08 年 3 月、アメリカ・ブラジル・フランスへの視察・研究旅行 1.アメリカ編 3 月 3 日(月) ポートランド市内とワシントン州で 8:00、アメリカの冷凍食品会社の幹部にホテルで迎えてい ただいた。 森林地帯を切り開いた敷地 2 万坪に、建物面積 2000 坪 の工場と事務所棟がたっている。将来の企業成長を考えて も十分の敷地だ。 事務所棟の一角で、タイに出張中の社長に替わって N02 の生産本部長と CPA の財務部長から会社の紹介と業績の 説明を受けることができた。 00 年に買収して後現在までの事業の歴史、製販一体でア メリカ市場に向けて日本食の冷凍食品の商品・ブランドを中心に開発。販売・マーケティングも自社 で。東京本社からは、Local Autonomy を大いに与えられ、自分たちで自活できてかつ業績を伸ばす ことが使命だとのこと。 その後は工場見学。中でも、横一列に繋がっている美味しい白飯を炊くプロセスが感動的だった。 この機械を駆使して炊き上げるノウハウが、この会社がいくつか持っている競争優位性の一つだ。 有名量販店、競合するアメリカの食品会社などに、白飯だけを供給している。まもなく有力な競争相 手がアーカンソー州に現われるようだ。対抗戦略はいかに。ワクワクどきどきする競争戦略の構築 だ。 原材料から自製・内製するか食材商社を通して仕入れるが、全 ての原材料について生産者までトレースできる安全・安心体制を 敷いている。 昼食は会社の主要商品三ラインの試食兼用。チャーハン・ライ ン、餃子・シュウマイライン、丼ライン、ミールキット・ライン。多くの 商品を少しずつ味見しながら満腹になった。 午後は河を渡ったワシントン州とポートランド市内の市場視察。 SAM’s Club, Trader Joe’s, COSTCO, Wal-Mart, UWAJIMA など を覗き、その会社の商品の取り扱い・陳列状況を視察。各店の顧 客ターゲットの違いに合わせた取り扱い商品の違いを観察しつつ In-store Marketing の面白さ・新しい動きなどの意見を交換。 日本食が本当にアジア系はもちろんのこと、白人や黒人社会に もどんどんと浸透していることを実感した。この消費者ニーズ・ウォ ンツの拡大・深化にこの会社はアメリカでの加工食品事業の未来 を賭けている。 帰路もう一つの別会社で原料供給会社に立ち寄った。契約栽 培でコーン、パンプキン、たまねぎなどを仕入れ日本のグループ 会社に供給している。国際サプライテェーンの源流だ。 明日はニューヨーク入り。6 年ぶりだ。朝 7:00 のフライトに合わ 1 せて 22:30 に就寝。 16:00 頃以降、間歇的に睡魔が襲う。歩き話すことでそれを遠ざける。しかし移動中の車の中は、 文字通りの揺りかごだ。ついつい舟をこいでしまった。 夕食は Sea Foods をオヨバレした。えび、かに、かきの後の Main に真鱈のフライを楽しんだ。地ビ ールと赤ワインでご満悦だ。 3 月 4 日(火) NYC 到着(JFK)は 3 月 4 日(火)。マンハッタンの KITANO ホテルにチェックイン。夕食をアメリカ X 社の社長 S さん、先任副社長 I さん、新事業開発担当副社長 H さんと一緒した。H さんとは 03 年に インドネシアでお目にかかって以来の再会。その 10 年くらい以前は、東京でいくつかのマーケティン グ関連のプロジェクトに一緒に取り組んだ間柄だ。 夕食のべニューは六本木にあるような焼き鳥レストラン。客層は日系が半分くらいであとは多国 籍の人たち。焼き鳥コースをキリン生と焼酎一刻者で楽しんだ。〆はざるそば。店内はさながら日本 だ。外は比較的暖かいマンハンッタンのど真ん中。酔い覚ましの散歩をしつつホテルに戻った。 3 月 5 日(水) 5 日は一日勉強に集中。 アメリカでのオペレーションのプレゼンテーションのあ と市場視察。