“薬をお茶で飲んでも大丈夫?”という疑問を患者さんから尋ねられ ることがよくあります。内服薬は水か白湯で服用するのが原則です。し かし実際には、お茶やコーヒーなど身近にある飲み物で薬を服用する事 も多いのではないでしょうか? 薬剤科としても、一部の薬剤を除いて、薬を服用する際の飲み物の制 限指導は行っておりません。 そこで今回は、お茶やコーヒーの代表的な成分に注目して、薬の治療 効果に対する影響の有無について考えてみようと思います。 お茶やコーヒーが水と異なるのは、言うまでもなく、色々な成分が溶け込んでいると いうことです。なかでも両者に共通して含まれる特有の成分が、『タンニン』と『カ フェイン』です。 コーヒーや紅茶にカフェインが多く含まれていることはもはや常識ですが、それぞれ どのくらい含まれているのでしょうか? 茶葉やコーヒー豆の生産地や品種、抽出方法にもよりますが、日本食品成分表による と、タンニンもカフェインも玉露に多く含まれています。意外にも、コーヒー・紅茶 のカフェインは玉露の半分以下で、番茶になるとその更に 5 分の 1 程度です。 「お茶と鉄剤(商品名:フェログラなど)を一緒に飲むと良くない。」という話を、 みなさんも聞いたことがあるかと思います。 ひと昔前までは、お茶に含まれるタンニンが鉄と結合して吸収を妨げるため、そのよ うに考えられていました。しかし現在では、いくつかの臨床試験の結果によって、普 段飲む量のお茶に含まれる程度のタンニンでは、治療効果にほとんど影響がないこと が知られています。 その根拠のひとつとして、「生理的に吸収できる鉄の量は 1 日約 1 mg 程度であるの に対して、鉄剤の標準的な服用量は 100 mg とかなり多量である。したがって、一 杯のお茶に含まれるタンニンにより吸収が妨げられる鉄の割合はごくわずかである ためほとんど影響がない。」と考えられています。 薬の吸収に対する影響は指摘されておりませんが、カフェインには覚醒作用、血管収 縮作用、利尿作用などの薬理作用があります。また、カフェインの感受性や、カフェ インを代謝する速さには個人差があることが知られていますので、服用する薬の種類 によっては、少ない量でも一概に影響がないとは言い切れませんが、カフェイン含有 量がコーヒー・紅茶の半分以下である番茶やほうじ茶では、治療効果に与える影響は 少ないと考えます。念のため、カフェイン含有量の多い飲み物(玉露、コーヒー、紅 茶など)は避けた方が良いでしょう。 薬は水か白湯で服用するのが原則ですが、特に指示がない場合は、カフェイン含有量 の少ないお茶(番茶、ほうじ茶、ウーロン茶など)で薬を飲んでも構いません。 ※ただし、薬の種類や病状の変化によっては用法を変更させて頂く場合があります。 その際は、医師・薬剤師が説明します用法をお守り下さいますようお願い致します。
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