作成:‘07.03.23 渡邊 『 禅の言葉 』 ふっと心がかるくなる禅の言葉 永岡書店:石飛博光 他から、 訳の解らぬやり取りを、『禅問答のようだ』と言う。たしかに予備知識が無い場合は、話し言葉の記録の 『禅問答』は、当事者だけが納得できて、普通の人は理解不能なやり取りだが、荒唐無稽なものでなく、禅宗の 特徴である、人間凝視、人間解放の心を表現する。禅の教えは、我々が生きる智慧、励ましを与えて、「無所得 の世界(いっさいの執着のない世界)」に導く。 自分の興味本位から選んだ、「九牛に一毛」の言葉を列記した。 本来の意図をくずさずに、現代風に解説しているので、平易に理解できる。 【1.ふっと背中が軽くなる】 りょうぼう ○ 両忘 「白か黒か」へのこだわりを忘れて 生死、苦楽、幸不幸、善悪、美醜、好き嫌い、Yes-No の2択判断をやめ、拘りから抜け出す。 あれこれの価値判断から開放されると、気持ちが楽になり、ゆとり、余裕が生まれ穏やかに過せる。 ほ う げ じゃく ○ 放下 楮 いっさいを捨て去るとすべてが生き返る 年とると荷物が増え、背中が重くなる。人生の節目々に捨てる転機がある。前歴 肩書 地位 財産も、 人に委ねられた一時の仮の持ち物。全ての荷物を捨て『素』の自分に戻り、新たな人生を楽しもう。 ○ 挨拶:あいさつ ふだんの挨拶にも生き方があらわれる 挨拶は禅の言葉。本来の意は、「傍に身をすり寄せて押し合う」こと。 「せまる、おす」の意。 挨拶をないがしろにすると、人間関係がおろそかになる。心のふれあいも生まれない。 に ち に ちこ れ こ う じ つ ○ 日日是好日 どんな日もかけがえの無い一日 1日々を人生かけがえ無い時間としてとらえ、いい日も悪い日もないはず。毎日が吉日とは意が違う。 のんびり無事に過すのでなく、「いま、ここ、自己」を」見つめ、今一瞬を大事にし、手抜き無く生きる。 かもなく ふ か も な し ○ 無可無不可 ものごとの善し悪しをはじめから決め付けない 自分で、始めから「向かない、うまく行かない、無駄」と決めてはいけない。「可もなく不可もなく」と違う。 かたよった考えを捨て、進むも退くも自在に、「決めつけか」ら自由になると、可能性はもっと広がる。 てん しん まかす ○ 天真に任す 欲を離れ自然のまま身をまかせよう 全てのこだわりを捨て、流れる水のように、空の雲のように、自然の道理に身を任せよう。 せめて、私利私欲に振り回されない生き方を志したいものです。 う き せい こ う ○ 雨奇晴好 降っても晴れても、どっちもいいね 「雨もまたよし、晴れればまたよし」 何ものにもとらわれない心境。あるがままの景色が良い。 天候に責任転嫁することなく、カタツムリ、アマガエルが顔だす雨の日を楽しむ気持ちも結構大事です。 い ち ご い ち え ○ 一期一会 今日の出会いはただ一度限り 今日、言葉を交わした人と、今度はいつ会うことが出来るでしょうか。時は人を待たない。 たびたび会う人、旅の行きずりの人であれ、二度とない人生のひと時を大事に、有用に過したい。 ○ 夢:ゆめ 何も残さず何にもとらわれることなく 夢の世界には、人は入ることが出来ない。だから、一度でいいからその中に身を置きたい。 実体が無く、はかなく消える夢を、禅の世界では、何ものにもとらわれない悟りの心境と捉える。 しきそくぜくう ○ 色即是空 いまここにある自分を大切に 宇宙万物の真の姿は「空」、実体は無い。人間は、両親も恋人も、真の姿は「空」。 