保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題

東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 59 集・第 2 号(2011 年)
保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題
香曽我部 琢
本研究では、
「保育者論」に関する先行研究において、保育者の専門性がどのように述べられてき
たのか、その記述をもとに項目を分類する。つぎに、それらの項目ごとに、先行研究を収集し、その
動向を整理することでその問題点を指摘する。そして、今後の保育者の専門性に関する研究の方向
性を示唆することを目的とする。分類の結果、保育者の専門性は大まかに「保育者の本質」、「現代
社会が保育者に求める専門性」
、
「保育者集団の中で求められる専門性」、「保育者個人に求められる
専門性」
以上4つに分類された。そして、
専門性におけるパラダイムシフトによって、
「技術的合理性」
と「反省的実践家」が二項対立的に捉えられている状況を問題点として示し、今後、保育者の専門性
について⑴保育者の知の体系化、組織化、⑵保育者アイデンティティ、⑶組織アイデンティティの 3
つの視点で研究を進める方向性を示唆した。
キーワード:保育者、専門性、保育者論、暗黙知、保育者アイデンティティ、組織アイデンティティ
1. はじめに
保育者論が求められる背景
平成 21 年から始まった保育士養成課程等検討会 1 では、現代の子どもを取り巻く社会の急激な変
化を受けて、この変化に対応出来る保育士を養成するために、現行の養成課程の見直しを行った。
この検討会では養成課程を見直すに当たって、保育士に対する質問紙調査やインタビュー調査 2 を
行い、現行の科目で今後さらに充実が必要になる科目や新たなに求められる科目に関する調査を
行った。その調査の結果を受けて、検討会では、現代的な社会問題に対応できる保育士の養成を目
指し、
「保育相談支援」
、
「保育の心理学」
、
「保育課程論」などの科目を新設した。本研究で取り上げ
る「保育者論」も新設科目の一つで、質問紙調査では八割以上の保育士がその必要性を示し、平成 23
年度の保育士養成課程改正の要点となった。
現行の養成課程においては、保育者論は、
「保育原理」に含まれていた。しかし、検討会で保育者
の要望を取り入れ、保育者の責務や専門性にかかわる領域を「保育原理」から分離することが提案さ
れた。
さらに、
他の保育者との協働や今日的課題を踏まえた保育士の専門性について加え、新科目「保
教育学研究科 博士課程後期
― ―
53
保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題
育者論」を新設した 3。そして、この新科目「保育者論」では、保育士の⑴役割、⑵資質、⑶法律、⑷倫
理及び責務、⑸専門性、⑹保育士自らの課題の克服や家庭・地域への支援、以上 6 項目について理解
することを目標として示した。
調査結果や科目が新設されたことから理解できるように、保育者とはどのような仕事なのか、そ
こで求められる資質や専門性はいかなるものなのか、保育にかかわる者は高い関心を寄せてきた。
これは保育者論に関する著書は検討会の設立以前から発刊されていた 4 ことからも理解できる。と
くに、今回の改正にあたっての基本方針において「保育現場の実践や保育士の専門性を十分に踏ま
えた内容とする。
」ことが示されているように、保育者論を語る上で、保育者の専門性とはいかなる
ものなのか、その議論は多く、保育者論の中核となってきた。
とくに、ショーン(D.A.Schön, 1983)5 が示した「反省的実践家」が新たな専門家像として日本に紹
介されてからは、知識や技能の豊かさ、高さがと専門性の指標として捉えられてきた 6 のに対して、
行為の中に表れる自らの実践を省察する行為自体が専門性の指標となることが示された。これは保
育学の領域だけでなく、多くの領域に影響を与え、とくに教師や看護師、社会福祉士など複雑性、不
確定性の高い現代社会の諸問題に直面するマイナーな専門性の職業の分野において、専門性を捉え
るパラダイムシフトがはかられた。この専門性についてのパラダイムシフトは、保育学の領域にも
影響を与え、1990 年代以降、保育学研究においても特集が組まれた 7。
パラダイムシフトが図られてはいるが、子どもを取り巻く問題はより複雑化、多様化しており、
それらに対応するための豊かな知識や高い技能が保育者に求められている現状もある。養成課程の
改訂においても、新たに「保育者論」が新設され、そこで省察する行為の重要性が示される一方で、
新設された「保育相談援助」
、
「保育の心理学Ⅱ」
では、カウンセリングなどの具体的な実践的な知識
と技能の修得が目標として示されている。つまり、「技術的熟達者」モデルから「反省的実践家」モ
デルへの移行、もしくは 2 つのモデルを 2 項対立に捉えるなどと、単純に図式化して捉えることがで
きない状況が保育者養成を取り巻いていることがうかがえる。また、これまで養成段階における保
育者の専門性について議論してきたが、柴崎(2009)8 が生涯発達の視点で保育者の成長を捉え、保
育者という職業と捉え直す必要性を示しているように、保育者の専門性は養成段階だけで身に付け
ることは不可能で、長期的な視点でその専門性を捉える必要がある。
そこで、本研究では、はじめに保育者論に関する著書や先行研究で保育者の専門性がどのように
述べられてきたのか、その記述をもとに項目を分類する。つぎに、それらの項目ごとに、先行研究
をもとに、その動向を整理することで、今後の保育者の専門性育成に寄与することを目的とする。
2. 保育者の専門性はどう語られてきたのか
本節では、これまで刊行された保育者論に関する著書 9 において、どのような内容が項目化され
ているのか、その内容を分割し、再度その内容毎に KJ 法を援用して分類し、Fig1 を作成した。
この Fig1 から理解できるように、
保育者論において、保育者の専門性は大まかに「保育者の本質」、
「現代社会が保育者に求める専門性」
、
「保育者集団の中で求められる専門性」、「保育者個人に求め
― ―
54
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 59 集・第 2 号(2011 年)
Fig.1 保育者論において語られる「保育者の専門性」
られる専門性」以上 4 つに分類された。そこで、本研究では、4 つの分類のうち、観念的・歴史的な議
論が多い「保育者の本質」を抜いて、保育者の専門性について述べられている 3 つの分類について先
