吸などを行う。個々の能力に合わせた
群で有意に改善した項目は活力 VT 以外の身
個別の運動強度での運動を指導した。6)
体機能 PF、日常役割機能・身体 RP、体の
評価は①開眼片脚起立時間、②3mTUG、
痛み BP、全身的健康感 GH、社会生活機能
③FR、④長座位体前屈、⑤最大1歩幅、⑥5
SF、日常役割機能・精神 RE、心の健康 MH
m最大歩行速度、⑦2 分間膝上げ回数(腰掛
の 7 項目(p<0.05)であり、L 群では RP、
け)、⑧全身反応時間、⑨握力を初回、3 ヶ
BP、SF、RE(p<0.05)、PF、GH、MH(p<0.01)
月時に評価した。多くの利用者はすでに内科
であった。
(表 4)
疾患で治療しており、骨・関節疾患ではほと
表2.特定高齢者リハビリテーションのコー
んどが春日井整形外科で治療を受けていた
ス別結果
が、それらは継続して行った。
Ⅲ.結果
1)特定高齢者通所リハビリテーション(生
40
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宮本靖義
コツコツコース
開始前
片脚起立(秒)
開始前
30.4*
右
45.4
左
11.9 →
21.2**
左
50.6 →
7.9*
223.9 → 264.6*
FR(ファンクショナルリーチ)
→
7.0 →
53.8**
53.5
252.1 → 293.2*
4.9 →
4.6*
4.0
→
3.8*
5m最大歩行(秒)
3.8 →
3.5*
3.0
→
2.9
25.7
→
29.1*
23.6 → 29.6
全身反応時間
握力
0.47 →
0.41
0.40 →
0.38
右
20.7 → 22.8*
25.0
→ 26.2**
左
20.2 → 21.3
24.0
→ 25.3**
84.1
→ 81.3
FES
68.9 → 75.7**
(* p<0.01
(* p<0.01
6.4*
5m通常歩行(秒)
長座位体前屈
戸田 香
細川厚子
3ヵ月後
12.9 →
9.2 →
對馬 明
富永敬三
チャキチャキコース
3ヵ月後
右
TUG(秒)
清水新悟
矢澤浩成
** p<0.05)
表3.特定高齢者リハビリテーション全体の
SF 8
PF
RP
BP
GH
VT
SF
RE
チャキチャキ
コツコツ
チャキチャキ
コツコツ
チャキチャキ
コツコツ
チャキチャキ
コツコツ
チャキチャキ
コツコツ
チャキチャキ
コツコツ
チャキチャキ
コツコツ
開始前
46.6
43.1
46.7
43.9
44.3
43.9
48.3
45.1
49.3
46.5
46.4
43.6
47.3
46.9
3ヵ月後
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
SF 8全体
49.3**
45.9*
49.3**
48.2*
49.5**
47.8**
52.8**
51.2*
51.9
50.4*
51.4**
48.0**
51.4**
50.3**
開始前
** p<0.05)
3ヵ月後
PF
44.9
→ 47.5*
RP
45.2 → 49.0*
BP
44.1 → 48.6*
GH
46.7
→ 52.0*
VT
47.8
→ 51.1*
SF
44.9
→ 46.7*
RE
47.1 → 50.9*
2)介護通所リハビリテーション
特定高齢者と同様に、3 ヵ月後では片脚起
結果
開始前
FES
片脚起立(秒)
3ヵ月後
75.9 → 78.3
右
28.8 → 41.8*
左
30.9 → 37.1**
TUG(秒)
8.1 →
FR(ファンクショナルリーチ)
体前屈(cm)
7.1*
237.7 → 278.4*
立時間、3mTUG、FR、5m最大歩行速度、
最大 1 歩幅に有意差(p<0.01)が見られ、2
分間膝上げ回数でも有意差(p<0.05)を持っ
て改善していた。一方、握力、長座位体前屈
では有意差はなかったが増大傾向を示した。
24.7 →
27.6*
5m通常歩行速度(秒)
4.4 →
4.2*
5m最大歩行速度(秒)
3.4 →
3.2*
表5.介護予防通所リハビリテーションの結
全身反応時間(秒)
0.44→
0.41
果
22.8 →
22.1 →
24.5*
