英国のEU脱退(「英国のEU離脱」)が知的財産権 に及ぼす影響

知的財産
英国のEU脱退(「英国のEU離脱」)が知的財産権
に及ぼす影響
はじめに
2016年6月23日、英国(UK)は欧州連合(EU)の一員として残留す
るか否かについての国民投票を行いました。
この国民投票の結
式に発効するまでは、英国はEUの正式な加盟国として存続しま
す。中でも、現行の欧州知的財産権は第50条の交渉期間中であっ
ても影響を受けずに存続します。
果は、52%対48%で英国はEUから脱退すべきであるとの見解(英
英国とEUとの間の将来の法的関係がどのような性質のものにな
国の脱退、すなわち「Brexit(英国のEU離脱)」を支持する見解)
と
るのかもまだわかっていません。特に知的財産問題と関連が深
なりました。
いのは、英国が欧州自由貿易地域に参加することによって、欧州
しかし、ただちに影響が出ることはありません。実際のところ、EU
脱退の正式な手続きもまだ始まってはいません。国民投票自体
に法的効力はなく、単なる諮問的国民投票です。英国政府が国民
投票の結果を具体化する決意を固めた場合、脱退のための法的
手順はリスボン条約の第50条に従わなければなりません。
これに
経済領域(EEA)、いわゆる「単一市場」の加盟国として残留する
のかどうかという点です。英国の一部の地域、例えばスコットラン
ドなどがEUに残るか、または英国から分離して個別にEUに加盟
するかどうかという考察については、
この記事では触れていませ
ん。
よれば、英国は手続き開始のために欧州理事会に正式に通知す
英国のEUからの離脱の影響は、様々な知的財産権によって異な
る必要がありますが、
この手続きは早くても2016年9月まで着手
ります。下記で、1) 特許、2) 補完的保護証明(SPC)、3) 商標、4) 意
されないだろうと予測されています。正式な通知が行われると、
匠、5) 植物品種保護権(PVR)、6) 地理的表示保護(PGI)、7)著作
第50条の規定では英国とEUとの間の将来の関係も考慮した上で
権およびデータベース権、8) 商業秘密に関する実際の影響につ
両者が交渉し、脱退協定を締結するまでに2年間の猶予が与えら
いて考察しました。
れています。協定が結ばれず、全員一致を必要とする延長もなさ
れない場合は、EUの加盟国としての英国の資格は2年間が経過し
お客様、同僚、そして友人たちにご安心頂きたいのですが、
ミュー
た時点で停止します。
バン・エリスが提供する欧州の知的財産に関するサービスが阻
このように不確定要素が多く、特に手続きがいつ開始されるか正
バン・エリスの事務所を新たに開くことを予定しています。英国政
確にわからないということを考えると、英国のEUからの離脱がい
府と残りのEU加盟国との間の交渉が完結する前に、
この事務所
つ正式に決まるのかはまったくわかりません。交渉が複雑である
が開設されることになるでしょう。
このことで、特に私たちが欧州
ため、2年未満で離脱するようなことはなさそうです。 離脱が正
の商標と意匠に関するサービスを全面的に提供し続けていくこと
www.mewburn.com
害されることはありません。私たちはドイツのミュンヘンにミュー
© Mewburn Ellis LLP
が保証されるでしょう。欧州特許庁とドイツ特許庁に近い場所に
設されると思われます。UPCへの必要な変更は、英国とEUとの間
あることに加え、
この新事務所は、新たにできる統一特許裁判所
の最終的な「英国のEU離脱に関する条約」3への参照によって実施
の中央部のミュンヘン支部にも近い位置になります。
1. 特許
されることになるでしょう。
この「参加後に離脱」
という筋書きに従
えば、UPCは理論上、2017年に業務を開始できます。下記のEUTM
では、英国がEUから離脱する際に有効となる経過規定によって、
英国を含むすべてのUPは、英国の国内特許として承認されるかそ
欧州の特許は影響を受けず
のように変更されるとみられています。
英国での特許は、欧州特許庁(EPO)を介して国内ルートと欧州ル
ートのいずれかで取得できます。
どちらも、英国がEUを離脱しても
影響を受けません。
