2014年度 NewsLetter - 金沢大学 人間社会学域人文学類言語文化学

NEWSLETTER
金沢大学英文学会
★金沢大学英文学会は、1953 年1月第1
回卒業生の予餞会で結成。年1回総会と
講演会・研究発表会を開催、学会誌 KES
は 1954 年創刊、現在 28 号を数える。
会員のみなさま、お変わりございませ
んか。NewsLetter 第6号をお届けしま
す。本年度の運営委員会がさる9月 13 日
に開催され、本号は、そこで討議された
内容をもとに編集されています。
=================
利他性(altruism)の進化
中村
芳久
その昔、英語語彙の増強をねらって購
入した Word Power Made Easy なるハ
ウ・トゥー本を読んでいると、egoistic と
egoTistic の違いが書いてあって、t の付
いた方は、talkative の t が入っているか
ら、
「自分のことばかりしゃべる」という
意味なのだという。そのこじつけにいた
く気に入り、この本のその部分だけが記
憶に残っている。
その後、t のない egoism(利己主義・
利己性)の反対語が、利他主義・利他性
であり、英語で altruism ということ、そ
してこれがなかなか面白い概念であるこ
とがわかってきた。身を挺して他者を救
う行為は、むろん最大級の利他性の現れ
だ。そこまでいかなくても、遠くの他者
の利益と安寧を思う気持ち、あるいは隣
人愛といったものはだれにでもある。そ
のせいで、どこまで他者に手を差し伸べ
たらいいのか思い悩む人も多いだろう。
進化論の論理にしたがえば、己の利益
だけを目指す利己的な強い個だけが、血
No. 6
で血を洗う戦いに勝ち残り、子孫を残し
繁栄するはずだか、どうもそれではすべ
ての個が疲弊し、種は絶えるらしい。そ
れで生物一般には一定の協調性、利他性
が進化していて、細胞でもがんの発生を
ふせぐために分裂を協調的に調整するし、
ハキリアリは協力して木の葉を巣に持ち
かえり、雌ライオンは協力して自分たち
の子を育て、ニホンザルは毛づくろいを
しあうことで、群れのなかでの評判を高
め生き残りを図るという具合である。
その点、ヒトの利他性は無限の拡がり
を持ち、種を超えて利他的であり、自然
界全般を思い遣るところがある。その進
化の動因は Nowak(2012)の言うところ
とは違って、
「情けは他人のためならず」
と い う 程 度 の 間 接 互 恵 性 ( indirect
reciprocity)ではないように思われる。
おそらく、自分の飲食する米一粒、水
一滴ですら、その恩恵が誰からか来てい
るのであり、また自分の与える恩恵が誰
か他者に渡りながら、互いの生存が成立
するという恩恵の連鎖に思いを馳せるこ
とが出来るときに、ヒトはより普遍性の
高い利他性に向かうのであろう。
脳科学的にも、他人に益しよう、他人
を喜ばせようと頭をひねり、行動しよう
とするときに、脳内にはオキシトシンが
分泌され、自らの思考力や行動力がアッ
プし、自身の幸福度が上がるということ
である。このようなことの根本には、ヒ
トが目先の≪イマ≫≪ココ≫にへばりつ
くのではなく、そこから自らを引き離し、
高みから眺めうるという進化を、ある時
点で経たということがあるのだろう。
(Nowak, M.A. 2012. “Why we help.”
