材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮できる

材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮できる
コンクリートの配合設計法の開発
2014 年 3 月
桜 井 邦 昭
学位論文の要旨
材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮できるコンクリートの配合設計法の開発
11701084
桜井 邦昭
コンクリートは,鋼材とともに,土木構造物の構築に不可欠な建設材料である.鉄筋コンクリ
ート構造として,高い耐久性を確保するためには,コンクリートが型枠の隅々まで均質に充塡し,
鋼材を腐食から保護することが必要である.近年では,構造物の耐震性能の向上に伴い,鉄筋が
高密度に配置された部材が増加するとともに,合理的に構造物を構築するために部材の軽量化・
スリム化が指向されるなど,従来の流動性をスランプで管理する普通コンクリートでは,施工時
に十分な配慮を講じても確実に充塡できない場合も生じている.自己充塡性を有する高流動コン
クリートを適用する対策も考えられるが,材料コストが大幅に増加することなどにより,広く活
用されるには至っていない.
このような社会的背景のもと,補助的に締固めを行うことで,鉄筋間隙を通過して型枠の隅々
に充塡できる程度まで流動性を高めた中流動コンクリートを適用する事例が増加している.中流
動コンクリートは,普通コンクリートに対してセメント量の増加を最小限に抑制するとともに,
従来と同様の設備で製造・施工が行えるため,一連のコンクリート工事における費用の増加を最
小限に抑えつつ,耐久性に優れた構造物を構築できる利点を有する.
一方で,単位セメント量を普通コンクリートと同程度としたまま安易に流動性を高めると,コ
ンクリートの構成材料同士の分離が生じやすくなるため,場合によっては均質性の低い耐久性の
損なわれた構造物が構築される危険性もある.この問題を解決するには,配合設計段階で,使用
する材料の物理的性質や各材料の混合比率および構造物の施工に対して要求される流動性のレベ
ルを考慮したうえで,材料分離抵抗性に優れたコンクリート配合を選定できる手法を構築する必
要がある.
そこで,本研究では,材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮できるコンクリートの配合設計法
を開発することを目的とした.材料分離として,モルタルレベルにおいて水がセメントおよび細
骨材との密度差により浮き上がるブリーディング現象と,コンクリートレベルにおいて鉄筋間隙
の通過に伴いモルタルと粗骨材とが分離する現象を取り上げ,使用材料の物理的性質や配合条件
から,各々を制御するための具体的手法を検討した.また,材料分離抵抗性と流動性は表裏一体
の関係であることから,使用材料の物理的性質や配合条件から流動性を予測する手法も検討した.
始めに,現状の各種コンクリートの配合設計法,ならびに配合設計法に関する既往の研究を調
査した.その結果,現状の配合設計法ではブリーディングは考慮されておらず,コンクリートが
所要の流動性や材料分離抵抗性を有することは試し練りによって確認することが前提であること,
配合設計段階で流動性や材料分離抵抗性を系統立てて予測する手法は確立されていないこと,モ
ルタルレベルにおいて発生するブリーディングの量や流動性を予測するには,セメントの凝集・
分散挙動を考慮する必要があり,これを考慮した予測モデルの構築が不可欠であること,鉄筋間
隙の通過に伴うモルタルと粗骨材との分離を抑制するには,コンクリート中の粗骨材量(単位粗
骨材かさ容積)を流動性のレベルや配筋条件に応じて設定する必要があることを把握した.
材料分離抵抗性を考慮した配合設計法を確立するための第一段階の検討として,使用材料の物
理的性質や配合条件からモルタル中の自由水量を予測する物理モデルを提案し,その妥当性を実
験により検証した.水とセメントの混合比によりセメントの凝集の程度が異なることを考慮して,
ファンデルワールス力による凝集力と回転慣性力による分散力の関係からセメントの凝集の程度
を求め,凝集後のセメント粒子群の表面積から算出した拘束水量と,モルタルフロー試験により
得られる相対フロー面積比と水セメント容積比の関係から算出した細骨材の拘束水量を用いるこ
とで,モルタルの自由水量を概ね予測できることを明らかにした.
一方で,中流動コンクリートのように,高い流動性を確保するには高性能 AE 減水剤の使用が
不可欠である.そこで,第二段階の検討として,上記で提案した自由水量の予測モデルに,高性
能 AE 減水剤によるセメントの分散効果を組み込んだ.水とセメントの混合比や高性能 AE 減水剤
の使用の有無によらず,流動性が等しいペーストではペースト中のセメントの分散状態は等しい
と仮定することで,水とセメントの混合比および高性能 AE 減水剤の添加量から,凝集および分
散挙動を考慮した後のセメント粒子群の表面に拘束できる水量を算出できるモデルを構築した.
その後,配合条件を種々に変化させたモルタル実験を行い,実験により得られたブリーディング
水量の実測値と予測モデルによる自由水量の計算値がほぼ一致することを確認した.
上記までの検討により,使用材料の物理的性質や配合条件から,モルタルの材料分離抵抗性を
評価(ブリーディング水量を推定)することが可能となった.一方で,流動性のレベルが相違す
ると,セメントの凝集・分散状態が異なることから,セメントが拘束できる水量が変化し,結果
として材料分離抵抗性も変化する.また,流動性は,本来,施工条件や配筋条件によって予め設
定される与条件であり,配合設計段階においても当然考慮すべき項目である.そこで,次の段階
として,使用材料の物理的性質や配合条件からモルタルの流動性を予測する手法を検討した.そ
の結果,モルタルにおいて所要の流動性を確保するには,モルタル中の細骨材容積比が多い場合
ほど,モルタル中のペーストの流動性を高める必要があり,セメント粒子をより分散させる(セ
メント凝集体の単位表面積を大きくする)必要があることを明らかにした.また,使用材料の種
類,流動性のレベルおよび配合条件によらず,モルタル中の細骨材容積比と,ペーストにおいて
所要の流動性の確保に必要なセメントの単位表面積とモルタルとして同じ流動性の確保に必要な
セメントの単位表面積との比の間には一意的な関係があることを見出した.そのため,流動性の
レベルの指標として,凝集・分散挙動を考慮した後のセメントの単位表面積を用いることが可能
となり,与条件である使用材料の物理的性質および配合条件から,目標とする流動性を有しつつ,
自由水量が最小となるモルタルの配合条件(材料の単位量および高性能 AE 減水剤の添加量)を
選定する手法を確立した.そして,提案した予測モデルの妥当性を実験結果と比較して検証した.
一方で,コンクリートレベルとして,適切な材料分離抵抗性を確保するためには,単位粗骨材
かさ容積をどのように設定すべきであるかを検討するため,単位粗骨材かさ容積がコンクリート
のブリーディング特性や,振動作用に伴い鉄筋間隙を通過した後の均質性に及ぼす影響について
実験的に検討した.その結果,ブリーディングの少ないモルタルから構成されるコンクリートは
ブリーディングが少ないこと,単位粗骨材かさ容積が等しい場合,ブリーディングの少ないコン
クリートほど,鉄筋間隙の通過前後における粗骨材量の変化が小さいことを確認した.また,鉄
筋間隙の通過に伴う粗骨材量の低下を抑制し,均質性に優れた構造物を構築するには,対象構造
物の配筋条件に応じて,単位粗骨材かさ容積を設定する必要があり,設定すべきかさ容積の目安
として,土木学会の高流動コンクリート指針に示される値が活用できることも確認した.さらに,
日本各地の骨材を用いて選定したブリーディングの少ないスランプフロー45cm の中流動コンク
リート配合の単位粗骨材かさ容積は,各レディーミクストコンクリート工場の所有する配合一覧
表に示されるスランプ 21cm のコンクリートの単位粗骨材かさ容積とほぼ一致することを確認し,
この関係を活用することで,実務において中流動コンクリートの配合設計を合理的に行えること
を明らかにした.
モルタルにおける自由水量の予測モデル,凝集・分散挙動を考慮した後のセメントの単位表面
積に基づく流動性の予測手法およびコンクリートにおける流動性のレベルや配筋条件に応じた単
位粗骨材かさ容積の設定方法を統合することで,材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリー
トの配合設計法を提案した.提案した配合設計法を用いて中流動コンクリートの配合選定を行う
とともに,選定した配合を用いたコンクリートを製造し,その品質を検証した.その結果,ブリ
ーディングが少なく材料分離抵抗性に優れた中流動コンクリートが選定できることを確認した.
最後に,ブリーディングが少なく,流動性のレベルや配筋条件に応じて単位粗骨材かさ容積を
適切に設定した中流動コンクリートを用いることで,耐久性に優れたコンクリート構造物が構築
できることを検証した.他の構造物に比べ作業空間が狭く,コンクリートを長距離にわたり流動
させて充塡させる必要のある山岳トンネルの覆工,およびスリップフォーム工法により短期間で
構造物を構築する際に,連続的にコンクリートを薄く広範囲に流動させて充塡させる必要のある
地上式 LNG タンクの防液堤へ中流動コンクリートを適用した.その結果,ブリーディングが少な
く,単位粗骨材かさ容積を適切に設定した中流動コンクリートは,5~10m 程度にわたりコンクリ
ート自体の流動性により流動することが可能であり,流動停止後に補助的にバイブレータにより
締め固めることで密実に充塡できること,流動に伴う中流動コンクリートの品質低下はほとんど
生じず,均質性に優れた構造物が構築できることなどを確認した.さらに,表面水率の定期的な
測定など,従来の普通コンクリートと同様の製造管理を行うことで,設備を追加することなく,
一般的なレディーミクストコンクリート工場や現場バッチャープラントにて,通年にわたり,品
質の安定した中流動コンクリートを製造できることも検証した.
これらの結果より,与条件である使用材料の物理的性質,水セメント比および流動性のレベル
から,材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮したコンクリートの配合設計を行うことが可能であ
り,配合設計段階でブリーディングの発生を抑制し,施工に要求される流動性のレベルに応じて
適切に単位粗骨材かさ容積を設定したコンクリートを用いることで,合理的に均質性に優れたコ
ンクリート構造物が構築できることを明らかにした.
目
目
第1章
序論
次
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
1.1
研究の背景
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
1.2
本研究の目的
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
1.3
本論文の構成
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
1.4
用語の定義
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
第 1 章の参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
第2章
既往の研究
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
2.1
はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
2.2
中流動コンクリートの位置づけと現状
2.3
各種コンクリートの配合設計方法の現状
・・・・・・・・・・・・・・・ 14
・・・・・・・・・・・・・・ 16
2.3.1 普通コンクリート
2.3.2 高流動コンクリート
2.4
既往の研究
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
2.4.1 材料分離がコンクリート構造物の耐久性に及ぼす影響
2.4.2 ブリーディングの予測手法に関する研究
2.4.3 コンクリートの流動性の予測手法に関する研究
2.5
本研究におけるコンクリートの配合設計法の検討の流れ
・・・・・・・ 36
2.5.1 材料分離抵抗性の確保に関する現状
2.5.2 流動性の予測に関する現状
2.5.3 本研究におけるコンクリートの配合設計法の検討の流れ
2.6
本章のまとめ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
第 2 章の参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
i
・・・・・・・・・・・ 45
目
3.1
はじめに
3.2
自由水量の予測モデル
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
3.2.1 モデル化における考え方
3.2.2 凝集を考慮したセメントの水膜厚さの算定
3.2.3 細骨材の拘束水比の算出
3.2.4 モルタルの自由水量の算定
3.3
検証実験
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58
3.3.1 実験概要
3.3.2 粉体の水膜厚さの算出方法の検証
3.3.3 細骨材の拘束水比の算出方法の検証
3.3.4 予測モデルの妥当性の検証
3.4
本章のまとめ
第 3 章の参考文献
第4章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
4.1
はじめに
4.2
高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果のモデル化
・
・ 81
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81
・・・・・・・ 82
4.2.1 高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果の導入
4.2.2 高性能 AE 減水剤により分散したセメントの表面に拘束できる膜厚さの算出
4.3
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
・・・・・・・・ 88
4.3.1 ペーストにおける流動性とセメント粒子の分散の関係
4.3.2 分散したセメント粒子が拘束できる膜厚さ
4.3.3 温度条件が高性能 AE 減水剤の分散効果に及ぼす影響
4.4
高性能 AE 減水剤による分散効果を考慮した予測モデルの妥当性の検証
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96
4.4.1 実験概要
4.4.2 予測モデルによる拘束水量の検証
4.4.3 前章の実験結果に対する検証
4.5
本章のまとめ
第 4 章の参考文献
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106
ii
目
第5章
モルタルにおける流動性の推定
・・・・・・・・・・・・ 109
5.1
はじめに
5.2
モルタルにおける流動性とセメント粒子の分散の関係
5.3
流動性を考慮したモデルによる自由水量の算定
5.4
実験結果との比較による予測精度の検証
5.5
本章のまとめ
第 5 章の参考文献
第6章
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109
・・・・・・・・ 111
・・・・・・・・・・・ 114
・・・・・・・・・・・・・・ 117
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 122
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123
単位粗骨材かさ容積の影響
・・・・・・・・・・・・・・ 125
6.1
はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125
6.2
単位粗骨材かさ容積の設定に関する現状
・・・・・・・・・・・・・・ 127
6.2.1 土木学会や日本建築学会に示される指針類
6.2.2 各地のレディーミクストコンクリート工場の現状と検証実験
6.3
材料分離抵抗性に関する実験的検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133
6.3.1 コンクリートのブリーディング特性に及ぼすモルタル品質の影響
6.3.2 配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の設定方法に関する検討
本章のまとめ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144
第 6 章の参考文献
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146
6.4
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
7.1
はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
7.2
コンクリートの配合設計法
7.3
提案した配合設計法によるコンクリートの配合選定
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148
7.3.1 高性能 AE 減水剤を用いたコンクリート
7.3.2 AE 減水剤を用いたコンクリート
iii
・・・・・・・・・ 150
目
7.4
本章のまとめ
第 7 章の参考文献
第8章
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 169
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 170
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 171
8.1
はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 171
8.2
山岳トンネルの覆工
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 172
8.2.1 覆工コンクリートの概要
8.2.2 模擬部材を用いた施工実験
8.2.3 道路トンネルの覆工への適用
8.2.4 まとめ
8.3
地上式 LNG タンクの防液堤
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 202
8.3.1 防液堤の概要
8.3.2 コンクリートに要求される品質
8.3.3 コンクリートの配合選定
8.3.4 現場バッチャープラントで製造したコンクリートの品質検証
8.3.5 まとめ
8.4
本章のまとめ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 212
第 8 章の参考文献
第9章
結論
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 213
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 215
9.1
本研究の結論
9.2
今後の課題
謝辞
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 215
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 220
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 223
本研究に関する論文リスト
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 225
添付資料
iv
第1章
第1章
序論
序論
1.1 研究の背景
土木分野におけるコンクリート構造物は,人々が安心・安全で,快適に生活できる社会基盤を
形成するために構築する建造物であり,高い耐久性が求められる.1990 年代のバブル経済崩壊以
降の社会経済の低迷,少子高齢化社会に伴う社会医療・福祉費の増大などにより,近年では公共
事業に対する国民の関心は高く,より経済的に耐久的なコンクリート構造物を構築することが強
く求められている.一方,2011 年 3 月に発生した東日本大震災や,昨今の異常気象に伴う土砂災
害や河川の氾濫など,人々の安心・安全な生活が脅かされる事態が度々生じており,今後とも,
社会基盤整備を着実に推進していく必要がある.
コンクリートは,鋼材とともに土木構造物の構築に不可欠な主要建設材料である.2012 年度の
レディーミクストコンクリートの出荷量は約 9,200 万 m3 であり 1),日々,大量のコンクリートが
製造され構造物の構築に用いられている.鉄筋コンクリート構造は,コンクリートの引張に弱い
性質を鋼材が補うとともに,腐食の生じ易い鋼材を高いアルカリ性を有するコンクリートで保護
することで,安全性,使用性および耐久性に優れた構造物を実現している.このため,コンクリ
ートには,塩分や水分など鋼材腐食の要因となる劣化因子の侵入を抑制するために,鉄筋間隙を
通過して型枠の隅々まで密実に充塡することが求められる.
コンクリートは,元来,耐久性に優れた材料であり,小樽港など建設から 100 年前後を経ても
2)~4)
現役で活用されているコンクリート構造物が多数存在する
.当時は,バケットによる打込み
が主流であり,今日のダムコンクリートに近い,硬練りのコンクリートが用いられていた.一方
で,1960 年代の高度成長期における建設ラッシュを境として,施工の急速化や大量打設が求めら
れるようになり,コンクリートポンプによる施工が主体となった.また,硬質な天然骨材の不足
により,砕砂や海砂が使用され始めた.1980 年代になると,コンクリートの剥落,かぶり不足,
充塡不良といった施工に起因した不具合の発生,塩害やアルカリ骨材反応などに伴うコンクリー
ト構造物の早期劣化が社会問題となった
5),6)
.これらの問題に対し,耐久性確保に関する設計上
の配慮として,塩化物含有量の上限値やアルカリ総量規制が設定されるとともに,塩害や中性化
に伴う鋼材腐食に対する耐久性の照査手法が確立された
7)
.更に,近年のコンピュータの発達に
より,FEM 解析による施工時の温度ひび割れに対する照査手法も汎用化 8),9)され,コンクリート
の設計・計画段階で耐久性を照査する手法はほぼ確立された現状にある.
一方で,設計段階で耐久性に関する適切な検討を行ったとしても,計画通りにコンクリートが
打込み・充塡されなければ,コンクリート構造物の耐久性が大きく低下してしまうことは周知の
事実である.土木分野では長らくスランプ 8 cm のコンクリートが用いられてきたが,上記の施工
に起因した不具合の発生を受け,作業員の技量によらず型枠の隅々まで確実に充塡できるコンク
リートとして,締固めが不要な自己充塡性を有する高流動コンクリート「ハイパフォーマンスコ
ンクリート」10)が岡村らによって提唱され,
「高流動コンクリート施工指針」として制定された 11).
そして,トンネル,ダム,橋梁など主要な土木構造物の構築に適用された 12)~16).また,高流動コ
1
第1章
ンクリートを用いて施工した構造物が極めて高い耐久性を有することも確認されている
序論
17)
.しか
しながら,高流動コンクリートの施工実績は,年間 20 万 m3 程度であり,材料コストが従来のコ
ンクリートに比べ増加すること,型枠に作用する圧力が増加する場合があることなどを理由に,
特定のプロジェクトを除いては十分に活用されていない現状にある
18),19)
.その一方で,1995 年
の阪神淡路大震災を契機として耐震規準類が改訂され,鋼材が高密度に配置された部材が増加し
たことを受け,配筋条件や施工条件に応じて打込み時のスランプを設定する必要性が議論され 20),
「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針(案)」(2007 年)21)が制定されるとともに,
2007 年制定版のコンクリート標準示方書【施工編】に導入された.
さらに,近年では,より合理的にコンクリート構造物を構築する観点から,セメント量は強度
や耐久性の確保に必要な最小量としつつ,自己充塡性は有しないものの補助的な振動締固めによ
り充塡できる程度まで流動性を高めた「中流動コンクリート」が開発・実用化されている
18)
.中
流動コンクリートは, JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」で定められるスランプの範
囲の普通コンクリートでは充塡が難しい部材を対象としつつ,材料コストの増加や型枠への作用
圧力の増加を最小限に抑えること等を念頭においた,今日の時代背景を強く反映したコンクリー
トである.沈埋函やトンネル覆工など,1990 年代には高流動コンクリートにより施工されていた
構造物や,充塡不良に伴う不具合の発生が懸念されていた構造物の構築に適用されている 22),23).
なお,中流動コンクリートは,学会等で正式に定義された名称ではなく,また,2 章で後述す
るように,適用する構造物ごとに目標とする流動性のレベルや材料分離抵抗性の管理方法も異な
っている.しかし,既往の文献や施工現場における俗称として「中流動コンクリート」と呼称さ
れることが多いことから,本研究においても中流動コンクリートと呼ぶこととした.さらに,本
研究では,従来の流動性をスランプで管理する普通コンクリートに対して流動性が高い一方,高
流動コンクリートのような自己充塡性は有していない,補助的な振動締固めにより充塡が可能な
コンクリートを中流動コンクリートと定義することにした.流動性のレベルから見た場合の中流
動コンクリートと普通コンクリートおよび高流動コンクリートとの位置関係の概念図を 図-
1.1.1 に示す.
高流動コンクリート
(自己充塡コンクリート)
自己充塡性を有する
充塡に要する → 小
振動エネルギー
ランク2
ランク3
締固め不要
大 ←
ランク1
締固めを前提
沈埋函用
トンネル覆工用
一般構造物用
内部振動機で締め固める
通常のコンクリート
中流動コンクリート
(本研究で主とする対象)
・軽微な締固めを前提
・流動性・充塡性を改善
スランプフローによる管理
スランプによる管理
小
←
流動性
→
大
図-1.1.1 各種コンクリートの位置づけの概念図(文献 18)をもとに作図)
2
第1章
序論
一方,この 50 年間で,コンクリート用化学混和剤も飛躍的な進歩を遂げ,従来の AE 減水剤に
比べ減水率を著しく向上させた高性能 AE 減水剤や AE 減水剤(高機能タイプ)が開発・実用化さ
れた
24)
.高流動コンクリートや中流動コンクリートは,これらの混和剤なしには実現できなかっ
たコンクリートである
25)
.また,示方書や仕様書において耐久性確保の観点から単位水量の上限
値が設定されていること,良質な天然骨材の確保が難しい場合もあること,および施工時の温度
ひび割れや硬化後の収縮ひび割れを抑制することなどから,今日では,流動性をスランプで管理
する普通コンクリートでも,これらの混和剤が多用されている.
高性能 AE 減水剤により,コンクリートに高い流動性を付与することが容易となった半面,材
料分離抵抗性を適切に確保すること,およびそれを照査することの重要性が高まっている.現状
のコンクリートの配合設計方法では,強度や耐久性から水セメント比を,配筋条件や施工条件か
ら目標とする流動性(スランプ)を設定することとなっているが,流動性に見合った材料分離抵
抗性を確保するための具体的な手法は明示されていない.このため,コンクリート標準示方書【施
工編】に示される配合の補正方法などを参考としつつ,多くの試し練りを行い,主に技術者の経
験に基づき配合を選定している現状にある.さらに,高性能 AE 減水剤は,高い減水性を有する
とともに,目標とする流動性のレベルに応じてその添加量を任意に調整できるため,与条件であ
る水セメント比や流動性のレベルを満足するコンクリート配合が無数に存在することとなり,材
料分離抵抗性の良否の判断をより複雑化させている.
なお,先述の「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針(案)
」では,材料分離
抵抗性を確保するために,目標スランプに応じて単位セメント量の最小値の目安を示している.
この指標は,実用的であるが過去の実績に基づく経験的な指標である.コンクリートの流動性の
レベルが同じでも,使用する骨材の品質,水セメント比,混和剤の添加量によってフレッシュコ
ンクリートの品質は大きく相違することが指摘されている 26),27).このため,本質的には,流動性
のレベルによって単位セメント量を一意的に定めるのではなく,使用材料や配合条件を考慮した
うえで,ブリーディングや,振動作用下におけるモルタル分と粗骨材との分離といった材料分離
の発生を抑制する手法を確立する必要がある.
これまで整備した膨大な社会資本ストックの維持管理を行いつつ,今後とも人々の安心・安全
に資する社会基盤整備を継続していくには,経済性を意識しつつ,かつ耐久的なコンクリート構
造物を構築する必要がある.このためには,従来の普通コンクリートに比べセメント量の増加を
最小限に抑えつつ,補助的に締固めを行うことで鉄筋間隙を通過して均質に充塡できる程度まで
流動性を高めた中流動コンクリートを適用することが合理的である.しかしながら,少ないセメ
ント量のまま,安易に流動性を高めると材料分離抵抗性が低下する危険性が高まる.そのため,
このようなコンクリートを今後広く活用していく上では,材料分離抵抗性と流動性をともに考慮
できるコンクリートの配合設計法の確立が不可欠と考えられる.
3
第1章
序論
1.2 本研究の目的
本研究の目的に関する概要を図-1.2.1 に示す.合理的に耐久性に優れたコンクリート構造物を
構築するには,セメント量は強度や耐久性の確保に必要な最小量としつつ,鉄筋が高密度に配置
された部材においても,均質な状態で型枠の隅々まで流動し,補助的な締固めにより充塡できる
コンクリート「中流動コンクリート」を用いることが望ましい.
しかしながら,中流動コンクリートは,これまでに学会等で統一的に議論されていないことも
あり,その配合設計方法はほとんど検討されていない.また,2 章にて後述するように,均質な
コンクリート構造物を構築するにはブリーディングの少ないコンクリートを用いる必要があるが,
示方書等に示される現状の普通コンクリートの配合設計法ではブリーディングは考慮されていな
い.さらに,施工条件や配筋条件に応じて目標とする流動性のレベルを設定することにはなって
いるものの,実際に設計したコンクリートが所要の流動性を有していること,ならびに適切な材
料分離抵抗性を有していることは試し練りにより確認することが前提であり,材料の物理的性質
や配合条件等に基づく理論的なコンクリートの配合設計法は確立されていない現状にある.
そこで,本研究では,構造物の設計段階において設計基準強度や目標とする耐久性(設計耐用期
間)に応じて与えられる水セメント比,配筋条件や施工条件に応じて与えられる流動性のレベル,
および使用する材料の物理的性質から,所定の流動性を有しつつ,材料分離抵抗性に優れたコン
クリート配合を机上にて選定できる設計法を開発することを目的とした.なお,材料分離として
は,モルタルレベルにおける水とセメントおよび細骨材との分離であるブリーディング現象と,
コンクリートレベルにおけるモルタルと粗骨材との分離について取り扱うことにした.なお,本
研究では,セメント量が比較的少ないまま流動性を高めるため,他のコンクリートに対して材料
分離抵抗性の確保が難しいと考えられる中流動コンクリートを主たる対象とするものの,あらゆ
るコンクリートの配合設計法へ展開することを念頭に研究を進めることにした.
具体的には,次の手順で検討した.まず,モルタルレベルにおいて,使用材料の物理的性質や
配合条件からモルタル中の自由水量を予測する手法を構築した.次に,同様の与条件からモルタ
ルの流動性を予測する手法を構築した.その後,コンクリートレベルにおいて,流動性のレベル
や配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の設定方法を検討した.最後に,これらを統合させるこ
とで,材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法を提案した.
4
第1章
序論
社会的背景
土木構造物の意義・目的
(1)限られた建設投資額
(2)耐震規準類の見直しによる高密度配筋部材の増加
(3)少子高齢化に伴う熟練作業員の減少
(1)人々の安心・安全な生活に資する社会基盤の整備
(2)耐久性に優れた構造物の構築
より合理的で充塡性の高いコンクリート
構造物の耐久性確保に必要なコンクリートの要件
(1)セメント量は強度や耐久性確保に必要な最小量
(2)補助的な振動締固めにより充塡可能
(1)ブリーディングが少ない
(2)モルタルと粗骨材との材料分離が生じにくい
中流動コンクリートの適用が望ましい
課題
(1)少ないセメント量で流動性を高めると材料分離が生じやすい
→ブリーディング,モルタルと粗骨材との分離
(2)配合設計法はほとんど検討されていない
(3)普通コンクリートの配合設計法においても,材料分離抵抗性は十分に
は考慮されていない
目的:材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮したコンクリートの配合設計法の開発
・主対象:中流動コンクリート
・ただし,あらゆるコンクリートへの適用を想定した設計法とする
モルタルの自由水量の
予測モデルの構築
モルタルの流動性の
予測手法の構築
単位粗骨材かさ容積の
設定方法の検討
[考慮する項目:与条件]
・水セメント比
・使用材料の物理的性質
[考慮する項目:与条件]
・水セメント比
・使用材料の物理的性質
[考慮する項目:与条件]
・流動性のレベル
・配筋条件
・粗骨材の粒形(実積率)
コンクリートの配合設計法の確立
図-1.2.1 本研究の目的に関する概要
5
第1章
序論
1.3 本論文の構成
本論文の構成を図-1.3.1 に示す.また,各章で記述する内容の概要を以下に示す.
第 1 章 序論では,本論文で取り上げた研究テーマの背景および目的を示した.また,本論文
の構成を示すとともに,各章の概要について記述した.
第 2 章 既往の研究では,中流動コンクリートの位置づけを明確にするとともに,現状の各種
コンクリートの配合設計法の概要を取りまとめた.また,流動性やブリーディングの予測などコ
ンクリートの配合設計に関する既往の研究成果を整理し,材料分離抵抗性と流動性を考慮した配
合設計法の確立に向けた課題を抽出した.
第 3 章 モルタルにおける自由水量の推定では,配合条件からモルタル中の自由水量を予測す
る物理モデルを提案した.セメントは水との混合比率により凝集の程度が異なること,セメント
および細骨材はその表面にある一定の水膜を拘束できることを考慮することにより,配合条件か
ら自由水量を概ね予測できることを示した.
第 4 章 高性能 AE 減水剤を用いた場合の自由水量の推定では,第 3 章で提案した予測モデルを
拡張し,高性能 AE 減水剤によるセメント粒子の分散効果を考慮した自由水量の予測モデルを提
案した.水セメント比の水準や高性能 AE 減水剤の使用の有無によらず,流動性が等しいペース
ト中のセメントの分散の程度は等しいと仮定し,水とセメントとの混合比および高性能 AE 減水
剤の添加量によりセメントの凝集・分散挙動を表現するモデルを構築した.そして,配合条件や
使用材料を種々に変化させたモルタルを製造してブリーディング水量を測定する一方,提案した
予測モデルを用いて自由水量を算出し,両者を比較することで妥当性を検証した.
第 5 章 モルタルにおける流動性の推定では,使用材料の物理的性質や配合条件からモルタル
の流動性を予測する手法を検討した.モルタルに所要の流動性を付与するには,モルタル中の細
骨材容積比に応じてセメントをより分散させる必要があること,流動性のレベルや配合条件によ
らずモルタル中の細骨材容積比と,ペーストにおいて所要の流動性の確保に必要なセメントの分
散の程度とモルタルとして同じ流動性の確保に必要なセメントの分散の程度との比の間には一意
的な関係があることを見出した.そして,流動性レベルの指標としてセメントの単位表面積を用
いることで,与条件である水セメント比,流動性レベルおよび材料の物理的性質から,所要の流
動性を有しつつ,ブリーディング(自由水量)が最小となる配合条件(材料の単位量,高性能 AE 減
水剤の添加量)を概ね算出できることを示した.
第 6 章 単位粗骨材かさ容積の影響では,モルタルと粗骨材との分離を抑制するために,コン
クリート中の粗骨材量(単位粗骨材かさ容積)をどのように設定すべきであるかについて,現状のコ
ンクリートの配合設計法を整理するとともに,日本各地のレディーミクストコンクリート工場の
6
第1章
序論
現状について調査した.さらに,単位粗骨材かさ容積がフレッシュコンクリートの品質に及ぼす
影響について実験的に検討した.ブリーディングの少ないモルタルから構成されるコンクリート
はブリーディングが小さいこと,流動性のレベルが同じコンクリートでも単位粗骨材かさ容積が
異なると充塡性や均質性が相違することを実験により確認し,流動性のレベルや配筋条件に応じ
て粗骨材のかさ容積を適切に設定する必要があることを示した.
第 7 章 材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法では,第 3 章から第 6
章で得られた知見を整理し,流動性と材料分離抵抗性を考慮したコンクリートの配合設計法を提
案した.提案した設計法を用いてコンクリート配合の選定およびブリーディング水量(自由水量)
の推定を行った.そして,選定した配合のコンクリートを実際に製造して流動性やブリーディン
グ水量を測定し,本研究で提案した配合設計法の妥当性を検証した.
第 8 章 適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用では,ブリーディング
が少なく,単位粗骨材かさ容積を適切に設定したコンクリートを実工事へ適用した結果について
述べた.適用例として山岳トンネルの覆工,および地上式 LNG タンクの防液堤を取り上げた.適
切に配合設計を行ったコンクリートを用いることで均質性に優れたコンクリート構造物が構築で
きることなどを示した.
第 9 章 結論では,各章で得られた知見を取りまとめて本研究の結論を示すとともに,今後の
課題を述べた.
7
第1章
第1章 序論
(1)研究の背景・目的
(2)本論文の構成
第2章 既往の研究
(1)中流動コンクリートの位置づけと現状
(2)各種コンクリートの配合設計法の現状
(3)配合設計法に関する既往の研究の整理
第3章 モルタルにおける自由水量の推定
(1)自由水量の予測モデルの構築
(2)予測モデルの妥当性の検証
第4章 高性能AE減水剤を用いた場合の
自由水量の推定
(1)高性能AE減水剤によるセメントの分散
(2)高性能AE減水剤を用いた場合の自由水
量の評価
第6章 単位粗骨材かさ容積の影響
(1)単位粗骨材かさ容積の設定に関する現状
(2)単位粗骨材かさ容積がコンクリートの材料
分離に及ぼす影響に関する実験的検討
第5章 モルタルにおける流動性の推定
(1)流動性とセメント粒子の分散の関係
(2)流動性を考慮したモデルによる自由水
量の算定
第7章 材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
(1)コンクリートの配合設計法
(2)提案した配合設計法によるコンクリート配合の選定
第8章 適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
(1)山岳トンネルの覆工への適用
(2)地上式LNGタンクの防液堤への適用
第9章 結論
(1)本研究で得られた成果のまとめ
(2)今後の課題
図-1.3.1 本論文の構成
8
序論
第1章
序論
1.4 用語の定義
本論文で使用する用語のうち,特に繰り返して使用する用語,新たに用語として定義すること
で文意が理解しやすくなると考えられる用語について,以下のように定義する.
(1) 普通コンクリート:JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」で示される流動性をスラン
プ(5~21cm)で評価するコンクリート.
(2) 高流動コンクリート:土木学会コンクリートライブラリー136 高流動コンクリートの配合設
計・施工指針[2012 年版]で対象とするような締固めを行わないことを前提とした自己充塡性
を有するコンクリート.
(3) 中流動コンクリート:補助的な振動締固めを行うことで型枠の隅々まで充塡できる程度まで
流動性を高めたコンクリート(上記の指針において締固めを行うことを前提とした高流動コ
ンクリートと記載されるコンクリートのこと).
(4) 流動性:コンクリート,モルタルおよびペーストの自重もしくはバイブレータによる振動に
伴う変形のしやすさのこと.本研究では,モルタルおよびペーストは,JIS R 5201「セメント
の物理試験方法」に示されるフローコーン(上面φ70 mm,底面φ100 mm,高さ 60 mm)に試
料を詰めて,コーンを引き上げた時の広がり「フロー」を流動性の指標として用いた.コン
クリートは,JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験」および JIS A 1150「コンクリートの
スランプフロー試験」に示されるスランプコーン(上面φ10 cm,底面 20 cm,高さ 30 cm)に試
料を詰めて,コーンを引き上げた時の試料の下がり「スランプ」
,もしくは試料の広がり「ス
ランプフロー」を流動性の指標として用いた.
(5) 材料分離:フレッシュコンクリートを構成する各材料(水,セメント,細骨材および粗骨材)
の分布状況が,当初の均一な状態から変化する現象.本研究では,モルタルレベルにおいて,
水とセメントおよび細骨材との分離(ブリーディング)を,
コンクリートレベルにおいてモルタ
ルと粗骨材との分離を取り扱った.
(6) ブリーディング:フレッシュコンクリート(モルタル,ペースト)中において,その構成材料の
うち最も密度の小さい水が,上方へ移動する現象.本研究の各章での検証実験では,モルタ
ルおよびペーストのブリーディングは,JSCE-F522「プレパックドコンクリートの注入モルタ
ルのブリーディング率および膨張率試験方法(ポリエチレン袋法)」
,コンクリートのブリーデ
ィングは,JIS A 1123「コンクリートのブリーディング試験方法」に準じて測定した.
(7) 拘束水および自由水:本研究では,既往の研究で用いられている用語を参考に,物理モデル
により推定するセメントおよび細骨材がその表面に拘束できる水を「拘束水」
,拘束できない
水を「自由水」と呼称し,それぞれの単位量あたりの水量を「拘束水量」,「自由水量」と呼
称した.そして,自由水量は,単位水量からセメントおよび細骨材の拘束水量を差し引いた
水量と定義した.
WB=W-WC+WS 
ここに,WB:自由水量(kg/m3)
9
(1.1)
第1章
序論
W :単位水量(kg/m3)
WC:セメント(凝集体)の拘束水量(kg/m3)
WS:細骨材の拘束水量(kg/m3)
(8) 充塡性:コンクリートが材料分離することなく型枠の隅々まで均質に充塡する性質.
(9) 自己充塡性:コンクリートが打込み時に締固め作業を行わなくとも,自重のみで型枠の隅々
まで均質に充塡する性能.
(10) 単位粗骨材かさ容積:コンクリート 1m3 当たりの粗骨材のかさ容積のことで,コンクリート
中の粗骨材容積を粗骨材の実積率で除した値.
単位粗骨材かさ容積(m 3 /m 3 )=
単位粗骨材容積(L/m 3 )
粗骨材の実積率(%) 10
(1.2)
コンクリート中の粗骨材の「量」については,指針類によって表現が異なり,
「単位粗骨材
量」
,「単位粗骨材絶対容積」および「単位粗骨材かさ容積」などが使われている.本研究で
は,各指針類を引用する場合にはその指針類に示される表記を用いたものの,コンクリート
の配合設計を行う上では,コンクリート中に占める粗骨材の容積を用いることが妥当である
こと,粗骨材の容積が同じであっても,粗骨材の粒形によりコンクリートの流動性や材料分
離抵抗性に及ぼす影響が相違するため,その形状を表現できる指標を用いることが望ましい
との観点から,
「単位粗骨材かさ容積」を用いることを基本とした.
(11) モルタルの細骨材容積比:モルタル 1m3 当たりに占める細骨材容積の割合.
(12) 相対フロー面積比:ペーストもしくはモルタルの変形量(フロー)を無変形時におけるフロー面
積(フローコーンの底面積)に対する面積比で表したもの.
また,コンクリート構造物の性能に関する用語については,土木学会の 2010 年制定土木構造物
共通示方書Ⅰ28)に従い,以下のように定義する.
(13) 要求性能:目的および機能に応じて構造物に求められる性能.要求性能には,安全性,使用
性,耐久性,復旧性,環境・景観に対する適合性,施工性,維持管理の容易さ,経済性など
がある.
(14) 安全性:構造物が,設計上想定する作用に対して,使用者や周辺の人の生命を脅かさないこ
とを確保する性能.
(15) 使用性:構造物が,設計上想定する作用に対して,使用者や周辺の人が快適な環境を確保す
る,もしくは構造物に要求される機能を確保する性能.
(16) 耐久性:想定される作用のもとで,構造物中の材料の劣化により生じる性能の経時的な低下
に対して構造物が有する抵抗性.
(17) 施工性:構造物の制作・架設中における安全性,確実性および施工の容易さ.
(18) 経済性:構造物の計画・設計から施工,維持管理,解体・撤去されるまでに発生する費用の
安さ.
10
第1章
序論
第1章の参考文献
1) 全国生コンクリート工業組合連合会ホームページ:http://www.zennama.or.jp/,過去の出荷実績
2) 例えば,日本コンクリート工学会:日本のコンクリート 100 年,2006.5
3) 例えば,小林一輔:コンクリートの文明誌,岩波書店,2004.10
4) 例えば,藤原忠司:コンクリートを巡る旅,技報堂出版,2010.2
5) 小林一輔:コンクリートが危ない,岩波書店,1999.5
6) 例えば,小林一輔:コンクリート構造物の早期劣化と耐久性診断,pp.48-50,森北出版,1991.6
7) 土木学会:2012 年制定版コンクリート標準示方書【設計編】
,2013
8) 例えば,石田知子:マスコンクリートにおけるひび割れの発生予測に関する研究,群馬大学
学位論文,2008.3
9) 例えば,日本コンクリート工学会:マスコンクリートのひび割れ制御指針,2010
10) 岡村甫,前川宏一,小澤一雅:ハイパフォーマンスコンクリート,技報堂出版,1993.9
11) 土木学会:コンクリートライブラリー93 高流動コンクリート施工指針,1998.7
12) 例えば,西崎丈能,奥立稔,近松竜一,川島宏幸:高強度・自己充てんコンクリートによる
PCLNG 貯槽の建設,コンクリート工学,Vol.37,No.10,pp.40-44,1999.10
13) 例えば,坂本淳,島屋進,山本浩志,前島俊雄:低発熱・収縮低減型高流動コンクリートと
パイプクーリング工法を適用した岩盤貯槽プラグの施工―波方国家石油ガス備蓄基地―,コ
ンクリート工学,Vol.47,No.10,pp.31-36,2009.10
14) 例えば,大友健,坂本淳,新藤竹文:ダムコンクリートへの挑戦①最大寸法 80mm の骨材を
使いこなす,セメント・コンクリート,No.680,pp.68-72,2003.10
15) 例えば,酒井松男,岡澤祐三,赤井知司,安田敏夫:膨張性高流動コンクリートを用いた薄
肉のトンネル二次覆工の施工―長崎自動車道
長崎トンネル工事―,コンクリート工学,
Vol.41,No.7,pp.41-46,2003.7
16) 例えば,上東秦,宮本健次,枦木正木,柳井修司,今井昌文:世界初[波形鋼板ウェブ PC・鋼
複合斜張橋]における高強度コンクリートの施工―第二東名高速道路矢作川橋上部工―,セメ
ント・コンクリート,No.701,pp.25-37,2005
17) 例えば,坂田昇,横関康祐,芦澤良一,関健吾:21 年間暴露した併用系高流動コンクリート
の耐久性,コンクリート工学論文集,Vol.23,No.1,pp.25-33,2012.1
18) 土木学会:コンクリートライブラリー136 高流動コンクリートの配合設計・施工指針 [2012
年版],2012.6
19) セメント新聞社:高流動コンクリートの現状と展望,コンクリートテクノ,Vol.29,No.3,
pp.91-109,2010.3
20) 例えば,土木学会:コンクリート技術シリーズ 54,フレッシュコンクリートのコンシステン
シー評価に関する技術の現状と課題(Ⅱ),第Ⅰ編 コンシステンシー評価指標小委員会委員会
報告,2003.7
21) 土木学会:コンクリートライブラリー126 施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施
工指針(案),2007.3
11
第1章
序論
22) 作井孝光,羽渕貴士,北澤真:加振併用型充てんコンクリートを用いた合成構造沈埋函の施
工,セメント・コンクリート,No.714,pp.33-39,2006.8
23) 中間祥二,谷藤義弘,森俊介,桜井邦昭:中流動コンクリートを用いたトンネル覆工の施工
―北海道横断自動車道久留喜トンネル―,コンクリート工学,Vol.48,No.6,pp.25-30,2010.6
24) 坂井悦郎:高性能(AE)減水剤 発明の意義,セメント・コンクリート,No.793,pp.2-8,2013.3
25) 岡村甫,小沢一雅:自己充塡コンクリートの配合設計方法の現状と課題,土木学会論文集,
No.496/Ⅴ-24,pp.1-8,1994.8
26) 例えば,土木学会:コンクリート技術シリーズ 94 コンクリートの施工性能の照査・検査シ
ステム研究小委員会報告書,2012.5
27) 例えば,日本コンクリート工学会:施工の確実性を判定するためのコンクリートの試験方法
とその適用性に関する研究報告書,2009.7
28) 土木学会:2010 年制定 土木構造物共通示方書Ⅰ(総則,用語,責任技術者,要求性能,構
造計画)
,2010.9
12
第2章
第2章
既往の研究
既往の研究
2.1 はじめに
本研究では,耐久性に優れたコンクリート構造物を合理的に構築するには,強度や耐久性の確
保に必要となるセメント量に対して,施工性の確保に伴うセメント量の増加をできる限り抑制し
つつ,補助的な締固めにより充塡できる程度まで流動性を高めた中流動コンクリートを適用する
ことが望ましいとの観点に立ち,主な対象を中流動コンクリートとして,水セメント比,流動性
のレベルおよび使用材料の物理的性質から,ブリーディングが少なく,モルタルと粗骨材との分
離の生じにくいコンクリート配合を選定する手法を確立することを目的とした.
中流動コンクリートの配合設計法を確立するには,まずは,中流動コンクリートが普通コンク
リートや高流動コンクリートに対してどのような位置づけにあるか,配合設計法を確立する上で
の課題が何であるかを明らかにする必要がある.一方で,普通および高流動コンクリートの配合
設計に関しては,既に多くの研究がなされており,これらの研究成果から中流動コンクリートの
配合設計に活用できる事項を抽出することは有益である.
そこで,本章では,流動性のレベルから分類した場合の各種コンクリートの位置づけを明確に
するとともに,普通コンクリートおよび高流動コンクリートの配合設計法を整理し,中流動コン
クリートの配合設計法の確立に向けて必要となる課題を抽出した.また,配合設計法に関する既
往の研究を整理することで,中流動コンクリートの配合設計法に活用できる事項について検討し
た.
13
第2章
既往の研究
2.2 中流動コンクリートの位置づけと現状
高流動コンクリートの配合設計・施工指針[2012 年版]1)では,密実に充塡するのに必要な締固め
に関する配合設計思想の違いから,指針で対象とする高流動コンクリートとその他のコンクリー
トの位置関係を,流動性のレベルに応じて図-2.2.1 のように分類している(図-1.1.1 と同じ図)
.
指針で対象とする高流動コンクリートとは,締固めを行わないことを前提とした自己充塡性を有
するコンクリート(以下,高流動コンクリート)であり,これに対して締固めを行うことを前提とし
たコンクリートとして,流動性をスランプフローで管理するコンクリート(以下,中流動コンク
リート)と,流動性をスランプで管理する通常のコンクリート(以下,普通コンクリート)に分
類している.
高流動コンクリート
(自己充塡コンクリート)
自己充塡性を有する
充塡に要する → 小
振動エネルギー
ランク2
ランク3
締固め不要
大 ←
ランク1
締固めを前提
沈埋函用
トンネル覆工用
一般構造物用
内部振動機で締め固める
通常のコンクリート
加振併用型の
高流動コンクリート
(中流動コンクリート)
・軽微な締固めを前提
・流動性・充塡性を改善
スランプフローによる管理
スランプによる管理
小
←
流動性
→
大
図-2.2.1 各種コンクリートの位置づけの概念図(文献 1)をもとに作図)
一方で,普通コンクリートは,JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」において流動性の
レベルや呼び強度に応じて,高流動コンクリートは上記の指針において自己充塡性のランクに応
じて,それぞれ分類わけがなされている.これに対し,中流動コンクリートは,これまで学会等
で統一的に評価されていないこともあり,分類わけはされていない.一例として,これまでに各
種構造物の構築に用いられた中流動コンクリートの概要を表-2.2.1 に示す 2)~7).このうち,発注
者による仕様化がなされているのは,沈埋函に用いる「加振併用型充てんコンクリート」8)とトン
ネル覆工に用いる「中流動覆工コンクリート」9)だけである.
表-2.2.1 から明らかなように,適用する構造物によって,目標とする流動性のレベルや材料分
離抵抗性の評価方法は相違している.中流動コンクリートが,合理的に構造物を構築することを
検討した結果として開発されたコンクリートであるためと考えられる.今後,体系的に整理を行
っていく必要はあるものの,合理的に耐久性に優れたコンクリート構造物を構築していくには,
構造物の種類に応じての多種多様な要求性能のコンクリートを提供する必要があり,中流動コン
14
第2章
既往の研究
クリートに限らず,流動性と材料分離抵抗性を兼ね備えた最適な配合を選定する設計法を確立す
ることが重要であることを示すものと考えられる.
また,中流動コンクリートは,流動性のレベルから分類した場合,普通コンクリートと高流動
コンクリートの中間に位置づけられるコンクリートであるものの,適用する構造物の種類により
要求される流動性のレベルは相違し,高流動コンクリートと同程度の高い流動性を有するレベル
から,普通コンクリートのスランプの上限に近い程度のレベルまでが範囲に含まれることになる.
このため,普通コンクリートおよび高流動コンクリートの配合設計方法の中でも,中流動コンク
リートの配合設計法に活用できる事項があると考えられる.
表-2.2.1 各種構造物に用いられた中流動コンクリートの概要 1)~7)
設計
基準
強度
粗骨材
目標
目標
最大 スランプ
構造物種類
空気量
寸法
フロー
(%)
(cm)
(N/mm2 ) (mm)
トンネル
覆工 2), 3)
合成構造
沈埋函 4)
港湾用
プレ
キャスト
ケーソン 5)
桟橋の
SRCはり 6)
建築物 7)
(SC構造)
18
30
20・25
20
その他に
実施する試験
単位
粗骨材
絶対容積
単位量(kg/m3 )
s/a
(%)
(m3 /m3 )
W
混和剤
種類
C
混
和
材
890
AE
減水剤
842
(高機能
タイプ)
864
835
42.5±7.5
・加振変形試験
(振動下での変形
性,材料分離を
4.5±1.5
判定)
・充塡高さ(障害
R3,28cm以上)
0.318
51.0
175
270
100
(FA)
50.0±10.0
・充塡高さ(障害
R2,20cm以上)
・ブリーディン
4.5±1.5 グ率2.5%以下
・フレッシュ性
状の保持性(練上
りから90~120分)
0.32
51.2
171
433
0
S
G
高性能
AE
減水剤
-
20
50.0±10.0
4.5±1.5
-
0.31
55.0
155
360
0
1003
高性能
AE
837 減水剤
(分離
低減型)
-
25
42.5±7.5
4.5±1.5
-
0.315
52.5
160
400
0
905
832
高性能
AE
減水剤
-
20
55.0±7.5
4.5±1.5
-
0.326
50.2
175
382
20
(EX)
863
871
高性能
AE
減水剤
*FA:フライアッシュ,EX:膨張材
*建築物への適用例は,スランプ21cmのレディーミクストコンクリートに現場で,増粘剤を含有した流動化剤を添加し
て製造
15
第2章
既往の研究
2.3 各種コンクリートの配合設計方法の現状
2.3.1
普通コンクリート
普通コンクリートの配合設計法は,コンクリート標準示方書【施工編】10)(以下,示方書という)
に示される水セメント比 55%,
スランプ 8cm 程度のコンクリートにおける「単位粗骨材かさ容積,
細骨材率および単位水量の概略値」(表-2.3.1)に基づき,使用材料や目標とするコンクリート品
質の違いに対して細骨材率と単位水量を補正する方法(表-2.3.2)が一般に用いられている.普通
コンクリートの配合設計方法の概要を図-2.3.1 に示すとともに,手順を以下に記述する.
表-2.3.1 コンクリートの単位粗骨材かさ容積,細骨材率および単位水量の概略値 10)
AE剤を用いる場合
粗骨材の
最大寸法
(mm)
単位粗骨材
かさ容積
3
3
(m /m )
空気量
(%)
細骨材率
s/a
(%)
単位水量
W
AE減水剤を用いる場合
単位水量
W
(kg/m3 )
細骨材率
s/a
(%)
(kg/m3 )
15
0.58
7.0
47
180
48
170
20
0.62
6.0
44
175
45
165
25
0.67
5.0
42
170
43
160
40
0.72
4.5
39
165
40
155
この表に示す値は,骨材として普通の粒度の砂(粗粒率2.80程度)および砕石を用いたコンクリートに対す
るものである。
表-2.3.2 使用材料やコンクリートの品質の違いに対する細骨材率,単位水量の補正の目安 10)
区分
s/aの補正(%)
Wの補正
砂の粗粒率が0.1だけ大きい(小さい)ごとに
0.5だけ大きく(小さく)する
補正しない
スランプが1cmだけ大きい(小さい)ごとに
補正しない
1.2%だけ大きく(小さく)する
空気量が1%だけ大きい(小さい)ごとに
0.5~1だけ小さく(大きく)する
3%だけ小さく(大きく)する
水セメント比が0.05大きい(小さい)ごとに
1だけ大きく(小さく)する
補正しない
-
s/aが1%大きい(小さい)ごとに
川砂利を用いる場合
3~5だけ小さくする
1.5kgだけ大きく(小さく)する
9~15kgだけ小さくする
なお,単位粗骨材かさ容積による場合は,砂の粗粒率が0.1だけ大きい(小さい)ごとに単位粗骨材かさ容積を1%だけ小
さく(大きく)する
(1)
配合条件の設定
配合条件として設定する項目は,粗骨材の最大寸法,水セメント比,目標スランプおよび空気
量である.
粗骨材の最大寸法は,対象とする部材の最大寸法,鉄筋のあきおよびかぶりから定める.部材
の最大寸法の 1/4 以下(無筋コンクリートの場合),1/5 以下(鉄筋コンクリートの場合)とするととも
に,鉄筋の最小あきおよびかぶりの 3/4 以下とする必要がある.
水セメント比は,65%以下で,かつコンクリートに要求される強度,耐久性および水密性を考
慮し,これらから定まる水セメント比のうち最小の値を選定することとされている.強度につい
16
第2章
既往の研究
ては,構造物の設計基準強度を下回る確率が 5%以下となる配合強度の確保に必要な水セメント
比を選定する.耐久性については,設計耐用期間において,塩害や中性化に伴う鋼材腐食に対す
る耐久性,および凍結融解抵抗性などが確保できる水セメント比を選定する.水密性が要求され
る場合には,水セメント比を 55%以下とする必要がある.
目標スランプは,部材の種類ごとに,施工条件および配筋条件に応じた打込み時の最小スラン
プを設定し,運搬や圧送に伴うスランプの低下や品質のばらつきを考慮して練上り時の目標スラ
ンプを設定する.