数店の量販店やドラッグストアを訪問し、X 社を始め日系企業の食品メーカーのアメリカでの活躍ぶ りを店頭で観察した。殆どありとあらゆる日本食の商品 が NYC や NJ の量販店で大量に陳列されている。現地生 産の加工食品が冷凍・冷蔵の売り場を大きく占め、日本 からの輸入品は乾きモノが中心だ。KIKKOMAN のスープ 類 、 AJINOMOTO の 冷 凍 食 品 、 ITOEN の 緑 茶 、 HOUSE や MORINAGA の豆腐や豆乳などの露出度が高 い。 X 社のアメリカでの B2B と B2C 事業展開が立体的なイ メージとしてかなりしっかりと頭に入ったと思う。とくに消 費財の分野は、今後の成長機会が大きく、長期競争力 がある事業モデルをどのように構築するのかが課題と観 察した。X 社では、当然のことながら、本社にはアメリカ 駐在の担当部長を置き、NYC には海外経験の長いスタ ッフを配置して、アメリカにふさわしいビジネス・モデル構 築を進めている。 日本を始めアジアの食が急速に浸透している食生活の多様化を追い風に、「日本の味・日本の 食」の工業化で他に類を見ない技術力とノウハウをコア・コンピタンスにして、「日本らしさの心を維 持しながら」アメリカ人の食生活に受け入れられる商品ライン、品種、味付けなどを他社に先んじて 市場導入してリーダーシップを握る。一言で言うと、そこに X 社の狙いがあるように思う。私自身は、 ブラジルやアジア諸国での X 社のビジネス・モデルとも比較しながら普遍化できるような論理を組み 立てたいと強く思った。 夕食は、ハドソン河を挟んでマンハッタンの夜景を展望できる Water Front にある瀟洒なステーキ レストラン。今回二度目のミディアム・レアをいただいた。お付き合いいただいたお三方との談笑も楽 しくついワインを飲みすぎ気味でした。 2 夕食後、Newark 空港へ。Continental 034 で夏の Sao Paulo へ。 「アメリカ X 社の皆さん、ポートランドの冷凍食品会 社の皆さん、忙しい中で連日多大な便宜を図っていた だいてありがとうございました」。せめてお礼の一端とし て、記録に残しておきたい。 昼前になった。昼休憩に、スポーツ不足を補うため にカミサンと一緒に散歩に出かけよう。オペラ座の近く のラーメン屋はまだ営業しているだろうか。 2.ブラジル編 3 月 6 日(木) サンパウロ到着は 3 月 6 日(木)朝。 X 社の総務担当 N さんのお出迎えを受け、ホテルにチェックイ ン後に昼食。二人の注文はきつねうどん一つと焼き飯一つ、それ を二人でシェアすることにした。で、焼き飯は日本の三人分くらい の量があって、N さんにも食べていただいた。それでも余った。 滞在期間中にあちらこちらの店で実感した「大食のブラジル人」。 一人前の量が日本の二~三人分はある。 昼食後は X 社の南米本社へ。そこでブラジルを中心に南米 事業の 50 年の系譜を教わった。全体像は社長の S さん、製 造・生産は副社長の M さん、食品事業担当役員の K さんから 営業・マーケティングを中心に業績の過去・現在・将来計画を 説明していただいた。 ブラジル事業が 00 年以降、倍々ゲームで sky-rocket のよう に急伸していくのは感動的ですらある。X 社はブラジルで成功 している日系企業の代表であるが、「そのわけ」を納得した。日 本事業やアメリカ事業との相対比較で、X 社のグローバル展開 の成功モデルを一般化・普遍化(考え途上だが)する目途がたった。 初日の勉強終了後は市場視察。いくつかの量販店で、それ ぞれの商品カテゴリーのシェルフで X 社商品が一番いい場所 に大量に陳列されているのを確認した。商品の市場での勢い がシェルフに現われている。各商品ブランドのパッケジの Visibility が高い。 市場視察の折に、かつて東京で仕事を一緒した O さんが案 内役をしていただいた。現在はブラジルのマーケティング部長 である。 