古紙輸出の経済的評価と環境影響評価 小泉 國茂・周 ●生・小幡 範雄 要 旨 古紙問題は、1985 年以降のバブル経済で膨らんだ消費経済と、IT化によるオフィスゴミの膨張に端を発し、1980 年代後 半にはゴミ処分場の逼迫から、大きな社会問題(ごみ問題)となった。これをきっかけに市民がごみ問題に関心を持ち、古紙 の集団回収、再生紙の積極的な採用などのリサイクル活動につながっていく。官民あげた古紙の集団回収が功を奏し、古紙余 り問題に変化する。余剰古紙は古紙の市況価格を下落させ、民間回収業者の経営を圧迫するなど、循環型社会の静脈産業の存 続を危ういものにした。ところが 10 年近く続いた古紙余り問題は、1998 年に一転解消し、2001 年度以降は古紙不足問題へと 劇的変化を遂げた。古紙不足は旺盛な経済発展に伴う中国への大量輸出が主要因である。古紙輸出は古紙回収業者には経済面 の、自治体にとっては焼却処理していた余剰古紙(ごみ)問題の解決策となった。しかし古紙不足問題にまで発展した現在、 日中および関係国の主なステークホルダー(製紙関連業界、自治体、市民)から見た経済面と環境面の評価をする必要がある。 本研究では、グローバルリサイクルシステムの適否判定フレームに基づき、余剰古紙以上の古紙輸出は経済面では多くのステ ークホルダーにとって適正であり、環境面でも温暖化、河川の汚染、水消費が改善され、総合評価として概ね適正であるとの 判定結果を得た。 Ⅰ.はじめに 図1にグローバルリサイクルシステムの適否判定フレ ームを示すが、今回は経済、環境面の評価が主な論点と 貿易の自由化が進み、世界の各地で生産された製品が なっているので、Ⅱ章では古紙輸出問題の経済面からの 世界各地に輸出されているが、いったん廃棄物になると 評価を、Ⅲ章では環境面からの評価をする。 再生資源は、必ずしも消費国から生産国に循環されてい 側面 経済 るわけではない。前報1)では、資源の最大活用とゼロエ 環境 ミッションを実現するために、廃棄物のグローバルリサ 法律 イクルシステムの概念を提唱すると共に、ケーススタデ 倫理 ィとして、日本の廃家電製品のアジア圏におけるグロー バルリサイクルの適否判定について、検討すべき諸因子 経済 を抽出し、推奨案を提示した。今回は、中国への古紙輸 環境 出を事例として適否判定をする。 法律 古紙を研究テーマに取り上げた理由を、次に示す。 倫理 ①家電製品のような枯渇性資源ではなく、木材を原料と 輸出国のメリット 評価 適正○ アクター アクター ○ アクター ○ ○ アクター アクター ○ アクター ○ ○ アクター ○ アクター 輸出国のデメリット 評価 アクター 不適正× × アクター × アクター × アクター アクター × アクター × アクター × アクター × 輸入国のデメリット アクター アクター アクター アクター アクター アクター アクター アクター 輸入国のメリット アクター アクター アクター アクター アクター アクター アクター アクター 評価 不適正× × × × × × × × 評価 適正○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 総 合 評 価 図1 グローバルリサイクルシステム適否判定フレーム する再生資源を事例にグローバルリサイクルシステム適 否判定フレームに基づき判定をすること。 本論文では、廃棄物に正の価格がつく(グッズ)か否 ②最近話題になっている中国への古紙輸出が経済面、環 (バッズ)かの判定をする2)のではなく、廃棄物の移動 境面で良いことなのか悪いことなのかが、はっきりしな が経済活動、地球環境面に与える影響をも含めて、現状 いこと。特に、中国での環境影響評価がなされていなか より良化されれば適正、悪化すれば不適正として評価する。 ったこと。 Ⅱ.古紙輸出の経済面からの評価 ③再生資源であっても、原料が木材であり、木材の伐採 による森林破壊、生態系破壊の原因ともされており、古 1.古紙輸出に伴う古紙不足の問題点と論点 紙輸出との因果関係を明らかにする価値があること。 −35− 政策科学 11 −2,Jan. 2004 (1)増加する中国向け古紙輸出と高騰する古紙価格 以下に、問題点と論点とを合わせて整理する。 1)古紙輸出量の推移 『反対意見』 図2に古紙輸出量の推移を示す。1997 年に古紙余り ①材料価格のベースとなる古紙価格が高騰すると、デフ 問題で結成された研究会 5) は、余剰古紙(約 40 万ト レ下で最終価格に転嫁しにくい地合の中で、唯でさえ利 ン/年)は中国、インドなどの経済発展でいずれ輸出さ 3) 益の低い製造業の収益が悪化する 。但し金属・非金属 れると推定していたが、2001 年 183 万トン、2002 年 173 を含めての論評で、中国発の資源価格高騰により、デフ 万トン(内、中国への輸出 91 万トン)と激増した。 