空気量は,強度や耐久性に悪影響を及ぼさない範囲で,所要のワーカビリティーや耐凍害性が
得られるように,コンクリート容積の 4~7%とすることを標準とするとされている.
(1) 配合条件の設定
・部材寸法,鉄筋あき,かぶり ⇒ 粗骨材の最大寸法の設定
・設計基準強度,目標とする耐久性 ⇒ 水セメント比の設定
・施工条件,配筋条件 ,運搬,圧送の条件 ⇒ 目標スランプの設定
・ワーカビリティー,耐凍害性 ⇒ 空気量の設定
(2) 単位水量の設定
・表-2.3.1の概略値に基づき設定
*作業が可能な範囲でできるだけ小さく。試し練りで定めることが基本
(3) 単位セメント量の設定
・水セメント比と単位水量より算出
*ただし,単位セメント量は270kg/m3以上
(4) 細骨材率もしくは単位粗骨材かさ容積の設定
・細骨材率は表-2.3.1の概略値に基づき設定
・単位粗骨材かさ容積は,目標スランプに応じて設定
初期配合の確定 ⇒ 試し練り
図-2.3.1 普通コンクリートの配合設計方法の概要
(2) 単位水量の設定
配合条件および使用する骨材の物理的性質が与えられれば,表-2.3.1 から単位水量の概略値を
求められる.なお,示方書では,
「単位水量は,175kg/m3 以下を標準としつつ,作業ができる範囲
内でできるだけ小さくなるように,試験によって定める」とされており,あくまでも試し練りに
よって定めることが前提であることが示されている.また,日本建築学会 建築工事標準仕様書・
同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事
11)
(以下,JASS5 という)では,水セメント比や粗骨材の種
類に応じて,目標スランプに対する単位水量の標準値を示している.
17
第2章
(3)
既往の研究
単位セメント量の選定
単位水量が選定されれば,配合条件である水セメント比から,単位セメント量が選定できる.
ただし,示方書では,
「単位セメント量が少なすぎるとワーカビリティーが低下するため,粗骨材
の最大寸法が 20~25mm の場合は,270kg/m3 以上,より望ましくは 300kg/m3 以上確保するのがよ
い」としている.また,「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針(案)」12)に示さ
れる設定したスランプに対する単位粉体量の目安を参考にするのがよいと記述している.一方,
JASS5 においても,普通コンクリートの単位セメント量の最小値を 270kg/m3 と定めている.
(4)
細骨材率もしくは単位粗骨材かさ容積
細骨材率も,配合条件および使用する骨材の物理的性質が与えられれば,表-2.3.1 から概略値
が求められる.なお,示方書では,
「所要のワーカビリティーが得られる範囲内で単位水量ができ
るだけ小さくなるように,試験によって定める」としており,単位水量と同様に,試し練りによ
って定めることが前提であることが示されている.また,高性能 AE 減水剤を用いる場合には,
水セメント比およびスランプが同じ通常の AE 減水剤を用いたコンクリートに比較して,細骨材
率を 1~2%大きくするとよいとしている.
一方で,JASS5 では,目標スランプに応じた単位粗骨材かさ容積の標準値が示されており,こ
の値を目安に細骨材および粗骨材の単位量を求める手法も広く用いられている.また,施工性能
指針 12)においても,スランプと単位粗骨材容積の関係が示されている.
200
200
単位水量(kg/m3)
190
単位水量の標準値(kg/m3)
土木学会 示方書
水セメント比55%
粗骨材:砕石2005
AE減水剤使用
180
170
160
150
4
6
日本建築学会
190
180
170
160
150
8 10 12 14 16 18 20 22
スランプ(cm)
水セメント比55%
粗骨材:砕石2005
AE減水剤使用
4
6
8 10 12 14 16 18 20 22
スランプ(cm)
図-2.3.2 スランプと単位水量の関係
図-2.3.3 スランプと単位水量の関係
(示方書 10)に示される概略値から W/C を一定
(JASS511)に示される表をもとに作図)
として算出し作図)
表-2.3.1 に示す概略値から,水セメント比を一定とした場合に算出した単位水量とスランプの
関係を図-2.3.2 に,JASS5 におけるスランプと単位水量の標準値の関係を図-2.3.3 に示す.上
述のように,土木学会の示方書に示される普通コンクリートの配合設計は,試し練りによって定
めることが前提であるものの,これらの図から,土木学会および日本建築学会とも,単位水量の
概略値・標準値は,目標スランプに応じて調整する必要があることがわかる.なお,いずれの図
18
第2章
既往の研究
も AE 減水剤を用いた場合の関係図である.単位水量の上限値は,土木学会では 175kg/m3 以下,
日本建築学会では 185kg/m3 以下と定められており,目標スランプを確保するために単位水量が上
単位粗骨材かさ容積の標準値(m3/m3)
単位粗骨材かさ容積の最大値(m3/m3)
限値を超える場合には,高性能 AE 減水剤を用いて単位水量を低減することとされている.
0.75
土木学会 施工性能指針
0.70
0.65
0.60
0.55
0.50
粗骨材:砕石2005
AE減水剤使用
6
8 10 12 14 16 18 20 22
スランプ(cm)
0.75
日本建築学会
0.70
0.65
0.60
0.55
0.50
水セメント比40~60%
粗骨材:砕石
AE減水剤使用
6
8 10 12 14 16 18 20 22
スランプ(cm)
図-2.3.4 スランプと単位粗骨材かさ容積
図-2.3.5 スランプと単位粗骨材かさ容積
(施工性能指針 12))
(JASS511)に示される表をもとに作図)
施工性能指針 12)におけるスランプと単位粗骨材かさ容積の最大値の関係を図-2.3.4 に,日本建
築学会 JASS5 におけるスランプと単位粗骨材かさ容積の標準値の関係を図-2.3.5 に示す.施工
性能指針は最大値を,日本建築学会は標準値を示しているため,両者には 0.03m3/m3 程度の差異が
あるものの,いずれもスランプの増加に伴い単位粗骨材かさ容積を小さく設定する必要があるこ
とがわかる.特に,スランプ 15cm を境として,スランプがそれ以上の場合にはかさ容積を急激
に小さく設定する必要がある.
これらの結果を整理すると,普通コンクリートの配合設計法の概要は,以下のようになる.
(1) 単位水量は目標スランプに応じて設定する,ただし,スランプが大きく単位水量の上限値を
超える場合には,高性能 AE 減水剤を用いる
(2) 単位セメント量は単位水量と水セメント比から求める,ただし,その最小値は 270kg/m3 以上
とする
(3) 単位粗骨材かさ容積は目標とする流動性のレベル(スランプ)に応じて設定する
中流動コンクリートは,高い流動性を確保するために高性能 AE 減水剤を用いることが大半で
ある.高性能 AE 減水剤は,大半の普通コンクリートで使用している AE 減水剤とは異なり,目標
とする流動性のレベルに応じて,その添加量を調整することが可能である.そのため,図-2.3.2
や図-2.3.3 に示さるように,流動性のレベルと単位水量の関係は必ずしも一意的には決定できな
いと考えられ,普通コンクリートにおける単位水量の設定方法を,中流動コンクリートの配合設
計法にそのまま組み込むことは困難と考えられる.
一方,粗骨材のかさ容積を流動性のレベルに応じて設定する手法は,中流動コンクリートの配
合設計の考え方にも活用できるものと考えられる.
19
第2章
2.3.2
既往の研究
高流動コンクリート
高流動コンクリートの配合設計・施工指針[2012 年版]1)に示される配合設計手順の概要を図-
2.3.6 に示すとともに,概要を以下に記述する.
(1) 配合条件の設定
・設計基準強度,目標とする耐久性 ⇒ 水セメント比の設定
・施工条件,配筋条件 ⇒ 自己充塡性のランク設定
*自己充塡性のランクに応じて,目標とする流動性のレベル,
材料分離抵抗性の範囲が記載
(2) 単位粗骨材量の設定
・自己充塡性のランクから設定
*自己充塡性のランクに応じて粗骨材の実積率の推奨値も記載
(3) 単位水量,水粉体容積比,単位粉体量の設定
・指針に,水粉体容積比,単位粉体量の目安記載
(4) 単位細骨材量の算出
・1m3の容積から,上記で得られた各材料の単位容積を差し引く
初期配合の確定
【試し練り】
・材料分離抵抗性の指標として,500mmフロー到達時間および
漏斗流下時間の範囲の目安が記載
・高性能AE減水剤の添加量は,目標とする流動性となるよう調整
・指針に,配合修正方法の具体的手順が記載
図-2.3.6 高流動コンクリートの配合設計方法の概要
(1)
配合条件の設定
高流動コンクリートは,自己充塡性を有するコンクリートであるため,まず,適用する構造物
の構造条件,施工条件から自己充塡性のランク(表-2.3.3)を設定する.また,強度や耐久性を確
保する観点から,水セメント比の最大値,使用するセメントの種類,混和材の使用の有無も合わ
せて検討する必要があるとしている.
また,目標とする自己充塡性のランクに応じて,スランプフロー,500mm フロー到達時間や漏
斗流下時間の目標値が示されている.粉体系高流動コンクリートの場合の各値を表-2.3.4 に示す.
(2)
単位粗骨材量の設定
まず,表-2.3.5 に従い,目標とする自己充塡性のランクに応じて,単位粗骨材絶対容積を設定
する.粗骨材の最大寸法は 20 または 25mm が標準である.なお,表-2.3.5 中に併記したように,
自己充塡性のランクに応じて,使用する粗骨材の実積率の推奨値も示されている.
20
第2章
既往の研究
表-2.3.3 指針 1)における高流動コンクリートの自己充塡性のランク
自己充塡性
のランク
想定する部材および配筋条件
1
最小鋼材あきが35~60mm程度で,複雑な断面形状,断面寸法の小さい部材または
箇所に対して,自重のみで均質に充塡できるレベル
2
最小鋼材あきが60~200mm程度の鉄筋コンクリート構造物または部材に対して,
自重のみで均質に充塡できるレベル
3
最小鋼材あきが200mm程度以上で断面寸法が大きく配筋量の少ない部材または箇
所,鉄筋コンクリート構造物に対して,自重のみで均質に充塡できるレベル
表-2.3.4 自己充塡性のランクと各評価試験の目標値の目安 1)(粉体系高流動コンクリート)
自己充塡性のランク
1
2
3
充塡高さ(mm)
300以上
(障害R1)
300以上
(障害R2)
300以上
(障害R3)
700
(650~750)
650
(600~700)
600
(550~650)
5~20
3~15
3~15
9~10
7~13
4~11
スランプフロー(mm)
目標値 500mmフロー到達時間の範囲(秒)
漏斗流下時間の範囲(秒)
表-2.3.5 自己充塡性のランクと単位粗骨材絶対容積の標準値ならびに実積率の推奨値 1)
(粉体系高流動コンクリート)
自己充塡性
のランク
単位粗骨材絶対容積
(m3 /m3 )
参考
実績率を左記とした場合の
実積率(%) 単位粗骨材かさ容積の範囲
(m3 /m3 )
1
0.28~0.30
59以上
0.47~0.51
2
0.30~0.33
57以上
0.53~0.58
3
0.33~0.35
55以上
0.60~0.64
(3) 単位水量,水粉体容積比および単位粉体量の設定
指針では,これら 3 つの値を設定する手順として,(1)単位水量を始めに設定して,水粉体容積
比あるいは単位粉体量を設定する方法と,(2)水粉体容積比を始めに設定して,単位水量あるいは
単位粉体量を設定する方法があるとしている.いずれの場合においても,単位水量は主に使用す
る骨材の品質によって決まるものであり,水粉体容積比は使用する粉体の品質によって決まるも
のであることが記載されている.
また,これまでの実績から,粉体系高流動コンクリートの場合,水粉体容積比は 85~115%の
範囲,
単位粉体量は 500~600kg/m3(0.16~0.19m3/m3)の範囲であることが多いことが示されている.
なお,上記の各値を設定した時点で,水結合材比が所要の強度や耐久性の確保を満足できるか
を照査する必要があるとしている.
21
第2章
(4)
既往の研究
単位細骨材量
単位細骨材量は,(2)および(3)により得られた各値をコンクリート 1m3 から差し引いて求める.
(5)
高性能 AE 減水剤の使用量
高性能 AE 減水剤の使用量は,所定の性能が得られるように試し練りによって定めるとしてい
る.
指針では,上記の手順で選定した配合を用いた試し練りを行い,目標性能と合致していること
を確認し,必要に応じて修正を行うとしている.その際の配合修正方法の手順の目安も示されて
いる.
上記の概要を踏まえると,高流動コンクリートは,目標とする自己充塡性のランクに応じて,
目標とすべき流動性のレベル(スランプフロー),および流動性に応じて確保すべき材料分離抵抗性
の範囲が明確に定められている.また,これまでの実績に基づく値であるものの,単位粗骨材容
積,水粉体容積および単位粉体量の目安が示されている.
中流動コンクリートの配合設計法に活用できる項目としては,流動性のレベルと単位粗骨材量
の関係が挙げられる.高流動コンクリートは,自己充塡性を確保するために,そのランクに応じ
て,単位粗骨材量の標準値を設定しているが,一方で,自己充塡性のランクに応じて,流動性の
レベルの目標値も示されている.両者の関係を図-2.3.7 に示す.普通コンクリートと同様に,流
動性のレベルが大きいほど,単位粗骨材量を小さくする必要があることがわかる.
一方で,所要の流動性レベルの確保に必要な単位水量や高性能 AE 減水剤の使用量の設定方法
は明確でなく,基本的には試し練りによって定めることを前提としており,中流動コンクリート
の配合設計法にそのまま活用することは困難であると考えられる.
単位粗骨材絶対容積(m3/m3)
0.36
0.34
ランク3
0.32
ランク2
0.30
ランク1
0.28
0.26
500 550 600 650 700 750 800
スランプフロー(mm)
図-2.3.7 スランプフローと単位粗骨材絶対容積の関係
(粉体系高流動コンクリート) 指針 1)に基づき作図
22
第2章
既往の研究
2.4 既往の研究
本研究では,耐久的なコンクリート構造物を構築するには,ブリーディングが少なく,モルタ
ルと粗骨材の分離が生じにくいコンクリートを用いる必要があり,使用材料や配合条件から,こ
れらを抑制できる配合設計法を開発することを目的とした.そこで,本節では,まず,ブリーデ
ィングの発生やモルタルと粗骨材との分離といった材料分離がコンクリートの耐久性にどのよう
な悪影響を与えるかを既往の文献により整理した.次に,ブリーディングや流動性を予測する手
法に関する既往の研究について整理し,本研究で目的とするコンクリートの配合設計法に活用で
きる事項を抽出することにした.
2.4.1
材料分離がコンクリート構造物の耐久性に及ぼす影響
耐久性に優れたコンクリート構造物を構築するには,設計段階で所要の耐久性(中性化,塩害,
凍害などに対する抵抗性)を満足することが確認された配合のコンクリートを均質な状態で打込
み,充塡させることが肝要である.
コンクリートは,水,セメントおよび骨材から構成された混合材料であり材料分離が生じやす
い.コンクリートの材料分離は,固体粒子であるセメントや骨材と水とが密度差により分離する
ブリーディング現象と,コンクリートが鉄筋間隙を通過する際にモルタル分と粗骨材とが分離す
る現象に大別される
13)
.それぞれの分離が生じているコンクリートのスランプフロー試験状況を
写真-2.4.1 に示す.
(a)ブリーディング
(b)モルタルと粗骨材の分離
試料の上面・外周に水の浮き上がり
試料中央に粗骨材が堆積
写真-2.4.1 材料分離の生じたコンクリートの事例
23
第2章
既往の研究
以下に,これら 2 つの材料分離現象の概要,ならびに材料分離が硬化コンクリートの品質や構
造物の耐久性に及ぼす影響について示す.
(1)
ブリーディング
ブリーディングは,圧送時の閉塞,水密性の低下,鉄筋下端の空隙や沈みひび割れの発生,柱
部材など鉛直方向に高い構造物の均質性の低下の要因となることが指摘されている 14),15).土木学
会ではブリーディングに関する規定は設けられていないが,日本建築学会では水密性や凍結融解
抵抗性が要求される場合には,ブリーディング量を 0.3cm3/cm2 以下に制御するように規定してい
る 16).
ブリーディングが構造物の品質や耐久性に及ぼす影響については既に多くの研究がなされてい
る.神田 17)~19)は,配合条件を様々に変化させたコンクリートをスラブや柱部材に打ち込み,ブリ
ーディングの多いコンクリートほど高さ方向における水セメント比の不均一性が生じやすいこと,
打込み上面では水セメント比が著しく大きくなることを明らかにしている.また,曽根
20)
は,ハ
ンチ部などブリーディングや空隙の残留しやすい部位では,普通コンクリートを十分に締固めて
充塡させても表面の密実さは他の部位より相当に小さくなることを明らかにしている.さらに,
下村
21)
は,ブリーディングによる沈下が著しいコンクリートを用いた場合には,構造部材として
の引張強度が低下することを示している.これらの知見を踏まえると,ブリーディングの少ない
コンクリートを用いることが構造物の耐久性の向上に寄与することは明らかである.
(2) コンクリート中のモルタルと粗骨材との分離
モルタルと粗骨材との分離は,バイブレータの振動作用により,コンクリートを流動させ,鉄
筋間隙を通過させて型枠の隅々まで充塡させる際に生じることが多い.石田
22)
は,一般的なレデ
ィーミクストコンクリートを用いた場合,十分な締固めを行ったとしても,ブリーディング水の
浮き上がりや,鉄筋間隙の通過によりコンクリート材料の不均一性が生じると,型枠表面のコン
クリートの中性化の進行が 30%程度早くなる場合があることを示している.また,國島 38)は,鋼
材のあきや段数が,フレッシュコンクリートの行き渡りや締固め作業が容易でないように設計さ
れた場合,部材表面付近のコンクリート品質は,水セメント比が 10 数%大きいコンクリートと同
程度まで低下すること,締固めの程度の違いにより部材表面の密実さは,水セメント比が 10~20
数%大きいコンクリートを用いた場合と同程度まで低下することを明らかにしている.さらに,
尾上
23)
は,鉄筋間隙の通過前後におけるコンクリート配合の変化を測定し,粒径の大きい粗骨材
ほど間隙通過に伴う低下が顕著であることを確認している.鉄筋間隙の通過に伴いモルタルと粗
骨材との分離が生じ,モルタル分の多いコンクリートがかぶり部分に充塡されると,構造物とし
ての耐久性が損なわれること,配筋条件に応じて適切な流動性を有するコンクリート配合を用い
る必要があることを示すものと考えられる.
一方で,コンクリートを型枠の隅々まで充塡させるのに必要となるバイブレータの振動作用の
程度は,施工現場の配筋条件や施工条件,およびコンクリートの配合条件によって相違する.充
塡に必要な振動エネルギーに関しては,振動台コンシステンシー試験を準用した試験方法や,高
流動コンクリートの充塡試験を準用した試験から鉄筋間隙を通過して充塡する際に必要な振動エ
ネルギーおよび充塡したコンクリートの均質性(含有される粗骨材量の変化率)を評価する方法な
24
第2章
既往の研究
どが提案されている 24)~29).これらの研究成果により,少ない振動時間で鉄筋間隙を通過して充塡
できるコンクリートほど均質性に優れる(材料分離抵抗性に優れる)こと,均質性を高めるにはコン
クリート中の粗骨材容積を少なくすることが効果的であることが明らかとなっている.また,高
流動コンクリートの配合設計では,鉄筋間隙の通過に伴う材料分離抵抗性を確保する観点から,
配筋条件(自己充塡性のランク)に応じて粗骨材容積を制限する手法が用いられている 30),31).均質
な状態でコンクリートを充塡させるには,①配筋条件に応じた流動性を有するコンクリートを用
いること,②バイブレータによる締固め時間が短時間でも容易に充塡できるコンクリートを用い
ること,③配筋条件に応じて粗骨材容積を適切に設定すること,が重要であることを示している.
以上のことから,耐久的なコンクリート構造物を構築するには,ブリーディングが少なく,補
助的な振動締固めにより充塡できる程度の高い流動性を有するコンクリートを用いる必要があり,
流動性のレベルや配筋条件に応じて粗骨材容積を適切に設定することが重要であるといえる.
25
第2章
2.4.2
既往の研究
ブリーディングの予測手法に関する研究
モルタルもしくはコンクリートのブリーディングを予測する手法に関する既往の研究の概要を
以下に列記する.
加藤
32)
は,セメントペーストの凝集構造がブリーディング速度に及ぼす影響に関する研究を行
い,ペースト中に存在する水を,自由水,セメント凝集体の内部で拘束される内部拘束水,およ
び凝集体同士の間で拘束される外部拘束水に分類できるとしている.そして,水粉体比が大きく
なるとブリーディング速度が大きくなるのは,外部拘束水が減少することによるものであり,ブ
リーディング現象を自由水と外部拘束水によって説明できる可能性があることを示している.ま
た,練混ぜ前後のセメントの粒度分布を測定し,練混ぜ前後の平均粒子径の変化について考察し
ている.
上野
33)
は,セメントや骨材の表面積を考慮して遠心脱水試験後にそれぞれの粒子表面に付着す
る水量からブリーディング水量を予測する手法を提案している.なお,この研究では,合わせて
コンクリートの流動性予測についても言及がなされている.また,庄谷ら
34)
も,遠心脱水試験を
用いて粉体が拘束できる水量からブリーディング水量を求める実験を行っている.
笠井ら
35)
は,セメントの粉末度や鉱物組成からセメントペーストのブリーディング率を予測す
る線形重回帰モデルを提案している.
一方で,加地ら
36)
は,産業副産物であるフライアッシュを有効活用する観点から,フライアッ
シュを細骨材の一部に混入したコンクリートのフレッシュ性状に関する研究において,後述する
水膜モデルを用い,粉体および骨材粒子の表面の水膜厚さを算出し,水膜厚さとブリーディング
率の関係について検討している.そして,算出される水膜厚さが厚いコンクリートほどブリーデ
ィング率が大きくなる傾向にあることを示している.この研究にもとづけば,固体粒子表面に拘
束できる水膜厚さを予め何らかの方法で把握できれば,配合設計段階でブリーディング水量を予
測することが可能と考えられる.
このように,ブリーディング水量の予測に関しては多くの研究がなされているものの,配合設
計段階において使用材料と配合条件からブリーディング水量を容易に予測する手法を系統立てて
示すには至っていない現状にある.先述のように,ブリーディングは,セメントや骨材の粒子表
面,もしくはそれらの粒子間では拘束できない水が,密度差により上昇する現象と考えられるた
め,ブリーディング水量を予測するには,使用するセメントおよび骨材粒子が拘束できる水量を
把握する必要があると考えられる.
26
第2章
2.4.3
既往の研究
コンクリートの流動性の予測手法に関する研究
コンクリートの流動性の予測に関しても,既に多くの研究がなされている.ここでは,代表的
な配合設計方法・理論である余剰ペースト膜厚理論,水膜モデルによる手法,相対フロー面積比
と水粉体容積比の直線関係を利用する手法およびレオロジー定数を用いる予測手法について調査
した.
(1)
余剰ペースト膜厚理論
余剰ペースト膜厚理論は,1940 年に C.T.Kennedy によって提唱され,1968 年に T.C.Powers によ
って整理された理論 37)で,コンクリートをセメントペーストと骨材との 2 相材料とみなし,骨材
空隙がペーストで満たされ,更に余剰となるペースト量が存在することにより骨材が分散し,コ
ンクリートに流動性が付与されると考える理論である.余剰ペーストの考え方の概念図を図-
2.4.1 に示す.セメントペーストの性状が一定の場合,骨材空隙を満たした後の余剰ペースト量が
多いほど,コンクリートの流動性は高くなる.余剰ペースト量は,配合条件である骨材の容積割
合および骨材の実積率から容易に算出できる.そして,余剰ペースト膜厚は,余剰ペースト量を
骨材の表面積で除することで得られる.余剰ペースト膜厚の概念図を図-2.4.2 に示す.
VEXP=1 -
V
× 100
G
(2.1)
S a=S ×V
(2.2)
Vexp
δ=
× 106
Sa
(2.3)
ここに,VEXP:余剰ペースト量(m3/m3)
V:骨材の容積割合
G:骨材の実積率(%)
Sa:骨材の全表面積(m2/m3)
S:骨材の表面積(m2/m3)
δ:余剰ペースト膜厚(μm)
ペースト
骨材
余剰ペースト
図-2.4.1 余剰ペーストの考え方 37)
27
第2章
既往の研究
余剰ペースト膜厚
骨材
骨材
充塡ペースト
充塡ペースト
図-2.4.2 余剰ペースト膜厚の概念図 39)
余剰ペースト膜厚理論による配合設計への研究も多く行われたが,単に余剰ペースト膜厚だけ
では,コンクリートの流動性を評価できないことが既に明らかにされている
37)
.これは,通常の
コンクリートでは,骨材同士が十分な間隔を保っているとは言えず,コンクリートの流動性が骨
材相互間の緩衝の影響を受けるためであると考えられている.
そこで,松下ら 38)は,余剰ペースト膜厚理論を応用して,
「余剰ペースト膜厚」と「骨材粒子の
体積面積平均粒径」との比を用い,ペーストの性質が同一であるならば,この比の大小によりモ
ルタルの流動性の大小を評価できることを明らかにしている.更に,近田ら
39)
は,余剰ペースト
膜厚を骨材粒径で除した余剰ペースト膜厚比によって,モルタルの流動性および高流動コンクリ
ートのスランプフローや V 漏斗流下時間を予測できることを明らかにしている.近田らの示す余
剰ペースト膜厚比の概念図を図-2.4.3 に示す.
しかしながら,余剰ペースト膜厚理論は,ペーストの性状を一定(水セメント比および減水剤の
添加量が一定)として取り扱っているため,水セメント比の変化に伴いペーストの性状が変化すれ
ば同じ余剰ペースト膜厚であってもコンクリートの流動性は変化するという本質的な現象を表現
できない.
そこで,三宅ら 40),41)は,図-2.4.4 に示すように,余剰ペースト膜厚を骨材粒子とともに挙動
する「付着ペースト膜厚」と流動に寄与する「有効余剰ペースト膜厚」に分割し,付着ペースト
膜厚が水セメント比により変化することを考慮することで,細骨材と粗骨材との混合骨材の実積
率が最大となる細骨材率のごく近傍において,コンクリートのスランプが最大となることを見出
している.
骨材
余剰ペースト膜厚
d1
d1 d 2 d 3
余剰ペースト膜厚比= = =
δ1 δ2 δ3
d2
δ1
δ2
d3
δ3
図-2.4.3 余剰ペースト膜厚比の概念図 39)
28
第2章
余剰ペースト膜
既往の研究
骨材
付着ペースト膜
有効余剰
ペースト膜
図-2.4.4 付着ペースト膜を考慮した構造モデル 41)
このように,余剰ペースト膜厚理論を応用することで,使用する骨材の物理的性質からコンク
リートの流動性を予測できる可能性がある.しかしながら,本研究で対象とするような中流動コ
ンクリートをはじめ,普通コンクリートにおいても,所要の流動性を確保するために高性能 AE
減水剤や高機能 AE 減水剤の使用がほぼ不可欠となっている.これらの減水剤は,ある範囲内で
はその添加量を調整することが可能であり,実施工においても,所定の流動性を確保できるよう
に添加量を適宜調整している現状にある.そのため,コンクリートの配合設計法を確立する上で
は,高性能 AE 減水剤を用いることによるペーストの流動性の変化を予測できるモデルの構築が
必要となり,余剰ペースト膜厚理論をそのまま適用することは困難であると考えられる.
(2)
水膜モデルによる流動性の予測手法
水膜モデルは,緑川らによって提案された手法で 30),42),「セメント粒子はその表面にある一定
の水膜厚さを有し,ペーストの性状が同一であれば,粉体の種類が相違しても水膜厚さは等しい」
と考えるものである.また,水膜モデルはセメントの凝集を理論的に考慮している.すなわち,
粒子間に働く静力学的な作用としてファンデルワールス力による凝集力 FS と,ペーストの変形や
撹拌に伴う動力学的な作用として粒子の回転慣性力による分散力 Fb を考慮し,凝集力が分散力を
粒径DP
最大長ML
最大長の直角方向MW
上回る場合に,セメント粒子は凝集すると考えるものである.
凝集した粒子はそれと同じ体積および
長短比をもつ粒子とする
s
s
粒子の大小に関わらず膜厚は同じ
図-2.4.5 水膜モデルにおける粒子形状(左)と基本仮定(右)30)
29
第2章
HD
 z 
FS=


2
24  2  s   z+b 
既往の研究
2
(2.4)
3
 ML   MW 
Fb=K  π  

 ρ
 2   2 
(2.5)
FS
Fb
(2.6)
G=
ここに,FS:ファンデルワールス力による凝集力
Fb:回転慣性による分散力
G:凝集個数
H:Hamaker 係数
DP:粒径
z:粒子間距離
s:水膜厚さ
なお,水膜モデルでは,図-2.4.5 の左図に示すように,セメント粒子を楕円形(粒径 DP,長短
比 EL,最大長 ML,最大長の直角方向の長さ MW)として取り扱っている.また,図-2.4.5 の右図
に示すように,①凝集した粒子は個々の粒子の体積の総和と同じ体積および長短比をもつ粒子と
する,②セメント粒子の大小によらず水膜厚さは同じとする,といった基本仮定を設けている.
緑川の研究により,高性能 AE 減水剤を用いない場合,粉体の種類が相違しても,ペーストの
流動性が等しいとき,セメント凝集体の表面の水膜厚さはほぼ一定になることが明らかにされて
いる.さらに,上記の基本仮定である「ペーストの性状が等しい場合には,水膜厚さは等しい」
との考えに基づき,高性能 AE 減水剤を用いたペーストの場合には,図-2.4.6 に示すように,セ
メント粒子表面には水膜に加え,高性能 AE 減水剤の効果による仮想膜が存在し,その和が等し
いとする考え方を示している.この仮想膜は高性能 AE 減水剤による電気的な反発力を考慮した
ものであるとしている.
仮想膜
水膜
粒子
粒子
粒子
粒子
水膜
膜厚さは同じ
高性能AE減水剤のない場合
高性能AE減水剤のある場合
図-2.4.6 水膜モデルにおける仮想膜の概念図 30)
30
第2章
既往の研究
そして,水膜モデルを用いたモルタルおよびコンクリートの流動性予測に関する検証実験の結
果,粉体の種類によらず,所定の流動性の確保に必要な水量(水粉体容積比)は算出できるものの,
高性能 AE 減水剤の添加量については試験練りによって調整する必要があるとしている 42).また,
モルタルおよびコンクリートの検証実験では,骨材の種類および容積を一定としていることから,
骨材の影響による流動性の評価にまでは至っていない.
水膜モデルでは,粉体の種類によらず,ペーストの性状が等しい場合には,水膜厚さは一定で
あると仮定している.しかしながら,後述する拘束水比を用いた研究によれば,粉体の種類によ
り流動に必要な水量は相違することは明らかである.この場合,仮に粉体の粒度分布が同様で凝
集の程度もほぼ等しいと考えると,同じ流動性の確保に必要な水量(水粉体容積比)が相違すれば,
粉体と水との混合比が相違するため,粉体の平均粒子間距離は相違することになる.そして,粉
体が水中に均等に存在していると考えれば,粒子表面の水膜厚さは変化しているはずである.ま
た,高性能 AE 減水剤の添加量は単位水量に比べかなり少なく,体積の観点から考えると,高性
能 AE 減水剤の仮想膜はかなり薄い膜であると想定される.仮に,高性能 AE 減水剤による電気化
学的な作用(静電反発力)によって水膜に相当する程度に厚い仮想膜厚が存在するとすれば,水と粉
体の単位量は変化しないのに粒子間距離が大きくなるため,結果としてペースト体積が増加する
ことになり,実現象に反することになる.
このように考えると,ペーストの流動性が等しくても,粒子表面の水膜厚さは必ずしも同じで
はなく,むしろ配合条件である水と粉体との混合比によって凝集の程度が決定され,この凝集の
程度(凝集後の平均粒子径)が流動性と関連した値であるとも考えられる.
水膜モデルには,上記のようにいくつかの疑問点はあるものの,このモデルの最大の特徴は,
セメント粒子の凝集挙動を考慮できる唯一のモデルであることにある.セメントは水中において,
完全に分散してはおらず凝集体を形成していることが確認されている
43)
.そして,高性能 AE 減
水剤などの減水剤を混和すると,セメント凝集体が分散されることも明らかにされている.つま
り,セメント粒子の凝集・分散の程度により流動性は相違していると推測され,配合条件や高性
能 AE 減水剤の使用量などの条件から,セメント粒子の凝集・分散挙動を表現できれば,ペース
トやモルタルの流動性を予測できる可能性がある.
そこで,本研究では,コンクリートの配合設計法を構築する上において,水膜モデルで提案さ
れたファンデルワールス力による凝集力と回転慣性力による分散力に基づくセメントの凝集挙動
を考慮することにした.ただし,緑川の研究は,ブリーディングのほとんど生じない高流動コン
クリートを対象としているため,すべての水が粒子周りに拘束されるとしているが,本研究では,
水の一部はブリーディング水となると考えることにした.
(3) 相対フロー面積比や相対漏斗速度比を用いる手法
高流動コンクリートは,高い流動性に見合った材料分離抵抗性を確保するために,単位粉体量
を多く設定する必要がある.単位セメント量が増加すると施工時の温度ひび割れが生じる可能性
が高くなるなどの理由により,低発熱型のセメントや,各種の混和材(高炉スラグ微粉末,石灰石
微粉末およびフライアッシュ)が用いられる場合が多い.粉体の種類が相違すると,所要の流動性
の確保に必要な水量は相違する.一方,高流動コンクリートの高い流動性の確保には高性能 AE
減水剤の使用が不可欠であるが,所要の流動性を確保しつつ,適切な材料分離抵抗性を確保する
31
第2章
既往の研究
には,水量と高性能 AE 減水剤の添加量のバランスが重要となる.これらを評価する指標として
相対フロー面積比や相対漏斗速度比の概念が導入され,高流動コンクリートの配合設計に活用さ
れている.ここでは,それらに関する主な既往の研究について調査した.
大内は,図-2.4.7 に示すように,粉体の種類によらず,水粉体容積比 VW/VP と相対フロー面積
比 ΓP との間には直線関係が存在することを見出した 44).相対フロー面積比とは,ペーストの変形
量を無変形時におけるフロー面積に対する面積比で表したものである.そして,近似直線の傾き
がペーストの流動のし易さを表す係数(変形係数 EP)で,切片が流動に寄与しない,すなわち粉体
が拘束する水量を表す係数(拘束水比 βP)であり,粉体の種類,形状および粒度分布などにより相
違することを明らかにした.
ΓP=(FP /100)2-1
(2.7)
VW /VP=EP × ΓP + βP
(2.8)
ここに,FP:ペーストのフロー値(mm)
ΓP:ペーストの相対フロー面積比
水粉体容積比(VW/VP)
βP:ペーストの拘束水比
ペースト
ペーストの変形係数(EP)
ペーストの
拘束水比(βP)
ペーストの相対フロー面積比(ГP)
図-2.4.7 ペーストの相対フロー面積比と水粉体容積比の関係 44)
Γm=(Fm /100)2-1
(2.9)
VW /VP=Em × Γm + βm
(2.10)
(βm-βP )× (1-VS )
VS × (1+βm )
Em × {1-VS × (1+βS )}
βS=
ES ' =
1-VS
ここに,Fm:モルタルのフロー値(mm)
32
-EP
(2.11)
(2.12)
第2章
既往の研究
Γm:モルタルの相対フロー面積比
βm:モルタルの拘束水比
VS:モルタル中の細骨材容積比
βS:細骨材の拘束水比
モルタルの
変形係数(Em)
細骨材の拘束水比(βS)
水粉体容積比(VW/VP)
ES’:細骨材の変形係数
モルタル
(VS/Vm一定)
モルタルの
拘束水比(βm)
0
モルタルの相対フロー面積比(Гm)
図-2.4.8 細骨材容積比を一定としたモルタル
図-2.4.9 モルタル中の細骨材容積比と
の相対フロー面積比と水粉体容積比
の関係
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
モルタル中の細骨材容積比(VS/Vm)
細骨材の拘束水比の関係
45),47)
(文献 45)を参考に作図)
枝松ら 45)~47)は,図-2.4.8 に示すように,細骨材容積比を一定としたモルタルにおいても,水
粉体容積比と相対フロー面積比 Γm との間には直線関係が成立することを明らかにした.そして,
ペーストの近似直線と,細骨材容積比を一定としたモルタルの近似直線の関係から,細骨材が拘
束する水量(拘束水比 βS)および変形に寄与する変形係数 ES’を求める手法を構築している.更に,
図-2.4.9 に示すように,細骨材の拘束水比は,モルタル中の細骨材容積比によって相違し,モル
タル中の細骨材容積比 VS/Vm が 0.3~0.4 程度以上となると,細骨材同士による接触や噛み合いに
よる影響が顕著となり,見掛け上,細骨材の拘束水比が急増することを示している.なお,岸ら
48),49)
は,モルタルを遠心脱水させたときの浮き水量と粉体容積との比(遠心分離水比)と相対フロ
ー面積比との間にも相関関係が成立し,高性能 AE 減水剤の添加量によらず,相対フロー面積比
が負の領域で焦点を結ぶことを見出している.そして,遠心分離水が流動に寄与する自由水であ
るとの考えを示している.
一方で,大内 50)は,漏斗流下試験による流下時間 tr の逆数を 10 から除した値を相対漏斗速度比
Rm と定義し,モルタルの粘性を表す指標となることを示している.そして,図-2.4.10 に示すよ
うに,水粉体容積比を変化させて流動性を調整させた場合と,高性能 AE 減水剤の使用量を変化
させて流動性を調整した場合とでは,相対フロー面積比 Γm と相対漏斗速度比 Rm の関係が相違す
ることを明らかにし,両者の関係を用いることで,高流動コンクリートにおける水と高性能 AE
減水剤の役割を独立して関係づけることが可能であることを示している.また,この考え方をコ
ンクリートレベルに発展させることで,コンクリート中の粗骨材とモルタルとの相互作用がコン
クリートの変形性に及ぼす影響を評価できる可能性があると記述している 51).
33
第2章
既往の研究
Rm=10/tr
(2.13)
ここに,Rm:モルタルの相対漏斗速度比
モルタルの相対漏斗速度比(Rm)
VW/VP大きい
水セメント
容積比
(VW/VP)
VW/VP小さい
モルタルの相対漏斗速度比(Rm)
tr :モルタルの漏斗流下時間(秒)
モルタルの相対フロー面積比(Гm)
SP少ない
高性能AE減水剤
の使用量SP
SP多い
モルタルの相対フロー面積比(Гm)
水粉体容積比を変化させた場合
高性能 AE 減水剤の使用量を変化させた場合
図-2.4.10 モルタルの変形性と粘性の関係に及ぼす水粉体容積比あるいは高性能 AE 減水剤の使
用量の影響に関する概念図 54)
これらの研究成果を踏まえ,
「ハイパフォーマンスコンクリート」52),53)では,高流動コンクリ
ートの配合設計を行う場合には,(1)モルタルの相対フロー面積比 Γm が 5 となるときに,相対漏斗
速度比 Rm が 1.0 となるとなるような粘性を持つモルタルを選定することが望ましい,(2)細骨材に
よる噛み合いが生じないようにモルタル中の細骨材容積比を 0.4 に設定することが望ましいとし
ている.
菅俣ら 54)は,大内の手法 50)をもとに,相対フロー面積比と相対漏斗速度比との比 Γm/Rm を高性
能 AE 減水剤によるセメントの分散効果と位置づけ,Γm/Rm と高性能 AE 減水剤の吸着量には一意
的な関係があることを見出している.
また,日比野
55)
は,相対フロー面積比や相対漏斗速度比を用いて,高流動コンクリートにおけ
る分離低減剤(増粘剤)の効果に関する考察を行っている.
このように,水粉体容積比と相対フロー面積比の関係を用いることで,粉体の特性に応じて,
所要の流動性確保に必要な水量が算出できるとともに,相対漏斗速度比を用いることで高性能 AE
減水剤の添加量を選定することも可能である.使用する粉体や高性能 AE 減水剤ごとにペースト
フロー試験と漏斗試験を行う必要があるため煩雑ではあるが実用的な手法であるといえる.
しかしながら,これらの手法は,セメントの凝集を考慮していないことが本質的な課題として
挙げられる.流動性のレベル,水セメント比および高性能 AE 減水剤の添加量によってセメント
の凝集の程度は大きく相違すると想定される.そのため,中流動コンクリートや普通コンクリー
トなど幅広い流動性のレベルのコンクリートを対象とした配合設計手法を確立する上では,セメ
ントの凝集挙動を考慮することは不可欠であり,これらの手法をそのまま適用することは困難と
34
第2章
既往の研究
考えられる.
一方で,細骨材は,セメント(粉体)に比べ粒子径が大きく,凝集はほとんど生じないと考えられ
る.コンクリートの流動性ならびにブリーディングを予測する上では,細骨材が拘束する水量を
把握することは重要である.そこで,本研究では,枝松ら
22)
の提案する手法を準用して,細骨材
が拘束する水量を算出することにした.
(4) レオロジー定数を用いた数値解析による手法
図-2.4.11 に示すように,モルタルをペーストと細骨材の 2 相材料,もしくはコンクリートを
モルタルと粗骨材との 2 相材料と見なし,それぞれペーストあるいはモルタルをビンガム流体と
仮定することで,塑性粘度と降伏値を回転粘度計等により測定して,モルタルあるいはコンクリ
ートの流動性を予測するレオロジー的な研究も多くなされている 56)~59).そして,塑性粘度と降伏
値を用いることでスランプ(フロー),フロー値および圧送性などを予測できることが既に明らかと
せん断応力
なっている.
ビンガム
モデル
塑性粘度
1
降伏値
せん断ひずみ速度
図-2.4.11 ビンガムモデルにおける降伏値と塑性粘度の関係の概念図
また,吉野ら 60),61)は,レオロジー定数と余剰ペースト膜厚との間には相関関係があることを見
出し,ペーストのレオロジー定数からモルタルおよびコンクリートのレオロジー定数を推定でき
る可能性があることを示している.しかしながら,この研究においても粉体の凝集の影響は考慮
されておらず,使用材料の物理的性質や配合条件と上記のレオロジー定数との理論的な関係を十
分に把握するには至っていない.近年では,セメントの凝集を考慮したセメントペーストの粘度
式も提案されており,その粘度式を用いてコンクリートの配合をレオロジー定数から推定する試
みもなされている 62)~64).計算式においていくつかの係数に対する仮定がなされていること,有限
要素法による複雑な数値解析を伴うことなど,実用的に,広く汎用化させていく上での課題が残
されている.
本研究では,実施工時に容易に適切な流動性と材料分離抵抗性を有するコンクリート配合を選
定できる手法を確立することが工学的に有益であるとの観点に立ち,配合条件や使用材料の物理
的性質(粒度分布,実積率など),すなわち個々の材料が固有に有する性質とその混合比率から,混
合体としてのモルタルおよびコンクリートの流動性ならびに材料分離抵抗性を予測する手法を確
立することが重要であると考え,レオロジー定数を用いた予測手法は取り扱わないこととした.
35
第2章
既往の研究
2.5 本研究におけるコンクリートの配合設計法の検討の流れ
本節では,現状の普通コンクリートおよび高流動コンクリートの配合設計法,ならびにブリー
ディングや流動性の予測手法に関する既往の研究を調査した結果を取りまとめるとともに,材料
分離抵抗性と流動性を考慮した配合設計法の確立に向けた検討手順について示す.
2.5.1
材料分離抵抗性の確保に関する現状
(1) 各種コンクリートの配合設計法
普通コンクリートの配合設計法では,材料分離抵抗性を確保する観点から,セメント量の最小
値が示されるとともに,目標とする流動性のレベルに応じて単位粉体量(セメント量)の目安が示さ
れている.しかし,これらのセメント量の目安は,これまでの実績にもとづき経験的に定められ
ているものであり,材料の物理的性質や配合条件などから理論的に求められたものではない.ま
た,ブリーディングに関しては,土木学会では目標値は記載されておらず,配合設計法でも全く
考慮されていない.一方,モルタル分と粗骨材との分離の観点からは,流動性のレベルに応じて,
単位粗骨材かさ容積を小さくするように示している.
高流動コンクリートの配合設計法では,材料分離抵抗性を評価する指標として,漏斗流下時間
や 500mm フロー到達時間の範囲が示されている.そして,これらを達成するために,水粉体容積
比の目安の範囲が示されている.しかし,水粉体容積比が比較的小さいこともあり,ブリーディ
ングに関する規定は定められていないとともに,配合設計の中で考慮されていない.一方,単位
粗骨材量(かさ容積)については,普通コンクリートと同様に,流動性のレベルに応じて設定するよ
うにしている.
これらの結果を踏まえると,現状の配合設計法では,いずれもブリーディングは考慮されてお
らず,本研究において新たに考案する必要がある.一方で,単位粗骨材かさ容積の設定方法は,
いずれも流動性のレベルに応じて設定しており,本研究でも準用できる可能性が高い.
(2)
既往の研究
ブリーディングは,セメントや骨材が拘束できない水量であるとの観点から,セメントおよび
骨材がその表面に拘束できる水量を求める研究が多く行われている.そして,限られた範囲では
あるものの,使用材料の物理的性質や配合条件からブリーディングを予測できることを示してい
る文献もある.しかしながら,遠心分離などにより強制的に水を取り除くことにより推定する手
法が多く,理論的に導かれているものではない.また,セメントの凝集は考慮しておらず,流動
性のレベルとブリーディングとを関連付けるには至っていない.さらに,基礎的な研究が多く,
混和剤を用いない,もしくは混和剤の添加量を一定としたペーストやモルタルを対象としている.
ブリーディングがセメントや細骨材の表面に拘束できない水量であると考えた場合,配合条件
によりセメントの凝集の程度が変化することを考慮することは不可欠と考えられる.そのため,
今回調査した研究で提案される考え方をそのまま本研究で活用することは困難と考えられる.
一方で,水膜モデルは,セメントの凝集を考慮できる唯一の理論である.高流動コンクリート
を主な対象としているため,緑川の研究においては,ブリーディングは考慮されていないが,水
36
第2章
既往の研究
とセメントの混合比率によりセメントの凝集の程度が異なり,結果としてセメントの単位表面積
が変化することを考慮できるため,配合条件からブリーディング水量を予測する手法に準用でき
る可能性がある.
また,菅俣らの提案する相対フロー面積比と水粉体容積比の関係から求める細骨材の拘束水比
は,実験を伴うことになるものの,使用する細骨材の固有の品質(形状,粒度分布,石質など)に依
存する値であると考えられること,汎用性の高い簡便な試験により求めることが可能であること
から,本研究における細骨材が拘束できる水量の算定方法として活用できると考えられる.
2.5.2
流動性の予測に関する現状
(1) 各種コンクリートの配合設計法
普通コンクリートの配合設計法では,目標とする流動性のレベルに応じて単位水量を増加させ
ている.これは,AE 減水剤を用いたコンクリートを対象としており,その添加量が一定であるた
めである.目標とする流動性を確保するために,単位水量が上限値を超える場合には,高性能 AE
減水剤を用いる必要があると記述しているが,この場合の具体的な単位水量の設定方法は示され
ていない.序論でも述べたように,高い流動性の確保には高性能 AE 減水剤の使用が不可欠な場
合が多いこと,目標とする流動性のレベルに応じてその添加量を調整する手法が一般的に用いら
れていることを踏まえると,本研究においてそのまま活用することは困難と考えられる.
高流動コンクリートは,自己充塡性のランクに応じて,目標とすべき流動性のレベルの範囲は
示されているが,その流動性を確保するために,単位水量や高性能 AE 減水剤の使用量を具体的
にどのように設定するかは示されておらず,基本的には試し練りにより配合を選定することが前
提となっている.
これらの結果を踏まえれば,現状の配合設計方法では,机上にて流動性を予測することはでき
ず,本研究において予測手法を新たに考案する必要がある.
(2) 既往の研究
余剰ペースト膜厚理論によれば,余剰となるペースト量の違いからモルタルもしくはコンクリ
ートの流動性の大小を相対的に評価することは可能である.しかし,この理論も凝集を考慮して
おらず,また高性能 AE 減水剤の効果についても考慮できないため,そのまま適用することは困
難と考えられる.
水膜モデルは,流動性が等しい場合,粉体表面に拘束できる水膜厚さが等しいと仮定するため,
理論的には水とセメントとの混合比率からペーストの流動性を予測することは可能である.しか
し,相対フロー面積比と水粉体容積比の関係から粉体が拘束できる水量を予測する手法によれば,
粉体の種類によって,その表面に拘束できる水量は相違するとの知見も得られており,そのまま
適用することは困難とも考えられる.また,高性能 AE 減水剤を用いた場合のセメントの分散効
果の評価方法についても議論の余地があると思われる.
相対フロー面積比や相対漏斗速度比の概念を用いることで,高流動コンクリートとして適切な
流動性と材料分離抵抗性を有するペーストの水粉体容積比や高性能 AE 減水剤の添加量を実験に
より求めることは可能である.しかし,あくまでも実験により検討するものであり,セメントの
37
第2章
既往の研究
凝集・分散は考慮されておらず,本研究で目指す理論的な配合設計法の構築にはそのまま適用で
きないと考えられる.
2.5.3
本研究におけるコンクリート配合設計法の検討の流れ
経済的に耐久的なコンクリート構造物を構築するには,所要の品質(強度や耐久性)を満足する範
囲でセメント量をできるだけ少なくするとともに,鉄筋間隙を均質な状態で通過して型枠の隅々
まで充塡できるコンクリートを用いる必要がある.このためには,少ない水量で高い流動性を確
保できる高性能 AE 減水剤の使用は不可欠である.一方で,ブリーディングは,セメントおよび
細骨材がその表面に拘束できる以外の水量と考えられることから,ブリーディングを机上にて推
定するには,水セメント比や高性能 AE 減水剤の添加量により,セメントの凝集・分散の状態が
変化することを考慮する必要がある.また,セメントの凝集・分散の程度が相違すれば流動性も
変化すると想定される.
このように考えると,材料分離抵抗性を適切に確保するコンクリートの配合設計法を確立する
上では,
「材料分離抵抗性」と「流動性」をともに考慮した手法を確立する必要がある.現状の配
合設計法や既往の研究の調査の結果,両者をともに考慮できる手法は確立されておらず,基本的
には,本研究において新たに配合設計法を考案する必要があると考えられる.しかし,水膜モデ
ルや相対フロー面積比の考え方,単位粗骨材かさ容積の設定方法など,部分的には準用できる項
目もあることから,これらについては準用しながら検討を進めることにする.
以上の結果を踏まえ,本研究では以下の手順で検討を行い,材料分離抵抗性と流動性を考慮し
たコンクリートの配合設計法を確立することにする.なお,本研究では,材料分離として「ブリ
ーディング」と「モルタルと粗骨材との分離」を取り扱う.粗骨材は粒子径が大きく単位表面積
が相対的に小さいため,その表面にはほとんど水を拘束しない,すなわちブリーディング水量に
及ぼす影響は小さいと考え,ブリーディングには寄与しないと仮定することにする.そのため,
始めに,モルタルレベルにおける材料分離(ブリーディング)と流動性について検討し,その後で,
コンクリートレベルにおけるモルタルと粗骨材との材料分離を検討することにする.
まず,モルタルレベルにおいて,水とセメントとの混合比率によって,セメントの凝集の程度
が相違することを考慮し,凝集後のセメント粒子群がその表面に拘束できる水量を評価できる予
測モデルを構築する.このモデル化においては,水膜モデルの考え方を準用する.一方で,細骨
材がその表面に拘束できる水量に関しては,相対フロー面積比と水粉体容積比の関係から算出す
る方法を準用する.そして,セメントおよび細骨材がその表面に拘束できる水量を足し合わせる
ことで,配合条件からブリーディング水量(自由水量)を算出する手法を構築する.これらの具体的
な検討は 3 章で行う.なお,本研究では,1.4 節で示したように,既往の研究での表記に合わせ
て,予測モデルにより推定したセメントおよび細骨材が拘束できない水量のことを「自由水量」
と表現することにする.
次に,高性能 AE 減水剤がセメントの分散に及ぼす効果を検討し,上記の予測モデルに組み込
む.ブリーディング現象は,セメントおよび細骨材と水との分離現象であると考えられ,単位水
量を多くすればブリーディングは増加する一方,高性能 AE 減水剤を用いて単位水量が低減でき
ればブリーディングは少なくなる.しかし,その添加量が過剰となると逆に材料分離を誘発する
38
第2章
既往の研究
場合もあると考えられる.このため,ブリーディングの予測を行う上では高性能 AE 減水剤の効
果を考慮することが不可欠である.本研究では,水セメント比の水準や高性能 AE 減水剤の添加
の有無によらず,流動性のレベルが等しいペーストでは,ペースト中のセメントの凝集・分散の
程度は等しいと考えることにする.この仮定に基づけば,水セメント比や高性能 AE 減水剤の添
加量が与えられた時点で,セメントの凝集・分散の程度が一意的に求められるため,モルタル中
の自由水量を算出することが可能となる.これらの具体的な検討は 4 章で行う.
