2012事業計画書

2012事業計画書
(2012年4月1日~2013年3月31日)
2012年度の事業は、2012年に国際文化会館が創立60周年を迎えることを記念する一
連のプログラム(A)と、通常のプログラム(B)に大別される。
A.60 周年記念プログラム-写真展/シンポジウム/講演会など
国際文化会館の文化交流活動は、民間のイニシアティヴによる、個人対個人の知的対話
に重きを置いた人物交流を主な柱立てに、さまざまな事業を行ってきた。本企画では、会
館もその一翼を担ってきた、敗戦後から9.11後の流動化する国際状況の中での文化交
流の歴史を概観し、その文脈の中で、民間団体、とりわけ、会館活動を位置づけながら、
今後の展望を模索する。また、この期間中に写真展とも関連づけた、公開プログラムを行
う。
B. 通常プログラム
Ⅰ.多文化間の知的対話の促進
21 世紀に入り、より複雑化してきた諸課題を見据え、異なる文化・社会的背景や、研究
者、ジャーナリスト、NGO/NPO のリーダー、作家、芸術家といった細分化された専門を
越え、人文・社会・自然科学の諸分野をつなぐ思索と対話の場を創出し、領域横断的で重
層的な知的ネットワークの形成を図る。
1.アジア・リーダーシップ・フェロー・プログラム
1996 年度より国際交流基金と共催実施している。現在、会館の国際交流の中心に位
置するプログラムの一つである ALFP では、これまで 95 名のアジア諸国の様々な分野
で活躍する知識人を招聘してきた。今年度は、通常プログラムではなく、これら知識人
を中心として特別シンポジウムを開催し、いまアジアにおける知識人や市民社会が、同
地域の課題のどのように対応できるか、検証する。
2.牛場記念フェローシップ(2011 年度は、1~2 名招聘)
先進国と途上国との調和のとれた国際協力の促進を目的に活動を続けた牛場信彦記
念財団の解散に伴う残余財産の寄贈により、世界の知識人を最長 3 週間招聘し、日本の
識者との対話促進をはかるプログラムで、21 世紀のさまざまなグローバルな諸問題に
批判的視点から取り組みながら、創造的な展望を提示している卓越した識者を招聘対象
に、2006 年度より実施運営をしている。諸事情により初来日を実現できずにいるイタ
リアの哲学者アントニオ・ネグリ氏の招聘を引き続き試みる。
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3.日印交流
2012 年は日印国交樹立 60 周年および会館創立 60 周年を迎えることから、日印両国
間の関係強化ならびに対話と相互理解を深めることを目的にいくつかの事業を重点的
に行う。具体的には、国際交流基金との共催による人物招へい事業、主に業務でインド
と関わりあるビジネスパーソンを対象をしたインド理解セミナー、インド伝統音楽のコ
ンサートなどを行う。
Ⅱ.交流の主体となる人材の発掘と育成
創造的な知的対話を行うためには、自己の社会や文化の基盤の上に立ち、広い視野と総
合性、人類史的な視点を身に付けた主体的な対話能力をもつ人材が必要であり、こうした
人材の発掘と育成に資する効果的で地道なプログラムを行う。
1.教育プログラム
(1) 新渡戸国際塾
企業、NPO、官公庁、大学・研究機関、メディアなどの中堅を対象に、国内外の国
際的な場で活躍できる次世代のリーダーを育成することを目的として、2008 年度に開
校した少人数制の塾。受講者を小論文ならびに面接により選抜し、各分野の第一人者
(全 12 名)を講師に迎える。平均年齢 30 代半ばの塾生が、公私にわたり今後どのよ
うな生き方をしていくべきかを考える場、きっかけ、そして材料を提供する場とする。
2012 年度も、英語でのコミュニケーション能力を養成するためのセミナーを、カリキ
ュラムに盛り込む。
(2) English Communication Seminar for Global Leadership(旧グローバル・
リーダーズ・セミナー、年 2 回)
事業財団、助成財団、国際機関、NPO などで国際公益事業に携わる人を対象に、国
際的に活躍しているリーダーとのラウンドテーブル・ディスカッションおよびそのた
めの訓練を通して、英語による高度なコミュニケーション技術を養成するためのセミ
ナー。
2.諸外国団体との連携・協力
(1) 日米芸術家交換プログラム(5 名受入)
日米友好基金、全米芸術財団、文化庁の共催による当プログラムに対し、国際文化
会館は、1978 年より、日本に滞在して活動を行なう米国人フェローに対する支援、協
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力を行なっている。2012 年度より滞在期間は 5 ヶ月から 3 ヶ月に変更となった。米国
人芸術家ビザ取得に関しては文化庁の協力を得ており、会館は、滞日中のフェローの
様々な相談に乗り、フェローシップの支払事務を行ない、コーディネーターの役割を
果たすなどの協力を行なっている。2012 年度フェローとして、下記 5 名が選ばれた。
デイビッド・ブリック
David Brick(振付家)
ロン・ヘンダーソン
Ron Henderson(景観設計家)
ジェイソン・カーン
Jason Kahn(作曲家)
シンイチ・イオヴァ・コガ
ブライアン・ターナー
Shinichi Iova-Koga(ダンサー・振付家)
Brian Turner(作家)
(2) 日米国際金融シンポジウム
ハーバード大学ロースクール国際金融システム講座と国際文化会館の共催により、毎
年秋に日米で交互に開催されるシンポジウム。日米両国官民の金融関係者が、共通の関
心事項について率直かつ建設的な意見交換を行い、両国の相互理解と協力の促進を図る
ことを目的としている。2012 年度は、10 月に日本で開催予定。
Ⅲ.知的交流に関する情報発信と社会貢献
知的交流の成果の共有は、複眼的、重層的な知的対話を成立させ、国際理解を進める基
盤となる。地球社会が取り組むべき課題に対する日本の知的貢献を発信する役割を充実さ