Scientific American, July)
NEWSLETTER
金沢大学英文学会
2014 年度金沢大学英文学会
総会プログラム
総会第 2 部(13:30~17:30)
13:30~14:00
開会の辞
総会 1. 会計報告
2. 会の活動報告
3. その他
日時:2014 年 11 月 29 日(土)
第1部
9:30~12:20
第2部
13:30~17:30
14:00~14:30
在学生による留学報告
会場:石川四高記念館
多目的利用室 3
14:30~14:40
〒920-0962 金沢市広坂 2-2-5
TEL: 076-262-5464
「英語授業の変遷-ある英語教師の
実践を通して-」
横野 健二(S56 年卒)
研究発表会
(9:30~12:20)
15:50~16:00
休憩
16:00~17:30 講演
「私の文学漂流―Geoffrey
Chaucer から Iris Murdoch まで―」
平成国際大学教授 岡野 浩史
(S55 年修了)
9:30~10:00 西門 綾子(M2 年)
「英語学習初期における発音•アク
セントの効果的な指導と課題につ
いて」
10:00~10:30 中谷 博美(D1 年)
「Shakespeare における文末表現の
認知的分析」
17:30
閉会の辞
◆
10:30~11:00 廣田 篤(D1 年)
「No more A than B 構文における程
度差についての一考察」
11:00~11:10
休憩
14:40~15:50 卒業生の発表
「就活とその後」
戸田 菜穂子(H25 年卒)
◆
総会第1部
No. 6
18:30~20:30 懇親会
会場:あまつぼ
〒920-0999 金沢市柿木畠 4-7
(TEL: 076-221-8491)
会費:5,000 円
休憩
11:10~11:40 小林 隆(D3 年)
「聞き手視点の指示代名詞 that にお
ける認知プロセス」
11:40~12:20
川畠 嘉美(石川工業高等
専門学校・H26 年博士課程単位取得退学)
「所有と存在の認知文法」
-2-
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≪思い出、近況≫
★エリオットのことども
小川 正英
(S35 年卒、H10 年修了)
エリオットと出会ったのは、学生時代
下宿先の床の間であった。そこに、ある
日、エリオットの作品や参考書がどっさ
り積まれていた。その家のご子息、と言っ
ても、自分の先生方と同輩、四高から東
大卒、そして残念ながら肺結核のために
やむを得ず教職を断念し、研究社に勤務、
多くの辞書の編集等に携わっておられた。
その方から郷里に送られてきたものだっ
た。‘Cocktail Party’という文字が目に飛
び込んできた。これが私がエリオットを
知った最初であった。
シェイクスピアを読もうか、エリオッ
トにしようかと迷った。それでもアーデ
ン版のシェイクスピアを丸善からぼつぼ
つと買ってはいた。結局エリオットを読
むことになったのは、シェイクスピアは
だれが何を言っても当たるといったごく
単純な理由で、いつしかエリオットを少
しずつ読み始めていた。
生活面でもいろいろなことがあったが、
S27 年度入学の友人たちが『試論』とい
う同人誌を始めたので、参加させてもら
い、そこからのちは自著『エリオットへ
の序章』(英潮社新社)が生まれた。出版を
決めたのは『試論』が 20 号を数え、その
使命を終えた時であった。自分が書き続
けられたのは、谷崎であったか有名な作
家の一言によった。自分が読み返すこと
のできるものを書くという意味のことば
である。
当時は、「エリオットはこう言ってい
る」という言葉がどこにでも見ることが
できた。しかし、ある程度時間がたつと、
「エリオットはもう古い」ということに
なった。足元をすくわれるような感じで
-3-
No. 6
あった。
シェイクスピアはだれが何を言っても
当たると思ったことは思い上がりであっ
た。最近シェイクスピアの作品の登場人
物の病気の研究が行われており、医学部
と の 連 携 も 始 ま っ て い る と か 。「 ハ ム
レット」の中に「ウィッテンベルグ大学」
が出てくる。あれは比較的新しい大学で、
ルターの宗教改革とのかかわりで、当時
脚光を浴び始めていたようである。私は
古い名門校と錯覚して、それを卒論の中
心に置いた。あるとき、ストラットフォー
ド・アポン・エイボンのほとりにある、
シェイクスピアも卒業したという小学校
まで行ったが、時間の関係で、彼方に見
える劇場まで足を運べなかった。やはり
私には運がなかったのだろう。そういえ
ば、河の隅に白鳥が数羽悠々と清流に身
をまかせていたっけ。「ハムレット」とい