23.2**
握力(Kg)
右
左
(* p<0.01
(表5)
開始前
** p<0.05)
3ヵ月後
片脚起立(秒)
右
左
8.8
6.2
→
→
13.8*
8.4*
TUG(秒)
右
左
16.7
16.0
→
→
13.3*
13.0*
175.7
→
220.5*
40.3 →
39.2 →
46.6*
48.3*
FR(cm)
1歩幅(cm)
右
左
5m歩行速度(秒)
8.0
→
2分間膝上げ(回)
162.2
→
175.0**
長座位体前屈(cm)
21.1
→
22.4
握力
右
18.7
→
19.2
左
17.4
→
17.7
表4.特定高齢者リハビリテーション の
(* p<0.01
6.4*
** p<0.05)
QOL 評価
Ⅳ.考察
1)介護予防事業への先進的な取り組みにつ
いて
はじめに、研究の場となった著者らの医療
法人三仁会の概略について述べる。1981 年
に地域医療を目指して春日井市に春日井整
形外科として 40 床の病院としてスタートし
た。その後、病床を 61 床に増床し、師勝町
に師勝整形外科を開設した。2004 年には春
41
地域専門病院おける高齢者介護予防への先進的な取り組み
日井整形外科をクリニックとして残し、すぐ
の結果といえよう。1)整形外科ではメタボを
近くにあさひ病院を開設した。あさひ病院で
合併した高齢者が多く訪れるものの、運動器
は一般病棟 37 床、回復期 37 床とし、運動
の障害は多くが手術適応であり、そのリスク
器の専門的な外来、入院、手術に対応すると
は高い。そこで内科医、リハ医、理学療法士、
ともに、リハを充実して回復期リハに対応で
管理栄養士、看護師、薬剤師などがチームを
きるようにした。常勤医は 10 名(整形外科
組み、メタボリック外来・入院も行っている。
6、リハ科専門医2、内科1、麻酔科1)で、
外来でリハ通院困難な高齢者や通院では改
非常勤医師は 14 名となっている。関節外科
善しない場合は入院して減量、筋力強化、リ
(膝、股関節、肩、肘関節など)、スポーツ
ハを行い、痛みが改善すれば退院とし、手術
整形、手の外科、脊椎外科、形成外科、ペイ
適応の場合もリスクを下げることができる。
ンクリニック、神経内科、消化器内科、循環
これらの成果も高齢者には重要な事柄であ
器内科による専門的外来を行っている。整形
り、その先ではメタボの予防や運動器疾患の
外科手術は年間約 700 例(全身麻酔手術は
予防にも繋がると考えている。他にも、作業
約 370 例)に及び、高度な医療に取り組ん
療法士、メディカルソーシャルワーカ ー
でいる。リハスタッフは 22 名(理学療法士、
(MSW)らとチームを組んで、住宅訪問と
作業療法士、言語聴覚士)で、急性期、回復
住宅改修を進め、改修後の自宅訓練などでも
期のほか在宅リハ(訪問リハ)も実施してい
成果を挙げている。医師と専門職がチームを
る。回復期病棟では急性期病院である春日井
組んで高齢者の生活機能向上に関わること
市民病院からの脳血管障害や大腿骨頚部骨
は、地域専門病院の重要な役割であり、これ
折患者の受け入れが大部分を占めている。な
に大学の専門職が加わり、行政と連携して地
お年間外来患者数は約 4000 人で、地域の専
域の福祉向上を目指すべきと考えられる。
門病院としての機能を果たしている。
2)特定高齢者介護予防事業(通所リハビリ
クリニックとしての春日井整形外科は年
テーション:生き生き健康教室)について
間約 8000 人が受診している。以前の病室が
チャキチャキコース、コツコツコースとも
そのままとなっていたので、改修して 2007
に運動機能、QOL の改善が得られたが、低
年から介護通所リハを開始し、2008 年から
機能群のコツコツコースではバランス能力、
は特定高齢者介護予防事業も始めた。リハス
歩行速度関連指数は全て有意に改善してお
タッフは理学療法士が 9 名である。
り、開始前の運動能力が低い高齢者のほうが
クリニックや整形外科病院として診断・治
より改善が高かった。このことから、普段か
療をするだけではなく、市民病院などの急性
ら運動していないために運動能力が低下し
期病院や開業医にはできないことをしたい、
ている高齢者では、リハビリテーションの効
