最高のリーダーの発掘 - 富士ゼロックス総合教育研究所

探求
最高のリーダーの発掘
後回しになっています。
追求します。
メンバーは、
リーダーが自分たちに何を期待している
メンバーのエンゲージメントを高めるリーダーの特性
トマス・チャモロープレムズック
額の費用をかけて良いリーダーを発掘しようとしますが、ほとんど
ん)のあるリーダーは、一見、愛想がいいものの、個人的な利益を
か、
フィードバックをきちんと聞いているかが分からないため、
リー
米ホーガン アセスメント システムズ社CEO
どのような人物が最高のリーダーになるのでしょうか? 企業は多
格好よさ、人種もリーダーを判断する要素となっており、有効性は
注目されやすいリーダー vs 有能なリーダー
ダーに対する信頼を失くしてしまいます。
人を操る
(無謀さ)
:人の行動を操るほど魅力があることはメリット
私たちは、有能なリーダーをどのように選ぶとよいのでしょうか?
かもしれませんが、多くの場合、人を操るリーダーは、誠実さに欠
まずは、有能でメンバーのエンゲージメントを高めるリーダーの特
け、他者を利用していると見られるため、評価が分かれ、なかなか
性を理解する必要があります。情緒が安定し、邁進力にあふれ、
信用してもらえません。
社交性があり、他者の感情に敏感なリーダーが、そのようなリーダー
他者の関心を引きたい(多彩な)
:多彩なリーダーは、
自己中心的
であるケースが多く見られます。
と見られることがあります。彼らはチームよりも、
自分自身がもっと
注目を引きたいと考えます。
そのため、
チームメンバーは長期間高
情緒安定性(適応性)
:情緒安定性の高いリーダーは、プレッ
い意欲を維持できない可能性があります。
の投資は無駄になります。良いリーダーシップを理解し定義するこ
人間が他者とうまく付き合い、他者から抜きん出て、何らかの意
シャー下でも常に安定しています。冷静さを維持することで、
チー
とは、卓越した多様なリーダーシップチームを組織の中に育てるう
味を見いだす方法は、パーソナリティによって決まるため、異なる
ムが集中して取り組める環境を作り、成果をあげるために必要な
えで非常に重要です。しかし、これはなかなか難しいことです。大
パーソナリティ特性を持つリーダーが、それぞれに異なるリーダー
安心感を提供します。
抵の場合、私たちは主観的体験に基づいて判断し、確固とした心
シップスタイルを持つのは当然のことです。
邁進力(慎重性/大望野心)
:邁進力の高いリーダーは結果と目標
ここまで、有能なリーダーと注目されやすいリーダーについて説
しばしば、「目立つ」パーソナリティ特性を持つ人がリーダーにな
達成を追求します。
当社の研究では、邁進力の示し方は国によって
明してきました。では、どうすれば自分たちの組織や文化に合った
成功する有能なリーダーの特性を理解している、と私たちは考え
る傾向があります。私たちは、自己中心的で、傲慢で、大げさに振
違います。
日本などの東アジアでは、
リーダーが細部に配慮しなが
最高のリーダーを発掘することができるでしょうか? 重要なことは、
ます。しかし、直感に基づいて予測してもうまくいかないことは明
る舞う人に目が行きがちですが、こうしたタイプの人は、注目を集
ら、
ビジョンを掲げてチームの業務遂行を助けることで結果への
私たちが心の中に偏見を持っていて、それによって判断が鈍ること
白です。まわりを見渡してみてください。民間企業でも公的機関で
めることや目立つことが得意です。自分のアイデアを声高に主張し、
邁進力を示します。
アメリカやイギリスでは、
リーダーは主導権を
を自覚することです。私たちは、リーダーのあるべき姿に対する自
もリーダーになる人物の多くは、効果的な行動が明らかに不足して
進んで実権を握ろうとします。しかし、こうした行動は、有能なリー
握る個人として邁進力を示す傾向があります。
分の先入観は間違っていると、オープンに受け入れる必要がありま
います。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
ダーの特性ではありません。それどころか、当社の研究結果から、
社交性(社交性)
:高い社交性を持つリーダーは、
チームと信頼関
す。そして強力な科学的ツールを使用して、効果的に行動できる潜
自己中心的なリーダーが率いるチームは意欲が低く、チームの有効
係を築き、和やかな雰囲気を作り、良いネットワークを確立して、
在能力を持ったリーダーを見つけることが重要です。
性も低下することがわかっています。
オープンなコミュニケーションを促します。
理学的研究を活用しようとはしません。
良いリーダーとは?
