創刊号(2010.10月) - 加古川地域保健医療情報システム

創刊号
2010年 10月 発行
財団法人 加古川総合保健センター
Kakogawa General Health Care Center
保健センター検査課だより
コスモス(秋桜)
撮影場所:稲美町
~保健センター検査課だより発刊に当たって~
加古川総合保健センター検査課全員の熱い思いを
込めた「保健センター検査課だより」が創刊されました。
医療を取り巻く環境は、極めて厳しい状況にあります。
検査課は、365日24時間体制で迅速かつ精確な検査
を通じて、地域の皆様がより良い医療を受けられるよう
頑張ってい ます。
小誌が、ご利用いただいております先生方やスタッフ
の皆様と検査課の更なる相互理解に少しでも役立つこ
とを期待しております。
これからも、暖かいご支援と厳しいご指導を賜りますよ
う心よりお願い申し上げます。
加古川総合保健センター 検査検体部会 部会長
高嶋内科 院長
高嶋 隼二 医師
糖尿病の新しい診断基準について
HbA1cとは・・・
糖尿病の新・診断基準について
糖尿病の診断から治療効果の指標として“血糖検査”
があります。しかし、血糖値は食事や運動量など様々な
要素により変化していきます。この問題点を解決し、
糖尿病の状態を示す指標のひとつとして“HbA1c”が
あります。高血糖の状態が続くと、血管内の余分なブド
ウ糖と赤血球内のヘモグロビンが化学反応により結合し
ます。この反応の結果できた産物が“HbA1c”です。
この反応は血糖値が高いほど、また高血糖状態の時間が
長い程促進されます。“HbA1c”の値は赤血球の壊れる
速度の関係から、検査実施の約1~3ヶ月前の血糖状態
を反映していると言われています。
2010年5月に岡山で開催された第53回日本糖
尿病学会年次学術集会にて糖尿病の新しい診断
基準が発表され、“HbA1c”が“血糖値”と並
ぶ基準に引き上げられることとなりました。当
面日本国内においては従来使用されてきた
“JDS値(%)”を継続することとなりました
が「将来的には米国を中心に国際的に使用され
ている“NGSP値(%)”との整合性のとれる
値にするべき」とし、“JDS値(%)”に0.4%
を加えた“NGSP相当値(%)”へ変更すると
の見解が示されました。変更時期については未
定ですが糖尿病学会より全国一斉に告示される
予定です。
また、“HbA1c”が“血糖値”の基準と同列
に扱われたことで、血糖基準のいずれかと
“HbA1c”が同時に基準を満たせば1回の検査
で『糖尿病』と診断ができるため、早期診断・
介入が可能となります。ただし、“HbA1c”だ
けでの糖尿病診断は認められず、初検か再検の
いづれか一方で必ず“血糖値”の検査を実施す
ることが求められています。
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)について
BNPとは正式名称:Brain Natriuretic Peptideと言います。日本語では脳性ナトリウム利尿ペプチド(尿をつ
かさどるホルモンの一つです)と表します。ではなぜ心臓から尿のホルモンがでているのか・・・・?
それは心臓に負担がかかると、心臓はなんとかして自分の負担を減らそうとします。全身をめぐる血液の量が
減れば、心臓が送り出す血液の量も減り、心臓の負担は軽くなります。そのため心臓は負担がかかると尿を出さ
せるホルモン(=BNP)を分泌することで全身をめぐる血液の量を減らし、負担を軽くしようとします。
つまり、BNPとは心臓から分泌される尿を出させるホルモンのことなのです。このことを利用し、逆に血液中の
BNPの測定によって、心臓への負担がどの程度なのか(?)、あるいは心不全の程度を知ることができます。
そのためBNPの値が高ければ高いほど心不全は重症傾向を示します。ただし、狭心症や発作性の不整脈の場合は
常に心臓に負担がかかっているわけではありませんので、BNPのデータが低値となる場合があるので注意が必要
です。また、腎不全の方(透析を受けている方など)は、心機
能の程度とは関係なくBNPが上昇する場合がありますで、この
場合も注意が必要です。
従来 BNP は心不全の病態把握のために検査を行っておりま
したが、2007年より心不全の診断にも保険適応が認められる
ようになりました。これにより検査依頼数も増加してきてい
ます。
更にBNPは自覚症状が出る前から血中濃度が上昇するとされ
ています。そのため心機能低下の早期発見にも有用な検査で
あると考えられ、健康診断の項目としても実施されるように
なってきています。
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◆ 学会に参加して
~ 日本臨床細胞学会 春季大会(横浜)~
平成22年5月29~31日パシフィコ横浜において開催された第51回日本臨床細胞学会に参加させていただきま
した。学会のテーマは『新たな半世紀への第一歩をしるす細胞診の新しい“かたち”をもとめて』で、私は
“ベセスダシステム”や“液状処理細胞診”を中心に学んできました。
平成21年、日本では日母分類(子宮頸部領域における細胞診の報告様式/日本産婦人科医会)が廃止され、それ
に変わり「ベセスダシステム2001」を使用することとなりました。また、ベセスダシステムの導入により以前に
増して液状処理細胞診が注目を浴びるようになってまいりました。
日本ではベセスダシステムは導入してから日が浅く、まだまだ多くの施設が手探りの状態で日母分類からベセ
スダシステムへ移行している状況のようです。また液状処理細胞診の浸透もまだまだ薄く、導入している施設が
多いとは言えない状況です。液状処理細胞診は画期的な手法で利点は多くありますが問題点も多く、賛否両論あ
