平 成 2 8 年 度 事 業 計 画 事 業 計 画 1.事業の基本方針 近年の異常気象の頻発、東北地方太平洋沖地震等の大災害の発生、少子高齢化 の進展等を背景に、ダムに対する社会的要請も事業の一層の効率化、環境負荷 の低減、既存ストックの有効活用、ダムの安全性に対する説明責任等、さらに 多 様 化 し て き て い る 。ま た 、平 成 24 年 12 月 に 発 生 し た 笹 子 ト ン ネ ル の 天 井 板 落下事故を契機として、土木構造物の適切な維持管理の重要性が指摘された。 平 成 27 年 9 月 に 発 生 し た 関 東 ・ 東 北 豪 雨 に よ る 利 根 川 水 系 鬼 怒 川 の 破 堤 ・ 浸 水災害では、鬼怒川上流 4 ダムの洪水調節効果が実証され、異常気象に対する 防災施設の整備の重要性が再認識された。 (一財)ダム技術センターは、これまでダムの調査・計画・設計・施工・管理 にわたるさまざまな調査研究や技術協力を実施してきたところであるが、以上 の よ う な 状 況 を 踏 ま え て 、( 1 ) 新 技 術 の 開 発 、( 2 ) 既 設 ダ ム の 有 効 活 用 、 ( 3) ダ ム の 安 全 管 理 の 3 点 に 重 点 を お き 、 こ れ ら の 取 組 み を 一 層 強 化 す る 。 (1)新技術の開発 ダム事業に関する近年の環境への配慮、コスト縮減、工事期間の短縮等の多 様 な ニ ー ズ に 応 え る た め 、 台 形 CSG ダ ム 、巡 航 RCD 工 法 、放 流 設 備 の 設 計 合理化等に関する技術開発及びその普及に積極的に取り組む。 (2)既設ダムの有効活用 近年、治水、利水の機能を強化する既設ダムの有効活用への要請が高まって きており、ダムの嵩上げ、放流設備の増設、排砂設備の設置、ゲートレス化 等が実施されている。これらのニーズに応えるため、既設ダムの有効活用に 必要な新技術の調査・研究や開発及びその普及に積極的に取り組む。 (3)ダムの安全管理 建設後長期間経過したダムの増加に伴い、ダムの長寿命化の観点から堤体の 安全性の評価、補修を含む維持管理計画の策定が求められている。これらの ニーズに応えるため、ダム総合点検や大規模地震に対する耐震性能照査等の 豊富な実績に基づき、ダムの安全管理、大規模地震に対する堤体・ゲート等 の耐震性評価に関する調査・研究及び技術の普及に積極的に取り組む。 1 2.平成28年度事業計画 (1)ダムの建設及び管理の技術に関する調査研究・技術開発、調査研究・技術 開発の成果の提供 1)調査研究・技術開発 ダ ム の 建 設 及 び 管 理 の 重 要 事 項 に つ い て 、ダ ム 技 術 セ ン タ ー の 研 究 顧 問 、 嘱託研究員、外部の学識者、専門家、行政関係者、関係学会、関係業界 等の協力を得て、委員会等を設立して調査研究を行う。また、技術協力 事 業 等 の 成 果 を 活 用 し て 、 台 形 CSG ダ ム の 設 計 ・ 施 工 方 法 、 巡 航 RCD 工法に関する技術開発等を継続する。 ①ダムからの土砂供給による汽水域への環境影響評価手法に関する研究 (継続) 平 成 27 年 度 は 、 モ デ ル 汽 水 域 と し て 宮 崎 県 の 耳 川 を 選 定 し 、 物 理 環 境 モデルについては地形、潮位、河川流量などのデータ収集を行うととも に、3 次元汎用流体モデルの構築を開始した。また、生物環境モデルに ついては、九州大学と共同してモデル作成に必要な非出水期の生物生息 状況調査などのデータ収集を行った。 平 成 28 年 度 は 、 塩 水 遡 上 に 対 す る 潮 汐 や 出 水 の 影 響 、 濁 水 、 流 砂 の 流 下 状 況 に つ い て 3 次 元 汎 用 流 体 モ デ ル に よ る 計 算 を 行 い 、適 用 性 を 評 価 する。さらに、生物調査などによりデータを蓄積し、生息生物と環境場 の関係を推定する生物環境モデルを作成する。 ②ロックフィルダムの動的解析に関する研究(継続) 平 成 27 年 度 は 、 荒 砥 沢 ダ ム を モ デ ル と し て 、 上 下 流 方 向 断 面 に つ い て 動的解析を行い、同一物性を用いて強さの異なる地震に対する堤体挙動 の 再 現 性 を 確 認 し た 。 平 成 28 年 度 は 、 引 き 続 き ダ ム 軸 左 右 岸 方 向 に つ いて動的解析を行い、堤体挙動の再現性を検討する。 ③ダムのリスクマネジメントに関する研究(継続) 平 成 27 年 度 は 、 海 外 の ダ ム の リ ス ク 分 析 手 法 に 関 す る 文 献 を 収 集 す る とともに、国内のモデルダムを対象にリスクマネジメント適用に向けて 技術的な課題の整理を行った。 