最高のリーダーを発掘するためにできること
最後に、有能なリーダーの特性は世界共通ではありません。基
良いリーダーは皆、同じような特性を持っています。彼らは知的
他者の感情に敏感(対人的感受性)
:他者の感情に敏感なリー
本的な特性は同じでも、その表し方は国によって異なります。さま
で非常に尊敬されています。優れた判断ができる、失敗から学ぶ、
ダーは、他者の問題に関心を寄せ、利他的です。
チームが何を求め
ざまな文化を対象にビジネスを行うためには、この点は特に重要で
みましょう。すべての人間は、他者とうまく付き合い、他者より抜
誠実である、しっかりとしたビジョンがあるといった特性を備えて
ているか耳を傾け、信頼感を高めます。
す。アメリカで有能なリーダーでも、日本のチームのニーズを理解
きん出ようとし、何らかの意味を見いだそうとしています。リーダー
います。良いリーダーは、フィードバックに耳を傾け、真に自らを
は、人々がこうしたことを実現できるよう社会を形成する手助けを
変革し、自己を十分に認識しています。とはいえ、こうした特性を
します。また、リーダー自身も、同様にして自らのニーズを満たそう
持つ人が、組織のリーダーとして最初に注目されるとは限りません。
とします。パーソナリティは、人がこうしたことをどのように実現す
このタイプの人物は政治的な駆け引きをほとんどしないため、大
るのか、そのやり方の違いを示す指標となります。協力しながら生
抵の場合、会社は彼らをリーダーに適した人物とは考えません。彼
ていきましょう。ストレスやプレッシャーの下で、感情を爆発させる、
ナーシップによって、有能なリーダーを発掘するための優れたリソー
き残ることを好む人もいれば、高い地位や成功のために支配するこ
らは、自分の時間の多くをプロジェクトに費やし、仕事を遂行します。
慎重すぎる、受動的攻撃性がある、人を操る、他者の関心を引き
スが揃いました。さまざまな国や市場、業界において有能なリーダー
とを好む人もいます。リーダーの仕事は、グループが生き残り、勢
社内政治には時間を使いません。大げさに振る舞い、人の注目を
たいという資質を持つリーダーは、チームの士気とパフォーマンス
として活躍できる人材を見つけだすためにぜひご活用ください。
いを増すことができるよう、グループ内の協力関係と支配関係のバ
引こうとはしません。そのため、有能ですが、なかなかリーダーと
を低下させる可能性があります。
ランスを調整することです。
して見いだされません。
この質問に答える前に、リーダーシップが存在する理由を考えて
さらにリーダーは、一人ひとりのメンバーが意味を見いだせるよ
しているとは限りません。
同様に、
シンガポールの有能なリーダーが、
メンバーのエンゲージメントを損なうリーダーの特性
次に、メンバーのエンゲージメントを損なうリーダーの特性を見
何が良いリーダーであり、何が悪いリーダーなのか、その考え方
感情を爆発させる
(興奮しやすい)
:感情を爆発させるリーダーは、
う方向性を示します。ビジョンを掲げることで、メンバーが安全だ
は非常にはっきりしているように見えますが、リーダーの選抜は、
情緒が不安定で気分にムラがあるため、
チームにストレスや混乱
と感じ、安心して行動できる組織構造が生まれます。これに伴い、
事実と関連のない要素の影響を受けます。例えば、リーダーシップ
を与えます。
リーダーは意思決定者になることを期待されます。意思決定はスト
の有効性に性別はまったく影響しないという事実があるにもかかわ
慎重(用心深さ)
:慎重なリーダーは、特定の状況では優れた能力
レスがたまる仕事であり、リーダーにはグループにメリットをもたら
らず、世界中で女性よりも男性の方がリーダーらしいと考えられて
を発揮しますが、度が過ぎると、他者をイライラさせ、弱いリー
す優れた意思決定が求められます。全容を把握し、グループ全体に
います。また、従来のリーダー像に近い人ほど、よりリーダーらし
ダーと思われます。
リスクを嫌う傾向は優柔不断にもつながり、
とって最善の決定を下す必要があります。こうした行動ができれば、
いと考えられる傾向があります。女性への偏見が、非常に多くの男
チームが積極的に動けなくなります。
リーダーシップは、グループにとって良いリソースになります。
性をトップリーダーに押し上げてきました。性別の他にも、年齢、
受動攻撃性(悠長さ)
:受動的攻撃性(医学的な意味ではありませ
4
成功した方法をドイツチームに反映させるには、ある程度のコーチ
ングが必要かもしれません。
Hogan社の研究と富士ゼロックス総合教育研究所とのパート
プロフィール / Tomas Chamarro-Premuzic
Ph.D., Personality and Intellectual Competence, University College London
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン経営心理学教授。
ニューヨーク大学、
コロンビア大学
での教授経験もある。心理学のプロファイリング、消費者
解析論、
タレントマネジメントの国際的な権威。
パーソナリ
ティと行動についての学術的な理論と現実のビジネスを
関連付けることを基盤とするホーガン社において、新商品
のリサーチと開発を指揮する責任者として従事。2013
年、Workforce Management as a 2013 Game
Changerによって人材育成業界の成長と成功に貢献した
40歳以下の次世代リーダーに選ばれている。著書に
「自
信がない人は一流になれる」
(PHP研究所)
などがある。
5