えば、戦後になって昭和 30 年頃、金沢へ
もある劇団が来たことがある。私の記憶
ではロイヤル・シェイクスピアだったか
と思う。私には幽霊はどんな姿で現れる
のか興味があったが、なんということは
ない、全身銀色のかぶととロボット人間
のような衣装を身に着けた人物がステー
ジを歩いていた。興行的には完全な失敗
で観客はちらほら。それ以来この種のイ
ベントは記憶にない。金沢は文化都市だ
とそのころ言われていたので、そのせい
で持ってきたのであろう。文化にもいろ
いろある。
そういえば P・エドワズ先生-もちろ
ん金大英文の-私は定年退職後院に入っ
たが、一度先生の選ばれた講義題目を変
えてもらったことがある。同じ作品を読
む場合、日本人には学部生対象と思われ
たとしても、ネイティブの方にはそれな
りの視点があるはずだと気づかなかった。
失敗だった。というのは、一度あのシャ
イなジェントルマンを帰りに車にお乗せ
したことがあった。その時、明らかにブ
ラック・ヒューモアと言える一語を発し
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て先生は清ました顔で私を見つめておら
れた。なんでもない時に予期せぬことが
飛び出すイギリスの面白さ、私はおろか
にもその機会を捨ててしまったことにそ
の時気付いた。
ところで、私はケンブリッジ-先生は
母校ケンブリッジのこととなると目を輝
かされた-を三度訪ねる機会があった。
キングズ・カレッジのゴシックの聖堂の
天井の、細かい枝を組み合わせたような
デザインは、だれがいつ制作したのか分
からないということだった。単純な組み
合わせのものはいくつもあるが、このデ
ザインは他所にはどこにもないらしい。
三度目に他のカレッジを通った時一部改
増築中であった。住居空間の広さが想像
でき、羨望の念を胸に畳んで通り過ぎた。
多くの研究者、学生が留学の機会を得て
いる現代と違って、こういうところを訪
ねることはそれだけでも私には恵まれて
いると思われたのであった。
中村先生から熱心なお電話をいただい
て、思いつくまま書いてきたが、求めら
れる英文発足時、それに続く時代等の話
題からずれてきたようだ。
最後にエリオットに帰るとすれば、今
は批評独り歩きの時代に思われる。もう
何もかも言い尽くされたのであろうか。
これも昔話になるが、毎週午後、四回ぐ
らい英文学の連続講義が上智大であった
ことがある。金沢からは午前中に出発す
る必要があり、最後の日だけ出席するこ
とができた。その時東大の平井正穂先生
がエリオットに言及して、プロテスタン
トばかりでなくカトリックも分かる研究
者が出てきてほしいと閉会のあいさつを
された。その後エリオット協会が結成さ
れ、カトリックの方が第一人者であった
時代もあった。しかし、これからは英国
国教会の立場の方がエリオットを語る時
代が来てほしいと思うこのごろである。
-4-
No. 6
★I, Speciesist:種差別主義者として
のわたし
番匠 俊介(H9年卒)
TEDという団体が提供する、各分野の
第一人者による数々のプレゼンテーショ
ンが滅法面白いので、タブレットPCに入
れて高校の英語の授業でときどき使って
いる。その1つが動物行動学者フラン
ス・ドゥ・ヴァール( Frans de Waal )の
プレゼンである。先日もその実験の様子
を3年生の理数科クラスで見せた。
この実験はサルが公正さ(fairness)の概
念を持つかどうかを見るもので、その流
れはこうである。①2つの隣り合った
ケージにサルを1匹ずつ入れ、それぞれ
に簡単な作業(実験者に石を手渡す)を
させる。②一方のサルは作業の報酬とし
てキュウリをひとかけら与えられ、これ
を喜んで食べる。③次にこのサルは、隣
のサルが報酬としてキュウリではなく、
より魅力的なブドウをもらうのを見る。
④ブドウをもらえなかったほうのサルは
いくら作業をしてもキュウリしかもらえ
ない。
さて、隣のサルがブドウをもらうのを
見た後、キュウリしかもらえなかったサ
ルはどうしたか。何とそのキュウリを食
べずに、実験者に向かって投げつけたの
だ!ブドウのことを知るまでは、キュウ
リを喜んで食べていたにもかかわらず、
である。おまけに、まるで催促するかの
ようにケージから手を出して台をばんば
ん叩いたり、鉄格子を両手でつかむ囚人
のようにケージをゆすったりと、誠に人
間臭い仕草が見られた。サルは不公平な
扱いに対して怒るのだ。
ドゥ・ヴァールのプレゼンではここで
観客が爆笑する。もちろん私も生徒も大
いに笑った。だがそんな中、ある生徒が
つぶやいた。かわいそう、と。私ははっ
とした。彼女は不公平な扱いを受けるサ
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ルに共感を示している。私はこの実験を
