あらすじ - Stageplay

序幕
文無しの酔いどれ、スライがパブの前で息巻き、気絶していたところ、通りかかった一行
に悪戯を“仕掛け”られる。金持ちの邸宅に担ぎこまれ、今狂気から正気へと目覚めつつあ
る裕福な身分の者であると信じ込ませられる。呆然とした夢うつつのスライは、休む様に
諭され、またもや眠りに落ち、そして、夢をみる…その夢がこの『じゃじゃ馬馴らし』と
いう芝居。
第一幕
ルネッサンス期の華やかなイタリア、パドヴァが舞台。ピザの大商人の息子ルーセンショ
ーはパドヴァに学問と教養を身につけようとやってくるが、ビアンカという淑やかで、美
しい娘に一目惚れする。彼女はバプティスタという裕福な名士の妹娘で、すでに二人の求
婚者、老人のグレミオと若者ホーテンショーがいる。姉キャタリーナは美人で独立心の強
い女性だが婚期を逸しかけている。理不尽な相手とみると間髪をいれず“雷”の様に喚き立
てるため、人は彼女を「じゃじゃ馬」娘と呼ぶ。困った父親は姉娘が夫を見つけるまでは
妹は「さしあげられない。」と宣言。グレミオとホーテンショーは“じゃじゃ馬娘”に夫を探
す算段をしようと手を組む。また、ルーセンショーはビアンカのラテン語の教師に変装し
彼女に近づこうともくろむ。
(フラッシュバック)
ペトルーキオ率いるイタリア軍とトルコ軍との海上戦の場面。戦
いはイタリア軍の勝利に終わるが、敵トルコ軍の大量の金貨を海に落としてしまう……。
愕然とするペトルーキオ。
ピザからパドヴァにやってきたペトルーキオ。友人ホーテンショーにキャタリーナとの結
婚話を持ちかけられ、バプティスタが用意している彼女の持参金について聞くと、願った
り、適ったりと、二つ返事で承諾。「その女が荒れ狂うアドリア海のように荒々しい気性」
と聞いてもびくともしない。
第二幕
バプティスタの家で、キャタリーナは男たちが自分に夫を探そうとしているに腹を立て、
妹をなじっている。
グレミオがラテン語の教師に変装したルーセンショーをつれてやってくる。音楽教師に変
装したホーテンショーとペトルーキオも登場。
ペトルーキオがキャタリーナと結婚した
い旨を話すと父親のバプティスタは驚くが、ペトルーキオが名家の出である事を知ってい
るので、拒否はしない。バプティスタはルーセンショーとホーテンショーを娘達の勉強に
差し向けるが、ホーテンショーが壊れたリュートを頭にかぶり、ほうほうの態で戻って来
る。キャタリーナにリュートで殴られたのだと聞き、ペトルーキオはますますキャタリー
ナに興味を持ち始める。
そこで、父親との持参金の話しに入り、二人は誓約書のことまで話しが進む。父親は「肝
心なもの」「娘の心」が大事だと訴えるが、元軍人のペトルーキオは「そんなものは無視」
していいと、自分は“烈風”でなにものにもびくともしない、「お嬢さんの炎など、一吹き」
と自信満々。そこに現れたキャタリーナはすぐさまペトルーキオと、互角の力で白熱した
言葉の一騎打ちを始める。然し、彼は巧みな懐柔策でキャタリーナの「じゃじゃ馬ぶりは
世を欺く手段にすぎない。」彼女は「暁の女神の様におだやか」、
「ハシバミの枝のようにす
らっとしている」とほめたたえ、無理矢理に結婚式の日取りを決めてしまう。
第三幕
ビアンカの部屋でルーセンショー(ラテン語の教師に変装)とホーテンショー(音楽の教師
に変装)がそれぞれの分野で競うが、勝ち目はルーセンショーに。彼はラテン語を教えなが
ら、巧みに愛の言葉を入れ込んでしまう。ビアンカもこれに反応し二人は恋に落ち、ホー
テンショーの擬似音楽レッスンは失敗に終わる。
ペトルーキオとキャタリーナの結婚式の日。バプティスタ、キャタリーナ, グレミオ、ビ
アンカと(変装した)ルーセンショーは花婿を待つがなかなか現れず、キャタリーナは皆