夕食は幹部さん三人組みと一緒に日本食のコース。胃にやさし いメニューの配慮をいただいた。しかしアルコールは、ビール、酒、 そして現地のカクテル「ピンカリーナ」と続いた。ピンカリーナはよほ どの人でも二杯で止まりだとか。私は一杯を空け、二杯目は少し口 をつけた程度。 3 ご一緒した幹部さんは「仲良し三人組」で、豪快に話し・腹をかかえて笑う。場が盛り上がりっぱな しで、勢いにまかせてカミさんは M 副社長が腕に巻いていた「魔よけの腕輪」をプレゼントしてもらっ ていた。気づくと 23:00 時近かった。 3 月 7 日(金) 3 月 7 日(金)はサンパウロから車で 2 時間の快適ドライブでリメ イラ工場へ。高速道路がなだらかな起伏に満ちた平原地帯を切り 裂いて走っている。平原地帯といったがそこは殆どサトウキビとコ ーンの畑で覆われている。 サンパウロ州だけで日本の本州とほぼ同じ面積で、それが全て こんな平原だという。途方もない広さ・大きさにうなるばかり。 リメイラ工場には、X 社のグローバル基幹商品の三分の一を生 産する建物群が集中しているコンプレックスだ。また急成長してい るブラジルの消費者向け事業の商品も全てここで生産している。約 1100 人の従業員が働いている。 敷地全体が、亜熱帯地方独特の樹木や草花類を植え込んだ公 園のようだ。敷地は 150 平方キロメートルで、ブラジルのビジネスが 今の 10 倍になっても十分に生産設備を増強するスペースがある。 消費者向け商品の生産ラインをじっくりと見学させてもらい、社員 食堂での昼食。その後は、この工場を世界の核とした基幹商品の グローバルなサプライ・チェーン展開を詳しく伺った。この工場は、 ブラジル国内の販売だけでなく、全世界に広がる X 社の商品サプラ イの一大基地になっている。 帰途、高速道路の際にサトウキビを搾ったジュースを飲ませる屋台に立ち寄った。絞りたてのジ ュースは見てくれはあまりよくないが意外と上品な甘みがあって私は大変気に入った。500cc を立て 続けに二杯分飲んでご満悦になった。 その日の夕食はお目当ての「シュラスコ」。お気に入りは picanha と呼ばれる rumpsteak と fraldinha の呼び名がついた多分ハラミの部分のステーキ。その他多くの部位のステーキも腹いっぱ いになるまで食べてご満悦。後の後悔先立たずと思いながら口と手が次々と動いてとまらなかっ た。 3 月 8 日(土) 3 月8日(土)。午前中せっかくの機会だからと市内観光。昼食を 済ませて、空港へ。 この二泊三日の滞在中案内役を引き受けていただいた総務担 当の N さんが最後の最後まで心配りをしてくださった。そして多くの ブラジル情報を入手することができた。X 社のブラジル事業の背景 や環境理解にとても大きな手助けになった。 17:35、AF455 便でパリへ向けて飛び立った。 4 3.フランス編 3 月 9 日(日) 3 月 9 日(日)、パリ時間は 10:30。サンパウロから AF455 で 11 時間かけて CDG 空港に到着し、 出迎えいただいた X 社の O 氏の案内でホテル Hotel Le Parc にチェックイン。中庭が着いて明るく 居心地がいいホテルだ。 暖冬のパリは雨の中。 「ひぐま」で味噌ラーメンと焼きそばを二人でシェアする昼食。それほどの味ではないがパリで食 べられる味噌ラーメンと思えばありがたい。6~7 年ぶりか。 その後運動不足とエコノミー症候群で象のように膨れた足を気遣って散歩した。シャンゼリゼ通り の右側の坂道を凱旋門に向かってテクテク。途中のビルの中に入ってはウィンドウ・ショッピング。 目が向くのはやはり、セフォーラの化粧品ブランド、電気店の薄型テレビやデジカメの日韓ブランド、 マクドナルドの看板の白いロゴなど日頃の関心分野が多い。 凱旋門を半周してヴィクトル・ユーゴ通りからホテルへ。 3 月 10 日(月)~12日(水) 二日間の勉強をレビューする。 