また特許協力条約(PCT)にも影響はありませ
ん。PCTによる国際特許出願は、国内ルートとEPOルートを介して
引き続き英国を指定することができます。英国は欧州特許機構の
一員として存続し、欧州特許条約(EPC)は英国のEU離脱後も引き
続き英国に適用されます。EPOはEUの機関ではなく、現在もEUに
入っていない加盟国が10か国あります。
EPOから許諾された欧州特許は、英国でも有効であり、今のところ
英国の裁判所でも執行力を有します。EEA域内で特許権者の同意
を得た一次販売による消尽を統制する規則は、英国がEUを離脱
した後に変更される可能性があります。
EPOにおける代理も影響を受けず
第二の選択肢は、英国がUPC協定を批准しないというものです。
この場合、UPCは英国の批准を要件から外すべく改定されるか、
または他の加盟国が英国のEU離脱を待ち、その時点でイタリア
が第3の必須批准国として自動的に英国の代わりとなる可能性が
あります。
こうすれば、かなりの遅れが生じはしますが、英国なしで
UPとUPCが効力を持つことができます。
第三の選択肢として提案されているのは、英国がUPC協定を批准
してシステムが有効となるようにし、
その後英国とEUとの最終的な
「英国のEU離脱に関する条約」によって、英国がUPとUPCシステ
ムの対象として存続できるようにするというものです。
この選択肢
にはまだ実務上の問題がいくつかありますが、最終的な成果を得
るための政治的な意志があれば、
これを乗り越えることができる
でしょう。
英国を拠点とする欧州特許弁理士によるEPOでのクライアントの
上記で述べた第一と第二の選択肢に従えば、英国のEU離脱によ
代理も、英国のEU離脱によって影響を受けません。
ミューバン・エ
ってUPが適用される市場規模は縮小されてしまうでしょう。
しか
リスでは、1977年のEPO創設以来、EPOと協力関係を築いており、
し、英国の参与がないとしても、欧州内における複数の管轄地で
欧州における特許の法と実務の発展と適用に直接かかわってきま
の特許訴訟にかかる費用が軽減されるという点で、UPとUPCは歓
した。多くの欧州特許弁理士から成る当事務所のグループは、
この
迎すべき進歩であり、そのような訴訟を英語で行うことも許可さ
経験に基づいてこれからもお客様と協力し、PCTに基づく欧州特許
れます。
出願と国際特許出願を利用してその発明を保護していきます。
英国市場の適用範囲が抜けることを考慮して、UPの更新費用また
単一効特許および統一特許裁判所
はUPCの裁判費用が調整されるかどうかはもう少し様子を見なけ
一般に単一効特許(UP)
として知られ、単一の効力を有する欧州
の分析を基にしており、英国の参加も勘定に入っています。英国を
特許と、
これに関連する統一特許裁判所(UPC)は、まだ稼働して
いません。UP規則とUPC協定はEUの発展的協力手続きに基づい
ており、UPとUPCは、EUの加盟国のみが利用できます1。従って、英
国はEU脱退後はこれに参加できなくなるでしょう。
これを書いている時点では英国の国民投票の結果を念頭に置い
てはいますが、UPCとUPの実施のための実務上の準備は進んで
おり、2017年のUPCの業務開始を目標にしています。
UPC協定については、英国は必須批准国3か国のうちの1つです(
他2か国はフランスとドイツ)。英国はまだ批准を完了していませ
2
ん。EU離脱に対する英国の決断によってUPとUPCの導入は遅れ
るとみられますが、必ずしも妨げられるとは限りません。基本的に
は3つの選択肢があります。
第一の選択肢としては、現在もなおEUの加盟国である英国はこの
システムを発効させるようUPC協定を批准することができます。そ
の後、EUからの離脱と同時にUPCから離脱するのです。おそらく、
第一審裁判所の中央部のロンドン支部は、EU加盟国の域内に移
1 UPC協定
ればなりません。現在提案されているUPの更新料は「上位4か国」
含め、4か国以下の国で欧州特許を有効化しようとする企業にとっ
ては、現在進められているUPの更新料はあまり魅力的には映らな
いかもしれません(選択した国がロンドン合意の締結国であった
場合、考えうる翻訳費用の削減はごくわずかとなります)。