天地の働き(即ち仏性)でこの世に生かされている。見える、触れる物だけに注視していてはいけない。 1 【2.立ち止まって足下を見る】 ほ ほ こ れ どうじょう ○ 歩歩是道場 率直な心さえあればどこでも学びの場 通勤電車で携帯メールのみで小説を書き、新人賞を取った人がいる。自己の立場 環境が不利 (言訳だが)と言って諦める人がいる。 き どんな条件でも無心に取組み自分を磨けば、夢に近づける。 く おこないつくすべからず ○ 規矩 不 可 行 尽 規則やマニュアルでしばるのもほどほどに 組織のリーダ的存在の人に再認識願いたい。 何事も手本、マニュアル通り、がんじがらめで息苦しい。 規則ずくめでは息苦しく、人も伸びない。自分で考え自分で判断する姿勢が最も大事である。 ※ [法演の四戒] : 仏果禅師:中国宋代の禅の高僧 『碧巖録』から 勢い使い尽くす可からず =勢いもし使いつくさば禍必ず至る 福受け尽くすべからず =福もし使いつくさば縁必ず孤なり 規矩行い尽くすべからず =規矩行い尽くさば人必ず繁とす 好語説き尽くす可からず =好語説き尽くさば人必ず安んず こころしずかなればすなわち み すずし ○ 心静 即 身涼 心が平穏であれば肉体もさわやか 座禅の心得として使われる言葉。邪念なければ身も心も健やかに過せる。 い ち に ちなさざればい ち に ち く ら わ ず ○ 一日 不 作 一日不食 つとめるべき勤めを果たそう 今日一日をわが身に恥じる事無く過しましたか?禅者が 1 日の終りに、修行を振り返る言葉。 わこうどうじん ○ 和光同塵 苦しむ人には無心に手を差しのべる 仏、菩薩はその光を和らげ隠し、俗世に混じって、悩める人を、同じ目線で悩める人を救う。 偉い人の言葉も、高い地位 経歴を離れて、同じ目線、立場で庶民に話せば胸に響く。 ○ 一大事 今日をどういきるかが最も大事 生とは?死とは? 何のために生まれ? どう生きるべきか? 明らかにするのが人類の永遠の命題 「今日をただ今」を懸命に生きること。それを忘れずに生きて行こう。 【3.やさしく生きる・つよく生きる】 ○ 主人公 本来の自分を目覚めさせよう 主人公も禅の言葉。 ドラマの演じる人物ではない。本心、本来の自己真実の人を意味する。 自由で迷いがなく、人を愛し愛されたいはずの、本来の自分を目覚ませた主人公を忘れずに生きよう。 りっしょ ○ 随処に主となれば立処皆真なり ブレない自分は「無心」でつくる どこに居ても周りに振りまわされることなく、自分の純真な心を忘れずに物を見て、精一杯の真心で 行動しなさい。そうすれば、どんな環境にいても人生の真実や生の意味が発見できる。 うちゅうに に そ う じつなく けんこん ただ ひ と り ○ 宇宙無双 日 乾坤只一人 天地に我一人、自身を持って生きていこう 広大な宇宙にたった 1 人きりの孤独を意味するので無い。 無我無心で万物を慈しんで見よう。 空が綺麗、風が爽やか、子供の笑顔が素敵、など率直に感じると、心が満たされていく。 せつりの ば い か ○ 雪裡梅花只一枝 苦難に耐えてこそ真実をつかむことが出来る 冬の厳しさに耐えてこそ、梅は香しい花をさかせる。苦労を重ねてこそ達成の喜びが生まれる。 こううんりゅうすい ○ 行雲流水 身を軽くして生きてみる ぽっかり浮んだ“はぐれ雲”のように「自由に生きましょう」。全ての執着、地位、名誉、家族の全てを 捨て生きていくのは並大抵でない。修行僧を『雲水』と云う。日々出会う人や自然も全てが師となる。 