初日はパリから 300 キロのダンケルク Dunkirk (Dunkerque)へ、 二日目は 150 キロ離れたアミアンへ、食品添加物と飼料添加物の それぞれ欧州の主力生産基地を訪問した。 ダンケルクと聞いただけで少し胸騒ぎがした。 なんといってもこのドーバー海峡に面した地域は、第二次世界大 戦の折にフランス軍とイギリス軍の主力がドイツ軍の電撃作戦で追い込められた戦場だ。1940 年 5 月 24 日から 6 月 4 日までの 10 日間の激戦で、イギリス軍はドーバー海峡に投げ出されるように逃 げ帰り、フランス軍は崩壊した。 そして 6 月 13 日、ドイツ軍がパリを占領し、同月 21 日、フランスは降伏した。 こんな歴史は既に風化しているのだろうか。後で聞くと、記念 碑が一つ立っているとのコトだった。ダンケルクの町は、北部工 業地帯を支える人たちの静かなベッドタウンといった風情だ。パ リ北駅から TGV の「こだま」クラスの各停で二時間の小さな旅だ った。「のぞみ」クラスのノンストップで 1 時間半だとか。その二 時間、外は途切れることのない農業地帯が続いた。 二日目のアミアン工場には高速道路を二時間近く走り抜けて 訪問した。メルセデスの大型セダンが直線コースを時速 130 キ ロで走る。社内は普通に会話ができる静けさ。車体はメモが取 れるほど安定している。周囲は見渡す限りの小麦と砂糖大根の 畑。フランスが農業大国であることをこの二日間で実感できた。 アミアンの大聖堂を帰途訪問できた。世界遺産だ。400 年以 上もかけて完成したと言う。中の天井の高いこと、首が痛くなる ほど反り返らなければ天井にまで目が届かない。壁に精緻に掘 5 り込まれた聖なる物語の彫刻をみて、日本の仏像の周囲に掘り込まれている集団刻像を連想した。 宗教は洋の東西を問わず無数の聖なるものを可視化する絵画や彫刻芸術に彩られている。 ダンケルクの食品添加物は農産物抽出成分を合成して作る。アミアンの飼料添加物は農産物原 料を発酵させて作る。いずれも競争力の源泉は高い技術力だ。合成はラインが短く工場の建物は 相対的にそれほど大きくない。発酵は巨大な原料の貯蔵タンク、巨大な発酵タンクが立ち並んでい る。それらの建物や中の生産ラインを構成している機械設備を見ながら、アメリカ・ブラジルと続きフ ランスでも、X 社の強いもの造り能力に感じ入った。 この二日間を通して不思議な感動に包まれていた。 遠い欧州で系列 13 社・8 工場を擁し、社員 2100 名、売上は約 1200 億円。X 社のアジアに次いで 二番目に大きなプロフィット・センターになっている。ビジネスは殆ど現地 EU での製販一体で成り立 っている。そして更に将来に向けて積極的な拡大戦略を・ビジネスの多角化を加速させるプロジェク トを次々に立ち上げている。 食の都パリでの三回の夕食を書き留めておこう。 一日目は、ミシュランの二つ星レストラン LA TABLE。黒 のトーンで統一された中で正統フランス料理を。この店の 東京店は恵比寿ガーデンプレイスにある。 二日目はモンパルナスタワーの最上階にある Le Ciel de Paris で気楽な雰囲気でフランス料理を。一時間ごと 10 分ほど星がきらめくようなイリュミネーションに包まれる エッフェル塔を遠望しながらの会食。 三日目はイタリアン・Sardo で。こじんまりとした店内は、 イタリアン一色。久しぶりで本当にアルデンテで歯ごたえ のあるスパゲティを楽しめた。 パリでも多くの X 社の方々にお世話になりました。多くの勉強機会を提供いただいて感謝の限り がありません。お目にかかった順番に、0h○さん、Ko○さん、Ok△さん、Sa△さん、Tsu○さん、To ○さん、Ku△さん、Mu○さん他の皆さん、本当にありがとうございます。 6
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