行研究を抽出し、整理を行った。
3.現代社会が保育者に求める専門性
本章では、近年の子どもを取り巻く環境の急激な変化によって生じた多様で根深い問題 10 に対応
するために、保育者に新たに求められている専門性について抽出し、整理を行う。まず、近年の大
きな問題として家庭・地域社会 11 のあり方の急激な変化がもたらした問題に対する専門性として⑴
子育て支援に分類した。次に、外国籍の幼児やジェンダー・フリー教育、人権教育など多文化共生
にかかわる専門性を⑵多文化共生とし、発達障害を持つ幼児と保護者の支援に関わる専門性を⑶特
別支援として分類し、整理を行った。
⑴ 子育て支援
名須川(2007)12 は急激な社会環境の変化が、子育てをすることを困難な状況にしていることを示
し、子どもの健やかな成長には、まず養育者の子育てを保障する子育て支援の必要性と緊急性を示
唆している。そのため、子育て支援に関する研究は、近年母親や 13 14、父親などの保護者を対象にし
た研究 15、その家庭を取り巻く地域の教育力の強化を目指した実践を対象にした研究 16、2 つの方向
性で進められてきた。
― ―
55
保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題
保護者を対象とした先行研究では、抑うつや育児不安、その結果、虐待傾向を持つ母親に対して
保育者がどのような援助を行うことが求められるのかが示唆されている。安藤(2008)は抑うつの
母親を支え、子どもへの適切な関わりを保育者が代行することで、養育を補完することが可能であ
ることを示し、保育者が臨床心理士などの専門家と連携し、母親をサポートする体制を整備する必
要性についても言及している。さらに、赤井(2007)は、母親だけではなく、父親に対する子育て支
援の必要性を示して、⑴親は人として、親として成長する存在であることを伝えること、⑵父親が
参加しやすい場の雰囲気づくり、⑶仲間との交流、役立つ情報の提供が支援に関わる者に求められ
ると示している
また、養育者が特定の理由で一時的に保育が必要になったときに用いる「一時保育」では、野呂
(2007)17 は、現状一時保育は計画性が曖昧であること、協力体制が組み難いことを示し、担当保育
士が意欲喪失感、孤立感を高める危険性を指摘して、知識や技術の習得とともに、協力するための
体制づくりとして研修の必要性を示している。現任研修については山縣(2008)18 も保育者が保護
者に向かって個別にサービスを提供する姿勢を求められており、その必要性を示している。
これらの家庭への子育て支援を実施する地域の中心的な施設として、平成 6 年 12 月 6 日に示され
たエンゼルプラン 19 では、各自治体に地域子育て支援センターを設置することが定められ、保育士
にはこのセンターとの連携する力も求められている 20。また、幼児の成長を地域で見守るという視
点では、小学校との連携についても、生活科においてスタートカリキュラムが編成され、交流など
の実践が取り組まれている 21。幼小連携の実践がより制度として確立していく一方で、林(2007)は
「制度やマニュアルが実践の目的にすり替わり」幼小の交流が義務的な学びの活動になってしまい、
子ども達によってボトムアップに立ち上がる幼小交流の実践が困難になる可能性を示唆し、その点
に配慮することを保育者に求めている。また、野口(2007)22 は、同じ言葉に対して幼稚園と小学校
の教師が違う受け止め方をしていることを明らかにし、教師同士の交流、対話の際に、同じ語句を
使っていてもその相互理解に齟齬が生じる危険性があることを示した。保育者が語句の受け止め方
の違いを認識しつつ幼小連携に取り組む必要性が示唆されるのである。
⑵ 多文化共生
日本保育協会の調査 23 によると、平成 10 年には日本の保育所に通所している外国人児童数は 1 万
5 千人を超え、世界 189 カ国に及んでいる。菅田(2006)24 は外国籍幼児の保育所への適応過程に関
する研究において、保育者は保護者と対話を通して共通認識をつくり、多様な文化への認識をもと
に共に「発達的ニッチ」
を形成する意識や、それに伴って保育方針を柔軟に変えていく姿勢の必要性
を示した。また、森(2009)25 は幼稚園の遊戯室が外国籍児の母語の保持と日本語の修得の場となっ
ており、幼児が互いの母国語を使う空間や関係性をエンパワーメントする力が保育者に必要である
ことを示している。また、幼児に対する支援だけではなく、その言語や文化的な差異などによって
生じる保護者の育児における困難に対するサポート体制の必要性 26 を示し、十分なコミュニケー
ションをとることで信頼関係を築くことが、外国籍の幼児の支援に有効であること 27 を示唆してい
る。植田(1996)も「子ども-保育者-保護者」の三者による相互作用がうまくなされていることが
― ―
56
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 59 集・第 2 号(2011 年)
幼児の異文化における園生活で重要であることを示し、保育者にその関係性を構築する力が求めら
れている 28 ことを示した。
ジェンダー教育については、2000 年に施行された保育所保育指針 29 において、「子どもの性差」に
ついて配慮することが保育者に示されて、それ以降、保育者を人的環境と保育をジェンダーの視点
から捉え直した研究 30 や、児童福祉施設における子どものジェンダー形成における保育者の関与 31、
保育者の中でもジェンダー意識のあり方 32 についての研究が行われた。金子(2008)は、ジェンダー
について学習経験のある保育者がジェンダー・フリー教育に肯定的で、かつ積極的であることを示
し、日々の子どもとのかかわりをジェンダーの視点で捉え直し、物的環境や保育者の援助のジェン
ダー・バイアスを見直していく研修の必要性を示している。また、片田(2010)は、遊びの中に表れ
る子どもの言動に込められた男女関係の力関係を「可視化」すること重要性を示し、保育者がその
「可視化」する役割を自覚し、子どもの関心と注意深さを後押しする援助の重要性を示している。ま
た、神田(2009)33 は、保育者のジェンダー・バイアスの度合いが経験年数と所属園種の影響を受け
ている点を指摘し、保育者の所属する「園の文化」に暗黙的にバイアスを強める文化が存在すること
を示唆しており、組織的な対応の必要性を示している。
⑶ 特別支援、児童福祉施設との連携
池田(2007)の調査 34 によると、保育者の 75%が近年気になる子どもの増加を感じており、発達障
害特性の症状を持つ子どもの対応に苦慮していること 35 を示した。吉兼(2010)36 は、このような発
