チャイナレポート - 新潟経済社会リサーチセンター

チャイナレポート
第16回
第四銀行上海駐在員事務所
のは「男らしさ」であるとされている。しかし、この
中国人の結婚観
─変わりゆく価値観─
男らしさとは、何かの才能に秀でている、もしくは何
かで成功しているという「男らしさ=経済力」と考え
られているようだ。結婚の条件として「家を持ってい
る」ということが当たり前の条件となっている現在に
週末の上海人民公園は、婚活の熱気に包まれてい
おいて、あながち間違った考えではない。
る。紙に年齢、職業、年収など自分のPRポイントを
その反面、女性の社会進出も進み、実力があれば、
書き出し、条件の合いそうな人を見つけるのだ。しか
会社の重要ポストに就くことも可能となってきた。高
し、婚活を行っているのは当の本人ではなくその親た
学歴、高収入で都会に働く女性が増え、全員でないに
ち。ご存知のように中国は、1979年から一人っ子政策
しろ女性自身も経済的に自立することができる世の中
を実施し、80年代に生まれた子供を「80后(バーリン
となってきている。上海において家事をするのは男性
ホウ)」と呼ぶ。80后には一人っ子が多く、家庭で両
が中心であるということも今や珍しい話ではない。
親と祖父母の合計6人から大切に育てられてきた温室
現代の中国を認識するのに、若者の結婚観からアプ
育ちの子が多い。そのため家事や料理もできないこと
ローチするのも面白いのではないだろうか。親からの
が多く、結婚後も夕食は両親の家で食べ、終わったら
「結婚しろ」というプレッシャーから逃れたい人を対
帰るという知人も少なくない。その割に自己評価、プ
象に、親と会ってくれる期間限定恋人役を代行する仕
ライドが非常に高く、結婚相手に求める条件も高い。
事も出てきた。80后以降の若者は、これからの中国の
休日の人民公園の様子は、現実と理想のギャップを埋
消費を牽引して行く世代である。どういった物を好
めることのできない子供へ、親が子の理想を叶えてあ
み、どういった物に利便性を感じて投資を行うのか、
げようとする涙ぐましい努力の場のようにも映る。
今の時期だからこそじっくり考えてみるのもいいかも
この30年来、改革開放が進み、経済・社会が発展す
しれない。
るにつれて財力を手にした人も沢山いる。ある中国系
(杉山 伸)
サイトの記事によれば、中国人女性が男性に求めるも
▲親たちが中心(?)上海人民公園での婚活風景
▲子供PR用のチラシが連なる光景は壮観!
新潟経済社会リサーチセンター センター月報 2013.10
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チャイナレポート
中国人の結婚観/中国人の観光モラル
中国人の観光モラル
─旅の恥は…─
先日、ある中国人旅行者が、エジプトの歴史あるル
クソール神殿において中国語で書かれた落書きを発見
しました。その旅行者は、同じ中国人として恥ずかし
くなり、
「エジプト旅行で一番悲しかったこと」とい
うタイトルをつけて、ルクソール神殿の壁に彫られた
「○○到此一遊」(○○が遊びに来た)という落書きを
マイクロブログに掲載しました。その落書き行為に対
▲海外旅行に出かける中国人の行列
(上海浦東国際空港)
し、中国国内では「恥ずかしい」「みっともない」と
の批判の声が一気に広がり、観光マナーの問題が取り
れません。海外の遺跡を傷つけたという事実が発覚
上げられています。
し、それについて世論があれこれ非難しても、マナー
今回の落書き騒動の背景には、中国人の観光マナー
に反した行為が繰り返されることを阻止することは難
が旅行業の発展に追いついていない実情があります。
しいと思います。中国では、景勝地や史跡で落書きを
近年、経済の成長に伴って海外旅行に行く中国人は急
残すような行為はずっと以前から、悪習として現在に
増し、国連世界観光機関(UNWTO)によると、旅行
残っています。従って、世論の批判及び政府による立
先での消費額が最も多いのは中国人観光客であると発
法化だけでは、観光マナーに欠ける行為を改善するに
表されています。しかし、残念ながら旅行者が公共の
は限度があり、マナー向上を十分に意識させないと、
場において大声で話したり、交通規則を無視したり、
「旅行法」が施行されても形式だけのものになると思
景勝地に漢字で落書きをするなどの行為により、国の
います。そのため、社会の各方面が共に努力し、マ
イメージを損ねています。汪洋副首相は今年6月、一
ナーが守られた旅行をするという風潮を作り出す必要
部の中国人旅行客が海外で「非文明的な振る舞い」を
があります。例えば、海外旅行の際には旅行会社によ
しているため中国のイメージが損なわれていると指摘
る事前研修を開催したり、旅行中も注意を呼び掛け、
しました。そのために今年10月より施行予定の「中華
旅行者の素行不良にはすみやかに注意するなど、様々
人民共和国旅行法」では、旅行者にマナーの徹底を図
な協力のもと国のイメージを損なう行動に対して
り、公共の場で騒ぐ、観光地に落書きをする、痰を吐
「No」の姿勢を示すことが重要だと思います。国民一
くなどの迷惑行為に禁止規定が設けられる予定です。
人ひとりが「監督者」となって、モラル・マナーの向
しかし、政府が制定したマナー遵守を呼びかける指
上に努めることが急務であると考えます。
針や法律だけでは、必ずしも効果が上がるとは言い切
(范 文佳)
新潟経済社会リサーチセンター センター月報 2013.10
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