上記の検討により,配合条件からモルタルの材料分離(ブリーディング)を評価することが可能と
なる.しかしながら,先述のように流動性のレベルが相違すれば材料分離抵抗性の程度も異なる
ため,配合設計段階で流動性のレベルを考慮することは不可欠である.そこで,5 章においてモ
ルタルの流動性の予測手法について検討する.
モルタルレベルにおける材料分離抵抗性と流動性の検討を終えたのち,コンクリートレベルに
おける材料分離(モルタルと粗骨材との分離)について検討する.先述のように,普通コンクリート
および高流動コンクリートとも,流動性のレベルに応じて単位粗骨材かさ容積を設定しているこ
とから,中流動コンクリートとしても同様の考え方が成立することを検証する.これについては,
6 章で検討する.
上記の検討結果を統合し,材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法を 7
章で提案し,その妥当性について検討する.
39
第2章
既往の研究
2.6 本章のまとめ
本章では,普通コンクリートおよび高流動コンクリートの配合設計法を整理し,材料分離抵抗
性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法の確立に向けて必要となる課題を抽出した.ま
た,配合設計法に関する既往の研究を整理することで,上記の配合設計法に活用できる事項につ
いて検討した.得られた知見を以下に示す.
(1) 現状の配合設計法では,いずれもブリーディングは考慮されておらず,本研究において予測
手法を新たに考案する必要がある.一方で,単位粗骨材かさ容積の設定方法は,いずれも流
動性のレベルに応じて設定しており,本研究でも準用できる可能性が高い.流動性の予測手
法については,現状の配合設計法には記載されておらず,本研究で新たに考案する必要があ
る.
(2) 既往の研究では,セメントの凝集や分散を考慮して材料分離抵抗性や流動性を予測する手法
は十分には確立されていない.そのため,本研究において,水との混合比や高性能 AE 減水剤
の添加の有無により,セメントの凝集・分散の程度が相違し,それに伴いセメントが粒子表
面に拘束できる水量が変化することを表現できるモデルを構築する必要がある.また,凝集・
分散の程度が相違することで流動性が変化することも併せて検討する必要がある.
(3) 一方で,水膜モデルにおいて粉体の凝集を考慮する手法が提案されており,本研究において
準用できる可能性がある.また,細骨材が表面に拘束できる水量は,モルタルの水粉体容積
比と相対フロー面積比の関係を準用して算出できる可能性がある.
40
第2章
既往の研究
第2章の参考文献
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41
第2章
既往の研究
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28) 藤代勝,坂井吾郎,坂田昇,新藤竹文:フレッシュコンクリートの粘性評価手法に関する研
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評価に関する研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,pp.1061-1066,2006.
30) 緑川猛彦,丸山久一,下村匠,桃井清至:粉体特性の定量化手法に基づくペーストの流動性
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31) 藤原浩巳,長滝重義,大即信明,堂園昭人:高流動コンクリートの間隙通過性に関する研究,
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木学会論文集,No.592/V-39,pp.121-129,1998.5
33) 上野敦,国府勝郎,宇治公隆:コンクリートの流動性およびブリーディング性状に及ぼす粉
体材料の影響評価に関する基礎検討,土木学会論文集,No.725/V-58,pp.213-225,2003.2
34) 庄谷征美,杉田修一,阿波稔,中道礼司:鉱物質微粉末の保水性能とその混和によるコンク
リートのブリーディング抑制について,セメント・コンクリート論文集,No.52,pp.368-373,
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ディング率の推定方法に関する研究,セメント・コンクリート論文集,No.54,pp.188-194,
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関する水膜モデルの適用,土木学会論文集 E,Vol.62,No.2,pp.402-415,2006.6
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究,九州大学学位論文,1997.3
42
第2章
既往の研究
40) 三宅淳一,松下博通,取違剛:余剰水膜によるモルタルおよびコンクリートのコンシステン
シーの評価に関する研究,土木学会論文集 E,Vol.62,No.2,pp.306-319,2006.5
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流動性評価に関する水膜モデルの適用,土木学会論文集,No.578/Ⅴ-37,pp.89-98,1997.11
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49) 岸利治,永峯秀則:遠心浮き水量と流動性との規則性に基づくモルタル中の粒子の凝集形態
と摩擦に関する研究,土木学会論文集 E,Vol.62,No.4,pp.866-881,2006.12
50) 大内雅博,日比野誠,菅俣匠,岡村甫:自己充塡コンクリート用高性能減水剤の効果の定量
評価法,コンクリート工学年次論文報告集,Vol.20,No.2,pp.355-360,1998
51) 大内雅博,日比野誠,菅俣匠,岡村甫:自己充塡コンクリート中の粗骨材・モルタル粒子間
相互作用の簡易評価法,コンクリート工学年次論文報告集,Vol.21,No.2,pp.451-456,1999
52) 岡村甫,前川宏一,小澤一雅:ハイパフォーマンスコンクリート,技報堂出版,1993.9
53) 岡村甫,小澤一雅:自己充塡コンクリートの配合設計方法の現状と課題,土木学会論文集,
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の影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.16,No.1,pp.461-466,1994
43
第2章
既往の研究
61) 吉野公,西林新蔵,井上正一,黒田保:コンクリートのレオロジー定数に及ぼす使用材料の
影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.17,No.1,pp.581-586,1995
62) 伊波咲子,赤嶺糸織,山田義智:凝集状態を考慮したセメントペーストの粘度式に関する基
礎的研究,セメント・コンクリート論文集,Vol.66,pp.645-651,2012
63) 赤嶺糸織,伊波咲子,山田義智,細川佳史:凝集や水和によるセメントペーストの粘度変化
に関する基礎的研究,セメント・コンクリート論文集,Vol.66,pp.653-660,2012
64) 山田義智,赤嶺糸織,伊波咲子,浦野真次:フレッシュコンクリートのレオロジー定数推定
に関する基礎的研究,セメント・コンクリート論文集,Vol.66,pp.661-668,2012
44
第3章
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
モルタルにおける自由水量の推定
3.1 はじめに
本章では,材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法を確立するための第
一段階の検討として,配合条件からブリーディングとして浮き上がる水量を算出する物理モデル
を提案することを目的とした.ブリーディングは,セメントや細骨材の粒子表面,もしくはそれ
らの粒子間では拘束できない水が,密度差により上昇する現象と考えられる.そのため,ブリー
ディングとして生じる水は,使用するセメントおよび骨材粒子がその表面に拘束できる水から推
定できると考えられる.そこで,本章では,セメントおよび細骨材がその表面に拘束できる水量
を推定する物理モデルを構築することにした.
なお,1.4 節において示したように,ブリーディングとは,フレッシュコンクリート(モルタル,
ペースト)中において,その構成材料のうち最も密度の小さい水が上方に移動する現象のことであ
る.このため,セメントや細骨材といった固体粒子表面に拘束されない水であっても,粒子間に
存在し続け,コンクリート(モルタル,ペースト)の上面にブリーディングとして浮き上がらない水
もあると考えられる.そこで,本研究では,既往の研究で用いられている用語を参考に,提案す
る物理モデルにおいて推定するセメントおよび細骨材の粒子表面に拘束できる水量を「拘束水量」
,
単位水量から拘束水量を差し引いた水量を「自由水量」と呼称することとした.一方で,検証実
験において実際に測定したコンクリート(モルタル,ペースト)の上面に浮き上がった水量を「ブリ
ーディング水量」と呼称することにした.
セメントなどの粉体粒子がその表面に拘束できる水量を予測するには,前章で示したように,
粉体と水との混合状態から粉体の凝集を考慮し,凝集した粉体の表面積を求める必要がある.粉
体の凝集を考慮する手法は,水膜モデル
1)
が唯一の理論であることから,本研究においても,粉
体の凝集の程度の算出には,水膜モデルにおける考え方を適用することにした.
一方で,細骨材が拘束できる水量は,モルタルの流動性を予測する研究において,セメントペ
ーストおよびモルタルの相対フロー面積比(ペーストもしくはモルタルの変形量を無変形時にお
けるフロー面積(フローコーンの底面積)に対する面積比で表したもの)と水粉体容積比の関係から
算出する方法が提案されている 2).
そこで,本章では,(1)水膜モデルを参考に,水とセメントとの混合比率からセメントの凝集の
程度を算出し,凝集したセメント粒子群の表面積からセメントによる拘束水量を算出するととも
に,(2)モルタルフロー試験により得られる相対フロー面積比と水セメント容積比の関係から細骨
材の拘束水量を算出して,(3)両者を足し合わせることでモルタル中の自由水量を予測するモデル
を提案した.そして,モデルにより推定した自由水量とブリーディング試験により測定したブリ
ーディング水量とを比較し,予測モデルの妥当性について検証した.
45
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
3.2 自由水量の予測モデル
3.2.1
モデル化における考え方
モルタル中の自由水量を推定する物理モデルを構築する上で,以下の(a)~(d)の基本仮定を設け
ることとした.基本仮定の概要を図-3.2.1 に示す.
(a) モルタル中の自由水量(WB)は,配合中の全水量(W)からセメントおよび細骨材表面に拘束され
た水量(WC および WS)を差し引いた水量とする.
WB  W  WC  WS 
(3.1)
(b) セメントの粒子形状は球状とし,その表面は平滑であると仮定する.
(c) セメント粒子は凝集体を形成する.凝集の程度は,セメントと水との混合比率により変化す
る.一方,細骨材は凝集しないと仮定する.
(d) モルタル中の水,セメントおよび細骨材は,その混合比に応じて均等に分散している.そし
て,セメント(凝集体)および細骨材は,粒子径によらず,その表面に一定厚さの水膜を拘束で
きる.水膜の厚さはセメントおよび細骨材の物理的性質が異なれば相違する.
基本仮定(a)について
モルタル中において,水はセメントおよび細骨材表面に拘束される場合と固体粒子間に拘束さ
れる場合があり,これら以外の水がブリーディングとして上面に浮き上がると考えられる.固体
粒子間に拘束される水量は,粉体や骨材の種類,粒子径の大きさ,表面形状および相互の粒子間
距離などに依存し,多様な形態を呈しているものと考えられる.これらを詳細にモデル化するこ
とは困難であることから,本研究では,粒子間に拘束される水量もセメント粒子の表面に拘束さ
れる水量として取り扱うこととした.
基本仮定(b)について
セメントおよび骨材粒子の表面に拘束できる水量は,粒子形状や表面状態などに依存すると考
えられる.セメントペーストを電子顕微鏡で観察した結果によればセメント粒子は角張った形状
のものが顕著であることが示されている
3)
.また,粒子形状を定量化する方法として電子顕微鏡
で粒子形状の 3 軸を測定し,その結果から粒子を楕円体として近似する方法などが提案されてい
る 1).しかしながら,個々のセメント粒子の形状を測定することは煩雑で現実的でない.そこで,
本研究では,セメント粒子の形状を球状として取り扱うことにした.
46
第3章
表面に
拘束される水
モルタルにおける自由水量の推定
表面に
拘束される水
粒子間に
拘束される水
細骨材
粒子
細骨材
粒子
セメント
粒子
セメント粒子
(a)固体粒子間に拘束される水も,セメント粒子の表面に拘束される水として考慮する
(a)固体粒子間に拘束される水も,セメント粒子の表面に
拘束される水として考慮
(b)セメントの粒子形状は,球状と仮定する
(b)セメントの粒子形状は,球状と仮定する
(c)セメント粒子は,凝集体を形成している
(c)セメント粒子は,凝集体を形成している
水
細骨材
粒子
セメント粒子
(d-1)モルタル中の各材料は均等に分散している
水膜厚さ
水膜厚さ
粒子径
粒子径
(d-2)粒子径によらず,水膜厚さは一定とする
(d)粒子径によらず,水膜厚さは一定
図-3.2.1 モルタルの自由水量の予測モデルにおける基本仮定
47
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
基本仮定(c)について
セメントなどの微粒子を水と混合した場合,セメント粒子は完全に分散せず,複数の粒子同士
が凝集した凝集体を形成していることが確認されている
3)
.セメント粒子が凝集体を形成する場
合,セメント粒子が個々の粒子単独で存在する場合に比べセメント粒子全体の表面積の総和は小
さくなる.粒子表面に一定厚さの水が拘束できると考えると,結果としてセメント全体で拘束で
きる水量は少なくなる.そのため,モデル化に際しては,セメントの凝集を考慮することとした.
一方で,細骨材はセメントなどの粉体材料に比べ粒子径が大きいことから,凝集は生じないと考
えることにした.
基本仮定(d)について
モルタル中において,その構成材料である水,セメントおよび細骨材がどのような混合状態を
呈しているかは定かでなく,構成材料の混合比等によっては必ずしも均等な混合状態ではない場
合もあると想定される.しかしながら,本研究で最終的に求めるべき値は,モルタルもしくはコ
ンクリート全体として発生するブリーディング量である.そこで,本研究では,まずは,各材料
が均等な分散状態となっていると仮定して検討を進めることにした.セメントの凝集は,後述す
るように,セメント粒子同士の粒子間距離に大きく依存する.水セメント比が大きい場合,相対
的にセメントの粒子間距離は大きくなるため,セメント粒子は凝集を生じにくくなる.一方,水
セメント比が小さければ,粒子間距離は小さくなり,凝集が生じやすくなると考えられる.そこ
で,本研究では,水とセメントとの混合比により,セメント粒子同士の平均的な粒子間距離が相
違することを考慮することにした.なお,粉体の凝集の程度は,温度条件や練混ぜ方法によって
も相違する可能性がある.そこで,それらの要因が自由水量に及ぼす影響は 3.3 節の実験で検証
することとした.
一方,セメントの表面に拘束もしくは吸着できる水量(水膜厚さ)は,粒子径により相違するとす
る考え方と,粒子径によらず一定であるとする考え方がある.万有引力の法則を想定した場合,
粒子径が大きい(1 粒子の質量が大きい)ほど,引き寄せられる水量は増加すると考えられる.一方,
先述のように,モルタルもしくはペースト中の構成材料が均等に分散していると考えた場合,固
体粒子の周辺に存在する水の厚さは等しくなる.そこで,本研究では,まずは,粒子径によらず
表面に拘束できる水量は一定と考えることにした.なお,粉体の種類や物理的性質が相違すれば,
その表面に拘束できる水膜厚さは変化すると考えられる.そこで,本モデルでは,セメントや細
骨材の種類が異なる場合に水膜厚さが変化すると考えることにした.
本章で提案する予測モデルによるモルタルの自由水量の算定フローを図-3.2.2 に示す.自由水
量は以下の 2 つのステップで算定する.
ステップ 1 では,セメントおよび細骨材が単位表面積当たりに拘束できる水量(セメントは水膜
厚さ,細骨材は拘束水比)を算定する.先述の仮定のように,各固体粒子が表面に拘束できる水量
は,その種類が同じであれば一定と考えられることから,このステップは使用材料が変化するご
とに行う必要がある.
ステップ 2 は,配合設計段階において,モルタル中の自由水量を算定するステップである.ス
テップ 1 で求めたセメントの水膜厚さおよび細骨材の拘束水比に配合条件である材料の単位量を
48
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
乗じることで,各材料が拘束できる水量を求め,それらを足し合わせることで,モルタル全体と
して拘束できる水量を算出する.これと配合における単位水量との差が自由水量の推定値(計算値)
となる.
ステップ1:セメントおよび細骨材が単位表面積当たりに拘束できる水量の算定
(実施頻度:使用材料の種類が変更するたびに実施)
セメントが拘束できる水量(水膜厚さ)
細骨材が拘束できる水量(拘束水比)
試験の種類:セメントペーストのブリーディング試験
試験の種類:ペーストおよびモルタルのフロー試験
与条件:セメントの粒度分布,ブリーディング試験
セメントペーストの水セメント比W/C
(1)完全分散状態でのセメントの平均粒子間距離の算出
(1)水粉体容積Vw/Vcを変化させたペーストフロー試験
相対フロー面積比ГpとVw/Vcの関係から,
セメントの拘束水比βcを算出
(2)ファンデルワールス力による凝集力と粒子の回転慣
性による分散力から,セメントの凝集程度を算出
(3)ブリーディング試験の実施
ブリーディング水量の測定
(2)モルタル中の細骨材容積比Vs/Vmを0.3以下で一定で,
Vw/Vcを変化させたモルタルのフロー試験の実施
相対フロー面積比ГmとVw/Vcの関係,①のβcから,
細骨材が単位表面積当たりに拘束できる水量
(拘束水比:βs)を算出
(4)凝集後のセメントの表面積を算出
ブリーディング水量を除いた水量とセメントの比
率より,セメントが単位表面積当たりに拘束でき
る水量(水膜厚さ:s)を算出
ステップ2:各配合条件におけるモルタルの自由水量の算定
(実施頻度:配合条件が変更するたびに実施)
(適用範囲:コンクリートにおいて単位水量が175kg/m3以下)
試験の種類:なし
与条件:各材料の単位量(水:W,セメント:C,細骨材:S),水セメント比W/C,モルタル中の細骨材容積Vs
(1)細骨材が表面に拘束できる水量WSの算出
WS=βs・Vs・ρs
(2)セメントが表面に拘束できる水量WCの算出
・細骨材に拘束される以外の水量W1とセメントの比率より,完全分散状態におけるセメントの平均粒子間距離を算出
・ファンデルワールス力による凝集力と粒子の回転慣性による分散力より,セメントの凝集程度を算出
・凝集後のセメントの表面積Aggを算出
WC=s・Agg・C
・ステップ1で求めた水膜厚さsを用いて,セメントが表面に拘束できる水量を算出
(3)モルタルの自由水量WBの算定
WB=W -(WC+WS )
図-3.2.2 予測モデルにおける自由水量の算定フロー
49
第3章
3.2.2
モルタルにおける自由水量の推定
凝集を考慮したセメントの水膜厚さの算定
セメントの水膜厚さは,(a)任意の水セメント比のセメントペーストを製造しブリーディング水
量を測定して,それを単位水量から差し引いてセメントが拘束できる水量を求めるとともに,(b)
後述するセメントの凝集を考慮した上で,凝集後のセメントの表面積の総和を求め,両者の比率
から算出する.算出方法のフローを図-3.2.2 に示すとともに,その理由を以下に述べる.
セメントペーストのような液相に粒子が分散した状態における,粒子の分散・凝集挙動は,構
成している 2 粒子間に働く相互作用力の総和で表され,主要な相互作用力には静電気相互作用や
ファンデルワールス相互作用があるとされている 4).一方,文献
3),5)
によれば,セメントは接水
直後のごく初期に著しい水和反応を生じた後,数時間程度までは水和反応がほぼ休止した化学的
に不活性な状態となるため,粉体の凝集・分散挙動は主に粉体の物理的性質に影響されることが
示されている.
また,緑川ら
1)
は,粉体の分散・凝集挙動を,静力学的な相互作用力として粒子間に働くファ
ンデルワールス力による凝集力と,動力学的な相互作用力として粒子の回転慣性力による分散力
を考慮した水膜モデルを用いることで,粉体の凝集を考慮したうえで粉体粒子表面に拘束できる
水量を算出する方法を提案している.そして,この手法により,粉体の種類によらず,ペースト
性状と粒子周りの水膜厚さが一意的に対応することを確認している.そこで,本研究でも,粉体
粒子の分散・凝集挙動として,ファンデルワールス力による凝集力と粒子の回転慣性力による分
散力を用いることとした.
なお,粒子の凝集は,粒子径の異なる粒子同士においても生じるとともに,一度形成された凝
集体に再び粒子が凝集する二次凝集も生じると考えられるが,これらの凝集過程には不明な点も
多く,また確率論的な考慮が必要となることから,凝集は同一粒子径同士でおいてのみ生じると
仮定し,二次凝集は考慮しないこととした.
(1)
ファンデルワールス力による凝集力
粒子形状を球状と仮定した場合,同一粒子径の 2 粒子間に働くファンデルワールス力は以下の
式で表される 1).

FS  H  DP  / 24  Z C 
2

(3.2)
ここに,FS :ファンデルワールス力(N)
H :Hamaker 定数(J=N・m)
DP :粒子径(m)
ZC :セメントの平均粒子間距離(m)
なお,Hamaker 定数は,文献 5)を参考に 1.68×10-21(J)とした.式(3.2)によれば,凝集のしやすさ
は,セメントの粒子間距離および粒子径に依存することが分かる.なお,本研究では,式中の粒
子間距離をセメント粒子が完全に分散した状態における平均的な粒子間距離として考えることと
した.水セメント比が相違すると,セメントペースト中のセメントと水との体積比が変化し, 相
50
第3章
粒子間距離:ZC 大きい
モルタルにおける自由水量の推定
粒子間距離:ZC 小さい
水
水
セメント粒子
セメント粒子
水セメント比が大きい場合
(セメント容積の割合が少ない)
水セメント比が小さい場合
(セメント容積の割合が多い)
凝集しにくい
凝集しやすい
図-3.2.3 セメント粒子の粒子間距離の概念図
対的にセメントの粒子間距離が異なることを考慮するためである(図-3.2.3).
完全分散状態におけるセメントの平均粒子間距離の算出手順は以下のとおりである.まず,レ
ーザ散乱回折式粒度分布測定装置によりセメントの粒度分布を測定する.得られた粒度分布はセ
メント粒子が完全に分散した状態であると仮定する.粒径ごとの粒子数および表面積の総和を算
出し,全ての粒径を足し合わせたセメントの全表面積と配合条件である水体積の比から,完全分
散状態における平均粒子間距離を求める.
なお,本研究では,セメント粒子が均等に分散した状態において,セメント粒子はその粒子表
面にある一定厚さの水膜を有すると考えることから,隣り合うセメント粒子の距離(粒子間距離)
は,水膜厚さの 2 倍となると定義することにした.すなわち,セメント粒子の平均粒子間距離は,
水体積をセメントの全表面積で除して得られる水膜厚さの 2 倍となる.
Z C  2  VW / AC 
(3.3)
AC  i 1 AC i 
(3.4)
2

  DP i   

AC i     
   ni 

  4  

(3.5)
n
ここに,VW :単位水容積(m3)
AC :完全分散状態におけるセメント粒子の表面積の総和(m2)
AC(i):粒径ごとのセメント粒子の表面積(m2)
n(i) :粒径ごとのセメント粒子数(個)
51
第3章
(2)
モルタルにおける自由水量の推定
粒子の回転慣性による分散力
凝集している粒子群はペーストの変形や撹拌により動力学的な作用を受けると考えられる.そ
こで,粒子自体の質量による影響により,粒子が回転し分散する傾向を考慮するため,粒子の回
転慣性を指標として分散力を以下の式で考慮することにする 1).
Fb    DP / 2  
3
(3.6)
ここに,Fb :回転慣性による分散力(N)
ρ :セメントの密度(g/m3)
(3)
凝集後のセメントの表面積および水膜厚さの算出
凝集力と分散力の大小関係によって,粒子の凝集がどの程度生じるかについては不明な点が多
く,今後詳細な検討が必要と考えられるが,本モデルでは,緑川ら
1)
の研究と同様に,ファンデ
ルワールス力による凝集力が,回転慣性による分散力を上回る場合に必ず粒子が凝集すると仮定
することにした.
この場合,粒子の凝集個数 G は,ファンデルワールス力による凝集力と回転慣性の分散力の比
から求めることができる.なお,算出された凝集個数が 1 以下の場合には凝集は生じず,式(3.7)
により得られた値は,小数点以下第一位を四捨五入した整数として取り扱った.

G  FS / Fb  H / 3  Z C  DP  
2
2

(3.7)
凝集した凝集体は,個々の粒子の体積
の総和と等しい体積を有すると仮定する
図-3.2.4 凝集後の粒子体積に関する仮定
図-3.2.4 に示すように,凝集したセメント粒子群が,個々の粒子体積の総和と等しい体積を有
する球状体であると仮定するとき,G 個凝集したセメント粒子群の体積と同じ体積を有する 1 個
の粒子の直径 Df,および直径 Df の粒径における全表面積 Af(i)は,以下の式により求められる.
D f  3 DP  G
3
(3.8)
Af i   4    D f / 2
2
52
(3.9)
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
以上の計算を粒径ごとに行い,それらを足し合わせることで,凝集後のセメントの表面積の総
和を求めることができる.一方で,任意の水セメント比のセメントペーストを製造しブリーディ
ング試験を行い,ブリーディング水量を求める.単位水量からブリーディング水量を差し引いた
水量が,粉体粒子に拘束される水量であるから,両者の比からセメントの水膜厚さが算出できる.
A f  i 1 A f i 
(3.10)
WRC  WPT  WBP
(3.11)
s  Z f / 2  WRC / Af  CPT 
(3.12)
n
ここに,
Af :凝集後のセメントの表面積の総和(m2/kg)
WPT:ブリーディング試験を行ったペーストの単位水量(kg/m3 もしくは m3/m3)
CPT:ブリーディング試験を行ったセメントペーストの単位セメント量(kg/m3)
WBP:ブリーディング試験により得られたブリーディング水量(kg/m3)
WRC:セメントが拘束できた水量(kg/m3)
Z f :凝集後のセメントの粒子間距離(m)
s:水膜厚さ(m)
53
第3章
3.2.3
モルタルにおける自由水量の推定
細骨材の拘束水比の算出
細骨材の拘束水比は,水粉体容積を変化させたセメントペーストおよびモルタルを製造してフ
ロー試験を行い,相対フロー面積比と水セメント容積比の関係から算出する(図-3.2.2).算出方
法およびその理由を以下に示す.
細骨材が粒子表面に拘束できる水量は,粒子形状,表面の状態および粒子径などにより相違す
ると考えられる.各種の細骨材の表面状態の顕微鏡写真を写真-3.2.1 に示す.細骨材の種類によ
り,粒子形状やその表面状態が異なっている.また,細骨材によっては粒子表面に極めて細かい
粉末が付着しており,付着の程度も異なっている.これらの粉末も当然,水を拘束すると考えら
れるが,この付着状況を定量的に把握しモデル化することは困難である.一方,粒子形状を定量
化する試みも行われているが,その作業は煩雑であり,日常的に適用することは容易でない 6).
そこで,本研究では,モルタルの流動性を予測する研究において既に明らかにされているペー
ストおよびモルタルのフロー試験から細骨材の拘束水量を算出する方法を適用することにした
2),
7)
.なお,これらの研究により得られる拘束水量とは流動に寄与しない水量であり,本研究で対象
とするブリーディングに寄与しない水量とは必ずしも一致しない可能性がある.しかしながら,
モルタルが流動しない限界の状態において細骨材が拘束している水量は,細骨材粒子の表面に拘
束できる限界の水量であると考えられ,本研究で求めるべき細骨材の拘束できる水量ときわめて
近いものと考えられることから,本手法を用いることにした.次ページ以降に,細骨材の拘束水
比の算出手順を示す.
写真-3.2.1 細骨材の顕微鏡写真
54
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
水セメント容積比(VW/VP)を変化させたセメントペーストの相対フロー面積比と水セメント容積
比との間には,粉体種類によらず,直線関係が成立する
2),7)
.また,モルタル中の細骨材容積比
(VS/Vm)を一定とした場合,モルタルの相対フロー面積比と水セメント容積比の間にも直線関係が
成立する
2)
.なお,ここでいうフロー値とは,フローテーブルにおける落下運動を与えない値で
ある.
VW / VP  E p   p   P
(3.13)
 P  FP / 1002  1
(3.14)
VW / VP  Em  m   m
(3.15)
m  Fm / 1002  1
(3.16)
ここに,EP :ペーストの変形係数
ГP :ペーストの相対フロー面積比
βP :ペーストの拘束水比
Em :モルタルの変形係数
Гm :モルタルの相対フロー面積比
Βm :モルタルの拘束水比
また,細骨材モルタル容積比が 0.3 程度以下の場合,ペーストの変形係数とモルタルの変形係
数は等しいことが確認されている 8).そのため,図-3.2.5 に示すように,ペーストにおける近似
直線の切片の水粉体容積比と,モルタルの近似直線の切片の水粉体容積比の差異が,細骨材の拘
束できる水量に関係する値を表すことになり,細骨材の拘束水比は最終的に式(3.20)で求められる.
ペーストの拘束水比(βP)はセメントに拘束される水容積(VWP)とセメント容積(VP)との比であり,
モルタルの拘束水比(βm)は,セメントに拘束される水容積(VWP)と細骨材に拘束される水容積(VWS)
の和とセメント容積(VP)との比であるから,
 P  VWP / VP
(3.17)
 m  VWP  VWS  / VP
(3.18)
式(3.17)と式(3.18)を変形すれば式(3.19)が得られる.細骨材の拘束水比(βS)は,VWS と細骨材容積
(VS)との比であるから,式(3.20)が得られる.
VWS / VP   m   P 
55
(3.19)
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
 S  VWS / VS  VWS / VP   VP / VS 
  m   P   VP / VS 
(3.20)
ただし,式(3.20)中の VP は拘束水比の状態におけるモルタル中に占めるセメント容積である.
なお,モルタル中の細骨材容積比が 0.3 程度以上となると,モルタルの近似直線の傾きが変化
する理由は,細骨材が噛み合う影響が顕著になるためと考えられている.本研究で求めるべき細
骨材の拘束できる水量は,噛み合いによる影響を考慮しないものであるから,細骨材の拘束水比
を求める際には,モルタル中の細骨材容積比が 0.3 以下のモルタルで試験を行う必要がある.
モルタルの拘束水比(βm)
水粉体容積比
(Vw/Vp)
モルタルの
変形係数(Em)
モルタル
(s/m一定)
平行移動
細骨材の拘束
する水の関数
ペースト
ペーストの変形係数(Ep)
ペーストの
拘束水比(βp)
仮定 Em=Ep
(s/m<0.3)
ペーストの相対フロー面積比(Гp)
モルタルの相対フロー面積比(Гm)
図-3.2.5 相対フロー面積比と水粉体容積比の関係概念図
56
第3章
3.2.4
モルタルにおける自由水量の推定
モルタルの自由水量の算定
モルタル中の自由水量は,上記により求めたセメントおよび細骨材が単位表面積当たりに拘束
できる水量を用い,以下の手順で算出できる.
細骨材の拘束水量は,配合条件として与えられるモルタル中の単位細骨材容積に前節で求めた
細骨材の拘束水比を乗じることで算出できる.なお,水の密度は 1.0g/cm3 として取り扱っている.
WS   S  VS
(3.21)
ここに,WS :細骨材の拘束水量(kg/m3)
VS :単位細骨材容積(L/m3)
セメントの拘束水量は,以下の手順で算出する.まず,単位水量(W)から細骨材の拘束水量を差
し引いた水量(W1)とセメントの比率から,完全分散状態におけるセメントの平均粒子間距離を求
める.次に,ファンデルワールス力による凝集力と粒子の回転慣性による分散力から凝集後のセ
メントの表面積を算出する.セメントの拘束水量は,凝集後のセメントの単位表面積に単位セメ
ント量(C)および水膜厚さを乗じることで算出できる.
なお,実際に,セメント,細骨材および水を練り混ぜた際には,水はセメントと細骨材にほぼ
同時に拘束されていると考えられる.また,仮に,セメントによる拘束力が細骨材による拘束力
より大きいと考えた場合には,セメントの拘束水量を単位水量から差し引いた後に,細骨材の拘
束水量を算出する手順の方が妥当であると考えることもできる.しかしながら,本研究は,セメ
ントが拘束できる水量は凝集の程度により大きく異なり,凝集の程度はセメント粒子の粒子間距
離に依存するという考えに基づいている.セメントの凝集を考慮するには,細骨材に拘束される
水量を差し引いた上で,残された水量とセメントとの比率を求める必要があることから,始めに
細骨材により拘束される水量を求め,その後でセメントにより拘束される水量を求める手順とし
た.
W1  W  WS
(3.22)
WC  s  C  Aff
(3.23)
ここに,Aff :水量 W1 とセメント量 C との比率により求めた凝集後のセメント表面積(m2/kg)
WC :セメントの拘束水量(kg/m3)
モルタル中の自由水量は,単位水量からセメントおよび細骨材の拘束水量を単位水量から差し
引くことで算出できる(式(3.1)参照).
57
第3章
3.3
モルタルにおける自由水量の推定
検証実験
本章で提案するモルタル中の自由水量の予測モデルの妥当性について実験により検証した.ま
ず,セメントの水膜厚さおよび細骨材の拘束水比を前節に示す手順により求めた.次に,使用材
料および配合条件を種々に変化させたモルタルのブリーディング試験を実施して,実際にセメン
トおよび細骨材が拘束できた水量の実測値を測定するとともに,予測モデルに従いセメントの水
膜厚さおよび細骨材の拘束水比から算出したセメントおよび細骨材が拘束できた水量の計算値を
求め,両者を比較した.
3.3.1
実験概要
実験に用いた材料の概要を表-3.3.1 に示す.また,レーザ散乱回折式粒度分布測定装置により
測定した 2 種類のセメント,石灰石微粉末およびフライアッシュの粒度分布曲線を図-3.3.1 に,
細骨材の粒度分布を図-3.3.2 に示す.
ペーストおよびモルタルの練混ぜは,JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準じて行った.
練混ぜ時間も JIS に準じて 4 分間(休止時間の 90 秒間を含む)とした.モルタルの練混ぜ方法の概
要を以下に示す.なお,実験は 20±2℃に制御された室内で行った.
(a) 水およびセメントを投入して 30 秒間低速(自転速度 140±5 回転/分)で練り混ぜた後,低速回
転のまま次の 30 秒の間に細骨材を投入する.
(b) 細骨材の投入後,高速回転(自転速度 285±5 回転/分)に切り替えて 30 秒間練り混ぜる.
(c) 90 秒間練混ぜを休止して,かき落としを行う.
(d) 休止後,高速回転で 60 秒間練り混ぜる.
なお,ペーストの製造は,細骨材を投入しない以外は,同じ方法で練り混ぜた.後述する練混
ぜ時間の影響を検討する際は,上記の(a)~(c)の手順は同じとして,(d)における練混ぜ時間を,0
秒,180 秒(3 分)および 540 秒(9 分)に変化させた.
ペーストおよびモルタルの製造量は 2L とした.ペーストおよびモルタルの製造後,フロー試験
およびブリーディング試験を行った.ブリーディング試験は,JSCE-F522「プレパックドコンクリ
ートの注入モルタルのブリーディング率および膨張率試験方法(ポリエチレン袋方法)」に準じて行
い,3 時間後のブリーディング率を測定し,配合条件からペーストもしくはモルタルにおけるブ
リーディング水量を算出した.
ブリーディング率としては,最終ブリーディング率を採用する方が妥当であるとの考え方もあ
るが,配合条件や混和剤の使用量によって凝結時間が相違すると,その差異によって,ブリーデ
ィング水量が変化する可能性が考えられる.本研究では,均質に練り混ぜられたモルタル中のセ
メントおよび細骨材の粒子表面に拘束できる水量からブリーディング水量を予測することを主眼
としているため,セメントの水和反応速度などの化学的要因が影響する時間的なファクターを取
り除く方が望ましいと考え,一定時間(3 時間後)におけるブリーディング率を採用することにした.
58
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
このため,本実験により得られるブリーディング率は,普遍的な値(最終的に得られるブリーデ
ィングの最大値)ではない可能性もある.しかしながら,コンクリート標準示方書【施工編】では,
「練上りから 2 時間以内に打込みを完了すること」と定めている.つまり,コンクリートの打込
み時の材料分離抵抗性を判断する観点からは,3 時間後のブリーディング率を用いることは妥当
であると考えられる.
表-3.3.1 使用材料の概要
種類
記号
物理的性質
C1
普通ポルトランドセメント,密度3.16g/cm3 ,比表面積3370cm2 /g
C2
高炉セメントB種,密度3.04g/cm3 ,比表面積3800cm2 /g
LS
密度2.72g/cm3 ,比表面積2870cm2 /g
セメント
石灰石微粉末
フライアッシュ
水
細骨材
混和剤
FA 密度2.36g/cm3 ,比表面積4700cm2 /g
W
水道水
S1
木更津産陸砂,表乾密度2.63g/cm3 ,吸水率1.63%,粗粒率2.62,実積率68.1%
S2
福岡市西浦産海砂,表乾密度2.56g/cm3 ,吸水率1.50%,粗粒率2.24,実積率65.5%
S3
富士宮市上稲子産砕砂,表乾密度2.63g/cm3 ,吸水率1.99%,粗粒率2.63,実積率66.1%
SP
高性能AE減水剤(ポリカルボン酸系)
10
頻度(%)
8
普通セメント
高炉セメント
石灰石微粉末
フライアッシュ
6
4
2
0
0.01
0.1
1
10
粒子径(μm)
100
1000
100
累積百分率(%)
80
普通セメント
高炉セメント
石灰石微粉末
フライアッシュ
60
40
20
0
0.01
0.1
1
10
100
1000
粒子径(μ m)
図-3.3.1 実験に用いた粉体の粒度分布(上:粒径ごとの頻度,下:累積百分率)
59
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
ふるいの通過質量(%)
100
80
60
40
陸砂S1
海砂S2
砕砂S3
20
0
0.15
0.3
0.6
1.2
2.5
ふるいの呼び寸法(mm)
5
図-3.3.2 実験に用いた細骨材の粒度分布
60
10
第3章
3.3.2
(1)
モルタルにおける自由水量の推定
粉体の水膜厚さの算出方法の検証
水粉体比が粉体の凝集に及ぼす影響
粉体に 2 種類のセメント,石灰石微粉末およびフライアッシュを用い,水粉体比を 25~50%の
範囲で変化させたペーストを製造し,フロー試験およびブリーディング試験を行った.ペースト
の配合と各試験結果,ならびに凝集を考慮しない場合と前節の考え方に基づき粉体の凝集を考慮
した場合の粉体の表面積や表面に拘束できる水膜厚さ等の計算結果を表-3.3.2 に示す.
表-3.3.2 各種粉体を用いたペーストの試験結果と凝集の考慮の有無による計算結果
試験結果
単位量
No.
粉体
種類
W/P
(%)
(kg/m3 )
計算結果
ブリー
ディン
フロー
グ
(mm)
水量
粉体の
単位表面積
粉体の
表面積の総和
(cm2 /g)
(m2 /m3 )
(kg/m3 )
凝集
凝集
未考慮 考慮
粒子周りの
水膜厚さ
(μm)
平均
粒子間距離
(μm)
凝集
凝集
未考慮 考慮
凝集
凝集
未考慮 考慮
凝集
未考慮
凝集
考慮
384
703,642
67,841
0.6
6.5
1.3
13.0
3,986
434
646,570
70,448
0.7
6.9
1.5
13.8
10.7
3,986
481
598,062
72,123
0.9
7.1
1.8
14.6
186
25.2
3,986
525
556,325
73,224
1.0
7.3
2.0
15.2
1305
221
45.6
3,986
566
520,033
73,862
1.0
7.3
2.3
15.9
612
1225
247
62.3
3,986
606
488,186
74,179
1.1
7.4
2.5
16.5
25
432
1727
104
0.0
5,074
408
876,418
70,483
0.5
6.1
1.0
12.3
30
477
1590
110
2.9
5,074
461
806,745
73,238
0.6
6.5
1.2
13.0
35
516
1473
123
8.5
5,074
511
747,333
75,231
0.7
6.7
1.4
13.7
40
549
1372
165
15.0
5,074
558
696,072
76,568
0.8
7.0
1.6
14.3
11
45
578
1284
193
27.4
5,074
604
651,392
77,493
0.8
7.1
1.8
14.9
12
50
603
1206
227
39.0
5,074
647
612,102
78,086
0.9
7.2
2.0
15.4
13
25
405
1619
109
11.1
5,290
422
856,431
68,342
0.5
5.8
0.9
11.8
14
30
449
1498
130
23.8
5,290
476
792,293
71,307
0.5
6.0
1.1
12.6
35
488
1393
191
36.4
5,290
528
737,092
73,574
0.6
6.1
1.3
13.3
40
521
1303
244
57.3
5,290
576
689,082
75,089
0.7
6.2
1.5
13.9
17
45
550
1223
293
84.7
5,290
623
646,944
76,214
0.7
6.1
1.7
14.4
18
50
576
1153
303
106.7
5,290
668
609,663
77,005
0.8
6.1
1.9
15.0
19
25
371
1484
101
0.0
5,810
476
862,344
70,704
0.4
5.2
0.861
10.5
20
30
415
1382
107
1.4
5,810
538
802,768
74,375
0.5
5.6
1.033
11.1
35
452
1292
151
4.8
5,810
596
750,891
77,024
0.6
5.8
1.205
11.7
40
486
1214
214
11.0
5,810
652
705,312
79,144
0.7
6.0
1.377
12.3
23
45
515
1145
264
17.0
5,810
704
664,950
80,615
0.7
6.2
1.549
12.8
24
50
541
1083
302
21.7
5,810
755
628,957
81,752
0.8
6.4
1.721
13.2
W
P
25
441
1765
105
0.2
3,986
30
487
1622
111
1.8
35
525
1500
138
40
558
1396
45
587
6
50
7
1
2
3
4
5
普通
ポルト
ランド
セメン
ト
8
9
10
15
16
21
22
高炉
セメン
ト
B種
石灰石
微粉末
フライ
アッ
シュ
61
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
各種粉体を用いたペーストのフローおよびブリーディング試験結果を図-3.3.3 および図-
3.3.4 に示す.粉体の種類によらず,水粉体比の増大に伴いフロー値およびブリーディング水量は
大きくなることがわかる.一方,同一の水粉体比の場合でも,粉体の種類によりフロー値やブリ
ーディング水量は相違している.粉体の種類により,保水性が異なるためと考えられる.3.2.1 節
で仮定したように,粉体の種類により表面に拘束できる水量が相違することを示す結果と考えら
れる.
ペーストのフロー値(mm)
350
普通セメント
高炉セメント
石灰石微粉末
フライアッシュ
300
250
200
150
100
20
25
30
35
40
45
水粉体比(%)
50
55
図-3.3.3 各種粉体を用いたペーストのフロー試験結果
ブリーディング水量(kg/m3)
140
普通セメント
高炉セメント
石灰石微粉末
フライアッシュ
120
100
80
60
40
20
0
20
25
30
35
40
45
水粉体比(%)
50
55
図-3.3.4 各種粉体を用いたペーストのブリーディング試験結果
62
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
一方で,3.2 節で示した考え方に基づき,完全分散状態における各粉体の水粉体比ごとの平均粒
子間距離を算出した結果を図-3.3.5 に示す.水粉体比が大きくなるに従い,平均粒子間距離が直
線的に大きくなることがわかる.
さらに,ペーストのブリーディング試験結果により得られたブリーディング水量を単位水量か
ら差し引いた水量を粉体の拘束水量とし,各粉体の粒度分布から得られた粉体の表面積の総和と
の関係を図-3.3.6 に示す.粉体の種類によらず,単位表面積の総和が大きくなる(水粉体比が小
さくなる,単位粉体量が多くなる)に従い,拘束できる水量が少なくなる結果となっている.実現
象では,単位粉体量を多くするほど,拘束できる水量は当然増加することから,図-3.3.5 の結果
と矛盾する.このことは,前節で仮定したように,粉体は完全に分散した状態では存在せず,い
くつかの粒子同士が凝集した凝集体を形成していることを示すものと考えられる(基本仮定(c)の
完全分散状態での平均粒子間距離(μ m)
妥当性の検証)
.
3.0
2.5
凝集を考慮しない場合
(粒子形状は球状と仮定)
2.0
1.5
1.0
普通セメント
高炉セメント
石灰石微粉末
フライアッシュ
0.5
0.0
20
25
30
35
40
45
水粉体比(%)
50
55
拘束できた水量の実測値(kg/m 3)
図-3.3.5 各粉体の水粉体比ごとの完全分散状態における平均粒子間距離の算出結果
600
550
500
450
水粉体比25~50%
400
350
300
4.0
普通セメント
高炉セメント
石灰石微粉末
フライアッシュ
凝集を考慮しない場合
(粒子形状は球状と仮定)
5.0
6.0
7.0
8.0
粉体の全表面積(×105 m2/m3)
9.0
図-3.3.6 完全分散状態として算出した粉体の全表面積と拘束水量の実測値の関係
63
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
3.2.2 節で示したファンデルワールス力による凝集力と回転慣性力による分散力の関係から凝
集を考慮した.一例として,各粉体における凝集前(完全分散状態)と水粉体比が 25%の場合の凝
集後の粒度分布を図-3.3.7 に示す.いずれの粉体も粒子径の小さい粒子ほど凝集が生じやすいこ
とがわかる.また,水粉体比が同じでも,粉体の種類により凝集の程度は相違している.式(3.2)
に示すように,凝集のしやすさは,凝集前の粒子径と粒子間距離に強く依存する.本研究で用い
た普通ポルトランドセメントは,他の 3 種類の粉体に比べ粒子径の大きな粉体から構成されてい
る(図-3.3.1).このため,凝集を考慮した後の粒度分布の変化が比較的小さく算出されていると
推測される.また,石灰石微粉末やフライアッシュは,各種のセメントに比べ密度が小さく,図
-3.3.4 に示すように,同一の水粉体比でも平均粒子間距離が小さくなるため,より凝集が生じや
すい(凝集後の粒度分布がより粒子径の大きい側にシフトしている)結果が得られたものと考えら
れる.
100
普通セメント 凝集前
普通セメント 凝集後W/P25%
高炉セメント 凝集前
高炉セメント 凝集後W/P25%
累積百分率(%)
80
60
40
20
0
0.01
0.1
1
10
粒子径(μ m)
100
1000
(a)普通ポルトランドセメントと高炉セメント B 種
100
累積百分率(%)
80
石灰石微粉末 凝集前
石灰石微粉末 凝集後W/P25%
フライアッシュ 凝集前
フライアッシュ 凝集後W/P25%
60
40
20
0
0.01
0.1
1
10
100
粒子径(μ m)
(b)石灰石微粉末とフライアッシュ
1000
図-3.3.7 凝集前(完全に分散した状態)と凝集を考慮した後の粉体の粒度分布
64
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
さらに,いずれの粉体も粒子径が概ね 50μm 以上の領域では凝集前後の変化は小さく,この程
度の粒子径では,凝集は生じにくいものと推測される.本研究では,細骨材は粉体に比べ粒子径
が大きいため凝集は生じないと仮定しているが,細骨材の粒子径は大半が 150μm 以上であり,そ
れを下回る微粒分量も細骨材の数%と少ないことを踏まえると,この仮定は妥当であると考えら
れる(基本仮定(c)の妥当性の検証)
.
凝集を考慮した後のセメントの全表面積とブリーディング試験により得られた粉体の拘束水量
の実測値との関係を図-3.3.8 に示す.図-3.3.6 で示した凝集を考慮しない場合とは異なり,い
ずれの粉体においても,凝集後の粉体の表面積の総和が増加するに従い拘束水量も増加する結果
が得られた.また,粉体の種類により傾きは異なるものの,両者は相関係数の高い直線関係にあ
る.本実験では,粒度分布の異なる 4 種類の粉体を用いており,凝集後においても図-3.3.7 に示
すように様々な粒子径の凝集体が混在しているが,この粒度分布によらず,
「粉体の表面積の総和」
によって拘束水量が表現できるということは,
「粉体の粒子径によらずその表面に拘束できる水膜
厚さは一定である」とした仮定が妥当であることを裏付ける結果と考えられる(基本仮定(d)の妥
当性の検証)
.また,石灰石微粉末やフライアッシュのような不活性な粉体でも,セメントと同様
の結果が得られたことから,粉体の凝集挙動は,主に粉体の物理的要因に影響されているものと
推測される.
また,本研究では,実用上を考慮して粉体の粒子径を球状と仮定している.実際には粉体は複
雑な形状を呈していることが明らかにされており,厳密な意味で図-3.3.6 や図-3.3.8 の横軸に
示す粉体の表面積の総和の値は普遍的な値ではないと考えられる.しかしながら,上述のように,
粉体が拘束できる水量と凝集を考慮後の粉体の表面積の総和は高い直線関係にあること,フライ
アッシュのような球形の粉体,およびその他の球形ではない粉体においても,上記の直線関係が
成立していることを踏まえると,実用的には球状として取り扱っても差し支えないと考えられる
(基本仮定(b)の妥当性の検証)
.なお,粉体により両者の近似直線の傾きが相違しているのは,
粉体固有の物理的性質により粉体表面に拘束できる水量が相違することに加え,粒子形状が粉体
拘束できた水量の実測値WRC (kg/m3)
の種類により相違していることによるものと考えられる.
600
550
凝集を考慮した場合
(粒子形状は球状と仮定)
水粉体比25~50%
500
450
400
350
普通セメント
高炉セメント
石灰石微粉末
フライアッシュ
粉体種類
近似直線
相関係数
普通セメント
W RC=1679×A f-697
0.999
高炉セメント
W RC=1727×A f-788
0.999
石灰石微粉末
W RC=914×A f-227
0.994
フライアッシュ
W RC=1422×A f-646
0.998
300
0.60
0.65
0.70
0.75
0.80
0.85
5
2
凝集後の粉体の表面積の総和Af (×10 m /m3)
図-3.3.8 凝集を考慮した後の粉体の全表面積と拘束水量の実測値の関係
65
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
拘束水量の実測値を凝集後の粉体の全表面積で除して水膜厚さを算出した.結果を図-3.3.9 に
示す.粉体の種類により,拘束できる水膜厚さは相違するが,その値は水と粉体の混合比によら
ずほぼ一定(普通セメントは平均 7.2μm,高炉セメントは 6.8μm,石灰石微粉末は 6.1μm,フライ
アッシュは 6.0μm)であることがわかる.このことは,粉体が表面に拘束できる水膜の厚さは,粉
体の種類等に依存した粉体固有の物理的性質であることを示していると考えられる.そのため,
密度の測定などと同様に,予め粉体の拘束できる水膜厚さを把握しておけば,配合条件が与えら
れた時点で,粉体の拘束水量が推定できると考えられる.
拘束できる水膜厚さ(μ m)
20
普通セメント
高炉セメント
石灰石微粉末
フライアッシュ
15
凝集を考慮
(粒子表面の水膜厚さ一定)
10
5
0
20
25
30
35
40
45
水粉体比(%)
50
55
図-3.3.9 凝集を考慮した粉体の表面積より算出した水粉体比ごとの水膜厚さ
以上の検討結果を踏まえると,3.2 節でモデル化に際して設定した基本仮定(b)~(d)は,概ね妥
当であると考えられ,水と粉体との混合比を与条件として,平均的な粒子間距離に基づいて凝集
を考慮し,その結果から凝集後の粉体の表面積の総和を求めることで,粉体がその表面に拘束で
きる水量を算出できると考えられる.
66
第3章
(2)
モルタルにおける自由水量の推定
温度条件の影響
温度条件が変化した場合においても,前節で提案した粉体の凝集の程度に関する考え方が適用
できることを検討するため,ペースト温度を 10℃,20℃および 30℃に変化させたフロー試験およ
びブリーディング試験を行った.なお,粉体には普通ポルトランドセメントを用いた.試験結果
を図-3.3.10 および図-3.3.11 に示す.
ペーストのフロー値は,ペースト温度が低いほど大きく,高いほど小さくなる傾向が示された.
また,ブリーディング水量は,温度が低い場合に多く,高い場合に少なくなる傾向が得られた.
いずれも,これまでに経験的に知られる結果と同様の結果であった.温度が高いほど,水の粘性
が増加することなどが要因として考えられる.しかしながら,温度条件を 20℃として異なる粉体
を用いた場合の試験結果(図-3.3.3,図-3.3.4)と比較すると,いずれもその差異は小さく,今回
の温度条件の範囲の場合では,温度の変化がブリーディングに及ぼす影響は比較的小さいと考え
られる.
350
ペーストのフロー値(mm)
普通ポルトランドセメント
300
250
温度条件10℃
温度条件20℃
温度条件30℃
200
150
100
20
25
30
35
40
45
50
55
水セメント比(%)
図-3.3.10 温度条件がペーストのフロー値に及ぼす影響
ブリーディング水量(kg/m 3)
140
120
100
普通ポルトランドセメント
温度条件10℃
温度条件20℃
温度条件30℃
80
60
40
20
0
20
25
30
35
40
45
50
55
水セメント比(%)
図-3.3.11 温度条件がペーストのブリーディング水量に及ぼす影響
67
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
前節で示した方法に従い凝集を考慮したセメントの全表面積を算出した.そして,得られたセ
メントの全表面積とブリーディング試験により得られたブリーディング水量を単位水量から差し
引いて求めたセメントの拘束水量の関係を図-3.3.12 に示す.また,拘束水量の実測値を凝集後
のセメントの全表面積で除して水膜厚さを算出した結果を図-3.3.13 に示す.
温度条件によらず,凝集後のセメントの全表面積と拘束できた水量は,直線関係にあり,その
傾きも同様であることがわかる.また,算出される水膜厚さも温度条件によらずほぼ等しく,水
セメント比による変化もほとんど生じていない.
これらの結果を踏まえると,セメントの凝集の程度は,前節で提案したように,セメントと水
との混合比から求めた平均粒子間距離が支配的な要因であり,温度条件が 10~30℃の範囲内にお
拘束できた水量の実測値(kg/m3)
いて変化しても,その影響をほとんど受けないとして取り扱って良いものと考えられる.