「interesting」だと紹介しながら実はむ
しろ「funny」だと思っていたのではない
か。サルの滑稽な姿に生徒はみな笑うだ
ろうと期待していたのではないか。仮に
これがサルではなく人間の幼児であった
ら、さらに、2人の肌の色が異なってい
たら、私は不公平な扱いに憤慨する幼児
を笑うことができただろうか。おそらく
大笑いする気にはなれなかったろう。実
験の対象がサルかヒトかで、私が感じる
おかしみは変わってくるようだ。
そう、私は種差別主義者である。実際、
人類に恩恵をもたらすなら動物実験もや
むなしと思っている。ただ、あの生徒の
一言に私は考え込んでしまった。同じ光
景を目にしても、それを笑う者とそれに
共感する者がいる。ドゥ・ヴァールの実
験は、サルの倫理観だけでなく人間のそ
れをも、実は計っているのかもしれない。
★魅力との出会い
井ノ口 由貴(H23 年卒)
私は旅行会社で働いています。旅行会
社勤務と言うと、「じゃあ修学旅行の添
乗行くの?」「旅行申し込みに行ったら
カウンターにいる?」とよく聞かれます
が、それとは違う仕事をしています。旅
行のお店へ行ってまず目に入るのは、ず
らっと並べられたパンフレットだと思い
ますが、私は、そのパンフレットを作っ
ています。数あるパンフレットの中でも、
私の所属する会社では国内旅行商品を企
画・造成しています。海外ならともかく、
国内ならインターネットを使って自分で
予約しちゃう、という方は最近では少な
くありません。そこで私たちは、単なる
目的地までの移動と宿泊の手配だけでな
く、日本各地のまだまだ知られていない
新たな旅の素材を創り出し、提供しよう
-5-
No. 6
としています。……というのが常套句で
すが、日常の業務では、赤ペン片手に校
正原稿やパソコンに向き合うことが主で
す。
出張で宮崎にいたときです。その日は
暑い中キャリーバッグを引いて、歩道の
ない道をバス停まで歩いていました。そ
こへ、後ろから走ってきた車が少し過ぎ
たところで止まり、運転していた男性が
降りてきて、「乗ってきませんか?」。物
騒な世の中ですから、やんわりと何度も
お断りしたのですが、「バス停、結構先だ
から」とおっしゃられ、ちらっと車を覗
くと助手席に奥様と思われる方も乗って
おられたので、ご好意に甘えて乗せてい
ただきました。実は後部座席にもおばあ
ちゃんが二人乗っており、キャリーバッ
グを持った私が乗るとぎゅうぎゅうでし
たが、結局、どうせ通り道だからと、バ
ス停ではなく私の次の目的地まで送って
いただくことになりました。これだけで
もかなりの驚き体験だったのですが、更
に驚いたのは、そのエピソードを宮崎の
ホテルの営業担当者に話してみたところ、
「あぁ、宮崎の方らしいですね」とおっ
しゃられたことです。どうやら宮崎では、
知らない人を車に乗せることはそれほど
珍しくないそうです。実際に、その担当
者も以前、駅前で知らない女性が車のド
アをノックしてきて「○○まで乗せてっ
てくれんね!」と言われて送ったことが
ある、とのこと……なかなか北陸では考
えられないことだと思います。宮崎とい
う土地ならではの人の魅力を、私は身を
もって知ることができました。
大学時代、私は自分の世界がかなり広
がった気がしていました。英文のみんな
と出会い、所属していたオーケストラ
サークルには100人近いメンバーがいて、
たくさんの魅力的な人達と出会えたから
です。ところが、社会に出てまだまだ知
らなかった魅力を更に知りました。
「旅」
というツールを使って日本の魅力を発信
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していくという仕事を通じて、私自身も
この先いろんな人の魅力、土地の魅力と
の出会いがあるのだろうと思うと、わく
わくします。
No. 6
れる。それらをうまく利用すれば
seminar でもディスカッションにのって
いける。ということになる。
最も驚かされたのは seminar での発言
率の高さだった。毎週のセミナーは、10
人ほどのグループで行われ、教授が進行
をつとめ全体でディスカッションをする
こともあれば、さらにその中でいくつか
の小グループに分かれ話し合うこともあ
る。いずれの場合でも、学生一人ひとり
が自分の意見を用意し、臆することなく
自発的に発言する。教授がディスカッ
ションにおいて学生に発言を促すという
光景はよく見てきたが、「さあさあその
くらいにして…」と学生のディスカッ
ションをなんとか止めようとするのを私
は初めて見た気がする。自分の考えは的
外れではないだろうか、この沈黙の中発
言するのは気が引ける、周りの学生はこ
のまま議論をせず穏便に授業を終わらせ
