住マイル東海・世代班の「住まいづくりの豆知識」 その3 座談会「私の考えるバリアフリー」 (司会者) 皆様お疲れ様です。それでは今から住マイル東海座談会を始めさせていただきます。 私たち世代班は,平成15年6月から活動を始めて約2年半が経過しました。これま で,住宅のバリアフリーについて様々な議論をしてまいりました。また,3年連続で 文化祭にも参加してまいりました。車イス体験コーナーを設け,来場者にバリアフリ ー体験をしてもらったわけですが,その文化祭の中で何か気づいたことがございまし たら,ご発言をいただきたいと思います。 (A子さん) 私は,文化祭に参加して,一番勉強になったのは,スロープです。文化祭では,ス ロープの大切さを知ることができたのですが,のちに,スロープは誰にでもやさしい わけではないことも知りました。私は,障がいを持つ子どもたちと仕事をしているの ですが,お店の入り口には段差があって,出入りに大変苦労していました。この経験 をきっかけとして,専門家の方に頼み,お店の入り口にスロープを造っていただき, お店に来るお客さんにも喜んでいただくことができたのですが,そのような環境の中 で生活をしていくにつれ,人によっては,逆にスロープがバリアになってしまう場合 もあることを知りました。バリアフリーとは本当に難しいですね。 (B子さん) 三年連続で参加させていただきました。文化祭に参加した中で感じたことは,車イ ス体験コーナーについては,声を掛ければ体験をしていただけたのですが,パネル展 示については,本当にいいことが書かれているんですが,なかなか見てもらえないの が残念でした。 (C子さん) 私は今年度初めて住マイル東海に参加させていただいたわけですが,文化祭は初日 に参加させていただきました。初日は平日ということもあり,来場者が少なかった気 がします。車イス体験をしてもらおうと思って声を掛けたのですが,恥ずかしがって, なかなか体験してもらえなくて,そういう点で苦労しました。今までは,見させてい ただく立場でしたが,今回は逆の立場で,皆さんの話を聞くことができて,非常に勉 強になりました。 (司会者) 車イス体験コーナーは,文化祭の中でも一番人気のあるコーナーなんですよね。こ れはアンケートの結果からしても裏付けられています。皆さんの意見が,これからの 活動に生かせていけるように,全員で努力していきたいですね。 さて,文化祭での車イス体験コーナーでPRしたとおり,住宅には様々なバリアが 存在します。もちろん,住マイル東海の委員である私たちの自宅にもバリアが存在し ますが,そのバリアについて実体験をお聞かせいただければと思います。 -14 - 住マイル東海・世代班の「住まいづくりの豆知識」 (D子さん) 文化祭の車イス体験コーナーで,スロープ体験や廊下幅の体験をしたわけですが, 自分の家はどうなのかなと考えたとき,本当にバリアだらけなんだなと実感しました。 玄関に入るとすぐに段差がありますし,至るところに6cm程度の段差が存在します。 家を建てるときに,トイレは平らにしてくださいと頼んだはずなのですが,入り口に 6cm程度の段差ができてしまっていました。このことを大工さんに話したのですが, 「これはそういうものなんだ」と言われてしまい,反論することが出来ませんでした。 建てている間,ちょくちょく見に行っていたのですが,気がつかずに過ぎてしまい, こういう結果になってしまいました。それから掃き出しのサッシについてですが,床 から3cmくらい上がってサッシが取り付けられてしまい,掃き出しの役を果たさな いものとなってしまいました。大工さんに直してくださいと頼んだのですが, 「これ はそういうものなんだ」ということで直してもらえず,そのままの状態で生活をして います。今は慣れてしまいましたけどね。 (E子さん) 足を怪我してしまったときの体験から話をします。まずトイレですが,当時は,デ パートに行っても,高速道路のトイレに行っても,洋式トイレが数えるだけしかなか ったんですよね。足を怪我していることもあり,仕方なく,洋式トイレが空くまで待 っていたのを記憶しています。怪我をして,初めて,トイレの不自由さというのを痛 感しましたね。 それから手すりについてです。手すりって掴むためのものでもあるのですが,体重 をかけて押さえつけるというか,寄りかかるというか,そういうことも考慮したもの でなければならないと思います。公共施設などの手すりは,ただ掴めるだけのものな のですが,このあたりも考慮して欲しいですね。 (F子さん) 3年前の文化祭の時に,太陽光発電システム導入事例をパネル展示するということ で,太陽光発電システムを導入しているお宅を訪問したのですが,これは本当に勉強 になりました。家をリフォームする時には,ぜひ,太陽光発電システムを入れたいな と思いました。それから,障がい者の方のお宅を訪問させていただいたのですが,段 差のない廊下や出入り口を引き戸にすることなど,とても勉強になりました。 実は,1年前に台所をリフォームしたのですが,住マイル東海での話を参考させて いただきました。水道の蛇口や調理台を自分の身長に合わせ,対面式の台所にしまし た。いつも台所にいる時,主人や子どもたちの会話が背中から聞こえてくるのがどう しても嫌で,対面式にしたわけです。今は,とても気持ちが良いですね。 -15 - 住マイル東海・世代班の「住まいづくりの豆知識」 (司会者) お三方のお話を聞かせていただきまして,バリアフリーの大切さを改めて感じるこ とができました。世代班では,「住まいの豆知識」を作成している最中ですが,その 中では,例えば,手すりを設けようとか,スロープを設けようとか,誰にでも分かる よう,イラストに表現することにしました。でも,表現しきれていない部分も多いの ではないかと思います。バリアには2つの種類があるわけですが,ひとつは段差など の目に見えるバリア,もうひとつは目に見えないバリアです。目に見えないバリアの 例として挙げられるのは,温度です。エアコンのある部屋などでは,快適に過ごせる ものですが,部屋から出ると,冬でしたら,ヒヤッとしてしまうわけです。これは誰 にでも経験があるのではないでしょうか。それを解消するには,住宅の気密性を高め たり,断熱性を高めたり,それとも,機械的にエアコンを設置したりする必要がある わけです。 次に,住まいに関する仕事に就かれているお三方に聞いていきたいと思います。こ れまでの経験の中で,これからの住まいに求めたいものは何かお聞かせいただきたい と思います。 (Gさん) バリアフリーを語るにあたり,常々感じているものがございまして,ひとつには, ハード面,もうひとつはソフト面の二つです。まず,ハード面についてですが,先ほ ど話がありましたとおり,目に見えるバリアと見えないバリアというものがあります。 目に見えるバリアというのは,皆さん良く分かっているのかなと思いますが,床が滑 りやすいとか,段差があるとか,あるいは手すりがあるべきところに手すりがないと か,公共施設にまだまだ洋式トイレが足りないだとか,様々なバリアがあるわけです。 又,目に見えるバリアだけど気がつかないバリアというものもあります。今話した滑 りやすいバリアなどもそうなのですが,段差というものは,ほんの少しの段差でもか なりの負担になってしまいます。その段差を気がつかずに,転んで,大怪我してしま うことはよくある話です。 しかしながら,ハード面より,人間関係のようなソフト面のバリアのほうが非常に 難しいものです。リフォームをする時にキーパーソンとなるのは,ほとんどの場合, そのお宅の奥さんだったりします。でも,家族内の人間関係が悪いと,全員バラバラ な意見を言いますから,なかなか決まらなくなってしまうんですよね。私は,ハード 面のバリアより,人間関係というようなソフト面のバリアのほうが非常に難しい問題 を抱えているのではないかと常々考えています。 (Hさん) 設計を離れて久しくなるとはいえ,設計の専門家が,自分の家の欠点を言うのもお かしな話ですが,10年前,村内に中古住宅を買いました。入居前にその中古住宅を いろいろと改修をしたわけですが,今になって失敗だったなという点がいくつかある んですよね。もともと,じゅうたんが敷かれていた部屋だったようなのですが,じゅ うたんが取り除かれて,敷居の表面とその厚み分2cmが段差になっていたんです。 -16 - 住マイル東海・世代班の「住まいづくりの豆知識」 入居当時はそれほど気にせず,そのままにしてしまったのですが,孫がその段差に足 を引っ掛け転んでしまいました。大人にしてみれば何も感じない段差ですが,子ども にしてみれば,大きな段差だったんですね。さらに,そのうち,足の悪くなった妻も その段差でつまずくようになってしまい,それを見て,入居当時,床の段差を解消し ておけば良かったなと感じています。 それから,玄関先ですが,入居を急いでいたこともあって,タイル張りにしてしま ったんですよね。そのせいで,雪が降った日など,つるつるに滑って,大変な状態に なっています。それから縁側ですが,部屋と庭の間には30cmの段差があるんです。 ここでの出入りに,妻が苦労していまして,段差のためにとても時間がかかるんです。 