600
普通ポルトランドセメント
550
温度条件10℃
温度条件20℃
温度条件30℃
500
450
400
350
300
0.60
0.65
0.70
0.75
0.80
凝集後のセメントの全表面積(×105 m2/m3)
図-3.3.12 温度条件が変化した場合の凝集後のセメントの全表面積と拘束水量の関係
20
拘束できる水膜厚さ(μ m)
普通ポルトランドセメント
15
凝集を考慮
(水膜厚さ一定)
温度条件10℃
温度条件20℃
温度条件30℃
10
5
0
20
25
30
35
40
45
水セメント比(%)
50
55
図-3.3.13 温度条件が変化した場合におけるセメントが表面に拘束できる水膜厚さ
68
第3章
(3)
モルタルにおける自由水量の推定
高性能 AE 減水剤がブリーディングに及ぼす影響
高性能 AE 減水剤の使用がブリーディングに及ぼす影響を検討するため,水粉体比を一定とし,
高性能 AE 減水剤の添加量を変化させたペーストを製造し,フローおよびブリーディング試験を
行った.試験結果を図-3.3.14 に示す.いずれの粉体を用いた場合とも,高性能 AE 減水剤の添
加量の増加に伴いフロー値は大きくなるが,ブリーディング水量はほぼ一定の結果が得られた.
既往の研究
9)
によれば,粉体にセメントや石灰石微粉末を用い,ポリカルボン酸系の高性能 AE
減水剤の添加量をセメント質量の 0.1~0.5%の範囲で変化させたペーストを製造し,遠心脱水に
より自由水量を測定したところ,添加量を増加させても自由水量がほとんど変化しないことが確
認されており,本実験結果は概ね妥当であるとも考えられる.
一方で,高性能 AE 減水剤を用いると,セメント粒子が分散され,ペーストおよびモルタルの
3),5)
流動性が増加することが既に明らかにされている
.本章で提案する予測モデルの考え方に基
づけば,高性能 AE 減水剤によりセメント凝集体が分散されてセメントの単位表面積が増加すれ
ば,セメントの全体として拘束できる水量は多くなると考えられる.今回の実験では,高性能 AE
減水剤の添加量が比較的小さい範囲であったため,顕著な差異として生じていなかった可能性も
考えられる.
さらに,本研究の最終目的である流動性と材料分離抵抗性を考慮した配合設計方法を確立する
には,高性能 AE 減水剤による流動性の改善効果についても考慮する必要がある.そこで,4 章に
おいて,高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果について検討を行うことにする.
ペースト
フロー
200
150
100
90
60
ブリー
ディング
30
ペーストフロー(mm)
250
120
セメントペースト
水粉体比35%
300
120
250
90
200
150
100
0
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
高性能AE減水剤添加量(粉体×%)
ブリーディング水量(kg/m3)
300
150
350
150
石灰石微粉末
水粉体比30%
ブリーディング水量(kg/m3)
ペーストフロー(mm)
350
ペースト
フロー
60
ブリー
ディング
30
0
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
高性能AE減水剤添加量(粉体×%)
図-3.3.14 高性能 AE 減水剤の添加量を変化したペーストのフロー,ブリーディング試験結果
69
第3章
(4)
モルタルにおける自由水量の推定
練混ぜ時間の影響
練混ぜ時間が,セメントの凝集に及ぼす影響を検討するため,水セメント比を 50%,モルタル
中の細骨材容積比を 0.55,
高性能 AE 減水剤の添加量を一定とした配合条件のモルタルを対象に,
練混ぜ時間を 3~12 分(休止時間 90 秒を含む)の範囲で変化させた場合のフローおよびブリーディ
ング水量を測定した.試験結果を図-3.3.15 に示す.
練混ぜ時間が長くなるに従い,フロー値は小さく,ブリーディング水量は少なくなった.練混
ぜ時間が長くなることで,セメントの分散が促進され,セメント粒子の全表面積が増加すること
で表面に拘束される水量が増加したためと推測される.この結果も,セメント粒子が凝集体を形
成していることを裏付けるものと考えられる.
なお,モルタルの練混ぜ方法やミキサの種類および練混ぜ時間により,ブリーディング率が相
違することが多くの文献に示されている 10),11).そのため,本研究で得られたブリーディング率は
必ずしも普遍的な値ではない可能性も考えられる.しかし,本研究の目的は,セメントおよび細
骨材の材料条件と配合条件から,セメントおよび細骨材の粒子表面に拘束される水量を求めるこ
とでブリーディング水量が予測可能であることを検証することであるため,ある同一の練混ぜ条
件によって製造したペーストおよびモルタルのブリーディング率を用いることにした.
20
水セメント比50%
細骨材モルタル容積比0.55
高性能AE減水剤添加量C×1.0%
15
250
モルタル
フロー
200
10
5
150
ブリー
ディング
100
0
2
ブリーディング水量(kg/m3)
モルタルフロー(mm)
300
0
4 6 8 10 12 14
練混ぜ時間(分)
図-3.3.15 練混ぜ時間を変化させたモルタルのフローおよびブリーディング試験結果
70
第3章
3.3.3
モルタルにおける自由水量の推定
細骨材の拘束水比の算出方法の検証
細骨材の拘束水比を求めるために,水セメント容積比 Vw/Vp を 1.0~1.5 の範囲で変化させたペー
スト,およびモルタル中の細骨材容積比 VS/Vm を 0.1,0.2,0.3 で一定として水セメント容積比を
1.0~1.5 の範囲で変化させたモルタルを製造し,フロー試験を行った.また,その結果をもとに
細骨材の拘束水比を算出した.試験および計算結果の一覧を表-3.3.2 に示す.また,各種の細骨
材を用いた場合の相対フロー面積比と水粉体容積比の関係を図-3.3.16 に示す.
いずれの細骨材を用いた場合とも,ペーストおよびモルタルの相対フロー面積比と水セメント
容積比には直線関係があることがわかる.また,ペーストの変形係数とモルタルの変形係数はほ
ぼ等しく,モルタル中の細骨材容積比が 0.3 程度以下の範囲では,ペーストとモルタルの変形性
が概ね等しいことが確認できた.更に,算出された細骨材の拘束水比は,モルタル中の細骨材容
積比が 0.3 以下の範囲では,ほぼ一定の値であった.このため,細骨材の拘束水比は,前章で述
べた試験方法により算出できると考えられる.
なお,細骨材の拘束水比はその種類により相違し,写真-3.3.1 で示したように,表面形状が滑
らかで,表面に微粉分の付着していない海砂が最も小さい値となっていた.一方,砕砂は,陸砂
に比べて,表面形状は凹凸が多く,微粒分量も多いが,拘束水比は陸砂に比べて小さい値が得ら
れた.図-3.3.2 に示す粒度分布から,細骨材の粒径を球状と仮定して,各々の細骨材の比表面積
を算出したところ,陸砂 58.8cm2/g,海砂 53.0cm2/g,砕砂 55.7cm2/g が得られた.陸砂の比表面積
は,砕砂に比べて若干ではあるが大きく,陸砂の拘束水比が最も大きな値となった一因と考えら
れる.細骨材の拘束水比は,粒子の表面形状および粒子径の両者の影響を受けていると推測され
る.
71
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
表-3.3.2 細骨材の拘束水比の算定のために実施した試験練り結果の一覧
配合条件
細骨材
の種類
フロー
(mm)
1
1.0
118
0.39
2
1.1
143
1.03
1.2
168
1.81
4
1.3
197
2.88
5
1.4
224
4.02
6
1.0
109
0.19
7
1.1
135
0.82
1.2
160
1.54
9
1.3
189
2.55
10
1.4
208
3.31
11
1.1
129
0.66
12
1.2
157
1.45
1.3
182
2.31
14
1.4
200
2.99
15
1.1
120
0.43
16
1.2
151
1.27
3
なし
(ペースト)
8
13
0.0
0.1
陸砂
17
0.2
0.3
1.3
177
2.12
18
1.4
200
2.98
19
1.5
217
3.71
20
1.0
109
0.19
21
1.1
135
0.82
1.2
160
1.54
23
1.3
189
2.55
24
1.4
208
3.31
25
1.1
129
0.66
26
1.2
157
1.45
1.3
182
2.31
28
1.4
200
2.99
29
1.1
120
0.43
1.2
151
1.27
1.3
177
2.12
32
1.4
200
2.98
33
1.5
217
3.71
34
1.1
134
0.81
35
1.2
164
1.69
1.3
190
2.59
37
1.4
209
3.37
38
1.1
125
0.56
39
40
41
42
43
44
45
46
1.2
1.3
1.4
1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
158
182
199
112
148
169
194
214
1.48
2.31
2.98
0.24
1.18
1.86
2.76
3.58
22
27
0.1
海砂
0.2
30
31
0.3
0.1
36
砕砂
0.2
0.3
拘束水比
β P or β m
近似直線
相関係数
R2
細骨材の
拘束水比
βS
平均値
0.108
0.981
0.985
-
-
0.106
1.010
0.993
0.133
0.101
1.054
0.999
0.144
0.105
1.098
0.989
0.138
0.125
0.990
0.994
0.051
0.127
1.014
0.998
0.066
0.121
1.047
0.999
0.075
0.116
1.004
0.999
0.106
0.123
1.024
0.995
0.086
0.121
1.068
0.998
0.098
相対フロー 変形係数
E P or E m
面積比
Τ P or Τ m
水粉体
容積比
V W /V P
No.
細骨材
容積比
V S /V m
フロー試験結果
72
0.14
0.06
0.10
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
1.5
水粉体容積比 VW/VP
細骨材 陸砂
1.4
1.3
1.2
ペースト
1.1
Vw/Vp =0.108×ΤP+0.981
Vs/Vm=0.1 Vw/Vp =0.106×Τm+1.010
Vs/Vm=0.2 Vw/Vp =0.101×Τm+1.054
1.0
Vs/Vm=0.3 Vw/Vp =0.105×Τm+1.098
0.9
0
1
2
3
4
相対フロー面積比 Τ p およびΤ m
5
(a)細骨材に陸砂を用いた場合
1.5
水粉体容積比 VW/VP
細骨材 海砂
1.4
1.3
1.2
ペースト
1.1
Vs/Vm=0.1 Vw/Vp =0.125×ΤP+0.990
Vs/Vm=0.2 Vw/Vp =0.127×ΤP+1.014
1.0
0.9
Vw/Vp =0.108×ΤP+0.981
Vs/Vm=0.3 Vw/Vp =0.121×ΤP+1.047
0
1
2
3
4
相対フロー面積比 Τ p およびΤ m
5
(b)細骨材に海砂を用いた場合
1.5
水粉体容積比 VW/VP
細骨材 砕砂
1.4
1.3
1.2
ペースト
1.1
Vs/Vm=0.2 Vw/Vp =0.123×ΤP+1.024
1.0
0.9
Vw/Vp =0.108×ΤP+0.981
Vs/Vm=0.1 Vw/Vp =0.116×ΤP+1.004
Vs/Vm=0.3 Vw/Vp =0.121×ΤP+1.068
0
1
2
3
4
相対フロー面積比 Τ p およびΤ m
(c)細骨材に砕砂を用いた場合
図-3.3.16 相対フロー面積比と水粉体容積比の関係
73
5
第3章
3.3.4
モルタルにおける自由水量の推定
予測モデルの妥当性の検証
これまでに求めたセメントの水膜厚さおよび細骨材の拘束水比から,ブリーディングとして浮
き上がる水量が推定できることを検証するために,水セメント比,細骨材の種類,モルタル中の
細骨材容積比および高性能 AE 減水剤添加量を変化させた合計 45 種類のモルタルを対象に,予測
モデルによりセメントおよび細骨材が拘束できる水量を計算するとともに,実際にモルタルを製
造してモルタルフローおよび 3 時間後のブリーディング率を測定した.
なお,練混ぜ方法は,前節と同様に,JIS R 5201 に準じた方法とし,練混ぜ時間は 4 分間(休止
時間 90 秒間を含む)とした.また,練混ぜ量は 2L とした.モルタル配合および実験結果の概要を
表-3.3.3 に示す.
なお,今回の検証実験のモルタル配合は,いずれもモルタル中の細骨材容積比 VS/Vm が 0.4 以上
となっているが,これは今回の予測モデルの適用範囲が VS/Vm>0.4 に限定されることを意図する
ものではない.標準的な土木工事に用いられるコンクリートは,単位水量 155~175kg/m3,セメン
ト量 250~450kg/m3,単位粗骨材容積 300~400L/m3 の範囲であり,VS/Vm は概ね 0.4~0.6 程度にな
ると考えられるからである.
前節までに提案した手法により求めたセメントおよび細骨材が拘束できる水量の計算値と実験
により得られたブリーディング水量を単位水量から差し引いたセメントおよび細骨材により拘束
できた水量の実測値の比較を図-3.3.17 に示す.計算値の算出に際しては,セメントの水膜厚さ
を 7.2μm,細骨材の拘束水比を陸砂は 0.14,海砂は 0.06,砕砂は 0.10 とした.また,今回は,高
性能 AE 減水剤の使用がブリーディングの発生に及ぼす影響は考慮していない.高性能 AE 減水剤
によるセメント粒子の分散効果については,後述する 4 章にて検討を行う.
実験の結果,配合条件や細骨材の種類によらず,セメントおよび細骨材の拘束水量の計算値と
ブリーディング試験から得られたブリーディング水量を単位水量から差し引いた水量(拘束水量
の実測値)は概ね一致しており,本研究で提案した予測モデルの妥当性が確認できたと考えられる.
340
拘束水量の実測値(kg/m3)
320
300
280
W/C 細骨材 混和剤
(%) 種類 添加量
55
50 陸砂 1.0%
45
0.5%
50 陸砂
なし
海砂
50
1.0%
砕砂
260
差異の
大きい配合
240
220
差異が±10kg/m3のライン
200
200
220
240 260 280 300 320
拘束水量の計算値(kg/m3)
図-3.3.17 拘束水量の計算値と実測値の比較
74
340
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
表-3.3.3 モルタルの配合と試験結果の概要
配合条件
配合
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
検討
要因
細骨材 W/C
Vs/Vm
種類
(%)
55
水セメ
ント比
陸砂
50
45
混和剤
添加量
陸砂
50
海砂
細骨材
種類
50
砕砂
試験結果
単位量(kg/m3 )
0.51
0.53
0.55
0.57
0.60
0.63
0.48
0.50
0.52
0.55
0.57
0.60
0.42
0.44
0.46
0.48
0.50
0.53
0.57
0.42
0.45
0.48
0.51
0.55
0.60
0.65
0.45
0.50
0.55
0.60
0.65
0.48
0.50
0.52
0.55
0.57
0.60
0.65
0.45
0.48
0.50
0.52
0.55
0.57
0.60
W
311
298
286
273
254
235
318
306
294
276
263
245
341
329
317
305
294
276
252
355
337
318
300
276
245
214
337
306
276
245
214
318
306
294
276
263
245
214
337
318
306
294
276
263
245
C
566
542
519
496
462
427
637
612
588
551
527
490
757
731
705
678
652
613
561
710
674
637
600
551
490
429
674
612
551
490
429
637
612
588
551
527
490
429
674
637
612
588
551
527
490
S
1341
1394
1447
1499
1578
1657
1262
1315
1368
1447
1499
1578
1105
1157
1210
1262
1315
1394
1499
1105
1184
1262
1341
1447
1578
1710
1184
1315
1447
1578
1710
1229
1280
1331
1408
1459
1536
1664
1184
1262
1315
1368
1447
1499
1578
混和剤
ブリー
添加量 モルタル ディング
(C×%) フロー
水量WB
(mm)
(kg/m3 )
282
288
278
267
251
234
284
296
288
273
263
245
288
293
309
299
289
273
252
319
315
303
288
267
242
213
308
290
265
241
212
259
252
241
247
242
238
211
317
310
301
290
273
263
245
1.0
0.5
なし
1.0
75
29.3
10.7
7.8
6.1
3.3
0.7
34.1
10.0
6.3
2.9
0.7
0.0
52.4
35.7
7.6
6.0
4.1
2.6
0.5
35.7
22.1
15.4
11.9
8.8
2.8
1.4
28.6
16.7
10.7
4.3
2.4
59.1
53.7
53.3
28.6
20.9
2.0
1.1
19.5
8.3
5.2
3.6
2.1
0.5
0.0
拘束できた水量(kg/m3 )
計算値
実測値A
W-WB
282
288
278
267
251
234
284
296
288
273
263
245
288
293
309
299
289
273
252
319
315
303
288
267
242
213
308
290
265
241
212
259
252
241
248
242
238
211
317
310
301
290
273
263
245
セメ
ント
222
209
196
183
163
144
239
226
213
194
180
161
274
261
248
235
223
203
177
277
258
239
219
194
161
127
258
226
194
161
127
265
254
242
225
213
196
167
272
254
242
229
211
199
181
細骨材 合計B
71
74
77
80
84
88
67
70
73
77
80
84
59
62
64
67
70
74
80
59
63
67
71
77
84
91
63
70
77
84
91
28
29
30
32
33
35
38
45
48
50
52
55
57
60
293
283
273
263
247
232
306
296
286
271
260
245
333
323
312
303
293
277
257
336
321
306
291
271
245
218
321
296
271
245
218
294
283
273
257
247
231
205
317
302
292
281
266
256
241
差異
|B-A|
11
4
5
4
3
2
22
0
2
2
2
0
44
29
3
3
3
4
5
17
6
3
3
4
3
5
13
6
6
4
6
34
31
32
9
4
7
6
1
9
9
9
7
7
4
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
図-3.3.17 において計算値に対して実測値の値が明らかに小さい(すなわち,ブリーディング水
量が明らかに多い)配合が散見される.以下に,この原因について考察する.実験結果を拘束でき
た水量の計算値と実測値の差異とブリーディング率(単位水量に対するブリーディング水量の百
分率)の関係で整理して図-3.3.18 に示す.
計算値と実測値の差異が大きい配合は,いずれもブリーディング率が 10%程度以上と多い配合
である.単位水量が極端に多い配合では,セメントの粒子間距離が大きくなりすぎて凝集力が低
下したり,セメントペースト濃度の低下に伴いセメントや細骨材粒子の沈降が生じることが考え
られる.一方,本章で提案した予測モデルでは,
「モルタル中の水,セメントおよび細骨材が均等
に分散した状態」を前提としており,これらの要因を考慮していないことから,計算値と実測値
の差異が大きくなったものと推測される.ブリーディング予測モデルの適用範囲を拡張するには,
これらの影響を考慮する必要があり,今後の検討課題である.
なお,これら差異の大きいモルタルの配合は,仮に粗骨材の単位絶対容積を 400L/m3 と仮定し
たコンクリートに換算すると,いずれも単位水量が 175kg/m3 を大きく上回る配合である.そのた
め,このような配合条件のモルタルから構成されるコンクリートが実際の施工に供される可能性
は極めて小さい.実用上は本研究で提案した予測モデルを用いることでブリーディング水量が概
ね予測できると考えられる.
ブリーディング率(%)
20
15
10
W/C 細骨材 混和剤
(%) 種類 添加量
55
50 陸砂 1.0%
45
0.5%
50 陸砂
なし
海砂
50
1.0%
砕砂
5
0
0
10
20
30
40
50
拘束水量の計算値と実測値の差異(kg/m3)
図-3.3.18 拘束水量の計算値と実測値の差異とブリーディング率の関係
76
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
【予測モデルによる自由水量の算定例】
ここでは,3.2 節に示す手順に従い,提案した予測モデルによる自由水量の算出例を示す.算定
例として ,表-3.3.3 に示す配 合 No.1 のモルタル (W/C=55% , W=311kg/m3 , C=566kg/m3 ,
S=1,341kg/m3)を取り上げる.
(1) 細骨材の拘束水量
細骨材が拘束できる水量 WS は,
細骨材の表乾密度が 2.62g/cm3,拘束水比が βS=0.14 であるので,
式(3.21)より,71kg/m3 となる.
WS=VS×βS=1341÷2.62×0.14=71kg/m3
(2) セメント凝集体の単位表面積
細骨材の拘束水量以外の水量 W1 は,単位水量 W から細骨材の拘束水量 WS を差し引いた水量で
あるので,式(3.22)より,240kg/m3 となる.
W1=W-WS=311-71=240kg/m3
完全分散状態におけるセメント粒子の単位表面積 AC は,表-3.3.4 に示すように,398,582mm2/g
となる.これより,完全分散状態におけるセメントの平均粒子間距離 ZC は,式(3.3)に示すように,
細骨材の拘束水量以外の水量 W1 とセメントの全表面積との比率から求められる.
ZC=2×{W1÷(C×AC)}=2×240÷(566×398,582)=2.12μm
次に,ファンデルワールス力による凝集力と粒子の回転慣性による分散力から,凝集後のセメ
ントの表面積 Aff を求める.計算過程を表-3.3.4 に示す.計算の結果,凝集後のセメントの表面
積は,Aff=54,608mm2/g となる.
(3) 自由水量の算出
凝集後のセメントが拘束できる水量 WC は,セメントの水膜厚さ s を 7.2μm とすれば,式(3.23)
より,222kg/m3 となる.
WC=s×C×Aff=7.2×566×54608=222kg/m3
自由水量 WB は,単位水量 W からセメントおよび細骨材が拘束できる水量を差し引いた水量で
あるので,18kg/m3 となる.
セメントと細骨材の拘束水量=WC+WS=222+71=293kg/m3
WB=W-(WC+WS)=311-(222+71)=18kg/m3
77
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
表-3.3.4 セメント凝集体の表面積の計算例(表-3.3.4 の配合 No.1)
粒度測定結果
粒子径
(μm)
頻度
(%)
完全分散状態での計算
表面積
体積
(mm2 )
(mm3 )
凝集後の計算
粒子1個
の重さ(g)
各粒径の
粒子量
(g)
粒子
個数
(個/g)
表面積
(mm2 /g)
hamakar
係数
(J)
凝集後 凝集後 凝集体1個 表面積
粒子個数 の粒径 の表面積 の総和
G
(μm)
(mm2 /g)
(mm2 )
1000.00
0.00
3.1E+00 5.2E-01
1.655E-03
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
1,000.0
3.1416
0
811.98
0.00
2.1E+00 2.8E-01
8.858E-04
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
812.0
2.0713
0
659.30
0.00
1.4E+00 1.5E-01
4.742E-04
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
659.3
1.3656
0
535.34
0.00
9.0E-01
8.0E-02
2.538E-04
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
535.3
0.9003
0
434.68
0.00
5.9E-01
4.3E-02
1.359E-04
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
434.7
0.5936
0
352.95
0.00
3.9E-01
2.3E-02
7.275E-05
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
352.9
0.3914
0
286.59
0.00
2.6E-01
1.2E-02
3.894E-05
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
286.6
0.2580
0
232.70
0.00
1.7E-01
6.6E-03
2.085E-05
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
232.7
0.1701
0
188.95
0.00
1.1E-01
3.5E-03
1.116E-05
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
188.9
0.1122
0
153.42
0.00
7.4E-02
1.9E-03
5.975E-06
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
153.4
0.0739
0
124.57
0.00
4.9E-02
1.0E-03
3.199E-06
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
124.6
0.0488
0
101.15
0.47
3.2E-02
5.4E-04
1.712E-06
0.0047
2.8E+03
89 1.68E-21
2,774
101.2
0.0321
89
82.13
2.16
2.1E-02
2.9E-04
9.167E-07
0.0216
2.4E+04
499 1.68E-21
23,564
82.1
0.0212
499
66.69
4.28
1.4E-02
1.6E-04
4.907E-07
0.0428
8.7E+04
1,219 1.68E-21
87,216
66.7
0.0140
1,219
54.15
6.29
9.2E-03
8.3E-05
2.627E-07
0.0629
2.4E+05
2,204 1.68E-21
178,217
59.7
0.0112
1,998
43.97
7.93
6.1E-03
4.5E-05
1.406E-07
0.0793
5.6E+05
3,425 1.68E-21
276,931
55.7
0.0098
2,702
35.70
8.70
4.0E-03
2.4E-05
7.529E-08
0.0870
1.2E+06
4,624 1.68E-21
373,959
52.0
0.0085
3,176
28.99
9.11
2.6E-03
1.3E-05
4.030E-08
0.0911
2.3E+06
5,964 1.68E-21
482,277
48.5
0.0074
3,564
23.54
8.77
1.7E-03
6.8E-06
2.158E-08
0.0877
4.1E+06
7,074 1.68E-21
572,091
45.2
0.0064
3,680
19.11
7.89
1.1E-03
3.7E-06
1.155E-08
0.0789
6.8E+06
7,834 1.68E-21
633,477
42.2
0.0056
3,547
15.52
6.47
7.6E-04
2.0E-06
6.183E-09
0.0647
1.0E+07
7,916 1.68E-21
640,182
39.4
0.0049
3,119
12.60
4.78
5.0E-04
1.0E-06
3.311E-09
0.0478
1.4E+07
7,195 1.68E-21
581,840
36.7
0.0042
2,468
10.23
4.58
3.3E-04
5.6E-07
1.772E-09
0.0458
2.6E+07
8,500 1.68E-21
687,357
34.3
0.0037
2,537
8.31
4.33
2.2E-04
3.0E-07
9.488E-10
0.0433
4.6E+07
9,896 1.68E-21
800,251
32.0
0.0032
2,571
6.75
3.29
1.4E-04
1.6E-07
5.080E-10
0.0329
6.5E+07
9,246 1.68E-21
747,694
29.8
0.0028
2,091
5.48
2.54
9.4E-05
8.6E-08
2.718E-10
0.0254
9.3E+07
8,788 1.68E-21
710,674
27.8
0.0024
1,729
4.45
2.71
6.2E-05
4.6E-08
1.455E-10
0.0271
1.9E+08
11,550 1.68E-21
933,975
26.0
0.0021
1,978
3.61
2.38
4.1E-05
2.5E-08
7.791E-11
0.0238
3.1E+08
12,515 1.68E-21
1,012,009
24.2
0.0018
1,866
2.93
1.70
2.7E-05
1.3E-08
4.170E-11
0.0170
4.1E+08
11,009 1.68E-21
890,266
22.6
0.0016
1,428
2.38
1.81
1.8E-05
7.1E-09
2.233E-11
0.0181
8.1E+08
14,434 1.68E-21
1,167,224
21.1
0.0014
1,630
1.93
1.58
1.2E-05
3.8E-09
1.195E-11
0.0158
1.3E+09
15,520 1.68E-21
1,255,048
19.7
0.0012
1,525
1.57
1.01
7.7E-06
2.0E-09
6.403E-12
0.0101
1.6E+09
12,215 1.68E-21
987,772
18.4
0.0011
1,045
1.28
1.16
5.1E-06
1.1E-09
3.429E-12
0.0116
3.4E+09
17,275 1.68E-21
1,396,956
17.1
0.0009
1,286
1.04
1.69
3.4E-06
5.8E-10
1.834E-12
0.0169
9.2E+09
31,003 1.68E-21
2,507,156
16.0
0.0008
2,009
0.84
1.10
2.2E-06
3.1E-10
9.807E-13
0.0110
1.1E+10
24,751 1.68E-21
2,001,565
14.9
0.0007
1,396
0.68
0.29
1.5E-06
1.7E-10
5.249E-13
0.0029
5.4E+09
7,935 1.68E-21
641,646
13.9
0.0006
389
0.55
0.02
9.6E-07
8.9E-11
2.813E-13
0.0002
8.9E+08
857 1.68E-21
69,289
13.0
0.0005
37
0.45
0.49
6.4E-07
4.8E-11
1.508E-13
0.0049
3.2E+10
20,464 1.68E-21
1,654,871
12.1
0.0005
761
0.37
2.20
4.2E-07
2.5E-11
8.046E-14
0.0220
2.7E+11
114,444 1.68E-21
9,254,752
11.3
0.0004
3,702
0.30
0.32
2.8E-07
1.4E-11
4.335E-14
0.0032
7.3E+10
20,138 1.68E-21
1,628,505
10.5
0.0003
568
0.24
0.00
1.8E-07
7.3E-12
2.316E-14
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
9.8
0.0003
0
0.20
0.00
1.2E-07
3.9E-12
1.246E-14
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
9.2
0.0003
0
0.16
0.00
7.9E-08
2.1E-12
6.651E-15
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
8.6
0.0002
0
0.13
0.00
5.2E-08
1.1E-12
3.552E-15
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
8.0
0.0002
0
0.11
0.00
3.5E-08
6.1E-13
1.915E-15
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
7.4
0.0002
0
0.09
0.00
2.3E-08
3.2E-13
1.016E-15
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
6.9
0.0002
0
0.07
0.00
1.5E-08
1.7E-13
5.435E-16
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
6.5
0.0001
0
0.06
0.00
9.9E-09
9.2E-14
2.906E-16
0.0000
0.0E+00
0 1.68E-21
0
6.0
0.0001
0
100.00
-
-
-
1.0000
4.1E+11
32,199,537
5,837.0
合計
78
398,582
-
-
54,608
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
3.4 本章のまとめ
本章では,配合設計段階において,コンクリートの材料分離抵抗性を照査する手法を確立する
ための第一段階の検討として,使用材料の物理的性質や配合条件からモルタル中の自由水量を予
測するモデルを提案し,その妥当性を実験により検証した.得られた知見を以下に示す.
(1) セメントがその粒子表面に拘束できる水量を予測するには,配合条件に応じてセメントの
凝集の程度が相違することを考慮する必要がある.具体的には,配合条件である水セメン
ト比から完全分散状態におけるセメントの平均粒子間距離を求め,この値をもとにファン
デルワールス力による凝集力と粒子の回転慣性による分散力の関係から凝集後のセメン
トの表面積を算出する必要がある.
(2) 上記により凝集を考慮した後のセメント(粉体)の表面積の総和は,粉体の種類によらず,
実際に粉体が拘束できた水量(ブリーディング試験により得られたブリーディング水量を
単位水量から差し引いた水量)と相関係数の高い直線関係にある.このため,セメントが
その表面に拘束できる水量(水膜厚さ)は,凝集後の粉体凝集体の個々の粒子径には依存せ
ず,表面に一様な厚さの水膜を拘束していると推測される.
(3) 粉体が表面に拘束できる水膜厚さは,粉体の種類により相違する一方,水との混合比によ
らずほぼ一定である.このため,水膜厚さは粉体固有の物理的性質であるととらえること
ができ,予め水膜厚さを把握しておくことで,配合条件が与えられた時点でセメントが拘
束できる水量を推定することができる.
(4) また,温度条件を 10~30℃の範囲で変化させても,実験により得られるブリーディング水
量の差異は小さく,算出される水膜厚さはほぼ等しい.粉体の凝集の程度は,水とセメン
トの混合比により定まる粒子間距離の影響を強く受け,温度変化による影響は比較的小さ
いものと推測される.
(5) 細骨材がその表面に拘束できる水量は,水セメント容積比を変化させたペーストおよびモ
ルタルフロー試験により得られる相対フロー面積比と水セメント容積比の関係から求め
ることができる.
(6) 上記により求めたセメントおよび細骨材が表面に拘束できる水量を用いることで,配合条
件や使用材料の異なるモルタルの自由水量を概ね算定できる.
しかしながら,本文中にも示すように,高性能 AE 減水剤を用いることで,セメントが分散さ
れ流動性が向上することが既に明らかになっている.セメント粒子が分散すると単位表面積が増
加することになり,本章で提案した予測モデルの考え方に基づけば,セメント全体として拘束で
きる水量が増加する可能性もある.そこで,次章において高性能 AE 減水剤によるセメントの分
散効果について検討を行う.
79
第3章
モルタルにおける自由水量の推定
第 3 章の参考文献
1) 緑川猛彦,丸山久一,下村匠,桃井清至:粉体特性の定量化手法に基づくペーストの流動性
評価方法,土木学会論文集,No.578/V-37,pp.99-110,1997.11
2) 枝松良展,山口昇三,岡村甫:モルタルの変形性を表す細骨材の材料特性の定量化,土木学
会論文集,No.538/V-31,pp.37-46,1996.5
3) 内川浩:混合セメントの水和および構造形式に及ぼす混合材の効果《その 3》,セメント・コ
ンクリート,No.486,pp.35-47,1987.8
4) 粉体工学会:粉体工学叢書 4 液相中の粒子分散・凝集と分離操作,pp.1-22,日刊工業新聞
社,2010.1
5) 服部健一:スランプロスのメカニズムおよびその対策,材料,第 29 巻,第 318 号,pp.34-41,
1980.3
6) 吉村優治,小川正二:砂のような粒状体の粒子形状の簡易な定量化法,土木学会論文集,No.463
/III-22,pp.95-103,1993.3
7) 大内雅博,小沢一雅:フレッシュモルタルの変形性に及ぼす粉体特性の影響,土木学会第 46
回年次学術講演会講演概要集,第 5 部,pp.594-595,1991.9
8) 桜井邦昭,丸山久一,下村匠,木村仁:粉体状産業廃棄物を多量に混入したコンクリートの
配合設計方法に関する研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.22,No.2,pp.1153-1158,2000
9) 太田晃,魚本健人:ポリカルボン酸系分散剤の分散効果に関する検討,コンクリート工学年
次論文報告集,Vol.21,No.2,pp.79-84,1999
10)伊東靖郎;細骨材の水と空気による界面状態がコンクリートおよびモルタルに及ぼす影響に
関する研究,土木学会論文報告集,第 343 号,pp.229-238,1984.3
11)三浦尚訳;ネビルのコンクリートバイブル,技報堂出版,pp.259-261,2004.6
80
第4章
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
4.1 はじめに
3 章では,材料分離抵抗性を考慮した配合設計方法を確立するための第一段階の検討として,
配合条件からモルタル中の自由水量を算出する手法を検討した.そして,水とセメントの混合比
によりセメントの平均粒子間距離が異なることを考慮して,ファンデルワールス力による凝集力
と回転慣性力による分散力の関係からセメントの凝集の程度を求め,凝集後のセメント凝集体の
表面積から算出した拘束水量と,モルタルフロー試験により得られる相対フロー面積比と水セメ
ント容積比の関係から算出した細骨材の拘束水量を用いることで,落下運動を与えないフロー値
が 200~300mm 程度の流動性を有するモルタルの自由水量を概ね推定できることを示した.
一方で,高い流動性を確保するには高性能 AE 減水剤の使用が不可欠であるが,3 章の予測モデ
ルには高性能 AE 減水剤の効果が含まれていない.
高性能 AE 減水剤を適切に用いることで所要の流動性確保に必要な単位水量は低減できること
から,モルタルのブリーディング抑制にも効果的である.一方で,高性能 AE 減水剤を過剰に添
加すると材料分離を誘発する場合もある.このため,ブリーディングの発生を低減するには,目
標とする流動性のレベルに応じて,高性能 AE 減水剤の添加量ならびに各材料の単位量を適切に
設定する必要がある.
そこで,本章では,3 章で提案した予測モデルを拡張させ,高性能 AE 減水剤によるセメントの
分散効果を考慮した上で,モルタル中の自由水量を推定できる予測モデルを構築することを目的
とした.なお,3 章における予測モデルと区別するため,便宜上,本章で提案するモデルを拡張
予測モデルという.
3 章の予測モデルに,高性能 AE 減水剤によるセメント粒子の分散効果を取り込んだ.具体的に
は,水セメント比や高性能 AE 減水剤の添加の有無によらず,流動性が等しいセメントペースト
中のセメントの分散の程度は等しいと仮定し,セメントは水との混合比率および高性能 AE 減水
剤の添加量によって分散の程度が異なることを考慮することで,セメント粒子表面に拘束できる
水膜厚さおよび高性能 AE 減水剤の膜厚さを算出する手法を構築した.そして,配合条件を種々
に変化させたモルタルのブリーディング試験結果と比較することで,モデルの妥当性について検
証した.
なお,本章では,高性能 AE 減水剤を用いる場合を対象に検討を進めるが,今日では,高性能
AE 減水剤に比べ減水率の小さい AE 減水剤も標準的に用いられている.AE 減水剤と高性能 AE
減水剤はその主成分が相違するものの,いずれもセメント粒子表面にこれらの混和剤が吸着する
ことでセメント粒子を分散させている機構(メカニズム)は同様であり,本章において高性能 AE 減
水剤によるセメントの分散挙動をモデル化できれば,その考え方を踏襲することで,AE 減水剤に
よる分散挙動もモデル化できるものと考えられる.AE 減水剤を用いた場合に対する本研究で提案
するモデルの適用性については,7.3.2 節にて詳述する.
81
第4章
4.2
4.2.1
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果のモデル化
高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果の導入
高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果を考慮する上で,3 章の予測モデルにおいて考慮し
た仮定に加え,以下の 2 つの仮定を設けることにした.
(a) ペーストの流動性が等しい場合,ペースト中のセメント(凝集体)の分散の程度(セメントの単
位表面積)は等しい.
(b) セメントは,その表面に「水膜」および「高性能 AE 減水剤の膜」を拘束できる.高性能 AE
減水剤の添加量が増加し,その膜厚さが増加すると,拘束できる水膜の厚さは減少する.
仮定(a)について
流動性を評価する指標である「フロー値」とペースト中のセメント粒子の分散の程度との定量
的な関係は十分には明らかにされていない.セメント粒子の分散の程度が大きいほど,粒子径は
小さくなり(単位表面積は大きくなり),隣り合う粒子同士での噛み合いが生じ難くなるため,粒子
は移動しやすくなると考えられる.前章の検証結果からも,水セメント比が大きいほど,セメン
トの凝集が生じにくく(個々のセメント凝集体の表面積は小さく),流動性は大きくなることが示さ
れている.また,高性能 AE 減水剤を用いることで流動性は大きくなるが,その理由は高性能 AE
減水剤により,セメント粒子が分散されるためであることを顕微鏡写真により確認している研究
6)
もある.このため,セメント粒子が分散するほど(個々の単位表面積が大きくなるほど),流動性
は大きくなると考えられる.つまり,セメントの凝集・分散の程度により流動性は相違すると考
えられる.
次に,高性能 AE 減水剤を用いないペーストで,高性能 AE 減水剤を用いたペーストと同じ流動
性が得られた状態を考えてみる.高性能 AE 減水剤を用いずに,高性能 AE 減水剤を用いた場合と
同じ流動性を確保するには,水セメント比を大きくする必要がある.このため,セメントの平均
粒子間距離が大きくなり,凝集し難くなるため,小さな粒径の凝集体として存在していると考え
られる.一方,高性能 AE 減水剤を用いたペーストは,高性能 AE 減水剤の効果を無視すれば,水
セメント比が小さいため,平均粒子間距離が小さくなり,凝集が生じやすいので,大きな凝集体
を形成しているはずである.しかし,先述のように,高性能 AE 減水剤を混和することで,その
凝集体が分散されるため,結果として,小さな粒径の凝集体になっていると考えられる.高性能
AE 減水剤の添加量は,一般に,セメント質量の 2%程度以下であり,単位水量と比べても 5%程
度と少量である.このような少量の液体の混入に伴い,セメントの流動性が物理的に緩和される
とは考えにくく,高性能 AE 減水剤の使用の有無によらず,ペーストの流動性は,ペースト中の
セメント凝集体の物理的な状態に依存していると考えられる.
そこで,本研究では,高性能 AE 減水剤の使用の有無によらず,粒子の分散の程度が等しい場
合,流動性は等しくなると仮定することにした(図-4.2.1).なお,本研究でいうセメントの単位
表面積とは,セメントの単位質量あたりの表面積のことである.
82
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
高性能 AE 減水剤によりセメント凝集体が分散し,平均粒子径が小さくなれば,粒子個数は増
加する.水とセメントの単位量は変化しないため,セメントが水中に均等に分散した状態である
と仮定すれば,相対的に粒子間距離は小さくなる.そこで,高性能 AE 減水剤の混和によりセメ
ント粒子は分散するが,結果として,粒子間距離は小さくなると考えることにした.
粒子径
粒子径
セメント粒子
セメント
粒子
粒子径が大きい
(単位表面積が小さい)
⇒流動性低い
粒子径が小さい
(単位表面積が大きい)
⇒流動性高い
流動性が等しいとき,セメントの分散の程度は等しい
(セメントの単位表面積は等しい)
粒子径
粒子径
セメント粒子
粒子間距離
粒子間距離
高性能AE減水剤を用いない場合
(粒子間距離が広い)
高性能AE減水剤を用いた場合
(粒子間距離が狭い)
図-4.2.1 高性能 AE 減水剤の分散効果の導入における仮定(a)
仮定(b)について
既往の研究によれば,高性能 AE 減水剤によるセメントの分散機構は,その種類によって以下
の 2 つに大別される(図-4.2.2)1),2).
ナフタレンなどを主成分とする高性能 AE 減水剤の場合は,高性能 AE 減水剤がセメント粒子表
面に吸着し,負の電荷が粒子表面に帯電することで,セメント粒子が凝集することを阻害する「静
電反発力」より分散していると考えられている 3).
一方,ポリカルボン酸系の高性能 AE 減水剤は,櫛形状の主鎖と側鎖を有する高分子がセメン
ト粒子表面に吸着することで,物理的にセメント粒子が凝集することを阻害する「立体障害効果」
によって,分散効果が得られると考えられている
4),5)
.また,高性能 AE 減水剤の添加量を増加
させると,粒子表面に吸着する高性能 AE 減水剤量が増加することが明らかにされている 6).
今日,我が国で市販されている大半の高性能 AE 減水剤はポリカルボン酸系である
ら,本研究でもポリカルボン酸系の高性能 AE 減水剤を取り扱うことにした.
83
7),8)
ことか
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
櫛形の高分子
-
-
-
-
-
-
セメント
粒子
-
-
-
-
-
-
セメント
粒子
-
-
-
-
セメント
粒子
-
-
-
-
-
-
セメント
粒子
-
-
-
-
セメント
粒子
-
セメント
粒子
-
-
-
ナフタレン系の高性能AE減水剤
負の電荷が粒子表面に帯電
⇒「静電反発力」で分散
ポリカルボン酸系の高性能AE減水剤
櫛形の高分子が吸着
⇒「立体障害効果」で分散
図-4.2.2 高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果の概念図
高性能AE減水剤(櫛形の高分子)
水分子
セメント粒子
セメント粒子
高性能AE減水剤を用いない場合
(拘束できる水分子が多い)
高性能AE減水剤を用いた場合
(拘束できる水分子が少ない)
モデル化
モデル化
セメント粒子
セメント粒子
水膜厚さ
高性能AE減水剤
の膜厚さ
高性能AE減水剤を用いた場合
(水膜厚さが薄い)
水膜厚さ
高性能AE減水剤を用いない場合
(水膜厚さが厚い)
セメントは「水膜」と「高性能AE減水剤の膜」を拘束できる
(高性能AE減水剤の膜厚さが増えると水膜厚さは薄くなる)
図-4.2.3 高性能 AE 減水剤の分散効果の導入における仮定(b)
既往の研究 9),10)によれば,ポリカルボン酸の櫛形の高分子の長さは数~10 数 nm のオーダーで
ある.一方,水分子の直径は 0.38nm 程度で,水中では数~10 数個の分子が 1 つのかたまりとな
って存在していると考えられている
11)
.櫛形の高分子がどの程度の間隔でセメント粒子表面に吸
着しているかは定かでないが,セメント粒子表面に高分子が吸着しても,その隙間に水分子が入
ることは可能と考えられる.しかし,吸着した高分子が増えると水分子が入り込める部分(隙間)
が減少すると想定される.そのため,本研究では,セメント粒子はその表面に「水膜」および「高
性能 AE 減水剤の膜」の両方を拘束できるが,高性能 AE 減水剤の添加量が増加すれば,拘束でき
る水膜厚さは小さくなると考えることにした(図-4.2.3).また,既往の文献によれば,高性能 AE
84
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
減水剤の高分子は,図-4.2.3 の上図に示すような状態でセメント粒子表面に吸着していると考え
られているが,モデル化に際しては,単純化のため,セメント表面に一様に高性能 AE 減水剤が
吸着し,その外側に水膜が拘束されると考えることにした.
なお,2 章で示したように,水膜モデルに関する研究では,高性能 AE 減水剤による分散効果と
して粒子表面に「仮想膜」を考え,高性能 AE 減水剤の添加量が多くなるほど,仮想膜厚が厚く
なり流動性が向上すると仮定している.この仮定に基づくと,流動性が増加するほどコンクリー
トあるいはモルタル全体としての体積が増加することとなり,実現象と矛盾する.そこで,本研
究では「体積」の観点からも矛盾が生じないように配慮し,セメント凝集体表面に拘束される膜
厚さが大きくなれば,水膜厚さは薄くなると考えることにした.
また,水膜モデルの考え方に基づくと,高性能 AE 減水剤が混和されてもセメント凝集体は分
散しない(凝集体の粒子径は小さくならない)ため,高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果に
ついて検討している既往の研究との整合を図ることができない.
これらの事項を踏まえ,本章では,①水とセメントの混合比に基づく凝集挙動と②高性能 AE
減水剤による分散効果を足し合わせることで,配合条件である水セメント比と高性能 AE 減水剤
の添加量からセメントの凝集・分散挙動を表現できるモデルを構築することにした(図-4.2.4).
凝集・分散挙動を考慮した
セメントの単位表面積
=
セメントの凝集挙動
(水とセメントの混合比による
平均粒子間距離に基づく)
+
セメントの分散挙動
(高性能AE減水剤の
添加量に基づく)
図-4.2.4 凝集および分散を考慮したセメントの単位表面積の算出方法に関する概念図
85
第4章
4.2.2
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
高性能 AE 減水剤により分散したセメントの表面に拘束できる膜厚さの算出
流動性が等しいセメントペーストでは,ペースト中のセメントの分散の程度は等しいとの仮定
のもと,高性能 AE 減水剤による分散効果ならびにセメントが表面に拘束できる水膜厚さを把握
するには以下の 3 ステップの検討が必要である.
ステップ 1 では,高性能 AE 減水剤を用いない場合における流動性のレベル(フロー値)とセメン
トの分散の程度(セメントの単位表面積)との関係を求める.このためには,水セメント比を変化さ
せたセメントペーストを製造し,フロー試験を行う必要がある.
高性能 AE 減水剤を用いない場合のセメント粒子の分散の程度は,前章の予測モデルに従い,
配合条件であるセメントと水との混合比率から求められる完全分散状態におけるセメント粒子の
平均粒子間距離に基づく,ファンデルワールス力による凝集力と回転慣性力による分散力との関
係から算出できる.これとフロー試験結果とを比較することで,流動性のレベルとセメントの分
散の程度の関係が得られる.
ステップ 2 では,高性能 AE 減水剤の添加量とセメントの分散の程度との関係を求める.ペー
ストの流動性が等しい場合にはセメントの分散の程度が等しいと考えれば,高性能 AE 減水剤の
使用有無によらず,セメントの単位表面積は等しくなる.そのため,高性能 AE 減水剤を用いな
いで目標とする流動性が得られる配合のセメントの単位表面積に対し,高性能 AE 減水剤を用い
ることで目標とする流動性が得られた配合のセメントの単位表面積との比率が,高性能 AE 減水
剤によって分散された効果であると考えることができる.このため,水セメント比や高性能 AE
減水剤を様々に変化させたセメントペーストを製造し,フロー試験を行うことで高性能 AE 減水
剤の添加量とセメントの分散の程度との関係が把握できる.
ステップ 3 では,セメント粒子表面に拘束できる水膜厚さおよび高性能 AE 減水剤の膜厚さを
求める.ステップ 1 および 2 の結果から,セメントと水との混合比および高性能 AE 減水剤の添
加量から凝集・分散挙動を考慮したセメントの凝集の程度(セメントの単位表面積)が得られる.セ
メント,水および高性能 AE 減水剤の単位量は既知であるので,セメントが水中に均等に分散し
ていると考えれば,セメントの平均粒子間距離および高性能 AE 減水剤の膜厚さは,以下のよう
に求められる.なお,水と高性能 AE 減水剤の密度は 1.0g/cm3 として取り扱った.
Z F = 2 ×W / (ASP × C )
(4.1)
S SP  SP /  ASP  C 
(4.2)
ここに, ZF:凝集・分散挙動を考慮した後のセメントの平均粒子間距離(m)
SSP:高性能 AE 減水剤の膜厚さ(m)
ASP:凝集・分散挙動を考慮した後のセメントの単位表面積(m2/kg)
W:単位水量(kg/m3)
SP:高性能 AE 減水剤の添加量(kg/m3)
C:単位セメント量(kg/m3)
86
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
また,ステップ 1 および 2 において,セメントペーストのブリーディング水量を測定しておけ
ば,単位水量からブリーディング水量を差し引いた水量から,セメントが拘束できる水膜厚さを
算出できる.そして,セメントの平均粒子間距離から拘束できた水および高性能 AE 減水剤の膜
厚さを差し引いた厚さが自由水の膜厚さになる(図-4.2.5).
SWR  W1 /  ASP  C 
(4.3)
SWF  Z F /2-SWR  S SP 
(4.4)
ここに, SWR:水膜厚さ(m)
W1:単位水量からブリーディング水量を差し引いた水量(kg/m3)
SWF:自由水の膜厚さ(m)
事前にペーストによるフローおよびブリーディング試験を行い,高性能 AE 減水剤の膜厚さと
拘束できる水膜厚さの関係が把握できていれば,モルタルの配合条件が与えられた時点で,自由
水量 WB が算出できる.
WB  C  ASP  SWF
粒子間距離ZF
セメント
粒子
水膜厚さSWR
セメント
粒子
高性能AE減水剤
粒子径
の膜厚さSSP
自由水の膜厚さSWF
図-4.2.5 セメント表面に拘束できる膜厚さと粒子間距離との関係の概念図
87
(4.5)
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
4.3 高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
4.3.1
ペーストにおける流動性とセメント粒子の分散の関係
流動性のレベル「フロー値」とセメントの分散の程度との関係を把握するため,高性能 AE 減
水剤を用いずに,水セメント比を 25~60%に変化させたセメントペーストを製造し,ペーストフ
ロー試験を行った.なお,本研究でいうフロー値とはフローテーブルにおける落下運動を与えな
い値である.
セメントには,普通ポルトランドセメントを用いた.後述するモルタル実験で用いた材料と合
わせて表-4.3.1 に示す.なお,使用材料は 3 章の実験と同じものを用いている.また,レーザ散
乱回折式粒度分布測定装置により測定したセメントの粒度分布曲線を図-4.3.1 に示す.ペースト
の練混ぜ方法も 3 章と同様であり,JIS A 5201「セメントの物理試験方法」に準じて行い,練混ぜ
時間は 4 分間(90 秒間の休止時間を含む)とした.
表-4.3.1 使用材料の概要
種類
記号
物理的性質
普通ポルトランドセメント
セメント
C
水
W
水道水
S1
木更津産陸砂,表乾密度2.63g/cm3
吸水率1.63%,粗粒率2.62,実積率68.1%
密度3.16g/cm3 ,比表面積3370cm2 /g
単位表面積53.0cm2 /g
細骨材
S2
福岡市西浦産海砂,表乾密度2.56g/cm3
吸水率1.50%,粗粒率2.24,実積率65.5%
単位表面積58.82cm2 /g
S3
富士宮市上稲子産砕砂,表乾密度2.63g/cm3
吸水率1.99%,粗粒率2.63,実積率66.1%
単位表面積55.65cm2 /g
混和剤
SP
高性能AE減水剤(ポリカルボン酸系)
10
頻度(%)
8
6
4
2
0
0.01
0.1
1
10 100 1000
粒子径(μm)
図-4.3.1 実験に用いたセメントの粒度分布
88
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
3 章の予測モデルにおけるセメントと水との混合比に基づきファンデルワールス力による凝集
力と回転慣性力による分散力の関係から計算した水セメント比ごとのセメントの単位表面積の計
算結果を図-4.3.2 に示す.水セメント比が小さくなるほど,完全分散状態におけるセメントの粒
子間距離が小さくなるため,セメントはより凝集し,単位表面積が小さくなる結果が得られる.
次に,計算で求めたセメントの単位表面積とペーストのフロー試験結果の関係を図-4.3.3 に示
す.フロー値とセメントの単位表面積は,相関性の高い直線関係にあることがわかる.前節に示
す拡張予測モデルの構築において仮定した「流動性のレベルが同じ場合には,セメントの分散の
程度が等しい」こと,すなわち流動性のレベルが相違すればセメントの分散の程度も相違するこ
40
80000
高性能AE減水剤を用いない場合
35
70000
30
60000
単位表面積
(左軸)
50000
25
20
40000
30000
20000
20
15
平均粒子径(右軸)
30
40
50
60
水セメント比(%)
10
70
セメント凝集体の平均粒子径(μ m)
セメント凝集体の単位表面積(mm 2/g)
とが妥当であることを示す結果と考えられる.
図-4.3.2 水セメント比ごとのセメントの単位表面積の計算結果
(高性能 AE 減水剤を用いない場合)
セメントの単位表面積AP(mm2/g)
80000
75000
セメントペースト,W/C25~60%
高性能AE減水剤を用いない場合
70000
65000
60000
55000
50000
AP=97.25×PF+34110
45000
(R2=0.996)
40000
100 150 200 250 300 350 400
フロー PF (mm)
図-4.3.3 ペーストのフロー値とセメントの単位表面積の関係
89
第4章
4.3.2
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
分散したセメント粒子が拘束できる膜厚さ
高性能 AE 減水剤による分散効果を把握するため,水セメント比を 25~60%の範囲で変化させ,
高性能 AE 減水剤の添加量をフロー値が 200,250,300 および 350±10mm となるように調整した
セメントペーストを製造し,フロー値およびブリーディング水量を測定した.ペーストの配合お
よび試験結果を表-4.3.2 に示す.練混ぜ方法は,前節と同様である.ブリーディング試験は,JSCE
F-522「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率および膨張率試験方法(ポ
リエチレン袋方法)」に準じて行い,3 時間後のブリーディング率を測定し,配合条件からペース
トのブリーディング水量を算出した.なお,ブリーディング率としては,最終ブリーディング率
を採用する方が妥当であるとの考え方もあるが,配合条件や高性能 AE 減水剤の使用量によって
凝結時間が異なると,その差異によって,ブリーディング水量が異なる可能性がある.本研究で
は,均質に練り混ぜられたモルタル中のセメントの粒子表面に拘束できる水量からブリーディン
グ水量を予測することを主眼としているため,時間的なファクターを取り除く方が望ましいと考
え,ある一定時間後(3 時間後)におけるブリーディング水量を採用した.