レ下の世界的経済危機発生の危険性を指摘している。 ②経済原理にかなった結果だろうが、本来なら狭い地域 でリサイクルを完結させた方がエネルギー消費量が少な く、環境負荷が下がる。輸出量は減らす方向が望ましい4)。 ③多くの地方自治体(首都圏7都県市域で回収団体の 88 %) 5)が、ごみ減量化につながるので(東京都のご み処分場の逼迫問題が深刻化した当時、燃えるゴミの 古 紙 輸 出 量 ︵ 千 ト ン ︶ 2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 古紙余剰 古紙余剰 19 90 19 91 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 45.6 %が紙であった)10)、古紙回収には補助金(全国で 古 古紙 紙不 不足 足 余剰解消 余剰解消 150 億円/年) 6)を出している。税金(補助金5∼ 10 図2 古紙輸出量推移 円/㎏)5)を使って集団回収した古紙を輸出しても良い 出典:古紙再生促進センター のか。 2)古紙輸出価格 ④製紙業界は木材資源確保のため、海外で長期に渡り植 林をしている。原料となる古紙が海外に流出すると製紙 図3は古紙価格の推移を表したものである。1996 年 業界の植林、古紙利用長期計画などのバランスを崩すの から国内古紙価格が下落しているのは、1995 年の円高 ではないか。 で輸入紙が増加し、その結果国内の製紙原料である古紙 需要が減少し、古紙が余剰となり市況が下落したためで 『賛成意見』 ある。 ①日本国内の古紙の需要が少なく、回収古紙が余り、古 紙回収業者が廃業したり、収益が悪化しているときに、 古紙輸出価格が上昇し、余剰古紙在庫が0になれば、 他の国で再生資源の需要があり、価格が上昇するのはリ 古紙回収業界、自治体にとっては好都合である。輸出を サイクル事業を存続させる上でも、リサイクル活動の象 開始した 1997 年度は 10 円/㎏の赤字輸出であったが、 徴である古紙集団回収活動、分別回収行動の推進意欲低 最近は 12 円程度で採算ラインに乗るようになった。古 5) 下を防止する上でも良いことである 。 紙ジャーナル 2003.541 号は段ボール古紙で CIF100 ド ②“資源を必要とする国への供給責任は商社の努め”で ル/トン(11.8 円/㎏:報道時)の攻防と予測しており、 8) ある 。 18 『その他』(現状報告のみで、賛否不明の情報) 16 ①新聞古紙が輸出に回り、新聞社が新聞発行に支障が出 るのではないかとの危惧を抱いている9)。 ②古紙不足が深刻−原料不足で静岡では廃業する業者も 19)。 2.古紙需給の基本構造 中国向け段ボール 中国向け新聞雑誌 国内新聞 国内雑誌 国内段ボール 14 価 12 格 ︵ 10 円 / 8 kg ︶ 6 4 2 家電リサイクル法のように、回収と再資源化に関する 0 メーカーと消費者に対する法律もなく、ごみとして廃棄 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 図3 古紙輸出価格推移 すれば有料となり、資源として廃棄すれば補助金が支給 出典:国内古紙価格は、古紙再生促進センター HP の6月の値。 中国向け古紙価格は日本政策投資銀行 HP21)から、2003 年 度価格は古紙ジャーナル HP からのデータ。 されるなど、特殊なシステムの下で運営されている。 −36− 古紙輸出の経済的評価と環境影響評価(小泉・周・小幡) 瞬間的には 14 円になったものの、2002 年半ばから 2003 表1 紙生産量上位国の古紙回収率と利用率(1997,2001 年) 年半ばまでの1年間は 12 ∼ 13 円で落ち着いている。 全回収量 千トン 輸出量 千トン 輸入量 千トン 古紙 古紙 回収率 利用率 アメリカ 40,909 6,823 630 48.4 48.7 図4は、日本製紙連合会が公開している日本の製紙原 日本 16,546 312 362 61.9 58.0 料の構成比である。日本の木材(チップ含む)原料は約 中国 8,760 4 1,618 33.8 57.3 73 %が輸入、国産材が 27 %である。古紙 59.6 %もこの カナダ 3,110 688 2,088 39.1 23.6 比率で輸入材が含有されている。回収古紙は製紙メーカ ドイツ 11,279 2,739 918 75.2 64.5 ーに売れるので古紙業界が形成され、民間主体で回収率 フィンランド 607 49 84 53.4 5.8 を高めてきた。 