Vol.67 2011年11月15日発行 FAJ鉢物レポート12月

FAJ 鉢物レポ-ト 12月
□ 発行日:平成23年 11月30日
□ 発 行:(株)フラワーオークションジャパン
企画課
Vol.67
FLOWER AUCTION JAPAN, INC.
第1回ポットプランツコンテストが11月9日に開催されました。
出品数200点の中から見事金賞に選ばれた苗物をご紹介いたします。
ポットプランツコンテスト大賞
(財)日本花普及センター会長賞
山下園芸 山下徳弥
(有)ジッポー 服部一夫
パンジー“絵になるスミレ” 3.5号
ユーホルビア“白雪姫”
3.0号
★巻末ページ「生産者特集」で
山下園芸さんをご紹介していま
す。合わせてご覧下さい。
(社)日本家庭園芸普及協会・会長賞
(社)日本花き生産協会・会長賞
山武ガーデン 高野正夫
B&Yグループ 会田孝治
ストック“ベイビー”
3.5号
ハボタン(デユエット
晴姿&ハツベニ)
3.0号
(株)グリーン情報「Garden Center」賞
滑川裕之
ミニシクラメン
“スーパーコンパクト”
3.0号
(株)誠文堂新光社「農耕と園芸」賞
森田園芸
森田茂一郎
球根ベゴニア
“フォーチュン”
3.5号
(株)花卉園芸新聞社賞
高橋園芸 高橋清一
クリサンセマム
パルドーサム
“ホワイトエンジェル”
3.5号
(株)草土出版「月刊植物デザイン」賞
北斗園芸
筑城司
チェッカーベリー
「ビッグベリー」2.5号
鉢物レポート Vol.67
(株)日本農業新聞社賞
(株)NHK出版「趣味の園芸」編集長賞
箱根洋ラン園 内藤宗尊
ミント(寄せ)
「ヨーグルトミント」
3.5号
金井園芸 金井章浩
プリムラマラコイデス
“古都さくら”
3.5号
島根八束ボタン品評会 中央通路にて
高知県園芸連
11月20日(日)~11月26日(土)
ポインセチア品評会
11月23日(水)審査、24日(木)せり
全国洋蘭品評会
11月25日(金)審査、26日(土)せり
お正月ギフト展示 受付前廊下にて
11月27日(日)~12月3日(土)
(株)フラワーオークション社長賞
和孝園
和田孝一
パンジー
3.5号
シクラメン品評会
11月30日(水)審査、12月1日(木)せり
審査員奨励賞
牛窪園芸 牛窪弘樹
ビオラ
「八方美人シリーズ」
3.5号
韓国サボテン展示
12月4日(日)~12月10日(土)せり
止市
12月29日(木)
休業
12月30日(金)~1月3日(火)
初市
1月5日(木)
前回は冬越しについてまとめてみました。その最後のほう
に英国王立園芸協会(RHS)による耐寒性の区分を示しまし
*耐暑性とは
前回の冬越しに続いて、今回は夏越し、耐暑性についてまとめます。
Gar-
耐暑性とは暑さに対する抵抗力を表わした言葉で、寒さに対する抵抗
RHS
力である『耐寒性』に対比されるものです。しかし、『耐寒性』と『耐
Plant Hardiness Rating System”を採用するとの記事を見
暑性』は基準の有るなしや使われ方に大きな違いがあります。つまり、
たが、それが印刷された頃に届いたRHSの機関誌”The
den”の9月号に、2013年より新しい基準”The
New
つけました。それは-10℃以下を3ランクに分け、また5℃以
上を3ランクに分けるというものです。同じイギリスの中で
『耐寒性』は客観的な基準があり、そのランクを見ればどの程度の冬越
し対策が必要かどうか判断できます。同じように、『どれだけの暑さに
どの程度耐えるか』という客観的な基準があれば、誰もがその基準に
も南部は冬に-10℃ほどに下がるのが例年ですが、寒さが厳
よってどのような対処をすれば良いか判断できることになります。しか
しい年は-15℃に、稀に-20℃まで下がります。それが北部
し、耐暑性にそのような基準は存在しません。0000000000
のスコットランドやアイルランドに至れば-20℃に下がるこ
とが多くなり、イギリスの気候風土に合わせて、植物ごとに
*耐暑性の階級を考える
植栽可能な地域をより厳密に表わすための改定です。いっぽ
一般には、耐暑性がある、あるいは耐暑性が強い、弱いなどと表現し
う、5℃以上の部分を15℃以上、10~15℃、5~10℃の3ラン
て使います。経験に照らしても、確かに暑さに弱い種類と強い種類があ
クに分けたのは、熱帯産の植物が鉢植えで出回る現実に対応
するための細分化でしょう。この改定により、米国のUSDA
Plant Hardiness Zoneに似通ってきました。
ります。例えば、ブルーポピーで知られるメコノプシスは関東以西の平
地で夏を越すのは難しく、北海道の生産者でさえ夏は羊蹄山に山上げし
ています。メコノプシスなどは、耐暑性がないということができます。
それほどでなく、『耐暑性が弱い』といわれる植物の場合、工夫次第で
では、日本でどちらが良く使われているか、あるいは世界
夏越し可能な植物と理解してよいと思います。園芸書では遮光を施すな
的にどちらが広く使われているか、といえばRHSの基準より
どして気温の上昇を避け、施肥を控え、植替えや株分けも夏を避けるな
もUSDAの基準のほうに分がありそうです。
どの工夫をすることで夏越しするとあるものです。いっぽう、耐暑性の
強い植物では夏も施肥を続け、植替えや株分け、挿し木などの作業も問
題なく行えます。これで一先ず3ランクに分けることが出来ました。
Vol.67
FLOWER AUCTION JAPAN, INC.