表-4.3.2 ペーストの配合と結果の概要
目標
W/C
No. フロー
(%)
(mm)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
200
250
300
350
40
35
30
25
45
40
35
30
25
55
50
45
40
35
30
60
55
50
45
40
35
30
単位量(kg/m3 )
W
C
558
525
487
441
587
558
525
487
441
635
612
587
558
525
487
655
635
612
587
558
525
487
1396
1500
1622
1765
1305
1396
1500
1622
1765
1154
1225
1305
1396
1500
1622
1091
1154
1225
1305
1396
1500
1622
試験練り結果
凝集後の
高性能AE
高性能AE
ブリー
セメントの
減水剤の
減水剤による
ディング
単位表面積*1
添加量 ペースト
分散効果*2
水量
フロー
(C×%)
(mm2 /g)
3
(kg/m )
0.00
0.15
0.65
1.40
0.00
0.20
0.50
1.05
1.80
0.00
0.05
0.15
0.40
1.15
1.50
0.00
0.05
0.15
0.35
0.70
1.35
2.00
195
202
202
203
245
255
255
251
247
301
295
302
294
305
295
348
356
345
352
352
353
350
35
14
4
0
44
38
32
3
0
73
58
24
36
19
2
102
91
57
34
22
8
1
52,462
48,067
43,428
38,429
56,612
52,462
48,067
43,428
38,429
64,326
60,564
56,612
52,462
48,067
43,428
67,934
64,326
60,564
56,612
52,462
48,067
43,428
1.00
1.09
1.21
1.37
1.00
1.08
1.18
1.30
1.47
1.00
1.06
1.14
1.23
1.34
1.48
1.00
1.06
1.12
1.20
1.29
1.41
1.56
*1 既報の予測モデルに基づきセメントと水の混合比率から求めた凝集後の単位表面積
*2 高性能AE減水剤を用いない場合の単位表面積に対する同一の流動性となる場合の単位表面
積の増加率
90
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
目標とする流動性(ペーストフロー)ごとの水セメント比と高性能 AE 減水剤の添加量の関係を
図-4.3.4(a)に示す.また,実験結果を高性能 AE 減水剤の添加量とモルタルフローの関係で整理
して,図-4.3.4(b)に示す.水セメント比が小さいペーストほど,所定の流動性の確保に必要な高
高性能AE減水剤の添加量(C×%)
性能 AE 減水剤の添加量が増加する結果が得られた.
3.0
フロー200mm
フロー250mm
フロー300mm
フロー350mm
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
20
30
40
50
60
70
ペーストの水セメント比(%)
図-4.3.4(a) 同一の流動性を有するペーストの水セメント比と高性能 AE 減水剤の添加量の関係
ペーストフロー(mm)
400
W/C25%
W/C30%
350
W/C35%
300
W/C40%
W/C45%
250
W/C50%
200
150
0.0
W/C55%
W/C60%
0.5
1.0
1.5
2.0
高性能AE減水剤の添加量(C×%)
2.5
図-4.3.4(b) 高性能 AE 減水剤の添加量とペーストフローの関係
高性能 AE 減水剤を用いない場合のセメントの単位表面積を基準として,同一の流動性となる
場合の単位表面積の増加率(高性能 AE 減水剤による分散効果)を計算した.計算結果を表-4.3.2
に示すとともに,高性能 AE 減水剤の添加量との関係を図-4.3.5 に示す.水セメント比や流動性
のレベルによらず,高性能 AE 減水剤の添加量とセメントの単位表面積の増加率(高性能 AE 減水
剤による分散効果)には相関関係があることがわかる.なお,既往の文献 2),12)~14)によれば,高性
能 AE 減水剤の添加量の増加に伴い流動性は増加するが,添加量が過大となると流動性の増加の
程度が小さくなる傾向にあることが示されているため,図中に示すような 2 次曲線で近似するこ
とにした.
91
セメントの単位表面積の増加率⊿S
(高性能AE減水剤による分散効果)
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
2.0
1.8
1.6
フロ―200mm
フロー250mm
フロー300mm
フロー350mm
近似曲線
セメントペースト
W/C=25~60%
1.4
1.2
⊿S=-0.050SP2+0.347SP+1.033
(R2 =0.978)
1.0
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
高性能AE減水剤の添加量SP(C×%)
図-4.3.5 高性能 AE 減水剤の添加率と
セメントの単位表面積の増加率(高性能 AE 減水剤による分散効果)の関係
図-4.3.5 中の近似式をもとに,高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果を考慮した場合の
セメント粒子表面に拘束される水膜厚さ,および高性能 AE 減水剤の膜厚さを求めた.計算結果
を高性能 AE 減水剤の膜厚さと水膜厚さの関係で整理して図-4.3.6 に示す.
高性能 AE 減水剤の膜厚さが増加するに従い,セメントの粒子表面に拘束できる水膜厚さは小
さくなり,両者には高い相関性があることがわかる.セメント粒子は「水膜」と「高性能 AE 減
水剤の膜」を拘束できるが,高性能 AE 減水剤の膜厚さが増加すると,拘束できる水膜厚さは薄
くなるとした仮定が概ね妥当であることを示す結果と考えられる.
水膜厚さ SWR(μm)
10
フロー200mm
フロー250mm
フロー300mm
フロー350mm
8
SWR=7.01-10.09SSP
(R2=0.976)
6
4
2
水セメント比25~60%
高性能AE減水剤添加量C×0~2.0%
0
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
高性能AE減水剤の膜厚さ SSP(μm)
図-4.3.6 高性能 AE 減水剤の膜厚さと水膜厚さの関係
92
第4章
4.3.3
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
温度条件が高性能 AE 減水剤の分散効果に及ぼす影響
温度条件が高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果に及ぼす影響を検討するため,ペース
ト温度が 10,
20 および 30℃の条件において,
高性能 AE 減水剤の添加量をセメント質量の 0~1.5%
の範囲で変化させたペーストのフロー試験およびブリーディング試験を行った.なお,セメント
には普通ポルトランドセメントを用い,水セメント比は 30%とした.
温度条件を変化させた場合のペーストフロー試験結果を図-4.3.7 に示す.高性能 AE 減水剤の
添加量が 0.5%程度以下の比較的少ない範囲では,温度によるフロー値の差異はほとんど認められ
なかった.一方,高性能 AE 減水剤の添加量が 1.0%以上の場合,添加量の増加に伴い温度条件に
よりフロー値が異なり,温度が低いほどフロー値は小さくなった.温度が高性能 AE 減水剤によ
る分散効果に及ぼす影響を検討した多くの既往の研究 15)~19)においても,本試験結果と同様に,温
度が低いほど流動性が小さくなる結果が示されている.また,加藤ら
20)
は,温度が低いほど,高
性能 AE 減水剤のセメント粒子への吸着量が少なくなることを実験により検証しており,このた
めにセメントの分散効果が低減したと考察している.セメント中の半水セッコウは,温度により
溶解度が大きく異なり,低温ほど溶解度が高い.半水セッコウからは硫酸イオンが溶出するが,
この硫酸イオン濃度が高いほど高性能 AE 減水剤がセメント粒子表面に吸着し難いことが明らか
にされている 21),22).今回の試験結果において添加量が比較的少ない範囲では温度条件の影響が少
なく,添加量の増加に伴い温度の影響が顕著となっていることから,既往の研究における知見を
裏付けるものと推察される.
なお,今回の実験では練上り直後のフロー値しか測定していないが,時間経過にともなうフロ
ー値の推移を測定した研究結果
17)~19)
によれば,低温時では練上り直後ではフロー値は小さいが,
15 分後程度以降に流動性が増加し(一般に後伸びといわれる現象),その後の流動性の定価は小さ
いこと,温度が高い場合には時間経過に伴う流動性の低下が生じやすいことが指摘されている.
このため,温度の影響を考慮する場合には,必ずしも練上り直後の流動性のみを考慮するのでは
なく,時間経過に伴う変化も考慮する必要があるといえる.
ペーストのフロー値(mm)
450
400
普通ポルトランドセメント
W/C=30%
350
300
250
200
温度条件10℃
温度条件20℃
温度条件30℃
150
100
0.0
0.5
1.0
1.5
高性能AE減水剤の添加量(C×%)
2.0
図-4.3.7 温度条件が高性能 AE 減水剤を用いたペーストのフローに及ぼす影響
93
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
温度条件を変化させた場合のブリーディング試験結果を図-4.3.8 に示す.今回の試験範囲では,
温度条件によらず,高性能 AE 減水剤の添加量が変化してもブリーディング水量はほとんど変化
しない結果が得られた.
なお,3.3.1 節でも述べたように,ペーストの凝結時間が相違すればブリーディング水量の絶対
値は変化すると想定される.一般に高性能 AE 減水剤の添加量が多いほど,温度が低いほど凝結
時間は遅延することから,これらの条件のペーストでは最終的なペースト量は増加する可能性が
ある.しかしながら,本研究ではセメントと水とが均質に混合した状態において,セメントがそ
の表面に拘束できる水量からブリーディング水量(自由水量)を推定することを主眼としており,3
時間後のブリーディング水量で評価しているため,温度条件や高性能 AE 減水剤の添加量により
差異が生じなかった可能性も考えられる.
しかしながら,異なる種類の粉体を用い,水粉体を変化させたペーストのブリーディング試験
結果(図-3.3.4)では,粉体の種類や水粉体比よりブリーディング水量に大きな差異が生じている
ことを踏まえると,粉体(凝集体)がその表面に拘束できる水量は,粉体自体の特性や水との混合比
による影響が大きく,温度による影響は比較的小さいものとして取り扱って良いと考えられる.
ブリーディング水量(kg/m 3)
100
80
普通ポルトランドセメント
W/C=30%
温度条件10℃
温度条件20℃
温度条件30℃
60
40
20
0
0.0
0.5
1.0
1.5
高性能AE減水剤の添加量(C×%)
2.0
図-4.3.8 温度条件が高性能 AE 減水剤を用いたペーストのブリーディングに及ぼす影響
図-4.3.5 と同様に,高性能 AE 減水剤を用いない場合のセメントの単位表面積を基準として,
高性能 AE 減水剤による分散効果(セメントの単位表面積の増加率)を算出した結果を図-4.3.9 に
示す.高性能 AE 減水剤の添加量が少ない範囲では,温度による分散効果の違いはほとんどない
が,高性能 AE 減水剤の添加量が増加すると温度による差異が大きくなり,添加量が 1.5%の場合
には,温度±10℃で分散効果が±0.1 程度変化する結果となっている.既往の知見のように,硫酸
イオンの溶出に伴い高性能 AE 減水剤のセメント粒子への吸着が低下するならば,添加量の増大
に伴い分散効果の差異は大きくなるものと考えられる.
先ほどのブリーディング試験結果では,温度による差異はほとんど生じていないため,高性能
AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量(ブリーディング水量)を推定する場合には,代表的に 20℃
でのフローおよびブリーディング試験を行い,高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果を求
94
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
めるとともに,
高性能 AE 減水剤の膜厚さと水膜厚さの関係を把握すれば良いものと考えられる.
一方で,5 章にて後述するように,モルタルの流動性を推定する際においても,高性能 AE 減水剤
によるセメントの分散効果を考慮する必要がある.このため,流動性を推定する観点からは,温
度条件に応じて,セメントの分散効果が変化することを配慮する(実施工時のコンクリート温度を
セメントの単位表面積の増加率⊿S
(高性能AE減水剤による分散効果)
想定してペーストの各試験を行う)必要があるものと考えられる.
2.0
1.8
10℃ ⊿S=-0.120SP2+0.473SP+1.00
20℃ ⊿S=-0.100SP2+0.504SP+1.00
30℃ ⊿S=-0.030SP2+0.469SP+1.00
1.6
普通ポルトランドセメント
W/C=30%
1.4
温度条件10℃
温度条件20℃
温度条件30℃
1.2
1.0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
高性能AE減水剤の添加量SP(C×%)
図-4.3.9 温度が変化した場合における高性能 AE 減水剤添加量とセメントの分散効果の関係
95
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
4.4 高性能 AE 減水剤による分散効果を考慮した予測モデルの妥当性の
検証
4.4.1
実験概要
高性能 AE 減水剤による分散効果を考慮することにより,配合条件からモルタル中の自由水量
が算出できることを検証するために,水セメント比,モルタル中の細骨材容積比,高性能 AE 減
水剤の添加量および細骨材の種類を変化させた合計 57 種類のモルタルを製造し,モルタルフロー
およびブリーディング水量を測定した.
検討したモルタル配合,並びにフローとブリーディング試験結果を表-4.4.1 および表-4.4.2
に示す.モルタルフローの水準は,コンクリートに換算すると,モルタルフロー240mm,200mm,
160mm,120mm が,それぞれスランプフロー55~60cm,45cm,30~35cm,スランプ 12~15cm
程度に相当することを予備試験により確認して設定した.なお,コンクリートのスランプ(フロー)
とモルタルのフローとの関係は,コンクリート中に含まれる粗骨材容積により相違するため,上
記の関係はあくまでも目安である.一方,水セメント比の水準は,一般的な土木構造物に用いら
れるコンクリートを想定して,45,50 および 55%に設定した.
使用材料を表-4.3.1 に示す.セメントおよび高性能 AE 減水剤は,前節のペースト実験と同じ
材料を用い,細骨材には陸砂,海砂および砕砂の 3 種類を用いた.なお,表-4.3.1 中に示す各種
の細骨材の単位表面積は,細骨材のふるい分け試験により得られた粒度分布から骨材形状を球状
と仮定して求めた.
また,
細骨材の拘束水比には,
前章で試験により求めた値(陸砂 0.14,
海砂 0.06,
砕砂 0.10)を用いた.モルタルの製造および試験方法も,前章と同様とした.
96
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
表-4.4.1 モルタル配合および試験結果 ①検討要因 流動性レベル
検討要因
No. 目標
フロー
(mm)
単位量(kg/m3 )
Vs /Vm
W/C
(%)
細骨材
種類
W
C
S
試験結果
拘束水量
SP剤
ブリー
実測値
添加量 フロー ディング W-W
EXP
(C×%)
(mm) 水量W EXP
3
(kg/m
)
(kg/m3 )
1
0.44
343
686
1153
0.1
209
20
323
2
0.46
331
661
1205
0.2
203
18
313
3
0.48
318
637
1258
0.3
202
13
306
4
0.50
306
612
1310
0.5
199
11
295
5
200
0.52
294
588
1362
0.7
205
8
286
6
0.54
282
563
1415
0.9
202
5
277
7
0.56
269
539
1467
1.3
200
7
262
8
0.57
266
533
1480
1.5
212
9
257
9
0.57
263
527
1493
2.0
206
19
244
10
0.30
429
857
786
0.0
242
34
394
11
0.40
367
735
1048
0.2
238
22
345
12
0.44
343
686
1153
0.4
245
18
325
13
0.48
318
637
1258
0.6
244
10
308
14
0.50
306
612
1310
0.7
237
8
299
15
0.52
294
588
1362
0.9
240
6
288
0.54
282
563
1415
1.1
236
5
276
17
0.56
269
539
1467
1.6
242
16
254
18
0.48
318
637
1258
0.0
165
12
306
19
0.50
306
612
1310
0.1
159
12
294
20
0.52
294
588
1362
0.3
157
10
284
240
16
21
50
陸砂
0.54
282
563
1415
0.6
162
5
276
22
0.56
269
539
1467
1.0
163
4
265
23
0.58
257
514
1520
1.4
160
2
255
24
0.59
254
508
1533
1.6
158
8
247
25
0.59
251
502
1546
2.0
147
18
234
26
0.53
288
576
1389
0.0
118
9
279
27
0.55
276
551
1441
0.6
125
6
269
28
0.57
263
527
1493
1.0
126
4
260
29
160
120
0.58
257
514
1520
1.1
123
2
255
30
0.60
245
490
1572
1.5
120
0
245
31
0.61
239
478
1598
1.8
116
4
235
32
0.62
233
465
1624
2.0
114
14
219
97
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
表-4.4.2 モルタル配合および試験結果 ②検討要因 水セメント比および細骨材種類
検討要因
No. 目標
フロー
(mm)
W/C
(%)
単位量(kg/m3 )
細骨材
種類
Vs /Vm
W
C
S
試験結果
拘束水量
SP剤
ブリー
実測値
添加量 フロー ディング W-W
EXP
(C×%)
(mm) 水量W EXP
3
(kg/m
)
(kg/m3 )
33
0.47
336
612
1231
0.0
195
21
315
34
0.48
330
600
1258
0.1
200
19
312
35
0.50
317
577
1310
0.3
198
12
305
36
0.52
305
554
1362
0.5
194
10
295
37
0.54
292
531
1415
0.8
196
7
285
55
38
0.56
279
508
1467
1.3
202
3
276
39
0.44
329
731
1153
0.4
196
16
313
40
0.48
305
678
1258
0.7
209
11
295
0.50
294
652
1310
0.8
208
6
288
42
0.52
282
626
1362
0.9
208
4
278
43
0.54
270
600
1415
1.2
208
1
269
44
0.56
258
574
1467
1.5
195
5
253
0.48
318
637
1262.4
0.1
194
23
296
46
0.50
306
612
1315
0.3
195
16
291
47
0.52
294
588
1367.6
0.4
205
14
280
0.54
282
563
1420.2
0.5
208
7
274
0.56
269
539
1472.8
0.8
211
6
263
0.57
263
527
1499.1
0.9
208
5
258
0.58
257
514
1525.4
1.0
206
9
249
52
0.59
251
502
1551.7
1.6
189
21
230
53
0.48
318
637
1228.8
0.1
207
30
288
54
0.52
294
588
1331.2
0.3
194
22
272
0.54
282
563
1382.4
0.4
208
11
271
56
0.56
269
539
1433.6
0.9
205
16
253
57
0.57
263
527
1459.2
1.3
203
22
241
陸砂
41
45
45
200
48
砕砂
49
50
51
55
50
海砂
98
第4章
4.4.2
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
予測モデルによる拘束水量の検証
セメントおよび細骨材により拘束できる水量の計算値と実測値の関係を図-4.4.1 および図-
4.4.2 に示す.また,前節までに示した手順により算出した計算結果を表-4.4.3 および表-4.4.4
に示す.
今回検討した範囲内においては,流動性のレベル,水セメント比,高性能 AE 減水剤の添加量
および細骨材の種類が変化しても,セメントおよび細骨材が拘束できる水量の計算値と実測値は
ほぼ一致する結果が得られた.本研究で提案した拡張予測モデルによりモルタル中の自由水量が
概ね算出できることを検証できた.
拘束水量の実測値(kg/m3)
350
細骨材:陸砂
W/C=50%
300
差異が±10kg/m3
のライン
250
フロー200mm
フロー240mm
フロー160mm
フロー120mm
200
200
250
300
350
3
拘束水量の計算値(kg/m )
図-4.4.1 拘束水量の予測値と計算値の比較 ①流動性のレベル
拘束水量の実測値(kg/m3)
350
フロー200mm
300
差異が±10kg/m3
のライン
250
200
200
陸砂 W/C50%
陸砂 W/C55%
陸砂 W/C45%
砕砂 W/C50%
海砂 W/C50%
250
300
350
3
拘束水量の計算値(kg/m )
図-4.4.2 拘束水量の予測値と計算値の比較 ②水セメント比および細骨材種類
99
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
表-4.4.3 拡張予測モデルによる計算結果 ①検討要因 流動性レベル
検討要因
配合条件
細
No. 目標 W/C 骨
フロー
材
(%)
(mm)
種
類
計算結果
細骨材
単位量(kg/m3 )
W
C
S
SP剤
拘束
添加量
水比
(C×%)
βS
細
骨材
拘束
水量
WS
SP剤
の
分散
効果
⊿S
セメン SP剤 粒子
自由 拘束水量
ト単位 の膜 間 水膜 自由水
水量
計算値
厚さ
膜厚さ
表面積 厚さ 距離
W CAL W-W CAL
S
S
W
R
SF
A SP
ZF
S SP
(μm) (μm) (kg/m3 ) (kg/m3 )
2
(μm)
(μm)
(mm /g)
(kg/m3 )
1
343
686
1153
0.1
61
1.07
56,941
0.02
14.4
6.8
0.37
15
328
2
331
661
1205
0.2
64
1.10
58,048
0.03
13.9
6.7
0.27
11
320
3
318
637
1258
0.3
67
1.13
58,916
0.05
13.4
6.5
0.20
8
311
4
306
612
1310
0.5
70
1.18
60,467
0.07
12.8
6.3
0.12
4
302
294
588
1362
0.7
73
1.24
62,401
0.10
12.1
6.0
0.07
3
291
6
282
563
1415
0.9
75
1.31
64,624
0.14
11.3
5.6
0.06
2
280
7
269
539
1467
1.3
78
1.39
67,553
0.19
10.5
5.1
0.14
5
265
8
266
533
1480
1.5
79
1.44
69,467
0.22
10.1
4.8
0.23
8
258
9
263
527
1493
2.0
79
1.53
70,898
0.28
9.8
4.2
0.75
28
235
10
429
857
786
0.0
42
1.03
58,622
0.00
15.4
7.0
0.68
34
394
11
367
735
1048
0.2
56
1.10
59,961
0.03
14.1
6.7
0.40
17
350
12
343
686
1153
0.4
61
1.16
62,096
0.06
13.2
6.4
0.25
10
332
5
13
200
0.14
318
637
1258
0.6
67
1.22
63,629
0.09
12.4
6.1
0.14
6
313
14
306
612
1310
0.7
70
1.25
64,182
0.11
12.0
5.9
0.10
4
302
15
294
588
1362
0.9
73
1.31
65,797
0.14
11.4
5.6
0.09
3
291
282
563
1415
1.1
75
1.35
67,069
0.16
10.9
5.4
0.10
4
278
240
16
50
17
陸
砂
0.14
269
539
1467
1.6
78
1.46
70,804
0.23
10.0
4.7
0.28
11
259
18
318
637
1258
0.0
67
1.03
53,734
0.00
14.7
7.0
0.33
11
307
19
306
612
1310
0.1
70
1.07
54,731
0.02
14.1
6.8
0.22
7
299
20
294
588
1362
0.3
73
1.13
57,115
0.05
13.2
6.5
0.11
4
290
21
282
563
1415
0.6
75
1.22
60,585
0.10
12.1
6.0
0.03
1
281
22
269
539
1467
1.0
78
1.33
64,499
0.16
11.0
5.4
0.05
2
268
23
257
514
1520
1.4
81
1.42
67,335
0.21
10.2
4.9
0.17
6
251
24
254
508
1533
1.6
82
1.46
68,740
0.23
9.9
4.7
0.27
9
245
25
251
502
1546
2.0
82
1.53
69,206
0.29
9.7
4.1
0.75
26
225
26
288
576
1389
0.0
74
1.03
51,601
0.00
14.4
7.0
0.18
5
282
27
276
551
1441
0.6
77
1.22
59,969
0.10
12.0
6.0
0.01
0
275
263
527
1493
1.0
79
1.33
63,736
0.16
10.9
5.4
0.04
1
262
160
28
29
120
0.14
0.14
257
514
1520
1.1
81
1.35
64,182
0.17
10.7
5.3
0.05
2
256
30
245
490
1572
1.5
84
1.44
66,460
0.23
9.9
4.7
0.21
7
238
31
239
478
1598
1.8
85
1.49
67,185
0.26
9.6
4.4
0.40
13
226
32
233
465
1624
2.0
86
1.53
66,184
0.30
9.5
4.0
0.78
24
209
100
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
表-4.4.4 拡張予測モデルによる計算結果 ②検討要因 水セメント比と細骨材種類
検討要因
配合条件
細
No. 目標 W/C 骨
フロー
材
(%)
(mm)
種
類
計算結果
細骨材
単位量(kg/m3 )
W
C
S
SP剤
拘束
添加量
水比
(C×%)
βS
細
骨材
拘束
水量
WS
SP剤
の
分散
効果
⊿S
セメン
ト単位
表面積
A SP
SP剤 粒子
水膜 自由水 自由 拘束水量
の膜 間
計算値
厚さ 膜厚さ 水量
厚さ 距離
W CAL W-W CAL
S WR
S SF
ZF
S SP
(μm) (μm) (kg/m3 ) (kg/m3 )
2
(μm)
(μm)
(mm /g)
(kg/m3 )
33
336
612
1231
0.0
66
1.03
57,914
0.00
15.3
7.0
0.63
22
314
34
330
600
1258
0.1
67
1.07
59,441
0.02
14.7
6.8
0.53
19
311
35
317
577
1310
0.3
70
1.13
62,129
0.05
13.8
6.5
0.38
14
304
36
305
554
1362
0.5
73
1.19
64,576
0.08
13.0
6.2
0.25
9
296
37
292
531
1415
0.8
75
1.28
67,867
0.12
12.0
5.8
0.19
7
285
279
508
1467
1.3
78
1.40
72,960
0.18
10.8
5.2
0.21
8
272
329
731
1153
0.4
61
1.13
56,015
0.06
13.1
6.5
0.15
6
323
305
678
1258
0.7
67
1.22
58,934
0.11
11.9
6.0
0.06
2
303
294
652
1310
0.8
70
1.27
60,095
0.13
11.4
5.8
0.04
1
292
42
282
626
1362
0.9
73
1.32
59,786
0.15
11.2
5.4
0.09
3
278
43
270
600
1415
1.2
75
1.38
62,861
0.19
10.3
5.1
0.07
3
267
44
258
574
1467
1.5
78
1.43
63,988
0.23
9.8
4.7
0.17
6
252
318
637
1262
0.1
48
1.07
58,168
0.02
14.6
6.8
0.46
17
301
46
306
612
1315
0.3
50
1.12
60,347
0.04
13.9
6.6
0.34
13
294
47
294
588
1368
0.4
52
1.15
61,415
0.06
13.4
6.4
0.27
10
284
282
563
1420
0.5
54
1.19
63,197
0.08
12.8
6.2
0.18
7
275
269
539
1473
0.8
56
1.27
65,900
0.11
12.0
5.9
0.15
5
264
263
527
1499
0.9
57
1.29
66,809
0.13
11.7
5.7
0.14
5
258
257
514
1525
1.0
58
1.33
68,348
0.15
11.3
5.5
0.13
5
253
52
251
502
1552
1.6
59
1.46
74,429
0.21
10.3
4.8
0.30
11
240
53
318
637
1229
0.1
29
1.07
60,912
0.02
14.9
6.8
0.62
24
294
54
294
588
1331
0.3
31
1.12
63,010
0.04
14.2
6.6
0.48
18
276
282
563
1382
0.4
32
1.18
66,051
0.06
13.4
6.4
0.30
11
271
56
269
539
1434
0.9
34
1.29
71,900
0.13
12.2
5.7
0.34
13
256
57
263
527
1459
1.3
34
1.39
76,905
0.16
11.3
5.4
0.29
12
252
55
38
陸
砂
39
40
41
45
45
200
48
砕
砂
49
50
51
55
50
海
砂
0.14
0.14
0.10
0.06
101
第4章
4.4.3
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
前章の実験結果に対する検証
3 章では,高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果を考慮していない予測モデルによる検討
を行った.そして,表-3.3.3 に示すように,45 種類のモルタルのブリーディング水量を測定す
るとともに,予測モデルを用いて自由水量を算出して両者を比較した.その結果,高性能 AE 減
水剤による分散効果を考慮しない場合でも,ブリーディング水量が概ね予測できる結果が得られ
た.しかしながら,本章でこれまで述べてきたように,高性能 AE 減水剤によりセメント粒子は
分散されるため,セメントの単位表面積が大きくなる.そのため,拘束できる水量が大きくなる,
あるいは高性能 AE 減水剤がセメント表面に吸着することにより拘束できる水量が少なくなる可
能性がある.
そこで,3 章で実施したモルタル配合に対して,本章で提案した拡張予測モデルを用いた自由
水量の計算を行った.計算結果の一覧を表-4.4.5 に示すとともに,拘束できた水量の計算値と実
測値の比較を図-4.4.3 に示す.
340
拘束水量の実測値(kg/m3)
(3章の実験結果)
320
300
280
W/C 細骨材 混和剤
(%) 種類 添加量
55
50 陸砂 1.0%
45
0.5%
50 陸砂
なし
海砂
50
1.0%
砕砂
260
差異の
大きい配合
240
220
差異が±10kg/m3のライン
200
200 220 240 260 280 300 320 340
拡張予測モデルによる拘束水量の計算値
(kg/m3)
図-4.4.3 拡張予測モデルにより求めた拘束水量の計算値と
3 章の実験結果における拘束水量の実測値との比較
水セメント比,細骨材の種類および高性能 AE 減水剤の添加の有無によらず,拘束できる水量
の計算値と実測値はほぼ一致している.本章で提案する高性能 AE 減水剤による分散効果を考慮
した拡張予測モデルにおいて自由水量が予測できることを改めて示す結果と考えられる.
なお,3 章において,高性能 AE 減水剤による分散効果を考慮しない場合でも,自由水量が概ね
予測できていたのは,3 章で行った実験の範囲(高性能 AE 減水剤の添加量の範囲)では,本章で考
慮した,(a)高性能 AE 減水剤の混和によりセメント粒子が分散し単位表面積が増加するプラスの
効果と,(b)高性能 AE 減水剤が粒子表面に吸着することで拘束できる水膜が薄くなるマイナスの
102
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
効果とが,概ね同程度の効力を持っていたためと考えられる.図-4.3.5 から,高性能 AE 減水剤
の添加量が 1.0%の場合には,セメントの単位表面積は 1.3 倍程度に増加する.一方,表-4.4.5
に示すように,高性能 AE 減水剤を 1.0%添加した場合にセメントが拘束できる水膜厚さは,水セ
メント比や細骨材の種類によらず約 5.5μm と算出されており,3 章で計算に用いた 7.2μm の約 7
割程度となっている.このため,結果として 3 章の予測モデルにおいても自由水量が予測できて
いたと考えられる.
なお,図-4.4.3 においても,拘束水量の計算値と実測値が大きくかい離しているデータが散見
される.3 章と同様に,拘束水量の計算値と実測値の差異とブリーディング率との関係を図-4.4.4
に示す.ブリーディング率が 10%以上と大きい場合において,差異が大きくなっている.本研究
では,水とセメントが均質な状態で存在しているとの仮定に基づいているため,ブリーディング
が極端に多い条件の場合には,差異が大きくなっていると考えられる.予測モデルの精度を更に
高めるには,ブリーディングが急増する条件(水とセメントとが均質に存在できなくなる条件)を予
測モデルに組み込む必要があり,今後の課題である.
ブリーディング率(%)
20
15
10
W/C 細骨材 混和剤
(%) 種類 添加量
55
50 陸砂 1.0%
45
0.5%
50 陸砂
なし
海砂
50
1.0%
砕砂
5
0
0
10
20
30
40
50
拘束水量の計算値と実測値の差異(kg/m3)
図-4.4.4 拡張予測モデルにより求めた拘束水量の計算値と 3 章の実験結果の実測値との差異と
ブリーディング率の関係
103
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
表-4.4.5 3 章の実験結果に対する拡張予測モデルによるブリーディング水量の検証
検討要因
細
No. 骨
材
種
類
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
SP
W/C 剤添
(%) 加率
(%)
50
1.0
45
0.5
0.0
50
海
砂
1.0
砕
砂
計算結果
単位量(kg/m3 )
55
陸
砂
配合条件
W
C
S
311
298
286
273
254
235
318
306
294
276
263
245
341
329
317
305
294
276
252
355
337
318
300
276
245
214
337
306
276
245
214
318
306
294
276
263
245
214
337
318
306
294
276
263
245
566
542
519
496
462
427
637
612
588
551
527
490
757
731
705
678
652
613
561
710
674
637
600
551
490
429
674
612
551
490
429
637
612
588
551
527
490
429
674
637
612
588
551
527
490
1341
1394
1447
1499
1578
1657
1262
1315
1368
1447
1499
1578
1105
1157
1210
1262
1315
1394
1499
1105
1184
1262
1341
1447
1578
1710
1184
1315
1447
1578
1710
1229
1280
1331
1408
1459
1536
1664
1184
1262
1315
1368
1447
1499
1578
細骨材
SP剤 セメン
細骨材 の ト単位
拘束 拘束 分散 表面積
A SP
水比 水量 効果
W
⊿S
S
βS
(mm2 /g)
3
(kg/m )
0.14
0.06
0.10
71
74
77
80
84
88
67
70
73
77
80
84
59
62
64
67
70
74
80
59
63
67
71
77
84
91
63
70
77
84
91
28
29
30
32
33
35
38
45
48
50
52
55
57
60
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.2
1.2
1.2
1.2
1.2
1.2
1.2
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
104
71,406
70,223
68,806
67,255
64,500
61,353
68,282
67,228
65,999
63,984
62,402
59,799
65,907
65,068
64,142
63,218
62,146
60,309
57,431
63,829
62,624
61,300
59,813
57,441
53,685
48,585
54,180
52,215
49,696
46,446
42,034
75,948
75,596
75,130
74,439
73,842
72,958
71,059
73,460
72,532
71,885
71,102
69,849
68,822
67,201
粒子
SP剤
間
膜厚
距離
S SP
ZF
(μm)
(μm)
0.14
0.14
0.15
0.15
0.16
0.16
0.15
0.15
0.15
0.16
0.16
0.17
0.15
0.15
0.16
0.16
0.16
0.17
0.17
0.08
0.08
0.08
0.08
0.09
0.09
0.10
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.13
0.13
0.13
0.13
0.14
0.14
0.14
0.14
0.14
0.14
0.14
0.14
0.15
0.15
11.9
11.8
11.7
11.6
11.4
11.2
11.6
11.5
11.4
11.3
11.2
11.0
11.3
11.2
11.2
11.1
11.0
10.9
10.7
13.1
13.0
12.9
12.7
12.5
12.2
11.8
15.0
14.8
14.5
14.1
13.7
12.0
12.0
11.9
11.9
11.8
11.7
11.6
11.8
11.7
11.6
11.6
11.5
11.4
11.2
水膜 自由水 自由 拘束水量
水量
計算値
厚さ 膜厚
S W R さS SF W CAL W-W CAL
(μm)
(μm) (kg/m3 ) (kg/m3 )
5.6
5.6
5.5
5.5
5.4
5.4
5.5
5.5
5.5
5.4
5.4
5.3
5.5
5.5
5.4
5.4
5.4
5.3
5.3
6.2
6.2
6.2
6.2
6.1
6.1
6.0
7.0
7.0
7.0
7.0
7.0
5.7
5.7
5.7
5.7
5.6
5.6
5.6
5.6
5.6
5.6
5.6
5.6
5.5
5.5
0.34
0.31
0.30
0.28
0.26
0.23
0.25
0.23
0.22
0.20
0.19
0.17
0.17
0.16
0.15
0.14
0.13
0.12
0.11
0.32
0.29
0.25
0.20
0.14
0.05
0.05
0.49
0.38
0.24
0.06
0.00
0.32
0.31
0.30
0.28
0.27
0.25
0.20
0.26
0.24
0.21
0.20
0.16
0.15
0.11
14
12
11
9
8
6
11
9
8
7
6
5
8
8
7
6
5
4
3
14
12
10
7
4
1
1
18
12
7
1
0
16
14
13
11
11
9
6
13
11
9
8
6
5
4
226
212
198
184
162
141
241
227
213
192
177
156
273
260
246
232
218
197
169
282
262
242
221
194
160
124
256
224
192
159
126
275
263
250
232
219
201
170
279
260
247
234
214
201
181
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
4.5 本章のまとめ
本章では,高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果を考慮することで,水とセメントの混
合比率および高性能 AE 減水剤の添加量に基づき,セメント粒子の凝集・分散挙動を表現するモ
デルを構築した.そして,凝集・分散挙動を考慮した後のセメント凝集体の表面に拘束できる水
量を算出し,配合条件からモルタルの自由水量を推定する手法を提案した.得られた知見を以下
に示す.
(1) 水セメント比や高性能 AE 減水剤の使用有無によらず,流動性が等しいペーストではペー
スト中のセメントの分散状態は等しいと仮定し,水とセメントの混合比から求まるファン
デルワールス力による凝集力と回転慣性力による分散力の関係から得られる凝集挙動と,
高性能 AE 減水剤によるセメント粒子の分散効果を考慮することで,セメント表面に拘束
できる水膜厚さおよび高性能 AE 減水剤の膜厚さを求めることができる.
(2) 上記により得られる水膜厚さと高性能 AE 減水剤の膜厚さには相関関係が認められ,高性
能 AE 減水剤の膜厚さが増加するに従い,拘束できる水膜厚さは小さくなる.
(3) 温度条件が変化した場合,高性能 AE 減水剤の添加量が同一でもペーストの流動性は相違
し,添加量が多いほどその影響は顕著となる.ただし,ブリーディング試験の結果,温度
が変化しても発生するブリーディング水量はほとんど変化しない.
(4) 上記による得られる凝集・分散挙動を考慮した後にセメント粒子表面に拘束できる水量と,
前章で示した相対フロー面積比と水粉体容積比の関係から得られる細骨材の拘束水量を
用いることで,高性能 AE 減水剤を用いた場合においても,配合条件からモルタルの自由
水量を推定できる.
105
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
第 4 章の参考文献
1)
日本材料学会:コンクリート混和材料ハンドブック,エヌ・ティー・エス,pp.121-122,2004.
2)
土木学会:コンクリート技術シリーズ 47,コンクリート用化学混和剤の性能評価,2002.
3)
服部健一,鈴江重俊,岡田英三郎:高性能減水剤のセメント粒子への吸着,セメント・コン
クリート,No.416,pp.10-19,1981.10
4)
坂井悦郎,大門正機:粒子間ポテンシャルの計算による高性能 AE 減水剤の作用機構,セメ
ント・コンクリート,No.595,pp.13-22,1996.6
5)
吉岡一弘,坂井悦郎,大門正機,北原文雄:セメント粒子の分散に及ぼす高性能減水剤の立
体障害効果の役割,コンクリート工学年次論文集,Vol.16,No.1,pp.335-340,1994.
6)
太田晃,魚本健人:ポリカルボン酸系分散剤の分散効果に関する検討,コンクリート工学年
次論文報告集,Vol.21,No.2,pp.79-84,1999.
7)
コンクリート用化学混和剤協会ホームページ:http://www.moon.sphere.ne.jp/jcaa/,製品情報,
高性能 AE 減水剤
8)
坂井悦郎:高性能(AE)減水剤 発明の意義,セメント・コンクリート,No.793,pp.2-8,2013.3
9)
吉岡一弘:セメント粒子の凝集構造に及ぼす鉱物組成ならびに練混ぜ方法の影響,広島大学
学位論文,1999.3
10) 森田大志,後藤卓,名和豊春:レオロジー的アプローチによる分散剤の吸着層厚さの推定,
セメント・コンクリート論文集,No.65,pp.552-559,2011
11) 左巻健男:化学超入門,pp.86-100,日本実業出版社, 2001.1
12) 太田晃,魚本健人:微粉末粒子に対するポリカルボン酸系分散剤の分散効果に関する検討,
コンクリート工学論文集,Vol.10,No.2,pp.131-140,1999.5
13) 熊野知司,矢村潔,名倉健二:ポリカルボン酸系高性能 AE 減水剤を用いた高流動ペースト
の粘度の経時変化予測手法の検討,土木学会論文集 E,Vol.62,No.1,pp.1-14,2006.2
14) 飯場栄二,木之下光男,稲垣順司,名和豊春:ポリカルボン酸系分散剤の化学構造が流動性
に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.22,No.2,pp.151-156,2000
15) 名和豊春,一坊寺秀夫:高性能 AE 減水剤添加セメントペーストの流動性に及ぼす温度の影
響,コンクリート工学年次論文集,Vol.20,No.2,pp.79-84,1998
16) 荒島猛,牧保峯,斉藤和秀,友澤史紀:高性能 AE 減水剤コンクリートの性質に及ぼす温度
変化の影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.22,No.2,pp.373-378,2000
17) 本樫義人,上原匠,梅原秀哲,荒島猛:高性能 AE 減水剤を使用したコンクリートに練上り
温度が与える影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.23,No.2,pp.301-306,2001
18) 岡村隆吉,松浦茂,橋本誠一,宇智田俊一郎,練混ぜ温度が高ビーライトセメントの流動特
性に及ぼす影響,コンクリート工学論文集,第 6 巻,第 2 号,pp.127-137,1995
19) 柳澤太一,山田一夫,羽原俊祐,須藤俊吉:練混ぜ温度が高流動コンクリートの流動性に及
ぼす影響の作用機構,コンクリート工学年次論文集,Vol.21,No.2,pp.547-552,1999
20) 加藤弘義,吉岡一弘,中村明則:高性能 AE 減水剤によるセメント粒子の分散効果に及ぼす
温度の影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.21,No.2,pp.163-168,1999
106
第4章
高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
21) 山田一夫,羽原俊祐,松久真人:作用機構から考えた高性能 AE 減水剤の分散能力を表す二
つの作用パラメータ―限界添加量と分散効率―,コンクリート工学論文集,第 10 巻,第 3 号,
pp.61-68,1999
22) (社)日本材料学会編:コンクリート混和材料ハンドブック,pp.119-122,エヌ・ティー・エス,
2004.4
107
第5章
第5章
モルタルにおける流動性の推定
モルタルにおける流動性の推定
5.1 はじめに
前章までの検討により,各材料の単位量や物理的性質からモルタル中の自由水量を推定するこ
とが可能となった.一方で,モルタルの流動性を変化させるには,水とセメントの混合比を変化
させる,もしくは高性能 AE 減水剤の添加量を増減させる必要がある.3 章の図-3.3.3 および図
-3.3.4 に示すように,水セメント比を大きくすれば流動性は大きくなるが,ブリーディング水量
も増加する.また,4 章の図-4.3.4 および図-4.3.6 に示すように,高性能 AE 減水剤の添加量を
増加させれば流動性は増加するが,セメントの表面に拘束する高性能 AE 減水剤の膜厚さが増加
するため,拘束できる水膜厚さは減少する.このように,モルタルの流動性と材料分離抵抗性(ブ
リーディングの抑制)は表裏一体の関係にある.
また,流動性は,設計基準強度や耐久性確保の観点から定められる水セメント比と同様に,対
象とする構造物の配筋条件や施工条件によって予め定められる要因(与条件)である.適切な材料分
離抵抗性を確保していても,配筋条件や施工条件に見合った流動性を有していなければ,施工欠
陥のない密実なコンクリート構造物を構築することはできない.そのため,配合設計段階では,
材料分離抵抗性と流動性をともに考慮する必要がある.
そこで,本章では配合条件や材料の物理的性質からモルタルの流動性を予測する手法について
検討することにした.図-4.3.3 に示すように,セメントの分散の程度(単位表面積)が相違すれば
流動性のレベルも相違し,両者にはほぼ線形の関係があることを確認した.また,図-4.3.5 に示
すように,高性能 AE 減水剤の添加量に応じてセメントの単位表面積の増加率が増加し,水セメ
ント比のレベルによらず,両者には一意的な関係があることを確認した.このため,ペーストレ
ベルにおいては,すでに,配合条件(水セメント比)および高性能 AE 減水剤の添加量から,その流
動性を推定することは可能である.
一方で,モルタルはペーストと細骨材との混合物であるため,その流動性はペースト自体の流
動性のみならず,ペーストと細骨材との混合比や,骨材自体の形状などによっても相違すると考
えられる.
そこで,モルタルに所定の流動性を付与するには,モルタル中の細骨材かさ容積に応じて,セ
メントの分散の程度を変化させる必要があると考え,種々の配合条件のモルタル実験結果を整理
した.その結果,流動性のレベルによらず,モルタル中の細骨材かさ容積に応じて,セメントペ
ーストにおいて目標とするフローの確保に必要としたセメントの分散の程度とモルタルにおいて
同じフローの確保に必要となるセメントの分散の程度との比が一意的に表現できることを確認し
た.そして,この関係を用いることで,流動性のレベルを考慮しつつ,水セメント比や使用材料
の物理的性質から,ブリーディングが最小となる配合条件(材料の単位量および高性能 AE 減水剤
の使用量)が算出できることを実験結果と比較して検証した.
なお,モルタル中の細骨材かさ容積とは,モルタル中の細骨材容積を細骨材の実積率で除した
値である.実積率は,骨材の形状や粒度分布を相対的に表現できる指標である.また,後述する
ように,モルタルの流動性を考慮する上では,モルタルを流動させる要因となるペーストの容積
109
第5章
モルタルにおける流動性の推定
と,流動を低下させる要因となる細骨材の容積との比を用いる方が適切と考えられる.そこで,
本研究では,使用する細骨材の形状や混合比を総括的に表現できる指標である「かさ容積」を用
いることにした.
モルタル中の細骨材かさ容積(m 3 /m 3 )=
110
モルタル中の細骨材容積(L/m 3 )
細骨材の実積率(%) 10
第5章
モルタルにおける流動性の推定
5.2 モルタルにおける流動性とセメント粒子の分散の関係
4 章で提案したモデルでは,
「流動性の等しいペーストでは,ペースト中のセメントの分散の程
度は等しい」と仮定した.そして,セメントの分散の程度(単位表面積)と流動性のレベル(フロー
値)には高い相関関係があることを示し,仮定が妥当であることを確認した(図-4.3.3).さらに,
高性能 AE 減水剤の添加量を変化させたペーストのフロー試験結果を整理し,高性能 AE 減水剤の
添加量の増加に伴い,セメントの単位表面積は増加し,水セメント比のレベルによらず両者には
一意的な関係があることを確認した(図-4.3.5).これらの関係を用いれば,配合条件(水およびセ
メントの単位量,ならびに高性能 AE 減水剤の添加量)が与えられた時点で,ペーストの流動性を
予測することが可能である.
① 高性能 AE 減水剤を用いない場合,ペーストの流動性は,ペースト中のセメントの分散の程度
(単位表面積)と直線関係にある.また,セメントの単位表面積は,水とセメントの混合比によ
り得られる平均粒子間距離に基づく,ファンデルワールス力による凝集力と粒子の回転慣性
による分散力の関係から凝集を考慮することで算出できる.
② 高性能 AE 減水剤を用いたペーストの場合,高性能 AE 減水剤の添加量に応じて,ペースト中
のセメントの単位表面積の増加率は大きくなり,水セメント比の水準によらず,両者には一
意的な関係がある.
③ ①および②から,ペーストの配合条件が与えられた時点で,ペーストの流動性を推定できる.
モルタル
ペースト
(モルタルを流動させる要因)
=
+
細骨材
(流動を低下させる要因)
図-5.2.1 モルタルの構成材料の概念図
同じ流動性を有する
ペースト
細骨材
同じ流動性を
有するペースト
細骨材
モルタル
モルタル
モルタルの流動性が大きい
(ペーストの割合が多い)
モルタルの流動性が小さい
(ペーストの割合が少ない)
モルタルの流動性の違い①ペーストと細骨材との混合比率
実積率の高い
細骨材
同じ流動性を有する
ペースト
同じ流動性を有する
ペースト
実積率の小さい
細骨材
モルタル
モルタル
モルタルの流動性が大きい
(細骨材による流動性の低下の程度が小さい)
モルタルの流動性が小さい
(細骨材による流動性の低下の程度が大きい)
モルタルの流動性の違い②細骨材の実積率
図-5.2.2 モルタルとしての流動性を相違する要因に関する概念図
(同一の流動性を有するペーストから構成される場合)
111
第5章
モルタルにおける流動性の推定
一方で,モルタルは,
「ペースト」と「細骨材」との混合物である.このうち,ペーストはモル
タルを流動させる要因である.一方で,細骨材はモルタルの流動性を低下する要因と考えられる.
例えば,同一の流動性を有するペーストであったとしても,モルタル中の細骨材の割合が増加す
ると,ペーストの割合が減少するとともに,細骨材同士による接触や噛み合いが生じる機会が増
えるため,モルタルの流動性は小さくなると想定される.つまり,モルタルとして所要の流動性
を確保するには,モルタル中の細骨材の容積割合に応じて,ペーストの流動性を調整する必要が
あることになる.また,モルタル中の細骨材の割合が等しい場合でも,細骨材の形状や粒度分布
によりモルタルの流動性が相違することも想定される.
そこで,4.4.2 節のモルタル実験結果を整理した.結果を図-5.2.3 に示す.横軸には,モルタ
ルの流動性を低下させる要因となる細骨材の容積割合,および細骨材の形状(実積率)を考慮できる
指標として「細骨材かさ容積」を用いた.一方,縦軸には,表-4.3.3 および表-4.3.4 に示され
る材料の単位量ならびに高性能 AE 減水剤の添加量を用いて求めた凝集・分散挙動を考慮したセ
メントの単位表面積と,同じ流動性を有するセメントペーストでのセメントの単位表面積との比
率(同一の流動性確保に必要なセメントの単位表面積の増加率)を用いた.なお,セメントペースト
フロー確保に必要なセメント単位表面積の増加率
⊿A (セメントペーストに対する増加率)
におけるセメントの単位表面積は図-4.3.3 に示す近似式から算出した.
1.5
1.4
1.3
陸砂,W/C50,フロー200
陸砂,W/C55,フロー200
陸砂,W/C45,フロー200
砕砂,W/C50,フロー200
海砂,W/C50,フロー200
陸砂,W/C50,フロー240
陸砂,W/C50,フロー160
陸砂,W/C50,フロー120
1.2
1.1
1.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
細骨材のかさ容積(m3/m3)
1.0
図-5.2.3 細骨材かさ容積と目標とする流動性確保に必要なセメントの単位表面積の増加率
若干のばらつきがあるものの,流動性のレベル,水セメント比や細骨材の種類によらず,両者
にはある一意的な関係があることがわかる.このことは,モルタルの流動性は,モルタル中の細
骨材容積比(かさ容積)に大きく影響されることを示しており,上記で考察したように,モルタル中
の細骨材かさ容積に応じてペーストの流動性を高める必要があること,つまり,本モデルにおい
ては,よりセメントを分散させ,単位表面積を大きくさせる必要があることを示していると考え
られる.
なお,図-5.2.3 では,モルタル中の細骨材かさ容積が 0.6 程度以上となると所要の流動性の確
112
第5章
モルタルにおける流動性の推定
保に必要となるセメントの単位表面積の増加率が急増している.今回使用した細骨材の実積率は
65.5~68.1%であり,細骨材かさ容積 0.6 はモルタル中の細骨材容積比で 0.4 程度に相当する.モ
ルタルフロー試験から細骨材の見掛けの拘束水比について研究した文献
1)
によれば,モルタル中
の細骨材容積比が 0.3~0.4 程度以上となると,細骨材による噛み合いが顕著となることから,見
掛け上,細骨材の拘束水比が急増することを示している.また,文献
2),3)
によれば,細骨材の噛
み合いによる影響が少なくなるように,高流動コンクリートの配合設計ではモルタル中の細骨材
容積比を 0.4 程度に設定することが望ましいとしている.細骨材容積比が 0.4 程度(かさ容積が 0.6
程度)より大きくなると,モルタルとして所要の流動性を確保するために,モルタル中のペースト
の流動性を急激に高める必要があることを裏付けるものと考えられる.
図-5.2.3 から,細骨材かさ容積に応じて,モルタルとして所要の流動性を確保するために必要
となるセメントの単位表面積の増加率を推定できる.先述のように,すでにペーストでは所要の
流動性の確保に必要なセメントの単位表面積が把握できていることから,モルタルとして所要の
流動性を確保するために必要となるセメントの単位表面積も推定できることになる.
そのため,これまでの検討結果を統合することで,配合条件(各材料の単位量および高性能 AE
減水剤の添加量)から,モルタルの流動性を推定することが可能となる.また,前章において配合
条件からモルタルの自由水量も推定できることから,モルタルレベルにおいては,材料分離抵抗
性と流動性をともに考慮した配合設計を行うことができる.そこで,次節においてその具体的な
手順について示す.
113
第5章
5.3
モルタルにおける流動性の推定
流動性を考慮したモデルによる自由水量の算定
図-5.2.3 に示す関係を用いることで,与条件として流動性のレベルを考慮することが可能とな
る.本研究で提案したモデルによる,所要の流動性を有しつつ,自由水量が最小となるモルタル
配合の算定フローを図-5.3.1 に示すとともに,概要を以下に記述する.与条件は,流動性レベル
と水セメント比であり,事前に使用材料の物理的性質(各材料の密度,セメントの粒度分布,細骨
材の拘束水比と実積率)を把握しておく必要がある.
(1)
所要とする流動性のレベルに応じたセメントの分散の程度(単位表面積)の算出
まず,モルタル中の細骨材かさ容積を任意に設定し,図-5.2.3 から,モルタルとして所要の流
動性の確保に必要なセメントの単位表面積の増加率⊿A を求める.次に,セメントペーストにお
いて同じ流動性の確保に必要なセメントの単位表面積 AP を図-4.3.3 より算出する.そして,目
標とする流動性の確保に必要なセメントの単位表面積 AM を求める.
AM  ⊿A  AP
(2)
(5.1)
細骨材の拘束水量の算出
モルタル中の細骨材かさ容積を設定した時点で,各材料の単位量(セメント:C,水:W,細骨
材:S)は既知となるから,細骨材による拘束水量 WS が算出できる(事前に細骨材の拘束水比 βS を
求めておく必要がある).また,細骨材の拘束水量以外の水量 WW を求める.