フランス 4,270 750 998 49.2 57.8 韓国 4,530 0 1,452 66.9 69.6 世界 128,725 16,460 (2)日本の製紙原料と古紙需要、古紙回収 非木材繊維 0.2% 古紙 59.6% 輸入 出典:・回収率と利用率は(2001 年データ)、日本製紙連合会 HP,元資料 PPI ・回収量、輸出入量(1997 年データ): 「地球環境データブック」2000-2001、ワールドウォッチ研 木材40.2% 国産 輸入 国産 究所 輸入材 73% 国産材 27% 林の酸性雨被害のため、森林を大切にする国民的合意が 熱帯地域輸入材 3% 形成され 10)、1991 年の「包装廃棄物の抑制に関する政令」 図4 日本の製紙原料の構成比(2002 年) により DSD(ドイツ連邦政府認可のもとに使用済みの 出典:日本製紙連合会 HP を基に作成 容器包装を回収し、リサイクルを行う企業)が設立され、 非木材繊維〔わら、ケナフ、バガス(トウモロコシの 1993 年の「包装廃棄物令」では紙、段ボールの 80 %回 茎、葉)など〕を原料としている国は、パキスタン 収義務を課し 11)、なおかつ行政が回収コストを負担し古 100 %、中国 86.7 %、ベネズエラ 76.7 %、タイ 73.4 %、 紙回収に熱心で輸出している。韓国は、かつて森林資源 ベトナム 55.6 %、インド 48.9 %、世界平均 0.4 %、日本 を伐採したことへの反省から生まれた政策と考えられ 7) 0.2 %となっている 。日本の非木材繊維の使用量が極 る。輸出によって回収率が高いのではないことがドイツ めて少ない理由は、戦前は日本の木材が豊富であった名 との違いである。 残であり、中国は木材資源が少ないので、非木材繊維に アメリカは世界一の生産国、消費国にしては古紙の利 頼らざるを得なかったためである。 用率(48.7 %)が低い。回収率(48.4 %)が意外に高い 表1に、各国の古紙利用率と回収率を表した。率の定 のは、新聞のページ数が膨大で、古新聞は行政によるご 義は、(財)古紙回収促進センターによる定義である。 み減量化を目的とした回収ルートが確立されていること と、輸出が多いからである。 古紙回収率 中国は韓国と同じように過去に天然林を過伐採し、森 古紙国内回収量(メーカー入荷+輸出−輸入) 林面積は国土の 17 %(日本は 63 %)しかなく、その反 × 100 紙・板紙国内消費量(メーカー払い出し−輸出+輸入) = 省から世界の植林面積の 1/3 の面積を占める世界最大の 植林大国であり 12)、韓国と同じように自国の森林保護政 古紙利用率 古紙消費量+古紙パルプ消費量 策(退耕還林)もあって古紙輸入策を採っている。アメ = × 100 繊維原料合計消費量(パルプ+古紙+古紙パルプ他) リカの段ボールの古紙含有率は 20 %(日本は 90 %)で 良質繊維が多く、新聞紙の品質も良いので主としてアメ 回収率分子に古紙輸出が加算され、輸出が増えると回 リカから古紙を輸入している。カナダは森林資源の豊富 収率が増加する。利用率は分母、分子とも国内消費に限 な国であるが、自国の森林資源伐採への批判に対応する 定されている。 ため、古紙を積極的に輸入している。 回収率が高い国は、ドイツと韓国である。ドイツは森 −37− 政策科学 11 −2,Jan. 2004 (3)古紙回収率・利用率の推移 て行われる。輸送コストの関係で、ほとんどがアジア圏 に限定される。海上運賃が、1995 年から 2001 年にかけ、 図5に古紙回収率と利用率の推移を示す。1977-1989 年は、 「古紙再利用システムと資源リサイクル」の図7 10) 60 %に下落したことが輸出促進の大きな原動力となっ を、1990-2002 年は古紙再生促進センター HP データを た(データ出典:日本船主協会 HP、海運市況、元資料 基に合成した。この 25 年間に回収率と利用率とが2回 は Lloid’s Ship Manager)。 古紙業界は行政によるストックヤードや輸出基地の建 入れ替わっている。第1回目はごみ問題から古紙余り問 題に変化し、2回目は古紙不足問題へと変化した。 設を要請していたが、中国への輸出が急増し、2000 年 から民間企業により矢継ぎ早にストックヤードが設置さ 70 古 紙 回 収 率 ・ 利 用 率 ︵ % ︶ 古紙回収率 65 れ、2003 年6月には横浜市が横浜港に集荷基地を設け、 古紙利用率 中国への輸出が本格的に始まっている 18)。経費が 2/3 に 60 なると見込んでいる。2002 年はパルプとあわせ 203 万ト 55 ンが輸出され、258 億円の取引となった(財務省、貿易 50 統計より)。 45 40 2)余剰古紙以上の輸出に対する経済面からの評価 35 19 77 19 79 19 81 19 83 19 85 19 87 19 89 19 91 19 93 19 95 19 97 19 99 20 01 ①古紙回収業者への経済的影響 古紙価格の低迷で、古紙回収業者は廃業に追い込まれ 図5 古紙回収率、利用率推移 たり、経営基盤が脆弱になっているところに古紙需要が 出典:紙、パルプ統計月報、古紙再生促進センター 高まり、古紙市況が回復し、利益回復が期待できるので 3.