概 況 昨年、4月1日付で、当会は、 『一般社団法人』へ移行し、新たなスタートを切った。 健康診断・人間ドック部門では、労働人口減少の中であったが26年度健診総数は、新規顧客も あり781,479人となった。 一方、岩室リハビリテーション病院部門では、病床稼働率が昨年度より向上したことに加え、 診療報酬改定で新たに設けられた、回復期リハビリテーション病棟入院料1の体制強化加算(医 師と社会福祉士の病棟専従配置)の認定やリハビリ専門職の増員によって、増収に繋げることが できた。居宅支援部門についても、ご利用者様の増加や、関わるスタッフの増員により順調に推 移した。昨年度新設した、いわむろ透析クリニックでは、8月から患者の受入れを開始した。 ISO9001関連では、3年に一度の更新審査を9月2日、3日に受審し、適切に運用され ていることが確認され、更新がなされた。 また、個人情報保護体制の一層の拡充のため、導入準備を進めてきたプライバシーマークにつ いては、予定どおり11月に認証を取得し、同月よりマークの使用が許されている。 整備事業としては、吉田検診センターの増築改修工事の外構二期工事が完了した。また、駐車 場拡充のため、岩室リハビリテーション病院と新潟健康増進センターにおいて整備工事を行った。 渉外部門では、受診実績の低迷に歯止めをかけるべく積極的に渉外活動を展開し、重点項目と して、第二期特定健康診査・特定保健指導制度において課題として掲げられている「健診受診率 の向上」並びに「保健指導利用率の向上」に取り組んだ。また、がん発見率の高さなど数字に裏 打ちされた精度の高い総合的な健康診断、広域的な健診体制を基盤とした各種健診サービス、充 実した健診後のフォロー体制の普及啓発に努め、お客様に確かな安心をお届けすべく取り組んだ。 健康づくり分野では、生活習慣病予防に資するため、新潟大学に『生活習慣病予防検査医学(健 診・人間ドック学)講座』を開設した。 労働衛生分野では、働く人達が心身とも常に健やかに働くことができるよう産業保健活動を強 化し、職場巡視のほか、禁煙指導、過重労働面談、復職支援、安全衛生委員会への出席等、延べ 1,455件の産業医派遣業務を行った。また、地区医師会並びに各大学からの協力要請に基づ き研修医並びに看護職の研修を受け入れ、産業保健分野の重要性の認知を図った。 健診部門では、胸部、胃部レントゲン車両を有効に活用し、県内一円の巡回健診活動を推進し た。より一層の精度向上のため、フラットパネル搭載の胸部X線検診車を9月に整備した。昨年 度に続きフラットパネル(FPD)を導入し、装置の安全性、画質性能、環境への配慮などの点 で高精度の健診を提供できた。子宮がん検診においては子宮がん検診車による検診により、26 年度の受診者数は5,407名であり、巡回健診等での活用ができた。 乳がん検診においては、9施設に設置しているデジタル式マンモグラフィ装置と、デジタル装 置を2機搭載したマンモグラフィ検診車2台を、住民健診並びに職域健診に活用し地域に貢献し た。県内初の乳がん専門精検センターである、新潟ブレスト検診センターでの26年度がん発見 数は186例で、前年度比約12%減ではあったが、直近3年間の平均は、年198例となって いる。日本乳癌学会の認定施設でもあり、モニター診断を導入している同センターでは、2機体 制のデジタルマンモグラフィ装置を稼働し、受診者総数は8,185名であった。当会では、巡 回車搭載の4機を含め、全14機のマンモグラフィ装置をより有効に活用することで、乳がん検 診体制を一層堅固にした。また、超音波診断装置2機搭載の超音波検診車も有効活用した。さら に、集団検診センターにおける胃内視鏡検査では24年4月から毎日実施できる体制を整え、液 晶モニターの刷新も行った結果、受診者数は昨年度比14%増の2,162名となった。また、 同センターにおける動脈硬化外来と禁煙外来を併せた26年度受診数は210名となった。今後 も電子カルテによる効率的な運用に努めていく。 精度管理関連では、各種検討委員会を中心に、より一層の精度向上を目指した。