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セミナー G1
「印刷ビジネスを変える
BtoB 印刷発注サイト」
ジーエーシティ調査隊 代表取締役 堀本邦芳
従来の受注窓口である顧客訪問、電話、FAX、e メ
ールよりも、個々の顧客向けの MyPage での受注が圧
倒的に多くなっているという。ここでは顧客は刷り
増しの発注、データ入稿、発注、納期確認、配送先
設定、校正などの作業が簡単に行える。
ちなみに個々の顧客向けの MyPage はクライアント
【初めに】 JAGAT の基調講演の案内には:
に便利で、総務省の H24 通信利用動向調査(企業編)
「印刷発注者にとって、発注業務は原稿の収集から
の概要によれば、電子商取引を活用する企業は 50%
事務手続き、校正、納品管理など人手がかかるとい
であり、インターネットで商品を購入する理由の 1
う課題がある。Web to Print や IT によって印刷発注
位は「営業時間を気にせず買い物できる」ことだと
を効率化するサービスや仕組みを取り上げる」とあ
いう。顧客の利便性は、1. 電話より正確、2. FAX
る。
より便利、3. E メールより安全、4. 365 日 24 時間
モデレータは DIG Japan の有賀誠氏、スピーカー
はプルキャストの岡本幸憲氏とレゾロジックの池野
弘明氏である。
発注可能である。
逆に印刷会社から見ると、個々の顧客向けの
MyPage は、1. 受発注履歴が明確、2. 大量受発注も
容易、3. 業務の効率化で自動化と人間対応を分離、
有賀氏のプレゼンでは、印刷ビジネスを変える
4. 情報セキュリティが上がる、5. 顧客との関係性
BtoB 印刷発注サイトを、IT と Web2Print で業務フ
を強くできるといったメリットがある。
ローを改善し、BPO を実現するとして、印刷通販の比
DIG が販売代理しているのは EFI の Digital
較サイトの調査結果を示した。有賀氏によると、印
Store Front という世界でも有数の Web2Print システ
刷通販は日本で231社が認められるが、多くは新
ムであるが、印刷会社(PSP)での導入実績は 1300
規顧客開拓するのが目的であり、B2C が主になってい
本と高い。クラウド型と自社サーバー運用のどちら
る。これに対して米国では、印刷会社の 56%が
も対応しており、少ない初期投資でも立ち上げ可能
Web2Print ソフトを導入しており、Web2Print を経由
で、後で自社サーバーに移行する事もできる。また
した受注額が全体の 14%にも及んでいる。しかし日本
電子商取引(EDI)で重要な顧客側の購買システムと
では Web2Print の導入は 4%、受注額は 1%を超えるか
連動する事も可能である。
どうかだという。
なぜ導入が進まないのかという疑問に対し、日本
印刷会社への導入事例では、各顧客へ 24 時間対応
の窓口を提供し、一部を完全自動化する事で、業務
では 1. 営業がすぐに対応し、2. 対面で説明しない
効率も 50%向上し、納期短縮、顧客満足度向上により、
とトラブルが起こり易い、3. 顧客が Web で印刷デー
受注数が 3 倍に増加した。
タを作らないという認識がある。
また世界的なマーケティング会社である HH
これに対しクライアントの課題分析を B2B で見る
Global は EFI Digital Store Front を導入して、プ
と、営業部門では受発注の伝票処理、見積もり作成
リントマネージメントサービスを一般顧客企業に提
の手間、スキルアップの暇がないこと、マーケティ
供している。
ング部門では印刷物製作数の集計の手間、販促物の
HH Global の顧客は世界のグローバル企業が多く、
無駄が多い、製作会社との打ち合わせの手間、競合
分野もファッション、通信、小売り、IT、日用品、
他社の情報不足などが上げられる。
薬品、ホテル、金融と幅広い。多くの企業が、プリ
米国では Web2Print が 56%も導入されているのは、
ントマネージメントサービスを利用している。
その方が効率が良いからである。
ジーエーシティ株式会社
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このサービスを利用すると、印刷会社との見積も
りから請求書発行までを一元管理する事で、人に依
存していたフローやプロセスを自動化し、全体最適
により QCD を達成することで、顧客の経営資源を本
来業務に割り当てる BPO を提供できる。
同社は Edition PriBiz という Web2Print のクラウド
別の事例として紹介されたのは Cordeo Brand Spot
サービスを Amazon Web Service (AWS)上で展開して
である。これはブランドオーナー用のポータルであ
いる。この他にも Edition Flex というウェブ用の編
るが、ブランドリソースマネージメントを
集、組版エンジンを 14 年間提供してきた。また
DAM(Digital Asset Management)と組版アプリケーシ
Edition e-catalog という電子カタログによるマー
ョンを組み合わせて、ポータル上でブランドの発注
ケティング支援・プラットフォーム供給を行ってい
者自信が目的に応じたカタログやポスターなどを完
る。その顧客は電通オンデマンドグラフィックスや
成する。興味深いのは40種もの多言語に対応して
キャノンマーケティングジャパン、日本 HP、DNP、凸
おり、年間 1500 万枚もの印刷物をコントロールして
版印刷などに加え、不動産、生保、外食、自動車、
いる事である。ブランドイメージを適切に管理する
印刷通販など多くの業種にわたる。
ために、従業員も外部のデザイン会社もルールに則
印刷通販の事例では以下の6サイトを示した。
り、決められたロゴマークや画像、テンプレートを
使用する。
以上の説明から、Web2Print は印刷の受発注だけで
なく、マーケティングやブランドマネージメントに
