JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) 古賀 敬作 中南米の租税条約について∼傾向と評価∼ (アルゼンチン・ブラジル・チリ・コロンビア・ペルー・ベネズエラ) 〔報告内容〕 総論(問題状況と条約・各条項の概観と傾向) 各論(評価) Ⅰ. 総論 1.問題状況 (1)途上国・新興国との租税条約 Bduardo Baistrocchi 氏(アルゼンチン/トルクァト・ディ・テラ大学)の最近の研究調査(2006 年 1 月∼2007 年 12 月調査)によれば、米国の 63 の租税条約網のうち、34(53%)の条約が非対 称型租税条約(asymmetric tax treaties:投資の流れが不均衡な国家間における租税条約)であり、 また、英国については、113 の租税条約網のうち、83(73%)の条約が非対称型租税条約である1。 同氏は、このことを、途上国がOECDモデルをベース(基本的に締約国間における資本の流れが 対称的である租税条約において課税中立を担保する居住地国課税をベース2)とする租税条約を先進 国との間で進んで締結していることの帰結だと観察する(彼は、そのように、途上国がOECDモ デルをベースとした条約を締結するかということを、囚人のジレンマのゲーム理論を用いて説明する) 。 しかし一方で、例えばIMFの Victor Thuronyi 氏によれば、途上国の大部分は多くの租税条約 を必要とはしないないとおもわれ、これらの諸国は租税条約を介して得られうる事項のすべてを ほとんど片務的に(国内租税立法により)達成しうるし、そうすることで、当該諸国は条約交渉 コストおよび租税条約のあり得る消極的な側面(許容し得えない、租税政策の選択制限や課税管 轄権の居住地国への割譲)を回避しうるであろう、という3。またある論者によれば、先進国と途 上国との間での投資の流れにおける相互主義の欠落を考慮すれば、税収の損失は一方的である4。 本報告においてとりあげる中南米 6 カ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ<2010 年 1 月に OECD による加 盟国招請を正式に受け入れた。>、コロンビア、ペルー、ベネズエラ)は、Victor 氏が指摘するように、租 税条約の必要性をそれほど認識していないのであろうか? それとも、上述の Bduardo 氏の研究 調査結果や議論が、これら 6 カ国についても、当てはまるのであろうか? 実際、企業は、租税 条約が存しない国であっても同国に進出しており、また、そのような国との間で締結されている 投資交流・促進等に関する Non-Tax Agreements は、(今のところ)別個独立に機能している(下 記(2)参照)。 1 Bduardo Baistrocchi, "Tax Treaties and Developing Counties," British Tax Rev. No.4 (2008), p.352. Ibid., p.375 (fn.117). 3 Victor Thuronyi, "Tax Treaties and Developing Counties," in Michael Lang et all (eds.), Tax Treaties: Building Bridges between Law and Economics (2010), p.455. 4 Francisco Neves Dornelles, "The Tax Treaty Needs of Developing Countries With Special Reference to the UN Draft Model," in UN Draft Model Tax Convention IFA Congress Seminar Series, Vol.4 (1979), pp.27-30. 2 -1- JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) (2)中南米諸国とわが国との関係 ・条約締結の状況 ブラジル(1967 年対ブラジル租税条約)を除く、中南米 5 カ国とわが国との間に租税条約は存し ない。一方、わが国は、2007 年にチリとの間で経済連携協定(EPA)を締結し、更に翌年の 2008 年にペルーと間で投資保護協定(BIT)を締結。以下は、これら各協定における租税条約に関 する定めである。 à 2007 年対チリEPA194 条 2 項 「この協定のいかなる規定も、両締約国が締結している他の国際協定の規定であって租税に係る課税 措置に関するものに基づくいずれの一方の締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。」 à 2008 年対ペルーBIT23 条 2 項 「この協定のいかなる規定も、租税条約に基づく締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。 この協定と当該条約とが抵触する場合には、抵触する限りにおいて、当該条約が優先する。」 ・企業進出の状況 * 日本貿易振興機構海外調査部『第 10 回 米日系進出企業の経営実態調査』(2010 年 1 月)5 アンケート送付企業数: アルゼンチン(37 社)、ブラジル(153 社)、チリ(45 社)、コロンビア(19 社) 、ペル ー(24 社)、ベネズエラ(23 社) ** 日本貿易振興機構海外調査部『第 11 回 米日系進出企業の経営実態調査』(2011 年 1 月)6 アンケート送付企業数: アルゼンチン(37 社) 、ブラジル(312 社) 、チリ(46 社) 、コロンビア(27 社)、ペルー(23 社)、ベネズエラ(20 社) 2.