日本乳がん検 診精度管理中央機構の検診施設画像施設認定を、巡回車と施設をあわせた合計11機で取得して いる。X線検査においては、全国労働衛生団体連合会精度管理調査や日本消化器がん検診学会の 研修等に積極的に参加した。健診精度と技術の向上並びに他機関に対して優位性を保つことを目 的とした各検診における有資格者の養成については、胃がん検診、マンモグラフィ検診、超音波 検査、肺がんCT検診等において積極的に取り組みを行った。その結果、日本超音波医学会認定 の超音波検査士資格については、26年度第30回認定試験で新たに1名が資格領域を増やした。 総勢28名の有資格者が持つ資格領域は、消化器24名、体表臓器28名、泌尿器18名、健診 26名にのぼる。また、日本乳がん検診精度管理中央機構の有資格技師は、26年度3月末現在 24名である。日本消化器がん検診学会の胃がん検診専門技師では、年度末で総勢43名であり そのうち、今年度に2名が合格している。日本CT検診学会の肺がんCT検診の認定数は医師が 2名。技師は、今年度合格者を含め2名である。 臨床検査部門では、前年度のバーコード運用に引き続き、生化学自動分析装置一台が最新式に 更新されたことにより、検体のトレーサビリティーの明確化、検査工程のさらなる効率化が図ら れた。検査データの標準化、品質保証の国際規格であるISO15189のJAB(日本適合性 認定協会)認定を維持し、CDC(米国疾病対策センター)の脂質検査の認証も同じく維持した。 人間ドック部門では、24年度に、マルチスライスCTに更新した岩室リハビリテーション病 院内岩室健康増進センターとプラーカ健康増進センターにおいて微小肺がんの発見に取り組み、 両施設を併せた検診人数は約1,850名、要精検数は25名であった。また、メタボリックシ ンドロームを視野に入れた健康保持の取り組みを全ドック施設において導入し、受診者の生活習 慣病予防に努め、特定健康診査・特定保健指導に関する情報を提供した。人間ドックのオプショ ン検査では、昨年度、プラーカ健康増進センターにおいて導入した視野スクリーニング検査を、 その緑内障発見率の高さから、今年度、新潟健康増進センター・岩室健康増進センター・岩室成 人病検診センターにおいても導入し、検診人数は約1,370名となり、そのうち要精検者数は 149名を数えた。 人間ドックにおけるがん発見数は、肺がん9、胃がん40、大腸がん61、乳がん19、子宮 がん4、前立腺がん9、その他全体で196件という成績をおさめた。発見率は、0.34%で あった。これは受診者294名から1名、がんを発見していることとなる。 調査研究部門では、厚生労働省科学研究費補助金第3次対がん総合戦略研究事業である、「革新 的な診断技術を用いたこれからの肺がん検診手法の確立に関する研究」に引き続き参加し、肺が ん死亡率低減を目指す取り組みに協力した。一方、新潟市医師会からの要請による「胃内視鏡検 診による無作為割り付けなしの介入試験の研究」に協力する一方、同医師会の地域医療研究助成 制度を利用した「塩分摂取が及ぼす健康被害に関する調査」にも取り組んだ。また、県民の健康 づくりを支援するため、新潟大学と共に当会が保有する膨大な健診データを活用した研究(新潟 ウェルネススタディ)をスタートさせた。 情報処理部門では、職域における各種健康診断の結果報告について、適正・迅速処理を主眼に、 部内体制の整備や基幹システムの機能改修・運用面での工夫などの取り組みにより、所期の目標 を上回る結果報告所要期間の短縮と、業務処理の効率化を達成することができた。 健康診断結果の精度等については、改正政省令への適切な対応を図るとともに、各種関係ガイ ドラインや11月に認証取得したプライバシーマークの「個人情報保護マネジメントシステム」 等を遵守することにより、個人情報の保護を図りながら、かつ、各学会認定専門医等の適切な指 導のもと、一層精度の高い各種健康診断結果を受診者の皆様にお届けすることができた。さらに、 これら健康診断結果の電磁的方法による報告等についても、各保険者・事業者等が求める形式に より予定どおりに完了させることができた。 