たいのではないか…そんなことを考えて
言いたいことも言えずにいた今までの環
境とは確実に違っていた。発言は多少的
外れでも受け入れられ、むしろ何か言わ
ないと無気力か無能のどちらかだと思わ
れてしまう。言いたいことが上手く伝わ
らないことも多々あったが、自分と同じ
ように文学を好きな人がいて、ああでも
ないこうでないと議論できることはとて
も幸せだった。
このような環境で1年間イギリス文学
を学び、シェフィールドで出会った学生
のように、「もっと学びたい」人の学習意
欲を満たす仕事をしたいと思うように
なったこと。今年の夏は県内の教材出版
会社でインターンシップをし、学習意欲
を引き出す教材、学習意欲を満たす教材
の開発について考えようと思っている。
《 留学をして 》
★シェフィールド大学留学
柳原 理沙(4年生)
私は派遣留学生としてイギリス、シェ
フィールド大学でイギリス近現代文学を
学んだ。イギリスの大学の学習環境に身
を置いた1年間で、私は本当の学習とは
何かを考える機会、そして教育という職
業分野を考え始める機会を得た。
派遣留学の最大の魅力は、正規生と同
じ授業を履修できることにある。シェ
フィールド大学の留学生の割合は比較的
高いが、私が主に属していた School of
English の正規学生のほとんどはイギリ
ス人学生である。イギリス人学生と共に
学ぶことは私にとって重要である。なぜ
なら作品やそれらが扱う自国の社会問題
をイギリス人自身がどのように捉えてい
るのかを知るのが、留学の大きな目的で
あったからだ。その目的は、翻訳家とい
う私の留学前の夢に結びついていた。
自主学習の重要さをイギリスではひし
ひしと感じた。授業は lecture と seminar
からなるがそれらは学習のほんの一部で
あり、その授業についていく、というよ
り授業でより多くのものを得るための膨
大な予習や復習などの自主学習が学習の
要である。という印象を持った。文学の
学習に関しては、授業前に作品について
の先行研究を読み、それに基づいて自分
なりに考察を持つことが求められる。教
授は必要であろう article や視聴覚資料を
ポータルサイトのようなものに載せてく
-6-
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《 留学先から 》
★フィンランド、ユバスキュラ大学から
根岸 加奈(3年生)
フィンランドに着いてから早くも一ヶ
月が経ちました。毎日、とても充実した
生活を送っています。
私は8月中旬から、ユバスキュラ大学
に留学しています。ここユバスキュラは、
人口 12 万人ほどの森と湖に囲まれた自然
豊かな小さな街です。人口の4分の1が
学生ということで、学生の街と言われて
おり、学生向けの施設やサービスなども
充実しています。
フィンランドは教育分野で高い注目を
集めています。とくに、私の留学してい
るユバスキュラ大学はフィンランド最古
の教員養成大学であり、多くの留学生が
教育分野を学ぶために来ています。私も
フィンランドの教育、とりわけ英語教育
を学ぶために、このユバスキュラ大学へ
の留学を決意し、教育学部へ所属させて
もらっています。
私は、8月下旬はユバスキュラ大学の
英語集中講座を受けていました。これは
留学生向けに無料で開講されているもの
で、一日4時間近くあります。様々な国
の学生たちとのディスカッションやプレ
ゼンテーションを通して、9月から自分
の専門分野を英語で学ぶ良い準備になっ
たと思います。そして、9月1週目はオ
リエンテーションでした。ユバスキュラ
大学はとにかく学生の学びに対して柔軟
で、授業の選択肢も非常に幅広いです。
履修登録期間は、どの授業も興味があり
悩みましたが、それぞれの授業の教師や、
学部のコーディネーターがメールなどで
懇切丁寧にアドバイスや調節をしてくれ、
やっと納得のいく授業が組めました。先
週から本格的に授業が始まったのですが、
どのクラスもとても充実しています。授
-7-
No. 6
業はグループワークやペアワークが中心
で、一人一人の発言がとても大切にされ
ています。ある英語教育の授業は一コマ
約4時間なのですが、たとえ長くても、
様々な活動が授業内で組み合わされてい
るので、ぼーっとしている暇はありませ
ん。みんなで授業を作って行こうという
雰囲気があるフィンランドの教育はとて
もいいなと思います。
また、授業の充実はもちろん、普段の
生活においても、毎日楽しく過ごしてい
ます。すでにたくさんの人たちに出会い、
毎日色んな新しい経験をしています。は
じめての寮暮らしをしているのですが、
私はフランス人とベルギー人と3人で暮
らしています。はじめての共同生活で、
文化も言語も違いますが、お互いを尊重
しあいながら平和に暮らしています。2
