言語と文化

言語
文 化 人 類 学 Ⅰ
1
民族分類の基本資料
民族≠言語
言語と文化
ブルガリア人
民族:アルタイ系
言語:スラブ系
2
コミュニケーションの手段
3
文化諸項目の構造を解明する資料
4
文化人類学にとって基本的な方法論を摂取すべき
モデルサイエンス
言葉を喋る。身体に刻み込まれた文化。
Komajo
文化人類学研究室
衣装のコミュニケーション
Ⅰ 言葉とコミュニケーション
メッセージは、コードによって伝送され、受信者は、
同一のコードによってメッセージを理解する。
・言語学の視点
ラングとパロール
・言語を二つのレベルに分けて考えた。
個人レベル
→ パロール
社会的レベル → ラング
パロール(parole)
ラング(langue)
<ソシュールの言語学>
個人的な発話(パロール)は、社会的な言語体制
(ラング)の上にのっていて、それに規制されるが、
同時にラングを破壊し改変して行く作用がある。
個人的
発音表
文法
辞書
社会的
文化的
個人はラング
を変更するこ
とができない
・言語の研究対象
→個人の言語行為を研究の対象としない。
→ラングを言語学の対象として扱った。
メッセージ
コード
女だからスカートをはく。性差の確認
スカート=女の装い
Ⅱ 言語とは何か
1
単語
2
音素
ラングは、文化によって与えられたもの。
3
二重文節
ラングは後天的。
4
カテゴリー化
5
コンテキスト
6
非言語コミュニケーション
日本の文化
英語の文化
J
E
コミュニケーション仕掛け
民俗的分類
J
1
1 コミュニケーションの仕掛け
コミュニケーションの仕掛け
単語 「意味するもの」と「意味されるもの」
A
対 象
概 念
意味されるもの
signifie
B
シニフィエ
水
音
文 字
言 語
意味するもの
signifiant
シニフィアン
水
両者が結びついて
はじめて「単語」は成立する
コップ
恣意的
どんな音を
利用しても
よい
なんと呼んで
もかまない
いぬ
いぬ
DOG
ASO
日本語
英語
タガロク語
個人の自由な組み合わせではない
文化によって与えられたもの
私たちはイヌ
と呼んで理解
できる仲間
「意味」をつくりだす基本
①
言語が音声という連続体に切れ目
②
音素という差異の体系をつくりだす
③
意味を担わない音素のつらなり
意味を担う単位がつくられる
→
意味作用
所与性
2 音 素
あ
あ
音素
音素
イ
ヌ
個人
④
→
イ ヌ
声の質、音の高低など
→
異なる
でも、「あ」を理解できる。
私たちの脳は、「違い」を感じる。
2
区別の体系
言葉が理解できること
・コミュニケーションができることは、
音素
個人
音の区別の体系を共有しているということ。
声の質、音の高低など
一つ一つの音の区別
→
異なる
お/は/よ/う/
共有性
・音の区別をしないと言語は成立しないが、
こ/ん/に/ち/わ/
音を聞き取ること
→
・日本語
母音 /a/ /i/ /u/ /e/ /o/
子音 /k/ /s/ /t/ /n/ /h/ /m/ /j/ /r/ /w/
/g/ /z/ /d/ /b/ /p/
3
区別の仕方は言語によってさまざま。
音の違いを判断している
二重文節
恣意性
◆
文字も同様に区別する指標で判明
ソ
『
ン
リ 外国人には難しい
私は菜の花を摘みにいく。』
「ことばは、通信のための分節された道具である。」
言語学者
アンドレ・マルティネ(André Martinet)
「分節する」というのは、「分ける」ということ。それ
では、二重分節(double articulation)とは何か?