当会ホームページについては、健康診断・人間ドック・労働衛生教育等の講習会のご案内にお いて、申込書の更新やトップページのリニューアルなど、利便性を高めるため継続的に見直しを 行った。また、外部精度管理事業等の第三者による評価制度への参加状況や結果、および、当会 人間ドックのがん発見率の最新データの掲載など、精度管理の重要性を紹介している。 岩室リハビリテーション病院では、リハビリテーション専門病院としての機能向上や居宅支援 部門の強化に取り組んだ。入院部門では、ベッド稼働率が昨年度を上回ったことに加え、回復期 リハビリテーション病棟入院料1の体制強化加算(医師と社会福祉士の病棟専従配置)やリハビ リスタッフの増員により、増収に繋げることができた。通所リハビリテーションでは昨年度に比 べ利用者数は減少したが、土曜日のご利用者様並びに重度の要介護者様が増えたことで、収入は 上回る結果となった。訪問看護ステーション(訪問看護・訪問リハビリテーション)では、小児 分野の訪問リハビリテーションを開始するべくリハビリスタッフを 1 名増員し、利用者数と収入 は昨年度に比べ大きく増加した。居宅介護支援事業所「ケアサポートいわむろ」では、要介護・ 要支援のご利用者様・ご家族様の在宅生活を支援するため生活環境の把握に努め、ケアプランの 充実と各サービス提供事業者との連携を図り、実績としては昨年度と同様であった。 介護老人保健施設いわむろの里では、定例の行事や屋内外のレクリエーション活動を積極的に 行った。言語聴覚士を配置し、リハビリの充実と摂食嚥下に関するサポート強化を図ることがで きた。感染症について、インフルエンザの発症が数名あったものの拡大することなく、終息させ た。また、運営面においては年間平均稼働率が97.9%と安定した運営ができた。 老人デイサービスセンター岩室では、理学療法士による機能訓練を、要望どおり実施すること ができた。屋外活動としては、桜の花見や、牡丹園、弥彦菊祭り等の見学など外出する機会を増 やした。合わせて、毎月のおやつ作り、趣味活動、ゲームなど、ご利用者様から喜ばれる多種多 様なプログラムを提供した。さらに、中学校、小学校、保育園の行事に参加したり、施設に来て いただいて交流することにより、ご利用者様の心身機能の活性化に繋げた。利用者数については、 岩室地域以外の方や障がい者の受入れも行ったが、昨年より2.5%減少した。 新潟市地域包括支援センター岩室では、地域の方々が自主的に介護予防への取り組みができる よう、体操の自主グループ立ち上げを支援した。また、広報紙の作成を、地域に根ざしたネット ワーク作りの一環として行い、医療・介護の関係機関に加え、地域のお茶の間、金融機関、商店 等に配布した。徐々に相談機関として周知されてきており、総合相談延べ件数は昨年より134 件(5.9%)増加した。 医療機器の整備面では、本部集団検診センター、新潟ウェルネスをはじめ各検診センター、岩 室リハビリテーション病院、いわむろの里に、胸部デジタルX線検診車、透析装置、画像サーバ ーシステム、デジタル超音波診断装置2台、画像参照装置、電動リモートコントロールベット 10台、解析付心電計、血圧脈波検査装置、セントラルモニタ心電計等の機器を整備した。 教育研修活動では、 「登録教習機関業務」として技能講習を中心に、労働衛生教育、実務研修、 衛生管理者国家試験合格指導講習を実施し、第一種衛生管理者試験の合格率は関東安全衛生技術 センター管轄9県の中で、トップの成果を上げることができた。また、「健康教育業務」としてメ ンタルヘルス、生活習慣病、マネジメント等の人材育成に関する講演・セミナーを積極的に展開 した。 広報活動については、協会報Trimを年4回発行し健康情報の提供を行った。 これら事業活動の推進にあたっては、新潟県、新潟労働局、医師会など関係機関および会員各 位から多大なるご指導ご支援を得て、所期の成果をおさめ得ることができた。
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