小脳橋角部における脳腫瘍に対して放射線治療を実施した 17 症例 演

演題番号:22
演 題 名:小脳橋角部における脳腫瘍に対して放射線治療を実施した 17 症例
演者氏名:○的場未緒、中市統三、野田史子、板本和仁、宇根 智、田浦保穂
演者所属:山口大学農学部家畜外科
1. はじめに:犬の小脳橋角部に発生する脳腫瘍は比較的多い。その治療としては、手術が困難な部位であるため、放射線照
射による治療がしばしば実施される。今回小脳橋角部に脳腫瘍に対して放射線治療を実施した 17 症例の治療成績を検討
した。
2. 材料と方法:神経症状を主訴として山口大学附属家畜病院に来院し、MRI 検査で小脳橋角部に腫瘍が認められた犬 17 症
例を対象とした。症例の平均年齢は7歳 3 ヵ月、性別は雄:11 例、雌:6例であった。以上の症例に対して、常電圧放
射線照射(MBR-320,日立メディコ)による治療を実施し、その治療効果を検討した。さらにこれらの脳腫瘍の MRI 画
像上の特徴を、造影剤による増強効果の強弱、dural tail の有無などに基づいて分類し、治療効果との関連について検討し
た。
3. 結 果:検討した 17 症例中 11 例において、臨床症状の改善が得られた。これらの中には、症状の消失、MRI 画像上での
腫瘍陰影の著しい縮小などの十分な効果が得られたものが多数含まれていた。以上の脳腫瘍の MRI 上の特徴は、明らか
な増強効果と dural tail を認めたものが7例
(A 群)
、
明らかな増強効果を認めるが dural tail は不明瞭なものが8例
(B 群)
、
増強効果が軽微なもの、あるいはその他の特徴を有するものが 2 例(C 群)であった。これらの画像上の特徴と放射線治
療の効果の関連を検討したところ、A 群の7例すべては腫瘍の縮小または消失が認められた。一方、B 群では、腫瘍の縮
小効果が一部認められる場合もあったが、治療効果が得られない例が多数を占めた。A 群と B 群の1症例ずつは、病理
解剖によりそれぞれ髄膜腫と脈絡叢乳頭腫と確定診断された。また C 群においては、一部で臨床症状の改善が認められ
た。
4. 考 察:放射線治療により小脳橋角部の脳腫瘍の臨床症状および MRI 画像上の改善が多くの例で認められたことから、
この領域の脳腫瘍に放射線治療を実施する価値は高いと考えられた。また dral tail が認められる症例は病理組織学的に髄
膜腫である可能性が高いものと考えられるが、照射によって臨床症状の改善が期待できると思われた。しかし、その一
方で B 群に含まれると思われる脈絡叢乳頭腫などの髄膜腫以外の腫瘍では、放射線治療に対する反応が悪く、外科的ア
プローチの検討を含めて、その治療についての検討が今後の重要な課題であると考えられた。