古紙回収率、利用率を左右する経済政策とその評価 適正である。 ごみ問題と古紙問題とは密接な関係があり、1990 年 ②自治体への経済的影響 頃には古紙の需給を左右する因子は、輸出以外は、ほぼ 行政回収による余剰古紙は、資源であり行政としても 10) 解明され 、古紙回収率と利用率を高める政策が提案さ 処分するわけに行かず、ストックヤードにたまる一方で、 7)13) 。行政関与の面では、集団回収 結局、燃料として利用するか、焼却されていたようであ への補助金支給(自治体の 85 %が補助金〈5 ∼ 10 円/ る 18)。輸出によって古紙は国際市況商品になり、価格が ㎏を支給〉5)14))、行政回収(人口 10 万人以上の都市の 上昇し民間業者による回収が進み、十年間続いた古紙余 約 61 %)5)、ごみの有料化などがあり、その効果も研究 15) 剰状態が解消され、行政回収の必要がなくなり、収集費 されている。 用(税金)削減につながること、集団回収業者の事業存 れ、実行されてきた 続面によるリサイクルシステムの維持など経済面で古紙 (1)「古紙余剰問題研究会」による政策提言 輸出は適正である。 研究会設立の趣旨は、1995 年に急激な円高で、紙の 補助金はごみ減量化のための分別行為に対し、自治会 輸入増加により古紙需要が減少し古紙余剰がより深刻化 や子ども会への報酬の性格を持っているので、一気に廃 したためである。「古紙余剰問題に関する調査報告書 止することは難しいが、プラスチック容器などの回収に (答申書) 」 5) で古紙利用率向上のための政策提言が出さ 法律で消費者の責務が明文化されるなど、消費者が協力 れた。その中の1つに古紙輸出の促進が含まれている。 するようになり減額や廃止できる可能性はある。 補助金が付加された再生資源が、民間企業を通じて輸 (2)余剰古紙対策としての古紙輸出 出されることについては、輸出分だけをみると納得がい 1)古紙輸出増加の背景 かない面もあるが、ごみ減量化が本来の目的であり、処 首都圏では余剰古紙の保管場所に困り、1997 年は赤 分地逼迫問題の解決策、自治体のごみ処理費用低減に貢 16) 字で輸出していたようである 。沖縄では製紙工場が無 献しているので適正である。 い為、古紙保管場所に困り、10 円/㎏の赤字輸出をし ③製紙メーカーへの経済的影響 17) ていた 。古紙輸出は総合商社、紙専門商社の手によっ 日本の製紙メーカーにとっては、原料古紙価格が上昇 −38− 古紙輸出の経済的評価と環境影響評価(小泉・周・小幡) 表2 経済面から見た中国への古紙輸出の適否判定結果と判定理由 日本のステークホルダー 地方自治体 判定 適正 判 定 理 由 ・余剰古紙はごみ扱いになるので処分地逼迫問題の解決、焼却費用の低減となる。 ・余剰古紙に新たな買い手がつき、民間業者だけの回収でも経済的に成り立つので、行政 回収の必要がなくなり、収集費用(税金)削減につながる。 ・集団回収に対する補助金削減の可能性がある。 製紙メーカー 不適正 ・古紙価格が上昇すると、原料費が高くつきデフレ化の下で価格転嫁ができず利益圧迫要 因となる。 ・トイレットペーパーなど古紙のみを原料としている小規模製紙メーカーの中には古紙不 足で操業に支障が出ているなどの影響が出ている。 古紙回収業者 適正 ・古紙価格が上昇することにより、廃業寸前の経営状態から事業再建が図れる。 林業業者 適正 ・原木チップの需要が高まり、衰退気味の事業経営の存続が図れる。 市民 中立 ・紙の価格が高くなれば不適正であるが、デフレ経済下ではその可能性は少ない。 他国のステークホルダー オーストラリアの 判定 適正 判 定 理 由 ・原料チップの需要が高まり、林業が活性化する。 林業業者 し利益を圧迫するので、不適正である。特に古紙を原料 生紙原料として製紙メーカーに資源循環すれば、ごみの としてトイレットペーパーなどを作っている小規模製紙 減量化につながるからである。 古紙は地球温暖化(CO2 排出量)の側面から判断する メーカーにとっては、古紙原料不足で操業に支障が出て 19) いるので不適正である 。 と、木材パルプ 100 %の紙に比べ、散在場所からの回収、 大手製紙メーカーにとっては、中国で紙の需要が高ま 脱墨(インクの除去)工程が余計にかかるとともに、木 ることは、日本国内市場が低迷しているときに、事業機 材に含まれるバイオマスエネルギー(黒液)が利用でき 会が拡大されるので適正との判断もできる。事実、王子 ず、化石燃料由来の CO2 排出量は多い。