達障害児に対応する保育者が、身体的、精神的ストレス症状やバーンアウトに陥る可能性を示し、
発達障害の行動特性に関する知識、対処方法、実践について研修し、さらに巡回相談員や特別支援
教育コーディネーターとの連携する体制づくりの必要性を示した。湯澤(2010)37 も、信頼関係のあ
る保育者によって、アスペルガー症候群の男児がクラスの子ども達と共に成長する姿を事例として
示し、アスペルガー症候群である男児の特性を十分理解すること、そして、この理解を踏まえ上で
周りの子ども達の存在を意識させた支援を行うことの重要性を示している。また、田中(2010)38 は、
発達障害を持つ幼児の行動特性に対する理解を踏まえ、保育者が他の保育者や専門家とともにカン
ファレンスを行うことで、気になる子を多角的に理解し、保育実践が変容していった事例を取り上
げ、その有効性を示した。そして、特別支援教育において、保育者自らが発達障害の知識、対応する
技術を身に付けるだけでなく、同僚や専門家との対等な協議の関係性による連携が継続されること
の重要性を示した。
4.保育者集団の中の保育者
⑴ 協働する保育者
保育士養成課程検討会が「保育者論」を新設した理由として、「多様な専門性をもった保育者との
協働」について学ぶことを示したように、現代の保育者の専門性を語る上で協働する力は要点の一
つとなる 39。野本(2008)40 は、保育者個人が自らの弱さを自覚し、弱音を吐くことで保育者同士の
支え合いがはじまった事例を示し、弱音を吐くことを肯定すべき能力と捉え、「弱音を吐ける人間
― ―
57
保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題
関係」の構築が必要であることを示している。また、岡田(2008)41 は保育者間でやり取りされる情
報には、同僚の保育者がもたらす子どもの言語的情報と、同僚の保育者が子どもとかかわる姿を保
育者が実際に見聞きすることによって得られる非言語情報が存在することを示した。そして、これ
らが相互補完することによって、互いの子どもへの理解に大きな影響を与えることを示し、子ども
とともにいることを保育者同士が実感することが、保育者の良い関係性を生み出すことを示した。
佐伯(2000)42 は保育者が共同で援助を行うティーム保育を行う際に、⑴リーダーシップ、⑵役割
分担、⑶不文律からの脱却の重要性を示し、それらをもとに、保育者同士が話し合うことの重要性
を示唆した。しかし一方で、この話し合いが「技術的合理性」に基づくことで、異質な考えの排除や
混乱を避けた差異化、現状維持を進行させる危険性についても喚起している。
⑵ 実践共同体としての保育者集団
さらに佐伯(2000)は、保育者の話し合いが定型化されたナラティブに陥らないためには、「新し
いタイプの保育者」を歓迎し、育てていくことで、常に自らが所属する「保育者共同体」を育て変化・
発展させていく責任があることを示した。そして、この保育者集団の構築については、太田(2008)
43
は⑴他の組織の専門家による支援体制の整備、⑵所長、主任のリーダーシップによる支援とその
システムづくり、⑶実践場面での支え合いの強化と価値の共有、⑷保育者の孤立を防ぐ協働的な素
地づくり、⑸人的配置などの組織マネージメントへの配慮、以上 5 点の重要性を示し、保育者集団に
おいて組織としての支援体制の構築だけではなく、保育実践の場において保育者相互の自発的な実
践共同体を育成する必要性を明示した。
このように、組織において命令系統として機能する縦軸の組織構造とは別に、組織に所属する者
が自発的に他の部署の者とつながるコミュニティは「実践コミュニティ(共同体)」と呼ばれ、その
有効性が経営学の領域でしめされてきた 44。保育の領域においても、保育士養成課程や現職研修に
おいて、保育者集団が良好な人間関係を維持し、より質の高い保育を実践できる保育者集団を対象
とした研究がすすめられてきた。例えば、保育者の社会技能(social skill)を育むソーシャル・グルー
プワーク 45 を実習に取り入れた研究や、実習において学生と保育者の関係性(メンタリング 46)の在
り方に着目した研究、保育者が協力して実践を作り上げるティーム保育 47、実践をもとに複数の保
育者が話し合うカンファレンス 48 49、などがあげられる。以上に示した保育者集団を対象にした研
究では、保育者集団を対象としながらも、主に保育者の省察の変容に焦点が当てられており 50、集
団に対して組織的な体制作りの必要性を指摘している。Fig.1 の横軸として図式しているように、
園内研修 51、園外研修 52 の在り方や、第三者評価 53 など、保育者集団の内外における組織体制に関す
る研究など、
「制度の中の保育者」の専門性についての先行研究が多く、太田(2008)が示したような
日常的な保育実践において暗黙的に組織されていく「実践の中の保育者」を包括的に捉えた先行研
究はほとんど見られない。
5.保育者個人に求められる専門性
保育者論では、保育者個人に求められる専門性として、「保育課程・保育内容への理解」、「指導法
― ―
58
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 59 集・第 2 号(2011 年)
の修得」
、
「子ども理解の深化」
の 3 つの方向性でその専門性が示されてきた。
⑴ 保育課程・保育内容への理解
保育課程(幼稚園においては教育課程と呼ばれる以下両者を含めて保育課程と示す)、保育内容に
ついては、具体的な事例をもとにして、その作成の方法について示された文献が、養成校テキスト
を刊行する出版社ごとに多数存在する。これらのテキストでは、はじめに保育計画の立案について
の基礎的な知識が示され、
その立案についていくつかの形式と具体的な案が提示されている。主に、
教育課程とは、本来入園から終了までの期間全体にわたって、幼児の発達に即して教育目標を達成
するための道筋を示した計画を示す。山崎(2004)54 は国・公・私立の幼稚園教諭に対する質問紙調
査の結果として、保育者が⑴幼稚園教育要領と教育目標との適合性、⑵子どもの発達の姿の 2 点を
重視して、多くの園で教育課程、指導計画が立案されていることを示した。しかし、一方で少数の
園ではあるが、教育課程が編成されていない園の存在を指摘して、園の独自性を保ちつつ、日常の
保育の実状を知らしめるためにも、教育課程を社会に公開する必要性を述べた。
また、保育現場では保育課程が形骸化し、指導計画と混同されていることが問題点として指摘さ
れてきた 55。その理由としては、山崎(2009)が示したように、もともと保育課程と指導計画がその
