EU統一特許 (EPUE) - Mewburn Ellis

ヨーロッパ特許制度
EU統一特許 (EPUE)
単一の欧州特許制度は、欧州連合(EU)にとって40年以上にわたる念願でした。2012年12月、欧州議会
(European Parliament)及び欧州理事会(European Council)は以下を設立する
「EU統一特許パッケー
ジ」
を認可しました。
i. EU統一特許(EPUE); そして
ii. 欧州特許訴訟を審理する単一欧州特許裁判所(詳細は別紙「EU統一特許裁判所」
をご参照下さ
い。)
さらなる発展として、最近イタリアが統一特許の参加国に加わりま
概要
統一特許は、28のEU加盟国中26カ国(参加国)に単一の特許
権を付与します。現在のところスペインとクロアチアはEPUEの
参加メンバーではありませんが、後で加盟する可能性があります。
統一特許によって欧州特許査定時に必要なコストの削減が図ら
れます。
現行の制度では、欧州で特許権保護を得るには2つの方法があり
ます。
(a) 複数の国際特許を取得するために欧州各国の法制度に
従い、各国毎に特許出願を行う
(b) 欧州特許協力条約(EPC)に従い欧州特許庁(EPO)に欧州
特許出願を行う
しかしながら、EPOは審査制度のみを集中して行っているにすぎ
ず、査定時には欧州特許出願を国内特許に変換しなければなり
ません(いわゆる
「バリデーション」)。バリデーション手続に際して
は、通常少なくとも明細書の一部を、保護を求める各国の言語に
翻訳しなければなりません。
この翻訳費用は、保護を求める国の
数や明細書の長さに応じて高額にあることがあります。
EU特許パッケージが実施されると、統一特許は第三の選択肢を
提供します。バリデーション手続に代えて
(又はこれに加えて)統一
特許を選択することが可能となり、特許明細書の翻訳が不要とな
るでしょう
(移行期間終了後)。
タイムスケール
統一特許に関するいかなる訴訟も統一特許裁判所(UPC)が準備
できるまで利用できません。13カ国(フランス、
ドイツ、イギリス
を含む)による批准後、UPC協定は効力を発し、開始します。
現在(2016年、5月)、
フランスを含む10ヶ国で、UPC協定は批
准されました。ポーランドとチェコ共和国は有効になる前に批准
しないことが示唆されましたが、参加国は協定を施行する十分な
政治的推進力があります。
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した(当初はスペインとの制度に反対していました)。イタリアは
EUにおいて第四の経済規模なので、イタリアを含んで統一特許の
保護を拡大することは、本制度の支持者に歓迎されています。
イギリスは2016年に批准を目指しており、
ドイツは2016
年の2月に批准手続きを開始しました。
イギリス政府では進捗があり、UPCの中心部の借地契約をロンド
ンで行いました。加えて、UPCの一部を早く実施可能にするために
2015年の10月1日に暫定的な出願手順に署名しました。
UPC準備委員会はこの
[準備]
作業を2016年6月までに完結し、
2017年にUPCを開始する計画であることを発表しました。
手続き
統一特許は欧州特許庁(EPO)を通じて取得されます。出願人は欧
州特許出願を出願し、EPOは以前と同様に出願を審査します。欧
州特許出願が特許査定を認められた際、出願人は統一特許に登
録するかどうかを決定します。
この点において、特許権者は統一特許の登録も、統一特許に加盟
していないEPC締結国での任意の有効化もできます。統一特許の
登録は強制的ではありません。特許権者は、希望する場合、現在の
制度で有効化できます。
統一特許の登録は簡単な管理業務であり、EPOは登録における庁
費用を変更しない計画です。統一特許の翻訳は、本制度の初年で
必要になります。
翻訳の要件
EU域内では多くの言語が用いられているため、統一特許で使用さ
れる言語は常に困難な政治問題となります。EPOでは特許明細書
に含まれる技術用語の機械翻訳を向上させるため、Googleと協
力してきました。そこで統一特許が機械翻訳によって条約加盟国
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のすべての言語に自動的に翻訳されるようにすることが提案され
UPC協定は、統一特許によって以下の行為が禁止されると規定し
ています。
ています。
しかしながら、現在のところ機械翻訳では必要な品質が得られな
(I)
いことを認識しています。そこで、機械翻訳の品質が受け入れられ