(3)
WS  βS  S
(5.2)
WW  W-WS
(5.3)
高性能 AE 減水剤の添加量の算出
細骨材が拘束する水量以外の水量とセメントの混合比率からファンデルワールス力による凝集
力と回転慣性力による分散力との関係により高性能 AE 減水剤を用いない場合のセメントの単位
表面積 ANONSP が算出できる.この単位表面積と上記の(1)で得られた所要の流動性確保に必要なセ
メントの単位量面積 AM との比率が,高性能 AE 減水剤により分散させる必要があるセメントの単
位セメント量の増加率(すなわち,高性能 AE 減水剤による分散効果⊿S)であるから,図-4.3.5 の
関係式から必要な高性能 AE 減水剤の添加量 SP が算出できる.
(4)
自由水量の算出
モルタルとして所要の流動性の確保に必要なセメントの単位表面積 AM および高性能 AE 減水剤
の添加量 SP から,高性能 AE 減水剤の膜厚さ SSP が得られる.また,細骨材の拘束水量以外の水
量 WW と流動性の確保に必要なセメントの単位表面積 AM の関係からセメントの平均粒子間距離 ZF
が算出できる.
114
第5章
モルタルにおける流動性の推定
一方で,高性能 AE 減水剤の膜厚さと水膜厚さの関係図である図-4.3.6 から,セメントが拘束
できる水膜厚さ SWR も算出できる.自由水の膜厚さ SWF は,凝集後の平均粒子間距離 ZF から水膜
厚さ SWR と高性能 AE 減水剤の膜厚さ SSP を差し引くことで得られ,最終的に式(5.7)から自由水量
WB が算出できる.
S SP  SP/  AM  C 
(5.4)
Z F = 2 ×WW / (AM × C )
(5.5)
SWF  Z F / 2-SWR-S SP
(5.6)
WB  SWF   AM  C 
(5.7)
上記の算定手順で細骨材のかさ容積をパラメータとして順次計算することにより,自由水量が
最小となる配合条件を算出することができる.
115
第5章
モルタルにおける流動性の推定
与条件 流動性のレベル,水セメント比,材料の物理的性質
(a)流動性レベルに対応するセメントの単位表面積の算出
(1)細骨材のかさ容積を任意に設定
(2)流動性確保に必要なセメントの単位表面積の増加率⊿Aを選定(図-5.2.3)
(3)ペーストの場合に同じ流動性の確保に必要なセメントの単位表面積APを選定(図-4.3.3)
(4)モルタルにおいて必要となるセメントの単位表面積AMを算出 AM=AP×⊿A
(b)細骨材の拘束水量の算出
(1)水セメント比,設定したかさ容積より各材料の単位量を算出
(セメント:C,水:W,細骨材:S)
(2)細骨材の拘束水比βSに単位量を乗じ拘束水量WSを算出
(拘束水比は3章の予測モデルに準じて求めておく)
WS=βS×S
(3)細骨材の拘束水量以外の水量WWを算出 WW=W-WS
(c)高性能AE減水剤の添加量の算出
(1)配合条件から高性能AE減水剤を用いない場合のセメントの単位表面積ANONSPを算出
(ファンデルワールス力による凝集力と回転慣性力による分散力の関係)
(2)(a)で求めた必要なセメントの単位表面積AMとの比(高性能AE減水剤の分散効果⊿S)を算出
⊿S=AM÷ANONSP
(3)図-4.3.5から,必要な高性能AE減水剤の添加量SPを算出
(d)自由水量の算出
(1)セメントの単位表面積AMと高性能AE減水剤の添加量SPからその膜厚さSSPを算出
SSP=SP/(AM×C)
(2)セメントの単位表面積AMと細骨材の拘束水量以外の水量WWから凝集・分散を考慮した
後のセメントの平均粒子間距離ZFを算出
ZF=2×WW/(AM×C)
(3)図-4.3.6からセメント表面に拘束できる水膜厚さSWRを算出
(4)自由水の膜厚さSWFを算出
SWF=ZF/2-SWR-SSP
(5)自由水量WBの算出 WB=SWF×(AM×C)
図-5.3.1 拡張予測モデルによる流動性レベルを考慮した自由水量の算出フロー
116
第5章
モルタルにおける流動性の推定
5.4 実験結果との比較による予測精度の検証
提案した予測モデルの妥当性を検証するために,4.4.2 節で行ったモルタル実験結果との比較を
行った.検証結果を図-5.4.1~図-5.4.2 に示す.
流動性のレベル,水セメント比および細骨材の種類が相違しても,所要の流動性確保に必要な
高性能 AE 減水剤の添加量の実験値と計算値はほぼ一致することが確認できた.前節で提案した
手法により配合条件からモルタルの流動性を概ね推定できることを示す結果と考えられる.また,
モルタルのブリーディング試験結果から得られるブリーディング水量と予測モデルにより推定さ
れる自由水量が最小となる細骨材かさ容積もほぼ一致しているとともに,その絶対値もほぼ一致
している.水セメント比は与条件であるため,ブリーディングが最小となる各材料の単位量の組
み合わせが選定できることになる.
以上の結果から,本章で提案した手法を用いることで,流動性のレベル,水セメント比および
使用材料の物理的性質を与条件として,所要の流動性を有しつつ,ブリーディング(自由水量)が最
小となるモルタルの配合条件を概ね算出できることが確認できた.
なお,今回の実験および計算結果でも示されるように,高性能 AE 減水剤を用いることで,少
ないペースト容積でも高い流動性のモルタルを得ることができる一方で,高性能 AE 減水剤の添
加量が過剰となると,ブリーディングが急増する事態が生じる場合もある.単位粉体量の多い高
流動ならび高強度コンクリートを除く,本研究で対象としたような一般的なコンクリート構造物
の構築に用いられるコンクリートでは,材料分離抵抗性に関する配慮が重要であり,材料の単位
量および高性能 AE 減水剤の添加量を適切に設定する必要があるといえる.
117
2.0
フロー200mm確保に必要な
高性能AE減水剤添加量(C×%)
2.5
細骨材:陸砂
W/C=50%
フロー240mm
計算値
1.5
実測値
1.0
0.5
2.0
フロー120mm確保に必要な
高性能AE減水剤添加量(C×%)
0.0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
2.5
細骨材:陸砂
W/C=50%
フロー160mm
計算値
1.5
実測値
1.0
0.5
2.0
フロー200mm確保に必要な
高性能AE減水剤添加量(C×%)
0.0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
2.5
細骨材:砕砂
W/C=50%
フロー200mm
計算値
1.5
実測値
1.0
0.5
0.0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
2.5
2.0
フロー200mm確保に必要な
高性能AE減水剤添加量(C×%)
フロー200mm確保に必要な
高性能AE減水剤添加量(C×%)
フロー200mm確保に必要な
高性能AE減水剤添加量(C×%)
フロー160mm確保に必要な
高性能AE減水剤添加量(C×%)
フロー240mm確保に必要な
高性能AE減水剤添加量(C×%)
第5章
細骨材:陸砂
W/C=45%
フロー200mm
計算値
1.5
実測値
1.0
0.5
0.0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
モルタルにおける流動性の推定
2.5
2.0
細骨材:陸砂
W/C=50%
フロー200mm
計算値
1.5
実測値
1.0
0.5
0.0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
2.5
2.0
細骨材:陸砂
W/C=50%
フロー120mm
計算値
1.5
実測値
1.0
0.5
0.0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
2.5
2.0
細骨材:海砂
W/C=50%
フロー200mm
計算値
1.5
実測値
1.0
0.5
0.0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
2.5
2.0
細骨材:陸砂
W/C=55%
フロー200mm
計算値
1.5
実測値
1.0
0.5
0.0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
図-5.4.1 所定の流動性の確保に必要な高性能 AE 減水剤の添加量の計算値と実測値の比較
118
第5章
50
計算値
40
実測値
細骨材:陸砂
W/C=50%
フロー240mm
ブリーディング水量(kg/m3)
ブリーディング水量(kg/m3)
50
30
20
10
細骨材:陸砂
W/C=50%
フロー160mm
計算値
30
実測値
20
10
ブリーディング水量(kg/m3)
ブリーディング水量(kg/m3)
細骨材:砕砂
W/C=50%
フロー200mm
計算値
30
実測値
20
10
ブリーディング水量(kg/m3)
ブリーディング水量(kg/m3)
細骨材:陸砂
W/C=45%
フロー200mm
計算値
30
実測値
20
10
40
細骨材:陸砂
W/C=50%
フロー120mm
計算値
30
実測値
20
10
40
細骨材:海砂
W/C=50%
フロー200mm
計算値
30
実測値
20
10
0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
50
0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
50
40
計算値
30
0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
50
0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
50
40
40
細骨材:陸砂
W/C=50%
フロー200mm
0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
50
ブリーディング水量(kg/m3)
ブリーディング水量(kg/m3)
0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
50
40
モルタルにおける流動性の推定
実測値
20
10
40
細骨材:陸砂
W/C=55%
フロー200mm
計算値
30
実測値
20
10
0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
0
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
細骨材のかさ容積(m3/m3)
図-5.4.2 ブリーディング水量の計算値と実測値の比較
119
第5章
モルタルにおける流動性の推定
実験および計算により得られたブリーディング水量が最小となる細骨材のかさ容積を,モルタ
ブリーディング水量が最小となる
細骨材のかさ容積(m3/m3)
ルフローおよび水セメント比との関係で整理して図-5.4.3 および図-5.4.4 に示す.
1.00
0.95
水セメント比50%
細骨材 陸砂
0.90
計算値
実測値
0.85
0.80
0.75
0.70
0.65
0.60
100
150
200
モルタルフロー(mm)
250
ブリーディング水量が最小となる
細骨材のかさ容積(m3/m3)
図-5.4.3 ブリーディング水量が最小となる細骨材のかさ容積とモルタルフローの関係
1.00
0.95
フロー200mm
細骨材 陸砂
0.90
計算値
実測値
0.85
0.80
0.75
0.70
0.65
0.60
40
45
50
55
水セメント比(%)
60
図-5.4.4 ブリーディング水量が最小となる細骨材のかさ容積と水セメント比の関係
計算値および実験値とも,流動性レベルが高く,水セメント比が小さい配合ほど,ブリーディ
ングを低減するにはモルタル中の細骨材かさ容積を小さく設定する必要がある結果となっている.
2 章で示すように,普通コンクリートの配合設計方法では,コンクリートのスランプを高めるほ
ど,粗骨材容積を少なくするように定められている.このことは,モルタルレベルに置き換えれ
ば,流動性のレベルを高めるほど,細骨材容積を小さく設定する必要があることと同義であると
考えられ,本章で提案した予測モデルが,これまでの経験に基づく配合設計方法と同様の判定を
行えることを示しているといえる.
また,水セメント比については,普通コンクリートの配合設計方法では,水セメント比が小さ
いほど,細骨材率を小さくするように定めている.これは,流動性が等しいコンクリートでは,
単位水量がほぼ一定であるため,水セメント比が小さくなると単位セメント量が増加するので,
コンクリートの流動性を低下させる要因となる粗骨材容積をほぼ一定とするには(モルタルとし
て一定の流動性を確保するには),細骨材容積を少なくする必要があるためと考えられる.本研究
120
第5章
モルタルにおける流動性の推定
で提案したモデルによる計算結果においても,モルタルとして同じ流動性を確保するには,水セ
メント比が小さい場合ほど細骨材容積を少なくさせる必要がある結果となっており,整合が取れ
ていると考えられる.
予測モデルによる計算から得られたブリーディング水量(自由水量)が最小となる細骨材かさ容
積は,実測値と比較して 0.05m3/m3 程度小さくなっている.この原因について考察する.本章で提
案したモデルでは,高性能 AE 減水剤の添加量が増加するほど,セメント粒子は分散して単位表
面積が大きくなる一方で,セメントが単位表面積あたりに拘束できる水量は少なくなると考えて
いる.そして,実験結果に基づき,図-4.3.5 に示す高性能 AE 減水剤の添加量とセメントの単位
表面積の増加率の関係,ならびに図-4.3.6 に示す高性能 AE 減水剤の膜厚さと水膜厚さの関係を
構築した.予測モデルにおける推定では,これらの図中に示した近似式を活用していることから,
推定精度は近似式の精度に依存することになる.このため,実測値と計算値との差異を小さくす
るには,実験データを蓄積して近似式の精度を向上させる必要があるものと考えられる.ちなみ
に,モルタルにおける細骨材のかさ容積 0.05m3/m3 とは,標準的なコンクリートに換算すると単位
細骨材量で約 50kg/m3(容積で約 20L/m3)に相当する.このため,実用上は現状でも十分な予測精度
であると考えられる.
一方で,図-5.4.2 に示すように,流動性レベル,水セメント比および細骨材の種類によらず,
ブリーディングが最小となったかさ容積から,わずかにかさ容積を高めると,急激にブリーディ
ング水量が増加する結果が得られている.また,この図と図-5.4.1 とを比較すると,ブリーディ
ングが最小,あるいは急増し始めるかさ容積付近では,かさ容積の若干の変化により高性能 AE
減水剤の添加量が著しく増減していることがわかる.このことは,ブリーディング水量が最小と
なるかさ容積を有するモルタルでは,高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果がほぼ限界に
達しており,それ以上に添加量を高めてもセメントの分散が進みにくく,高性能 AE 減水剤の膜
厚さのみが増加することになり,結果として拘束できる水膜厚さが少なくなっていることを示す
ものと考えられる.つまり,実測データにおけるブリーディング水量が最小となるモルタル配合
は,きわめて不安定な状態(ぎりぎりの状態)であるといえる.予測モデルにより得られるブリーデ
ィング水量(自由水量)が最少となる細骨材かさ容積は,実測値に対して小さく,若干の変動が生じ
てもブリーディングが急増する可能性が小さい安全側の配合条件を導き出していることになり,
実用上は十分に活用できると考えられる.
121
第5章
モルタルにおける流動性の推定
5.5 本章のまとめ
本章では,配合条件や使用するセメントや細骨材の物理的性質からモルタルの流動性を予測す
る手法について検討した.そして,4 章での検討結果と合わせて,配合条件や材料の物理的性質
から,所要の流動性を有しつつ,自由水量が最小となるモルタルの配合条件を予測するモデルを
提案し,実験結果と比較して妥当性を検証した.得られた知見を以下に示す.
(1) モルタルにおいて所要の流動性を確保するには,モルタル中の細骨材かさ容積が増加する
ほど,モルタル中のペーストの流動性を高める必要があり,セメント粒子をより分散させ
る,すなわちセメントの単位表面積を大きくする必要がある.
(2) 流動性のレベル,水セメント比および使用する細骨材の種類が相違しても,モルタル中の
細骨材かさ容積と,ペーストにおいて目標とする流動性の確保に必要なセメントの単位表
面積とモルタルとして同じ流動性の確保に必要なセメントの単位表面積との比の間には
一意的な関係がある.
(3) 流動性レベルの指標としてセメントの単位表面積を用いることで,細骨材かさ容積に応じ
て目標とする流動性の確保に必要なセメントの単位表面積を設定することが可能である.
そして,流動性レベル,水セメント比および材料の物理的性質を与条件として,自由水量
が最小となるモルタルの配合条件(材料の単位量および高性能 AE 減水剤の添加量)を概ね
算出できる.
(4) 提案した予測モデルによれば,自由水量が最小となる細骨材かさ容積は,流動性のレベル
が高いほど,水セメント比が小さいほど小さく設定する必要があり,これまでの経験に基
づき示されている普通コンクリートの配合設計における補正方法と同様の傾向を示して
いる.
122
第5章
モルタルにおける流動性の推定
第 5 章の参考文献
1)
枝松良展,山口昇三,岡村甫:モルタルの変形性を表す細骨材の材料特性の定量化,土木学
会論文集,No.538/V-31,pp.37-46,1996.5
2)
岡村甫,前川宏一,小澤一雅:ハイパフォーマンスコンクリート,pp.35-47,技報堂出版,1993.9
3)
岡村甫,小沢一雅:自己充塡コンクリートの配合設計方法の現状と課題,土木学会論文集,
No.496/Ⅴ-24,pp.1-8,1994.8
123
第6章
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
単位粗骨材かさ容積の影響
6.1 はじめに
コンクリート標準示方書【施工編】1)をはじめ,コンクリートの配合設計に関する多くの文献・
参考書において記述されているように,耐久的なコンクリート構造物を構築する上では,可能な
限り多量に骨材を用い,水量およびセメント量をできるだけ低減することが望ましい.これは,
骨材は自然由来の材料であり長期的に化学的な変質や劣化を生じる可能性が小さい一方,セメン
トと水は発熱を伴う水和反応を生じることで,硬化後に,温度,自己収縮および乾燥収縮に伴う
ひび割れが生じる要因となる可能性があるためである.古代のコンクリート構造物の構築方法は,
セメントが貴重であったこともあり,できるだけ大きな粒形の骨材を大量に用い,その間隙を硬
練りのセメントペーストで充塡する手法が用いられてきた
2)
.しかし,近年では施工の近代化や
構造物の大型化などにより,コンクリートを「流し込み」により型枠の隅々まで行き渡らせる方
法が一般に用いられている.この場合,コンクリート中のモルタル分と粗骨材とが分離せず一体
となって充塡することが求められる.モルタルが軟らかいほど,粗骨材との分離が生じやすくな
るため,均質性を確保するには粗骨材の混入量を制限する必要がある.そのため,2 章で示した
ように,土木学会のコンクリート標準示方書 1)や日本建築学会の JASS53)では,普通コンクリート
の粗骨材量を流動性のレベルに応じて調整するように示している.
そこで,本章では,コンクリートにおいて流動性に見合った材料分離抵抗性を確保するための
粗骨材量(かさ容積)の設定方法について検討した.具体的には,まず,上記の指針に示される流動
性のレベルと単位粗骨材かさ容積の関係を整理した.次に,日本各地のレディーミクストコンク
リート工場が所有する標準配合表(強度やスランプの水準およびセメントの種類ごとに,普通コン
クリートの材料の単位量を記載した一覧表)を整理し,流動性のレベルに応じて粗骨材かさ容積が
どの程度の値に設定されているかについて考察した.さらに,日本各地の材料を用いて実際に中
流動コンクリートを製造し,選定した中流動コンクリートの単位粗骨材かさ容積と,上記の指針
類や標準配合表に示される値とを比較した.
一方で,2 章でも述べたように,コンクリートの材料分離抵抗性としては,水と固体粒子であ
るセメントおよび骨材との分離であるブリーディングと,バイブレータの振動作用に伴い鉄筋間
隙を通過する際に生じるモルタル分と粗骨材との分離が挙げられる.粗骨材は,セメントや細骨
材に比べ粒子径が大きく比表面積が小さいことから,その粒子表面に拘束できる水量が,コンク
リート全体としてのブリーディング水量に及ぼす影響は比較的小さいと考えられる.このため,
ブリーディングの少ないモルタルから構成されるコンクリートは,ブリーディングが少ないと想
定されるが,これを定量的に検証した事例は少ない.そこで,コンクリートのブリーディング特
性に及ぼすモルタル品質の影響について実験的に検討した.
さらに,鉄筋間隙の通過に伴いモルタル分と粗骨材とが分離するとかぶりコンクリートの品質
低下や充塡不良が生じ,コンクリート構造物の均質性が損なわれる.このため,高流動コンクリ
ートの配合設計・施工指針
4)
では,対象とする構造物の配筋条件に応じて自己充塡性のランクを
設定し,コンクリート中の粗骨材量を制限する手法が示されている.しかしながら,本研究で対
125
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
象とする中流動コンクリートは,バイブレータによる振動作用により鉄筋間隙を通過させて充塡
するコンクリートであり,上記の指針に示される配筋条件と粗骨材量との関係をそのまま適用で
きるかは定かでない.そこで,中流動コンクリートにおいて,コンクリート構造物の均質性を確
保する観点から,配筋条件に応じて粗骨材量をどのように制限すべきであるかについても実験に
より検討した.
なお,粗骨材の単位量の表記としては質量や(絶対)容積を用いる場合もあるが,本研究では,今
回検討した内容を,形状や粒度が異なる粗骨材を用いる場合にも適用することを念頭に,実積率
の影響を加味した指標である「かさ容積」を用いることにした.
126
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
6.2 単位粗骨材かさ容積の設定に関する現状
6.2.1
土木学会や日本建築学会に示される指針類
流動性のレベルと粗骨材かさ容積の関係が明示されている指針類としては,土木学会コンクリ
ートライブラリー126 施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針(案)5) (以下,施
工性能指針という),日本建築学会 建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事
3)
(以下,JASS5 という),および日本建築学会 高流動コンクリートの材料・調合・製造・施工指
針(案)・同解説 6)(以下,建築学会高流動指針という)などがある.なお,土木学会の高流動コンク
リートの配合設計・施工指針
4)
は,自己充塡性を前提としたコンクリートを対象とするため,こ
こでは取り上げないこととする.
単位粗骨材のかさ容積(m3/m3) 3/m3)
単位粗骨材かさ容積の標準値(m
普通コンクリート
中流動
コンク
リート
高流動
コンク
リート
0.75
施工性能指針における上限値
0.70
0.65
JASS5における標準値
0.60
建築学会高流動指針
上限値
標準値
下限値
0.55
0.50
0.45
6
8
10
12
14 16 18 20
スランプ(cm)
22
24
26
28
30 35 40 45 50 60 70
スランプフロー(cm)
図-6.2.1 各種指針類における流動性のレベルと粗骨材かさ容積の関係
これらの指針に示される流動性のレベルと単位粗骨材かさ容積の関係を整理して図-6.2.1 に
示す.なお,図中の横軸に併記したスランプフローは,建築学会高流動指針
9)
に示される施工実
績の結果からスランプ値とスランプフロー値の関係を把握したおおよその目安を示すものである.
施工性能指針および JASS5 に示される普通コンクリートの流動性レベルと単位粗骨材かさ容積
の関係は,前者が最大値で後者が標準値を示しているため 0.03m3/m3 程度の差異があるものの,ほ
ぼ同様の傾向を示している.一方,建築学会高流動指針では,高流動コンクリートのスランプフ
ローの範囲を 50~70cm(スランプ値で 24~28cm 程度)としている.単位粗骨材かさ容積は,流動
性のレベルによらず 0.5m3/m3 以上とし,0.525m3/m3 を標準として,0.5~0.55m3/m3 の範囲となる
ように試験練りによって定めることが望ましいとしている.なお,後述する表-6.2.5 に示すよう
127
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
に,土木学会の高流動コンクリート指針 1)における自己充塡性のランク 1 における粗骨材絶対容
積は 280~300L/m3 であり,かさ容積に換算すると概ね 0.5m3/m3 となる.
本研究で主に対象とする中流動コンクリートは,2 章の表-2.2.1 に示すように,スランプフロ
ーが 40~50cm 程度の範囲の場合が多く,スランプ値では 21~24cm 程度になる.図中において,
普通コンクリートと高流動コンクリートの間に位置するコンクリートであることが分かる.仮に,
JASS5 のスランプ 21cm のかさ容積の標準値と建築学会高流動指針のかさ容積の標準値を結ぶと,
中流動コンクリートのかさ容積の標準値は,0.525~0.58m3/m3 の範囲になる(図中の赤い破線).
また,図-6.2.2 は,後述する表-6.3.2 の材料(ただし,混和剤には AE 減水剤を使用)を用いて,
単位粗骨材かさ容積を変化させたスランプ 12cm のコンクリートを対象に,高流動コンクリート
の自己充塡性の評価に用いられる充塡試験を行った後,充塡高さ 30cm に達するまでバイブレー
タによる締固めを行い,その振動時間の測定結果を示したものである.配筋条件によらず,単位
粗骨材かさ容積が 0.65 程度以上となると,充塡に要する振動時間が急増することが分かる.図-
6.2.1 において示されるスランプ 12cm の粗骨材かさ容積の標準値と概ね一致している.このため,
コンクリートの配合設計段階において,図-6.2.1 に基づき目標とする流動性のレベルに応じて単
位粗骨材かさ容積の初期値を設定することも可能であると考えられる.
充填高さ30cmに達するまでの
振動作用時間(秒)
20
16
障害条件:ランク1
障害条件:ランク2
12
8
4
目標スランプ12cm,目標空気量4.5%
W=165kg/m3,C=300kg/m3,W/C=55%
0
0.60
0.62 0.64 0.66 0.68 0.70 0.72
粗骨材のかさ容積(m3/m3)
図-6.2.2 スランプ 12cm のコンクリートにおける振動充塡試験結果
128
第6章
6.2.2
(1)
単位粗骨材かさ容積の影響
各地のレディーミクストコンクリート工場の現状と検証実験
標準配合表に示される流動性レベルと粗骨材かさ容積の関係
日本各地のレディーミクストコンクリート工場の保有する普通コンクリートの配合一覧表から,
流動性のレベルと単位粗骨材かさ容積の関係を整理した.調査したレディーミクストコンクリー
ト工場の地域と,工場の所有する骨材の物理的性質を表-6.2.1 に示す.また,後述する検証実験
で用いた骨材以外の材料の概要を表-6.2.2 に示す.
表-6.2.1 調査した日本各地のレディーミクストコンクリート工場の使用材料
種類
工場 工場の
記号
No.
地域
S
1
北海道
G
2
3
北陸
関東
骨材
4
5
6
7
関東
東海
九州
九州
物理的性質など
陸砂,表乾密度2.61g/cm3 ,吸水率2.16%,粗粒率2.55
砕石,最大寸法20mm,表乾密度2.68g/cm3 ,吸水率0.88%
実積率57.0%,混合比率50%
山砂利,最大寸法15mm,表乾密度2.60g/cm3 ,吸水率1.50%
実積率64.5%,混合比率50%
S
山砂,表乾密度2.56g/cm3 ,粗粒率2.80
G
砂利,最大寸法25mm,表乾密度2.60g/cm3 ,実積率65.0%
S1
砕砂,表乾密度2.65g/cm3 ,吸水率1.26%,粗粒率3.11,混合比率50%
S2
山砂,表乾密度2.59g/cm3 ,吸水率2.42%,粗粒率1.70,混合比率50%
G
砕石,最大寸法20mm,表乾密度2.70g/cm3 ,粒径判定実積率59.0%
S1
陸砂,表乾密度2.61g/cm3 ,吸水率2.86%,粗粒率3.07,混合比率75%
S2
山砂,表乾密度2.57g/cm3 ,吸水率2.44%,粗粒率1.66,混合比率25%
G
砕石,最大寸法20mm,表乾密度2.65g/cm3 ,吸水率0.95%,粒径判定実積率60.3%
S1
砕砂,表乾密度2.67g/cm3 ,吸水率1.25%,粗粒率2.95,混合比率60%
S2
陸砂,表乾密度2.62g/cm3 ,吸水率1.30%,粗粒率2.60,混合比率40%
G
砕石,最大寸法20mm,表乾密度2.99g/cm3 ,吸水率0.68%,粒径判定実積率58.1%
S
海砂,表乾密度2.56g/cm3 ,吸水率1.54%,粗粒率2.72
G
砕石,最大寸法20mm,表乾密度2.71g/cm3 ,吸水率0.35%,粒径判定実積率60.9%
S1
砕砂,表乾密度2.60g/cm3 ,吸水率0.77%,混合比率40%
S2
海砂,表乾密度2.57g/cm3 ,吸水率1.56%,粗粒率,混合比率60%
G
砕石,最大寸法20mm,表乾密度2.64g/cm3 ,吸水率0.88%,粒径判定実積率58.8%
表-6.2.2 検証実験で用いた骨材以外の材料の概要
種類
記号
セメント
C
混和材
LS
石灰石微粉末,密度2.71g/cm3, 工場No.5および6で使用
SP
高性能AE減水剤(ポリカルボン酸系)
VA
増粘型高性能AE減水剤
(減水剤成分:ポリカルボン酸系,増粘剤成分:グリコール系,高分子系)
混和剤
物理的性質など
工場No.1,4,5,6 普通ポルトランドセメント,密度3.16g/cm3
工場No.2,3,7,8 高炉セメントB種,密度3.04g/cm3
129
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
各工場の所有する普通コンクリートの標準配合表に示される流動性レベルと粗骨材のかさ容積
の関係を図-6.2.3 に示す.なお,図中には図-6.2.1 に示した各指針類に示される値も併記した.
目標とする流動性レベルに対応する単位粗骨材かさ容積は,レディーミクストコンクリート工
場ごとに相違しており,最大 0.06m3/m3 程度の違いがあるものの,その傾きはほぼ同様である.使
用する細骨材の種類が異なることや,図-6.2.4 に示すように,同一の流動性の確保に必要な単位
水量が工場ごとに大きく異なっていることなどが要因として考えられる.
また,各工場で設定している粗骨材のかさ容積は,土木学会や日本建築学会に示されるかさ容
積に比べ同等あるいはいくぶん小さい値となっている.指針類に示されるかさ容積は,実際には
やや上限側の値を示していることになり,配合設計段階において,図-6.2.1 に基づいて粗骨材か
さ容積を設定する場合には配慮が必要な場合もあると考えられる.
単位粗骨材のかさ容積(m3/m3) 3/m3)
単位粗骨材かさ容積の標準値(m
普通コンクリート
0.75
施工性能指針での上限値
0.70
0.65
JASS5での標準値
0.60
工場No.1
工場No.2
工場No.3
工場No.4
工場No.5
工場No.6
工場No.7
0.55
0.50
0.45
6
8
10
建築学会高流動指針
上限値
標準値
下限値
12
14 16 18 20
スランプ(cm)
22
24
26
28
30 35 40 45 50
スランプフロー(cm)
60
70
図-6.2.3 各工場の流動性のレベルと粗骨材かさ容積の関係
200
混和剤:AE減水剤
単位水量(kg/m3)
190
180
170
工場No.1
工場No.2
工場No.3
工場No.4
工場No.5
工場No.6
工場No.7
160
150
140
9
12
15
18
スランプ(cm)
21
24
図-6.2.4 各レディーミクストコンクリート工場におけるスランプと単位水量の関係
130
第6章
(2)
単位粗骨材かさ容積の影響
中流動コンクリート配合との比較
表-6.2.1 に示す骨材を用いて,スランプフロー45cm の中流動コンクリート配合を選定した.
試験練りの結果得られた中流動コンクリート配合を表-6.2.3 に,品質試験結果を表-6.2.4 に示
す.なお,セメントには普通ポルトランドセメントもしくは高炉セメント B 種を用いている.い
ずれの中流動コンクリートとも,複数回にわたる試し練りの結果得られたものであり,充塡試験
(ランク 3)において充塡高さ 30cm 以上を確保するとともに,ブリーディング率が 3%以下のコン
クリートである.
表-6.2.3 各工場の骨材を用いて選定したスランプフロー45cm の中流動コンクリートの配合
中流動
工場 コンク W/P W/C
s/a
Vs/Vm
No.
リート
(%) (%)
(%)
の種類*1
単位容積(L/m3 )
Vp
Vs
Vg
単位量(kg/m3 )
粗骨材
かさ容積
P
(m3 /m3 )
W
混和剤
(P×%)
S
G
C
LS
S1
S2
SP
VA
-
1
粉体系
45.1
45.1
0.50
45.3
318
312
370
0.57
155
344
-
814
-
978
0.8
2
粉体系
44.9
44.9
0.47
44.3
336
294
370
0.57
168
374
-
756
-
962
1.2
-
増粘剤系 50.0
50.0
0.50
51.1
335
340
325
0.54
175
350
-
451
440
878
-
0.9
46.6
46.6
0.51
52.5
337
348
315
0.52
174
373
-
682
224
834
1.0
-
増粘剤系 57.4
57.4
0.54
54.1
315
370
315
0.52
174
303
-
725
238
834
-
1.2
41.7
51.5
0.50
56.0
357
360
283
0.49
175
340
80
576
377
848
0.9
-
増粘剤系 47.3
51.5
0.53
57.2
339
378
283
0.49
175
340
30
606
396
848
-
1.1
46.1
46.1
0.49
49.9
341
329
330
0.54
173
375
-
849
-
894
0.9
-
増粘剤系 54.1
54.1
0.52
51.3
323
347
330
0.54
173
320
-
888
-
894
-
1.0
46.8
46.8
0.50
52.8
343
347
310
0.53
175
374
-
368
545
819
1.0
-
増粘剤系 55.6
55.6
0.53
54.1
324
366
310
0.53
175
315
-
380
563
919
-
1.1
3
粉体系
4
粉体系
5
粉体系
6
粉体系
7
*1 粉体系 : 材料分離抵抗性の確保のためセメント量増加もしくは混和材を混入
増粘剤系 : 混和剤に増粘型高性能AE減水剤を使用
Vw/Vp : 水粉体容積比 Vs/Vm : モルタル中の細骨材容積比
表-6.2.4 中流動コンクリートの品質試験結果
工場
No.
フレッシュコンクリート品質
中流動
コンク スランプ
ブリー
空気量 充塡高さ
リート
フロー
ディング
(%)
(cm)
の種類*1
(cm)
率(%)
1
粉体系
45.0
4.3
32.0
2.0
2
粉体系
44.5
4.4
-
2.5
3
増粘剤系
46.0
4.0
33.4
1.3
粉体系
43.0
4.5
32.8
2.0
増粘剤系
42.5
4.3
30.5
2.8
粉体系
47.0
4.4
32.5
1.1
増粘剤系
44.5
5.1
32.0
1.2
粉体系
46.0
4.2
32.5
1.9
増粘剤系
43.0
5.0
33.0
1.5
粉体系
44.5
4.6
30.3
2.1
増粘剤系
46.0
4.8
32.1
2.2
4
5
6
7
131
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
選定したスランプフロー45cm の中流動コンクリートの単位粗骨材かさ容積と,各工場の標準配
合一覧表に示されるスランプ 21cm の普通コンクリートの単位粗骨材かさ容積の関係を図-6.2.5
に示す.工場 No.5 を除き,選定した中流動コンクリートとスランプ 21cm のコンクリートの単位
粗骨材かさ容積はほぼ一致していることが分かる.図-6.2.1 に示すように,スランプフロー45cm
はスランプ値に換算すると約 23cm であり,工場の所有するスランプ 21cm のかさ容積とほぼ一致
したものと考えられる.今回の結果を踏まえれば,実務において合理的に中流動コンクリートの
配合設計を行う際に,使用するレディーミクストコンクリート工場の資料を活用して粗骨材のか
さ容積を設定できると考えられる.なお,工場 No.5 において,中流動コンクリートとスランプ
21cm のコンクリートとで差異が生じたのは,この工場の所有する粗骨材が表乾密度 3.00g/cm3 の
輝緑岩であり,モルタル分と粗骨材との密度差が大きく,粗骨材量が多くなると両者の分離が顕
著となるため,中流動コンクリートの配合を選定する際に粗骨材のかさ容積を小さく設定したた
めである.使用する粗骨材の品質によっては,必ずしも,工場の所有する資料だけでは適切な単
位粗骨材かさ容積を設定できない場合もあることに留意する必要がある.
一方で,選定したスランプフロー45cm の中流動コンクリートの単位粗骨材かさ容積は 0.52~
0.57m3/m3 の範囲にあり,
図-6.2.1 ないし図-6.2.3 中に示す赤い破線とほぼ一致している.また,
後述する 6.3.2 節の実験で得られた標準的な配筋条件の場合(障害条件:ランク 2)における粗骨材
かさ容積の最大値は 0.58m3/m3 であり,ほぼ整合する結果である.
これらの結果を踏まえると,レディーミクストコンクリート工場の標準配合表が入手できない
場合や,現場プラントにて新たにスランプフロー45cm 程度の中流動コンクリートの配合を選定す
選定した中流動コンクリートの
単位粗骨材かさ容積(m3/m3)
る際には,初期設定値として,粗骨材のかさ容積を 0.55m3/m3 前後に設定すれば良いと考えられる.
0.58
0.56
0.54
工場No.1
工場No.2
0.52
工場No.3
3
+0.01m /m
工場No.4
3
工場No.5
0.50
工場No.6
-0.01m3/m3
工場No.7
0.48
0.48 0.50 0.52 0.54 0.56 0.58
各工場におけるスランプ21cmの
コンクリートの単位粗骨材かさ容積(m3/m3)
図-6.2.5 各工場のスランプ 21cm のコンクリートと選定した中流動コンクリートの
単位粗骨材かさ容積の関係
132
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
6.3 材料分離抵抗性に関する実験的検討
6.3.1
(1)
コンクリートのブリーディング特性に及ぼすモルタル品質の影響
実験概要
モルタル品質がコンクリートのブリーディング特性に及ぼす影響を検討するために,単位粗骨
材かさ容積ならびに水セメント比を一定として,モルタル中の細骨材容積比(細骨材のかさ容積)
を変化させたコンクリートについて検討した.水セメント比は,一般的な土木構造物の構築に用
いられる配合を想定して 50%と 58.3%の 2 種類とした.
検討したコンクリート配合を表-6.3.1 に,使用材料を表-6.3.2 に示す.なお,流動性のレベ
ルがコンクリートおよびモルタル品質に及ぼす影響を取り除くため,コンクリートの流動性はス
ランプフロー45±2cm の範囲となるように,高性能 AE 減水剤の添加量を調整した.
表-6.3.1 コンクリート配合および試験結果
ペー
細骨材容積
粗骨材容積
目標
スト
スラ
目標
W/C s/a 容積
絶対
かさ
絶対
かさ
No. ンプ 空気量
(%) (%) Vp
容積
容積
容積
容積
フロー (%)
3
3 3
3
3 3
(cm)
(L/m3 ) VS(L/m ) (m /m ) Vg(L/m ) (m /m )
1
W
C
S
180
309
939
175
300
959
170
292
979
52.7
323
357
0.525
53.3
315
365
0.536
53.7
307
372
0.547
54.2
300
380
0.559
165
283
52.2
331
349
0.514
175
52.8
323
357
0.526
53.3
314
366
0.538
8
53.9
306
374
9
54.4
298
382
2
58.3
3
4
5
45
4.5
6
7
50.0
試験結果
単位量(kg/m3 )
G
混和剤 スラ
(C×%) ンプ 空気量
フロー
(%)
(cm)
1.1
43.5
4.9
1.4
46.0
4.0
1.6
45.5
4.2
999
1.8
43.5
5.0
350
919
1.0
46.5
4.9
170
340
940
1.2
47.0
5.2
165
330
962
1.5
46.0
5.3
0.550
160
320
983
1.9
45.0
5.8
0.561
155
310
1004
2.4
43.0
6.0
320
320
0.54
0.54
849
849
表-6.3.2 使用材料
名称
記号
物理的性質など
セメント
C
普通ポルトランドセメント,密度3.16g/cm3
細骨材
S
木更津産陸砂,表乾密度2.63g/cm3
吸水率1.18%,実積率68.0%,粗粒率2.49
粗骨材
G
青梅産砕石2005,表乾密度2.65g/cm3
吸水率1.00%,実積率59.0%
混和剤
SP
高性能AE減水剤(ポリカルボン酸系)
試験項目を表-6.3.3 に示す.コンクリートの試験として,スランプフロー,空気量,漏斗流下
試験および図-6.3.1 に示す振動充塡試験を行った.振動充塡試験は,①JSCE-F511 に準じた試
験を行いコンクリート自体の自重による充塡性(自己充塡高さ)を測定する,②その後,A 室内に棒
状バイブレータ(φ28mm,振動数 200~234Hz)を挿入し,B 室でのコンクリートの充塡高さが 30cm
133
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
に達するまで振動を作用させる,③B 室内上部において試料を 5L 採取し,5mm ふるい上で試料
を洗い粗骨材を採取して間隙通過に伴う粗骨材量の変化率を測定する手順で行った.
一方で,製造したコンクリート試料を 5mm ふるい上でスクリーニングしてモルタルを採取し,
モルタルフロー,漏斗流下時間およびブリーディング率を測定した.なお,モルタルフローは,
落下運動を与えない広がり(0 打フロー)とし,モルタルのブリーディング率は 3 章および 4 章で示
す方法と同様に,JSCE-F522「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率およ
び膨張率試験方法(ポリエチレン袋方法)」に準じて行い,3 時間後のブリーディング率を測定した.
コンクリートの練混ぜには強制二軸練りミキサ(公称容量 60L)を用い,1 バッチの練混ぜ量は
50L とした.練混ぜ方法は骨材およびセメントを投入して 10 秒間練り混ぜた後,予め混和剤を溶
解させた練混ぜ水を投入して 90 秒間練り混ぜた.ミキサ内で 5 分間静置後,試料を排出して充分
に練り返した後,各種品質試験を行った.実験は 20±1℃に管理された室内で実施した.
表-6.3.3 試験項目および準拠規準
試験項目
準拠規準
スランプフロー
JIS A 1150
空気量
JIS A 1128
ブリーディング率
JIS A 1123
コンクリートの
漏斗流下時間
JSCE-F512
(O漏斗流下試験装置)
振動充塡性試験
図-5.2.1に記載
(JSCE-F511に一部準拠)
モルタルフロー
JIS R 5201
(落下運動を加えない)
モルタルの
ブリーディング率
JSCE-F522
(ポリエチレン袋方法)
モルタルの
漏斗流下時間
右図の装置を使用
6cm
24cm
27cm
モルタル用
O 漏斗流下試験装置
4)
漏斗流下試験装置
障害条件
ランク1(5本) ランク2(3本) ランク3(障害なし)
障害 仕切り板
①試料投入
①試料を5mmふるいでふるう。
②残留試料を洗い粗骨材を取り出す。
③試料中の粗骨材量を測定し単位量に換算。
②自己充塡高さ測定
粗骨材量
(%)=
変化率⊿G
B室
上部
充塡高さ30cm
振動
作用
自己充塡高さ
A室 B室
仕切り板
引上げ
【粗骨材量変化率(⊿G)の測定手順】
棒状
バイブレータ
(φ28mm)
③バイブレータ
挿入・振動作用
④充塡後,B室上部
試料採取(5L)
図-6.3.1 振動充塡試験の概要
134
Gs - Gm
×100
Gm
ここに,
Gm:示方配合の粗骨材量(kg/m3)
Gs:試料中の粗骨材の単位換算量(kg/m3)
④評価方法
⊿G > 0 :間隙通過に伴い,粗骨材量が増加
⊿G < 0 :間隙通過に伴い,粗骨材量が減少
第6章
(2)
単位粗骨材かさ容積の影響
実験結果および考察
単位粗骨材かさ容積を 0.54m3/m3 で一定として,モルタル中の細骨材容積比(かさ容積)を変化さ
せたコンクリートおよび 5mm ふるいでスクリーニングしたモルタルのフロー試験結果,ならびに
漏斗流下試験結果を細骨材のかさ容積との関係で整理して図-6.3.2~図-6.3.3 に示す.
今回の実験では,
スランプフローが 45cm となるように高性能 AE 減水剤の添加量を調整したが,
スクリーニングしたモルタルのフローは,細骨材のかさ容積が 0.55 程度以上となると急激に小さ
くなる結果が得られた.試験後のモルタルを観察すると,ペースト分と細骨材との分離が顕著で
あり,フローしたモルタル試料の周囲に水の膜が生じていた(写真-6.3.1).
漏斗流下時間は,コンクリートおよびモルタルとも,細骨材のかさ容積が増加するに従い遅延
した.特に水セメント比が大きい場合には,かさ容積がある値を超えると急激に遅延した.細骨
材同士による接触やかみ合いが生じやすくなるためと推測される.
250
60
コンクリート
W/C58.3%
W/C50.0%
50
45
40
W/C58.3%
W/C50.0%
200
175
150
125
35
30
0.5
スクリーニング
モルタル
225
モルタルフロー(mm)
スランプフロー(cm)
55
0.52
0.54
0.56
0.58
3
3
細骨材のかさ容積(m /m )
100
0.5
0.52
0.54
0.56
0.58
細骨材のかさ容積(m3/m3)
25
25
コンクリート
20
モルタルの漏斗流下時間(秒)
コンクリートの漏斗流下時間(秒)
図-6.3.2 スランプフローおよびモルタルフロー試験結果
W/C58.3%
W/C50.0%
15
10
5
0
0.5
0.52
0.54
0.56
0.58
細骨材のかさ容積(m3/m3)
20
スクリーニング
モルタル
W/C58.3%
W/C50.0%
15
10
5
0
0.5
0.52
0.54
0.56
0.58
細骨材のかさ容積(m3/m3)
図-6.3.3 コンクリートおよび 5mm ふるいでスクリーニングしたモルタルの漏斗流下時間
135
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
(a)配合 No.6(細骨材かさ容積 0.526)
(b)配合 No.9(細骨材かさ容積 0.561)
ペーストと細骨材が均質に分布
細骨材が中央に偏在し,外周に水膜発生
10
5
コンクリート
8
モルタルのブリーディング率(%)
コンクリートのブリーディング率(%)
写真-6.3.1 モルタルフロー試験後の状況(表-6.3.1 の配合 No.6(左)と配合 No.9(右))
W/C58.3%
W/C50.0%
6
4
2
0
0.5
0.52
0.54
0.56
0.58
細骨材のかさ容積(m3/m3)
4
スクリーニング
モルタル
W/C58.3%
W/C50.0%
3
2
1
0
0.5
0.52
0.54
0.56
0.58
細骨材のかさ容積(m3/m3)
図-6.3.4 コンクリートおよび 5mm ふるいでスクリーニングしたモルタルのブリーディング率
コンクリートおよびスクリーニングしたモルタルのブリーディング試験結果を図-6.3.4 に示
す.コンクリートおよびモルタルとも,水セメント比 58.3%の場合は細骨材のかさ容積比が
0.55m3/m3,水セメント比 50%の場合には 0.53m3/m3 付近においてブリーディング率が最小となっ
た.コンクリートとモルタルにおいてブリーディングの最小となる細骨材のかさ容積は一致して
おり,ブリーディングの少ないモルタルから構成されるコンクリートはブリーディングが少ない
ことを確認できた.つまり,前章までに提案した予測モデルを用いてブリーディング(自由水量)
の少ないモルタル配合を選定することで,ブリーディングの少ないコンクリート配合を選定でき
る可能性が示されたと考えられる.また,ブリーディングの最小となる細骨材のかさ容積が,水
セメント比の小さい配合ほど小さくなることは,前章の図-5.4.4 と同様の傾向であり,予測モデ
ルの妥当性を裏付ける結果と考えられる.
なお,ブリーディングの急増する細骨材のかさ容積は,図-6.3.2 に示すモルタルフローが急激
に低下したかさ容積とほぼ一致している.ブリーディングの少ない配合を選定すること,すなわ
ちペーストと細骨材とが一体となって流動できる均質なモルタルを選定することが,極めて重要
136
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
であることを示す結果といえる.
振動充塡試験結果を図-6.3.5~図-6.3.7 に示す.コンクリートの自重による充塡高さは,細
骨材のかさ容積が 0.53m3/m3 付近で最大となり,かさ容積の増加に伴い小さくなっている.充塡高
さ 30cm に達するまでに必要となるバイブレータの作用時間は,かさ容積が 0.54 m3/m3 程度以上と
なると増加する傾向を示している.さらに,鉄筋間隙通過前後のコンクリート試料中に含まれる
粗骨材量も,細骨材のかさ容積が 0.54 m3/m3 程度以上となると減少している.いずれも,モルタ
ルおよびコンクリートのブリーディング水量が最小となる細骨材のかさ容積と一致している.
本節の検討により,粗骨材かさ容積が一定の場合,ブリーディングの少ないモルタルから構成
されるコンクリートほど,(1)ブリーディングが少ないこと,(2)充塡性に優れ,鉄筋間隙の通過に
伴う粗骨材の変化も小さいことが確認できた.すなわち,単位粗骨材かさ容積を流動性のレベル
や配筋条件に応じて適切に設定できれば,前章までに提案した予測モデルを用いてブリーディン
グ(自由水量)の少ないモルタル配合を選定することで,材料分離抵抗性に優れたコンクリート配合
コンクリート自身による充填高さ(cm)
を選定できると考えられる.
35
30
W/C58.3%
W/C50.0%
障害条件:R1
25
20
15
10
5
スランプフロー45cm
粗骨材かさ容積0.54m 3/m3
0
0.5 0.51 0.52 0.53 0.54 0.55 0.56 0.57 0.58
細骨材のかさ容積(m3/m3)
図-6.3.5 振動充塡試験結果①コンクリートの自重による充塡高さ
充填高さ30cmに達するまでの
振動作用時間(秒)
20
W/C58.3%
W/C50.0%
障害条件:R1
15
スランプフロー45cm
粗骨材かさ容積0.54m 3/m3
10
5
0
0.5 0.51 0.52 0.53 0.54 0.55 0.56 0.57 0.58
細骨材のかさ容積(m3/m3)
図-6.3.6 振動充塡試験結果②充塡高さ 30cm に達するまでの振動作用時間
137
間隙通過に伴う粗骨材量の変化率(%)
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
20
10
間隙通過後,
粗骨材量増加
スランプフロー45cm
粗骨材かさ容積0.54m 3/m3
W/C58.3%
W/C50.0%
0
-10
減少
障害条件:R1
-20
0.5 0.51 0.52 0.53 0.54 0.55 0.56 0.57 0.58
細骨材のかさ容積(m3/m3)
図-6.3.7 振動充塡試験結果③鉄筋間隙の通過前後における試料中の粗骨材量変化率
138
第6章
6.3.2
(1)
単位粗骨材かさ容積の影響
配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の設定方法に関する検討
実験概要
鉄筋のあきやかぶり厚さが小さくなるほど充塡が困難となることから,流動性が高く,かつ粗
骨材量の少ないコンクリートを用いる必要がある.しかし,粗骨材量を少なくするとコンクリー
ト中のモルタル容積が増大するため,単位水量やセメント量が多くなり硬化コンクリートの品質
に悪影響を及ぼす場合も想定される.そのため,コンクリート中の粗骨材量は,施工性が確保で
きる範囲でできるだけ多くすることが望ましいといえる.そこで,本節では,スランプフロー45cm
程度の中流動コンクリートを対象として,鉄筋の間隙通過に伴う均質性の低下を抑制するために,
配筋条件に応じて単位粗骨材かさ容積をどのように設定すべきであるかを実験により検討した.
検討したコンクリート配合を表-6.3.4 に示す.単位水量および水セメント比を一定として,単
位粗骨材かさ容積を変化させたコンクリートについて試験した.使用材料および試験項目は 5.2.1
節と同様である.
表-6.3.4 コンクリート配合(単位粗骨材かさ容積の検討)
ペー
細骨材容積
粗骨材容積
目標
スト
スラ
目標
W/C s/a 容積
絶対
かさ
絶対
かさ
No. ンプ 空気量
(%) (%) Vp
容積
容積
容積
容積
フロー (%)
3
3 3
3
3 3
(cm)
(L/m3 ) VS(L/m ) (m /m ) Vg(L/m ) (m /m )
単位量(kg/m3 )
W
C
S
G
スラ
混和剤 ンプ 空気量
(C×%) フロー
(%)
(cm)
1
56.2
385
0.57
300
0.51
1013
795
1.7
45.0
4.6
2
53.3
365
0.54
320
0.54
959
849
1.4
46.0
4.0
345
0.51
340
0.58
908
901
1.2
43.5
5.6
3
45
4.5
58.3
50.4
315
175
300
4
47.5
325
0.48
360
0.61
855
954
1.0
43.8
5.1
5
44.5
305
0.45
380
0.64
802
1007
0.9
45.0
5.3
(2)
実験結果および考察
単位ペースト量を一定として,粗骨材のかさ容積を変化させたコンクリート,ならびに 5mm ふ
るいでスクリーニングしたモルタルのブリーディングおよび漏斗流下試験結果を図-6.3.8~図
-6.3.9 に示す.
コンクリートおよび 5mm ふるいでスクリーニングしたモルタルのブリーディング率は,単位粗
骨材かさ容積が 0.55m3/m3 前後の場合に最小となっている.ブリーディングの少ないモルタルから
構成されるコンクリートはブリーディングが小さいことを改めて裏付ける結果である.
一方で,漏斗流下時間は,単位粗骨材かさ容積が多くなるに従い,コンクリートでは遅く,モ
ルタルでは早くなった.本実験では,単位ペースト容積を一定としているため,粗骨材のかさ容
積の増減に伴い,細骨材容積は逆に減増する.このため,単位粗骨材かさ容積が多くなると,コ
ンクリート全体では粗骨材のかみ合いが生じにくくなり流下時間が遅くなる一方,モルタルとし
ては細骨材容積が減少するため流下時間が早くなったと考えられる.流動性のレベルが同一の場
合でも,骨材の構成割合によりモルタルの品質が相違し,結果としてコンクリート品質も変化す
ることを示している.