製紙メーカーか 製紙は 2002 年に中国の P&G の工場を買収済みであり、 ら見ると、地球温暖化防止の面からは古紙パルプより木 江蘇省・南通市に 2006 年に初期投資 600 億円の工場建設 材パルプをより多く使用したいところであるが、森林保 を発表している。 護の視点からは、統計上は原木の数%は熱帯地域からの ④林業業者への経済的影響 輸入木であり森林破壊につながるとの NGO 22)の指摘な どにも配慮すると、木材パルプの使用には制約がある。 林業業者にとっては古紙代替木材の約 73 %をオース トラリアなどの海外から、27 %を日本から調達される 植林から採集までに年月のかかる植林木の採用にも制約 ため、両国ともに林業が活性化するので適正である。 がある。植林は次のようなメリットと課題がある。 ⑤市民への経済的影響 トイレットペーパー原料の古紙価格が上昇しているの (1)植林のメリット 1)焼畑や過放牧で荒廃した元熱帯雨林などに適した木 で、一部の地域で小売価格が高くなったとの報告もあ 19) る 。紙の価格が高くなり、書籍、雑誌、新聞などの価 材を、長年にわたる地道な研究をもとに選定するので、 格に反映されると影響はあるが、デフレ下ではその可能 失われた森林が回復し、荒廃地の植生が回復する。 性は少ないので、経済的影響は少ないと思われる。 2)植生が回復し、昆虫や動物などの生物の住処が確保 表2に経済面からの適否判定と理由をまとめた。 される。 3)森林が回復するので周辺の乾燥地にも雨が降るよう Ⅲ.古紙輸出に伴う環境影響評価 になり、砂漠化が防止でき、農業が復活する。 4)熱帯雨林伐採原因である焼畑農業からの転換を進め 1.古紙の環境影響の特質 るためには安定した雇用の場が第一であり、地元の雇用 自治体が古紙回収に力を入れてきた理由は、古紙を再 に役立つ。 −39− 政策科学 11 −2,Jan. 2004 5)温室効果ガスである CO2 の吸収固定に役立つ。 日本の製紙工場数 500 に対し、中国の工場は小規模で 5000 もあり、非木材繊維資源を原料とする小規模製紙 (2)植林の課題 工場は、廃液処理が不十分なため河川汚染につながると 1)植林で利益を得ることができるとわかると、周辺地 して、中国政府は非木材繊維から木材繊維に転換を図る の天然林所有者が、天然林を伐採し植林地に転換するの よう指導し、小規模製紙工場の閉鎖を進めている 23)。日 で森林破壊につながる 22)。 本の余剰古紙を輸出に回せば、中国の非木材資源繊維の 2)単一種植林による森林が形成され、生物多様性が維 製紙工程から発生する河川の汚染が防止できるので、古 22) 持できない 。 紙輸出は河川汚染の環境面で適正である。 3)製紙原料として使えるようになるまでには、植林に 3.中国の製紙工場の水使用量削減 適した土地の選定、植林木の選定などを含めると、10 数年から 20 年の歳月がかかり、急な木材需要には適応 中国の非木材繊維を中心とする製紙工場は、紙1トン できない。海外で植林を進める製紙メーカーにとっては、 生産するのに、200 トンの水を消費する 24)。日本の製紙 中国への急激な古紙輸出は、植林計画を狂わせるもので 工場の水消費量は 90 トン 25)であるから、紙1トン当た あるには違いが無いが、原料不足がくることは予測され り 110 トンの水の消費が節約できる。余剰量超過古紙 51 ていたことでもあり、不適正とはいえない。 万トンの製紙では、中国の大手の製紙工場の水使用量を 紙のごみ問題が脚光を浴びた 1980 年代後半は、市民 日本と同等として、水(200 − 90)× 51 万トン =5,610 意識も森林伐採につながる天然資源浪費への反省もあっ 万トン/年の節水が可能である。従って古紙輸出は水資 て、古紙の分別廃棄、再生紙の利用に力を入れてきた。 源面で適正である。ただし、次項で比較した表3のライ しかし地球温暖化問題に関心がもたれるようになった フサイクル CO2 排出量比較・パルプ製造工程の数値の内 1990 年代半ば以降は、木材の持つ CO 2 吸収固定の効用 数に含まれている。(参考:東京都水道局の水道、工業 に着目した植林の推進、再生資源としてのバイオマスエ 用水の配水量合計 169,547 万トン/年に要する CO2 排出 ネルギー(黒液)を利用した発電などの技術導入がなさ 量 31.1 万 CO2-t26)から、0.0001834CO2-t/水 1t となるが、 れ、木材パルプの方が古紙パルプより化石燃料由来の ) 90t × 0.0001834=0.0165 CO2-t/t は木材 0.18 の内数である。 CO2 排出量が少なくなり、地球温暖化の面では古紙優位 4.LCA による日中間の CO2 排出量比較 の状況は変わってきた。 中国への古紙輸出は 2002 年度で 91 万トンとなり、余 2.