*耐暑性の強弱を決めるもの
どのようなメカニズムによって耐暑性の強弱が生まれるのか、確かな研
究もなく、科学的に解明されていないのが現状です。しかし、園芸の世界
では耐暑性の弱いものを上手に夏越しさせるために、様々な工夫がなさ
れ、確かな成果を上げています。どのような工夫があるのか、思いつくと
ころを次に並べて解説してみました。
加えて、線虫の侵入を防ぎ、ナメクジの食害も少なくなるなどのメ
リットもあります。
5) 夏は昼間の水やりを避ける・・・気温が高い時間帯の水やりを避ける
のが夏の水やりの大原則です。高温時の水やりは根腐れを起こしや
すいからですが、なぜ根腐れするのか、よく判っていません。です
が、次の2つが根腐れの原因と考えています。ひとつは、高温で呼
1) 寒冷紗などで光をさえぎる・・・植物や鉢に当る光を弱くすることで植物
吸が盛んになった根は大量の酸素を必要としますが、水やりによっ
体の温度や地温の上昇を低くします。
て鉢土中の酸素量が少なくなり、酸欠状態に陥り、根が腐るとする
2) 西日を避ける・・・これもよく言われることです。なぜ西日を当てると傷
むのか、その理由は入射角が低くなる西日は株元に届くからです。株元に
説です。もうひとつは、水は比熱が高く、高温になった大量の水が
夕方まで鉢土を高温に保ち、根が傷むとするものです。
日があたると地温が上昇し、鉢植えなら鉢の温度を上げます。そして、土
6) 多孔質の用土で植える・・・山野草を育てるとき、鹿沼土や赤玉土な
壌が乾きやすくなります。鉢をアルミ箔で包んだり、一回り大きな鉢の中
ど多孔質の用土をベースにしたものを使います。中には用土に含ま
に入れて鉢を二重にする手法も知られていますが、これなども鉢に当る光
れる細粒を洗い流し、程よく乾燥したものを使う人もいるほどで
を遮り、温度上昇や乾燥を避けるための工夫です。
す。目詰まりしにくい多孔質の用土を使うと、夏越しが難しい植物
3) 素焼き鉢を使う・・・鉢の表面に染み出た水が気化して蒸発するとき、鉢
から気化熱を奪うために、鉢土の温度が下がりやすいのが素焼き鉢の特徴
です。表面積が大きい鉢を使えば、そして風通しの良い場所に置けば蒸発
も夏越ししやすくなるといいます。また、前記の素焼き鉢は鉢土の
温度が下がりやすいだけでなく、根に酸素が届きやすいことが夏越
しを容易にしていると考えられます。
がさらに多くなります。夏は風通しの良い半日陰に移動するのは、ひとつ
7) 施肥を控える・・・耐暑性の弱い植物に多量の施肥をすると根腐れを
は直射を避けて温度上昇を防ぎ、風が通る場所を選ぶことで鉢表面からの
起こして枯れてしまいます。そのために、夏は多くの植物で施肥量
蒸発が盛んになり、地温を下げることができるからです。
を少なくし、あるいは施肥を中止します。
4)
棚の上に置く・・・これも夏越し対策の基本のひとつです。昼間は地面に
8) 小苗で夏越しする・・・プリムラ類など、夏前に発芽した小苗で夏
光が当ると地温が上昇して空気を暖めますが、夜は地面が放射熱を放って
越しさせる栽培体系があります。また、夏前に切り戻しをして植替
冷えることで空気を冷やします。その結果、昼の気温は地表から離れるほ
えすることで夏越しが容易になるものがあります。一般に、幼若性
ど低くなり、夜は地表から離れるほど高くなります。また、鉢を地面から
が強い株は環境変化や過酷な環境に強いことが知られています。小
放すことで鉢の下にも風が通るようになり、鉢が乾きやすくなります。
苗で夏越しさせるのも、切り戻しや植え替えをして(栄養)生長に
水やりの回数が増えることになりますが、水やり後の過剰な水をすばやく
勢いを付けるのも、そのメカニズムを活用したものです。
取り除くことが出来て、根腐れのリスクを減らすことができます。
*夏越しのポイント
夏越しの工夫はまだあると思いますが、以上の例からいくつかの推測が出
来ます。それを以下にまとめましょう。