人とも英語圏などに留学をしていた経験
があり、ちょっとした会話でもとても勉
強になります。
また、ユバスキュラ大学には Friendship Family 制度というものもあり、これ
は週末などお互いの都合の良い時間に会
うホストファミリープログラムのような
ものです。私はとても温かい家族に受け
入れてもらうことができて、週末に会っ
たりしています。この前はコテージに連
れてってもらい、BBQ やサウナ、湖での
水泳など、フィンランドらしいことを経
験させてもらいました。
ユバスキュラ大学はとても環境が良い
大学です。学食は 2.6 ユーロで食べ放題
(日替わり)、充実したチューター制度、
年間 55 ユーロでジム使い放題・豊富な
レッスンなど受け放題のスポーツ制度、
大学や学生団体主催の様々なイベント、
そして何より充実した授業などのおかげ
で、毎日楽しく快適に、有意義に過ごせ
ています。
すでに、ここに来れて良かったなぁと
思う毎日。しかしまだまだ自分自身、改
善したいことや頑張りたいことは山のよ
金沢大学英文学会
NEWSLETTER
うにあります。あと9ヶ月、悔いのない
ように全力で駆け抜けたいと思います。
★シェフィールド大へ着きましたメール
山田 美紀(M1年)
イングランド・シェフィールドに到着し
て 10 日が経ちました。シェフィールドは
比較的大きな街ですが、中心街は徒歩で
歩き回れるほどコンパクトです。街並み
はそれほど古くはありません。以前語学
研修で訪れたスコットランド・エディン
バラでは見かけなかったような、新しく
て背の高い建物を見つけたときにはびっ
くりしました。街にはトラム(路面電車)
が走っており、20 分かけて Meadowhall
という大きなショッピングセンターへ行
くこともできます。そこまで行かずとも、
中心街でひととおりのものは買うことが
できます。でもとにかく坂が多いので、
歩きまわるのは少し億劫です。治安は比
較的良いそうです。
大学は、新入生や留学生を歓迎するた
めに、様々なイベントで連日賑わってい
ます。大学や街のツアー、週末の小旅行、
ゲームや映画鑑賞などです。大学のキャ
ンパスは街中に散らばっており、私が来
週から受ける授業は3つとも場所が全く
違っていて、迷わないか少し心配です。
大学のスタッフは、質問にも笑顔で丁寧
に答えてくれます。
今は生活に慣れようと必死な毎日を
送っています。買い物をするにも信じら
れないくらい時間がかかってしまいます。
先日は、洗濯用洗剤を探して友達と半日
さまよいました。授業は来週(9/29)から始
まりますが、各授業で読んでおくべき文
献の多さにめまいがしています。ちなみ
に、授業は希望通りの授業は1つしか取
れず、あとはその場で交渉して決めまし
た。これからの秋学期は、談話分析(希望
-8-
No. 6
通り)、中英語(予想外)、そして TESOL(予
想外)の授業を受けます。認知言語学の授
業は希望したものの取れなかったので、
余裕があれば聴講したいと思っています。
授業についていけるのか、今は不安で
いっぱいです。
先日、Japan Society で知り合ったイギ
リス人のホームパーティーに参加しまし
た。出身地を聞き合ったり学校のことを
話したりしました。私はイギリス人同士
の会話はほとんど、断片的にしか理解で
きませんでしたが、彼らの話し方や表情
を見ているだけで楽しかったです。出身
地が様々だったので、いろいろな英語を
耳にすることができました。私が留学先
をイギリスにした理由の一つは英語の
様々な方言に興味があったからであり、
多様性を間近で体感することができ嬉し
かったです。特に聞き取りにくかったの
はスコットランド出身の学生の訛りで、
ロンドン出身の学生は比較的聞き取りや
すかったです。ただ、その場にいた同じ
日本人の留学生は、ほとんど聞き取れな
かったことを「リスニングがだめだな」
と残念に思ってばかりいました。彼の専
攻は工学系なのですが、同じ日本人でも
英語に対する捉え方はいろいろあるのだ
なと感じました。英語が飛び交い、ふと
した表現に心を動かされることもあるこ
の日常は、大変だけれども楽しいです。
でも、残念ながら「聞き取れない」とい
う事実には変わりはないので、早く慣れ
たいものです。
最後に、Japan Society には、日本に興
味をもつ学生が多く集まっています。
シェフィールド大学には日本語の学部が
あり、毎年 30~40 人が入学するそうです。
Society にいる現地学生のほとんどはそ
の日本語学部の学生のようです。まだ2
年しか日本語を勉強していないのに日本
語がとても上手な学生に会い、「英語を
何年やってるの?」と訊かれたときは「10
年...」と思わず小声になりました。また、