139
10
8
5
W/C=58.3%
W=175kg/m3
4
6
4
3
コンクリート
(左軸)
2
2
1
スクリーニングモルタル
(右軸)
0
0.48
単位粗骨材かさ容積の影響
0.52
0.56
0.60
0.64
粗骨材のかさ容積(m3/m3)
0
0.68
モルタルのブリーディング率(%)
コンクリートのブリーディング率(%)
第6章
16
14
12
16
コンクリート
(左軸)
W/C=58.3%
W=175kg/m3
14
12
10
10
8
8
スクリーニングモルタル
(右軸)
6
6
4
4
2
2
モルタルの漏斗流下時間(秒)
コンクリートの漏斗流下時間(秒)
図-6.3.8 粗骨材かさ容積とブリーディング率の関係
0
0.48
0
0.52
0.56
0.60
0.64
0.68
粗骨材のかさ容積(m3/m3)
図-6.3.9 粗骨材かさ容積と漏斗流下時間の関係
振動充塡試験結果を図-6.3.10~図-6.3.12 に示す.鉄筋障害のない場合(ランク 3)は,粗骨材
かさ容積によらず,充塡高さ 30cm 以上を確保できている.鉄筋間隙を通過しない場合には,コ
ンクリート中の粗骨材量が充塡性に及ぼす影響は小さく,コンクリート自体の流動性に支配され
ることを示す結果である.一方,鉄筋障害を有する場合は,いずれも充塡高さ 30cm を確保でき
ず,単位粗骨材かさ容積の増加に伴い充塡高さは小さくなった.障害条件がランク 2(高流動コン
クリート指針において鉄筋のあきが 60~200mm の標準的な配筋条件を対象とする場合)では,単
位粗骨材かさ容積が 0.54m3/m3 の場合に充塡高さが最も高くなった.ランク 1 の場合(鉄筋のあき
が 35~60mm で高密度な配筋条件を対象とする場合)は,いずれのかさ容積においてもランク 2 に
比べ充塡高さは低く,特に単位粗骨材かさ容積が 0.58 m3/m3 以上となると低下が顕著であった.
充塡高さ 30cm に達するまでの振動作用時間は,ランク 2 の場合は粗骨材かさ容積に関わらず
ほぼ一定であるが,ランク 1 の場合はかさ容積の増加に伴い遅延した.
間隙通過後のコンクリート中に含まれる粗骨材量は,粗骨材のかさ容積が多いコンクリートほ
ど大きく低下した.間隙通過後のコンクリートの均質性を確保するには,対象とする構造物の配
筋条件に応じて粗骨材のかさ容積を設定する必要があることを示す結果である.
140
コンクリートの自重による充填高さ(cm)
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
35
30
スランプフロー45cm
W/C=58.3%,W=175kg/m3
25
20
15
10
障害条件:ランク1
障害条件:ランク2
障害条件:ランク3
5
0
0.48
0.52
0.56
0.60
0.64
3 3
粗骨材のかさ容積(m /m )
0.68
図-6.3.10 粗骨材かさ容積とコンクリートの自重による充塡高さ
充填高さ30cmに達するまでの
振動作用時間(秒)
20
スランプフロー45cm
W/C=58.3%,W=175kg/m 3
16
障害条件:ランク1
障害条件:ランク2
12
8
4
0
0.48
0.52
0.56
0.60
0.64
粗骨材のかさ容積(m3/m3)
0.68
間隙通過に伴う粗骨材量の変化率(%)
図-6.3.11 粗骨材かさ容積と充塡高さ 30cm に達するまでの振動作用時間
20
10
スランプフロー45cm
W/C=58.3%,W=175kg/m3
間隙通過後,
粗骨材量増加
障害条件:ランク1
障害条件:ランク2
0
-10
減少
-20
0.48
0.52
0.56
0.60
0.64
粗骨材のかさ容積(m3/m3)
0.68
図-6.3.12 粗骨材かさ容積と鉄筋間隙通過前後における試料中の粗骨材量の変化率
141
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
高流動コンクリート施工指針に示される自己充塡性のランクごとの単位粗骨材絶対容積の標準
値を表-6.3.5 に示す.鉄筋のあきに応じて単位粗骨材絶対容積の範囲が示されている.実験結果
(図-6.3.12)において,鉄筋間隙の通過に伴う粗骨材量の低下が顕著となる粗骨材のかさ容積は,
ランク 2 で 0.58m3/m3 程度,ランク 1 で 0.54m3/m3 程度であり,それぞれ絶対容積に換算すると,
ランク 2 は約 340L/m3,ランク 1 は約 320L/m3 に相当する.
表-6.3.5 高流動コンクリート施工指針に示される
自己充塡性のランクごとの単位粗骨材絶対容積の標準値(L/m3)
自己充塡性のランク *
高流動コン
クリートの
種類
ランク1
(35~60mm)
ランク2
(60~200mm)
ランク3
(200mm以上)
粉体系
280~300
300~330
320~350
併用系
280~300
300~330
300~350
増粘剤系
-
300~330
300~360
*自己充塡性のレベル。( )内の数値は最小鋼材あきを示す。
限界粗骨材絶対容積(L/m3)
360
340
320
300
280
260
スランプフロー60cm
粗骨材の実積率59%
粗骨材の粗粒率6.7
0
50 100 150 200
鉄筋の純間隔(mm)
250
図-6.3.13 鉄筋の純間隔と限界粗骨材絶対容積の関係 4)
(文献 4)に示される図をもとに作図)
今回の実験結果から判断すれば,中流動コンクリートを用いて補助的な振動締固めを行うこと
を前提とした場合には,同一の配筋条件(ランク)に使用する高流動コンクリートに比べて粗骨材絶
対容積を 10~20L/m3 程度多くできるものと考えられる.高流動コンクリートが重力の作用のみで
充塡するのに対し,中流動コンクリートは振動作用を与えることで鉄筋間隙を通過し充塡してい
るためと考えられる.しかしながら,今回の限られた実験結果からは断定はできないため,実用
的には,対象とする構造物の配筋条件に応じて,指針に示される高流動コンクリートの単位粗骨
材絶対容積と同様の値を設定することが望ましいと考えられる.また, 萩原ら 7)は,高流動コン
クリートが鉄筋間隙を通過する際に閉塞を生じないための限界粗骨材量について,確率モデルを
用いた検討を行い,鉄筋の配置間隔と限界粗骨材絶対容積の関係を図-6.3.13 のように示してい
142
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
る.表-6.3.5 のランク 2 に相当する鉄筋間隔が 60~200mm の場合における限界の粗骨材絶対容
積は概ね 320~340L/m3 であり,ランク 1 に相当する 35~60mm の場合は 280~320L/m3 となって
いる.今回の実験により得られた粗骨材絶対容積の限界値とほぼ一致する結果であり,指針に示
される値を目安とすることで,安全側の設定が行えることを裏付けるものと考えられる.
なお,図-6.3.12 に示すように,今回の実験では,単位粗骨材かさ容積を 0.5m3/m3 以下に設定
すれば,鉄筋間隙の通過前後においてコンクリート中の粗骨材量は変化しておらず,配筋条件に
よらず均質性の極めて高いコンクリート構造物が構築できる結果となっている.岡村らは自己充
塡性を有する高流動コンクリートの文献
8),9)
において,鉄筋間隙の通過に伴うコンクリートの閉
塞を防止するには粗骨材量を粗骨材の実積率の 50%以下,すなわちかさ容積で 0.5m3/m3 以下,に
制限する必要があることを示しており,今回の実験結果と一致する内容である.また,藤原ら
10)
は,高流動コンクリートの鉄筋間隙通過性に関する研究において,粗骨材の最大寸法が 20mm の
とき,鉄筋が 1 方向に配置された場合は鉄筋のあきが 40mm 以下,クロス方向に配置された場合
は 50mm 以下となると,粗骨材同士の干渉による閉塞が生じる可能性が極めて高くなることを理
論的に示している.鉄筋が高密度に配置された構造物の構築に用いるコンクリートは,流動性の
レベルによらず,単位粗骨材かさ容積をある値以下に制限する,場合によっては粗骨材の最大寸
法を見直す必要があることを示すものと考えられる.
143
第6章
6.4
単位粗骨材かさ容積の影響
本章のまとめ
本章では,材料分離抵抗性に優れたコンクリートの配合設計を行う際に,単位粗骨材かさ容積
をどのように設定すべきであるかを検討するため,指針類や日本各地のレディーミクストコンク
リート工場の現状についての調査や実験による検討を行った.
まず,流動性レベルと単位粗骨材かさ容積の関係について,土木学会や日本建築学会の指針類,
および日本各地のレディーミクストコンクリート工場の保有する標準配合一覧表から整理した.
そして,実験結果と比較することで,指針類に示される値の妥当性について考察した.
さらに,各地域の材料を用いてスランプフロー45cm の中流動コンクリートの配合を選定し,選
定結果から実務における合理的な単位粗骨材かさ容積の設定方法についても考察した.
次に,単位粗骨材かさ容積がコンクリートのブリーディング特性や振動作用に伴い鉄筋間隙を
通過した後の均質性に及ぼす影響について実験的に検討した.具体的には,モルタル品質がコン
クリートのブリーディング特性に及ぼす影響,ならびに配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の
限界値について検討した.
得られた知見を以下に示す.
(1) ブリーディングの少ないモルタルから構成されるコンクリートはブリーディングが少な
い.また,単位粗骨材かさ容積が等しい場合,ブリーディングの少ない中流動コンクリー
トほど,鉄筋間隙の通過前後における粗骨材量の変化が小さい.
(2) 鉄筋のない無筋構造物の場合,コンクリート中の単位粗骨材かさ容積が充塡性に及ぼす影
響は小さい.
(3) 鉄筋間隙の通過に伴う粗骨材量の低下を抑制し,均質性に優れた構造物を構築するには,
対象とする構造物の配筋条件に応じて,単位粗骨材かさ容積を設定する必要がある.そし
て,配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の目安として,土木学会の高流動コンクリート
の配合設計・施工指針に示される値が活用できる.
(4) 一方で,流動性のレベルに応じて単位粗骨材かさ容積を設定する場合には,土木学会や日
本建築学会の指針に示されるスランプ(フロー)と単位粗骨材かさ容積の関係図が活用でき
る.ただし,日本各地のレディーミクストコンクリート工場では,流動性のレベルに応じ
た単位粗骨材かさ容積を,上記の指針類に示される値より小さく設定している傾向にある
ことに留意する必要がある.
(5) 日本各地の材料を用いて選定したスランプフロー45cm の中流動コンクリート配合の単位
粗骨材かさ容積は,各レディーミクストコンクリート工場の所有する配合一覧表に示され
るスランプ 21cm のコンクリートの単位粗骨材かさ容積とほぼ一致する.レディーミクス
トコンクリート工場の配合一覧表に示される単位粗骨材かさ容積を活用することで,実務
において中流動コンクリートの配合設計を合理的に行える可能性がある.
本章の検討結果を踏まえると,コンクリートの単位粗骨材かさ容積は,流動性のレベルに応じ
て選定する必要があるとともに,対象とする構造物の配筋条件に応じても選定する必要がある.
144
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
スランプフロー45cm 程度の中流動コンクリートの場合には,流動性レベルから検討した場合と,
標準的な配筋条件から検討した場合の単位粗骨材かさ容積は,いずれも 0.55m3/m3 程度である.こ
のため,机上にて,合理的に中流動コンクリートの配合設計を行う際は,単位粗骨材かさ容積を
0.55m3/m3 前後に設定することが妥当と考えられる.
145
第6章
単位粗骨材かさ容積の影響
第6章の参考文献
1)
土木学会:2012 年制定コンクリート標準示方書【施工編】,2013.4
2)
小林一輔:コンクリートの文明誌,岩波書店,2004.10
3)
日本建築学会:建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事,2009.2
4)
土木学会:コンクリートライブラリー136
高流動コンクリートの配合設計・施工指針[2012
年版],2012.6
5)
土木学会:コンクリートライブラリー126 施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施
工指針(案),2007.3
6)
日本建築学会:高流動コンクリートの材料・調合・製造・施工指針(案)・同解説,1997.1
7)
荻原淳平・中井雅司・名和豊春:モンテカルロ法を用いた高流動コンクリートの限界粗骨材
量推定方法,土木学会論文集,No.690/Ⅴ-53,pp.65-82,2001.11
8)
岡村甫・前川宏一・小澤一雅:ハイパフォーマンスコンクリート,技報堂出版,1993.9
9)
岡村甫・小澤一雅:自己充塡コンクリートの配合設計法の現状と課題,土木学会論文集,No.496
/Ⅴ-24,pp.1-8,1994.8
10) 藤原浩巳・長滝重義・大即信明・堂園昭人:高流動コンクリートの間隙通過性に関する研究,
土木学会論文集,No.550/Ⅴ-33,pp.23-32,1996.11
146
第7章
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの
配合設計法
7.1 はじめに
3 章~5 章での検討により,水セメント比や流動性のレベルといった配合条件からブリーディン
グの少ないモルタル配合を選定することが可能となった,また,6 章での検討により,ブリーデ
ィングの少ないモルタルから構成されるコンクリートはブリーディングが少ないこと,鉄筋間隙
の通過に伴うモルタル分と粗骨材との分離を抑制するには,対象とする構造物の配筋条件や目標
とする流動性のレベルに応じて単位粗骨材かさ容積を設定する必要があり,土木学会や日本建築
学会の指針類に示される値を目安として活用できることを確認した.さらに,スランプフローが
45cm 程度で,標準的な配筋条件(鉄筋のあきが 60~200mm)の構造物に適用する中流動コンクリー
トの場合,単位粗骨材かさ容積を 0.55m3/m3 前後に設定することが望ましいことも確認した.
本章では,これらの成果を整理し,材料分離抵抗性を考慮したコンクリートの配合設計法の手
順を示した.そして,提案した配合設計法を用いてコンクリート配合を選定するとともに,ブリ
ーディング水量(自由水量)の推定を行った.さらに,選定した配合を用いて実際にコンクリートを
製造し,その結果を比較することで,提案した配合設計法の妥当性を検証した.
147
第7章
7.2
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
コンクリートの配合設計法
3~6 章での検討結果を踏まえ,本研究で提案する材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリ
ートの配合設計の手順を図-7.2.1 に示し,概要を以下に記述する.
(1)
配合条件の設定
設定すべき配合条件は,水セメント比と流動性のレベルである.水セメント比は,コンクリー
ト標準示方書などと同様に,対象とする構造物の設計基準強度や耐久性を考慮して定める必要が
ある.流動性のレベルについても,示方書や過去の実績から,配筋条件や施工条件に応じて選定
する必要がある.
また,使用するセメントおよび骨材の物理的性質を事前に把握しておく必要がある.
(2)
単位粗骨材かさ容積の設定
単位粗骨材かさ容積は,6 章での検討結果に従い,図-6.2.1 や図-6.2.3 に示す流動性のレベ
ルと単位粗骨材かさ容積の関係,あるいは表-6.3.5 に示す配筋条件と粗骨材絶対容積の関係から
設定する.
(3)
自由水量が最小となるモルタル配合(各材料の単位量)の選定
ブリーディングの少ないモルタルの配合を選定する上では,目標とするモルタルの流動性レベ
ルを考慮する必要がある.本研究に関して実施したコンクリートのスランプ(フロー)と 5mm ふる
いでスクリーニングしたモルタルのフロー値(落下運動を与えない 0 打フロー)との関係を図-
7.2.2 に示す.両者の関係は,使用する粗骨材の品質や混入量により変化するため,机上にて初期
配合を設定する観点から作成したおおよその関係を示す図である.この図を用いることで,目標
とするコンクリートの流動性に対応したモルタルの流動性を設定できる. モルタルの流動性レベ
ルが設定できれば,5.3 節に示す手順により,与えられた材料・配合条件において,所要の流動性
240
5mmふるいでスクリーニングした
モルタルの0打フロー(mm)
5mmふるいでスクリーニングした
モルタルの0打フロー(mm)
を満足しつつ,ブリーディング水量(自由水量)が最小となるモルタル配合を選定できる.
220
200
180
160
普通ポルトランドセメント
細骨材:陸砂,粗骨材:砕石
水セメント比:40~60%
140
120
30
220
200
普通ポルトランドセメント
細骨材:陸砂,粗骨材:砕石
水セメント比:45~55%
180
160
140
120
100
40 45 50 55 60
0 4 8 12 16 20 24 28
スランプフロー(cm)
スランプ(cm)
図-7.2.2 コンクリートのスランプ(フロー)とスクリーニングしたモルタルのフローとの関係
35
148
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
1.配合条件の設定 流動性のレベル,水セメント比,材料の物理的性質
2.単位粗骨材かさ容積の設定
流動性のレベル,対象構造物の配筋条件に応じて設定 (図-6.2.1,図-6.2.3,表-6.3.5)
3.自由水量が最小となるモルタル配合(各材料の単位量)の選定
(a)目標とするモルタルの流動性レベルの設定
(1)コンクリートの流動性とモルタルの流動性との関係図(図-7.2.2)から設定
(b)流動性レベルに対応するセメントの単位表面積の算出
(1)細骨材のかさ容積を任意に設定
(2)流動性確保に必要なセメントの単位表面積の増加率⊿Aを選定(図-5.2.1)
(3)ペーストの場合に同じ流動性の確保に必要なセメントの単位表面積APを選定(図-4.3.3)
(4)モルタルにおいて必要となるセメントの単位表面積AMを算出 AM=AP×⊿A
(c)細骨材の拘束水量の算出
(1)水セメント比,設定したかさ容積より各材料の単位量を算出
(セメント:C,水:W,細骨材:S)
(2)細骨材の拘束水比βSに単位量を乗じ拘束水量WSを算出
(拘束水比は3章の予測モデルに準じて求めておく)
WS=βS×VS
(3)細骨材の拘束水量以外の水量WWを算出 WW=W-WS
(d)高性能AE減水剤の添加量の算出
(1)配合条件から高性能AE減水剤を用いない場合のセメントの単位表面積ANONSPを算出
(ファンデルワールス力による凝集力と回転慣性力による分散力の関係)
(2)(b)で求めた必要なセメントの単位表面積AMとの比(高性能AE減水剤の分散効果⊿S)を算出
⊿S=AM÷ANONSP
(3)図-4.3.5もしくは表-7.3.3から,必要な高性能AE減水剤の添加量SPを算出
(e)自由水量の算出
(1)セメントの単位表面積AMと高性能AE減水剤の添加量SPからその膜厚さSSPを算出
SSP=SP/(AM×C)
(2)図-4.3.6からセメント表面に拘束できる水膜厚さSWRを算出
SWR=7.01-10.09×SSP
(3)セメントの拘束水量WCを算出 WC=SWR×AM×C
(4)自由水量WBの算出 WB=W-(WC+WS)
算出した自由水量が最小
OK
NG
細骨材のかさ容積を
変化させて繰返し計算
自由水量が最小となるモルタル配合の選定
コンクリート配合の選定
図-7.2.1 材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計の手順
149
第7章
7.3
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
提案した配合設計法によるコンクリートの配合選定
本節では,前節で示した配合設計法に従って,コンクリート配合を選定するとともに,自由水
量を推定した.さらに,選定した配合のコンクリートを実際に製造して,流動性とブリーディン
グ水量を測定し,提案した配合設計法の妥当性を検証した.
具体例として,高性能 AE 減水剤を用いたスランプフロー45cm の中流動コンクリート,および
AE 減水剤を用いたスランプ 15cm の普通コンクリートについて試算した.コンクリートの配合条
件を表-7.3.1 に,使用材料の概要を表-7.3.2 に示す.なお,材料は 3~6 章で用いた材料と同様
であるが,普通コンクリートの場合は AE 減水剤を用いた.
表-7.3.1 コンクリートの配合条件
No.
コンクリート種類
W/C
(%)
目標とする
流動性レベル
配筋条件
空気量
(%)
1
中流動コンクリート
47.5
スランプフロー45cm
標準的な配筋条件
(鉄筋のあき60~200mm)
4.5
2
普通コンクリート
55.0
スランプ15cm
-
4.5
表-7.3.2 使用材料の概要
種類
記号
物理的性質
セメント
C
普通ポルトランドセメント,密度3.16g/cm3 ,比表面積3370cm2 /g
水
W
水道水
細骨材
S
木更津産陸砂,表乾密度2.63g/cm3 ,吸水率1.63%,粗粒率2.62
実積率68.1%,拘束水比βS=0.14
粗骨材
G
青梅産砕石,最大寸法20mm,表乾密度2.65g/cm3 ,吸水率1.00%
粗粒率6.64,実積率59.0%
SP
高性能AE減水剤(ポリカルボン酸系) *中流動コンクリートで使用
混和剤
WR AE減水剤(リグニンスルホン酸) *普通コンクリートで使用
150
第7章
7.3.1
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
高性能 AE 減水剤を用いたコンクリート(中流動コンクリート)
①単位粗骨材かさ容積の設定
目標とする流動性レベルがスランプフロー45cm であり,対象とする構造物の配筋条件が標準的
な場合(鉄筋のあき 60~200mm)であるので,前章での検討結果を踏まえて,単位粗骨材かさ容積
は 0.55m3/m3 に設定する.
単位粗骨材容積 Vg = 単位粗骨材かさ容積×粗骨材の実積率×10
= 0.55m3/m3×59.0%×10 = 325L/m3
単位粗骨材量 G = 単位粗骨材容積×粗骨材の密度
= 325L/m3×2.65g/cm3 = 860kg/m3
②目標とするモルタルの流動性レベルの設定
図-7.2.2 から,
スランプフロー45cm に対応するモルタルフロー値として,
200mm を選定する.
③所要の流動性レベルに応じたセメントの分散の程度(単位表面積)の算出
図-5.4.4 を参考に,モルタル中の細骨材のかさ容積を仮に 0.79 に設定すると,モルタル中の
細骨材容積比は 0.535 となる.一方,単位粗骨材容積は 325L/m3 であるため,空気量(45L/m3)を除
いたモルタル容積は 630L/m3 となり,単位細骨材容積は 337L/m3 となる.
モルタル中の細骨材容積比 VS/Vm = モルタル中の細骨材のかさ容積×細骨材の実績率
= 0.79×68.0%÷100 = 0.535
モルタル容積 Vm = 1000-45-325 = 630L/m3
単位細骨材容積 Vs = 細骨材容積比 Vs/Vm×モルタル容積 Vm = 0.535×630 = 337L/m3
図-5.2.3 から,モルタル中の細骨材かさ容積 0.79 における所要の流動性の確保に必要なセメ
ントの単位表面積の増加率⊿A は 1.19 となる.
また,図-4.3.3 に示される近似式から,セメントペーストにおいてペーストフロー200mm の
確保に必要なセメントの単位表面積 AP は 53,560mm2/g となる.このため,モルタルにおいてフロ
ー200mm の確保に必要なセメントの単位表面積 AM は,式(5.1)より 63,736mm2/g となる.
所要の流動性の確保に必要なセメントの単位表面積の増加率⊿A = 1.19
ペーストとしてペーストフローPF=200mm の確保に必要なセメントの単位表面積 AP
AP = 97.25×PF+34,110 = 97.25×200mm+34,110 = 53,560mm2/g
モルタルとしてモルタルフロー200mm の確保に必要なセメントの単位表面積 AM
AM = AP×⊿A = 53,560×1.19 = 63,736mm2/g
151
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
④細骨材の拘束水量の算出
水セメント比は 47.5%であり,③において細骨材のかさ容積を 0.79(モルタルの細骨材容積比を
0.535)に設定しているため,モルタル中の各材料の単位量は以下のようになる.
単位細骨材容積 VS = モルタル容積 Vm×細骨材容積比 VS/Vm
= 630L/m3×0.535 = 337L/m3
単位細骨材量 S = 単位細骨材容積 VS×細骨材の密度= 337L/m3×2.63g/cm3 = 886kg/m3
水セメント容積比 VW/VC = W/C×セメント密度 = 0.475×3.16g/cm3 = 1.50
単位セメント容積 VC =(モルタル容積-細骨材の容積)×(1 ÷(1+水セメント容積比))
=(630-337)×(1÷(1+1.50))=117L/m3
単位セメント量 C = 単位セメント容積 VC×セメントの密度 = 117×3.16 = 370kg/m3
単位水容積 VW = 1000 -(空気+細骨材+粗骨材+セメントの容積)= 175L/m3
単位水量 W = 単位水容積×水の密度 = 175L/m3×1.00g/cm3 = 175kg/m3
細骨材が拘束できる水量 WS は,3.3.3 節での検証結果から細骨材(陸砂)の拘束水比 βS を 0.14 と
すると 47.2kg/m3 となる.また,細骨材により拘束される以外の水量 WW は 127.8kg/m3 となる.
細骨材の拘束水量 WS = 単位細骨材容積 VS×細骨材の拘束水比 βS = 337×0.14 = 47.2kg/m3
細骨材に拘束される以外の水量 WW = 単位水量 W-細骨材の拘束水量 WS
= 175-47.2 = 127.8kg/m3
⑤高性能 AE 減水剤の添加量の算出
細骨材に拘束される以外の水量 WW と単位セメント量 C の混合比率を用い,ファンデルワール
ス力による凝集力と回転慣性力による分散力との関係から,高性能 AE 減水剤を用いない場合の
セメントの単位表面積 ANONSP を求める.
実際には,3.2.2 節で示す手順で計算を行う必要があるが,簡便のため,本研究で使用した普通
ポルトランドセメントの場合の水セメント比とセメント凝集体の単位表面積 ANONSP の関係を図-
7.3.3 に示す.この図から,細骨材に拘束される以外の水量 WW と単位セメント量 C との比率に対
応するセメントの単位表面積 ANONSP を算出すると,47,575mm2/g になる.
細骨材に拘束される以外の水量とセメントの比 WW/C = 127.8÷370 = 34.5%
WW/C=34.5%での高性能 AE 減水剤を用いない場合のセメント凝集体の単位表面積 ANONSP
ANONSP= -4.52×WW/C2+1224×WW/C+10727
= -4.52×34.52+1224×34.5+10727 = 47,575mm2/g
一方,①より,モルタルフロー200mm の確保に必要なセメントの単位表面積 AM は 63,736mm2/g
である.このため,高性能 AE 減水剤の混和によってセメントを分散させる程度(高性能 AE 減水
152
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
剤による分散効果⊿S)は 1.34 となる.
⊿S = AM÷ANONSP = 63,736mm2/g÷47,575mm2/g = 1.34
このため,所要の流動性確保に必要な高性能 AE 減水剤の添加量 SP は,図-4.3.5 に示される
関係式を一覧表に示した表-7.3.3 から 1.04%を得る.
高性能 AE 減水剤の添加量 SP = 単位セメント量 C×1.04% = 3.85kg/m3
以上から,中流動コンクリートの配合は以下のようになる(表-7.3.4).
表-7.3.4 選定した中流動コンクリートの配合
目標
目標 細骨材 粗骨材 粗骨材
スランプ
W/C
容積 かさ容積
空気量 容積
フロー
(%)
(%)
(L/m3 ) (L/m3 )
(m3 /m3 )
(cm)
45
4.5
337
325
0.55
47.5
s/a
(%)
50.9
W
C
S
G
高性能
AE
減水剤
(C×%)
175
370
886
860
1.04
単位量(kg/m3 )
セメント凝集体の単位表面積
ANONSP(mm2/g)
80000
高性能AE減水剤を用いない場合
70000
60000
50000
40000
30000
ANONSP=-4.52・W/C2+1224・W/C+10727
20000
20
30
40
50
60
水セメント比W/C(%)
70
図-7.3.3 水セメント比とセメント凝集体の単位表面積の関係
(普通ポルトランドセメント)
⑥自由水量の算出
高性能 AE 減水剤の膜厚さ SSP は,式(5.4)を用いて計算できる.モルタルフロー200mm の確保
に必要なセメントの単位表面積が AM=63,736mm2/g,必要な高性能 AE 減水剤の添加量が SP=
3.85kg/m3 であるので,
高性能 AE 減水剤の膜厚さ SSP = SP÷(AM×C) = 3.85÷(63,736×370) = 0.163μm
一方で,セメント凝集体がその表面に拘束できる水膜厚さ SWR は,図-4.3.6 に示される近似式
から求められる.そして,セメントの単位量を乗じることでセメントが拘束できる水量 WC も算出
できる.
153
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
表-7.3.3 本研究で用いた高性能 AE 減水剤における
セメントの分散効果⊿S と添加量 SP の関係の早見表
分散
効果
添加量
(C×%)
分散
効果
添加量
(C×%)
分散
効果
添加量
(C×%)
分散
効果
添加量
(C×%)
分散
効果
添加量
(C×%)
分散
効果
添加量
(C×%)
1.036
1.040
1.043
1.047
1.050
1.054
1.057
1.060
1.064
1.067
1.071
1.074
1.077
1.081
1.084
1.087
1.091
1.094
1.097
1.100
1.104
1.107
1.110
1.113
1.117
1.120
1.123
1.126
1.129
1.133
1.136
1.139
1.142
1.145
1.148
1.151
1.155
1.158
1.161
1.164
1.167
1.170
1.173
1.176
1.179
1.182
1.185
1.188
1.191
1.194
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0.09
0.10
0.11
0.12
0.13
0.14
0.15
0.16
0.17
0.18
0.19
0.20
0.21
0.22
0.23
0.24
0.25
0.26
0.27
0.28
0.29
0.30
0.31
0.32
0.33
0.34
0.35
0.36
0.37
0.38
0.39
0.40
0.41
0.42
0.43
0.44
0.45
0.46
0.47
0.48
0.49
0.50
1.197
1.200
1.203
1.206
1.209
1.212
1.215
1.217
1.220
1.223
1.226
1.229
1.232
1.235
1.237
1.240
1.243
1.246
1.249
1.251
1.254
1.257
1.260
1.262
1.265
1.268
1.271
1.273
1.276
1.279
1.281
1.284
1.287
1.289
1.292
1.294
1.297
1.300
1.302
1.305
1.307
1.310
1.312
1.315
1.318
1.320
1.323
1.325
1.328
1.330
0.51
0.52
0.53
0.54
0.55
0.56
0.57
0.58
0.59
0.60
0.61
0.62
0.63
0.64
0.65
0.66
0.67
0.68
0.69
0.70
0.71
0.72
0.73
0.74
0.75
0.76
0.77
0.78
0.79
0.80
0.81
0.82
0.83
0.84
0.85
0.86
0.87
0.88
0.89
0.90
0.91
0.92
0.93
0.94
0.95
0.96
0.97
0.98
0.99
1.00
1.332
1.335
1.337
1.340
1.342
1.345
1.347
1.349
1.352
1.354
1.357
1.359
1.361
1.364
1.366
1.368
1.371
1.373
1.375
1.377
1.380
1.382
1.384
1.386
1.389
1.391
1.393
1.395
1.397
1.400
1.402
1.404
1.406
1.408
1.410
1.412
1.415
1.417
1.419
1.421
1.423
1.425
1.427
1.429
1.431
1.433
1.435
1.437
1.439
1.441
1.01
1.02
1.03
1.04
1.05
1.06
1.07
1.08
1.09
1.10
1.11
1.12
1.13
1.14
1.15
1.16
1.17
1.18
1.19
1.20
1.21
1.22
1.23
1.24
1.25
1.26
1.27
1.28
1.29
1.30
1.31
1.32
1.33
1.34
1.35
1.36
1.37
1.38
1.39
1.40
1.41
1.42
1.43
1.44
1.45
1.46
1.47
1.48
1.49
1.50
1.443
1.445
1.447
1.449
1.451
1.453
1.455
1.456
1.458
1.460
1.462
1.464
1.466
1.468
1.469
1.471
1.473
1.475
1.477
1.478
1.480
1.482
1.484
1.485
1.487
1.489
1.491
1.492
1.494
1.496
1.497
1.499
1.501
1.502
1.504
1.505
1.507
1.509
1.510
1.512
1.513
1.515
1.516
1.518
1.520
1.521
1.523
1.524
1.526
1.527
1.51
1.52
1.53
1.54
1.55
1.56
1.57
1.58
1.59
1.60
1.61
1.62
1.63
1.64
1.65
1.66
1.67
1.68
1.69
1.70
1.71
1.72
1.73
1.74
1.75
1.76
1.77
1.78
1.79
1.80
1.81
1.82
1.83
1.84
1.85
1.86
1.87
1.88
1.89
1.90
1.91
1.92
1.93
1.94
1.95
1.96
1.97
1.98
1.99
2.00
1.528
1.530
1.531
1.533
1.534
1.536
1.537
1.538
1.540
1.541
1.543
1.544
1.545
1.547
1.548
1.549
1.551
1.552
1.553
1.554
1.556
1.557
1.558
1.559
1.561
1.562
1.563
1.564
1.565
1.567
1.568
1.569
1.570
1.571
1.572
1.573
1.575
1.576
1.577
1.578
1.579
1.580
1.581
1.582
1.583
1.584
1.585
1.586
1.587
1.588
2.01
2.02
2.03
2.04
2.05
2.06
2.07
2.08
2.09
2.10
2.11
2.12
2.13
2.14
2.15
2.16
2.17
2.18
2.19
2.20
2.21
2.22
2.23
2.24
2.25
2.26
2.27
2.28
2.29
2.30
2.31
2.32
2.33
2.34
2.35
2.36
2.37
2.38
2.39
2.40
2.41
2.42
2.43
2.44
2.45
2.46
2.47
2.48
2.49
2.50
1.589
1.590
1.591
1.592
1.593
1.594
1.595
1.595
1.596
1.597
1.598
1.599
1.600
1.601
1.601
1.602
1.603
1.604
1.605
1.605
1.606
1.607
1.608
1.608
1.609
1.610
1.611
1.611
1.612
1.613
1.613
1.614
1.615
1.615
1.616
1.616
1.617
1.618
1.618
1.619
1.619
1.620
1.620
1.621
1.622
1.622
1.623
1.623
1.624
1.624
2.51
2.52
2.53
2.54
2.55
2.56
2.57
2.58
2.59
2.60
2.61
2.62
2.63
2.64
2.65
2.66
2.67
2.68
2.69
2.70
2.71
2.72
2.73
2.74
2.75
2.76
2.77
2.78
2.79
2.80
2.81
2.82
2.83
2.84
2.85
2.86
2.87
2.88
2.89
2.90
2.91
2.92
2.93
2.94
2.95
2.96
2.97
2.98
2.99
3.00
154
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
セメントの水膜厚さ SWR = 7.01-10.09×SSP = 7.01-10.09×0.163 = 5.36μm
セメントの拘束水量 WC = SWR×AM×C = 5.36×63,736×370 = 126.4kg/m3
ブリーディング水量 WB は,単位水量 W から,セメントおよび細骨材が拘束できる水量を差し
引くことで求められる.
ブリーディング水量 WB = W-WC-WS = 175-126.4-47.2 = 1.4kg/m3
モルタルの細骨材のかさ容積を変更して,上記の③~⑥の計算を繰り返し行うことで,ブリー
ディングの少ない単位量の組合せを選定できる.同様の手順で,モルタル中の細骨材かさ容積を
0.72~0.83 の範囲で変化させた場合に,選定された配合および自由水量の推定結果を表-7.3.5 に
示す.
表-7.3.5 提案した配合設計法により選定した中流動コンクリートの配合および
自由水量の算出結果
配合No.
1
2
3
W/C(%)
4
5
6
47.5
目標スランプフロー(cm)
45
空気量(%)
4.5
単位粗骨材かさ容積(m3 /m3 )
0.55
モルタル中の細骨材かさ容積
0.83
0.81
0.79
0.76
0.74
0.72
細骨材容積(L/m3 )
357
347
337
327
317
307
W
164
170
175
182
188
194
単位量
C
346
358
370
384
396
409
(kg/m3 )
S
939
913
886
860
834
807
G
860
860
860
860
860
860
高性能AE減水剤の添加量(C×%)
2.11
1.25
1.04
0.77
0.63
0.50
細骨材の拘束水量W S (kg/m3 )
50.0
48.6
47.2
45.8
44.4
43.0
細骨材に拘束される以外の水量と
セメントとの比W W /C (%)
33.0
33.9
34.5
35.5
36.3
37.0
46,207
47,037
47,575
48,514
49,174
49,789
単位表面積A M (mm2 /g)
71,235
65,343
63,736
61,594
60,523
59,452
高性能AE減水剤の膜厚さS SP (μm)
0.30
0.19
0.16
0.13
0.10
0.08
拘束できる水膜厚さS W R (μm)
4.02
5.08
5.36
5.75
5.96
6.16
セメントの拘束水量W C (kg/m3 )
99.0
118.9
126.1
135.8
142.9
149.8
拘束できる水量W S +W C (kg/m3 )
149.0
167.5
173.3
181.6
187.3
192.8
15.1
2.6
1.4
0.5
0.8
1.3
セメント凝集体の単位表面積
A NONSP (mm2 /g)
流動性確保に必要なセメントの
自由水量の計算値
W B (kg/m3 )
155
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
⑦試験練り結果との比較
表-7.3.5 に示すように,本研究で提案した配合設計法に基づいて配合を選定した結果,最もブ
リーディング水量(自由水量)が少なくなるのは,表中の配合 No.4 の配合と推定される.しかし,
この配合の単位水量は 182kg/m3 であり,コンクリート標準示方書で示される耐久性を確保する観
点から単位水量の上限値(175kg/m3)を上回っている.このため,今回の材料および配合条件におい
て最もブリーディングを低減できる(自由水量が少ない)配合として,配合 No.3 の配合(表-7.3.4
に示すモルタル中の細骨材のかさ容積を 0.79 に設定した配合)を選定した.
この配合 No.3 の配合(表-7.3.4 に示す配合)のコンクリートを実際に製造した.なお,コンクリ
ートの練混ぜは,6.3.1 節と同様の方法で行った.
製造したコンクリートの試験結果を表-7.3.6 および写真-7.3.1 に示す.スランプフローは
46.5cm,ブリーディング水量は 2.5kg/m3 であった.また,写真-7.3.1 に示すように,スランプフ
ロー試験後の試料は,中心部に粗骨材が偏在したり,周辺に浮き水などは生じていなかった.
表-7.3.6 中流動コンクリートの試験練り結果
スランプフロー
(cm)
ブリーディング水量
計算値
45
(目標値)
1.4
(計算値)
試験練り結果(実測値)
46.5
2.5
(kg/m3 )
写真-7.3.1 選定した中流動コンクリートのスランプフロー試験状況
なお,実験により得られたブリーディング水量は,コンクリート試料の上面に浮き上がった水
量のみである.一般に,コンクリート中の粗骨材の下面にも,自由水が堆積していると考えられ
ており,この水量は考慮されていない.このため,本研究で提案した手法により求めた自由水量
と,JIS に準じたブリーディング試験により得られるブリーディング水量は,必ずしも一致しない
ものと考えられる.しかしながら,相対的には,セメント凝集体および細骨材の表面に拘束され
る以外の水量(自由水量)が少ないほど,コンクリートレベルにおいて測定されるブリーディング水
量,ならびに粗骨材の下面に堆積する水量も少なくなると考えられる.今回の検証実験により得
られたブリーディング水量は 2.5kg/m3(ブリーディング率で 1.4%)と十分に小さい値であり,本研
156
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
究で提案した手法により,ブリーディングの少ない材料分離抵抗性に優れたコンクリート配合が
選定できると考えられる.
また,選定したコンクリートの圧送性を検証するため JSCE-F502「加圧ブリーディング試験方
法(案)」に準じて加圧ブリーディング試験を行った.試験結果を図-7.3.4 に示す.なお,図中の
網掛けは,土木学会のコンクリートポンプ施工指針に示される「圧送性が良好である範囲」を表
している
1)
.選定した中流動コンクリートは,指針に示される良好な範囲のほぼ中央に位置して
おり,圧送性に優れることも確認できた.
これらの結果を踏まえると,本研究で提案する手法を用いることで,流動性のレベルを考慮し
つつ,適切な材料分離抵抗性を有する中流動コンクリートの配合が選定できると考えられる.
加圧ブリーディング水量(ml)
140
土木学会ポンプ施工指針
「良好な圧送が行える」範囲
120
100
80
60
40
20
0
0
50
100 150 200
加圧時間(秒)
250
300
図-7.3.4 選定した中流動コンクリートの加圧ブリーディング試験結果
なお,3~5 章における検証実験では,必ずしも全ての検討配合に対してペーストおよびモルタ
ルの空気量は測定していない.しかし,いずれの配合も,モルタルの空気量を 6.7%(単位粗骨材
容積を 320L/m3 とした場合のコンクリートでの空気量 4.5%に相当)として配合計算を行っている.
また,本研究では,7.2 節で示したように,コンクリートの流動性とモルタルの流動性を関連づ
けるために,これまでの実験データから,コンクリートのスランプ(スランプフロー)と 5mm ふる
いでスクリーニングしたモルタルのフロー値との関係図(図-7.2.2)を作成し,この関係から配合
条件として与えられるコンクリートの流動性に対応したモルタルの流動性を設定している.この
関係図に示されるコンクリートの空気量は 4.5%であるため,モルタル中にもこれに対応した空気
量が含まれていると想定される.そのため,今回の検証では,目標とする空気量を有する場合に
おいて,本研究で提案する配合設計法を用いることで目標とする流動性を有するコンクリートが
選定できたものと推測される.
ちなみに,AE 剤を用いないコンクリートであっても,通常 2~3%の空気が連行されており,
AE 剤を用いた場合(一般に空気量の標準値は 4.5%)との差は 1~2%である.一般に,空気量が 1%
多いとスランプ値は 2cm 程度大きくなると言われている.そのため,本研究のように,AE 剤を
157
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
用いないペーストもしくはモルタルで検討した流動性のレベルとセメントの分散の程度の関係か
らモルタルの流動性を推定する場合,目標値に対して流動性が若干小さくなる可能性はある.そ
のため,より精度を高めるには(本質的には),ペーストもしくはモルタルの流動性とセメントの分
散の程度(単位表面積)の関係を求める際に,空気量を適切に混入したペーストおよびモルタルで試
験を行うことが望ましい.しかしながら,図-7.2.2 に示すように,スランプが 2cm 変化した場
合のモルタルフローの変化量は 10mm 程度と小さく,空気量の考慮の有無が,モルタルの流動性
の推定精度に及ぼす影響は小さいものと考えられる.
158
第7章
7.3.2
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
AE 減水剤を用いたコンクリート(普通コンクリート)
7.3.1 節での検証により,高性能 AE 減水剤を用いた場合には,3~6 章の成果を取りまとめた
7.2 節の手順に従うことで,使用材料の物理的性質,水セメント比および流動性のレベルを与条件
として,所要の流動性を有しつつ,ブリーディングの少ない材料分離抵抗性に優れたコンクリー
ト配合を選定できることが確認できた.
一方で,序論でも述べたように,本研究では,他のコンクリートに比べ材料分離抵抗性が確保
しにくいという観点から,主たる対象を中流動コンクリートとしたが,あらゆるコンクリートの
配合設計法として展開できることを念頭において検討を進めてきた.2 章で調査したように,現
状の普通コンクリートの配合設計法ではブリーディングは考慮されていない.また,コンクリー
トが所要の流動性を有しているかは試し練りにより確認している現状にある.そのため,本研究
で提案した配合設計法が,高性能 AE 減水剤を用いない普通コンクリートの配合選定にも活用で
きれば,極めて有益と考えられる.そこで,本節では,高性能 AE 減水剤を用いないスランプ 15cm
の普通コンクリートを対象に,提案した配合設計法により,所要の流動性を有する配合が選定で
きること,およびブリーディング水量(自由水量)が推定できることを検証することにした.なお,
普通コンクリートは,現状では減水剤を用いないコンクリートはほとんど製造されておらず,大
半がリグニンスルホン酸を主成分とする AE 減水剤を用いている 2),3).そこで,本節でも AE 減水
剤を用いた場合について検討することにした.
(1) AE 減水剤を用いた場合のセメントの分散効果の把握
AE 減水剤によるセメントの分散効果,ならびにセメントの粒子表面に拘束できる水膜厚さを把
握するため,3 章および 4 章の検証実験と同様の手順で,普通ポルトランドセメントを用い,混
和剤にリグニンスルホン酸を主成分とする AE 減水剤を標準量(セメント質量の 0.25%)添加して水
セメント比を 25~50%に変化させたセメントペーストを製造し,フローおよびブリーディング試
験を行った.試験結果を,AE 減水剤を用いないプレーンペーストの結果と併せて図-7.3.5 およ
び図-7.3.6 に示す.
ペーストフローは,水セメント比が 30%以下の小さい範囲では,AE 減水剤を用いた場合と用
いない場合とではほぼ等しい値であるが,水セメント比が大きい場合には,AE 減水剤を使用する
ことで大きくなる結果が得られた.
一方,ブリーディング水量は,AE 減水剤の使用の有無による顕著な違いは認められなかった.
図-4.3.3 に示すペーストのフロー値とセメントの単位表面積の関係から,AE 減水剤を用いた
ペーストの各水セメント比におけるセメントの単位表面積を算出した.計算結果を AE 減水剤を
用いた場合と用いない場合のセメントの単位表面積の関係で整理して図-7.3.7 に示す.混和剤の
銘柄が異なるたびにこの手順の計算を行うことで,使用する AE 減水剤によるセメントの分散効
果を把握することができる.
159
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
350
ペーストフロー(mm)
普通ポルトランドセメント
300
混和剤なし
AE減水剤を使用
250
200
150
100
20
25
30
35
40
45
50
55
水セメント比(%)
図-7.3.5 AE 減水剤を用いたペーストフロー試験結果
ブリーディング水量(kg/m 3)
100
普通ポルトランドセメント
80
混和剤なし
AE減水剤を使用
60
40
20
0
20
35
40
45
50
55
水セメント比(%)
図-7.3.6 AE 減水剤を用いたペーストのブリーディング試験結果
AE減水剤を用いたペーストのセメントの
単位表面積APWR(×103 mm2/g)
25
30
70
65
普通ポルトランドセメント
W/C=25~50%
60
55
50
45
APWR=1.25×AP-1094
(相関係数0.997)
40
40 45 50 55 60 65 70
混和剤を用いないペーストのセメントの
単位表面積AP(×103 mm2/g)
図-7.3.7 AE 減水剤の使用有無によるセメントの単位表面積の変化
(AE 減水剤によるセメントの分散効果)
160
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
さらに,水セメント比ごとのセメントの単位表面積にセメントの単位量を乗じて,セメントの
全表面積を算出し,ブリーディング試験結果から得られたブリーディング水量を単位水量から差
し引いた拘束できた水量との比,すなわち,拘束できる水膜厚さを算出した.計算結果を水セメ
ント比との関係で整理して図-7.3.8 に示す.
AE 減水剤を用いた場合,セメントの表面に拘束できる水膜厚さは,AE 減水剤を用いない場合
と同様であり,水セメント比によらず,ほぼ一定の値を示している.今回使用したようなリグニ
ンスルホン酸を主成分とする AE 減水剤が,セメント粒子表面にどのような形態で吸着している
かは定かでないが,今回の実験および計算結果を踏まえると,ポリカルボン酸を主成分とする高
性能 AE 減水剤の場合とは異なり,セメント粒子表面にはほとんど吸着していないものと推測さ
れる.このため,以下の計算では,AE 減水剤を用いた場合にも,セメントは粒子表面に一定の水
膜厚さ(7.0μm)を拘束できると考えることにした.
20
拘束できる水膜厚さ(μ m)
普通ポルトランドセメント
15
混和剤なし
AE減水剤を使用
10
5
凝集を考慮
(粒子表面に拘束できる水膜厚さ一定で計算)
0
20
25
30
35
40
45
水セメント比(%)
50
55
図-7.3.8 AE 減水剤を用いた場合にセメントが拘束できる水膜厚さの算出結果
161
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
(2) AE 減水剤を用いたコンクリートの配合選定
AE 減水剤によるセメントの分散効果,ならびにセメントが表面に拘束できる水膜厚さが把握で
きたため,AE 減水剤を用いたコンクリートの配合選定は,以下の手順で行うことができる.
なお,AE 減水剤は,高性能 AE 減水剤とは異なり,一般に一定の添加量しか混和することがで
きない.このため,混和剤に AE 減水剤を用いる場合は,与条件として水セメント比と流動性の
レベルが与えられると,それを実現できる材料の組合せは,単位粗骨材かさ容積に応じて,一意
的に定まることになる.
①単位粗骨材かさ容積の設定
6 章での検討結果を踏まえ,
目標スランプが 15cm であるので,
単位粗骨材かさ容積を 0.635m3/m3
に設定する.
単位粗骨材容積 Vg = 単位粗骨材かさ容積×粗骨材の実積率×10
= 0.635m3/m3×59.0%×10 = 375L/m3
単位粗骨材量 G = 単位粗骨材容積×粗骨材の密度
= 375L/m3×2.65g/cm3 = 993kg/m3
②目標とするモルタルの流動性レベルの設定
図-7.2.2 から,スランプ 15cm に対応するモルタルのフロー値として 125mm を選定する.
③所要の流動性レベルに応じたセメントの分散の程度の算出
高性能 AE 減水剤を用いる場合と同様に,はじめにモルタル中の細骨材かさ容積を任意の値に
設定する.
仮に,細骨材のかさ容積を 0.80 に設定すると,モルタル中の細骨材容積比は 0.544 になる.一
方で,単位粗骨材容積は 375L/m3 であるため,空気量(45L/m3)を除いたモルタル容積は 580L/m3
となり,単位細骨材容積は 316L/m3 となる.
モルタル中の細骨材容積比 VS/Vm = モルタル中の細骨材のかさ容積×細骨材の実績率
= 0.800×68.0%÷100 = 0.544
モルタル容積 Vm = 1000-45-375 = 580L/m3
単位細骨材容積 Vs = 細骨材容積比 Vs/Vm×モルタル容積 Vm = 0.544×580 = 316L/m3
図-5.2.3 から,モルタル中の細骨材かさ容積 0.80 における所要の流動性の確保に必要なセメ
ントの単位表面積の増加率⊿A は 1.20 となる.
また,図-4.3.3 に示される近似式から,セメントペーストにおいてペーストフロー125mm の
確保に必要なセメントの単位表面積 AP は 46,266mm2/g となる.このため,モルタルにおいてフロ
ー125mm の確保に必要なセメントの単位表面積 AM は,式(5.1)より 55,520mm2/g となる.
所要の流動性の確保に必要なセメントの単位表面積の増加率⊿A = 1.20
162
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
ペーストとしてペーストフローPF=125mm の確保に必要なセメントの単位表面積 AP
AP = 97.25×PF+34,110 = 97.25×125mm+34,110 = 46,266mm2/g
モルタルとしてモルタルフロー125mm の確保に必要なセメントの単位表面積 AM
AM = AP×⊿A = 46,266×1.20 = 55,520mm2/g
④細骨材の拘束水量の算出と各材料の単位量の算出
水セメント比は 55.0%であり,③において細骨材のかさ容積を 0.80(モルタルの細骨材容積比を
0.544)に設定しているため,各材料の単位量は以下のようになる.
単位細骨材容積 VS = モルタル容積 Vm×細骨材容積比 VS/Vm
= 590L/m3×0.544 = 316L/m3
単位細骨材量 S = 単位細骨材容積 VS×細骨材の密度= 316L/m3×2.63g/cm3 = 831kg/m3
水セメント容積比 VW/VC = W/C×セメント密度 = 0.55×3.16g/cm3 = 1.738
単位セメント容積 VC =(モルタル容積-細骨材の容積)×(1 ÷(1+水セメント容積比)
)
=(580-316)×(1÷(1+1.738)
)=96L/m3
単位セメント量 C = 単位セメント容積 VC×セメントの密度 = 96×3.16 = 305kg/m3
単位水容積 VW = 1000 -(空気+細骨材+粗骨材+セメントの容積)= 168L/m3
単位水量 W = 単位水容積×水の密度 = 168L/m3×1.00g/cm3 = 168kg/m3
細骨材が拘束できる水量 WS は,3.3.3 節での検証結果から細骨材(陸砂)の拘束水比 βS を 0.14 と
すると 47.2kg/m3 となる.また,細骨材により拘束される以外の水量 WW は 123.8kg/m3 となる.
細骨材の拘束水量 WS = 単位細骨材容積 VS×細骨材の拘束水比 βS = 316×0.14 = 44.2kg/m3
細骨材に拘束される以外の水量 WW = 単位水量 W-細骨材の拘束水量 WS
= 168-44.2 = 123.8kg/m3
⑤目標とする流動性レベルを有することの照査
上記の①~④の手順により,各材料の単位量を算出できた.次に,選定した単位量において,
目標とするスランプ 15cm(モルタルフロー125mm)を確保できるかを照査する.
先述のように,モルタルとして所要の流動性を確保するには,セメントの単位表面積 AM を
55,520mm2/g に設定する必要がある.
細骨材に拘束される以外の水量 WW と単位セメント量との比 WW/C は 40.6%である.混和剤を用
いないペーストにおける水セメント比とセメントの単位表面積の関係式より,WW/C=40.6%にお
けるセメントの単位表面積 AP は,52,971mm2/g となる.
AP =-4.52×W/C2+1224×W/C+10,727 =-4.52×40.62+1224×40.6+10,727 = 52,971mm2/g
163
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
同一の水セメント比における AE 減水剤を用いたことによるセメントの分散効果は,図-7.3.7
に示す近似式から算出できる.そのため,AE 減水剤を用いた場合のセメントの単位表面積 APWR
は以下のようになる.
APWR =1.25×AP-10,944 =1.25×52,971-10944 = 55,270mm2/g
モルタルとして所要の流動性を確保するために必要となるセメントの単位表面積 AM と AE 減水
剤を用いた場合のセメントの単位表面積 APWR はほぼ等しいことから,算出した配合を用いること
で,スランプ 15cm のコンクリートが得られると判定できる.
なお,所要の流動性の確保に必要なセメントの単位表面積 AM と,AE 減水剤を用いた場合のセ
メントの単位表面積 APWR が一致しない場合には,手順①に戻り,細骨材のかさ容積を適宜変更し
て,再度計算を行う必要がある.
選定したコンクリート配合を表-7.3.7 に示す.