中国の製紙工場からの排水による河川汚染防止 剰古紙(40 万トン)を 51 万トンも超えており、余剰古 中国の製紙原料は、87 %が非木材繊維資源である。 紙以上の輸出の影響を検討する必要がある。そのため、 紙生産量が日中で差が無いにも関わらず(10 %程度)、 中国へ日本の古紙を輸出したときの地球温暖化の影響を 中国 原木(米国) チップ 輸送 パルプ製造 非木材繊維(中国) 輸送 パルプ製造 原木 (中国) チップ 輸送 脱墨 原木 (海外) チップ 海上 輸送 パルプ製造 原木 (日本) チップ 輸送 紙製造 新聞製造 古紙 海上 輸送 紙製造 海上 輸送 日本 紙製造 新聞製造 古紙 脱墨 図6 日中製紙工程ライフサイクルフロー比較 −40− 紙製造 古紙輸出の経済的評価と環境影響評価(小泉・周・小幡) 表3 木材、古紙、バガスのライフサイクル CO2 排出量 (単位: t/bdt)古紙、バガス配合率 25 % LCA(ライフサイクルアセスメント)により比較をした。 図6のように原木の伐採からチップ製造、海上輸送、 木材 パルプ生産、紙製造、古紙回収から廃棄までのライフサ 古紙 バガス イクルにわたって排出される CO2 総排出量を計算し評価 植林 0.01 ─ 0.01 した。 チップ製造 0.06 0.04 0.04 日中の CO2 排出量比較をするに当たり、次の条件下で パルプ製造 0.18 0.15 0.15 比較した。中国の総需要増大分の環境負荷増加は、古紙 非木材繊維 ─ ─ 0.06 輸出による変化とは係わり合いがないのでカウントしな DIP 製造(古紙) ─ 0.2 ─ い。アメリカからの古紙輸入量は不変で、日本からの古 紙製造 0.9 1.1 1.1 紙輸入分が、中国の製紙原料の 87 %を占める非木材繊 製品輸送 0.05 0.05 0.05 維に代替されると設定した。また、日本の古紙原料不足 廃棄 0.01 0.01 0.01 分は、原木パルプに代替されるものとした。 合計 1.21 1.55 1.42 図6に日本と中国の製紙工程プロセスの違いを示し 出典:文献 27)の図6グラフを元に、数値化したもの。 た。本論文では物質量計算や産業連関表を用いたインベ ントリー分析(ライフサイクル中の各工程の環境負荷計 慮し、海外産はオーストラリア南部産で現地でのチップ 算)をするのではなく、すでに公表されているデータを 製造、海上輸送を含み、バガスはコロンビアからの輸入 基に簡単なレビューを行うにとどめる。 である。 計算の過程を表4に、結果の数値を図7に示した。表 上質紙について、海外の植林からの伐採、チップ製造、 4には分離されていない数値データ(古紙回収、海上輸 チップ輸送に始まり、廃棄にいたるまでの紙のライフサ イクルの研究結果がグラフで紹介されており 27)28) 、数値 送)は、同じ文献の別のグラフの数値を利用した。 は公開されていないが、グラフ(文末図8参照)から数 図7は古紙輸出に伴う日中 CO2 排出量比較である。古 値を読み取り、二酸化炭素の排出量を推定し、表3にま 紙を利用した中国の CO2 排出量が増加した理由は、古紙 とめた。表3の木材とは木材 100 %パルプの場合であり、 のパルプ化工程で、脱墨(インク除去、DIP 製造)工程 古紙、バガス(非木材繊維)はそれぞれ配合率 25 %の が加わるためである。同じ古紙でも中国のエネルギー構 日本のパルプ−製紙一貫工場におけるデータである。 成は、日本と比較し石炭エネルギーのウエイトが高く、 CO2 排出原単位が約 1.6 倍と高いため、化石燃料由来の 引用論文の前提条件は原木は海外産と日本産比率を考 表4 日中の紙ライフサイクル CO2 排出量比較(単位: CO2-t/bdt)(化石燃料由来 CO2 に限定) (中国:バガス配合率 25 %⇒古紙配合率 25 %、日本:古紙配合 25 %相当分⇒原木パルプに置き換え) 中 国 バガス 日 本 古紙 古紙 備考 木材 植林 0.016 0 0 0.01 原木伐採 チップ製造 0.064 0.064 0.04 0.06 日中エネルギー原単位 1.6 倍,木材チップ製造に海上輸送含む 0 0.0075 0 0 0.24 0.24 0.15 0.18 古紙回収 0 0.01 0.01 0 日本の古紙回収負荷は中国に加算 DIP 製造 0 0.32 0.2 0 日中エネルギー原単位 1.6 倍 紙製造 1.76 1.76 1.1 0.9 製品輸送 0.05 0.05 0.05 0.05 輸送用燃料からの CO2 排出量は日中同等とした。 廃棄 0.01 0.01 0.01 0.01 輸送用燃料からの CO2 排出量は日中同等とした。 合計 2.14 2.4615 1.56 1.21 古紙海上輸送 パルプ製造 海上輸送距離は日中間 2 千㎞,日豪間 8 千㎞の 1/4 日中エネルギー原単位 1.6 倍,日本は原木パルプと代替 日中エネルギー原単位 1.6 倍,日本は原木 出典:文献 27)の図 6 グラフを元に、数値化したもの。