UPCにおける代理
UPCにおけるクライアントの代理手続きは、UPCの締結国の裁判
所において実務を行う権限のある弁護士と、適切な訴訟の資格を
有している欧州特許弁理士に限られています4。英国がEUから離
脱した後も、
ここには英国を拠点とする欧州特許弁理士が含まれ
ます。
ミューバン・エリスは、UPCが業務を開始した場合、全面的に
関与したいと思っています。
英国のEU離脱は、英国拠点の企業がUPを取得する上では何の影
響も及ぼさず、英国拠点の欧州特許弁理士が、そのような特許を
取得するクライアントを代理する上でも妨げとはなりません。UP
は、現在EPOによって審査と許諾を受けた欧州特許から派生する
ものとなるでしょう。
第84条
2 UPC協定
第89(1)条
3 おそらくUPC協定の第87(2) 条を使って第7(2) 条を改定. 4 UPC協定
第48条
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行動提案事項:特許
英国のEU離脱に対して早急に準備する必要はありません。
現行の欧州特許システムは原則的に、英国がEUを離脱し
ても影響を受けません。大きな期待の集まるUPCには遅れ
が生じる見込みで、長期的には英国は参与しないと思われ
ます。欧州特許の国内有効化を継続するか、移行措置期間
中にUPCの管轄権から
「適用除外」
を選ぶか、
または新しい
UPに全面的に移行するかという決断を、英国のEU離脱に
照らして再考する必要があるかもしれません。
EU離脱後の英国におけるEUTM保護
英国がEUを離脱すれば、新しいEUTMは英国には適用されなくな
ることが予想されます。その商業的な重要性の高さを考えると、英
国が現行のEUTMにおける自国の権利部分を認めるため、
または
英国の登録にこれを変更するための経過規定を発効する可能性
は高いと思われます。
これが自動的に行われるか、それともEUTM
の所有者による料金支払いなど積極的な措置が必要となるかは
まだ不明です。
既存のEUTM内での英国の国内登録による優先権の主張につい
ても何らかの措置を取らねばなりません。変更や承認の手続きの
際に、有効な優先権の主張も確認して、
これを何らかの形で英国
の国内登録として再設定し直すことが期待されています。
2. 補完的保護証明(SPC)
SPCは、特定の医薬品または植物保護製品に関する特許保護期間
について通常5年未満の延長を行う効力を有しています。SPCは国
ごとに許諾されますが(例えば英国は英国特許庁からというよう
に)、SPCのための法的根拠はEU規定によるものです5。英国のEU
離脱後は、SPCに関する現在の法的根拠は英国には適用されなく
なるでしょう。その商業上の重要性に鑑みて、英国は既存のSPCを
承認するような法的な仕組みを導入すると思われます。
新しいSPCを許諾するために英国が新たな国内法規を発効する
かどうかはさらに不確かなものです。EUの一員ではないがEEA加
盟国であるノルウェーが、EUのSPC法規と密接に連動したSPC体
制を有していることは何らかの参考になるかもしれません。EU離
EUTMの所有者が、その商標が英国での登録のために求められて
いる通り、英国で使用されていること
(または英国で誠意をもって
使用する意図があること)を今後も示す必要があるか否かについ
てはわかっていません7。逆に言えば、現在英国内のみで使用され
ているEUTMは、
しかるべき時がきたらEUで使用できなくなるよう
停止される危険性があるということは覚えておかねばなりません8。
英国とEUは両方とも、国際商標登録のためのマドリッド議定書の
締約当事者です。
ですから、マドリッドのシステムがEU離脱後にも
英国とEUの商標登録について有効であり続けることが予測され
ます。
強制措置
脱後の英国政府は原則的にEUと類似のSPC法規を発行するかも
英国のEU離脱後は、EUTMの範囲に英国が含まれなくなるた
しれませんが、時が経つにつれ、SPCに関する英国の判例法は欧
め、EUの裁判所で行われる強制措置とその結果である差止命令
州共同体司法裁判所(CJEU)のそれとは異なるものになる可能性