関連性、系統性を強く意識し作成されている点、どちらも同じ子どもの発達の姿をもとに作成して
いる点があげられるが、とくに、幼児教育では子どもの興味や関心に沿いながら活動が展開するこ
とが保育者に求められているために、実際には指導計画が先に作成され、その後に教育課程との適
合性が図られる点が、両者が混同される原因になっていると考えられる。しかし、幼児の主体性か
ら日々の保育実践が生み出されていくことは、問題を生み出すだけではなく、逆に利点も存在する。
石崎(2002)56 は実際の幼児の「暮らし」や「かかわり」から、「暮らしづくり」と「かかわり」の視点か
ら新たな教育課程を生み出す実践とその教育課程を示し、実際の幼児から教育課程を編成するため
の新たな視点を得る可能性を示唆し、
幼児と共に保育実践をつくりながら、教育課程そのものを作っ
ていく姿勢が保育者に求められることを示した。
⑵ 指導法への理解
幼稚園教育要領において「幼児が自ら周囲の環境に働き掛けて様々な活動を生み出し、それが幼
児の意識や必要感、あるいは興味などによって連続性を保ちながら展開されることを通して育てら
れていく」
と述べて、小学校以降の教科教育との違いを明記しているように、保育内容の指導法に関
しては、⑴環境を通した教育、⑵幼児の興味にそった主体的な活動、以上 2 点については共通してお
り、この 2 点について考慮しつつ幼児に総合的に指導する力を保育者の専門性として、多くのテキ
ストで示している。
とくに幼児教育では、教育要領において「環境を通して」教育を行うことが示されてきた。その
ため、物理的環境 57、自然環境 58 など、幼児の興味や関心を生み出し、幼児の発達を促す環境構成の
方法について語られ、近年では、保育者を人的環境 59 として捉えた研究も多い。渡辺(2008)は、保
育における保育者の「葛藤」の変容が、保育室の環境構成に影響を与えることを示し、保育者が保育
の場に存在するハビトゥス 60 を問題視し、
「葛藤」
を意識する力が求められることを示した。つまり、
― ―
59
保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題
幼児にとって豊かな環境構成は、保育者がその環境に問題意識を持つことが前提となり、どのよう
に環境構成するかという具体的な方策は、問題意識が前提になっていることを示したのである。
テキストでは、先に示した 2 つの幼児教育の独自性についての共通認識を示しつつ、領域ごとに
保育者に求められる知識や技能についての説明がなされている。例えば、領域「表現」61 においては、
幼児が主体的に音楽表現を行う環境構成や援助の重要性を示しつつも、その活動の中で保育者に音
楽表現に関する基礎的な知識や技能の必要性を示している。鈴木(2004)は「保育者の適切な援助の
必要性」を示し、保育者がリズム打ちをしたり、幼児が歌いやすい伴奏をしたりすることが、幼児の
音楽的な能力や感性を高めることにつながることを示して、保育者の音楽的な指導技術の必要性に
ついて述べている。さらに、新延(2009)62 は、5 歳児の遊び歌の実践研究にといて、クラス一斉の遊
び歌の活動に幼児がテンポの変化に即興的に対応したり、動かす身体の部位を自己決定したりでき
るような幼児の主体性を確保することが、活動の盛り上がりを生んだことを示した。そして、保育
者が遊び歌の本来の特性や教育的価値を理解すること、また遊び歌よって幼児に蓄積された様々な
経験や能力を理解する知識や、それを援助する技術の必要性を示している。
⑶ 子ども理解の深化
幼児教育の特徴として、幼児が「環境を通して」、「主体的、自発的な活動」を展開し、その幼児に
対して保育者が「総合的に指導」を行う点にある。つまり、保育者は指導に当たって、まずその援助
の対象となる幼児が何に興味を持っているのか、関心を抱いているのか、その心情の在り様 63 や、
幼児の発達 64 について理解する必要があるのである。そのため、保育の領域では、この幼児への理
解について「幼児理解」
、
「子ども理解」
という用語を用いて、子どもの内面に関する読みや共感性を
重視してきた 65。この重要性については養成期においても同様で、実習の成果を子ども理解の変化
に焦点化した研究 66 が行われてきた。岡田(2006)は「その瞬間主観で、
『私の中のその子』を修正し、
次のかかわりへと続くのだと思う」と述べ、幼児理解は常に一定のものではなく、「その一部を訂正
したり、書き加えたり、自分のかかわり方を反省したり」と常に更新され、次の指導計画を立案する
際の基礎となることを示している。小川(2000)67 も同様に、と述べて日々記録によって、幼児への
理解の変遷を記述し、その変遷を追うことの重要性を示した。
保育実践を記録することが幼児理解に効果的であることについてきたが、一方で、記録は次の保
育計画を構想する際の視点、
保育者の自己評価の新たな視点となることも示されてきた。河邊(2008)
は次の保育計画の構想にとって、自分自身の実践を文字化することで意識化する行為が重要である
という認識を示した上で、
「保育マップ型記録」を提示し、園全体でどのように保育が展開されてい
るのか、保育の全体像を意識する際に有効であることを示している 68。澤井(2007)はビデオを用い
た自己評価チェックによって自らの保育を省みることで、保育における自らの問題点を明らかにす
ることができる効果があり、それによって保育の質をレベルアップする可能性について示した。
⑷ 3 つの専門性の循環
本章では、保育実践における「計画」
、
「実践」
、
「評価」の各項目について先行研究を整理してきた。
近年では、これまで工場生産などの分野で用いられてきた PDCA サイクルが、保育においても導入
― ―
60
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 59 集・第 2 号(2011 年)
されつつある。このことは、現代においては単純に各項目の知識や技能、省察的な思考などの専門
性を保育者に求めているだけではなく、これらの 3 つの専門性を体系化したり、組織化したりする
ことで、上手く循環させることで、自らの実践をより質の高いものにしていく力が保育者に求めら
れていることを示している。しかし、この PDCA サイクルについても、定型化された方法はなく、
幼児理解を重視する立場 69 と、保育者の記録・評価 70 を重視する立場、また幼児理解と環境構成・援
助の間には相互規定性が存在する立場 71 をとる者など、その専門性の体系化、組織化、循環の在り
方についても、多様な主張が存在している。
6.総論