(II) 特許化された製品又は方法の間接的な使用
る基準に達するまでの間は、統一特許を第二言語に翻訳する移
特許化された製品又は方法の直接的な使用
行期間が設けられています。
この移行期間は12年以内となって
この条項は、他国の特許法の文言、例えば英国特許法と類似して
います。
います。ただし、間接侵害の適用範囲は、
より広いように思われま
特許査定が認められた特許出願の内、英語でなされたものは、他
のEU加盟国のいずれかの言語に明細書が翻訳されることとなり
ます。一方、
フランス語又はドイツ語でなされたものは、明細書を
す。例えば英国法では少なくとも、第三者が発明を英国で作用さ
せるために英国内に「発明に関する本質的な手段」を提供する必
要があります。
これは「二重領域」要件といわれています。
一方UPCの規定では、第三者が参加国内の一つで発明を作用さ
英語に翻訳することとなります。
せるために、発明に関する本質的な手段を他の参加国に提供し
特許年金
た場合に間接侵害となります。
統一特許の特許年金の額は新しい特許制度で非常に期待される
さらに協定では、侵害の例外も規定しています。
このような例外に
側面です。EPOは、欧州特許が現在有効である数が最も多い4ヶ
国で(イギリス、
フランス、
ドイツ、オランダ)国際的な特許年金を
反映した額で、特許年金を設定することを決定しました。
この「最も多い4ヶ国」の特許年金は下記の表に提示されています
年度
特許年金案 年度
(ユーロ)
UP特許年金案 (ユーロ)
11
1460
2
35
12
1775
3
105
13
2105
4
145
14
2455
5
315
15
2830
6
475
16
3240
7
630
17
3640
8
815
18
4055
9
990
19
4455
10
1175
20
4855
過去の傾向によると、欧州特許は平均で4~5ヶ国で有効化さ
れますが、多くの特許権者は2、3ヶ国でしか有効化しません。特
許年金の金額は、一般的に統一特許を少ない数の指定国(イギリ
ス、
フランス、
ドイツ)でしか有効化しない特許権者には魅力的で
は、個人的又は非商業目的で成された行為や、試験目的で成され
た行為が含まれます。
所有権としての統一特許
統一特許はすべての参加国において単一の権利としてのみ移転(
譲渡)することができます。ただし、
ライセンスに関してはすべての
統一特許参加国又は任意の数の参加国に対して許諾することが
認められています。
さらに統一特許規則は、紛争及び取引の権原に関して適用される
法律についても規定しています。すなわち(統一特許となる)欧州
特許出願の出願人が、出願時において住所又は事業の本拠を参
加国内に有する場合には、当該参加国の法規が適用されることと
なります。例えば、
フランスを本拠とする企業が所有する統一特許
については、
フランス国の法規が適用されます。
一方、住所又は事業の本拠を参加国内に有しない出願人につい
ては、
ドイツ国の法規が適用されます。例外として、出願人が(出願
時)参加国に事業の拠点を有した場合、当該参加国の法規が適用
されることとなります。一方で事業の本拠は参加国以外であるも
のの、複数の加盟国で事業の拠点を有している企業が、いずれか
の国の法規を選択できるかどうかについては、現在のところ不明
です。
はないかもしれません。
しかしながら、統一特許は登録手続きが簡単なので(バリデーショ
EU加盟国でないEPC締約国
ン手続に比べて)魅力的な選択肢となるでしょう。さらに、統一特
スイスなど幾つかの国は、EPC締約国であるものの、EU加盟国で
ありません。
したがって、
これらの国では統一特許による保護は得
許はより広い範囲で保護を提供できます。
られません。ただし、現行の方法により欧州特許出願で得られる
権利保護は引き続き利用できます。
よって、すべてのEPC締約国で
統一特許が提供する保護
統一特許が提供する保護はEPUEに関する規則で明確には規定さ
れていませんが、その代わり、UPC協定が規定しています。
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の保護を望む特許権者は、統一特許と共に、統一特許で保護でき
ない締約国においては従前の方法と同様にバリデーションを行う
ことを選択できます。
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(The European Patent with Unitary Effect)
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