テーマ ゴム わ け み まわ 輪ゴムや、ボールや、消しゴムなど、身の回りに ぶっしつ はたくさんのゴムがある。ゴムはどんな物 質で、 つく どうやって作るのだろう。ありふれているけど、 テキスト版 ふ し ぎ かんが 不思議なゴムについて 考 えよう。 執筆/柳田理科雄 制作/空想科学研究所 提供/栄光ゼミナール ゴムって、どんなもの? 1 ぶっしつ おお とくちょう ひ ぱ ゴムって、どんな物質だろう。ゴムの大きな特 徴 は、引っ張った お つぶ ちから くわ かたち か り押し潰したりねじったりして、力 を加えると、形 が変わることだ。 ひ ぱ なが の ひ ぱ すこ とくに引っ張ると、 長く伸びる。 プラスチックなども、 引っ張れば少 の の もと なが ばい ばい しは伸びるが、ゴムのよく伸びるものは、元の長さの5倍から10倍 の の ぶっしつ ほか ひ にも伸びる。こんなに伸びる物質は他にない。 ちから もと かたち もど ちから そして、力 をかけるのをやめると、 元の 形 に戻る。 このように、力 かたち か ちから もと かたち もど せいしつ だん をかければ 形 が変わり、 力 がなくなれば元の 形 に戻る性質を「弾 せい ぱ の ちから ゴムは引っ張れば伸びて、 力 ゆる もと もど だんせい を緩めると元に戻る。弾 性と せいしつ いう性 質だ だんりょくせい 性」や「弾 力 性」という。 だんせい り よう わ ゴムの弾性は、いろんなところで利用されている。たとえば、輪ゴ もと なが もど ちから ま こ てい ムは、元の長さに戻ろうとする 力 で、巻きつけたものを固定する。 じ てんしゃ に だい ひも おな パンツのゴムや、 自転車の荷台のゴム紐も同じだ。 スーパーボールは、 ゆか ちぢ もと かたち もど ちから は かえ ふうせん 床にぶつかると縮み、 元の 形 に戻ろうとする 力 で跳ね返る。 風船は、 おお の せいしつ り よう うご おもちゃ ゴムが大きく伸びる性質を利用している。ゴムで動く玩具は、ゴムが だんせい もと もど ちから り よう 弾性で元に戻ろうとする 力 を利用している。 今日の1日1科学 ばい ばい の ゴムは5倍から10倍にも伸びる せいしつ 2 ゴムのいろいろな性質 だんせい い がい せいしつ ゴムには、弾性以外にも、いろんな性質がある。 みず と みず とお り よう て ぶくろ まず、 ゴムは水に溶けず、 水を通さない。 これを利用して、 ゴム手 袋 ながぐつ ふ ろ せん すいどう じゃぐち し や、ゴム長靴や、お風呂の栓や、水道の蛇口をしっかり締める「パッ つく キン」などが、ゴムで作られている。 くう き とお ふうせん じ てんしゃ そして、ゴムは空気を通さない。風船や、自転車のタイヤのなかに だんせい くう き とお せいしつ り よう 入っているチューブは、ゴムの弾性と、空気を通さない性質を利用し えんにち みずふうせん ている。縁日の水風船は、ゴムが水も空気も通さない性質を活かして くう き とお いる。 ている えんにち みずふうせん みず くう き とお せいしつ い みず 縁 日の水 風 船は、ゴムが水も せいしつ り よう 空気も通さない性 質を利用し 1 すべ せいしつ り よう また、ゴムには、滑りにくいという性質もある。これを利用して、 くつぞこ じ てんしゃ くつした すべ つか ぐん て 靴底や、タイヤや、自転車のブレーキに使われている。また、軍手や ど かいだん 靴下のなかには、ゴムの滑り止めがついたものがある。階段にもゴム すべ ど の滑り止めがついていることがある。 け すべ り よう えんぴつ か かみ 消しゴムも、ゴムの滑りにくさを利用している。鉛筆で書いた紙に すべ ひょうめん 消しゴムをこすりつけると、ゴムは滑りにくいので、 表 面がはがれ ほそなが かみ えんぴつ こな て、細長い「ケシカス」になる。