専門職のいる病院でしかできない地域貢献
果が出やすいことを意味しており、高齢にな
をしたいと考えてきた。5)また、高齢者では
って動かないことによる生活不活発病が介
高血圧、高脂血症に加え、肥満や糖尿病は増
護予備軍に多い事を示唆している。
えるばかりである。これらの疾患はメタボリ
転倒自己効力感を示す FES は 10 の日常生
ック症候群(メタボと省略)と呼ばれ注目を
活動作(ADL)項目の動作について、
「転ば
集めている。二本足で歩き、長生きすれば運
ずにやり遂げる自信」の程度を測定する尺度
動器が障害され、介護要因となることは当然
である。各項目は1(大変自信がある)~10
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矢澤浩成
對馬 明
富永敬三
戸田 香
細川厚子
点(全く自信がない)であり、点数が高いほ
の他、寝ているか、歩いているか、走ってい
ど「転ばずにやり遂げる自信」(転倒自己効
るかなどの運動強度が数ヶ月にわたり判定
力感)が低いことを意味する。転倒リスクの
できる。したがって、曜日毎、時間ごとの運
高いコツコツコースでは FES の有意な改善
動量もわかる。事業開始の 1 週間と最後の 1
が得られており、本事業の介入により転倒し
週間に装着したため、通所当初は意識して動
やすい高齢者の転倒予防に有効であること
くことになり、歩数の変化がなったことも考
が示唆される。8)また、健康関連 QOL の改
えられる。一般に 60 歳前後の主婦は 1 日の
善は、運動機能の改善だけでなく人生を活性
歩数が 4000~6000 歩のことが多く、健康の
化させる機会となる可能性も考えられる。
ためには 9000~10000 歩が必要とされてい
今回の結果から、介護予備軍である特定高
る。これから見れば平均年齢約 74 歳の事業
齢者では日常生活はできており、自分は元気
参加者の平均 7000 歩は少なくはないが、多
であると思っているため介護認定を受けて
いとはいえない。本来は事業開始前のデータ
いない。しかし、実際に選び出された特定高
を取るべきであるが、手続き上は難しいので、
齢者は一般の元気高齢者に比べ、運動能力で
この点も改善が必要である。
は年齢毎の標準値を下回っており 7)、通所に
3)介護予防通所リハビリテーションについ
よる週 1 回、2 時間、計 12 回程度のリハビ
て
リテーションでも効果があることがわかる。
1.今回の研究結果について
しかも、より運動能力の低い人ほど効果が出
介護予防の通所リハは、介護予備軍である
ることから、動かないことによる生活不活発
特定高齢者の運動とはことなり、介護認定を
病からくる廃用症候が進んでいることとそ
受けた人であり、内科的なリスクも高く、運
れを自覚していないことが問題であろう。ま
動能力も低く、転倒の可能性がある上、意欲
た、専門職がリスク要因や運動能力を加味し
も高くない。しかし、介入 3 ヶ月でバランス
て個別の運動負荷をできるよう配慮したが、
能力、歩行能力に改善が見られたことから、
チャキチャキコースの改善が悪かったこと
下肢を中心とした筋力が向上したことが示
からすれば、能力の高い人には運動強度が十
唆される。この点は介護予防や転倒予防では
分でなかったとも考えられ、プログラムの更
極めて重要な点である。10,11)
なる検討が必要である。
一方、特定高齢者より平均年齢が約 4 歳高
本事業の目的は、3 ヶ月の運動により、終
く、後期高齢者が多いなか、運動機能の向上
了後も日常生活での運動習慣を身につける
が見られたものの、自ら家で運動することを
ことでもある。ライフコーダ(生活活動度計)
期待するのは難しい点が問題である。自然経
の結果からは、この点は不安が残る。高齢者
過の中で何もしなければ生活機能は低下し、
は自ら運動することは難しく、毎回の講義で
介護度も上がることになることを考えれば、
も「毎日続けること」、
「継続こそが重要であ
良好な結果が 3 ヶ月以後も維持できるかど
ること」を強調しているが、いかに困難であ
うかであり、むしろ悪化しなければ効果あり
るかを示唆している。通所してきた日は運動
とする考えもあろう。6 ヶ月以後や数年後ま
