① ラテンアメリカの独立 ラテンアメリカの独立の背景 ラテンアメリカの

第 4 章 欧米周辺地域史(近現代)
① ラテンアメリカの独立
● ラテンアメリカの独立の背景
○ ラテンアメリカの植民地における革命思想の普及
・アメリカ独立革命の成功,フランス革命の影響
⇒ 自由主義思想が拡大
・ナポレオンによるスペイン=ブルボン家の打倒
⇒ 本国支配の弱体化から,植民地が自立化
○ 植民地の不満
・支配階級は本国から派遣されたスペイン人【ペニンスラール】
特権を付与され,植民地から搾取
⇒ クリオーリョ(植民地生まれの白人)の不満が増大
○ 植民地の階層
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・ … 植民地生まれの白人
多くは地主として経済力を保持
・インディオ… アメリカ大陸の先住民
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・ … 白人とインディオの混血
・ムラート … ラテンアメリカにおける白人と黒人の混血
○ 独立運動の開始
・クリオーリョにメスティーソなども協力し,独立運動を開始
・トゥパク=アマルの反乱[ 1780 ]
アンデス高地で起こった先住民の反乱
⇒ 独立運動に大きく影響
● 独立運動の展開
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○ 独立[ 1804 ]… フランスから独立
・ラテンアメリカ最初の独立国
・サン=ドマングの蜂起(黒人反乱)
[ 1791 ]が独立運動の契機
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・指導者: (黒いジャコバン)
⇒ ナポレオン軍に抵抗したが捕らえられた
独立直前にフランスで獄死
・世界最初の黒人共和国として独立[ 1804 ]
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3 ラテンアメリカ近現代史
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○ [ 1783 ∼ 1830 ]の独立運動
・ベネズエラ出身のクリオーリョ
・ベネズエラ独立宣言に参加[ 1811 ]
指導者は聖職者のミランダ
⇒ ミランダの逮捕後,ボリバルが独立運動を指導
・大コロンビア共和国独立[ 1819 ]
コロンビア・ベネズエラを合併
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・ 独立[ 1825 ]
共和国として独立 … ボリバルの名が国名の語源
・パナマ会議[ 1826 ]… パン=アメリカ主義を提唱
南北アメリカの連携による独立維持を狙う
※ 大コロンビア共和国の解体後に引退
⇒ ベネズエラ,コロンビア,エクアドルに分裂[ 1830 ]
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○ [ 1778 ∼ 1850 ]の独立運動
・サン=マルティンはアルゼンチン出身のクリオーリョ
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・ 独立
[ 1816 ]… 独立当初はラプラタ連邦
後に,憲法制定によって共和国となる[ 1853 ]
・チリ独立[ 1818 ]… 共和国となる
・ペルー独立[ 1821 ]
独立宣言[ 1821 ]後,スペイン軍を撃退して完全独立[ 1824 ]
○ メキシコ独立[ 1821 ]
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・当初, [ 1753 ∼ 1811 ]が指導
インディオやメスティーソ農民を率いて独立運動開始[ 1810 ]
⇒ クリオーリョが反発し,イダルゴ処刑[ 1811 ]
・現地支配層【クリオーリョ】が本国に反発して独立[ 1821 ]
⇒ 22 年に帝政となるが, 24 年には共和国へ移行
・独立後も教会や地主勢力が強く,自由主義改革は進まず
○ ブラジル独立[ 1822 ]
・ナポレオンの侵略で,ポルトガル王室がブラジルに避難
⇒ ポルトガル王子:ドン=ペドロが皇帝に即位し独立[ 1822 ]
当初帝政だが,立憲君主政の憲法を制定[ 1824 ]
⇒ 後に共和政に移行[ 1889 ]
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第 4 章 欧米周辺地域史(近現代)
ラテンアメリカの独立
フランス革命
アメリカ独立革命
自由主義の拡大
メキシコ
ハイチ(仏から)
ベネズエラ
大コロンビア共和国
(1819)
コロンビア
ブラジル
(ポルトガルから)
ペルー
ボリビア
チリ
アルゼンチン
● ラテンアメリカ独立に対する各国の対応
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○ メッテルニヒの指導による 諸国の干渉
・独立運動のヨーロッパへの波及を恐れて武力干渉を画策
・スペイン=ブルボン家の支配権を回復することも目的のひとつ
<独立を支持した国>
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○ アメリカ合衆国 … 【モンロー教書】
[ 1823 ]
・第5代大統領:モンロー[ 任 1817 ∼ 25 ]による
・
「アメリカ大陸諸国とヨーロッパ諸国の相互不干渉」を主張
ラテンアメリカの独立を支持
⇒ 神聖同盟諸国の独立への干渉に反対
同時にロシアのアラスカ進出に反対
・独立以来の,アメリカ合衆国の孤立主義を明文化したもの
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スペイン