本章では、これまでの示してきた各項目で示されてきた保育者の専門性について、ショーンが示
した「反省的実践家」
がもたらしたパラダイムシフトの問題点を批判的に考察することで、それをも
とに今後の保育者の専門性についての研究の方向性を示唆したい。
⑴ パラダイムシフトがもたらした問題
先行研究の動向を整理することによって、⑴現代社会において表出した新たな問題に対応するた
めの新たな知識や技能、さらに、⑵現代社会における子どもを取り巻く問題そのものを実践の中で
保育者が省察することで見出していくこと、この二つの視点で保育者の専門性について研究が進め
られている動向が示されてきた。しかし、先行研究においてこの二つの視点は共になされることは
なく、互いを批判するか、もしくはその存在について無視する形で研究が進められている。
なぜ、
二つの研究動向が二項対立的に捉えられるようになったのだろうか。この二つの視点の内、
保育者の省察については、先述したように 1990 年代以降、ショーン(1983)の「行為の中の省察
(reflection in action)
」という概念が紹介されたことで、焦点が当てられるようになった。ショーン
(1983)は新たな専門性として「行為の中の省察」を示す過程で、「技術的合理性」として示した知識
や技術を批判した。そのため、その後の研究では、この二つの研究動向が、二項対立的に捉えられ
るようになったと考えられる。
⑵ 保育者の知の系統化
知識や技術は「技術的合理性」として批判されるだけのものなのだろうか。「行為の中の省察」に
関する研究においても、その研究の知見として多くの知識や技術が示されている。しかし、これら
の研究では、保育者の専門性をただ単に知識や技能の量や難易度ではなく、日常の保育者の行為の
中に潜む知識や技能、身体に結びついた知として捉える点で、これまでの知識や技術とはパラダイ
ムが異なることを示唆した。この流れを受けて、保育者に求められる専門性を、保育という日常的
な営みに内在する保育者の暗黙知 72 や身体知 73 から導き出そうとする研究が多く進められてきた。
しかし、ショーン(1983)
が知識や技能を「技術的合理性」として批判してきたために、この暗黙知や
身体知はこれまでの知識や技能とは切り離された。そして、これらの暗黙知や身体知の先行研究に
よって得られて知見についても、この知見が「技術的合理性」としての知識や技能と混同されること
をおそれ、それらを包括的に捉えることや、その系統化したり、体系化したりすることはなされな
― ―
61
保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題
かった。そのため、保育者の暗黙知や身体知、
「技術的合理性」と呼ばれる知識や技能を包括的にと
らえ、その系統化や体系化を行うことが今後の課題であると考える。
⑶ 保育者アイデンティティと専門性
二つのパラダイムが二項対立的に捉えられている状況において、保育者の専門性を新たな視点で
捉え直すことが必要である。その新たな視点として、柴崎(2009)74 は、「保育者が『保育者として
の私』を確立するためには『私らしい保育の具現者』としての保育者アイデンティティを確立するこ
とが重要となる。
」と述べ、保育者としての職業アイデンティティ(以後保育者アイデンティティ)
を確立することの重要性を示している 75。そして、柴崎(2009)は保育者が「どのような関係性の中
からアイデンティティを構築していくのかを検討することは保育者の現状を捉え、保育者が何を求
めているかを知る指針となり、ひいては『保育者の専門性』にも繋がる」と述べ、保育者アイデンティ
ティを形成していく過程について明らかにすることが、保育者の専門性を明らかにすることに繋が
る可能性を示している。さらに、西山(2008)76 は保育者アイデンティティと保育者効力感に強い相
関性が存在することを示したことからも、キャリア形成におけるそのときどきの保育者効力感が、
保育者アイデンティティの形成に強い影響を与えていることが先行研究から想定される。また、先
行研究では、熟達した保育者と初任の保育者の比較することで、その専門性について示された研究
が多い。以上のことから、
二つのパラダイムに囚われずに、保育実践の中で保育者アイデンティティ
や保育者効力感を形成し、保育者を熟達していくプロセスを明らかにすることは、保育者の専門性
を捉える新たな視点となりうると考えられる。
⑷ 新しい能力主義と専門性
先行研究で示したように、現代の保育者に求められる新たな知識や技能として、保護者に対する
子育て支援のカウンセリングや地域社会・家庭と連携する力などを専門性として位置付けられてい
る。また、保育者の省察する行為についても、保育者同士のカンファレンスの有効性が示され、保
育者が相互に協働する力が重視されている。2 つのパラダイムどちらにおいても、他者と関係性を
専門性と結び付けている点は共通した認識といえる。このように、人の持つ能力を他者との相互関
係に結びつける視点は、OECD の DeSeCo(2006)77 が現代において人々に求められる新しい能力
(キー・コンピテンシー)として、
「相互作用的に道具を用いる」、「異質な集団で交流する」の中でも
示されており、保育者の協働する力に着目することが保育者の専門性を捉える上で重要であると考
えられる。
この協働する力に着目した能力観について、松下(2010)78 は「新しい能力主義」という言葉で示
している。新しい能力主義では、これまでの専門性があくまでも個人の中に位置づいていたのに対
し、他者や物との相互作用の関係の中で生じる知識や技術、またその関係そのものを構築する力を
専門性として位置づけている。つまり、この新しい能力主義では、保育者を取り巻く他者との関係
の在り方が、保育者の専門性の在り方に大きく影響を与えることを示し、組織の在り方が保育の専
門性の在り方と因果関係を持つことを示唆しているのである。
それでは、現代において保育者の専門性が位置づけられている組織はどのように在るべきなのだ
― ―
62
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 59 集・第 2 号(2011 年)
ろうか。1980 年代以降、急速に進む経済のグローバリゼイションにおいて、企業が生き残るために、
組織の在り方についてとくに文化的側面が持つ重要が再検討され、「企業文化論」として隆盛した
。さらに、近年の経営学の領域では、企業文化論が組織と個人の関係を単純化して捉えているこ
79
とに対して徹底的な批判を行った「組織文化論」
、さらにそれを批判的に乗り越え、組織の独自性に
