ヨーロッパ統一特許裁判所(UPC)

ヨーロッパ特許制度
ヨーロッパ統一特許裁判所(UPC)
単一の欧州特許制度は、欧州連合(EU)にとって40年以上にわたる念願でした。2012年12月、欧州議会(European
Parliament)及び欧州理事会(European Council)は以下を設立する
「EU統一特許パッケージ」
を認可しました。
(i) EU統一特許(詳細は別紙「統一特許」
をご参照下さい。)
(ii) 欧州特許訴訟を審理する統一欧州特許裁判所
概要
で14年まで延長可能)が経過するまでに、欧州特許出願が出願さ
統一特許(EPUE)は、28のEU加盟国中26カ国(参加国)に単一
管轄の適用外になれます。
よって、現在出願中の欧州特許出願及
の特許権を付与します。
また統一特許裁判所は、欧州特許裁判の
統一された裁判管轄を実現します。
この結果、費用のかかる複数
国での裁判を回避することができます。
タイムスケール
13カ国(フランス、
ドイツ、イギリスを含む)による批准後、UPC
は効力を発し、開始します。
れ、又は欧州特許又はSPCが認められた場合は、特許権者はUPC
び登録済みの欧州特許はすべて、UPC管轄の適用外とすることが
可能です。
「従来の」欧州特許及び出願についてUPC管轄の適用外とするた
めの庁費用はございません。
これは特許権者、特に欧州特許を多
数所有している特許権者に安堵をもたらすでしょう。
最終的にはすべての欧州特許(従来の特許及び統一特許)及び
SPCがUPCの裁判管轄の対象となります。
よって、移行期間経過後
現在(2016年、5月)、
フランスを含む10ヶ国で、UPC協定は批
に、各国の法廷で特許訴訟を争うには、
(EPOでなく)各国の特許
准されました。ポーランドとチェコ共和国は有効になる前に批准
庁に個別に特許出願して特許を得るしかありません。
しないことが示唆されましたが、参加国は協定を施行する十分な
政治的推進力があります。
裁判所の構成
イギリスは2016年に批准を目指しており、
ドイツは2016年
統一特許裁判所は、第一審裁判所(中央部と地方/地域部で構
の2月に批准手続きを開始しました。
成)及びルクセンブルグの控訴裁判所で構成されます。控訴裁判
ロジスティクスはUPCのタイムスケールを決定する重要な要因で
す。
この要因は、様々なヨーロッパで新しい裁判所の場所を見つけ
る時間、裁判官の選択及び訓練、ITシステムのセットアップを含
所からの上告は、欧州連合司法裁判所(CJEU)で審理されます。た
だ、欧州の実体特許法を十分に確立するためには上告受理は希
であることが期待されています。
みます。イギリス政府では進捗があり、UPCの中心部の借地契約
中央部はロンドン、パリ、
ミュンヘンにそれぞれ法廷を有し、異な
をロンドンで行いました。加えて、UPCの一部の早い実施を可能に
る技術分野に対応します。生体工学及び化学分野はロンドン、物
するために2015年の10月1日に暫定的な出願手順に署名
理及び材料はパリ、機械工学はミュンヘンという割り当てになって
しました。
います。
UPC準備委員会はこの
[準備]
作業を2016年6月までに完結し、
中 央 部 に加えて、多くの 地 方 部 及 び 地 域 部(l o c a l / r e g i o n a l
2017年にUPCを開始する計画であることを発表しました。
division court)が参加国に設置される予定です。
これら地方部の
数は、各国で提訴された特許訴訟の数によって決定されます。ま
統一特許裁判所(UPC)の裁判管轄
統一特許が統一特許裁判の裁判管轄内となることは驚くことでは
た数カ国で少数の特許訴訟が提訴されている場合は、
これらの国
が一緒に纏められて地域部が開設されます。
ありませんが、
「従来の」欧州特許(例えばEPOから派生した国内
地方部及び地域部は、法律適格を有する3名の裁判官(1人は当
特許)や補完的保護証明書(SPC)
も、UPCの管轄となります。
該国から、2人は他の参加国から)
で構成されます。一方中央部で
欧州特許やSPCの権利者がUPCの管轄外となるための移行期間
が設けられています。UPC協定が発効した後最初の7年(見直し
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は、2名の法律適格を有する裁判官と、1名の技術に長けた裁判
官で構成されます。
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訴訟の種類及びバイファーケーション
(訴訟手続の分岐)