3 ラテンアメリカ近現代史
独立後のラテンアメリカ
モンロー宣言
(アメリカ大陸とヨーロッパの相互不干渉)
アメリカ合衆国
西部開拓
神聖同盟諸国の干渉
メキシコ
イギリスの独立支持
⇒ 経済的進出
ベネズエラ
コロンビア
ブラジル
ペルー
ボリビア
チリ
アルゼンチン
○ イギリス … カニング外交
・イギリス外相:カニングによる干渉への牽制
・イギリスの商品市場拡大を狙って,自由主義外交を展開
⇒ モンロー宣言とラテンアメリカ独立を支持
⇒ オーストリアは干渉を断念
※ モンロー宣言の意義 … アメリカ外交の変化
・アメリカの国力増大に伴い, 1890 年代には合衆国の中南米進出の口実となる
・ヨーロッパ諸国の進出を阻止しつつ,合衆国が中南米進出を進める(カリブ海政策)
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第 4 章 欧米周辺地域史(近現代)
● 独立後のラテンアメリカ
○ 社会改革の遅れ
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・独立運動は地主層である 中心
⇒ 土地改革は実施されず,白人以外には貧困層が多い
・経済的にはイギリスへの依存度が高い
外国資本と結んだ有力者が利益を独占
⇒ クリオーリョや外国資本によるプランテーション経営
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⇒ いわゆる 経済が進行
単一の鉱産資源や輸出用商品作物に一国の経済が依存
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3 ラテンアメリカ近現代史
② メキシコ革命
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● [ 1861 ∼ 67 ]
○ インディオ出身のフアレス大統領就任[ 1858 ]
・自由主義改革 … 教会や軍部の特権廃止や土地改革を断行
⇒ 財政難となり,対外債務の利子不払いを宣言
○ メキシコ干渉【メキシコ出兵】開始[ 1861 ]
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・フランス皇帝: が中心
・対外債務の利子不払いを口実に,英仏などが軍事介入
⇒ オーストリアの皇族マクシミリアンを帝位に就けた
メキシコが利子支払いに応じ,英などは撤退
フランスのみ,メキシコへの出兵を継続
⇒ メキシコ軍の抵抗と,南北戦争後のアメリカが抗議
フランス軍も撤退。マクシミリアンは銃殺された
メキシコ出兵
イギリス
モンロー宣言
(アメリカ大陸とヨーロッパの相互不干渉)
抗議
アメリカ合衆国
南北戦争
(1861 ∼ 65)
メキシコ出兵
メキシコ
ベネズエラ
コロンビア
ブラジル
ペルー
ボリビア
チリ
アルゼンチン
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フランス
スペイン
第 4 章 欧米周辺地域史(近現代)
○ ディアス独裁政権[ 1877 ∼ 80, 84 ∼ 1911 ]
・対フランス戦で活躍したディアスがクーデタで大統領に就任
・教会,軍部,大地主の特権を復活し,対米従属を進行させた
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● [ 1910 ∼ 17 ]
・指導者:マデロ,サパタ,ビリャ
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○ 独裁政権の打倒
[ 1911 ]
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・自由主義者の が大統領に就任
[ 任 1911 ∼ 13 ]
⇒ 土地改革を行わず,農民勢力のサパタらと対立
⇒ ウェルタ将軍のクーデタで失脚・暗殺[ 1913 ]
⇒ ウィルソン米大統領は,米軍を派遣して干渉[ 1914 ]
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○ 政権の成立
[ 任 1917 ∼ 20 ]
・地主,中産階級【カランサ派】と農民勢力【サパタ派,ビリャ派】の内乱が発生
⇒ カランサ派が勝利[ 1915 ]
⇒ 民主的な憲法を制定して,大統領に就任[ 1917 ]
・サパタ,ビリャは暗殺された
○ その後のメキシコ
・カルデナス大統領の改革[ 任 1934 ∼ 40 ]
教育の普及や労働者保護・工業化などに努め,農地改革や石油・鉄道の国有化などの改革達成
※ メキシコ革命は,中南米初の民主主義革命で,この影響で中南米に民族主義政権が成立
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3 ラテンアメリカ近現代史
問1 ラテンアメリカにおける植民地生まれの白人は何と呼ばれているか。
(a) ペニンスラール
(b) メスティーソ
(c) クリオーリョ
(d) ムラート
問2 独立した時期が最も早い国を,次のうちから選べ。
(a) チリ
(b) ブラジル
(c) キューバ
(d) ハイチ
問3 シモン=ボリバルの独立運動と関係のない国は,次のうちどれか。
(a) メキシコ
(b) コロンビア
(c) ベネズエラ
(d) ボリビア
問4 独立当初の政治体制が帝政であった国は,次のうちどれか。
(a) アルゼンチン
(b) ペルー
(c) ブラジル
(d) ハイチ
問5 メキシコ革命の指導者として当てはまらない人物を,次のうちから選べ。
(a) マデロ
(b) ディアス
(c) ビリャ
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(d) サパタ