PEG管理について

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PEG
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PE
大阪市立総合医療センター
消化器センター部長
西口 幸雄先生
日本ほどPEGがうまく管理されている国はない。近年PEGの適応が問われ、PEGを行うこと自体にバッシングを受
けているが、PEGほど安全で効率のよい優れた経腸栄養投与ルートはない。PEGの適応は栄養療法そのものの
適応であり、栄養療法の適応は患者自身の状態、おかれた環境、おかれた時期などで変化し、必ずしも一様には
論じることはできない。
ここでは適応はさておき、日本でうまく管理されているPEGについて、その方法を概説する。
カテーテルに関する管理
2)
カテーテル周囲炎 1)
カテーテルの維持
カテーテル留置部周囲の皮膚は、栄養剤の漏れなどに
カテーテル維持のために、栄養剤注入前後の微温湯注入、
よって皮膚びらんを起こすことがある。
このような瘻孔周囲
専用ブラシによる洗浄、酢水のロックによるカテーテル内の
炎は、PEGの方法によって発生頻度が異なり、近年普及して
保清などが行われている。栄養剤はカテーテル内にこびりつ
きたイントロデューサー変法は瘻孔周囲炎の発生を大きく
きやすいため、容易に細菌増殖の温床となる。そのため、酢
減少させた。口腔内の雑菌が瘻孔に付着しないので、カ
水やべリチーム上澄み液などを注入しロックすることで管理
テーテルを瘻孔に密着させる必要がないためであろう。皮
されている施設が多い(図1)。最近、薬品の酢酸の稀釈液を
膚のびらんは、痛みの原因となり、瘻孔拡大にもつながるこ
用いて小腸壊死を来した報告があったが、本来、用いる酢水
とで患者に不利益をもたらすため、適切な処置が必要であ
は食用酢の稀釈液でなければならない。注意喚起したい。
る。処置は洗浄が第一で、皮膚・排泄ケア認定看護師がいる
図1 酢水によるチューブ型カテーテルの清潔保持
5ccの酢水を シリンジに充填
小キャップを
閉める
酢水の注入
カテーテルを
クランプ
クランプしたまま クランプしたまま
シリンジをはずす キャップをする
酢水の作り方 食 用 酢 : 水 = 1 : 10
PDNセミナーより
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病院ではその対処にもあたっている。時には皮膚保護材の
貼付も有効である。
3)
カテーテル交換
カテーテルは毎日使用するため、栄養剤の注入によって
図3 半固形化経腸栄養剤の特徴
胃ー食道逆流が減少
栄養剤半固形化
汚染され、礫化する
(図2)。そのため、定期的な交換が必要
嚥下性呼吸器感染症の減少
一度に注入ができる
である。交換の際は、経口あるいは経鼻の内視鏡、
レントゲ
ン透視や瘻孔内視鏡を用いるなど様々な方法があるが、大
介護者の負担が軽減
座位保持が不要
事なことは交換後の確認である。PEGの瘻孔は脆弱である。
カテーテルの腹腔内誤留置は起こりうる合併症であり、肝に
栄養剤胃内停滞時間延長
命じておく必要がある。正しくカテーテルが胃内に再留置さ
れていること、胃内容物の逆流がないか内視鏡やレントゲ
下痢の予防
瘻孔からの栄養剤
リークの改善
体位変換の継続
褥瘡悪化の予防
ン透視で確認することがきわめて重要である。
図2 汚染・礫化したカテーテル
がある。放置すると肺炎の原因となるため、臨床上極めて注
意が必要である。栄養剤を注入すると唾液の分泌が増え、唾
液誤嚥が増えるため、栄養剤の胃食道逆流による肺炎と鑑
別する必要がある。 これらも注入速度の調整や体位を起こすなどの対処法が
あるが、
ここでも半固形化栄養剤の投与である程度の対処
が可能である。ただし半固形化栄養剤といっても、ある程度
の粘度を有するものでないと効果がない。様々な方法で胃
画像提供 大阪市立総合医療センター 西口 幸雄 先生
からの投与を行っても胃食道逆流が解決しない場合は、胃
瘻の腸瘻化(PEG-J)などで対処する。
栄養剤注入に関する管理
その他
1)注入漏れ
PEGからの栄養剤の投与は患者の栄養維持には不可欠
瘻孔拡大、胃内容物の排泄遅延などが原因で栄養剤が瘻
である。次のステップは再び経口摂取が出来るようになる
孔から漏れる場合がある。注入時の体位の確認、栄養剤の
ための嚥下訓練であり、あくまで食べるためのPEGと考え
投与速度の確認で対処する場合が多い。ただし、近年は栄
たい。そのためには、口腔ケアやSTによる嚥下指導が不可
養剤を半固形化することで、栄養剤の漏れに対応する方法
欠である。病院に入院しているときにはこのような指導が
も有効で普及してきている
(図3)。 なされているが、在宅や老健施設ではほとんどなされてい
2)下痢
ないのが現状である。病院、開業医によるシームレスな栄
下痢は、栄養剤の注入速度が早すぎたり、患者の腸管の
養治療が望まれる。
不耐性、栄養剤の浸透圧などによって起こる。注入速度の調
整や、栄養剤の変更で対処する。半固形化栄養剤は下痢対
まとめ
策にも有効で、食物繊維が寄与しているとされている。
PEGはカテーテル管理と患者にあった栄養投与を上手に行
3)胃食道逆流
い、
うまく使いこなしてあたり前である。
それにはPEGと栄養剤
栄養剤を胃に注入した際に、胃から食道に逆流する症例
の特徴や管理、様々な対処法を熟知しておく必要がある。
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