の前で恥をかかされる。やっと到着したペトルーキオの異様ないでたちに皆は肝をつぶす。
召使のグルミオが病気もちの馬の格好で現れ、それに跨るペトルーキオはボロボロの服や
ブーツ、錆だらけの剣を身につけている。あげくに結婚式では神父を罵り、殴るしまつ。
また花嫁の首をつかみ、すさまじい音をたててキスをし、教会中に鳴り響かせる。
また、花婿のペトルーキオは披露宴には出ないと言い出し、花嫁のキャタリーナは同行す
ることを拒否する。
「いいなりになっていたら、ばかにされるから」と意地をみせるが、花
婿は凶暴になり、「この可愛いいケイトは俺が連れてゆく。」俺の「畑だ、納屋だ、馬だ、
牛だ、ロバだ、俺のなんでもかでもだ。」
「グルミオ、剣をぬけ。」とさけぶ。こうなると父
も降参するしかなく、ビアンカさえ「気違いのお姉さまには、気違いの旦那さま、似たも
の夫婦ね。」とさじを投げる。
第四幕
ペトルーキオの軍基地、グルミオがカーティス(他の召使)に、ペトルーキオからいかに酷
い扱いを受けたかとこぼしている。キャタリーナが馬から落ちたのに助けず、喧嘩になり、
グルミオのせいにされ殴られ、馬は皆逃げてしまったと。
そこへペトルーキオがやってきて召使い達に怒鳴り散らす。キャタリーナは召使い達をか
ばうが、ペトルーキオは食事を拒み、不機嫌なまま寝室に入り、キャタリーナを呼び入れ、
彼女が疲れきって眠りにつくまで難癖を言い続ける。
一方、バプティスタの家の前でグレミオと(変装した)ホーテンショーがビアンカとルーセ
ンショーが恋仲になっているのを盗み見する。
そこで、ホーテンショーは変装をとき、
グレミオと相対し、二人ともビアンカをあきらめることにする。ホーテンショーはある金
持ちの未亡人と結婚することに決める。こうして恋敵が消えたので、ルーセンショーはビ
アンカと晴れて結婚できるわけだが、二人の父親同士が財産を調べた上で婚約を取り決め
る必要があるので、ルーセンショー自身が父親ヴィンセンショーに変装するという苦肉の
策を講じる。
ペトルーキオの軍基地。食事も与えられず、睡眠不足のキャタリーナは朦朧としているの
に、ペトルーキオは仕立屋をよび、難癖をつけ、キャタリーナには似合わないガウン、帽
子を注文し、里帰りを提案する。不都合な出発時間に反対するキャタリーナを叱り付ける
ので、聞いていた召使グルミオも「太陽にまで命令する気だ」とあきれはてる。
パドヴァにて。変装をといたルーセンショーはビアンカの父に正式に結婚を申し込み、自
分はピザの裕福な家の出であることを告げると、バプティスタはヴィンセンショーという
有名な名前は承知だが、父親同士の直接の交渉で持参金を決めるのが正当なやり方だと主
張する。
やがて、自分の父親ヴィンセンショーその人に変装したルーセンショーが出現、
多額の持参金を払う書類に署名する。
バプティスタが去るや、急いで変装をといたルーセンショーはひそかにビアンカと二人だ
けで教会に行き、結婚式をやり遂げようとすべての手はずをととのえて、その場を去る。
成り行きへの一抹の不安をかかえながら…….。
パドヴァに帰る途中のキャタリーナとペトルーキオ。ペトルーキオは太陽を見て月だと言
い張り、彼女が同意すれば避難する。キャタリーナは折れ、
「なんでもいい、とにかくあな
たの言うとおりのもの」と同調する。次に老人(実はヴィンセンショー)が現れるとペト
ルーキオは「美しいお嬢さん」と呼びかけ、妻が同じくそう呼びかけると、今度は老人を
なぜそう呼ぶのか、となじる。老人がパドヴァに息子ルーセンショーに会いにいくと聞き、
奇遇に喜んだ老人とペトルーキオ一行は、そろってパドヴァへと旅を続けることにする。
第五幕
ペトルーキオ、キャタリーナ、ヴィンセンショー、グルミオの一行がルーセンショーの家