そうすると,開けっ放しになりますから,冷暖房の効率が非常に悪くなってしまうわ けですよね。設計屋さんの家がそのような状態で,何が設計屋さんなんだと言われて しまいそうですが,ほんのちょっとしたことが,そういうバリアになってしまうんで すよね。 それから手すりを取り付けたいのですが,壁に手すりが取り付けられるだけの下地 状況ではないんですよね。壁の下地として,貫と半貫が入っているのですが,下の三 段だけは大貫を入れるべきだったと思いました。大貫であれば手すりの取り付けに問 題ないのですが,半貫だと手すりのビスが効かないんですよね。そうしておけば良か ったなと思うのですが,実際そのような状況になってみないと分からないことってた くさんあるんですよね。 娘が家を建てているのですが,プレハブ住宅なんですよ。そういうことで,3尺, 6尺というような尺貫法ではなくて,メーターモジュールなんですよ。ですから,在 来工法の住宅での廊下の内法幅は通常75cmしかないのですが,85cmもあるん ですよね。たった10cmなのですが,すごく広く感じるんです。だから車イスも問 題なく通ることが出来るんですよ。以前,お客さんの住宅についてですが,在来工法 の住宅をメーターモジュールで造ってくださいと大工さんと打合せをしたことがあ るんです。すると,無理にメーターモジュールでやろうとすると,通常,材木は3尺, 6尺の尺貫法の寸法で売られているから,大きい材料を買って小さく刻むことになり, 値段が上がってしまうから駄目だと即答されてしまいました。予算云々もあるのです が,こういった考え方も必要なのではないですかね。 (Iさん) 私は住宅などの設計をやっているわけなのですが,まず一番目に考えることは,気 持ち良い空間を造ることですね。これには,使いやすさやバリアフリーへの配慮を含 めてのことです。もうひとつは,あまり便利過ぎないように心掛けています。私が設 計してきた住宅には,ほとんどの場合,エアコンがありません。結果的に,後からエ アコンを取り付ける場合もあるのですが,風通しなどに十分配慮しているからです。 人間として持っている力,自分の感覚というものも非常に大事にしたいと考えていま して,その人にとって,どこからどこまでがバリアなのかということを考えながら, 設計に取り組んでいます。便利にしようと試みたものが,必ずしも便利だということ はないと思っています。 -17 - 住マイル東海・世代班の「住まいづくりの豆知識」 (司会者) お三方の意見を聴いて,バリアフリーというのは,非常に広い範囲に及ぶというこ とを実感しました。 さて,漠然とした質問になってしまうかもしれませんが,皆さんが考えている理想 の住宅とは何でしょうか。例えば,高齢者にやさしい住宅だとか,大きなリビングの ある住宅だとかあるかと思いますが,皆さんからお聞きしたいと思います。 (A子さん) 先ほどのお話を聞いてですが,風通し良く,あまりにも便利過ぎないような住宅と 聴いて,いろいろと考えさせられました。 私の住んでいる家は,築30年が過ぎてしまい,建て直す時期となってしまってい ます。自宅とは別にお店を持っているのですが,ログハウスなんです。最初は,冬に なると寒いかなと思っていたのですが,実際には暖かかったんです。寒いところから お店に入ると,とっても暖かいということではないのですが,ほんわかと暖かいんで すよ。自宅に帰ったときに感じる寒さと全く違うんですよね。又,長時間仕事をして いても疲れが少ないような気がします。それでいて夏も涼しいような気がします。私 の考える住宅というのは,お店のような住宅ですかね。 (B子さん) 私の家は建ててから30年過ぎています。満足はしているのですが,下水道につな がっていなかったんですね。それが,ようやく下水道につなぐことが出来るというこ とで,お手洗いをどうしようかと,今,楽しみにしているんです。 私はもともと住宅について興味があったんですよね。30年前,今の家を新築する とき,日立に住んでいました。建てている最中は,毎日のように日立から飛んできた ものです。釘を打っている様子をじっと見ていると,大工さんに「何でそんなに見て いるの」と言われるくらい,見ていて飽きなかったですね。最近,娘が家を建てたの ですが,自分が家を建てたときのことや,住マイル東海で勉強したことをアドバイス してあげました。それが,かなり取り上げられていて,とても嬉しく思いました。 若いときと,年を取ってからとでは,家に求めるものが違うと思うんですよね。若 いときには,手すりなんか必要ないわけです。しかし,手すりを後からでも付けられ るようにしておくなど,前もって考えておくべきことがあるんだなと思いました。 (C子さん) 今まで勉強してきて,理想の家という言葉は非常に難しいと思いました。ただ,勉 強させられたのは,たとえ,その人の状態によって,どんなバリアができたとしても, 建築士の方と一緒になって考えれば,どんなバリアも解消できるってことですね。 私は,家を建てて11年になるのですが,その頃は何も考えずに家を建てていまし た。もともと日立に住んでいたのですが,東海に引っ越してきたとき,まず,寒いと 思いました。それから,すごい土ぼこり。住んできてから感じたのは,その土地の条 件にあった家であるべきだということです。 -18 - 住マイル東海・世代班の「住まいづくりの豆知識」 それから,メンテナンスの少ない家が良いですね。私の家の中には,ふすまがある のですが,使っていると痛んでくるわけですよね。そうすると,張替えを余儀なくさ れるわけです。隣の家では,メンテナンスを考えて,全てベニヤで仕上げていたんで すよね。それを見て以来,メンテナンスが要らない家に憧れています。 (Gさん) 中高年の方が建てる場合と,30代の方が建てる場合では,考え方が全く違うんで すよね。しかしながら,30代の方が家を建てる場合,あまりバリアフリーを考えな くて良いのではないかと思います。元気なときには元気なときの住まい方があるわけ ですから。しかし,中年以降になれば,滑りにくい床だとか,段差の解消だとか考え なければなりません。住環境の中に医療だとか,福祉だとか,そのような要素が含ま れてくるんですよね。若い方は気にならないのですが,中高年になると,脳梗塞だと か,心筋梗塞だとか,いろいろな病気が必ず出てきます。万が一,病気にかかった場 合,病気と共存しながら,あるいは,障がいと共存しながら,生活できる住環境が必 要だと思います。それには,床が平らであること,手すりがあること,あるいは開口 部があること,車イス生活になっても対応できるようなスロープなどが必要となって くるわけですよね。それと,外にも目を向けなければいけません。外から家に帰って きたとき,まず,玄関に入っていく際の段差の解消があります。それから,敷地に余 裕があれば,植栽だとか,菜園だとかの緑があると良いと思います。 私が常々思っていることは,衣食住の三要素が全て揃っていることが必要だという ことです。住まいだけに気を使い,インスタント食品ばかり食べているようではいけ ませんし,綿であるとか,絹であるとか,肌に優しいものを着るのが良いですよね。 これからは,住まいだけでなく,広い視野で考えていきたいですね。 (D子さん) 子どもが小さいときに家を建てたので,子どもが大きくなったときのことを考えず に建ててしまいました。でも理想は何かと考えると,敷地が広いのなら,平屋建てが 一番だと思います。そうすれば,昇降機など必要ないわけですし,しかも,住まい方 の変化に対応できる家というのが,一番ですかね。バリアだらけの家の中で生活して いるので,これが実感ですね。フラットな空間に,台所,リビング,和室などが配置 できるような家が良いですね。 (E子さん) 造る年代によって考え方が違うような気がしますね。若いときなら若いときの考え 方があるんだと思います。今では,孫が来たときに,走り回れる空間があるような家 が欲しいと思っています。うちは団地なので,限られた敷地しかありません。ですか ら,外で遊びなさいとも言えませんし,だったら走り回れる室内空間があると良いな と思うんですよね。自分が子育てしていたときは感じなかったのですが,孫が3人, 4人と来てバタバタしているのを見ると,この子達を自由にさせることの出来る空間 があれば良いなと感じるんです。 -19 - 住マイル東海・世代班の「住まいづくりの豆知識」 車イスで家の中を歩くというのは,そんなにないと思っているんですね。家族と一 緒に住んでいるのであれば,手すりにつかまり歩きをしながら,出来るだけ足が弱ら ないようにしていれば,何とかなるのかなと思っています。だから,車イス生活に重 点をおくよりは,私は,家族と楽しめる家が欲しいですね。 (F子さん) 今住んでいる家は,あまり日当たりが良くないんです。太陽とともにグルグルと回 る家が欲しいですね。これって必ず誰かが実現するような気がするんですよ。でも, 本当は,どんな家でも良いと思っているんですよ。今,日当たりが良くないと言いま したが,実は,フランスでは,日当たりの悪い家のほうが,価値があるんですよ。こ こはフランスなんだと思えば良いわけですし。あれが欲しい,これが欲しいという考 えはしないんですよ。