せ、信頼できる情報の発信とコミュニケーションを促進する独自性のある事業を行う。
1.アイハウス・パブリック・プログラム(他団体との共催含む)
中核事業が学術的な色彩が強いため、学術以外の分野を扱うことによってプログラム
の幅を広げる試みで、セミナーや講演会、音楽、アートなど多様な交流手法を展開実施
する。比較的分かりやすく、賑わいのある事業といえる。
(1) アイハウス・アカデミー(年 4 回程度)
本プログラムは、「21 世紀の叡智」とされ、各界各分野で指導的役割を果たしてい
る有識者による講演会を開催し、広く社会に向けて問題提起することを目的とする。
年数回の講演を予定している。
(2) アイハウス・ランチタイム・レクチャー(年 4 回程度)
2008 年 2 月より、広く一般の方々を対象として、第一線で活躍中のさまざまな
分野の専門家を招き、タイムリーなテーマについて解説していただく公開時事講演
会を開催している。2012 年度の第 1 回は、4 月 12 日に、ジェトロ・アジア経済研
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究所の工藤年博氏を講師として、「ミャンマーの民主化と変わる経済の行方」と題
した講演会を予定している。
(3) japan@ihj
2009 年度より、日本理解の増進を共通項に、国籍・職業・分野を超えた相互交流の場
となるフォーラム、japan@ihj を、これまで築いてきたアカデミズム、ジャーナリズム、
アート、ビジネス等における内外の日本専門家のネットワークをもとに発足させた。
2012 年度は、4月 18 日に、ニューヨーク大学のロバード・ボイントン氏による「北朝
鮮レポート:大きな変動は起こりうるのか?」と題した講演会を開催する。
(4) その他のプログラム
a. 田中泯によるパフォーミングアーツ
自然と呼応し、意識下に潜む生命体の動きを探りながら、自身を一つの生命体として
循環に委ね、自在にその場を舞う「場踊り」を展開する田中泯氏。戦後の国際交流の拠
点として重要な役割を果たし、60 周年を迎える国際文化会館で、この場所を記念する舞
を踊っていただく。
b. 「モダニズム建築再考」シンポジウム
前川國男、坂倉準三、吉村順三の三氏共同設計による、日本を代表するモダニズム建
築のひとつである国際文化会館は、巨匠から学生まで、建築を生業とし、建築家を目指
す者にとっては、特別な場所です。ベネティア・ビエンナーレやプリツカー賞などで、
伊東豊雄や妹島和世、坂茂などの日本人建築家が世界でめざましい活躍する昨今、本シ
ンポジウムでは、彼らの源流をたどり、日本のモダニズム建築を再考し、その魅力を改
めて考えることで、世界における日本の文化力を読み解く。
2.出版
(1) 長銀国際ライブラリー(2012 年度刊行予定)
田中優子著『布のちから:江戸から現在へ』(朝日新聞出版、2010 年刊)の英語版
Nuno no chikara: Edo kara genzai e (The Cultural History of Japanese Cloth
[tentative]) by Tanaka Yûko
若松英輔著『井筒俊彦:叡智の哲学』(慶應義塾大学出版会、2011 年刊)の英語版
Izutsu Toshihiko: Eichi no tetsugaku (Izutsu Toshihiko: In Search of Wisdom
[tentative]) by Wakamatsu Eisuke
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(2) アイハウス・プレス(2012 年度は、刊行予定なし)
2012 年度の新たな刊行予定はなく、2013 年度以降刊行予定の書籍の編集作業を
行う。
(3) 定期刊行物(会報、Bulletin 年 2 回)
会館で行われた講演会などを翻訳・編集し、会報(日本語)Bulletin(英語)として
それぞれ年 2 回(6 月・12 月)発行し、会員および、国内外の図書館などに送付して
いる。
Ⅳ.調査研究
1.外交問題夕食懇談会(年 6 回程度)
今日的諸課題について外交の視座から、よりインフォーマルな雰囲気の中で話し合うという
趣旨により、招待ベースで開催。成果は今後の会館活動へフィードバックさせるものとし、調
査研究事業として行う。
Ⅴ.その他
1.ジャパン・ソサエティーとの連携強化
日米プログラムの活性化ならびに、会館とジャパン・ソサエティー(ニューヨーク)との連
携強化のため、2008 年 4 月より、双方にリエゾンデスクを開設し、共催プログラムの開催や、
互いの活動の広報協力を行っている。
Ⅵ.図書室
図書室は、日本研究の専門図書館として国際文化会館の事業活動において重要な役割を担っ
ている。
蔵書は日本に関する英文学術資料(主として社会科学・人文科学)、国際関係に関する専門
資料、国内の政府刊行物、国際文化会館に関する出版物など、書籍約 26,000 冊、雑誌約 430
タイトル、電子ジャーナル 18 タイトル、新聞 6 紙である。
サービスの提供は主に国際文化会館の会員、図書会員、宿泊者、他図書館からの紹介による
利用者に対して行われている。サービス内容はレファレンス・サービス、レフェラル・サービ
ス、資料貸出、他図書館との相互貸借および紹介状の発行などである。
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2010 年度と 2011 年度は、「日本専門家ワークショップ」を開催した(共催:国立国会図書
館、助成:国際交流基金、参加者合計:日本研究者 10 名・日本研究司書 9 名)。2012 年度は、
日本専門家ワークショップを総括する年度と位置づけ、各国で活躍する日本研究関係者が集い、
今後の日本研究における人材育成事業について検討する会議の開催を目指している。
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