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教えて考えさせる

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再び「教えて考える」を再考する
H17 9. 20
9 月 13 日に創知協働「確かな学力」育成
部会に参加して傍聴席から議論の行方を追っ
た。15 日には新未来編集委員会があって、
その席上前半を費やしたのは生涯学習企画課
の指導主事からの趣旨説明だった。
私なりの理解では、13 日の部会のポイン
トは二つだ。一つは市川伸一氏がさらなる誤
解とした「教えて考える」は、習得サイクル
のこと、という新説?と二つは「教えずに考
えさせる」が静岡県の授業実態を反映したも
のかということだ。前者は新説と私は理解し
たが、市川伸一氏が「さらなる誤解」と述べ
られている以上、新説と感じた私はこの言葉
を誤解していたということになる。
そして、前述した 2 点のポイントに教育行
政の施策と各学校の授業実践、つまりは各学
校の創意工夫という教育課程実施にかかる主
体性との間に新たな緊張関係が生じつつある
という状況認識がこれらを包含している。
市川伸一理論のベースにあるのは授業を習
得サイクルと探求サイクルの接点において学
習の 2 サイクルのバランスとリンクを主張さ
れているところにある。この点に関しては、
昨年の本稿 1 月 31 日号で「教えて考えさせ
るを再考する」で論究している。
私自身は習得サイクルと探求サイクルの間
に授業を置くことは、授業過程においても、
単元においても、知の総合化を図るという総
合的な学習の時間の創立の趣旨からも、習得
した学力を活用することで、より確かな学力
の定着を図るという学びのメカニズムの上か
らも、説得力を持った理論として評価もして
いた。加えて、学校週 5 日の学びを核に週 7
日を豊かに学ぶ子どもをはぐくむという学校
週 5 日制の理念にも合致しているし、市川氏
が、議論はあるにしても、学校外教育のあり
方に具体的な提案をもって迫っているという
点で期待もしていたところでもある。
しかしながら、この習得サイクルと探求サ
イクルと「教えて考えさせる」が以て非なる
ものというのは、同稿でも指摘したことで、
「教えて考えさせる」は指導の論理。習得サ
イクルと探求サイクルは学びの論理で、指導
と子どもの学びの間には指導者が研鑽すべき
大変な距離が存在しているということについ
て述べてきた。
「学び」を否定されるなら別な話だが、
「未
来をひらく子供」がそうであるように学校の
場で教師の指導のもとに学びという主体的な
学習者の行為を成立させ、知を獲得していく
ためのアプローチの仕方が議論され研究され
て今日の授業研修を形作っている。
だから「教えて考えさせる」についての理
論上の危うさは、指導の論理である「教えて
考えさせる」ことと子供の学びの論理である
「習得・探求サイクル」を単純に置き換えた
ところにあると私は思ってきた。
今回の提示された「さらなる誤解」は私が
感じていた、この危うさの根底を打ち消した
ように見えるが、むしろ「教えて考えさせる」
の危うさを倍増させてしまったように感じる
のである。
「教えて考えさせる」は習得サイクルにつ
いて述べたもの、しかも習得サイクルは義務
教育では授業の 7 割だと市川氏は主張され
る。「教えてから考えさせる」は授業の手順
を説いたものだというのだ。
どうも腑に落ちない。
腑に落ちない第一は、もし、市川氏がはじ
めから習得サイクルに限っての「教えて考え
させる」を主張されていたとしたなら、静岡
県の教育関係者は確かな学力育成会議の提言
でも県版カリキュラムでも誤解したままで教
育現場にその浸透を迫ったことになる。その
端的な光景があの席上鈴木教育長自らが誤解
を語り頭を下げたことであろう。
二つは、この主張は、「習得サイクルと探
求サイクル」を「教えて考えさせる」に置き
換えたものという考え方とは大袈裟に言えば
180 度異なるものと私は主張したい。
習得と探求のサイクル論は授業がその接点
に置かれているところに特徴と新しみがあっ
た。基礎的基本的な内容の確実な定着は、学
習内容の習得と考えてもよいが、そこに探求
を絡ませることで学んだことを活用するとい
う新しい視野を授業に与えることになる。こ
の点は県版カリキュラムも踏まえている。
教えて考えさせるも、それが習得と探求の
双方にかかる概念だとすれば、そこには、指
導と学びの間に距離があるとはいえ、習得と
探求のサイクルを指導の概念から述べたもの
という理解ができないわけではなかった。
しかし、「教えて考えさせる」を「習得サ
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イクルについて述べたもの」とするなら、授