着目することで、組織と個人の関係を捉え直した「組織アイデンティティ論」が急速な展開をみせつ
つある 80。しかしながら、教育や保育の実践や研究の領域においては、教師や保育者などの個人が
対象となった研究は多いものの、組織を包括的に捉えた研究はほとんど行われていない。今後、保
育者の専門性を捉える上で、組織としての保育者の在り方もその専門性を語る上で重要になると考
えられる。
⑸ 今後の保育者の専門性に関する研究の方向性
保育者の専門性に関する研究について、その動向を整理、検討を行った結果以上の方向性が示唆
された。
① 保育者が実践において用いている暗黙知・身体知を明らかにするとともに、保育実践において
必要とされる知識や技術を包括的に捉えることで、現代の保育者の専門性を支える知の在り方に
ついて系統的、体系的にまとめていく必要がある。
② 保育者アイデンティティや保育者効力感の形成など、保育者が熟達していくプロセスをその社
会的、文化的な背景や文脈も含めて明らかにすることで、保育者の専門性を新たな視点で捉える
必要性がある。
③ 保育者が所属する組織アイデンティティの形成やその在り方などについて、その組織全体をそ
の文化や制度について包括的に捉えることで、そこで求められる諸能力について明らかにする。
【註】
1 平成 21 年 11 月に始まった保育士養成課程等検討会は、平成 22 年 3 月までに 6 回実施された。議事録や資料につい
ては、下記 URL を参照。http://www.mhlw.go.jp/shingi/other.html#koyou
2 大嶋恭二(2009)
「保育サービスの質に関する調査研究」厚生労働省、政策科学総合研究事業
3 平成 22 年度までは「保育原理(4 単位)」。平成 23 年度からは「保育原理(2 単位)」と「保育者論(2 単位)」となった。
4 例えば、森上(2001)、青木(2002)、小田(2001)は保育者論の重要性、必要性について 10 年以上も前から示唆して
いる。
森上史朗(2001)
「保育者論の探求」ミネルヴァ書房
青木久子(2002)
「新保育者論」萌文書林
小田豊(2001)
「保育者論」光生館
5 Schön, Donald A., 1983. The, Reflective, Practitioner:, How, professionals, think, in, action., New, York:, Basic,
Books.
6 ショーンは豊かな知識や高い技能に保障された専門性を「技術的合理性(technical rationality)」と述べ、その限界
を指摘した。
7 日本保育学会が刊行する保育学研究(2001)第 39 巻 1 号において「保育者の専門性と保育者養成」の特集が組まれ
― ―
63
保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題
た。
8 柴崎正行、足立里美(2010)
「保育者アイデンティティ研究の展望と課題:日本における保育者アイデンティティ
研究」大妻女子大学家政系研究紀要 45、pp.25-33
9 汐見稔幸、大豆生田啓友編著(2010)
「保育者論(最新保育講座)」ミネルヴァ書房
榎沢良彦、上垣内伸子、柴崎正行、岸井勇雄編著(2010)
「保育者論-共生へのまなざし」同文書院
秋田喜代美編著「今に生きる保育者論」みらい
民秋言、上田哲世、関口はつ江(2009)
「改訂 保育者論」建帛社
小田豊、柏原栄子、笠間浩幸(2009)
「保育者論」北大路書房
玉井美知子、浅見均、田中正浩(2004)
「現代保育者論」学事出版
青木久子(2002)
「新保育者論 子どもに生きる」萌文書林
10 文部科学省(2005)
「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について(答申)」中央教育
審議会
11 荻原元昭(2006)
「地域社会の中の子ども」保育学研究 44 ⑴、pp.12-21
12 名須川知子(2007)
「保育フォーラム 親も共に育つ子育て支援とは」保育学研究
13 安藤智子、荒牧美佐子、岩藤裕美、丹羽さがの、砂上史子、掘越紀香(2008)
「幼稚園児の母親の育児感情と抑うつ:
子育て支援利用との関係」保育学研究 46 ⑵、pp.235-244
14 高橋千草、河野真紀、岩立京子(2002)
「子育て支援活動が虐待傾向を持つ母親と子どもに及ぼす影響」保育学研究、
40 ⑴、pp.21-28
15 赤井美智子(2007)
「地域における子育て支援:父親支援の現状と課題」保育学研究 45 ⑵、pp.247-248
16 吉田眞理(2000)
「地域における子育て支援についての考察-地域実践の調査を通じて-」研究紀要、小田原女子
短期大学、pp.13-25
17 野呂アイ、津田千鶴(2010)
「地域における子育て支援と保育環境:一時保育をめぐる乳幼児と保育士の発達保障
を中心に」保育学研究 48 ⑵、pp.245-254
18 山縣文治(2008)
「保育サービスの展開と地域子育て支援」保育学研究 46 ⑴、pp.62-70
19 文部省、厚生省、労働省、建設省(1993)今後の子育て支援のための施策の基本的方向について
20 松永愛子(2005)
「地域子育て支援センターの役割について-状況の多重性の中での「居場所」創出の場として」保
育学研究 43 ⑵、pp.52-64
21 木村吉彦監、仙台教育委員会編(2010)
「「スタートカリキュラム」のすべて-仙台市発信・幼小連携の新しい視点」
ぎょうせい
22 野口隆子、鈴木正敏、門田理世、芦田宏、秋田喜代美、小田豊(2007)
「教師の語りに用いられる語のイメージに関
する研究-幼稚園・小学校比較による分析-」教育心理学研究、pp.475-468
23 日名子太郎(2000)
「保育の国際化に関する調査研究報告書」日本保育協会
24 菅田貴子(2006)
「外国籍幼児の保育所への適応過程に関する研究:留学生家族の子どもの事例から見えてくるも
の」保育研究 44 ⑵ .pp.200-209
25 森真理(2009)Benefits of the "Free Play Room(Yuugi-shitsu)" for Foreign Children in Kindergarten : Toward
the Development for Multicultural Early Childhood Care and Education in Japan.東洋英和女学院大学紀要
26 吉田真奈美、春名めぐみ、大田えりか、渡辺悦子、Luisa T Uayan Maria、村嶋幸代(2009)在日フィリピン人母親
が子育てで直面した困難と対処」母性衛生 50 ⑵、pp.422-430.