古紙回収、海上輸送データは文献 27)図 5 を利用 −41− 政策科学 11 −2,Jan. 2004 表5 環境面から見た余剰古紙以上の中国への古紙輸出の適否判定結果と判定理由 環境側面 地球温暖化 判定 判 定 理 由 適正 日本は古紙パルプから木材パルプに材料転換するので、CO2 排出量は良化する。中国では非木材繊 維から古紙に材料転換するため、脱墨工程の増加、バイオマスエネルギーが利用できないことに 加えて、石炭のエネルギー構成比が高く CO2 排出量原単位が、日本の 1.6 倍 29)になるなどの理由に より、CO2 排出量は悪化する。両国合わせた合計では CO2 排出量が僅かに減少する。海上輸送によ る CO2 排出の影響は少ない。 森林保護 不適正 日本は、オーストラリアなど海外から 73 %の木材を輸入しているので、中国への余剰古紙以上の 輸出分相当の原料は、海外から輸入することになり、地球規模では木材資源の伐採量は増加する。 天然林伐採機会が増え、森林破壊への影響の懸念がある。 水資源 適正 植林の活性化で焼き畑、過放牧などで疲弊した元熱帯雨林伐採地の再生につながる。 適正 中国の非木材繊維を中心とする製紙工場は、紙1トン生産するのに、200 トンの水を消費する *。 日本の製紙工場の水消費量は 90 トン ** であるから、国内余剰古紙超過分 51 万トンの製紙工程で、 水(200-90)× 51 万トン= 5,610 万トン/年の節水が可能である。 河川の汚染 適正 中国の製紙原料の 87 %を占める非木材繊維を原料とする規模の小さい製紙工場から、シリカなど 固形廃棄物、未処理の化学処理工程の廃液が環境問題を引き起こしているが、木材繊維の古紙に 代替され改善される ***。 環境意識 適正 静脈流が確保され、リサイクル行動の原点である古紙の分別、集団回収が存続することができる。 参考: * :出典:中国情報局新聞、2000.12.1、** :日本製紙連合会 HP、*** :中国情報局新聞、2001.9.10 他 CO2排出量(CO2-t/bdt) 2.5 を招くので製紙業にとっては不適正であるが、回収業者 2.0 にとっては利益が確保できるので適正である。 日本では、補助金、行政回収などごみ減量化、余剰古 1.5 紙対策として設けられた税金を使う制度が不要となる可 1.0 能性が高いので、それらを廃止すると経済面では適正と 0.5 なる。東京荒川区では、補助金は残すものの、コストの 高い行政回収を廃止する方向である。 0.0 非中 木国 材・ 繊 維 中 国 ・ 古 紙 植林 パルプ製造 紙製造 日 本 ・ 古 紙 チップ製造 古紙回収 製品輸送 日 本 ・ 原 木 表2,5に中国への古紙輸出のグローバルリサイクル システム適否判定フローによる判定結果を示した。概ね 適正であると評価できるが、マイナス評価項目もあり、 古紙海上輸送 DIP製造(古紙) 廃棄 全てにとって適正であるとは言い切れなかった。 現在、商社経由で全く古紙を使わない熱帯地域の天然 図7 パルプの種類と化石燃料由来の CO2 排出量 木材 100 %のコピー用紙が再生紙より安い価格で輸入さ れており、もし再生紙の価格が上昇すれば、再生紙との CO2 排出量は大きい。日本は古紙から原木 100 %となる 価格差が広がり、木材 100 %コピー用紙の消費が増加し、 ので、古紙の脱墨工程が無く CO2 排出量は少ない。日中 森林破壊につながるなどの可能性も否定できない。 日中の CO2 排出量差は僅かであり、製紙工場のエネル 合計では ギー構成によっては逆転する可能性もある。 [(1.56 − 1.21)−(2.4615 − 2.14)]× 51 万トン= 1.45 万 t の CO2 排出量が減少するので適正である。 Ⅳ.まとめ 環境面の適否判定評価結果を表5にまとめた。 1.研究の成果 3.適否判定の総合整理 日本の余剰古紙量以上の古紙輸出は、日本の製紙工場 古紙の中国輸出に伴う地球温暖化、森林破壊、水消費 の原料古紙不足となり、経済面では国内古紙価格の上昇 量、河川の汚染などの環境影響について、数値に基づく −42− 古紙輸出の経済的評価と環境影響評価(小泉・周・小幡) 分析比較による適否判定ができた。その結果、温暖化、 地域科学研究会、P45、表1、1990 15)松本安生「紙循環システムのための方策」都市廃棄物発 水消費量、河川の汚染では現状より改善されるので適正、 生・処理システムの有効性に関する研究、(財)統計研究会、 森林保護では不適正である。環境面での総合評価は概ね 1993、P105-144 適正である。 