平 成 28 年 度 は 、 引 き 続 き 海 外 文 献 の 収 集 を 行 う と と も に 、 実 ダ ム へ の 適用を考慮したイベントツリー(リスク発展系統図)の検討を行う。 ④ダムの管理手法に関する研究(継続) 当 セ ン タ ー が 、こ れ ま で 実 施 し た ダ ム 総 合 点 検 の デ ー タ を 整 理 し 、 堤 体 劣 化と補修方法、堤体挙動・クラック等の計測手法等に関する研究を引き 続き実施する。 2 2)調査研究・技術開発の成果の提供 ①技術支援 ダムの施工や管理における緊急を要する技術的諸問題について、 受託に よ ら な い 技 術 的 ア ド バ イ ス 、現 地 技 術 指 導 等 を 行 う 技 術 支 援 は 、平 成 27 年 度 は 15 ダ ム で 計 72 回 実 施 し た が 、 平 成 28 年 度 も 国 土 交 通 省 各 地 方 整備局、都道府県、電力会社等の要請に基づき実施する。 ②調査研究成果の提供 平 成 28 年 度 は 、湯 西 川 ダ ム (国 土 交 通 省 )、五 ヶ 山 ダ ム( 福 岡 県 )な ど で の 巡 航 RCD 工 法 の 施 工 実 績 を 踏 ま え 、 コ ン ク リ ー ト 打 設 を さ ら に 効 率 化 ・ 高 速 化 し た RCD 工 法 に 関 す る 技 術 資 料 を 作 成 し 、 出 版 す る 。 ま た 、 「ダム工事積算の解説 平 成 23 年 度 版 」 を 、 近 年 の ダ ム 工 事 の 実 績 を 踏まえて改定する。さらに、毎年度出版している「ダム技術研究所調査 研 究 活 動 報 告 」、機 関 誌「 ダ ム 技 術 」に よ る 技 術 情 報 の 提 供 、各 種 技 術 誌 等への投稿及びホームページへの最新情報の掲載により、調査研究成果 を積極的に提供する。 (2)ダム事業に関する技術協力 ダム事業の各段階において生じるさまざまな技術的課題を解決するため、 国や都道府県等からの要請に基づく高度かつ総合的な業務について技術協力 を行う。最近では、効率的な維持管理、既設ダムの機能向上、地震時のダム の安全性確保、ダムの新技術に対するニーズが大きくなってきている。業務 内容としては、既設ダムの総合点検及び長寿命化計画の策定、再開発、大規 模 地 震 に 対 す る 耐 震 性 能 照 査 、 台 形 CSG ダ ム の 設 計 ・ 施 工 等 に 関 す る 検 討 及び評価を実施する。 1)地形・地質等に関する技術協力 地質構造の複雑なダムの地質、規模の大きい貯水池地すべり等に関する 検討及び評価を行う。 ①地質総合解析に関する検討及び評価 ②貯水池地すべりに関する検討及び評価 2)堤体及び関連施設の設計・施工等に関する技術協力 ダムの本体概略設計・詳細設計・施工計画・施工設備、基礎処理計画、 取 水 放 流 設 備 等 に 関 す る 検 討 及 び 評 価 の ほ か 、 台 形 CSG ダ ム 等 の 新 技 術等に関する検討及び評価を行う。 ①大規模地震に対するダムの耐震性能照査に関する検討及び評価 ② 台 形 CSG ダ ム の 設 計 ・ 施 工 に 関 す る 検 討 及 び 評 価 3 ③ RCD(Roller Compacted Dam-concrete)工 法 に 関 す る 検 討 及 び 評 価 ④ CSG 工 法 を 用 い た 海 岸 堤 防 の 設 計 ・ 施 工 に 関 す る 検 討 及 び 評 価 ⑤造成アバットメント工の設計・施工に関する検討及び評価 ⑥治水専用ダムの設計・施工に関する検討及び評価 ⑦既設ダムの再開発の設計・施工に関する検討及び評価 ⑧本体概略設計・本体詳細設計に関する検討及び評価 ⑨施工計画・施工設備に関する検討及び評価 ⑩基礎処理計画に関する検討及び評価 ⑪取水放流設備設計に関する検討及び評価 ⑫ダム工事の積算基準の検討及びダム本体工事積算資料等の作成の指導 3)ダム工事入札手続に係る技術提案の審査に関する技術協力 総合評価落札方式等によるダム工事の入札契約手続において、施工計画 等に係る技術提案の審査に対する助言、提案を行う。 4)施工管理等に関する技術協力 本体工事中のダムにおいて、施工管理等に関する発注者支援の技術協力 を行う。 5)ダム・貯水池管理等に関する技術協力 管理中のダムについて、施設の安全性、管理方法等を総合的、客観的に 判断し、適切なダム管理のあり方を検討するダム総合点検や機能点検を 行うとともに、中長期的な維持管理方針を定めた長寿命化計画の検討及 び 評 価 を 行 う 。ま た 、ゲ ー ト に よ る 洪 水 調 節 操 作 方 法 の 改 善 や 施 設 改 良 、 新しい異常洪水時の操作方法について検討及び評価を行う。 ①既設ダムの安全性及び管理方法に関する検討及び評価、長寿命化計画の 検討及び評価 ②既設ダムの洪水調節操作方法の改善及び施設改良に関する検討及び評価 ③堆砂対策に関する検討及び評価 (3)国際技術交流 1)国際会議等への参加 ・ 国 際 大 ダ ム 会 議 2016 ヨ ハ ネ ス バ ー グ 年 次 例 会 へ の 参 加 5 月 に 南 ア フ リ カ の ヨ ハ ネ ス バ ー グ で 開 催 さ れ る 国 際 大 ダ ム 会 議 第 84 回年次例会に参加する。 ・地震解析と耐震規程に関する日仏共同ワークショップへの参加 8 月にフランスのモンサンミシェルで、日仏両国大ダム会議が共催する ワークショップに参加する。 4 ・ APG シ ン ポ ジ ウ ム 及 び EADC へ の 参 加 9 月 に 札 幌 市 で 開 催 さ れ る 第 4 回 APG( ア ジ ア・パ シ フ ィ ッ ク グ ル ー プ ) シ ン ポ ジ ウ ム 及 び 第 9 回 EADC( 東 ア ジ ア 地 域 ダ ム 会 議 ) に 参 加 す る 。 2)国際技術協力 ・ エ ジ プ ト の ワ ジ (涸 れ 川 )の Flash Flood 対 策 に 関 す る 技 術 協 力 乾 燥 地 域 ・ 半 乾 燥 地 域 の ワ ジ (涸 れ 川 )の Flash Flood 対 策 と し て 、 台 形 CSG ダ ム の 適 用 性 を 検 討 し て い る エ ジ プ ト 政 府 に 対 し て 、平 成 26 年 11 月 の ワ ジ の 現 地 調 査 、 平 成 27 年 11 月 に 来 日 し た 技 術 者 へ の 台 形 CSG ダ ム 技 術 の 紹 介 を 踏 ま え て 、引 き 続 き 技 術 協 力 を 行 う 。 ・イランに対する技術協力 イ ラ ン 大 ダ ム 会 議 か ら の 要 請 に 基 づ き 、 平 成 27 年 9 月 に 来 日 し た 技 術 者 へ の 台 形 CSG ダ ム 技 術 の 紹 介 を 踏 ま え て 、 引 き 続 き 技 術 協 力 を 行 う 。 ・その他、ラオス政府からの依頼に基づき、ナムニエップⅠ水力発電プロ ジ ェ ク ト の 安 全 審 査 に 係 わ る 技 術 協 力 を 平 成 27 年 度 に 引 き 続 き 行 う 。 また、ジョージア政府が計画を進めている水力発電事業で建設される Nenskra ダ ム の 設 計・施 工 管 理 の 技 術 評 価 に 係 る 技 術 協 力 を 引 き 続 き 行 う。 (4)ダム技術者育成事業 現地技術研究会、オンザジョブトレーニング等によって、都道府県並びに国 土交通省の技術職員の技術向上や人材育成に貢献する。 1)現地技術研究会 都道府県並びに国土交通省の若手職員を対象に、建設・管理の現場に即 した実践的なダム技術を習得するための研究会を、現地において年1回 開催する。 2)ダム技術研究発表会 都道府県の若手職員の技術向上に資するため、ダム技術に関する発表論 文を募集し、年1回発表会を開催する。 3)オンザジョブトレーニング 平 成 28 年 度 も 引 き 続 き 都 道 府 県 職 員 を 受 け 入 れ 、 オ ン ザ ジ ョ ブ ト レ ー ニングによる人材育成を実施する。 (5)ダムに関する知識の普及啓発 「ダム技術」等の技術図書の発刊、ホームページ更新等によって、ダムに関 する知識の啓発普及を広く進める。 5 1 ) 機 関 誌 「 ダ ム 技 術 」( 月 刊 ) の 刊 行 2 ) 広 報 誌 「 ダ ム ニ ュ ー ス 」( 月 刊 ) の メ ー ル 配 信 3)ダムフォトコンテストの開催 4)ホームページによる最新情報の提供 (6)その他の事業 1)建設技術審査証明事業 民 間 の 技 術 力 を 主 体 と し た 技 術 開 発 の 積 極 的 な 推 進 を 図 る た め 、民 間 に おいて自主的に開発されたダム建設技術の内容審査、証明等を実施 する。 2)プレキャスト型枠事業 プ レ キ ャ ス ト 通 廊 用 の 製 作 型 枠 貸 出 し 事 業 を 平 成 11 年 度 よ り 実 施 し て お り 、 平 成 28 年 度 は 5 ダ ム で 実 施 す る 。 3)関係団体・関係行事への協力 ダム技術の向上や啓発普及に資するための活動の一環として、 「ダム工学 会 」、「 日 本 大 ダ ム 会 議 」 及 び 「 水 フ ォ ー ラ ム 」 の 活 動 へ の 協 力 、 ま た 、 「水の週間」の行事への参加等を行う。 6
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