― ―
64
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 59 集・第 2 号(2011 年)
27 上野葉子、石川由香里、井石令子、田淵久美子、西原真弓、政次カレン、宮崎聖乃(2008)長崎市における多文化保
育の現状と展望.保育学研究 46 ⑵、pp.277-288
28 植田郁(1996)
「異文化で暮らす幼児とその母親」乳幼児教育学 5、pp.73-83
29 厚生労働省(2008)保育所保育指針
30 金子省子、青野篤子(2008)
「ジェンダーの視点で捉えた保育環境と保育者のジェンダー観」日本家政学会誌、
pp.363-372
31 片田孫朝日(2010)
「子どもによる性別の境界形成と保育者の関与による乗り越え-ジェンダーに敏感な保育に向
けて」子ども社会学会、pp.59-70
32 神田直子、戸田有一、神谷哲司、諏訪きぬ(2007)
「保育園ではぐくまれる共同的育児観:同じ園の保育者と父母の
行く時間の相関から」保育学研究 45 ⑵、pp.146-156
33 神田直子、河合麻紀(2008)
「保育者の男女児への個人マーク選択とジェンダー意識:隠れたカリキュラムと表明
された意識」心理科学 29 ⑴、pp.32-44
34 池田友美(2007)
「保育士における発達障害の行動特性をもつ子どもの特徴と保育上の問題点に関する調査研究」
小児保健研究 66 ⑹
35 郷田英世(2008)
「幼稚園教諭・保育園における「気になる子」に対する保育上の困難感についての調査研究」、京
都教育大学紀要 113
36 吉兼伸子、林隆(2010)
「特別支援教育時代における保育士の業務上の保育困難感について」山口県立大学学術情
報 3、pp.81-87
37 湯澤美紀、湯澤正通(2010)
「仲間とともに育つ-アスペルガー症候群の子どもの体験と成長-」保育学研究 46 ⑴、
pp.36-46
38 田中浩司、橋本俊顕、高原光恵(2010)
「幼稚園における特別支援教育に関する研究:保育カンファレンスを中心
とした支援事例の検討」福山市立女子短期大学研究教育公開センター年報 7、pp.29-35
39 大場幸夫(2008)
「保育者相互の支え合い」保育学研究 46 ⑵、pp.8-11
40 野本茂夫(2008)
「保育者が保育のゆきづまりを乗り越えるとき-保育実践における保育者相互の支え合いの意
味」保育学研究 46 ⑵、pp.53-64
41 岡田たつみ、中坪史典(2008)
「幼児理解のプロセス-同僚保育者がもたらす情報に注目して」保育学研究 46 ⑵、
pp.33-42
42 佐伯胖(2000)
「学び合う保育者」発達 83、pp.41-47
43 太田光洋(2008)
「専門家としての保育者集団の発達を支えるもの」保育学研究 46 ⑵、pp.43-52
44 E, Wenger. & R, McDermott. W, M Snyder(2002)Cultivating Communities of Practice. Japanese Trnslation
rights arranged with Harvard Business School Press. Boston
野村恭彦監、野中郁次郎解説、櫻井祐子訳(2002)
「コミュニティ・オブ・プラクティス-ナレッジ社会の新たな知
識形態の実践」SHOEISHA
45 加藤悦雄(2010)
「保育士養成教育におけるソーシャル・グループワークの活用方法に関する一考察-キャンプ実
習活動を組み込んだ社会福祉援助技術演習の構成と展開-」作新学院大学女子短期大学紀要 33、pp.31-53
46 清水洋子、金子梨沙、中島寿子(2004)
「ティーム保育の実践的研究⑵:教師の特性を生かしたティーム保育につ
いて」西南女学院短期大学研究紀要 50、pp.53-60
47 浅見均(2001)
「ティーム保育についての一考察」青山學院女子短期大学紀要 55、pp.78_a-55_a
― ―
65
保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題
48 中坪史典、上松由美子、朴恩美、山元隆春、財満由美子、林よしえ、松本信吾、落合さゆり(2010)
「遊びの質を高
めるための保育者の援助に関する研究-幼児の「夢中度」に着目した保育カンファレンス」学部・附属学校共同研究
紀要 38、pp.105-110
49 松井剛太(2009)
「保育カンファレンスにおける保育実践の再構成:チェンジエージェントの役割と保育カンファ
レンスの構造」保育学研究 47 ⑴、pp.12-21
50 金玟志(2009)
「新人保育者による省察の意味とその変容を支える支援の在り方-保育実践後の「保育者間の話し
合い(対話)の中から」保育学研究 47 ⑴、pp.66-77
51 近藤幹生(2010)
「保育実践における記録の意味-園内研修・職員会議・新指針の位置づけにもふれて」季刊保育問
題研究 241、pp.4-47
52 相浦雅子(2010)
「保育士の資質向上に向けた研修について:大分市東部地区年齢別研修を通して」別府大学短期
大学紀要 29、pp.165-168
53 大塚良一(2009)
「保育所における管理システム構築に関する問題点と課題-第三者評価と ISO 9001 との比較調
査から」保育士養成研究 27、pp.83-91
54 山崎晃(2005)
「幼稚園では教育課程の編成にあたってどのような要因を考慮しているのか」広島大学大学院教育
学研究科紀要第Ⅲ部、教育人間科学関連領域 53、pp.305-314
55 門松良子、井戸和秀(2006)
「幼稚園教育課程と指導計画との関連」岡山大学教育実践総合センター紀要 6 ⑴、
pp.89-100
56 石崎忠則、高柳恭子、岩淵千鶴子、五十嵐市郎、櫻場由美、上野澄枝、岡田陽子、高崎かおり、上松麻子、内木久恵、
前原由紀、稲川知美(2002)
「教育課程の編成」幼稚園研究紀要 45、pp.67-78
57 高橋節子(2010)
「子どものための環境とは何か-保育所における物理的環境の調査」発達研究 24、pp.47-56
58 高橋多美子、高橋敏之(2009)
「幼少期における自然体験の年代別比較と望ましい自然体験の在り方」理科教育学
研究 50 ⑵、pp.89-87
59 米長幸子、山内淳子、山内紀幸(2009)