できるが、運動能力の改善に見合った運動習
で効果が持続するのかなどを介護度別や利
慣の増加が見られていないことが課題でも
用回数別などに分けて検討することが必要
あろう。ライフコーダは歩数、消費カロリー
と考えられる。向上しなくても維持できれば
43
地域専門病院おける高齢者介護予防への先進的な取り組み
効果があるとも考えられるので、自宅での運
期への連携はクリニカルパスなどにより、軌
動がどの程度行われていたか、生活機能向上
道に乗りつつあるが、回復期から維持期への
の有無などを含めて検討する必要があろう。
連携がどこの市町村でも課題となっている。
いずれにしても両事業とも生活機能低下
著者らは急性期と回復期の医療に関わる中、
が進んでいる人ほど運動の効果が期待でき
介護保険の要介護度が軽度の高齢者を対象
るので、能力の高い人にはもっと運動強度を
としてリハを行い、専門職のチームワークで
上げる必要があろう。
効果を挙げているが、維持期の一部の高齢者
なお、介護予防事業開始直後に調査した利
に対する成果に過ぎない。事業に参加してい
用者の家族の満足度評価では、行動面では
ない高齢者や介護認定さえ受けていない高
「転ばなくなった」、「歩くのが安定した」、
齢者の実態、春日井市の他の事業所の成果や
「足腰がしっかりした」であり、精神面では、
全体としての費用対効果など今後の検討が
「表情が明るくなった」、「自信がついた」、
必要であろう。そのためには、大学の人材と
「人と接することが多くなった」であり、介
専門的な知識は有用であり、春日井市や介護
護認定を受けている高齢者には重要な改善
事業所等との連携が重要と考えられる。
である。
4)地域の大学が果たす役割と地域連携につ
3) 医療の機能分化が医療と介護の連携や
いて
在宅リハに及ぼす影響について
厚生労働省主導で医療は急性期、回復期、
春日井市では高齢者総合福祉計画の中で、
高齢者を支えるネットワークをイメージと
維持期(慢性期)という機能分化が進んでお
して提唱している。
(図3)12)ネットワーク
り、リハも大きな影響を受けている。急性期
には「かかりつけ機能」として、医療機関や
を担う特定機能病院では DPC(診断群別包
介護保健施設が上げられている。しかしなが
括支払い)による日本版包括医療が進み、入
ら、医療機関は市民病院を核とする急性期病
院期間の短縮とそれによる医療従事者の過
院、高度専門医療を行う地域専門病院、開業
重労働を生じ、リハが十分行えない状況とな
医などがあり、リハを専門に出来る病院は限
っている。
られている。著者らの施設では運動器に関す
一方回復期は、回復期リハ病棟と呼ばれ、
る高度専門医療とリハ専門医を中心とした
急性期病院からの受け皿となり、脳血管障害、 リハスタッフによるリハ機能を持っている。
大腿骨頚部骨折を中心とする骨・関節疾患が
したがって、このスタッフや専門的な知識を
主要な疾患となっている。回復期では入院期
医療機関の連携で生かすことが重要であり、
間や疾患別の基準があり、包括医療となって
「かかりつけ機能」の中心としてリハ能力の
いるもののリハビリが落ち着いた環境で行
高い病院が果たす役割がネットワークの中
われている。しかしながら、機能障害がその
で明確にされる必要がある。
中心となり、それ以後の維持期における在宅
ネットワークの中で欠けている一つが大
や施設等における生活機能の改善や再発予
学の果たす役割であろう。中部大学は春日井
防には結びついていない。その大きな要因は
市にあり、少子高齢化の進む中では、地域と
①医療と介護の制度の違い、②従事者の専門
の連携は大学の柱ともなっている。健康増進
職としての資格、知識等のギャップが大きい
や高齢者の介護予防などが専門職養成の理
ことである。現在のところ、急性期から回復
念である。幸いにも医療に関係する生命健康
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科学部に生命医科、看護学科があり、さらに
理学療法、作業療法学科、臨床工学科が新た
民
に加わった。これらの学科にはリハの柱とな
る知識を有した人材や医療に関する多くの
人材が集結してきている。
(図4)
産
学
官
地域専門病院
の役割?