も利用されるように拡張されている事が判る。クロ
スメディア化や、デジタルマーケティングが今後ま
すます重要になる中、日本の印刷会社はもっと
Web2Print を活用する必要があるだろう。
次にレゾロジックの池野氏がプレゼンした。
「ストアフロントで変わる印刷の当たり前」という
題でクラウドにより Web2Print が BPO を実現するこ
また一般顧客企業を対象とする Edition PriBiz で
は B2B の印刷 BPO を提供する。
とを説明した。
ジーエーシティ株式会社
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一般企業が支社支店、各店舗、代理店に対して販促
またマーケットのフォーカスとしては:
物を製作・配付管理を行う場合の様々な業務を、ク
1.マーケティングコミュニケーションフォーカス
ラウドサービスで一括処理し、配送会社、ノベルテ
マーコム・SP運用プラットフォーム
ィサプライヤ、オンデマンドの印刷拠点との様々な
フィジカル・マーケティング・オートメーション
やり取り、生産管理、在庫管理をおこなう BPO サー
ビスである。
レゾロジックは自社で直接サービスを提供するの
2.パブリッシングフォーカス
クロスメディアワークフロー
広告システム連動型パブリッシング
ではなく、顧客の印刷会社や広告代理店、プリンタ
3.プロダクションマネジメントコラボレーション
メーカーなどにクラウドサービスを提供するモデル
マーケティングテクノロジーコラボレーション
になっている。
インストアプリンティング
また HTML5 でオープンフォーマット化した電子カ
を上げている。
タログ作成サービスや、ウェブ編集サービスもオプ
ションとして組み合わせできる。電子カタログでは
閲覧記録から、マーケティングに利用できる。
デモでは顧客から 1000 件のエクセルデータを受け
取った想定で PDF 作成の処理を行ったがわずか5秒
で完了した。1万通だと 4 分 20 秒である。また印刷
会社は機能に応じた面付け済みデータとしてダウン
ロードできる。
次のスピーカーであるプルキャスト岡本氏は「ど
んな IT にでも繋がる『紙』で、コミュニケーション
に革命を!」と題してプレゼンを行った。
プルキャストのビジネスモデルは下図のようにな
っている。
興味深く感じたのは上の図で、これはPCFrontierと
いうポータルの周りにDAM(Digital Asset
Management)やDBを配置し、PC Oneflowという様々な
サイトからの大量注文を一元管理し、様々なデバイ
スとオープンに連携する出力管理システムをつない
でいる。これによりプロダクションの最適化・自動
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化を実現し、稼げるデジタルプリントプロダクショ
バイダーとしての立ち位置をブランディングできる
ンの構築を支援するという。またAPIを通じて外部の
という。
SFA, ERP, CRM, WMS, CMSと連携する事ができる。
過去、印刷会社がPSP(Print Service Provider)に
ビジネスの実績としては、OEM件数:13社+
なろうとして苦労しているが、このSLAの視点はかな
導入社数:1,000社+(部門含む)
り重要なポイントだと感じた。
利用ID数:20,000アカウント+
また利用企業種は印刷会社・広告代理理店・コ
まとめとして、岡本氏は:
BtoBで上流サービスを実現したいならば;
ミュニケーションサービスプロバイダー・
1. 冷静に戦略と戦術を組み立てる。
SPサービス代理店・ITインフラ・飲料メーカー・
2. 全部やれるとは絶対に思わない。
ロジスティックス・アパレル・自動車メーカー(販
3. 自分がどこで儲けるかはシンプルに強かに。
売)・製薬・機材メーカー・通信キャリア・プロ
4. 要求されるスピードと変化する頻度を予測。
スポーツ・住宅販売メーカー・コンタクトレンズ
5. スケーラビリティのない提案は命が短い。
メーカー(販売)・コンテンツホルダーなど多様
6. パートナーを持つ。
である。
という事を忘れないことだと述べた。
プルキャストのビジネスは外部のパートナーとの
私が、興味を覚えたのは、「5. スケーラビリティ
コラボレーションで様々なソリューションを提供す
のない提案は命が短い。」という点で、まさにシス
るコーディネート企業のように見える。
テムがクラウドやコラボレーションでスケーラブル
例えば外部のマーケティング技術であるリコメン
ドエンジンサービスと組み合わせる事で
になる事で、常に最適な規模と機能を維持できると
思う。進化するビジネスモデルを作る事が必須であ
るが、上記の指摘はすべて重要なポイントであろう。
【パネルディスカッション】
Q: クライアントとの関係で、サービス内容を変え
ているとして、顧客からのコミットメントの要求は
どうか?
A: 池野氏は、BPO としてのパートナーになると、対
応範囲が広くなると対等な立場になる。
A: 岡本氏は、コミットメントを出せる根拠がある。
なぜなら PDCA を回せる。また無理な話は、要りませ
キャンペーンのフィードバックループを回す販促施
んという勇気を持つ事が大事で、外部を紹介する事
策が自動化できる。これは一つの MA(marketing
もあるという。
Automation)だといえるだろう。
岡本氏は、その結果、つどの見積もりという印刷
の受注形式から、SLA(Service Level Agreement)を
【最後に】
多くの印刷会社が持つ B2B のビジネスに置いても、
合意・締結できるレベルにできれば、情報セキュリ
Web2Print を含む受発注・生産・在庫の管理を一元化
ティ範囲内での稼働が可能となり、業務・運用との
して行く事が重要であるという事がよくわかる講演
より親密な関係構築で囲い込みが行え、定数的なレ
であった。
ポートとPDCAでROI/KPI向上へ貢献でサービスプロ
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