統一特許、欧州特許及びSPCに関する無効訴訟と非侵害の確認訴
訟については、UPC中央部に提訴します。侵害訴訟は、UPC地方部
又は地域部に提訴します。
三段階は全て約12~15ヶ月で完了し、UPCはEPOの異議申し
立て手続き
(特に上告段階)
よりも早い取り消し裁判をすることが
可能です。
書面手続きは、最初のクレームが裁判に提出された後、約6ヶ月
UPC地方部又は地域部に侵害訴訟が提訴された場合は、無効訴
訟の反訴を行うことができます。同様に、中央部で無効訴訟が係
属中の場合は、UPC地方部又は地域部に対して侵害の反訴を行う
こともできます。
で行われます。一般的に、被告は、侵害訴訟あるいは無効訴訟の
最初のクレームを提出した後、抗弁の陳述(及び、任意で侵害訴訟
あるいは無効訴訟の反訴)を提出するために3ヶ月を有します。
反訴に対する弁駁書または抗弁の時間は短く、一般的に1ヶ月の
みに制限されています。
これらの場合、地方部又は地域部は以下のいずれかを選択しま
す。
一旦書面手続きが終わると、UPC判事が当事者と中間協議を行い
ます。
(訴訟の主題の確認、
これらの主題における当事者の見解の
hh 地方部又は地域部にて侵害訴訟と無効訴訟を同時に審理する。
この場合、地方部又は地域部に対して技術判事が指名される。
hh 無効訴訟を中央部に付託し、地方部又は地域部での侵害訴訟
明確化、口頭審理までの予定の設定、口頭審理の日程の設定)
口頭審理において、裁判長が本件の管理を引き受けます。口頭審
理は、口頭弁論、証人及び鑑定人、合議体からの質問を含みます。
中間協議及び口頭審理は公開され、記録されています。
を継続又は停止する。
hh 中央部で侵害訴訟と無効訴訟を共に審理する。
口頭審理は、薬事法訴訟などの大きな訴訟では2日間時間をか
第二のシナリオではバイファーケーション(訴訟手続の分岐:侵害
けますが、通常は1日しか予定されていません。多くの問題は口
訴訟と無効訴訟を別々の裁判所で審理)が生じます。バイファーケ
頭審理の前に生じ、議論され、UPC手続きは前倒しで設定されて
ーションは、異なる訴訟、異なる国で潜在的に違う言語で同一特
いるので、口頭審理の期間は著しく短いです。
これらの手続きは
許に関して平行して手続きをする可能性に繋がるので懸念されま
EPOの手続きやイギリスの専門裁判所(知的財産裁判事業所)に
す。裁判の費用が嵩むだけでなく、異なる訴訟においてクレーム
似ています。
が違う解釈をされることも憂慮されます。
しかしながら、書面手続
きの段階後にバイファーケーションは生じるので(詳細は後述し
ます)、
クレームの構築はバイファーケーションの前に考慮される
と思われます。
上告手続きもまた、書面手続き、中間手続き、口頭審理が含まれて
います。出願人は上告まで審決書から2ヶ月を有し、控訴理由を
提出することによって上告を実証するための2ヶ月をさらに有し
ます。
無効の反訴によって侵害訴訟の審理を停止できることは興味深い
ところです。規則案では、
「特許の該当クレームが無効と判断され
る可能性が高い」場合に審理手続が停止されると推奨されていま
す。
裁判費用
UPC準備委員会は裁判費用の金額について公聴会を開催し、2
015年7月31日に終えました。公聴会は、侵害訴訟の固定基
また、中央部で係属中の非侵害確認の審理も、非侵害確認訴訟の
開始から3ヶ月以内に、同一当事者間で侵害訴訟が提訴された場
合に、停止できることにもご注目下さい。非侵害確認訴訟の提起
から3ヶ月以上経過後に侵害訴訟が提起された場合に何らかの
影響(例えば禁反言)が生じるかどうかについては、はっきりしま
せん。
本費用を11,000ユーロ、無効訴訟の固定基本費用を20,000ユー
ロで設定することを提案しました。公聴会は、また訴額に基づい
た追加費用が500,000ユーロ以上の訴額について支払い可能で
あることを提案しました。公聴会は、訴額の約0.5~1%に等し
い、訴額に基づいた費用に段階費用構造を提案しました。
訴額は、第三者に評価された訴額を考慮して報告担当裁判官によ
って判断されます。報告担当裁判官は、期日間整理手続中に訴額
提訴の手続き
を指示します。
(書面手続き後、口頭審理前)
まず、訴訟手続きには三段階の手順があります。
hh 書面手続き
hh 中間手続き, そして
hh 口頭審理。
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(The European Unified Patent Court)
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