業が学習内容の習得を目指していることは当
然のことで新しい概念でも何でもないことだ
から、その授業が目指す学力の定着にペタリ
ンが象徴するような授業のあり方、つまりは
方法を提案したことになるのである。
このことの重大性を果たして関係者は気づ
いているのであろうか。
この一連の市川氏の提案がどうも私には理
解できない。習得とはペタリンを貼ってその
解決を図ることで不明な点を明らかにして教
科書に書いてあることを理解することを言う
のであろうか。この理解における情報処理の
メカニズム促すことを「教えて考えさせる」
と表したいのであろうか。どうもそれも違う
ようだ。教えるを広義に用いて教科書に書い
てあることを納得させてから考えさせるとし
たら、「考えさせる」は探求と同義ではない
のか。そうだとすれば、習得と探求が授業の
中に存在しているということで習得が 7 割と
いうことにならない。
私にはますます「教えて考えさせる」が理
解できない。
そもそもが学習者において習得と探求はセ
ットになったもので、教科書の意味に止まる
子供、習得だけに止まる学習者は皆無に近い
はずである。それは習得自体が情意を伴って
いるからで、分かるということは分からない
に出会うことであり、分からないは分かるこ
との入口なのである。その過程を学習者自身
が整理していくことは知の文脈をより確かな
ものとしていくことであり、学習を主体化し
ていくことでもある。だから問題解決型学習
が提唱されている。だからこそ学習者のモニ
タリングが重要でメタ認知が大事なのであ
る。(もう一度)そもそもが問題解決型学習
は、新学力観と称する前学習指導要領改訂以
降示された学力観と密接不離な関係にある
し、現行学習指導要領全体がめざしている「生
きる力」の育成とこれまたセットになったも
ので、そこに日本の子供たちが抱えている学
力構造の克服や 21 世紀の展望から育成が求
められている資質や能力をはぐくもうという
意図が込められている。そこに授業における
人づくりの具体的側面が存在し、静岡県なら
こころざしを持った子供をはぐくむための授
業からのアプローチが可能になるのである。
これは市川氏が専門分野といってよいであ
ろうが、学び手の能動と受動の脳の働きの差
異がある。東大名誉教授の畑村洋太郎氏が述
べているように受動的な学習に脳は拒否的に
なるのである。そうでありながら、なぜ「教
えて」を強調されるのかが私には全く分から
ない。
またしても「そもそも」。寡聞にして恐縮
だが静岡県東部の授業課題は、「教えずに考
えさせる」授業ではなく、問題解決型学習に
ならない「学びをはぐくまない」授業であっ
て、教えずに考えさせる授業など見たことが
ないのである。
そして、もっとも大きな問題として危惧し
ているのは、「教えて考えさせる」が方法論
になることで、教育行政が学校の現場で行わ
れている授業実践に施策に沿った統一性を要
求することになるということである。
国語における一読総合法や三読法、向山洋
一氏の旧教育技術法則化運動等々、方法論は
現場の実践から様々なものが編み出されてき
ているし論争も生じてきている。しかし、そ
れらは現場に選択権がある理論であり方法論
であって学校教育関係者の研修に負うところ
が大きいものとして位置付いていた。授業は
こうすべきだと迫ってはいないのである。
教育行政が授業スタイルの一つを提示しそ
れを基調とするとしたときは、どういう意味
をもつか。その影響とその意味をどれ程勘案
されているのであろうか。
例えば、富士市立岳陽中の授業実践のよう
に指定でもなく積み上げてきた自主的研修や
実践に否応なく変更を迫ることになろうし、
各学校が温めてきた授業構想を根底から揺る
がすことにもなるのである。なぜなら、教育
委員会は公立学校を統括し指導機関として存
在しているからで、その施策に反旗など翻す
ことはできないのである。だから使命は重い。
現実に指導過程に習得の過程と探求の過程を
設定している学校が現れ、「教えてから考え
させる」授業の実践が始まりもしている。こ
れは、公立学校としてはむしろ当然なことで、
静岡県が基調としたことはそういう意味を有
しているのである。
静岡県の公立学校の授業ではどこでも当た
り前のように教科書の拡大コピーにペタリン
が貼られて教科書を理解させる授業が行われ
ている。
「雪国はつらいよ条例」が疑いもなく定着
していく。気味が悪いし、笑い事ではない。
ベルリンの壁が崩壊しようと揺るぎない学
力の質(注)の育成に努めてきたのが、この 20
年の教育改革であるし、授業改善ではなかっ
たのであろうか。
ふー疲れた……。
(注)ソビエト崩壊による国名変化などの変化に対応していける学力
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