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【2016年11月11日公開】
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~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~
「松崎美子」が注目テーマを一刀両断!
『政治ネタで動く英ポンド!
今後のメイ政権が進む道』
執筆者:(ロンドン在住/元為替ディーラー)
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一時帰国で日本に帰ってきて 4 週間が過ぎた。その間に何度か英国・ヨーロッパ関係のセミナ
ーをやらせて頂く機会を頂戴したが、必ず聞かれるのが「Brexit は、なかったことに出来るのか?」
という質問である。
先週の高等法院の判決により、英国は議会も国民も民主主義の崩壊危機に直面しており、非常
に低いが「Brexit がなかったことになる」可能性が浮上してきた。
今回のコラムでは、それについて書いてみたいと思う。
●高等法院からの判決
11 月 3 日(木)、英国の高等法院 3 名の裁判官は、「EU 離脱の正式な手続きを始めるにあたり、
EU 基本条約 50 条の行使には、議会の承認が必要」という判決を下した。日本人である私たちに
すれば、議会制民主主義発祥の地と言われる英国で、国の将来を決める重大事項の決定に議会
の承認が必要であることは、当たり前だろう。そう思いがちである。
しかし、これには違う解釈が当てはまる。
●英国の民主主義の原点
日本のような成文憲法典がない英国での憲法原則は、「国会主権の原則」である。つまり、『国
王・貴族院(上院)・庶民院(下院)の三者からなる国会は立法権を持ち、何人も国会が成立した法
律を無効にできない』と定められており、これが英国における民主主義の原点となっている。
今年 6 月 23 日(木)に実施された国民投票は「2015 年国民投票法案」に基いたものであり、この
法案は 544 対 53 の圧倒的多数で国会で承認され、法律化された。
つまり、国会が絶対多数で決定した法律に基づき国民投票は実施され、国民は 52%の多数で離
脱を望んだ。その結果を尊重し、国会は離脱手続きを進めようとしているのに、それに「待った!」
をかけた裁判所に従う義務はあるのか?多くの国民は、そこに疑問を感じている。
●最高裁でも敗訴の可能性
メイ政権は判決内容に不満を持ち、最高裁判所に上訴するようだ。予定としては、12 月 7 日(水)
前後に正式な審理が行われ、早ければ年内、遅くても来年早々に判決が言い渡される。英国の
最高裁には 11 人の裁判官がいて、重要事項には 9 人の裁判官が関わるといわれているが、今回
は 11 人全員が判決に関与する可能性が高い。
もし、最高裁が高等法院の判決を覆せば、メイ政権にとっては朗報であるが、現時点での予想は、
ここでも政府は敗訴するとみられていて、最後は欧州最高裁まで視野に入れるかどうかが議論さ
れている。
●最高裁での敗訴のあとは・・・
もし政府が敗訴した場合、政府がやるべきことは、「議会承認の必要性」を盛り込んだ新たな法
案を成立させることである。そのためには、新法案を議会で審議し、採決を取る必要性が生じ、法
案化にかかる時間は約 12 カ月といわれている。その場合、メイ首相が想定している「2017 年 3 月
末までに 50 条を行使する」というタイムテーブルが大幅に遅れることは避けられない。
もうひとつの問題は、新法案の中に「2 度目の国民投票実施」条項が盛り込まれる可能性が出てく
るかもしれない点である。英議会のほとんどの議員は、「残留」に票を入れたが、投票結果を尊重
し Brexit を受け入れている。しかし、一部のハードコア議員やスコットランド・北アイルランド出身の
議員たちは、未だに EU 残留を熱狂的に支持しているのも事実である。
たぶん、「2 度目の国民投票実施」条項を加えることは、議会で否決されるであろうが、万が一、盛
り込まれると「Brexit そのものが無効」となるかもしれないので要注意だ。
●解散総選挙の可能性
高等法院からの判決に揺れた翌日の 11 月 4 日(金)に新たな問題が発生した。それは、保守党
議員の一人がメイ首相に不満があるという理由で、突如として辞任したからである。2015 年総選
挙で予想外の単独過半数を獲得した保守党だが、法案設立に必要な議席数(絶対過半数)まで
の差は 14 となっており、もし今後新たな辞任議員が 7 人以上出てくると、過半数割れとなる計算
だ。
参考資料: 英議会ホームページ
http://www.parliament.uk/mps-lords-and-offices/mps/current-state-of-the-parties/
そこでにわかに浮上してきたのが、高等法院の判決に不満を持つ有権者からの同情票を取り込
み、保守党が議席を大きく増やすことに主眼をおいた「解散総選挙」実施の噂である。
2010 年以降、英内閣には議会の解散権がない。ただし、以下 2 つの「例外措置」があるため、やる
気になれば出来る。メイ首相は、この可能性を否定しているが、年明け早々解散総選挙を実施す
ることは不可能ではない点は頭に留めておくべきだろう。
そして、「総選挙実施年」に関する最新の賭け屋のオッズは、以下の通りである。先週まで「2017
年総選挙実施の可能性」は 20%以下であったが、現在は一気に 44.4%まで跳ね上がっている。
データ:Paddy Power ホームページ
http://www.paddypower.com/bet/politics/other-politics/uk-politics?ev_oc_grp_ids=2050094
●ここからの英ポンド
最近の英ポンドは、ファンダメンタルズもテクニカルも関係なく、「政治ネタ」で動いている。その
ため、ここからの英ポンドもチャートの形を気にするより、英国の政治関連のヘッドラインに注意す
べきである。
もし、今後「ソフト Brexit」の可能性が大きく取り上げられるようであれば、1.25 ドルから 1.28 ドルの
レンジを想定しているが、シカゴ先物 IMM での英ポンド・ショートが未だに歴史的水準まで積み上
がっていることを考えると、10 月保守党党大会が開催された頃のレベルである 1.30 ドル台が視野
に入ってくることも排除できないだろう。
-------------------------------------------------------------------------------【執筆者:松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】
東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 カ月後に渡英決
定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991
年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。
その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、
証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。
-------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】
本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として
おります。
本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ
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