「統合保育における人的環境の変容:精神運動発達遅滞児 A 児をとりまく
子どもと保育者」山梨学院短期大学研究紀要 29、pp.223-237
60 ハビトゥスとは、ブルデューが社会的に獲得された性向(性質の傾向)の総体の意味で用いた概念。社会はハビトゥ
スによって意味付与されて、構造化されている。そして、その構造は実践の中に顕在化し、実践を枠付けしている。
藤田(1998)
「現象学的エスノグラフィー」藤田英典編著『教育のエスノグラフィー』
61 鈴木みゆき(2004)
「保育内容「表現」乳幼児の音楽」樹村房
62 新延花菜子(2009)
「5 歳児学級における遊び歌の実践と幼児の達成感」子ども社会研究 15、pp.205-214
63 志賀智江(1993)
「幼児理解を促進するための教師教育プログラムの開発と試行」乳幼児教育学研究 2、pp.27-39
64 金子龍太郎(1994)
「開放系と授抱性の概念による乳幼児理解と発達理解」乳幼児教育学研究 3、pp.35-44
65 野口隆子、鈴木正敏、門田理世、芦田宏、秋田喜代美、小田豊(2007)
「教師の語りに用いられる語のイメージに関
する研究:幼稚園・小学校比較による分析」教育心理学研究 55 ⑷、pp.457-468
66 大西道子、秋山有美子(2003)
「保育者養成における学生の成長過程—観察・参加実習における子ども理解」保育士
養成研究 21、pp.29-36
67 小川博久(2000)
「保育援助論」生活ジャーナル、pp.17-21
68 河邉貴子(2008)
「明日の保育の構想につながる記録の在り方:
『保育マップ型記録』の有用性」保育学研究 46 ⑵、
pp.245-256
― ―
66
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 59 集・第 2 号(2011 年)
69 小田豊編、中坪史典、上田敏丈、岡田たつみ、奥山優佳、後藤範子、香曽我部琢編著(2009)
「幼児理解からはじま
る保育・幼児教育方法」建帛社
70 内藤徳一、池末拓馬、宮村幸祐、仁木賢治、芳賀博英、金田重郎、新谷公朗、糠野亜紀(2009)
「発達段階に適合し
て保育傾向を表示可能な発達記録支援システムの提案」情報処理学会研究報告、pp.31-38
71 小川博久(2000)
「保育援助論」生活ジャーナル、pp.205-209
72 香曽我部琢、秋田房子、伏見範子、奥山優佳(2008)
「異年齢児の幼児の互恵性を育むために必要とされる保育者
の資質-ビジュアル・エスノグラフィー
73 草信和世、諏訪きぬ(2009)
「現代における保育者の専門性に関する一考察:子どもと響き合う保育者の身体知を
求めて」保育学研究 47 ⑵、pp.,186-195
74 柴崎正行、足立里美(2009)
「保育者アイデンティティに関する研究の動向と展望-日本における保育者アイデン
ティティ研究-」大妻女子大学家政系研究紀要 45、pp.25-33
75 足立里美・柴崎正行(2009)
「保育者アイデンティティの形成と危機体験の関連性の検討」乳幼児教育学研究 18、
pp.89-100
76 西山修(2008)
「保育者のアイデンティティと効力感は保育実践に影響を及ぼすか-領域『人間関係』について-」
乳幼児教育学研究 17、pp.19-28
77 OECD DeSeCo(2006) ドミニク・S・ライチェン、ローラ・H・サルガニク編著『キー・コンピテンシー -国際
標準の学力をめざして』立田慶裕訳、明石書店
78 松下佳代編著(2010)
「新しい能力主義は教育を変えるか-学力・リテラシー・コンピテンシー」ミネルヴァ書房
80 T, J. Peters. & R, H. Waterman, Jr. 大前研一訳(2003)
「エクセレント・カンパニー」英治出版
佐藤郁哉、山田真茂留(2004)
「制度と文化」日本経済新聞出版社
― ―
67
保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題
Analysis of Problem that Paradigm shift in
Professionals causes Teacher
Taku Kousokabe
(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)
The purpose of this study is to clarify the childcare and kindergarten Teacher’s professionals
on previous studies. First a special description is classified by the Teacher’s theory. Next,
Teacher’s Theory view and problem are shown on it. As a result, child care worker's specialty
was classified into four. As a result, child care worker's specialty was classified into four. (1)
Teacher’s Essence, (2) Professionals that contemporary society requests from teacher, (3)
Professionals of Teacher’s Community, (4) Individual Professional. And, three problems were
clarified in teacher's Professionals. (1) Systematization of tacit knowledge, (2) Identity of Teacher, (3) Organizational identity.
Keyword:C hildcare and Kindergarten Teacher, Professionals, Paradigm Shift, Identity of
Teacher, Organizational identity Organizational identity
― ―
68