ひ ゃ っ か はる いたって だがためにかひらく ○ 百花春 至 為 誰 開 与えられた命をただ無心に生きる 花は、春を知らせ、人を和ますために咲くのでない。花はその生命のおもむくままに、無心に咲き、 無心に散ってゆく。 ただありのままに精一杯咲くのです。 2 ほう ちゃ き っ さ ほ う は ん き っ ぱん ○ 逢茶喫茶 逢飯喫飯 飲食の時は無心に飲食しよう 選り好みせずに、TV 観ないで、出された物をひたすら味わいなさい。目の前の事に集中なさい。 ○ 心身脱落 心と体を覆っているものをそぎ落とそう 1日の始めに体操、ストレッチで体をほぐす。体がすっきりすると、心も軽くなった気がする 【4.こころざしをなくさないで】 ○ 八風吹けども動ぜず 逆風にも突風にもたじろぐことなく過そう 【利・衰:意にかなう/反する・毀・誉:陰でそしる/ほめる・称・譏:目前でほめる/そしる・苦・楽:心身を悩ます/を喜ばす】 八風に動ずることなく「私は私」と信じて、信念を持って生きて行こう。 こう ろ ○ 紅炉上一点の雪 純粋な心を燃やして邪念をけ散らせ 刃を殺されようとした時、「紅炉上・・・・」:心熱く信じれば、邪念 困難も、その情熱でジュと溶かす。 「それが溶けたら?」の返答は、「雨霰雪や水とへだつれど、溶くれば同じ谷川の水」と答える。 きょ な ○ 水到れば渠成る 歩んだあとには一筋の道が残る 水が流れた後には、自然と溝が出来て、やがて大河にもなる。 急ぐことは無い、人を傷つけることなく、方向を見失うことなく、粛々とあなたの信じる「道」を歩みましょう。 おんりょう な ○ 天下の人のために蔭 涼 と作らん ひとの為にそっと日陰をつくる人になろう 他人を押しのけても快適な場所を一人占めしようとするのが世の中。 世の人のために自分の身を投げ出しても尽くす人物に成ろう。 ○ 瓦を磨いて鏡となす 蔭涼=木陰 結果ばかり求めて行動するのをやめる ただ、ひたすら無心の行為の尊さを教えている。 「座禅をしたら仏に成れるのか?」の問答 損得・利害ばかり考えて行動しがちな私たちを戒めている。 ○ 平常心是道: 特別なことより、まずふだんの心がけ 「道(修行)とはどんなもの?」の答え。 当たり前のことを当たり前に行う心を大切にする。 誰に対しても真心で接することをあなたの「平常心」にしよう。 しんとうめっきゃくすればひおのずからすずし ○ 滅却心頭火自涼 暑さなら暑さ、苦悩なら苦悩に同化しろ 無我夢中・無心の境地で、直面する苦悩から逃げず同化させてしまえば、苦悩は自ら消滅する。 ひゃくしゃく の かんとう ○ 百 尺 竿 頭 に一歩を進む そこで満足せずにさらに歩みを進める たとえ成功しても、その地位に甘んじることなく、驕ること無く向上心を持ち邁進し、自分が得た 経験・技術を次世代に伝えたり、さらに一歩を進めよう。 われをうみしものはふぼ われをなさせしものはほうゆう ○ 生我者父母 成 我 者 朋 友 「今の自分」をつくってくれたのはだれか 自分を生んでくれたのは父母、自分を理解し己をあらしめてくれたのは友人。 とりないてやまさらにしずかなり ○ 鳥啼山更幽 苦しみや辛さを経て人は深められる いっちょうもなかざればやまさらにしずか 類似の言葉で、「閑かさや 岩にしみいる蝉の声」 「一 鳥 不 啼 山 更 幽 」など静けさを表現する。 人生は、平穏で楽しい日々だけでない。 出会う困難、悲しみが「鳥の声」で、人生をより深くする。 以上 3
© Copyright 2024 Paperzz