るのが現状です。学会テーマの通りまさに今、日本の細胞診は大きな転換期にさしかかっているように感じまし
た。このような状況の中で子宮がん患者を一人でも減らすべく臨床医、細胞診専門医、細胞検査士が一致団結し
て熱い討論を交し合っておられました。
従来法である直接塗沫法の欠点をカバーできる液状処理細胞診はとても魅力的に思えました。コスト面や処理
に掛かる手間など解決しなくてはならない問題点は多々ありますが、当施設でも導入に向けた検討がおこなえる
るように私自身充分な知識・技術を養っておかなければならないと思いました。
最後になりましたが、この学会で得たことを今後の病理細胞診検査業務に活かしていきたいと考えます。
検査係
国際細胞検査士
藤原名緒子
筆者
【細胞診標本染色装置】
【鏡検風景】
【HPV感染細胞】
【病理細胞診検査担当者】
◆ ISO15189 臨床検査室認定 活動状況報告
・保冷庫の温度管理について
現在検査室には保冷庫が全部で21台あります。
検体や検査試薬の保存において適切な温度管理は
重要です。
そこで各保冷庫には1台づつ“小型温度計”を
設置し毎日記録、温度変化を確認しています。
また、使用する“小型温度計”は“標準温度計”
との間で校正を採り、各温度計のバラツキを管理・
補正しています。
【血糖検体保存用保冷庫 温度管理】
検査実施における精度を保証するため、今後も
継続し実施してまいります。
【参考】検体保存期間 青採血管:3週間 黒採血管:3日間 赤採血管:3日間 微生物検査:3日間
・作業区域の区割りについて
検査検体は細菌やウィルスなどが含まれており感
染性を有します。ISO15189では感染性物質が拡散
し汚染が拡がらないように、感染性物質を取り扱う
区域を明確に分けるように要求しています。
そこで検査課でも、右図のように床に赤テープで
境界線を貼ると同時に“感染区域”の文字を明示し
注意を喚起しています。
また感染区域内において検体に触れる際は手袋の
着用を義務付けています。
【検査室
“感染区域”
識別表示】
検査課では下記のように各種外部精度管理調査に積極的に
参加し日々精度の維持に努めています。今後も現状の精度を
維持し、質の向上とサービスに一層の努力をいたします。
◆ H21年度 臨床検査精度管理調査
参加結果について
外部精度管理調査名
主催
参加項目
評価評点
第43回臨床検査精度管理調査
日本医師会
生化学、免疫学、血液学
評価 99.6点
H21年度日本臨床衛生検査精度管理調査
日本臨床衛生検査技師会
生化学、免疫、血液、微生物、
輸血、細胞診、一般検査、
遺伝子、生理
評価 99.3%
有機溶剤に係る生体試料検査に関する
精度管理調査
全国労働衛生団体連合会
有機溶剤・鉛
第17回全衛連臨床検査精度管理調査
全国労働衛生団体連合会
生化学、血液学、尿一般
評価評点 96.8点 評価A
第29回兵庫県臨床検査精度管理調査
兵庫県臨床検査技師会
生化学、免疫学、血液学、一般
検査、微生物、細胞診、輸血
ランクA
CAP国際臨床検査成績評価プログラム
College of American Pathologists
生化学
Q1.QFT-TB検査の結果値がなぜ定性の
みなのか?定量値を報告して欲し
い。
全平均 98.8
1回目
2回目
評価A
良好
良好
A1.QFT-TB(クォンティフェロンTB-2G)検査は定量値と臨床診断との相関が
ないため、定性値のみでの報告となっています。ただし、保留
となった検体については定量値を報告しています。
(㈱SRLへの問い合わせ結果より)
Q2.亜鉛(Zn)検査の採血管
の種類は?
また採血量は?
Q3. “赤容器”検体にて血液
型や交差試験の検査は
可能ですか?
A2.保健センターの“青容器(血清分離剤入)”に採血ください。委託先へ
は保健センターにて遠心分離後、“専用容器 Z(酸洗浄済ポリスピッ
ツ)”へ移し替え提出いたします。採血量は亜鉛のみであれば、3ml
お願いします。
【ご注意】蓄尿をご提出される場合は紙コップにて採取後、委託先の
“専用容器 Z”へ移し替えた後、保健センターへご提出
ください。
A3.原則は“黄容器”でのご提出をお願いしています。採血が困難で少量し
か採取できない場合はその旨をコメント欄にご記入ください。また重複
項目(血液一般や血液像、BNPなど)との優先順位付けをお願いしま
す。
厳しかった残暑もようやく過ぎ、過ごしやすくなり実りの秋を迎えました。
さてこの度、初めての試みとして検査課からの情報発信として“検査だよ
り”を発行いたしましたが、いかがでしたでしょうか?編集に携わった者全員が機関誌の作製は初めての経験で
したので、見づらい点が多々あるかと思いますがご容赦ください。
今回の発行に当たっては、①保健センターの検査室がどのようなことを行っているのかをお知らせする ②普
段ご利用いただいております会員施設の先生方をはじめスタッフの方々から寄せられるお問い合わせの中からご
質問の多い項目を題材として取り上げ回答する ③最近注目されている検査項目などを取り上げる の3点に重
点を置き、“検査”について少しでもご理解を深めていただけますよう“解りやすく”をモットーに編集をおこ
ないました。今後は年2~3回の発刊を目指してまいりたいと考えておりますので、“お知りになりたい検査”や
“検査課に対するご要望”など、ご意見をお寄せください。
最後になりましたが創刊号の発刊にあたり、ご協力いただきました高嶋先生をはじめ関係者の方々には、この
場を借りて御礼を申し上げます。
(編集委員:高石、時本、池本、西海)
加古川総合保健センター 検査課だより に対するご意見・ご要望をお寄せください。
お問い合わせ:〒675ー0196 加古川市平岡町新在家鶴池の内1224の12
TEL 429-2200 FAX 429-6500 E-mail:[email protected]