中南米諸国の租税条約 (1)概観 中南米 6 カ国の条約締結動向を年代別に俯瞰してみると、数値上、近時、条約の締結・交渉に 積極的であるとみてとれる国として、チリ、コロンビアおよびベネズエラ、といった国があげら れる(表1)。一方で、その締結の動きが停滞しているとみてとれるのが、アルゼンチである。ま た、これら 6 カ国の地域別の条約締結状況をみてみると(表 2)、その大部分が中南米近隣諸国お よび欧州諸国との間での締結された条約であるが、これを年代別にみてみると、さしあたり目に 付く点としては、先ずブラジルに関し、近時は、中南米近隣諸国との条約締結・交渉に積極的で あるとみられる点と、次にベネズエラに関し、中南米近隣諸国との間で条約を積極的に締結して いない点があげられる。 〔アルゼンチン〕…90 代中葉乃至後半は、欧州諸国との条約締結が主流。近年は、停滞。 〔ブラジル〕…70 年代は、欧州諸国との条約締結が主流。近年は、近隣諸国と条約締結・交渉。 5 日本貿易振興機構海外調査部『第 10 回 米日系進出企業の経営実態調査』 (2010 年 1 月), at http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000170/10th%20chunanbei_research.pdf ( as of June 19, 2011). 6 日本貿易振興機構海外調査部『第 10 回 米日系進出企業の経営実態調査』 (2010 年 1 月), at http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000457/centralamerica_nikkei_kigyou.pdf ( as of June 19, 2011). -2- JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) 〔チリ〕…90 年代中葉乃至後半は、欧州諸国および近隣諸国との条約締結。近年は、米濠と条約締結。 〔コロンビア/ペルー〕…両国とも、近隣諸国との条約のほか、未だ条約締結数は少ない。 〔ベネズエラ〕…90 年代:欧州諸国との条約締結が主流。近年は、中東諸国等OECD非加盟国と条 約締結。 (表1) (表 2 )年代別・地域別条約締結 (アルゼンチン) アルゼンチン:締結国の内訳 00∼04 95∼99 90∼94 80∼84 75∼79 ロシア(未発効) ベルギー、デンマーク、蘭、ノルウェー、 スウェーデン、スイス、英国 オーストラリア スペイン、フィンランド カナダ ブラジル オーストリア、仏、独、伊 ボリビア、チリ -3- JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) ブラジル:締結国の内訳 (ブラジル) 05∼09 ベネズエラ(未発効)・ペルー 00∼04 95∼99 90∼94 南アフリカ イスラエル ウクライナ・ロシア ポルトガル チリ、メキシコ、パラグアイ(未発効) フィンランド 蘭 85∼89 中国 チェコ、ハンガリー、スロバキア 80∼84 インド、韓国 ノルウェー アルゼンチン、エクアドル カナダ フィリピン 75∼79 70∼74 60∼69 墺、伊、ルクセンブルク、スウェーデン ベルギーデンマーク、仏、スペイン 日本 (チリ) チリ:締結国の内訳 10∼ 05∼09 00∼04 95∼99 75∼79 (コロンビア) 米国(未発効) オーストラリア(未発効) ベルギー、アイルランド、ポルトガル、スイス パラグアイ、コロンビア タイ ロシア クロアチア、デンマーク、仏、ノルウェー、 ポーランド、スペイン、スウェーデン、英国 ブラジル、ペルー ニュー・ジーランド 韓国、マレーシア メキシコ、エクアドル カナダ アルゼンチン コロンビア:締結国の内訳 05∼09 00∼04 -4- スペイン、スイス(未発効) チリ カナダ(未発効) ボリビア、エクアドル、ペルー JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) (ペルー) ペルー:締結国の内訳 05∼09 00∼04 スペイン(未発効) ブラジル カナダ、ボリビア、チリ、コロンビア、 エクアドル ベネズエラ:締結国の内訳 (ベネズエラ) 05∼09 00∼04 95∼99 90∼94 イラン、カタール ベラルーシ オーストリア ブラジル(未発効) ベトナム、マレーシア クウェート ロシア スペイン キューバ カナダ 中国、韓国 チェコ、デンマーク、独、ノルウェー、ポルト ガル、スイス、英国 バルバドス、トリニダード・トバゴ、メキシコ (未発効) 米国 インドネシア ベルギー、仏、伊、蘭、スウェーデン (2)各条項の特色 • PE 条項 PE の存続期間(12 箇月超か 6 箇月超か)ないしその定義(役務提供を含むか否か)に関し、UN モデルにほぼ準拠した規定ぶりとなっている条約例が多い。とはいえ、OECDモデルに傾斜し ている条約例も見受けられる(詳細は、別紙 1 参照)。 〔アルゼンチン〕…UNモデルにほぼ準拠。 〔ブラジル〕…UNモデルにほぼ準拠。定義範囲は簡素(監督活動ないしコンサルタントを含む役務 提供を PE の定義に含めない条約例が多い)。 〔チリ〕…UNモデルにほぼ準拠。 〔コロンビア〕…存続期間はUNモデルに準ずるが、コンサルタント役務提供は定義に含めない。 -5- JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) 〔ペルー〕…ほぼUNモデルに準拠(但し、対スペイン条約に関し、存続期間を緩和(9 箇月)。 〔ベネズエラ〕…31 の条約のうち、8の条約が OECD モデルに準拠(欧州諸国との条約)。更に存続期 間がUNモデルより緩く設定されている条約例が比較的多く散見される。 • 特殊関連企業条項(対応的調整規定) 特記すべきは、他の中南米諸国に比して、ブラジルの租税条約のすべてにおいては、年代・地 域にかかわらず、対応的調整規定が設けられていない(1963 年 OECD モデル草案)、という点であ る。 (対欧州) ( 対 ア ジ ア ) アルゼンチン ブラジル チリ コロンビア ペルー ベネズエラ アルゼンチン ブラジル チリ コロンビア ペルー ベネズ エラ ○(04) n/a n/a ×(92) n/a n/a n/a n/a ×(95) ×(78) n/a n/a n/a ×(90) ○(03) フランス ×(79) ×(71) ドイツ ×(78) イタリア ×(79) 日本 n/a ×(67) n/a n/a n/a n/a スペイン ○(92) ×(74) ○(03) ○(05) ○(06、未) 韓国 n/a ×(89) ○(02) n/a n/a ○(06) フィンランド ○(94) ×(96) n/a n/a n/a n/a 中国 n/a ×(91) n/a n/a n/a ○(01) ベルギ ー ○(96) ×(72) ○(07) n/a n/a ×(93) インド n/a ×(88) n/a n/a n/a n/a デンマーク ○(95) ×(74) ○(02) n/a n/a ○(98) オランダ ○(96) ×(90) n/a n/a n/a ○(91) ノルウェー ○(97) ×(80) ○(01) n/a n/a ×(96) スウェーデン ○(95) ×(75) ○(04) n/a n/a ○(93) スイス ○(97) n/a ○(08) ○(07、未) n/a ○(96) 英国 ○(96) n/a ○(03) n/a n/a ○(96) マレーシア n/a n/a ○(04) n/a n/a ○(06) タイ n/a n/a ○(06) n/a n/a n/a ベトナム n/a n/a n/a n/a n/a ○(08) フィリピン n/a ×(83) n/a n/a n/a n/a インドネシア n/a n/a n/a n/a n/a ×(97) チェコ n/a ×(86) n/a n/a ○(10、未) n/a n/a n/a ハンガリー n/a ×(86) n/a n/a n/a n/a n/a スロバキア n/a ×(86) n/a n/a n/a n/a クロアチア n/a n/a ○(03) n/a n/a n/a アイルランド n/a n/a ○(05) n/a n/a n/a ポルトガル n/a ×(00) ○(05) n/a n/a ○(96) ポーランド n/a n/a n/a n/a ルクセンブルク n/a ×(78) n/a n/a n/a n/a オーストリア n/a ×(75) n/a n/a n/a ○(06) n/a n/a ×(96) n/a n/a n/a (対大洋州) オーストラリア ○(99) ュージーランド n/a ○(03) (対北米) 米国 ○(81、未) カナダ ○(93) n/a ○(10、未) n/a n/a n/a ○(99) ○(98) ○(08、未) ○(01) ○(01) n/a ○(00) ( 対 中 南 米 ) アルゼンチン ブラジル なぜか? 例えば 2000 年UNモデルの チリ コ ロ ン ビ ア ペル ー ベネズ エラ アルゼンチン ブラジル コメンタリーによれば、UNモデル 9 条 2 × (80) チリ × アン デ ス型 × (01) 項 に 基 づ く 対 応 的 調 整 は 小 国 に “ very costly”である、との意見もあるとされる (9 条に関するコメンタリーの第 8 パラグラフ)。 コロンビア n/a ペル ー n/a n/a ○ (07) ベネズ エ ラ n/a n/a n/a メキ シコ n/a × (03) ○ (98) n/a n/a ○ ( 9 7 、未 ) パ ラグアイ n/a × (00) ○ (05) n/a n/a n/a エクアドル n/a アンデス型 × (83) ○ (99)アン デ ス型 × (06) ○ (01)アン デ ス型 × ( 0 5 、未 ) n / a ボリビ ア × ア ン デ ス 型 n/a n/a アンデス型 アンデス型 n/a n/a 実際に、ブラジル人または近隣諸国の人 ニ ダ ー ド ・ トコ バ n/a n/a n/a n/a n/a ○ (96) の目には、かかる条約における対応的調整 キ ュー バ n/a n/a n/a n/a n/a ○ (03) バルバドス n/a n/a n/a n/a n/a ○ (98) n/a × (03) n/a n/a n/a n/a イスラエル n/a × (02) n/a n/a n/a n/a イラン n/a n/a n/a n/a n/a ○ (05) ク ウェー ト n/a n/a n/a n/a n/a ○ (06) カ ター ル n/a n/a n/a n/a n/a ○ (06) n/a n/a ○ (03) n/a n/a ○ (07) 規定の欠落はどのように映っているので あろうか? 注)2004 年アンデス共同体多国間租税条約には、 対応的調整規定が盛り込まれている。 (対アフリカ) 南 ア フ リカ (対中東) ( 対 NIS 諸 国 ) ロシア ○ (01) ウクライナ ベラル ー シ -6- × (04) ○ (04) × (02) n/a n/a n/a JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) 意見等 • As mentioned in the OECD MC commentary, in comment 1[1] of the positions of non-member countries, Brazil reserves the right not to insert paragraph 2 in its conventions. Please note that there is no clear statement from the Brazilian