は英国内で効力を持たなくなります。EU内と英国で侵害が発生し
もあります。
た場合、個別の強制措置が必要となります。さらに、英国を拠点と
する企業がEU内で侵害を訴えられた場合、自国の管轄地ではな
く、EU加盟国の裁判所で訴訟を受けることになります。
行動提案事項:SPC
即座に行動を起こす必要はありません。ただし、英国のEU
離脱が近づいてきたらこの分野の展開を注視しておくこと
が重要です。
英国のEU離脱後は、EU加盟国の裁判所からの法的問題について
の照会も含め、CJEUの裁定はほぼ確実に英国に適用されなくな
るでしょう。従って、今のところEUと英国の商標についての法律は
連動していますが、時間の経過と共に徐々に相違が生じてくるか
もしれません。
権利の消尽
現在、EUの法は商標所有者の同意のあるEEA内の一次販売に対
3. 商標
商標は現在のところ、国内ルートによって英国国内のみで保護を
受けられる登録を行うか、
またはEUの全加盟国で保護を受けられ
る単一の権利である欧州連合商標(EUTM)6を出願するか、
または
マドリッド協定議定書の国際商標システムを通じて英国またはEU
の特許庁に登録することが可能です。
して権利の消尽の原則を適用しています9。英国のEU離脱後に英
国が権利の消尽を英国のみに適用するのか、EEAと英国にするの
か、または国際的に(すなわち、全世界のどこでも)適用するのか
はわかりません。国際的な消尽にすると、世界のどこか別の場所
で合法的に販売された正規品の英国内における並行輸入や再販
を商標所有者が防ぐことが一層困難になるでしょう。英国のみの
5 欧州理事会規則 EC 469/2009
6 以前の名称は共同体商標(CTM)
7 1994年
8 欧州理事会規則
英国商標法
第32(3)条
9 欧州理事会規則EC 207/2009
EC 207/2009
第51条
第13条
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© Mewburn Ellis LLP
消尽を適用した場合は逆に、英国の商標所有者は英国内で再販
するためのEUからの平行輸入を防ぐことができるようになります。
代理
未登録の意匠権(UDR)
英国のUDRは、表面装飾のような特定の例外を除いて、物品の全
部または一部の意匠を保護しています。英国のUDRは、英国の意
EEA域外の企業や人は、EUIPOにおいて代理人を立てる必要があ
ります10。英国のEU離脱後は、英国がEEAの加盟国として存続しな
ければ、英国企業も代理人を立てる必要が生じます。
EUIPOにおける代理人(すなわち欧州商標弁理士)は、EEAにおけ
る国籍、認可場所、事業拠点の3つの要件を満たさなければなり
ません11。英国がEEAの加盟国として存続するか否かにかかわらず
ミューバン・エリスはドイツのミュンヘンに創設する新しい事務所
で、EUIPOでのすべての領域のサービスを提供し続けます。
匠考案者に対し相互保護を与えるEU加盟国の国民もしくは居住
者か、特定の非EU加盟国の「有資格者」によって特定の設計に関
する物品が作成された時点、
または「設計文書」が作成されること
によって自動的に成立します13。 英国のEU離脱後は、EUが相互保
護を与えないという根拠に基づいて、英国はUDRの範囲からEU国
民と居住者を削除するかもしれません。EUの同等の規則である未
登録共同体意匠(UCD)は、多くの重要な点において英国のUDRと
は異なっているからです。
登録共同体意匠(RCD)
英国の商標は影響を受けず
RCDは、EUの単一効権利です。そのためEUTMでは、既存の、そし
英国のEU離脱の結果、英国内での国内商標の登録と執行につい
て新しいRCDはEU離脱後の英国には適用されないと考えられま
ての体制がただちに変わるとは思えません。そうは言っても、時間
が経つにつれて英国の商標に関する法がEUのそれと異なってく
る可能性はあります。関連のEU指令は英国に適用されなくなり、
おそらくEU離脱後の法的な自由化が進み、英国の裁判所はCJEU
の規定に従って英国の商標法を解釈する義務を負わなくなります。
行動提案事項:商標
す。その商業上の重要性に鑑みて、英国がRCDの英国の権利部分