金沢大学英文学会
NEWSLETTER
将来は日本で人命救助に関わりたいとい
う学生もいて、とても心動かされました。
いろいろなイベントが催されるようなの
で、時間があれば参加したいと考えてい
ます。
No. 6
西 まなみ
The Resemblance between
Mary Shelley and “Monster”
藤井 志帆 Asymmetric Phenomena in
English
山田 美紀 Have you ever ~ ? vs. Did
you ever ~ ?: What is the Difference?
梁
《 第 10 回スピーチコンテスト結果 》
1位
根岸 加奈
Back to the Past
2位
中出 真亜沙
My mother in Seattle
馨トウ A Contrastive Study of the
British and American Englishes:
Pronunciation, Lexical Items and
Grammar
北村 有里 An Analysis of the Meaning
of
Englishness
in
Virginia
Woolf ’s Mrs. Dalloway
後藤 知里 On Product names and Its
Advertising Expressions in Japanese and English: A Comparison
between Japanese and American
《 平成 25 年度卒業論文題目 》
阿部 久恵
The Potential of Entrepre-
neur in Developing Countries: The
Business Case Study in Kenya
荻野 泰葉 On Semantic Networks of
Package of Food Products
松田 翔平 A Study of Phrasal Verbs
with Particle On
新谷 華央里 A Study of Independence
in Pride and Prejudice
On and Off
木谷 真理子 A Comparative Study of
Japanese and English in Yukiguni
《 平成 25 年度修士論文題目 》
and Snow Country : Where Does
the Differences in Impression Come
from?
黒杉 麻衣
大 島 さ や か A Cognitive Linguistic
Study of Before as a Conjunction
廣田 篤 A Cognitive Analysis of No
Apparitions of Lafcadio
More A than B Construction
Hearn’s Retold Stories
坂本 亜希子 Types of Verisimilitude in
Hollywood Sci-fi Films
佐々木 環 The Limitation of Race and
Gender: A Study of Meridian
寺山 里穂 A Study of Differences in
Meaning of Become, Get, Go and
Grow as Copular Verbs
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金沢大学英文学会
NEWSLETTER
No. 6
《 在学生の状況 》
《 2013年度会計報告 》
<学生数>
以下の会計報告は、11 月の総会に諮ら
れます。
2 年生 10 名(男性 4 名、女性 6 名)
3 年生 18 名(男性 5 名、女性 13 名)
4 年生
9 名(男性 2 名、女性 7 名)
院生
修士課程 7 名(男性 2 名、女性 5 名)
博士課程 6 名(男性 3 名、女性 3 名)
2013 年度金沢大学英文学会会計報告
(2013 年4月1日~2014 年3月 31 日)
会計
会計監査
<過去3年間の長期留学先>
シェフィールド大学、セントラル・ラン
カシャー大学(英国)、ダブリンシティ大
学(アイルランド)、ウイリアム アンド
メアリー大学(米国)、仁荷大学校(韓国)、
ユバスキュラ大学(フィンランド)ゲン
ト大学(ベルギー)、カレル大学(チェコ)
最近の留学傾向としては、英語圏の大
学だけでなく、英語プログラムを提供し
ている英語圏以外の大学への留学を希望
する学生も増えてきました。
現在、学類3年生5名、大学院生2名
が留学しています。
<過去3年間の主な就職先・進学先>
石川県教員、富山県教員、石川県庁、金