と、逆に酸素を多く含ませた水の2種類を用意して比較栽培しまし
た。脱気した水で育てたものは夏の間にほとんど育ちませんでした
が、酸素を多めに含む水で育てたものは夏の間も生育をし続けたと
いうものです。もう1例を挙げれば、アンスリウムとニューサイラン
①暑さで植物が傷むとき、根からダメになる
を育てる鉢物生産者を訪問したとき、ある人はオランダで使用する
夏の高温が植物のどの部分に大きな影響を及ぼすのかを考えたとき、前
専用土を使い、ある人は赤玉土中心の用土で育てていました。前者
記の工夫も多くが気温よりも地温のコントロールによるものが多いことな
はどちらも夏に根が腐りやすく、栽培に苦労していましたが、あと
ど、茎や葉よりも根のほうが温度変化に弱いと考えられます。
の生産者は夏も順調に育っていました。オランダの専用土はピート
そもそも葉は光を受けて光合成を行う器官ですから、温度を調整する仕
モス主体の用土でしたが、ピートモスはふつう半年もすると親水性
組みを備えています。つまり、光が当ると気孔を開き、蒸散を盛んにしま
が高くなり、気相率(空気の割合)が低下し始めます。そして、酸
す。蒸散は葉の内部にある水を水蒸気に変えて気化熱を奪い、その水蒸気
欠に陥りやすい環境が生まれます。
を組織外に出すことで排熱し、葉温が上がるのを防いでいます。また、鉢
の周辺だけ冷やすベッドクーリングという手法があり、それを使えば日に
当てた状態で耐暑性が弱い植物が栽培できます。
以上のことから、高温ストレスは茎葉よりも根において大きいと推測で
きます。
以上のことから、耐暑性が弱い植物は根が酸欠で傷みやすい植物で
あると考えています。
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
③暑さに弱い植物も工夫次第で育つかも
かつて、暑さに弱く栽培が難しいことで知られるレブンアツモリな
どを夏の間も肥料をたくさん与えて元気に育てている人の話しを聞い
②酸欠状態になることが致命的な影響を及ぼす 高温の影響が根に大きく
たことがあり、先日はメコノプシスを都内で夏越ししたという人に出
現れるのは①の説明で理解できたと思います。地温が上昇するとともに根
会いました。どちらも暑さに弱い植物の代表選手ですが、工夫次第で
は呼吸が盛んになり、たくさんの酸素が必要になります。そのときに十分
耐暑性の弱さを克服できることを示しています。
な酸素が供給できれば暑さに耐える力が大きくなりそうだと推測できま
耐暑性の弱さを克服するのは、①と②から、根鉢を出来るだけ低温に
す。
保ち、根の周りに十分な酸素を供給する工夫をすることで、意外なも
ある試験場の試験に次のようなものがありました。シクラメンの夏越し
のが栽培できるかもしれません。
時、潅水に使う水を、脱気した水(水中に含まれる気体を少なくした水)
FAJ 鉢物レポート
生産者紹介
思いがけず立派な賞を頂戴し、大変、光栄に
思っております。今まで、大勢の方々にご指
導やおつき合いをいただいたおかげだと、大
変感謝しています。
今後もさらなる品質の向上を目指して、生産
に取り組んで行きたいと思っていますので、
よろしくお願いします。
▼
◎鉢物 3.5号~7号
チューリップ・カラー・ラベンダー
◎苗物 3.5号
オステオスペルマム・ペチュニア
日々草・ルドベキア・菊類・パンジー
ビオラ等
☆年間40~50品種を栽培しています。
ルドベキア
トレニア
ニチニチソウ“タイタン”
最近は、栄養系の苗物も取り入れ、丈夫で
花期が長く、高温多湿の日本の気候に合う
品種も多いのでお奨めです。
昨年度より、男性から女性への花贈りの定着を目指し、業界統一キャン
ペーン「フラワーバレンタイン」がスタートしました。これは小売、生
産者、流通、種苗、資材などの関係者が参加費(1口1万円)を出し合い、
協同でプロモーションを行うものです。昨年度は非常に短期間の準備で
したが、実際に参加をした複数の店舗(26店舗(うち関東23店舗))にお願