tax authorities on the technical or political reasons that led to this position. Nevertheless, you must bear in mind that Brazil had no specific transfer pricing rules applicable until 1997 and, most importantly, Brazil does not follow the OECD TP guidelines and the arm's length principle. • We do not have such provision in our domestic legislation. It seems that Brazil does not see transfer pricing as a double taxation issue, but rather a anti-avoidance one.(ブラジル) • I understand that Brazil doesn´t apply the OCDE´s transfer prices guidelines. They use other fictions in order to determinate the transfer price. That is why they don´t use the art. 9.2 MCOCDE. In that way, they assume that the DTC´s does not relive the economic double taxation caused by domestic transfer pricing rules. • that is their opinion, and the say that transfer pricing is just a fiction, and the way to make this fiction is at the end, the same in the OECD Guidelines or in the Brazilian system. In other words, they want to say to the world that their method is as good as the OECD´s. (コロンビア) • As a matter of fact, although Brazil recognizes the arm'lenght standard, Brazilian legislation adopts several peculiarities which are not usual to OECD standards. for instance, Brazil adopts predetermined margins of profit. There is a huge discussion in Brazil concerning to these margins and their application, but as a matter of fact, authorities presently insist on them, what would make a corresponding adjustment very difficult.(ブラジル) • 投資所得条項(配当・利子・使用料) 投資所得に係る限度税率の適用については、いずれの国もほぼ、租税条約により減免されかた ちとなっているが、なかには、配当ないし利子に関し、すでに国内法により租税条約より低い限 度税率を講じている国もある(表 3)。が、より特徴的とみてとれるのが、かかる投資所得の限度 税率に関し、最恵国待遇(MFN)が適用される条約例が見受けられる、という点である(表 4)。 MFNの適用上、第三国若しくはラテン・アメリカ以外の第三国又はOECD加盟国とのその後 の条約における制限税率がより低ければ、当該税率が適用される。とりわけ、そのようなMFN を採用する条約例は、チリの条約例に多く見受けられる。 -7- JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) (表 3)投資所得に係る制限税率 (国内法) (租税条約) 配当 配当 アルゼン チン ブラジル チリ コロ ン ビ ア ペルー ベネズエラ ・35% ・0% ・35% 利子 使用料 ・35%(通常) ・35% ・15.05% ・15%(通常) ・25%(低課 税国の受益者 への支払利 子) ・35%(通常) ・4%(過少資 本税制の負 債:資本比率 =3:1充足) ・33% ・0%(法人段 ・33% 階で課税済 ・0% み) ・30%(通常) ・4.1% ・0%∼4.99% ・15%∼34% (累進税率適 ・34% 用) ・4.95% ・15% ・25% (低課税国の受益 者への支払利子) アルゼンチン 利子 一般 親子 使用料 15% 10%∼15% 0∼20% 0∼15% ブラジル 10%∼25% 10%∼25% 0∼15% 10%∼25% チリ 7%∼15% 0∼15% 5%∼15% 5%∼15% コロンビア 0%∼7% 0% 5%∼15% 10% 4.1%∼15% 0∼15% 0∼15% 0%∼15% 0∼15% 5%∼20% ペルー ベネズエラ 4.1%∼15% 5%∼15% ・30%(通常) ・15%∼20% ・33% ・30% ・15%∼34% (累進税率適用) (Reference: IBFD Global tax Series, Latin American Tax Handbook 2010.) -8- JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) (表 