に関して承認する経過規定を発効することは十分考えられます。
これは自動的に行われるか、RCD所有者が自発的に何らかの手段
を講じることが必要となるかもしれません。
国際意匠保護に関するハーグ協定の適用に関しては、多くの疑
問が発生しています。現在のところ、EUは締約当時者ですが英国
はそうではありません。英国はすでにハーグ協定に参加する計画
現時点では、現行の実務を継続することが最良の行動方
を立てており14、2016年の終わりには受け入れがなされる模様で
針だと考えています。ただ、重要な商標に関しては、
さらに
す。EU離脱後の英国でEUを指定した国際意匠の有効性に関して
念を入れるために英国の国内出願について考えた方がい
いかもしれません。英国がEUを離脱する前に、英国内で
EUTMについての承認または変更のシステムについてもっ
とはっきりした指針が打ち出されるのを期待しています。
は、たとえ英国がハーグ協定の締約国になったとしても不透明で
す。
というのは、英国は自身の権利で新たな参加国として参加する
からです。RCDに関しては、英国はEUを指定する国際意匠を英国
内で承認する経過規定を発効すると思われます。
英国のEU離脱後、EUの裁判所で行われるRCDの強制措置および
その結果としての禁止命令は、英国では効力を持たなくなります。
EUおよび英国で侵害が発生した場合、個別の強制措置が必要と
4. 意匠
なるでしょう。
また、英国に拠点を置く企業がEUで侵害を訴えられ
意匠は、国内(英国)
レベルとEUレベルの両方で、登録・未登録と
た場合、自国の管轄地ではなくEUの加盟国の裁判所で訴訟を求
も意匠権によって保護されています。
められることになります。
英国で登録された意匠
EUTMに関しては、英国の意匠法についてのCJEUの判例法の影響
英国で登録された意匠は、英国のEU離脱によって直接影響を受
けませんが、現行の英国の法に何らかの変更があることは考え
られます。
このような変更の1つは、新規性と
「通常の業務におい
て、EEA内で業務を行い、かつ関連する部門に特化した人に対して
合理的に知られるはずがなかった」開示に対する保護条項に関連
したものです12。
この保護条項は、英国がEUとEEAの両方から脱退
した場合には、少なくとも英国を含むように改定されると思われ
ます。
または、英国のみに言及したものに改訂されることもあり得
ます。
現在、EUの法はRCD所有者の同意のあるEEA内の一次販売に対し
て権利の消尽の原則を適用しています15。英国がEUとEEAの両方
から脱退した場合、英国で一次販売を行ってもRCDの消尽とはな
らず、
これによってRCD所有者は英国からEEA域内への並行輸入
を防ぐことができるようになります。最初に他の場所で販売され
た物品の英国内での再販が影響を受けるか否かについては、EU
離脱後に英国が採用する消尽体制(すなわち国際的消尽か、EEA
と英国か、
または英国のみとするか)によって異なります。
10 欧州理事会規則 EC 207/2009
12 1949年
は少なくなり、徐々に異なるものになっていくと思われます。
登録意匠法
第92(2)条
第1B(6)(a)項
14 https://www.gov.uk/government/consultations/uk-accession-to-the-hague-agreement
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11 欧州理事会規則EC 207/2009
13 1988年
著作権・意匠・特許法
15 欧州理事会規則EC 6/2002
第93(2)条
第217項
第21条
© Mewburn Ellis LLP
英国のEU離脱は、英国のPBRには何ら影響しないとみられます。
EUIPOにおける代理
EU域外の企業および人は、EUIPOで代理を立てる必要があります
。英国のEU離脱後は、英国がEEAの加盟国として存続するか否
16
かにかかわらず、英国企業も代理人を立てる必要が生じます。
しかし英国がEUを離脱したら、共同体植物品種権は英国に適用
されなくなります。上記で述べた他のEUの単一効権利と同様に、