与えられているものに,いかに合わせるかということが大切で あるような気がするんです。ちょっとくらい不自由なほうが良いんです。かえって不 自由なほうが考えるから良いんですよね。引き戸じゃなくてドアだとしても,使い続 けられる体力を維持することが大切だと思っています。 (Hさん) 太陽とともにグルグルと回る家は既に実在するそうですよ。 私が知っている人に,家を4回建てた人がいるんですよ。一軒目を建てて,あれも 駄目これも駄目ということで家を売ってしまい,二軒目の家を建てたそうです。これ でも気に入らなくて三軒目。また気に入らなくて,四軒目を建ててしまったのだそう です。四軒目の家について,もう満足しましたかと聞いたら,あれも駄目これも駄目 だということでした。一番最初の家は60点。二軒目は70点。三軒目が80点で, 四軒目で90点だけど,あと10点が足りないと言うことでした。しかも五軒目を考 えているらしいんですよ。何度建てても100点満点はあり得ないということですね。 自分の家についてですが,息子も娘も別のところに家を建ててしまいましたし,今 の家の広さは要らないということで,もし建て替えるなら,15坪くらいの小さな平 屋建ての家が良いなと思っています。 (Iさん) 理想の家ということですが,先ほど話したとおり,気持ち良い空間を造ることです ね。皆さんの話を聞いていて思ったのは,変化に対応できる家が理想なのではないか なと思います。環境問題で良く言われるのですが,持続可能な形を取っていくという ことが必要です。生活の変化に対応していけるような形というのがポイントなのでは ないかなと思っています。日本の環境住宅ということで考えると,やはり昔ながらの 木を使った住宅です。日本の住宅の建て替えサイクルというのは,30年なんですよ ね。ところが,アメリカでは100年,イギリスでは140年というサイクルなんで すよね。そう考えると,日本の住宅って極端に短いんですよね。例えば,木造住宅を 建てるのであれば,住宅を造るために伐採された森に,又,材木として使うための木 の苗を植え,材木として使えるようになるまでには70年かかるんです。ですから, -20 - 住マイル東海・世代班の「住まいづくりの豆知識」 木造住宅なら70年使うべきなんですよね。若いときに建てるならば,変化に耐えら れる住宅としなければいけないと思います。これは,昔ながらの木造住宅が良い例と なるんですよね。温故知新ではありませんが,古いところにも参考になることがある んですよ。実際に250年経過している家をリフォームして使っているところを目に しています。その家は,空間が広くて,使いやすそうに感じました。小さな家を出来 るだけ大きい空間として使うとか,廊下をなくすとか,実は,古い家のほうが,そう いった知恵をたくさん取り入れているんですよね。 (司会者) ありがとうございました。皆さんからとても参考になるお話を聞くことが出来まし た。ここにいる皆さんは私の職業を知っているかと思いますが,私も建築に携わって おります。実際に建てる方も設計もやっています。住マイル東海としての活動もはや 2年半となりました。いろいろと討議してきたわけですが,初めの頃は,私の意見は 専門的過ぎて分からないと,よく言われたものです。最近,バリアフリーという言葉 をよく耳にするのですが,これは障壁,つまりバリアを取り除くという意味です。例 えば,床を平らにしましょうだとか,手すりを取り付けましょうだとか安全に暮らす ための術ですね。新しく家を建てるなら,バリアフリー化することに対して,それほ ど困難はないのですが,古い家はなかなか難しいものです。それに,古い家には,耐 震上の問題もありますしね。シックハウスの問題にしてもそうなのですが,何か問題 が取りざたされると法律が改正されてしまいます。バリアフリーにせよ,耐震問題に せよ,シックハウスにせよ,家に求められるものについては,安全というひと言につ きるのかなと思います。その中で私たちは,バリアフリーをメインテーマとして活動 してまいりました。しかしながら,活動を通じてまとめてきた「住まいづくりの豆知 識」以外にも,考えなければならないことも多く,これが全てではありません。とは 言え,一般の方が,この「住まいづくりの豆知識」をきっかけとして,バリアフリー に関心を持っていただけるのならば,それだけで価値あるものなのではないでしょう か。今後は,この「住まいづくりの豆知識」を活用し,どんどん啓蒙活動をしていき たいと思います。皆さんお疲れ様でした。 -21 -
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