沢市役所、福井市役所、東京都庁、金沢
大学、北國新聞、JTB、富山銀行、新星
出版、ユニクロなど
金沢大学大学院、京都大学大学院、名古
屋大学大学院など
最近は公務員志望の学生が多いです。
今年の就職状況は、全体的に良いようで
す。
正木恵美
西多喜代子
収入
(内 前年繰越金
支出
2,664,673 円
2,087,244 円)
624,853 円
2013 年度への繰越
2,039,820 円
【収入内訳】
(円)
2013 年度 KES 会費
(在学生分、総会時支払分、振込分)
260,000
維持費
213,500
懇親会費
103,500
利子
429
小計
2012 年度繰越
577,429
2,087,244
合計
2,664,673
【支出内訳】
(円)
KES28 号印刷費
315,330
KES28 号発送関連
29,970
ニューズレター発送関連
123,368
2013 年度総会関係
施設利用料
(近江町交流プラザ)
6,620
お茶代・花代・備品
10,674
懇親会費(市の蔵)
107,870
図書カード
(スピーチコンテスト賞品)21,000
ギフト券(謝礼用)
10,021
合計
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624,853
金沢大学英文学会
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No. 6
◆金沢大学英文学会役員
《 事務局より 》
会長
副会長
事務局
会計
監査
将来計画委員
KES 編集委員
広報委員
運営委員
1.
会費の納入について
同封の振込用紙にて、2014 年度会費
2,000 円の納入をお願い致します。ぜひ、
会費と共に維持費(一口 2,000 円)もよ
ろしくお願い致します。
これまでご納入頂いてない方も、当学
会の運営状況をご理解の上、何卒ご協力
のほどお願い申し上げます。
〇会費・維持費等の振込先:
ゆうちょ銀行
口座記号:00720-6
口座番号:16171
加入者名:金沢大学英文学会
中村芳久
谷内輝雄
堀田優子・川畠嘉美
正木恵美・屈莉
西多喜代子
高田茂樹、和泉邦子他
堀田優子他
柳川三千代
柿崎謙一、市川泰弘
院生委員
小林隆、高島彬、向井理恵、
中谷博美、廣田篤、西門綾子、
村澤佑介、宮澤寛子、茶谷丹午、
長谷川あおい、藤井志帆、山田美紀
2.
総会、懇親会の出欠について
同封のハガキ、または E メールにて、
総会及び懇親会の出欠を 11 月 27 日(木)
までに事務局までお知らせ下さい。その
際には、ご氏名(旧姓)、卒業(修了)年、
ご住所、(もしあれば)メールアドレスを
ご記入願います。また、ご近況もぜひお
書き添え下さい。頂いたお葉書(メール)
は、大事に保管し、総会時に閲覧できる
よう受付に置いておきます。どうぞよろ
しくお願い致します。
3.
KES29 号について
次号 KES29 号に関しまして、原稿募集
を行いましたが、数件のみでした。まだ、
受け付けておりますので、投稿を希望さ
れる方は、事務局までご連絡下さい。
◆総会プログラム・ニューズレター発送
にあたり、住所(転居先)不明の方が増
えてきております。住所変更等ありまし
たら、お手数ですが、事務局までご連絡
下さい。
《 編集後記 》
皆さま、こんにちは。
NewsLetter の第6号をお届けいたし
ました。いかがでしたでしょうか?
卒業生として社会に出て活躍されてい
る方々、留学されて海外でいろんな経験
されてる方々、お忙しい中、近況のご報
告ありがとうございました。
最近、どんな時も最後は「人間力」が
一番大切だなと実感しています。人生の
中での、楽しい経験、つらい経験、それ
らがみんな自分の「人間力」になってい
るのかなと感じています。
今年の KES 総会は、四高記念館で開催
され、少し手狭ですが当時の教室をその
まま使用します。机と椅子も当時のまま
かもしれません。金大の前身、四高の雰
囲気の中で、皆様にお会いできること楽
しみにしています。
(柳川)
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金沢大学英文学会
NEWSLETTER
金沢大学英文学会ニューズレター No.6
2014 年 11 月 1 日発行
〒920-1192 金沢市角間町
金沢大学人文学類 英語学英米文学研究室
金沢大学英文学会
代表者 中村 芳久
E-mail: [email protected]
URL:http://english.w3.kanazawa-u.ac.jp/
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No. 6