4)投資所得に対するMFNの適用 (下表・補注) OECD加盟国とのその後の条約締結 第三国/ラテンアメリカ以外の第三国/その後の条約締結国 〔アルゼンチン〕 00∼04 95∼99 80∼84 ロシア(未発効) ベルギー、デンマーク、蘭、ノルウェー、 スウェーデン、スイス、英国 オーストラリア スペイン、フィンランド カナダ ブラジル 75∼79 オーストリア、仏、独、伊 90∼94 〔ブラジル〕 〔チリ〕 ボリビア、チリ 10∼ 05∼09 米国(未発効) オーストラリア(未発効) ベルギー、アイルランド、ポルトガル、スイス パラグアイ、コロンビア 05∼09 ベネズエラ(未発効)・ペルー 00∼04 95∼99 90∼94 南アフリカ イスラエル ウクライナ・ロシア ポルトガル チリ、メキシコ、パラグアイ(未発効) フィンランド 蘭 85∼89 中国 チェコ、ハンガリー、スロバキア 80∼84 インド、韓国 ノルウェー アルゼンチン、エクアドル カナダ タイ 00∼04 95∼99 75∼79 フィリピン ロシア クロアチア、デンマーク、仏、ノルウェー、 ポーランド、スペイン、スウェーデン、英国 ブラジル、ペルー ニュー・ジーランド 韓国、マレーシア メキシコ、エクアドル カナダ アルゼンチン 75∼79 70∼74 60∼69 〔ベネズエラ〕 05∼09 〔ペルー〕 05∼09 00∼04 スペイン(未発効) ブラジル カナダ、ボリビア、チリ、コロンビア、 エクアドル 00∼04 〔コロンビア〕 05∼09 00∼04 スペイン、スイス(未発効) チリ カナダ(未発効) ボリビア、エクアドル、ペルー 95∼99 90∼94 • 墺、伊、ルクセンブルク、スウェーデン ベルギー、デンマーク、仏、スペイン 日本 イラン、カタール ベラルーシ オーストリア ブラジル(未発効) ベトナム、マレーシア クウェート ロシア スペイン キューバ カナダ 中国、韓国 チェコ、デンマーク、独、ノルウェー、ポルト ガル、スイス、英国 バルバドス、トリニダード・トバゴ、メキシコ (未発効) 米国 インドネシア ベルギー、仏、伊、蘭、スウェーデン 二重課税排除条項(みなし外国税額控除の採用) 租税条約におけるみなし外国税額控除(タックス・スペアリング又はマッチング・クレジット) -9- JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) の採用の現状についてみてみると、其れを採用する条約が依然として多く見うけられる。一方で、 近時の傾向としては、アルゼンチンを除く他、其の採用は減少・廃止の傾向にあるとも見てとれ る。とりわけ 2006 年 1 月 1 日に終了した 1975 年独伯条約については、その終了原因の一つが、 かかるみなし外国税額控除の廃止を認めないとするブラジル側の主張にあったと評されるが7、実 際に 2000 年代に入ってから締結された同国の条約をみてみると、その全ての条約においてみなし 外国税額控除が採用されていないが現状である(表 5)。 (表 5)みなし外国税額控除の採用状況<網掛け> [アルゼンチン] 00∼04 95∼99 90∼94 80∼84 〔ブラジル〕 ロシア(未発効) ベルギー、デンマーク、蘭、ノルウェー、 スウェーデン、スイス、英国 オーストラリア スペイン、フィンランド カナダ ブラジル 75∼79 オーストリア、仏、独、伊 〔チリ〕 ボリビア、チリ 10∼ 05∼09 00∼04 95∼99 75∼79 米国(未発効) オーストラリア(未発効) ベルギー、アイルランド、ポルトガル、スイス パラグアイ、コロンビア タイ ロシア クロアチア、デンマーク、仏、ノルウェー、 ポーランド、スペイン、スウェーデン、英国 ブラジル、ペルー ニュー・ジーランド 韓国、マレーシア メキシコ、エクアドル カナダ アルゼンチン 00∼04 ベネズエラ(未発効)、ペルー 00∼04 95∼99 90∼94 南アフリカ イスラエル ウクライナ、ロシア ポルトガル チリ、メキシコ、パラグアイ(未発効) フィンランド 蘭 85∼89 中国 チェコ、ハンガリー、スロバキア 80∼84 インド、韓国 ノルウェー アルゼンチン、エクアドル カナダ フィリピン 75∼79 墺、伊、ルクセンブルク、スウェーデン 70∼74 ベルギー、デンマーク、仏、スペイン 60∼69 日本 〔ベネズエラ〕 05∼09 〔ペルー〕 05∼09 05∼09 00∼04 スペイン(未発効) ブラジル カナダ、ボリビア、チリ、コロンビア、 エクアドル 95∼99 〔コロンビア〕 05∼09 00∼04 スペイン、スイス(未発効) チリ カナダ(未発効) ボリビア、エクアドル、ペルー 90∼94 イラン、カタール ベラルーシ オーストリア ブラジル(未発効) ベトナム、マレーシア クウェート ロシア スペイン キューバ カナダ 中国、韓国 チェコ、デンマーク、独、ノルウェー、ポルト ガル、スイス、英国 バルバドス、トリニダード・トバゴ、メキシコ (未発効) 米国 インドネシア ベルギー、仏、伊、蘭、スウェーデン 7 Coelho, Cristiane , "TAX SPARING AND BRAZIL'S TAX TREATIES," Tax Notes Int'l, Vol.51 (2008), p.685. - 10 - JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) • その他(LoB 条項) 全体数は少ないが、近時の傾向として、条約のなかには、LoB 条項が盛り込まれている例も存 し、これもまた、一つの特色といえる。もっとも、このような、別個独立に包括的な規定を設け て、条約漁り・条約濫用に係る対抗措置を講ずるほか、投資所得(配当、利子、使用料)の各条 項になかに当該対抗措置を含む条約例も存する8。後者にみる規定の導入例は、とりわけ 2000 年 代に入ってから締結されたチリの租税条約に多数みうけられる。