大学の役割?
図4.高齢者福祉推進体制のイメージ
行政と事業所、住民の連携が図式化されている
が、それをコーディネートし推進する機能が欠
けており、大学にその中心的役割が期待される。
図3.高齢者を支えるネットワークのイメー
ジ
Ⅴ.おわりに
第 4 次春日井市高齢者総合福祉計画では、地
専門職がチームを組んで、その専門知識を
域専門病院の役割や機能が明確にされていな
生かし、これまでの医療とは違った高齢者の
い。また、地域の大学の果たす役割も明記され
生活機能の向上や機能低下の予防を図るこ
ていない。
とが可能であることを示した。特に高齢者に
対して、地域の専門病院が果たすことができ
大学は人材養成が使命であるが、地域の大
学では地域との連携や貢献も重要である。専
る役割を認識するとともに、介護施設等と連
携して質の向上を図ることが必要である。
門職がそれぞれの分野の知識を生かして、ま
地域の高齢者福祉計画の中で、地域の大学
たチームとして地域のネットワークに組み
がその専門的知識や人材を有効に活用し、医
込まれる必要があろう。地域住民への啓発活
療と介護の連携のコーディネーターとして
動、専門職との連携や質の向上を目指し、医
だけでなく、評価や研究の推進、人材養成や
療と介護の連携に関わることで、地域への貢
啓蒙活動などの果たすべき役割について自
献ができるものと考えられる。また、地域の
覚し、行政、市民にも広く働きかけていく必
若者を受け入れて人材育成を大学が行うこ
要があると考えられる。
とにより、その人材が地域で活躍し、大学と
の連携を推進するという地域の大学として
用語解説
の一つの理想像が描けるであろう。
・開眼片脚起立時間:ダイナミックフラミン
これらのことを推進するための機関とし
ゴ体操として阪本らが提唱し、その時間
て、中部大学地域医療・障害者支援研究セン
(秒)と筋力、バランス能力等の科学的デ
ターの存在が見えてくるものと考えられる。
ータと一致することから、年令別の標準値
があり、転倒予防の指標や運動器不安定症
などの基準ともなっている。簡便に検査で
きるため、高齢者の静的なバランス指標と
45
地域専門病院おける高齢者介護予防への先進的な取り組み
の痛み BP、全体的健康感 GH、活力 VT、
して広く用いられている。
・TUG(Timed up and go)テスト:腰掛け
社会生活機能 SF、日常役割機能・精神 RE、
た位置から立ち上がり、10m先のコーンを
心の健康 MH があり、一定の信頼性が得
回って戻り、腰掛けるまでの時間(秒)で
られている。
示す。高齢者では簡便法として、5m、3
m法も用いられている。開眼片脚起立時間
参考文献
と同様に筋力、バランス能力等の指標とし
1)高齢化社会の二大リスク要因-ロコモー
て広く用いられているが、より動的なバラ
ティブシンドロームとメタボリックシン
ンスの指標となっている。
ドローム:Nikkei Medical 特別編集版 12
月:23-26,2009.