いをし、昨年のバレンタインデーまでの数日間の売上データを提供いた
だいたところ、うれしい結果がでました。
●売上は2月10~14日までの5日間平均で前年比11%アップ。14日当日は
首都圏で雪が降ったにも関わらず前年比115%。
●特徴的だったのは、フラワーバレンタインのターゲットでもある“30
~40代の男性客”の増加で、全体で30~40%に達した。男性客の割合が
50%超の店も。
●店舗や地域によっても差が出たが、少なくとも「フラワーバレンタイ
ン」のディスプレイをするなど、事前に何らかの準備をした店について
はそれなりの結果が出たと推測。
●消費者アンケートによると、フラワーバレンタインをどこから知った
のかを問うたところ、ポスターからが35.3%と、テレビ(37.6%)に次
いで高く、統一ポスターの効果が見られた。 いろいろな花店に同じポス
ターが貼られていることで、お客様の目に留まる機会が多く印象に残っ
たものと考えられます。
実際に取り組んだ方からも、「来年はもっとしっかり準備をしてバレン
タインデーにのぞみたい」などの声もあり、全体として来年はさらなる
結果がでることが期待されます。
http://www.faj.co.jp
カリブラコア
▼
全ての植物を上手に作る事は出来ませんが、
品質の高い物を安定的に供給する事を心がけ
ています。
「情熱をもって栽培すること」「時間を惜し
まないこと」「土作りにこだわること」等、
高いモチベーションをいつも持ち続けたいと
思っています。
▼
山下園芸は、埼玉県の南西部に位置する川越
市で、花きの生産を行っています。川越市は
埼玉県で住みたい街の一番にランクされ、昔
のたたずまいが残り、緑が多い所です。
パンジーの生産は、25年位前に始め、当時は
シクラメン等の鉢物が主流だった時で、パン
ジーの生産者は少なく、情報交換等はほとん
ど無く、肩身が狭い感じでした。その後、秋
出荷の定着、ポット栽培、プラグ苗の普及に
より、全国的に生産が増え、大量に消費され
るようになりました。0000000000
パンジーの生産で一番気を使う事は、培養土
や管理はもちろんですが、出荷時期に合った
品種を選ぶ事です。毎年、新しい品種が次々
と出てきます。カタログを見ながらの品種選
定は楽しみもありますが、花色に惑わされな
いように、慎重に行っています。最近は、イ
ンパクトがある、クリアな色を選ぶようにし
て い ま す 。 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
両親が野菜農家だったので、畑を利用したボ
サ菊の栽培がスタートでした。その後、花壇
苗に序々に切り替え、15年前からは球根類の
栽 培 も 始 め て い ま す 。 0 0 0 0 0 0 0 0
▼
今月はポットプランツコンテストでみごと大
賞を受賞された、埼玉県川越市で苗物を中心
に鉢物生産をおこなっている山下園芸さんを
ご紹介いたします。
一方で、このフラワーバレンタインも鉢物商品の
もりあがりが少し欠けている部分があります。そ
こで、業界の有志により、卸売市場と鉢物生産者
が協力しあい、積極的に鉢物のバレンタイン商品
を買参人に売り込んでいこうとするためのグルー
プ「鉢物バレンタイン普及会」を立ち上げて盛り
上げてくださっています。これはフラワーバレン
タインに参加している市場、 生産者等であればど
なたでも参加が可能です。会費がかかることはありません。来年は切り
花だけでなく、ぜひとも鉢物バレンタインを盛り上げていきましょう。
フラワーバレンタインへのお申し込みは11月30日までお申し込みいただ
ければ早期割引として参加費の2割引を行っていますので、お申し込み
をお待ちしています。
フラワーバレンタイン
推進委員会事務局
03-3664-8739
(日本花普及センター内)
公式HP:
http://www.flowervalentine.com/