同時に、そうしたチリの条約例 には、LoB 条項が比較的散見される。これに対し、アルゼンチンないしベネズエラの条約には、 こうした対抗措置を含む条約例が比較的少ない、とみてとれる。以下は、各国別の対抗措置導入 の状況である (下表・補注) 規定なし 各投資所得(配当・利子・使用料)に盛り込まれた対抗措置 簡素なLoB条項 LoB条項 〔アルゼンチン〕…1995 年対スイス条約(利子・使用料) 、1996 年対英国条約(利子・使用料) /LoB 条項なし。 〔ブラジル〕…2001 年対チリ条約(利子・使用料) 、2002 年対ウクライナ条約(配当・利子・使用料) 、 2003 年対メキシコ条約(配当・利子・使用料)、2003 年南アフリカ条約(配当・利子・使用料)、2005 年対 (ブラジル) 05∼09 ベネズエラ(未発効)・ペルー 00∼04 南アフリカ イスラエル ウクライナ・ロシア ポルトガル チリ、メキシコ、パラグアイ(未発効) ベネズエラ条約(配当・利子・使用料) 、2006 年対ペ ルー条約(配当・利子・使用料)/2004 年対ロシア 条約(LoB 条項)。 (チリ) 〔チリ〕…1998 年対メキシコ条約(利子・使用料) 、 1999 年対エクアドル条約(利子・使用料)、2000 年対 10∼ 05∼09 ポーランド条約(利子・使用料) 、2001 年対ノルウェ ー条約(利子・使用料)、2001 年対ブラジル条約(利 00∼04 子・使用料条項) 、2001 年対ペルー(利子・使用料) 、 2002 年対デンマーク条約(配当・利子・使用料)、2002 年対韓国条約(利子・使用料) 、2003 年対英国条約(配 当・利子・使用料)、2004 年対スウェーデン条約(配 95∼99 米国(未発効) オーストラリア(未発効) ベルギー、アイルランド、ポルトガル、スイス パラグアイ、コロンビア タイ ロシア クロアチア、デンマーク、仏、ノルウェー、 ポーランド、スペイン、スウェーデン、英国 ブラジル、ペルー ニュー・ジーランド 韓国、マレーシア メキシコ、エクアドル カナダ 当・利子・使用料) 、2004 年対マレーシア条約(配当・ 利子・使用料)、2005 年対パラグアイ(配当・利子・ 8 配当・利子・使用料の各所得条項にみられる条約漁り・条約濫用に係る対抗措置の規定ぶりは、抽象的な内容に止まる。それ らは、配当、利子、使用料の支払いに関連する権利の創設又は割当若しくは帰属に含まれる一切の者の主たる目的(主たる目的 の一つ)がそれらの各所得条項上の特典を享受することに存する場合には、条約が適用されない旨を規定する。 - 11 - JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) 使用料)、2005 年対アイルランド条約(配当) ・利子・使用料)、2006 年対タイ条約(配当・利子・使 用料) 、2007 年対ベルギー条約(配当・利子・使用料)/2003 年対ニュー・ジーランド条約(LoB 条項)、 2007 年対コロンビア条約(LoB 条項) 、2010 年対米国条約(LoB 条項)、2010 年対オーストラリア条約 (LoB 条項) 。 〔コロンビア〕…2007 年対チリ条約(LoB 条項)、 (コロンビア) 2007 年対スイス条約(LoB 条項)、2008 年対カナダ条 05∼09 スペイン、スイス(未発効) チリ カナダ(未発効) ボリビア、エクアドル、ペルー 約(LoB 条項)。 00∼04 〔ペルー〕…2001 年対カナダ条約(配当・利子・ 使用料)、2001 年対チリ条約(配当・利子・使用料)、 2006 年対ブラジル条約(配当・利子・使用料) (ペルー) 05∼09 00∼04 /LoB 条項なし。 スペイン(未発効) ブラジル カナダ、ボリビア、チリ、コロンビア、 エクアドル (ベネズエラ) 〔ベネズエラ〕…1997 年対英国条約(配当・利子・ 05∼09 使用料)、1997 年対メキシコ条約(利子・使用料)、 1998 年対デンマーク条約(配当・利子)、2005 年対ブ ラジル条約(配当・利子・使用料) 00∼04 /1993 年対ベルギー条約(簡素な LoB 条項〔ベルギ ーで租税が控除される所得であって、ベネズエラの国 外源泉所得となるものについては、この条約の効力を 与えない〕 )、1993 年対スウェーデン(簡素な LoB 条 95∼99 項〔スウェーデンで租税が控除される所得であって、 ベネズエラの国外源泉所得となるものについては、こ の条約の効力を与えない〕 ) 、1999 年対米国条約(LoB 90∼94 イラン、カタール ベラルーシ オーストリア ブラジル(未発効) ベトナム、マレーシア クウェート ロシア スペイン キューバ カナダ 中国、韓国 チェコ、デンマーク、独、ノルウェー、ポルト ガル、スイス、英国 バルバドス、トリニダード・トバゴ、メキシコ (未発効) 米国 インドネシア ベルギー、仏。伊、蘭、スウェーデン 条項) 。 Ⅱ. 各論 1. 租税条約政策と因人のジレンマ (Bduardo 氏の推論) Bduardo 氏によれば、途上国は、常習的に、自国に海外からの投資(FDI)を引き寄せよう と、他の途上国との間で競争関係(因人のジレンマ)の状況にあることにより、当該途上国はO ECDモデルベースの租税条約を先進国と進んで締結し、その結果として、非対称型租税条約が 出現する。同氏は、かかる因人のジレンマの一つのモデルとして、1983 年インド・モーリシャス 租税条約における条約漁り(トリティ・ショッピング)の違法性が争われた 2003 年インド Andolan 事件最高裁判決をとりあげる。 - 12 - JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) 補)インド(1983 年対モーリシャス条約)と中国(1994 年対モーリシャス条約)の因人のジレンマ インド 協調(C) 中 国 協調 裏切り 裏切り(D) ( 2 2 ) ( 4 1) ( 1 4) ( 3 3) (1) :インドは外国投資家にタックス・インセンティブを付与し、中国はそうしない。 (2) : 両国とも有害な税の競争を惹起するタックス・インセンティブを付与 (3) : 両国とも有害な税の競争を惹起するタックス・インセンティブを付与 (4) : (1)の逆で、中国が外国投資家にタックス・インセンティブを付与、インドはそうしない。 (4,1) : 外国投資家はその投資先として中国よりインドを優先。 (1,4) : (4, 1)の逆で、インドにとっては最も好ましくない選択。 (2,2) : 両国は有害な税の競争に従事しないことにより協調。結果、課税により公共財調達のための税収の増加。 (Reference: Bduardo Baistrocchi, "Tax Treaties and Developing Counties," British Tax Rev. No.4 (2008), pp.363-364.) (1)インド Andolan 事件 この事件は、1983 年インド・モーリシャス租税条約における LoB 条項の欠落の下、モーリシ ャスの権限のある当局により発行された居住者証明書を有する当該モーリシャスの居住者による 当該条約上の特典の享受が、違法な条約漁り(トリティ・ショッピング)であるか否かが争われた 事案である。同条約 13 条 4 項の適用上、モーリシャスの居住者はそれがインドに保有する株式売 却に係るキャピタル・ゲインに対して、当該インドにおいて租税を課されない。同時に、モーリ シャスにおいてもまた、当該キャピタル・ゲインに対して租税を課されない。 最高裁判所(ニューデリー) [[2003] 263ITR706]9は、問題となる条約の濫用又はトリティ・シ ョッピングについて、原審デリー高等裁判所[[2002]256ITR563]による違法との判断(para.34) を退け、 「全体論として、 (トリティ・ショッピングは、)時考において、途上国にとっては必要悪 として考えられるものと判断されなければならない」とし、当該トリティ・ショッピングの合法 性を容認した。 補注)なお、デリー高等裁判所は、問題となる取引においては租税回避又は租税の繰り延べ以外に 商業上の目的がないとして、トリティ・ショッピングは違法である、と判示した(para.54)10。 「『トリティ・ショッピング』は、両締約国間における租税条約の利点を利用する第三国の居住 者の行為を説明するために用いられる表現手法(graphic expression)である。According to Lord McNair11, “provided that any necessary implementation by municipal law has been carried out, there is nothing to prevent the nationals of “third States”, in the absence of any expressed or implied provision to the contrary, from claiming the right or becoming subject to the obligation created by a treaty.”12 ……もし、第三国の国民 9 Union of India v. Azadi Bachao Andolan [2003] 263ITR706, available at http://www.gov.mu/portal/sites/ncb/fsc/download/supreme.pdf. See also, the Supreme Court of India, http://www.supremecourtofindia.nic.in (as of June. 18, 2011). 10 2006 年以降の判決文については、デリー高等裁判所<http://delhihighcourt.nic.in/index.html>に照会すれば、入手可能である。 11 当最高裁は、 条約法の権威であるマクネイア卿の著書(The Law of Treaties, Pg.336 (Oxford, at the Clarendan Press, 1961)を引用。 12 当最高裁は、続けて、トリティ・ショッピングの合法性の判断を、マクネイア卿の著書の以下の箇所に依拠する。“that any necessary implementation by municipal law has been carried out, there is nothing to prevent the nationals of ‘third States’, in the absence of any express or implied provision to the contrary, from claiming the rights, or becoming subject to the obligations, created by a treaty; for instance, if an Anglo-American Convention provided that professors on the staff of the universities of each country were exempt from - 13 - JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) がDTAC(1983年インド・モーリシャス租税条約)上の特典を享受することを禁じられるもの、と意図 されていたのであれば、その効果を制限するための適当な文言が当該条約に盛り込まれていたのであ ろう。