・運動器不安定症:日本運動器リハ医学会が
2006 年に提唱し、運動器疾患に加えて片
2)伊藤博元:運動器不安定症の診断基準.Clin
脚起立時間と 5mTUG で診断基準が決め
Calcium 18:1560-1565,2008.
られ、運動器疾患による運動器の廃用、高
3)ロコモーティブシンドローム(運動器症候
頻度転倒の指標として診療報酬の病名と
群):社団法人日本整形外科学会ホームペー
しても認められている。
ジ
・ロコモーティブシンドローム:日本整形外
4)岩谷
力、星野雄一、伊藤博元、藤野圭
科学会が 2008 年に提唱し、運動器の機能
司、角南義文:健康寿命伸延に果たす運動器
不全により、要介護になるリスクが高い状
リハビリテーションの役割.日整会誌
態で、長寿社会の問題としてその予防が重
83:351-356,2009.
要である。
5)畑野栄治:高齢者に対する運動療法(診療
DPC
・
(
Diagnosis
Procedure
Combination):日本版包括医療制度とい
所 で の 取 り 組 み ) . 日 整 会 誌
83:369-373,2009.
われ、急性期、回復期、維持期という医療
6)介護予防完全マニュル:鈴木隆雄,大渕修一
の機能分化に伴い、特定機能病院として大
監修,財団法人東京都高齢者研究・福祉振
学病院や一線の公的病院などが採用して
興財団,東京,2005.
いる丸め方式(病名毎の一括払い)の支払
7)文部科学省:新体力テスト.ぎょうせ
い方式である。入院日数、紹介率等のいく
い.p125,東京,2002.
つかの係数があり、これにより病院の収入
8)加藤智香子,猪田邦雄,長屋正博,徳田治彦,
は変わるので、入院日数の減少、ジェネリ
奥泉宏康,原田
ック薬品の使用、検査件数の減少などが必
転倒自己効力感尺度(FES)に関連する要
要となる。新規の急性期の患者が増え、医
因.運動療法と物理療法 19:315-321,2008.
師、看護師などの医療スタッフの過重労働
9)福原俊一,鈴鴨よしみ(編):SF-8 日本語
を招き、医療崩壊の一因ともなっている。
・SF8:QOL の評価として世界で広く用い
敦:介護施設女性高齢者の
版マニュアル.NPO 健康医療評価研究機
構,京都,2004.
られ、日本人の国民標準値がある SF36 の
10)加藤智香子,猪田邦雄、島岡
簡易版で、福原らにより日本版が作られ、
良共:健康カレッジでの転倒予防への取り組
SF36 と同様に 8 つの下位尺度として、身
み.地域リハ 4(12):1058-1062,2009.
体機能 PF、日常役割機能・身体 RP、体
11)転倒予防教室-転倒予防への医学的対応
清、朝日
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猪田邦雄
宮本靖義
清水新悟
矢澤浩成
-第 2 版:転倒予防医学研究会監修,武藤芳
照,黒柳律雄,上野勝則,太田美穂:日本医事
新報社,東京,2005.
對馬 明
富永敬三
戸田 香
細川厚子
著
者
猪田邦雄(Kunio IDA)
中部大学生命健康科学研究所特任教授。
12)第 4 次春日井市高齢者総合福祉計画:春
1968 年名古屋大学医学部卒、医学博士。1969
日井市健康福祉部高齢福祉課,2009.
年 11 月長野赤十字病院整形外科、1981 年 6
月名古屋大学医学部整形外科講師、1984 年
4 月名古屋大学医療技術短期大学部教授、
1997 年 10 月名古屋大学医学部保健学科教
授、1998 年 4 月同大学学科長、同大学評議
員、2002 年 4 月同大学大学院医学系研究科
リハビリテーション療法学教授、2008 年 4
月同大学名誉教授、三仁会あさひ病院顧問。
2009 年より現職。専門分野は整形外科学、
リハビリテーション医学。主な研究テーマは
骨・関節疾患の治療とリハビリテーション、
高齢者のリハビリテーション、運動器におけ
るメタボリックシンドロームなど。
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