現行の共同体植物品種権を英国で承認するか、
またはこれを英国
のPBRに変更するための経過規定が発効されると思われ、おそら
意匠問題に関するEUIPOでの専門的代理人は、EUにおける国籍、
認可場所、事業拠点の3つの要件を満たさなければなりません17
(EEAとの連携が十分である場合の商標代理人規則を参照)。た
だし、EUIPOおいて行為する権限のある欧州商標弁理士も、意匠
問題について顧客を代理する権限を有します18。英国がEEAの加
盟国として存続するか否かにかかわらずミューバン・エリスはドイ
ツのミュンヘンに創設する新しい事務所で、EUIPOに関するすべ
ての領域のサービスを提供し続けます。
くこれには権利保有者の何らかの行為または料金の支払いが必
要となるでしょう。
EU内に居住せず、事業所を持たない共同体植物品種権の申請者
は、EUを拠点とする
「手続き代理人」を指名しなければなりません
。英国がEUを離脱した後、EU外に拠点を置く植物育成者はEUに
22
拠点を置く代理人を指名する必要が生じるでしょう。
ミューバン・
エリスでは、
ミュンヘンの新事務所でこの分野について引き続き
サービスを行う予定です。
未登録共同体意匠(UCD)
6. 地理的表示保護(PGI)
UCDによってその所有者は、欧州連合全体にわたって権限のない
意匠の複製を防ぐ権利を与えられます。UCDは、意匠が欧州共同体
(現在はEU(欧州連合))内で最初に公的に使用された時に自動
的に成立します。
特定地域で生産されたか、明確な特徴を持つ農産物および食料
に関しては、EU規則23に基づいて原産地呼称保護(PDO)、地理的
表示保護(PGI)、伝統特産品保証(TSG)の形で特別な法的保護が
適用されています。有名な例としては、パルマ産の生ハム、
ウェー
UCDは、EU離脱後の英国には適用されなくなります。意匠が最初
にEUで使用されてから3年間という比較的短い期間を考えると 、
19
既存のUCDを英国で承認する経過規定が必ずしも発効されるか
どうか、またこれがどう作用するかについては明確ではありませ
ん。将来的に、英国におけるUCD保護の喪失は、例えば服飾産業
のような特定の部門には打撃を与えるかもしれません。上記の通
り、英国のUDRはUCDの喪失を補うような相互的な保護を与えて
いません(例えば、英国のUDRは表面装飾を除外しています)。英
国を拠点とする意匠考案者は、英国での意匠登録の利用をよりよ
くするために、意匠出願の方法を再考しようとする可能性があり
ます。
ルズ産の子羊肉、
フェタチーズなどがあります。
これはEU規則に基づいて制定された単一効権利なので、EU離脱
後の英国には適用されなくなります。上記で述べた他のEUの単一
効権利と同様、既存のPDO、PGI、TSGを英国で承認するための経
過規定が発効されるか、国内の権利に変更されることが考えられ
ます。EU離脱後に英国が国内のPGIシステムを発効させる可能性
もありますが確実ではありません。
このような英国のシステムが既
存のEUのシステムとどの程度類似しているのか定かではありませ
んが、EUと英国で保護された名称を相互に認識できるのに十分
な程度には類似していることが望まれます24。
7. 著作権およびデータベース権
行動提案事項:意匠
すぐに何らかの変化が起きるとは思えませんが、登録または
未登録のEU意匠権を利用している企業は、英国のEU離脱ま
英国の著作権は第一に1988年の著作権・意匠・特許法に基づい
ています。EUの単一効の著作権はありません。
しかし、情報社会指
令、
ソフトウェア指令、孤児著作物指令、追求権など、EU域内を通
でに追加保証として英国での登録を考えてもいいかもしれま
じて著作権法を調和させるための様々なEU指令や法規が存在し
せん。
ています。
このようなEUの法の中には、CDPAを通じて、また個別
の行政命令によって英国に導入されているものがあります。
EU域内での著作権の調和は完璧とは程遠いもので、それぞれの
5. 植物品種保護権
加盟国の間で著作権法や、著作権法の調和した部分の適用にお
特殊性、均一性、安定性を持つ新しい植物品種は、EUのすべての
ベルヌ条約、ローマ条約、世界貿易機関のTRIPS 25協定に基づく、