に到着。ビアンカとルーセンショーは結婚したばかりで二人は寝室の窓から、ヴィンセン
ショーとペトルーキオたちがやって来たのを見る。これは一大事と、ルーセンショーはま
たもやヴィンセンショーに変装して下りてくる。ここで、本物と偽者が同じ格好で相対す
ることになった。偽者のヴィンセンショー(ルーセンショーの変装)が自分こそ本物のヴ
ィンセンショーだと名乗りをあげたので、今度はペトルーキオが混同し、本物のヴィンセ
ーショーが実は偽者だったのではないかと疑う。これに乗じて、(変装した)偽者ヴィンセ
ンショーは気の毒な本物ヴィンセンショーを偽者の悪者と責め立てる。
めくるめく混乱の渦から離れ、ペトルーキオとキャタリーナは一切のさわぎを観察する。
騒ぎを聞きつけたバプティスタも現場に姿を見せ、ヴィンセンショーを監獄へ送りこもう
とする。ここで、ことの真相を見極めた、ペトルーキオはヴィンセンショーが偽人物でな
いと証明し、ルーセンショーこそ他人の名前を騙る偽者である、と断言する。ルーセンシ
ョーは仮装をとき、本物の父親に許しを乞う。混乱したヴィンセンショーは先ほどの仮装
のルーセンショーは一体何者なのか?と疑惑をもつ。また、バプティスタもラテン語の教
師が実はルーセンショーだったと分かり唖然とするが、ルーセンショーがこれはすべてビ
アンカへの愛がさせたことだと、許しを乞う。二人が秘密で結婚してしまったことにバプ
ティスタは不満だがヴィンセンショーがなだめる。混乱が一段落したところで、キャタリ
ーナは「往来の真ん中で?」と躊躇いながらも、夫にキスをする。
ルーセンショーの家で3組の新婚カップルが祝宴を始める。
ビアンカとルーセンショー、
キャタリーナとペトルーキオ、ホーテンショーと(結婚したばかりの)未亡人。
「やっとの
ことで私たちの不協和音も調子が会いました。」とルーセンショーのお祝いのスピーチが始
まるが、一同は「じゃじゃ馬」というテーマを中心にあてこすりをし、宴会の雰囲気は楽
しそうでない。キャタリーナと未亡人はお互いに皮肉を言い合って、会話もはずまない。
ビアンカ、キャタリーナ、未亡人は退席する。その後でビアンカを射止められなかったホ
ーテンショーをペトルーキオが笑いものにすると、ホーテンショーも、ペトルーキオは「じ
ゃじゃ馬」と結婚する羽目になったと、やりかえす。夫たちは妻の従順テストを提案、呼ば
れてすぐに来るのは3人の新妻のうち誰かで、賭けをする。
召使に呼ばれてもビアンカと未亡人は言い訳をして現れない。キャタリーナはすぐにやっ
てきて、他の二人は暖炉の側にいて腰をあげないという。
ペトルーキオはこうして賭け
にも勝ち、キャタリーナが他の二人を連れてくると、この二人に「妻の義務とは何かを教
えてやれ」と命令する。そこで彼女は滔々と弁じるのだ。夫は妻にとって「主人であり、
王様であり、支配者だ…」「やっとわかりました、私たちがふりまわす槍は/藁同然、力は
弱く、弱さはくらべるものがなく、/ いくら強そうに見せかけても実は逆だってことが….」
と。感極まったペトルーキオは「ああ、それでこそ女!キスしてくれ、ケイト、さあ」と
言い、二人の男には「賭けに負けてさんざんだったな。」と自分がキャタリーナとのパワー
ゲームにも、またこの賭けにも勝ったことを誇示し、皆には「いい夢を」と、言いながら
退場する。
フィナーレ
夢から覚めたスライはパブの側の道端に放り出されている。パブのおかみはスライをみつ
け、早く家に帰らないと女房に怒鳴られるよ、と言うがスライは未だ夢心地で「女房なん
て怖くもない、だってさっきの夢でガミガミ女を馴らす手をすっかり知ったのだから」と
やりかえす。
とたんに、腕まくりをし、棒を手にしたスライの女房が現れ、スライを掴
み、ドスの効いた声でわめく。「スライ!」
(作成:渡辺三千代
編集:井上和子)