言語は、音素という最小の単位を組み合わせ単語、文
をつくりあげる。この二段階の積み上げを言語の二重分
節と呼ぶ。
『
私は菜の花を摘みにいく。』
形態素のレベルに分ける。
blog.hokkaido-np.co.jp/.../2008/05/post_17.html
(3) 明日は雨。
「アシタ」「ハ」「アメ」(3つの形態素)
(1) ワタシワナノハナヲツミニイク
上記の文を音素のレベルに分ける。
(2)
(4) /asita/ /wa/ /ame/
ワタシ|ワ|ナ|ノ|ハナ|ヲ|ツミ|ニ|イク
(第一分節)
上記の文は、九つの形態素から成り、
「菜ノ花」は「ナ・ノ・ハナ」の三つの形態素から成る、
という言い方をする。
(第二分節)
五つ、二つ、三つの音素
音素で構成。
文は、より小さな単位の二段階の積み上げによってでき
ている。この言語の特性を二重分節と呼ぶ。
3
4 カテゴリー化 <民俗的分類>
彼
/は/昨日/弟/と/学校/へ/行った。
彼女/は/今朝/母/と/病院/へ/行った。
彼 /は/今朝/弟/と/病院/へ/行った。
言葉がつうじるのはなぜか
自然―無分化・無分類
人間―言語によって区分(切り取る)
連続する外界<自然>は、人間の命名によって非連
続的な差異の体系<文化>へと移行する
<自然―連続性> 自然界に隙間が全くない
文化の創造をささえる仕組み
人間の言語と動物の鳴き声の違い
命名された「もの」
有限な音(音素)から発せられる、言語のひろがり。
サイン シグナル
記号 シンボル
具体的
直接的
個別的
生得的
範疇的
抽象的
一般的
創造的
5 コンテキスト
分類とその意味
日本語
英語
ネパール語
ビヌキッド語
water
みず
言葉がつうじるのはなぜか
会話はコンテキスト(使われている状況)によって
成り立っている。
ゆ
あめ
「非もの」
・テキスト
教科書や辞書に書かれている
pani
rain
wahig
river
khola
stream
nadi
かわ
I am busy. = 私は忙しい。
・コンテクスト
結城原図
日本人の「話し方」
・結論がはっきりしない
I am busy. = 私は忙しい。
日本は、ハイ・コンテキスト社会
以下の表現は日本人のコミュニケーションの核心を表現
暗黙知を共有したコミュニケーション
・曖昧な表現を好む
・話の主体性が見えない
・話の内容が連鎖的に変わる
・例え、事例が話の構成上重要になる
・相手に理解を委ねる
・一を聞いて十を知る
・「儲かってまっか?」
「ぼちぼちでんがな」
・「その辺は察してな」 察しが悪い
・「通じない人やな」
・「阿吽の呼吸」
・ツーと言えばカー
ハイ・コンテキスト社会とロー・コンテキスト社会
4
ロー・コンテクスト文化
価値観
独
体験
米
知識
仏
言語
言語に依存
英
日本
ハイ・コンテクスト文化
コンテクストの共有
ロジック
コミュニケーションの共有基盤
Hall, E.T. Beyond Culture, Anchor Books (1977)
6
非言語コミュニケーション
声の出し方・高さ・速さ
表情・姿勢・目線
ロー・コンテキスト社会
異質性が高い
個人の主体性
アメリカ社会
コミュニケーションが明示的
ネット社会
ハイ・コンテキスト社会
同質性が高い
全体の調和(和)
日本社会
暗黙知を共有したコミュニケーション
言葉ではない「何か」を通じて伝えられる
沈黙は金
Ⅲ 文化と言語
1 文化を構成するシンボル
言語 聴覚
視覚/臭覚/味覚/触覚
身振り・手振り
合図
言いにくいこと
人間関係
2 文化人類学のモデルサイエンスとしての言語学
<<文化は意味の網の目である>>
・生活様式の総体文化を構成するシンボル
・言語は登録済みの文化項目である
3 言語の多様性=文化の多様性
・シンボルの体系は、文化によって異なる。
・後天的に獲得される。
・「意味の網の目」をつくりだす「意味するもの」と
「意味されるもの」の組み合わせが、個々の文化に
よって違う。
4 文化を生みだすこと
・意味を担わないものを組み合わせて意味の単位をつ
くる。
・シンボルとの対立あるいは差異性から意味をつくり
だす。
5 文化人類学を学ぶ意義
・文化に対する洞察力を磨く。
5