このとき、紙にこびりついた鉛筆の粉 ま と じ え き を巻き取るから、字や絵が消える。 今日の1日1科学 け すべ り よう 消しゴムはゴムの滑りにくさを利用している なに つく ゴムは何から作る? 3 なに つく ゴムは、何からどうやって作られるのだろう。ゴムには、ゴムノキ つく てんねん せき ゆ つく ごうせい から作る「天然ゴム」と、石油などから作る「合成ゴム」がある。こ てんねん つく かた せつめい こでは、天然ゴムの作り方を説明しよう。 てんねん ざいりょう 天然ゴムの材 料 になるのは、ゴムノキのなかでもパラゴムノキと き じゅえき じゅえき き なが えきたい いう木の樹液だ。樹液とは、木のなかを流れている液体のことで、パ じゅえき ぎゅうにゅう しろ よ ラゴムノキの樹液は 牛 乳 のように白く「ラテックス」と呼ばれる。 のうえん しゃしん き みき 写真① ラテックス きず パラゴムノキの農園では、 【写真①】のように、木の幹に傷をつけ なが だ よう き あつ さんせい えきたい て、 流れ出したラテックスを容器に集める。 ラテックスは、 酸性の液体 ま みず わ せいしつ かわ を混ぜると、水とかたまりに分かれる性質があり、そのかたまりを乾 てんねん かすと、天然ゴムになる。 やわ しゃしん い おう ただし、そのままでは柔らかすぎるので、 【写真②】にある「硫黄」 ぶっしつ ま じょう ぶ わ い おう ま 写真② 硫黄 てんねん という物質を混ぜて、丈 夫にする。輪ゴムなども、硫黄を混ぜた天然 おお ゴムが多い。 つよ えんぴつ しん つか たん そ ま もっと強くしたいときは、鉛筆の芯にも使われている炭素を混ぜ くろ たん そ はい ふ つう くるま る。タイヤが黒いのは、炭素が入っているからだ。普通の 車 のタイ ごうせい てんねん すべ ヤは合成ゴムでできているが、天然ゴムのほうが、滑りにくいので、 ひ こう き しゃしん てんねん ©Rick Dikeman 写真③ F1マシン つく 飛行機や【写真③】のF1マシンのタイヤは、天然ゴムで作られてい る。 今日の1日1科学 てんねん じゅえき つく 天然ゴムはパラゴムノキの樹液から作られる 2 の ゴムはなぜ伸びる? 4 の ちぢ ゴムは、なぜ伸びたり縮んだりするのだろうか。 ぶん し ちい つぶ みぎらん しゃしん うえ ず ゴムは、 「分子」という小さな粒が、右欄の写真の上の図のように、 ぶん し ふる ジグザグにつながってできている。ゴムの分子は、プルプルと震えて いる。 ぶん し ゆる しゃしん した ず ひ ゴムの分子は緩くつながっているので、写真の下の図のように、引 は の ぶん し うご はん い せま っ張れば、伸ばすことができる。ただし、分子の動ける範囲が狭くな じ ゆう ふる ぶん し すこ ぶん し ゆる ゴムは 分 子がジグザグに 緩 く つながってできている るので、自由に震えることができなくなる。ゴムの分子は、少しでも じ ゆう ふる ふる いきお もと なが もど 自由に震えようとして、震える 勢 いで、元の長さに戻ろうとする。 だんせい り ゆう の これがゴムに弾性がある理由だ。まとめると、ゴムが伸びるのは、 ふん し ゆる ちぢ ぶん し すこ じ ゆう ふる 分子が緩くつながっているから、縮むのは、分子が少しでも自由に震 えようとするからだ。 今日の1日1科学 ぶん し ふる いきお もと もど ゴムは分子が震える 勢 いで元に戻る 5 チューインガムもゴム? こと ば に チューインガムの「ガム」という言葉は「ゴム」に似ている。また、 ひ ぱ はな もと もど かんだチューインガムも、 引っ張って離すと、 ゴムのように元に戻る。 おな ゴムとガムは同じものだろうか。 