16)紙業タイムス社編、 「古紙は何故余るのか」1998第2版、P84 経済面では製紙メーカーを除き、他のステークホルダ 17)琉球新聞 HP、1997.5.27 ーはメリットがあり、概ね適正であると判定することが 18)日本経済新聞、2003.6.25 できた。 19)毎日新聞、静岡版、2003.9.25 20)「日経エコロジー」2003.4月号、P17 経済、環境をあわせた総合評価でも概ね適正であると 21)日本政策銀行 HP、今月の注目指標 No.028、2002.10.24 結論付けた。 22)NGO ・熱帯林行動ネットワーク HP 23)中国人民日報 HP、2001.7.25 2.今後の課題 24)中国情報局新聞、2000.12.01、WTO 加盟と各産業─製紙産業 今後も古紙輸出が増え続けるかどうかは、古紙の国際 25)日本製紙連合会 HP 価格(海上運賃、為替)、中国などの製紙産業政策に依 26)東京都水道局 HP、環境報告書・平成 13 年版 27)桂 徹「紙バルプ産業における LCA の在り方」紙パ技協 20) 存する 。さらに古紙輸出が増え続けたときに、日中双 誌、2001、10、P10-17 方の地球温暖化防止政策(CO2 固定、バイオマスエネル 28)桂 徹「上質紙の LCA :ライフサイクルインベントリー」 ギーの活用)、それに伴う製紙原料政策(古紙と原木の 紙パ技協誌、2000、8、P84-91 ウエイト)の方向付け、日本の古紙回収制度(民間主体 29)池田明由「中国の経済発展と環境問題」エネルギー・資源、 で一部公共関与)など、流れが変わり大きな政策変更の エネルギー資源学会、第 15 巻第6号、1994、図4 可能性がある。種々のシナリオに基づく最適な古紙利用 【参考】27)のオリジナルグラフ のあり方の研究が必要と考える。 1.6 1)小泉國茂、周 CO2排出量(CO2-t/bdt) 【参考文献・資料】 生、小幡範雄、「廃棄物のグローバルリサ イクル─アジア圏における廃家電製品のリサイクルシステム を事例として─」立命館大学・政策科学、11 巻1号、2003 2)細田衛士、「グッズとバッズの経済学」、1999 3)「週刊東洋経済」、東洋経済新聞社、2003.4.12、P12-14 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 4)高月 紘 0.0 5)「古紙余剰問題に関する調査報告書」座長:永田勝也、行 政(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、 植林 非木材繊維 製品輸送 チップ製造 古紙回収 廃棄 チップ輸送 DIP製造 パルプ製造 紙製造 千葉市)が’97.5-97.12 の間に古紙業界、製紙パルプ業界、市 民を委員とし、環境コンサルタント会社がまとめた報告書。P7 図8 パルプの種類と化石燃料由来の CO2 排出量 6)「古紙ジャーナル」HP、用語集より。150 億円の内、業者 への支給は 20 %としている。 木材とは木材チップ 100 %、古紙は古紙配合率 25 %、バガ 7)紙業タイムス社編、 「古紙は何故余るのか」1998第2版、P38 スは非木材繊維配合率 25 %の上質紙を基に計算されている。 8)「日経エコロジー」日本紙パルプ商事(株)PR、2003.6 木材は南オーストラリアから、バガスはコロンビアからの輸 月号、P53 入で、日本では三菱製紙・八戸工場で製紙されたものとして 9)朝日新聞、2002.12.19 計算されている。植林は木材伐採用機器の動力用燃料に限定 10)寄本勝美監修、 「古紙再利用システムと資源リサイクル」 、地 した算出となっている。バガスパルプは回収ボイラーでエネ 域科学研究会、東京の紙ごみ45.6%はP94、図7はP97、1990 ルギーと薬品の回収を行っている。バガスパルプ工程は、パ 11)日本経済調査協議会、「ヨーロッパにおける廃棄物政策」、 P24-26、1994 ルプ、紙一貫生産でないため、パルプ製造時の余剰エネルギ ーを紙製造に利用できていない。古紙パルプは黒液が利用で 12)中国人民日報日本版 HP、2002.1.23 きないため、化石燃料由来の CO2 排出が多いなどの知見を得 13)紙業タイムス社編、「古紙は何故余るのか」1998 第2版、 P80-81、バージンパルプへの課徴金などが提案されている。 ている。 引用論文は、バイオマスによる CO2 排出と化石燃料由来の 14)寄本勝美監修、「古紙再利用システムと資源リサイクル」、 −43− 政策科学 11 −2,Jan. 2004 CO2 排出とを区分して算出しているが、木材を燃焼しても固 定された CO2 を開放するだけであるとの CO2 ニュートラルの 考え方を採用しているので、化石燃料由来の CO2 排出を重点 にした比較がなされている。 −44−
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