加盟国に適用される単一効権利である共同体植物品種権によっ
英国も含めた加盟国の国際的義務を反映したものとなっていま
いて相当な違いがあります。
とは言うものの、EU指令は、
とりわけ
てEUレベルで20、
または植物育成権(PBR)によって英国の国内レ
す。そのため、EU離脱後も、英国がすでに導入されているEU指令
ベルで21保護できます。
を守るか、またはEU著作権の枠組みに合致する経過規定を導入
16 欧州理事会規則 EC 6/2002
第77(2)条
17 欧州理事会規則 EC 6/2002
18 欧州理事会規則 EC 6/2002
第78(1)(b)条
19 欧州理事会規則 EC 6/2002
20 欧州理事会規則 EC 2100/94
第2条
22 欧州理事会規則 EC 2100/94
第82条
24 規則(EU)1151/2012の前文第24条では、
「与えられる保護は、対応する基準を満たし、
21 1997年
植物品種保護法
第78(4)(b)条
第11(1)条
第1項
23 規則(EU)No 1151/2012
25 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)
かつ原産国で保護される第三国の原産地呼称および地理的表示にも同等に与えられるべきである」
と述べられている。.
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© Mewburn Ellis LLP
するものと予測されます。英国がEUを離脱した後でEEAに加入す
商業秘密指令は、多くの加盟国にとって歓迎すべきものではない
れば、CJEUの法体系に従うなど、連携した枠組みへの密接な関わ
ことがわかっており、英国もそのひとつです。英国では全般的に、
り
(少なくとも部分的には)が継続するでしょう。統一市場の外で
コモン・ローで守秘義務違反に対する必要な権利と救済手段が規
は、英国は国際条約の義務があるためEUの著作権の枠組みと引
定されているため、TRIPsに基づく英国の義務を果たすにはそれ
き続き密接に連動すると思われますが、時間が経つにつれて司法
で十分だという意識があります。そのため、第50条による交渉期
上の相違が発生するのは避けられないでしょう。
間が終了するまでは加盟国であっても、英国はEU離脱前にこの指
英国のデータベース権は、EUのデータベース指令26から特別に派
生したものです。実際、
「独自の」データベース権は、EEA域内と
(理
論上は)相互保護を与えている国々のみで利用できる特有のEU知
令を導入するとは思えません。EU離脱後も同様に、EEAの加盟国
となった結果として必要にならない限り、英国はこの指令の国内
版を導入しないと思われます。
的財産権です。
より広いEEAの権利をEEA域外で享受したいと望
むならば、英国はおそらく、EEAと相互に許諾できる自国「独自の」
権利を導入する必要があるでしょう。ただしSPCとPGIに関しては、
国内法におけるCJEUの法体系といった複雑な問題を処理する必
要があります。
***
私たちは、上記で述べたたくさんの不確定な部分が今後数カ月で
もっと明確になるだろうと予測しており、適宜これを更新していく
予定でいます。当面、詳細情報については通常のミューバン・エリ
スの連絡先、[email protected]
8. 商業秘密
までご連絡く
ださい。
秘密情報に関するイングランドのコモン・ローは、国内の商業秘
密権を規定しています。
この分野においては、幅広い詳細な判例
があります。
これはEUで調和が取れていない知的財産法の領域で
あり、つまりこれについてはEUの法がないのです。
しかし事態は変
わってきています。 欧州連合理事会は最近、商業秘密指令に関す
る欧州委員会の提案を承認しました。
これは、商業秘密の不法な
取得、使用および開示に対する一致した対策について規定してい
ます。EU官報に掲載されれば、加盟国は2年以内にこの指令を国
内法に取り入れることになります。
26 EC指令96/9
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