むかし き じゅえき ねば け えきたい えい ご 昔、 ヨーロッパでは、 木の樹液のように、 粘り気のある液体を、 英語 ご よ いま では「ガム」 、ドイツ語では「グミ」と呼んでいた。そう、グミは、今 か し な まえ ではお菓子の名前にもなっている。 ねんだい か じつ お てんねん も 1400年代の終わりに、 コロンブスがアメリカから天然ゴムを持 かえ じゅえき つく えい ご ち帰ったとき、ドロドロした樹液から作られるので、英語で「ガム」 き 果 実 をつけたサポジラの木。 むかし き じゅえき 昔 はこの木の 樹 液 からチュ つく ーインガムが作られていた よ と呼ばれるようになった。 むかし き じゅえき そして、チューインガムも、 昔 は「サポジラ」という木の樹液か つく じゅえき つく てん ら作られていた。つまり、ゴムもガムも、樹液から作られるという点 おな なか ま い では、同じ仲間と言える。 えい ご じゅえき つく よ このように英語では、樹液から作られるものがガムと呼ばれてい に ほん はい の ちぢ すこ た。それが日本に入ってきたとき、伸びたり縮んだりする「ガム」は少 へん か し変化して「ゴム」になり、チューインガムの「ガム」は、そのまま 「ガム」になったというわけだ。 今日の1日1科学 おな なか ま ゴムとガムは同じ仲間 3 じゃく て ん 6 なに ゴムの弱点は何? べん り じゃくてん ねつ ひかり くう き よわ ゴムはとても便利だが、弱 点もある。それは、熱や 光 や空気に弱 いことだ。 ぶん し ちい ゴムは、 「分子」という小さなものが、ジグザグにつながってでき ねつ くわ たいよう ひかり ふく し がいせん あ ている。これに、熱が加わったり、太陽の 光 に含まれる紫外線が当 くう き ちゅう さん そ むす ぶん し たったり、空気 中 の酸素が結びついたりすると、分子のつながりが き し がいせん ば しょ さん そ き や、紫 外 線 や、 酸 素で切れて き あちこちで切れる。そうなると、ゴムはボロボロと切れやすくなる。 ぶん し ねつ ゴムの 分 子のつながりは、 熱 ぶん し しまう き また、分子のつながりがたくさんの場所で切れてバラバラになると、 ほか 他のものにくっついたりする。 ほか あ すべ そして、ゴムは、他のものとこすれ合ったときに滑りにくい。こす あ ま さつ すべ ま さつ く れ合うことを「摩擦」といい、ゴムは滑りにくいために、摩擦を繰り へ じ てんしゃ なが の 返すと、すり減っていく。自転車のブレーキのゴムは、長く乗ってい へ き てんけん ひつよう るとすり減って、ブレーキが効かなくなるので、点検が必要だ。 今日の1日1科学 ねつ ひかり くう き ま さつ よわ ゴムは、熱、 光 、空気、摩擦に弱い やなぎ た り か お へん しゅう こう き 柳 田理科雄の編 集 後記 ぼく き ま さき おも だ も けい ひ こう き どうたい ほそ 僕が「ゴム」と聞いて真っ先に思い出すのは、模型飛行機です。胴体が細い もくざい つばさ たけ もくざい かみ ちから まわ 木材で、 翼 が竹ひごと木材と紙でできていて、ゴムの 力 でプロペラを回し と た つく ぼく こ て飛びます。『となりのトトロ』で、カン太も作っていました。僕が子ども だ が し や ざっ か てん う えん えん のころは、駄菓子屋や雑貨店などでも売っていて、50円や80円ぐらいで つく むずか と ほんとう うれ した。バランスよく作るのがとても 難 しく、うまく飛んだときは、本当に嬉 ひろ ば しょ へ こ つく と しかったです。いまは広い場所が減っためか、子どもたちが作って飛ばすこ すく さいこう か がく きょうざい とは少なくなったようです。最高の科学の 教 材なのに、もったいないな~、 おも と思います。 4
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