屋外での有機溶剤作業について Q 屋外での有機溶剤作業についての質問です。 【事例】 40代男性:屋外のペンキ塗り作業の社員(ペンキ塗り専門として雇用されているとのこと。工 場でこの方のみが作業しております)。特殊健康診断で、5~6年前から尿中馬尿酸の分布が1 ~2を推移。私が赴任するまでは特別な検査はしてないようです。現在この方の対応に困って おります。 【問題点】 ① 工場に1人しかペンキ塗り作業者がいないため、他の従業員との比較ができない。 ② 屋外での有機溶剤作業のため作業環境測定の対象にならない(測定方法が分からない・・・)。 【質問】 屋外の有機溶剤業務に対する対策をどうすればよいのか。特に、屋外の作業環境測定、作業環境管理、作業 管理について教えて下さい。 現時点の対策としては、作業管理(防毒マスクをつけてもらうなど)を徹底することと、安息香酸を含む飲料水を 摂取してないことを確認して再検査を行う予定としておりますが、他に何か留意点があれば併せて教えて下さい。 A 屋外作業場等における作業環境 管理については、ご存知かもしれま せんが、平成 17 年 3 月 31 日付け基 発第 0331017 号にガイドラインとして ① 施設、設備、作業工程または作業方法の点検を 行い、その結果に基づいて作業工程や作業方法など の改善に必要な措置を講じる。 ② 必要な措置が講じられるまでは労働者に有効な 示されています。個人サンプラー(個 人に装着することができる試料採取機器をいう)を用い て作業環境測定を行うようです。このガイドラインの作 成に関与された産業保健学部の保利教授にお話を 伺うと、サンプリングの方法として小型ポンプを使用し たほうが正確ですが、有機溶剤の場合はポンプを用 呼気用保護具を使用させる。 ③ 作業環境測定結果および評価結果の記録の保 存は測定対象物質ごとに行い、保存期間は屋内作業 場の場合と同じである。 【作業環境管理について】 ① 高所で作業する場合には保安帽、命綱、安全ベ いないパッシブタイプのもので構わないとのことでした。 軽量ですので測定の時間も長く設定することも可能で すし、パッシブガスチューブは 12 本入りで 1 万円前後 と購入しやすいと思います(住友スリーエムや柴田科 学器械工業など)。ガイドラインであり、法的な規制で はありませんので、会社の担当者への説得が必要で ルトを着用して転落を防ぎ、塗料などの材料も落下を 防止する。 ② 塗装作業中に塗料や油がこぼれると滑りやすくな るので、床面の滑り止めの工夫が必要な場合がある。 ③ 塗装作業場内では喫煙を含めて一切の火気の使 用を禁止して引火、爆発を防ぐ。 す。 実施方法について簡単に述べます。 ① 測定は作業開始時および 1 年以内ごとに1回、定 期的に行う。 ② 測定点は、当該物質を取り扱う労働者全員の呼 気域として、個人サンプラーを装着する。 ④ 工具類は衝撃などで火花が出ない安全工具を使 用し、静電気が蓄積しないように装置にはアースを取 り付ける。 ⑤ 通風の悪いところで作業をする時には酸素欠乏 症が生じる可能性があるので、そのような場所では有 機溶剤濃度とともに酸素濃度も測定する必要がある。 ③ サンプリングの時間は気中濃度が最大となる時間 帯を含み、継続した 10 分以上とする。 測定値が管理濃度を超えた場合には以下の措置 を講ずる(一般的なことです)。 ⑥ 塗装作業の場合、複数の有害物質に曝露される 可能性もあり、有害物の濃度がすべて許容範囲内に あっても、有害物質の数が増すほど危険性が増すこと に注意する。 12 【作業管理について】 ① 防毒マスクは一定の有機溶剤を吸着すると効果 がなくなるので予想される曝露量と使用時間を考慮し て吸収缶を交換する。 ② 防毒マスクは作業場に放置すると拡散などにより 有機溶剤を吸収するため、早期に吸収缶を交換する (相談窓口 Q&A 第2集を参照) ① 尿中馬尿酸を生ずる可能性のある飲食物は清涼 飲料水類、柑橘類、食品添加物(防腐剤としての安息 香酸など)、風邪薬等、極めて多岐である。 ② 完全に食品等の由来の尿中馬尿酸を制限するこ とは難しいと考えられる。 必要が生じるので保管場所を確保する。 ③ 有機溶剤は皮膚から吸収されるおそれがあるの で、作業者に保護手袋の着用や皮膚への保護クリー ム塗布を励行する。 ④ 通風の悪いところで作業をする時には酸素欠乏 症にならないように送気マスクを着用する必要があ ③ 体内に吸収されたトルエンの大部分は肝臓のチト クローム-p450 により代謝、安息香酸となり、グリシン 抱合を受けて馬尿酸として尿中へ排泄されるので p450 群の酵素異常による体質から尿中馬尿酸の高 値を示す可能性もあり得る。 ④ 尿中馬尿酸と尿中 o-クレゾル(他、血中トルエン る。 ⑤ 塗膜の剥離や下地処理などの粉塵が発生する場 合には防塵マスクと保護メガネを着用する。 【尿中馬尿酸高値への対処】 や終業時呼気中トルエンなど)を測定して、馬尿酸の み高値の場合は問題なしとして処理をすることもある。 13
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