一つの対比として、我々は、条約上の特典を利用しうる対象を制限する旨を具体的に定める二 重課税回避に関する印米条約24条に注目する。かかる制限一つは受益に関する持分の50%超であり、法 人の場合には、当該法人の各種類の株式の50%超が一方の締約国の一以上の個人居住者によって直接又 は間接に所有されている法人である。」 「途上国は海外からの投資を必要とし、トリティ・ショッピングの機会は当該投資を引き寄せ るための一つの追加的要素となりうる。トリティ・ヘイブンとしてキプロスを利用することは、東ヨ ーロッパへの資本の流入を助長する。マデイラ(ポルトガル)は欧州連合への投資を引き寄せる。シ ンガポールは、東南アジアおよび中国への投資拠点として発展している。今日、モーリシャスは南ア ジアおよび南アフリカに適当な条約導管(treaty conduit)を提供する。近年、インドは『Mauritius conduit』を通じて相当な資金の受益者になっている。1991 年以後のインド経済改革により、そのよう な資本の移転を認めているが、当該インド・モーリシャス租税条約が存していなかったならば、その 総額は相当程度下回っていたであろう。 」 「途上国は、トリティ・ショッピングが資本および技術の流入を促進することを認めると同時 に、先進国はそれらを提供することを切望する。歳入の減損は、それらの国にとってのその他の租税 以外の便益と比べれば、取るに足らないものである。 」 (2)OECDモデル締結のインセンティブ では、なぜ、因人のジレンマに陥っている途上国はOECDモデルをベースとする租税条約を 進んで締結するのか? ○ MFN 条項による波及効果 ○ 租税条約網のネットワーク外部性(externality) ・コミュニケーション・コストの削減(外国投資家への自国法制度に関する情報を広めるコスト の削減〔英語〕) ・執行コストの削減(紛争事案・裁判所おける法の適用の過程で生ずるコストの削減〔OECD 加盟国のリーガル・ソースを参照することで執行コストを最小限度に抑えることができる。 〕) ・予測可能性と法的安定性に係る信頼に値するコミットメント(周知の法規範) ・国際的二重課税を最低限度に抑える手続の提供 2. ○ 中南米の租税条約政策の評価 アルゼンチンとチリについて ・アルゼンチンの停滞原因は?…タックス・スペアリングの導入・濫用防止規定の欠落。 ・チリの積極的な動きは?…Bduardo 氏の推論に合致しているようにみてとれる。コロンビア 及びペルーについても、同じことが言えそうであるが。 taxation in respect of fees earned for lecturing in the other country, and any necessary changes in the tax laws were made, that privilege could be claimed by, or on behalf of, professors of those universities who were the nationals of ‘third States’.” - 14 - JTI 国際課税委員会(平成 23 年 6 月 23 日) ○ ベネズエラの条約について ・動きが停滞とはみてとれないが?…近時の条約締結国について、OECD 非加盟国との条約締結 が散見される。Victor 氏の見解があてはまるようにもおもわれる。加えて、先述の通り、ベネズ エラは中南米近隣諸国との間で積極的に条約を締結していない。途上国が他の近隣諸国ではない 途上国との間で条約を結ぶのはなぜか?(途上国間租税条約の意味?) ○ ブラジルの条約について ・ブラジルはパレート最適な状態?…近時の条約締結国は、中南米近隣諸国である。 (協調・協 調:条約濫用対抗)対応的調整規定の位置付けは? PE 特殊関連企業 投資所得 二重課税排除 濫用防止 〔対調〕 〔MFN・件数〕 〔Tax Sparing・件数〕 アルゼンチン UN OECD 7/19 10/19 2/19 ブラジル UN 乖離 4/32 20/32 8/32 〔0/10(00 年以降)〕 〔8/10(00 年以降)〕 チリ UN OECD 20/27 3/27 18/27 コロンビア UN OECD 2/3 0 3/3〔二国間条約〕 ペルー UN OECD 1/4 0 3/4〔二国間条約〕 ベネズエラ UN/OECD OECD 3/31 9/31 6/31 伯日条約 10 条 2 項(1967) OECD モデル(2010 年) 一方の締約国内で生じ、他方の締 ……。その租税の額は、当該 この事件は、Volvo ブラジル子会社(ボル 約国の居住者に支払われる利子 利子の受益者が他方の締約 ボ・トラックスウェーデン本社)と Itochu パ については、当該利子が生じた締 国の居住者である場合には、 ナマ支店との間におけるファイナンス契約に 約国において、その締約国の法令 当該利子の金額の 10%を超 基づき、当該ブラジル子会社が当該パナマ支 に従って、租税を課することがで えないものとする。 店に支払う貸付金の利子に関し、伯日租税条 きる。その租税の額は、当該利子 約 10 条(支払い利子の制限税率 12.5%)が の金額の 12.5%を超えないものと 適用されるか否かが争われた事案である。パ する。 補)未分析事案: ブラジル Volvo Brazil 事件(別紙 2) ラナ第 4 地域連邦地方裁判所第 1 審(2001 年 2 月 7 日)は、①同条約の適用を認めたが、同裁判 所第 2 審(2001 年 12 月 18 日)および連邦高等裁判所はこれを支持せず。 Itochu Cop. 日本 Itochu 伯日租税条約 Panama branch パナマ 利子 貸付 *WH=12.5% ブラジル Volvo (了) Brazil - 15 -
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