表-7.3.7 選定したコンクリート配合(W/C55%,スランプ 15cm,AE 減水剤)
目標
目標 細骨材 粗骨材 粗骨材
W/C
容積 かさ容積
スランプ 空気量 容積
(%)
3
3
3
3
(cm)
(%)
(L/m )
(L/m )
(m /m )
15
4.5
316
375
0.635
55.0
s/a
(%)
45.7
単位量(kg/m3 )
W
C
S
G
168
305
831
993
AE
減水剤
(C×%)
0.25
(標準量)
⑥自由水量の算出
図-7.3.8 に示すように,AE 減水剤を用いた場合には,水セメント比の水準によらず,セメン
トが表面に拘束できる水膜厚さは一定であり,AE 減水剤を用いない場合と同様である.そこで,
セメントが拘束できる水膜厚さを 7.0μm として拘束水量を算出する.
セメントの拘束水量 WC は,セメントの単位表面積 APWR(もしくは AM)に,セメントの単位量
C およびセメントの水膜厚さ SWR を乗じることで求められる.
セメントの拘束水量 WC = SWR×APWR×C = 7.0×55,270×305 = 118.0kg/m3
ブリーディング水量 WB は,単位水量 W から,セメントおよび細骨材が拘束できる水量を差し
引くことで求められる.
ブリーディング水量 WB = W-WC-WS = 168-118.0-44.2 = 5.8kg/m3
164
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
⑦試験練り結果との比較
表-7.3.7 に示す配合のコンクリートを実際に製造し,試験した結果を表-7.3.8 および写真-
7.3.2 に示す.スランプは 14.5cm で,ブリーディング水量は 6.7kg/m3 であった.概ね想定通りの
コンクリートが製造できており,本研究で提案した手法を用いることで,AE 減水剤を用いた普通
コンクリート配合も選定できることが確認できた.
表-7.3.8 スランプ 15cm の普通コンクリートの試験練り結果
スランプ
(cm)
ブリーディング水量
計算値
15
(目標値)
5.8
(計算値)
試験練り結果(実測値)
14.5
6.7
(kg/m3 )
写真-7.3.2 普通コンクリートのスランプ試験状況
165
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
(3) 本研究の配合設計法により得られる配合の妥当性の検証
(2)での検討結果により,AE 減水剤を用いた普通コンクリートにおいても,本研究で提案した
配合設計法を用いることで,所要の流動性を有するコンクリートにおいて,ブリーディング水量
(自由水量)を概ね推定できることを確認できた.
一方で,AE 減水剤を用いた普通コンクリートについては,2 章で調査したように,土木学会コ
ンクリート標準示方書【施工編】において,目標とするスランプや水セメント比に応じて,単位
水量や細骨材率の補正方法が示されている(表-2.3.2 参照).そこで,目標スランプや水セメント
比が変化した場合に,本研究で提案した配合設計方法においても,示方書に示される補正方法と
同様の補正がなされるかについて検討した.
(2)と同様の材料を用いた普通コンクリートを対象とし,水セメント比を 55%で一定としたまま
スランプを 8~21cm に変化させた場合,スランプを 15cm として水セメント比を 50~60%に変化
させた場合について検証した.計算手順は,(2)と同様である.計算結果を表-7.3.9 に示す.
表-7.3.9 目標スランプおよび水セメント比を変化させた普通コンクリートの配合選定結果
与条件
検討
要因
スランプ
(流動性
レベル)
水セメ
ント比
与条件で定まる値
粗骨材
かさ
容積
設定値
計算結果
単位
単位
目標
モルタル 粗骨材 細骨材
モルタル
の細骨材 容積
容積
フロー
かさ容積
(mm)
(L/m3 ) (L/m3 )
目標
スラ
ンプ
(cm)
W/C
(%)
8
55.0
0.67
105
0.815
395
310
12
55.0
0.655
115
0.805
386
15
55.0
0.635
125
0.800
375
(m3 /m3 )
単位量(kg/m3 )
s/a
(%)
AE
減水剤
(C×%)
自由水量
計算値
(kg/m3 )
W
C
S
G
44.0
158
288
816
1048
5.0
311
44.6
163
297
819
1024
5.5
316
45.7
168
305
830
993
5.8
0.25
(標準量)
18
55.0
0.605
140
0.785
357
319
47.2
177
322
840
946
6.6
21
55.0
0.58
155
0.770
342
321
48.4
185
337
844
907
7.4
15
50.0
0.635
125
0.760
375
300
44.5
172
343
789
993
4.2
15
60.0
0.635
125
0.820
375
324
46.3
168
280
851
993
7.7
水セメント比を一定として,目標スランプを 8~21cm に変化させた場合に,所要の流動性を確
保するために必要となる単位水量の計算結果を図-7.3.9 に示す.表-2.3.2 に示すように,示方
書では,
「スランプが 1cm だけ大きいごとに,単位水量を 1.2%だけ大きくする」とされている.
そこで,図には,それに従い単位水量を補正した場合の値を破線で併記した.
本研究で提案した手法で計算した場合,示方書に示される補正方法の傾向と同様に,目標スラ
ンプが大きくなるほど,単位水量を大きくする必要がある結果となっている.提案した配合設計
手法が妥当であることを示すものと考えられる.
166
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
190
W/C55%,AE減水剤を使用
単位水量(kg/m3)
185
180
175
170
165
160
計算結果
示方書の補正方法
155
150
4
8
12
16
スランプ(cm)
20
24
図-7.3.9 目標スランプを変化させたコンクリートの単位水量の計算結果
次に,スランプを 15cm で一定として,水セメント比を 50~60%に変化させた場合における細
骨材率の計算結果を図-7.3.10 に示す.示方書では,
「水セメント比が 0.05 大きい(小さい)ごとに,
細骨材率を 1%だけ大きく(小さく)する」とされている.そこで,図には,それに従い細骨材率を
補正した場合の値を破線で併記した.
本研究で提案した手法で計算した場合,示方書に示される補正方法の傾向と同様に,水セメン
ト比が大きくなるほど,細骨材率を大きくする必要がある結果となっている.単位水量の設定と
同様に,提案した配合設計手法が妥当であることを示すものと考えられる.
48
スランプ15cm,AE減水剤を使用
細骨材率(%)
47
46
45
44
43
45
計算結果
示方書の補正方法
50
55
60
水セメント比(%)
65
図-7.3.10 水セメント比を変化させたコンクリートの細骨材率の計算結果
目標スランプおよび水セメント比を変化させた場合における自由水量(ブリーディング水量)の
計算値を図-7.3.11 および図-7.3.12 に示す.目標スランプを大きくするほど,単位水量が多く
なり推定される自由水量が多くなる,水セメント比が大きいほど自由水量が大きくなる結果とな
っている.これまで経験的に知られている傾向と同様であり,提案した配合設計法が妥当である
ことを改めて示すものと考えられる.
167
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
自由水量の計算値(kg/m3)
10
W/C55%,AE減水剤を使用
8
6
4
2
0
4
8
12
16
スランプ(cm)
20
24
図-7.3.11 水セメント比一定で目標スランプを変化させた場合の自由水量の計算値の変化
自由水量の計算値(kg/m3)
10
スランプ15cm,AE減水剤を使用
8
6
4
2
0
45
50
55
60
水セメント比(%)
65
図-7.3.12 目標スランプ一定で水セメント比を変化させた場合の自由水量の計算値の変化
以上の結果を踏まえると,本研究で提案した手法により選定した配合は,現状の配合設計方法
に示される補正方法と概ね同等の傾向を示しているとともに,これまで経験的に知られている配
合条件の変化に伴う自由水量(ブリーディング水量)の変化も適切に表現できるといえる.
168
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
7.4 本章のまとめ
本章では,3~6 章での検討結果を踏まえ,材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの
配合設計法を提案した.そして,提案した配合設計法を用いてコンクリート配合を選定するとと
もに,自由水量を推定した.さらに,選定した配合を用いて実際にコンクリートを製造し,流動
性およびブリーディング水量を測定し,提案した配合設計法の妥当性を検証した.
得られた知見を以下に示す.
(1) 3 章および 4 章で提案したモルタルの自由水量の予測モデル,および 5 章で提案したモル
タルの流動性の予測手法を用いるとともに,6 章で検討したように流動性レベルもしくは
配筋条件に応じて単位粗骨材かさ容積を設定することで,ブリーディングの少ないスラン
プフロー45cm 程度の中流動コンクリートの配合を選定することができる.
(2) 混和剤に AE 減水剤を用いた場合においても,本研究で提案した手法を用いることで,所
要の流動性を有する普通コンクリートの配合を選定できるとともに,ブリーディング水量
(自由水量)を算出できる.
(3) 本研究で提案した手法により選定された配合は,現状の普通コンクリートの配合設計法に
示される配合条件に応じた補正方法と同様の傾向を示すとともに,これまで経験的に知ら
れている配合条件の変化に伴うブリーディング水量(自由水量)の変化を表現することがで
きる.
169
第7章
材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
第7章の参考文献
1)
土木学会:コンクリートライブラリー135
コンクリートのポンプ施工指針[2012 年版],
2012.6
2)
(社)日本材料学会編:コンクリート混和材料ハンドブック,pp.105-114,エヌ・ティー・エス,
2004.4
3)
コ ン ク リ ー ト 用 化 学 混 和 剤 協 会 ホ ー ム ペ ー ジ : 混 和 剤 品 質 規 格 / JIS A 6204 規 格 ,
http://www.moon.sphere.ne.jp/jcaa/
170
第8章
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事
への適用
8.1 はじめに
近年では,耐震規準類の見直しにより鉄筋が高密度に配置された部材が増加しており,流動性
をスランプで管理する普通コンクリートでは充塡が困難な事例が増加している.その一方で,社
会基盤整備への投資額が抑制された現状では,自己充塡性を有する高流動コンクリートは,主に
材料・設備コストの観点から,特定の大型プロジェクトを除いては広く適用されるには至ってい
ない
1)
.このような社会的背景のもと,補助的にバイブレータによる締固めを行うことを前提と
した中流動コンクリートを適用する事例が増加している.
中流動コンクリートは,普通コンクリートに比べ高い流動性を有するため充塡不良の発生リス
クを大幅に低減できる,高流動コンクリートに比べ施工時の温度ひび割れの発生リスクが低減で
きるとともに,材料・設備コストの増加を最小限に抑制できるといった利点を有する.一方で,
比較的少ない粉体量で流動性を高めることから,ブリーディングの増大やモルタル分と粗骨材と
の分離が生じやすくなる可能性がある.そこで,本研究では,主に中流動コンクリートを対象と
して,水セメント比,流動性のレベルおよび使用材料の物理的性質からブリーディングの小さい
材料分離抵抗性に優れたコンクリート配合を選定する手法を開発した.
一方で,ブリーディングが多いコンクリートや,モルタル分と粗骨材との分離が生じやすいコ
ンクリートを用いて構築した構造物は均質性が低下し,耐久性が損なわれる可能性があることが
指摘されている.近年では様々な構造物を中流動コンクリートで施工する事例が増えているもの
の,中流動コンクリートを用いることで耐久性に優れた構造物が構築できることなどを定量的に
検証した事例は少ない.また,中流動コンクリートを将来的に広く活用していく上では,標準的
なレディーミクストコンクリート工場において,従来の普通コンクリートと同様の製造設備およ
び製造管理手法により,品質の安定したコンクリートを継続的に製造できることを検証すること
は重要である.
そこで,本章では,前章までとはやや趣を変え,材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮した,
ブリーディングの少ないコンクリートを実際の土木構造物に適用し,均質性の高いコンクリート
構造物を構築できること,および一般的なレディーミクストコンクリート工場や現場バッチャー
プラントにおいて,品質の安定したコンクリートが製造できることを検証した結果について記述
する.具体的には,他の構造物に比べ作業空間が狭く,コンクリートを長距離にわたり流動させ
るとともに,最終的にはコンクリートを上方に吹き上げて充塡させる必要のある山岳トンネルの
トンネル覆工,およびスリップフォーム工法により短期間で構造物を構築する際に,連続的にコ
ンクリートを薄く広範囲に流動し充塡させる必要のある地上式 LNG タンクの防液堤へ適用した
結果について述べる.
171
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
8.2 山岳トンネルの覆工
8.2.1
覆工コンクリートの概要
山岳トンネルの覆工コンクリートは,図-8.2.1 に示すように,躯体厚さが 30~35cm と薄いア
ーチ状の構造物で,写真-8.2.1 に示すような移動式型枠(以下,セントルという)を用いて施工す
る.セントル内には,約 1.5m 間隔で検査窓が設置されており,この限られた空間から身を乗り出
して,コンクリートの打込みおよび締固め作業を行う必要がある(写真-7.2.2).
地山
天端部
覆工厚さ
30~35cm
吹付け
コンクリート
覆工コンクリート
10~15m程度
側壁部
図-8.2.1 山岳トンネルの覆工コンクリートの概要図
写真-8.2.2 締固め作業の状況
写真-8.2.1 移動式型枠(セントル)の外観
セントルの長さ(1 回の施工スパン長)は,一般に 10.5~12.5m である.側壁部はスパンの中央の
検査窓からコンクリートを打ち込むことから,コンクリートの流動距離が 5m 程度以上と長くな
り,均質性の低下が懸念される.さらに,アーチ天端部は,セントルの片側端部に設置された吹
上げ口を介して,コンクリートを上方に吹き上げて打ち込むとともに,10.5m(ないし 12.5m)先の
もう片方の端部までコンクリートを流動させて充塡する必要がある.さらに,山岳トンネルは,
発破工法により掘削する場合が多く,掘削断面に凹凸が生じ覆工コンクリートの充塡を困難にし
ている.このように,トンネル覆工は,他の構造物に比べ作業条件が厳しいとともに,コンクリ
ートの充塡が難しい部材であり,充塡不良や背面空洞が生じやすい傾向にある.そのため,トン
172
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
ネル覆工の品質向上および施工性改善を目的として,従来の覆工コンクリート(スランプ 15cm)に
比べ流動性を高めたスランプフロー35~50cm の中流動コンクリートを適用する事例が増加して
いる.また,一部の発注機関では,より効率的に締固め作業を行う観点から,セントルの各位置
に型枠バイブレータを設置し,コンクリートの打込み後に型枠バイブレータを作動させて締固め
を行う施工方法を管理要領に示している 2)~5).
本節では,中流動コンクリートを初めてトンネル全線に適用する際に実施した模擬部材を用い
た施工実験結果,ならびに通年にわたり施工に供した中流動コンクリートの品質試験結果および
構築したトンネル覆工の品質検証結果について示す.
8.2.2
模擬部材を用いた施工実験
トンネル覆工は,側壁部と天端部とではコンクリートの施工方法が異なることから,側壁部お
よび天端部をそれぞれ模擬したモデル部材を制作して施工実験を行った.
(1)
覆工側壁部
実験に用いたコンクリート配合をフレッシュコンクリートの試験結果と合わせて表-7.2.1 に
示す.また,使用材料を表-8.2.2 に示す.
施工実験では,材料分離抵抗性を確保する手法の異なる 2 種類の中流動コンクリートを用いた.
すなわち,混和剤に高性能 AE 減水剤を用い,材料分離抵抗性を確保するための粉体増量材とし
てフライアッシュを用いた中流動コンクリート(以下,粉体系中流動コンクリート)と,増粘剤と高
性能 AE 減水剤を一液型とした混和剤を用いた中流動コンクリート(以下,増粘剤系中流動コンク
リートと呼称する)である.これらの中流動コンクリートの材料の構成割合の概念図を図-8.2.2
に示す.
中流動コンクリートの目標スランプフローは 45cm とした.なお,中流動コンクリートの粗骨
材のかさ容積はレディーミクストコンクリート工場の標準配合表に示されるスランプ 21cm のコ
ンクリートを参考に設定した.また,6 章に示す配合設計法に従い自由水量を算出したところ,
いずれのコンクリートもブリーディング率は約 3.5%であった.
表-8.2.1 コンクリート配合(側壁部の施工実験)
コンクリート
種類
W/P
(%)
細骨材
粗骨材
容積
s/a
かさ容積
VS
(%)
(m3 /m3 )
(L/m3 )
従来の覆工
コンクリート
58.3
48.0
329
粉体系中流動
コンクリート
47.3
50.0
327
単位量(kg/m3 )
P
W
S
C
0.577
175
300
52.7
361
G1
G2
混和剤
(P×%)
FA
0
881
70
876
330
302
0
173
スラ
空気
ンプ
量
フロー
(%)
(cm)
0.525
増粘剤系中流動
58.3
コンクリート
フレッシュコンクリート品質
967
614
ブリー
充塡
ディング
高さ
率
(cm)
(%)
0.25
(WR)
スラ
ンプ
17.5
4.0
-
5.4
0.80
(SP)
48.5
4.9
34.0
3.4
0.95
(VA)
46.0
4.0
33.0
4.2
556
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
表-8.2.2 使用材料(側壁部の施工実験)
種類
記号
セメント
C
フライアッシュ
FA
細骨材
S
物理的性質など
普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm3
3
JISⅡ種相当品、密度2.25g/cm
3
勇払産陸砂,表乾密度2.68g/cm ,吸水率1.60%,粗粒率2.64,実積率67.8%
G1
勇払産砂利2505(容積比35%),表乾密度2.66g/cm3,吸水率0.88%,実積率66.9%
G2
由仁産砕石2005(容積比65%),表乾密度2.65g/cm ,吸水率1.84%,実積率59.1%
WR
AE減水剤(リグニンスルホン酸)
SP
高性能AE減水剤(ポリカルボン酸)
VA
高性能AE減水剤(増粘剤一液タイプ)
減水成分:ポリカルボン酸系,増粘成分:グリコール系
AE
AE助剤(変性アルキルカルボン酸化合物)
粗骨材
混和剤
3
図-8.2.2 各種コンクリートの材料の構成割合の概念図
粉体系中流動コンクリート
増粘剤系中流動コンクリート
写真-8.2.3 各種中流動コンクリートのスランプフロー試験状況
いずれの中流動コンクリートも,充塡試験における充塡高さ(障害条件 R3:障害なし)は 30cm
以上であり,十分な充塡性を有することを確認した.さらにブリーディング率は約 4%以下で,
従来の覆工コンクリートに比べ低減できることを確認した.各種中流動コンクリートのスランプ
フロー試験状況を写真-8.2.3 に示す.粗骨材が中央に偏在することなく,均質な状態のコンクリ
ートであることがわかる.
174
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
実験に用いた型枠の概要を写真-8.2.4 に示す.側壁部では,コンクリートをスパン中央から打
ち込むことから型枠の長さは 5.4m とし,
実際の覆工コンクリートを模擬して厚さを 35cm とした.
また,型枠の側面 2 か所に型枠バイブレータを取り付けた.
中流動コンクリートは,レディーミクストコンクリート工場で 4m3 製造し,30 分間アジテート
車にて運搬した後,模擬型枠の片側端部からコンクリートを打ち込んだ(写真-8.2.5).
コンクリートの打込み後,その流動勾配を測定した後,打込み上面が平坦になる程度まで型枠
バイブレータを作用させて締め固めた(写真-8.2.6).その後,打込み個所と流動先端箇所からコ
ンクリート試料を採取し,圧縮強度用供試体を採取するとともに,試料中に含まれる粗骨材量を
測定した.なお,1 回のコンクリートの打込み量は,打上り高さが 40cm となるように設定した.
写真-8.2.4 側壁部の施工実験に用いた型枠の概要
写真-8.2.5 コンクリートの打込み状況
締固め前
締固め後
写真-8.2.6 打ち込んだコンクリートの締固め前後の状況
175
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
各種中流動コンクリートの流動勾配の測定結果を図-8.2.3 に示す.既往の文献 1)によれば,高
流動コンクリートの流動勾配は 1/20 程度であることが示されているが,今回の実験に用いた中流
動コンクリートの流動勾配は 1/15~1/25 で,高流動コンクリートと同程度の高い流動性を有する
ことを確認した.また,写真-8.2.7 に示すように,中流動コンクリートはモルタル分と粗骨材と
が一体で流動しており,ブリーディング水の先走りは認められなかった.
コンクリートの打込み
上面高さ(cm)
粉体系中流動コンクリート
80
60
2層目(流動勾配1/18)
40
1層目(流動勾配1/15)
20
打込み時のSF=40.0cm
0
上面高さ(cm)
増粘剤系中流動コンクリート
80
2層目(流動勾配1/24)
60
40
20
1層目(流動勾配1/24)
打込み時のSF=46.5cm
0
流動勾配 =
(打込み位置のコンクリート上面高さ - 流動先端の上面高さ)
コンクリートの流動距離(5.4m)
図-8.2.3 中流動コンクリートの打込み時の流動勾配
写真-8.2.7 中流動コンクリートの流動先端状況
176
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
表-8.2.3 流動前後における粗骨材量および圧縮強度の変化率
中流動コンクリートの種類
流動前後の
粗骨材量変化率
(%)
粉体系中流動コンクリート
93.7
96.9
増粘剤系中流動コンクリート
92.1
101.3
粉体系中流動コンクリート
流動前後の
圧縮強度比
(%)
増粘剤系中流動コンクリート
写真-8.2.8 試験体の脱型後の外観
打込み個所と流動先端箇所で採取したコンクリート試料中に含まれる粗骨材量の変化率ならび
に圧縮強度の変化率を表-8.2.3 に示す.流動後の試料に含まれる粗骨材量は流動前の試料に対し
92~94%の範囲であった.また,圧縮強度の流動前後における変化はほとんど生じていなかった.
これらの結果から,中流動コンクリートは,5m 程度流動させても,材料分離を生じることなく,
均質な状態で充塡できることを確認できた.
脱型後の試験体の外観を写真-8.2.8 に示す.いずれの中流動コンクリートを用いた場合とも,
未充塡箇所は認められなかった.
今回の施工実験の結果から,スランプフロー45cm 程度の中流動コンクリートは,これまでの覆
工施工と同様にスパン中央から打ち込むことにより,5~6m 先の型枠端部までコンクリート自体
の流動性により到達することが可能であり,流動停止後に補助的に締固めを行うことで充塡でき
ることを確認できた.さらに,打込み個所と流動先端部でのコンクリートの品質変化は小さく,
均質性に優れたトンネル覆工が構築できる可能性が高いことが確認できた.
177
第8章
(2)
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
覆工天端部
①コンクリート配合および使用材料
実験に用いたコンクリートの配合を表-8.2.4 に,使用材料を表-8.2.5 に示す.コンクリート
の種類として,スランプ 15cm の従来の覆工コンクリートとスランプフロー45cm の増粘剤系中流
動コンクリートを用いた.実際のトンネル覆工に用いられるコンクリートの設計基準強度を勘案
し,従来の覆工コンクリートにはレディーミクストコンクリート工場の所有する呼び強度 21 の配
合を用いた.中流動コンクリートの配合は,従来の覆工コンクリートと同じ単位水量およびセメ
ント量とし,高性能 AE 減水剤(増粘剤一液タイプ)を用いることで,高い流動性に見合った材料分
離抵抗性を確保する配合とした.なお,粗骨材のかさ容積は,使用したレディーミクストコンク
リート工場の標準配合表に示されるスランプ 21cm のかさ容積を参考に設定した.
表-8.2.4 コンクリート配合とフレッシュコンクリート品質(天端部の施工実験)
コンクリート
種類
従来の覆工
コンクリート
細骨材
粗骨材
容積
s/a
かさ容積
VS
(%)
(m3 /m3 )
(L/m3 )
W/C
(%)
58.3
48.0
332
W
57.4
54.1
370
C
S1
S2
G
混和剤
(P×%)
スラ
空気
ンプ
量
フロー
(%)
(cm)
0.588
174
増粘剤系中流動
コンクリート
フレッシュコンクリート品質
単位量(kg/m3 )
650
213
939
1.2
(WR)
スラ
ンプ
16.0
5.2
-
7.2
725
238
834
1.3
(VA)
41.5
4.3
30.5
2.9
303
0.522
ブリー
充塡
ディング
高さ
率
(cm)
(%)
表-8.2.5 使用材料(天端部の施工実験)
物理的性質など
種類
記号
セメント
C
普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm
S1
相模原産陸砂(粗目),表乾密度2.61g/cm ,吸水率2.86%,粗粒率3.07,混合比率75%
S2
市原市万田野産山砂(細目),表乾密度2.57g/cm ,吸水率2.44%,粗粒率1.66,混合比率25%
G
相模原産砕石2005,表乾密度2.65g/cm ,吸水率0.95%,実積率60.3%
3
3
細骨材
粗骨材
混和剤
3
3
WR
AE減水剤(リグニンスルホン酸)
VA
高性能AE減水剤(増粘剤一液タイプ)
減水成分:ポリカルボン酸系,増粘成分:グリコール系
AE
AE助剤(変性アルキルカルボン酸化合物)
写真-8.2.9 コンクリートのスランプ(フロー)試験状況(左:従来覆工,右:中流動)
178
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
各種コンクリートのスランプ(フロー)試験状況を写真-8.2.9 に示す.選定した中流動コンクリ
ートは中央に粗骨材が偏在したり,周囲にブリーディング水が生じるような状況は認められなか
った.また,充塡試験(障害条件 R3:障害なし)における充塡高さは 30cm 以上であり十分な充塡
性を有すること,ブリーディング率は 3%以下と小さく,従来の覆工コンクリートに比べ半減で
きることを確認した.
②実験概要
実験に用いた型枠および施工実験の概要を写真-8.2.10 に示す.標準的なトンネル覆工の天端
部形状を模擬し,覆工厚さを 30cm とした.延長は 6m で,打設計画量は約 3.7m3 である.各種コ
ンクリートをレディーミクストコンクリート工場で 4.5m3 製造し,アジテート車にて 30 分かけて
実験現場まで運搬した.
締固めには,出力 400W の型枠バイブレータを用い,型枠下面の中心ラインに 3 台設置した.
コンクリートの打込みは,実際の覆工施工を模擬し,コンクリートポンプ車(4t 車)に輸送管(輸送
管の径 5A,水平換算距離 33m)を配管して圧送し,片側端部下面の吹上げ口よりコンクリートを
上方に吹き上げて打ち込んだ.
コンクリートを 1m3 打ち込むごとに型枠バイブレータ 3 台を 15 秒間作用させた.コンクリート
が流動先端側の上方に設置した開口部(25cm 角)から吹き上げてきた時に,そのコンクリート試料
を約 100L 採取して打込みを終了した.
採取したコンクリート試料は,均等に練り混ぜた後,圧縮強度試験用供試体を採取するととも
に,5mm ふるいで洗い試験を行いコンクリート中に含まれる粗骨材量を測定した.試験方法の概
要を表-7.2.6 に示す.なお,比較用データを採取するため,コンクリートの荷卸し時でもコンク
リート試料を約 100L 採取し,圧縮強度試験用供試体の採取および洗い試験による粗骨材量の測定
を行った.
コンクリート試験体は,型枠外周をブルーシートで覆い材齢 5 日まで養生した後に脱型した.
脱型後に試験体外観を調査し充塡状況を検証するとともに,テストハンマー(NR 型)を用いて試験
体各部位の反発度を調べた.
表-8.2.6 流動前後の品質変化検討の試験方法の概要
試験方法の概要
①エアメータ容器(約7L)にコンクリート試料を採取する。
②コンクリート試料を5mmふるいでふるう。
粗骨材量 ③ふるいに残留した試料を洗い、粗骨材を取り出す。
の変化率 ④粗骨材表面の水分をふき取り、表乾状態として質量を測定する。
流動先端で採取した試料中の粗骨材量(g)
粗骨材量の
×100
=
変化率(%)
打込み前に採取した試料中の粗骨材量(g)
圧縮
強度比
①流動先端および打込み前のコンクリート試料を採取し、円柱供試
体(φ100×200mm)を各3本作成する。
②材齢28日まで標準養生(20℃・水中)した後、JIS A 1108に準じて圧
縮強度試験を実施する。
流動先端で採取した試料の圧縮強度(N/mm 2 )
圧縮強度比
=
×100
(%)
打込み前に採取した試料の圧縮強度(N/mm 2 )
179
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
覆工厚さ 0.3m
幅 2.5m
延長 6m
輸送管 5A
(a)天端部模擬型枠の外観
吹上げ口
輸送管延長 33m
輸送管 5A
(b)型枠振動機,輸送管設置状況
流動先端部の上方
の開口部
(C)流動先端の開口部と試料採取状況
写真-8.2.10 天端部模擬型枠による施工実験の概要
③実験結果および考察
中流動コンクリートの圧送負荷は輸送管の根元部で約 1MPa であり,従来の覆工コンクリート
を圧送した場合と同程度であった.また,圧送時に輸送管の閉塞や大きな脈動は生じなかった.
中流動コンクリートの模擬型枠内での流動状況を写真-8.2.11 に示す.流動先端部までペース
ト分と骨材とが分離せずに流動していることを確認した.
流動前後の粗骨材量の変化量および圧縮強度試験結果を表-8.2.7 に示す.増粘剤系中流動コン
クリートの流動先端部から採取したコンクリート試料中の粗骨材量は,流動前の試料に対し 93%
180
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
で,基本配合の 89%に比べ粗骨材の割合が多く,中流動コンクリートが材料分離を生じにくいこ
とを示す結果が得られた.また,圧縮強度はいずれのコンクリートの場合とも流動前後で顕著な
違いは認められなかった.
(a)流動先端側から打込み側を向いて撮影(左:1m3 打込み時点,右:3m3 打込み時点)
(b)流動先端側で撮影
写真-8.2.11 中流動コンクリートの流動状況
表-8.2.7 流動前後のコンクリートの品質試験結果
コンクリートの種類
流動前後の
粗骨材量変化率
(%)
流動前後の
圧縮強度比
(%)
従来の覆工コンクリート
89.2
100.5
中流動コンクリート
93.2
100.6
脱型後のコンクリート試験体の外観を写真-8.2.12 および写真-8.2.13 に示す.実施工の覆工
コンクリートの仕上り面に相当する下面(表面側)は,いずれのコンクリートの場合もあばた等は生
じておらず,良好な仕上りであった.流動先端側の側面は,従来の覆工コンクリートの場合には
部分的に充塡が不足している部分が確認された.一方,中流動コンクリートでは,不具合は認め
られなかった.
上面(地山側)では,従来の覆工コンクリートの場合,吹上げ口および流動先端箇所で広範囲にわ
たって比較的大きな空隙が生じていた.従来の覆工コンクリートは,ブリーディング率が約 7%
と大きいことや,流動に伴いペースト分と骨材との材料分離が生じることにより,上面にブリー
181
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
ディング水が堆積したり,部分的に充塡の不足した個所が認められたと推測される.一方,中流
動コンクリートの場合,空隙はほとんど認められず,覆工背面にも空隙(未充塡部分)が生じにくい
ことを確認した.
(a)従来の覆工コンクリート
(b)中流動コンクリート
写真-8.2.12 脱型後のコンクリート試験体の外観①(上:下面(覆工の仕上り面である表面側に
相当.写真奥が打込み側,手前が流動先端側),下:流動先端側の側面)
写真-8.2.13 脱型後のコンクリート試験体の外観②上面(覆工の背面の地山側に相当)
182
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
試験体各部位の反発度測定結果を表-8.2.8 に示す.測定は表面側(下面)と地山側(上面)の打込
み箇所と流動先端部とし,それぞれ 6 点測定して平均値を求めた.なお,測定は空隙の発生部分
を外して行った.
従来の覆工コンクリートの場合,コンクリートの吹上げ口近傍である表面側の打込み箇所を除
き,測定値のばらつきがやや大きく,表面側・地山側ともに流動先端部での反発度は打込み箇所
より小さい結果が得られた.一方,中流動コンクリートを用いた場合は,従来の覆工コンクリー
トに比べ,各測定箇所での値のばらつきが小さく,打込み箇所と流動先端箇所での反発度の差も
ほとんど生じていなかった.
今回の実験結果から,中流動コンクリートを用いることで,均質性に優れたトンネル覆工が構
築できる可能性が高いことが確認できた.
表-8.2.8 試験体各部位の反発度測定結果
従来の覆工
コンクリート
コンクリートの
種類
表面側(下面)
測定位置
流動
先端
地山側(上面)
打込み
箇所
流動
先端
表面側(下面)
打込み
箇所
流動
先端
地山側(上面)
打込み
箇所
流動
先端
平均値
35.5
33.4
35.9
33.0
35.9
35.5
34.9
35.3
最大値
36.1
35.7
37.5
36.0
36.6
36.6
35.6
35.9
最小値
34.0
31.9
33.2
31.0
34.9
34.5
33.9
34.2
標準偏差
1.0
1.8
2.0
1.9
0.7
0.9
0.6
0.6
打込み箇所と
流動先端の差
(3)
打込み
箇所
中流動コンクリート
2.1
2.9
0.4
-0.4
まとめ
中流動コンクリートの覆工コンクリートへの適用性を検討するため,トンネル覆工の側壁部お
よび天端部を模擬した実物大型枠を用いた施工実験を行った.得られた知見を以下に示す.
(1) 高性能 AE 減水剤を用い高い流動性を確保しつつ,フライアッシュ等の混和材料を適切に用い
ることで,ブリーディングの小さいコンクリートが製造できる.
(2) 一方で,増粘剤成分を含有した高性能 AE 減水剤を用いた場合,従来の覆工コンクリートと同
程度の単位セメント量のまま,ブリーディングの小さいコンクリートが製造できる.
(3) 流動性のレベルがスランプフロー45cm の中流動コンクリートの粗骨材のかさ容積は,6 章で
検討したように,レディーミクストコンクリート工場の標準配合表に示されるスランプ 21cm
のコンクリートの値を参考に設定できる.
(4) スランプフローが約 45cm で,ブリーディングの少ない中流動コンクリートは,コンクリート
自体の流動性により 5m 程度先まで流動し,補助的に締固めを行うことで充塡できる.また,
流動前後の品質の変化は小さく,均質性の高いトンネル覆工の構築に寄与できる.
(5) 覆工天端部においても,補助的な締固めを行うことで,従来の覆工コンクリートでは充塡の
難しい覆工背面においても密実に充塡でき,トンネル覆工の品質向上に寄与できる.
183
第8章
8.2.3
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
道路トンネルの覆工への適用
ここでは,中流動コンクリートを実際のトンネル覆工に適用した際の施工方法の概要,品質試
験結果ならびに構築したトンネル覆工の品質検証結果を示す.中流動コンクリートの種類として,
混和剤に高性能 AE 減水剤を用い,高い流動性に見合った材料分離抵抗性を確保するための粉体
増量材としてフライアッシュを用いた粉体系中流動コンクリート,ならびに高性能 AE 減水剤(増
粘剤一液タイプ)を用いることで,従来の覆工コンクリートに対し,セメント量の増加を最小限に
抑制した増粘剤系中流動コンクリートの施工事例について示す.
(1)粉体系中流動コンクリート
①工事概要および使用した中流動コンクリートの配合
粉体系の中流動コンクリートを適用した工事は,北海道地方の高速道路トンネルである.トン
ネル延長は約 480m,掘削断面積は約 80m2 である.覆工コンクリートの厚さは 30~35cm である.
1 スパンの施工延長を 12.5m とし,36 スパンに分けて施工した.また,比較のため,従来の覆工
コンクリートを用いた施工も 3 スパン実施した.施工は 2009 年 6 月~11 月にかけて実施した.
中流動コンクリートの総数量は約 4,000m3 であった.施工に用いた中流動コンクリートの配合を
表-8.2.9 に示す.材料は,8.2.2 節の側壁部の施工実験で用いた材料と同じものを用いた.
表-8.2.9 コンクリートの配合
コンクリート
種類
W/P
(%)
細骨材
粗骨材
容積
s/a
かさ容積
VS
(%)
(m3 /m3 )
(L/m3 )
単位量(kg/m3 )
P
W
C
FA
S
G1
G2
混和剤
(P×%)
従来の覆工
コンクリート
49.7
48.3
332
0.576
169
340
0
890
329
613
0.65
(SP)
中流動
コンクリート
47.3
51.7
346
0.525
175
270
100
927
302
556
1.15
(SP)
*曲げ靱性を確保するため,ポリプロピレン繊維を2.73kg/m3 (0.35Vol%)混入
従来の覆工コンクリート
中流動コンクリート
写真-8.2.14 各種コンクリートのスランプ(フロー)試験状況
184
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
②コンクリートの施工方法
施工に用いたセントルの概要を図-8.2.4 に示す. 8.2.1 節に示すように,トンネル覆工の作業
環境の改善ならびに品質向上の観点から,セントル各部位に型枠バイブレータ(出力 550W)を断面
方向に 10 台,延長方向に 4 列の合計 40 台設置し,これを用いて締固めを行う施工方法とした.
また,施工時にセントル側面に作用するコンクリート圧力を測定するために,側壁部 4 点に圧力
計を設置した.また,天端部におけるコンクリートの充塡状況を確認するため,天端部 3 か所(吹
上げ口側,スパン中央およ流動先端側)にも圧力計を設置した.
吹上げ口側(天端部における打込口)
吹上げ口(天端部における打込み口)
既設コンクリート側(吹上げ口側)
既設コンクリート側(吹上げ口側)
1750
1250
3000
3500
3000
3000
12500
側壁部の
側壁部の打込み口
打込口
天端部の圧力計
3500
3000
1250
1750
妻側
妻側(流動先端側)
19
2100
2100
16
50
50
14
ヒンジ
天端部
ヒンジ
130
245
0
50
0
天端部の圧力計
側壁部
2150
2150
型枠バイブレータ配置位置(変更後)
打込み口 側壁部6か所(左右3か所)、天端部(吹上げ口)1か所
天端部圧力計(3か所)
側壁部圧力計(4か所)
図-8.2.4 コンクリートの打込口および型枠バイブレータの配置図
185
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
中流動コンクリートによるトンネル覆工の施工は以下の手順で行った.
側壁部では,コンクリートをスパン中央の左右の打込み口(検査窓)から 2m3 ずつ打ち込んだ.コ
ンクリートを打ち込んだ後,該当する列の型枠バイブレータ 4 台を同時に 30 秒間(15 秒間×2 回)
振動させて締め固めた.目視で締固めが不十分と判断された場合は振動時間を延長した.打込み
量は 1 層当りの打上り高さが 40~50cm となるように設定した.コンクリートの打上り高さが打
込み口よりやや低い高さとなったら,打込み口を上部に移動し,使用する型枠バイブレータも上
部に変更した.なお,コンクリートの落下高さが 1.5m 以下となるように打設ホースを適宜延長さ
せて打ち込んだ.
天端部の打込みは,従来の覆工施工と同様に,既設コンクリート側の吹上げ口から行った.コ
ンクリートを 4m3 打ち込んだ後,天端部の型枠バイブレータのうち既設コンクリート側 4 台,妻
側 4 台の順にそれぞれ 30 秒間(15 秒間×2 回)振動させた.天端部 3 箇所に設置した圧力計の表示
値が覆工厚さ相当以上の圧力となり,天端部が確実に充塡できたことを確認した後,コンクリー
トの施工を終了した.
なお,型枠バイブレータによる締固めは,従来の棒状バイブレータによる締固めに比べ,下層
コンクリートとの一体化を図りにくいことが想定された.そこで,打設および配車時間の管理を
徹底し,コンクリートを連続的に打ち込むよう配慮した.配管の切替えなどにより打重ね時間間
隔が 30 分以上となる場合には,棒状バイブレータを用いて一体化を図る対策を講じた.
従来の覆工施工では,狭隘な空間内で棒状バイブレータを振り回してコンクリートを締め固め
る必要があった(写真-7.2.2 参照).作業員に苦渋作業を強いるとともに,十分な目視確認ができ
ないことから,締固め忘れや締固め不足による充塡不良や背面空洞などの施工欠陥が生じる原因
となっていたと考えられる.一方,本工事では中流動コンクリートと型枠バイブレータを用いた
ため,作業員は合図者の指示のもと型枠バイブレータのスイッチを ON・OFF するだけでコンク
リートの締固めを行うことができた.
中流動コンクリートの流動状況を写真-8.2.15 に示す.コンクリート自体の高い流動性により,
型枠の隅々までコンクリートが流動することを確認した.また,流動端部においてブリーディン
グ水が先走るような状況は確認されなかった.
写真-8.2.15 中流動コンクリートの流動状況
186
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
③側壁および天端圧力測定結果
側圧測定結果の一例を図-8.2.5 に示す.側圧は,コンクリートの種類によらず,打設高さに比
例して増加し,その傾きはコンクリートが液圧として作用するとして求めた破線とほぼ等しい.
中流動コンクリート施工時の側圧の最大値は 0.045~0.055N/mm2 で,従来の覆工コンクリートを
用いた場合に比べ 0.015~0.02N/mm2 程度大きい結果が得られた.中流動コンクリートは流動性が
高く,従来の覆工コンクリートに比べ液圧として作用する時間が長くなり,結果として側圧の最
大値が増加したと考えられる.中流動コンクリートを適用する際は,従来の覆工コンクリートを
用いた場合に比べ側圧が増加する場合があることに配慮が必要である.しかしながら,一般的な
セントルの設計耐力は 0.05N/mm2(安全率を除く)であることから,中流動コンクリートにて施工を
行う場合においても,打上り速度を適切に管理することで,従来の覆工コンクリートの施工に用
0.08
[単位:m]
0.06
No.1
0.02
0.00
3.0
No.3
1.5
No.3
No.4
0.04
4.2
No.2
0.5
セントルに作用する側圧(N/mm2)
いるセントルと同じスペックの設備で施工を行うことは十分に可能であると考えられる.
No.4
0
No.2
1
2
3
4
5
打上り高さ(m)
No.1
6
7
セントルに作用する側圧(N/mm2)
(a)従来の覆工コンクリート
0.08
測点No.1
測点No.2
測点No.3
測点No.4
0.06
No.2
0.04
0.02
0.00
No.3
No.4
0
1
2
3
4
5
打上り高さ(m)
No.1
6
(b)中流動コンクリート
図-8.2.5 コンクリート施工時の測圧測定結果
187
7
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
天端圧力測定結果の一例を図-8.2.6 に示す.従来の覆工コンクリートを用いた場合,妻側(流
動先端側)にコンクリートが充塡されるのが既設コンクリート側(吹上げ口側)に比べ遅くなる,妻
側の充塡のために既設コンクリート側(吹上げ口側)・スパン中央に過大な圧力が生じるなど,コン
クリートが充塡しにくい状況が示唆された.
一方,中流動コンクリートの場合は,3 点の圧力が増加する時間差が短く,圧力差も小さいな
ど,均等にコンクリートが充塡していることが確認できた.また,セントル天端部への作用圧力
は,覆工厚さに相当する圧力(覆工厚さを 30cm,コンクリートの単位容積質量を 2,300kg/m3 とし
た場合,0.008N/mm2 になる)に比べて 2~3 倍程度であり,コンクリートが天端部に確実に充塡で
セントル天端部への作用圧力(N/mm2)
セントル天端部への作用圧力(N/mm2)
きていることを定量的に把握できた.
0.12
既設コンクリート
0.10
0.08
0.06
妻型枠
コンクリート
吹上げ口
No.1 既設側天端圧力計
No.2 スパン中央天端圧力計
No.3 妻側天端圧力計
No.2
0.04
0.02
No.1
覆工コンクリート
No.3
覆工厚さに
相当する圧力
0.00
13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30
測定時刻
(a)従来の覆工コンクリート
0.12
0.10
0.08
No.3
0.06
No.2
No.1
0.04
0.02
覆工厚さに相当する圧力
0.00
13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30
測定時刻
(b)中流動コンクリート
図-8.2.6 天端部の圧力測定結果
188
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
④中流動コンクリートの品質試験結果
中流動コンクリートの荷卸し時の品質試験結果を図-8.2.7 に示す.この工事では,33 スパン
にわたり中流動コンクリートを用いた覆工施工を実施したが,全ての品質管理試験(スランプフロ
ー,空気量および圧縮強度)において管理基準値の範囲(スランプフロー±7.5cm,空気量±1.5%,
圧縮強度 18N/mm2 以上)を満足する結果が得られた.
なお,本工事で使用した中流動コンクリートは,現場近郊の標準的なレディーミクストコンク
リート工場で製造しており,従来の覆工コンクリートの製造時と比べて品質安定化に関する特段
の対策は講じていない.今回の施工結果より,標準的なレディーミクストコンクリート工場でも
頻度
品質の安定した中流動コンクリートが製造可能であることを検証できた.
80
60
40
管理値の範囲±7.5cm
個数
231
標準偏差 3.5cm
頻度
20
0
10.0 7.5 5.0 2.5 0 2.5 5.0 7.5 10.0
スランプフローの管理値中心からの偏差(cm)
80
管理値の範囲±1.5%
60
40
個数
108
標準偏差 0.4%
20
0
2.0 1.5 1.0 0.5 0 0.5 1.0 1.5 2.0
空気量の管理値中心からの偏差(%)
図-8.2.7 中流動コンクリートの荷卸し時の品質試験結果
189
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
⑤中流動コンクリートにより構築したトンネル覆工の品質検証
覆工コンクリートの天端付近の仕上り状況を写真-8.2.16 に,覆工全体の外観を写真-8.2.17
に示す.従来の覆工コンクリートは,天端付近にコンクリートが流動した跡が縞模様となって生
じているが,中流動コンクリートの場合,縞模様はほとんど認められず,美観性が改善できるこ
とを確認できた.中流動コンクリートを用いることで,コンクリートを天端部全体に流動させ,
均等に充塡することができるためと考えられる.
中流動コンクリート
従来の覆工コンクリート
写真-8.2.16 覆工コンクリートの天端部の仕上り状況
写真-8.2.17 中流動コンクリートで施工したトンネル覆工の外観
構築したトンネル覆工の品質を確認するため,テストハンマー法によりコンクリート表面の反
発度(圧縮強度)を,トレント法 6)により透気係数(緻密性)を測定した.なお,透気係数とは物質の
通りやすさを表す指標で,値が小さいほど緻密なコンクリートであることを示している.
測定は覆工施工の 6 ヵ月後に,中流動コンクリート施工区間および従来の覆工コンクリート施
工区間で 3 スパンずつ行った.測定箇所は側壁部と天端部それぞれのコンクリートの打込み箇所
と流動先端箇所とし,1測定箇所あたり 9 点測定して平均値を求めた.
190
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
表-8.2.10 テストハンマーによる反発度の測定結果
反発度
中流動コンクリート
側壁部
測定位置
打込み
箇所
従来の覆工コンクリート
天端
流動
先端
打込み
箇所
側壁部
流動
先端
打込み
箇所
天端
流動
先端
打込み
箇所
流動
先端
平均値
44.3
43.8
45.3
45.3
42.5
41.2
44.5
42.4
最大値
46.5
46.1
48.9
47.3
45.7
44.4
49.7
47.3
標準偏差
1.0
1.4
1.6
1.2
1.6
1.4
2.4
2.6
打込み箇所と
流動先端の差
0.6
0.1
1.3
2.1
表-8.2.11 トレント法による透気係数の測定結果
透気係数(×10-16 m2 )
中流動コンクリート
側壁部
測定位置
打込み
箇所
従来の覆工コンクリート
天端
流動
先端
打込み
箇所
側壁部
流動
先端
打込み
箇所
天端
流動
先端
打込み
箇所
流動
先端
平均値
1.0
1.0
1.0
1.0
3.0
1.5
4.1
2.2
最大値
1.7
1.7
2.0
1.7
20.2
6.0
38.0
12.5
標準偏差
0.5
0.4
0.5
0.4
4.8
1.6
7.9
3.2
写真-8.2.18 トレント法による透気係数の測定状況
テストハンマー法による反発度測定結果を表-8.2.10 に示す.中流動コンクリートの反発度の
標準偏差は,従来の覆工コンクリートに比べ小さく,バラツキの少ない均質なトンネル覆工が構
築できている結果が示された.また,打込み箇所と流動先端箇所での反発度の差も,中流動コン
クリートの方が従来覆工よりも小さく,中流動コンクリートが流動に伴う材料分離などの品質変
化を生じにくいことを示す結果が得られた.
トレント法による透気係数測定結果を表-8.2.11 に,測定状況を写真-8.2.18 に示す.中流動
コンクリートにより施工した区間の透気係数は,従来の覆工コンクリートに比べ 1/2~1/4 程度と
小さく,覆工全体に渡り緻密なコンクリートを構築できていることが確認できた.
191
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
⑥まとめ
スランプフロー45cm の粉体系中流動コンクリートを用いて全長 400m の高速道路トンネルの覆
工コンクリートを構築した.得られた知見を以下に示す.
(1) 一般的なレディーミクストコンクリート工場において品質の安定した中流動コンクリートを
製造することができる.
(2) スランプフロー45cm 程度の中流動コンクリートは,側壁部においてスパン中央から,天端部
において片側端部から打ち込むことで,コンクリート自体の流動性により他方の型枠端部ま
で流動する.そして,流動停止後に,セントル各部位に取り付けた型枠バイブレータにより
締固めを行うことで充塡できる.
(3) 材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮した中流動コンクリートを用いることで,美観性が向
上できるともに,覆工各部位の硬化コンクリートの品質の差異が小さく,均質性に優れたト
ンネル覆工が構築できる.
(2)
増粘剤系中流動コンクリート
①工事概要および使用した中流動コンクリートの配合
増粘剤系の中流動コンクリートを適用した工事は,九州地方の自動車専用道路のトンネルであ
る.トンネル延長は約 1,850m,掘削断面積は約 75m2 である.覆工コンクリートの厚さは 30~35cm
である.1 スパンの施工延長を 10.5m とし,約 170 スパンに分けて施工した.施工は 2011 年 5 月
~2012 年 10 月にかけて実施した.中流動コンクリートの総数量は約 16,000m3 であった.
施工に用いた中流動コンクリートの配合をフレッシュコンクリート品質と合わせて表-8.2.12
に示す.また,使用材料を表-8.2.13 に示す.トンネルの支保パターンの区分により, 2 種類の
中流動コンクリートを用いた.いずれの中流動コンクリートとも,供用後のコンクリートの剥落
防止や曲げ靱性向上対策としてポリプロピレン製の補強繊維を混入している.中流動コンクリー
トの粗骨材のかさ容積は,出荷するレディーミクストコンクリート工場の標準配合表のスランプ
21cm のコンクリート配合の値を参考に設定した.
なお,表中に示す従来の覆工コンクリートの配合は,出荷予定のレディーミクストコンクリー
ト工場で一般的な覆工コンクリートを出荷する場合に該当する配合である.
表-8.2.12 中流動コンクリートの配合およびフレッシュコンクリート品質試験結果
コンクリート
の種類
W/B
(%)
s/a
(%)
粗骨材
粗骨材
かさ
容積
容積
3
(L/m )
(m3 /m3 )
フレッシュコンクリート
試験結果
単位量(kg/m3 )
B
W
C
EX
S1
S2
G
混和剤
(B×%)
スラ
ブリー
空気 充塡
ンプ
ディン
量 高さ
フロー
グ率
(%) (mm)
(cm)
(%)
53.7
48.1
324
0.59
175
326
0
334
502
919
0.25
(WR)
スラン
プ15.0
4.5
-
4.8
増粘剤系中流動
51.5
(支保パターンD)
53.6
359
0.53
175
320
20
373
554
819
1.05
(VA)
46.0
5.1
33.0
1.7
増粘剤系中流動
55.6
(支保パターンC)
54.1
366
0.53
175
295
20
381
564
819
1.05
(VA)
46.0
4.8
32.1
2.2
従来の覆工
192
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
表-8.2.13 使用材料
物理的性質など
種類
記号
セメント
C
高炉セメントB種,密度3.04g/cm3
膨張材
EX
低添加タイプ(20kg/m ),密度3.16g/cm
S1
宮浦産砕砂,表乾密度2.60g/cm ,吸水率0.77%,混合比率40%
S2
壱沖産海砂,表乾密度2.57g/cm3,吸水率1.56%,混合比率60%
G
宮浦産砕石2005,表乾密度2.64g/cm ,吸水率0.88%,実績率59.0%
3
3
3
細骨材
粗骨材
3
WR
AE減水剤(リグニンスルホン酸)
VA
高性能AE減水剤(増粘剤一液タイプ)
減水成分:ポリカルボン酸系,増粘成分:グリコール系
PP1
棒状繊維(ポリプロピレン製,φ1×L48mm),混入量2.73kg/m3 (0.3Vol%),支保パターンDで使用
PP2
綿状繊維(ポリプロピレン製,φ0.043×L12mm),混入量0.91kg/m3 (0.1Vol%),支保パターンCで使用
混和剤
非鋼繊維
従来の覆工コンクリート
中流動コンクリート
中流動コンクリート
(支保パターン D)
(支保パターン C)
写真-8.2.19 中流動コンクリートのスランプフロー試験状況
いずれの中流動コンクリートとも,障害条件のない場合(ランク 3)における充塡高さは 30cm 以
上で十分な充塡性を有するとともに,ブリーディング率は従来の覆工コンクリートに比べ半減で
きており,材料分離抵抗性に優れた配合であることを確認した.中流動コンクリートのスランプ
フロー試験状況を写真-8.2.19 に示す.
②実機試験
施工に先立ち,出荷予定のレディーミクストコンクリート工場の実機ミキサにて中流動コンク
リートを製造し,運搬や繊維投入に伴うフレッシュコンクリートの品質変化を確認した.試験の
結果,現場までの運搬(約 30 分) に伴うスランプフローおよび空気量の変化はほとんど生じな
いこと,
および非鋼繊維投入に伴うスランプフローの低下量は 10~15cm であることを確認した.
③中流動コンクリートの製造管理と品質試験結果
増粘剤系中流動コンクリートは,従来の覆工コンクリートと同程度の単位粉体量で流動性を高
めるため,細骨材中に含まれる水分量の変動に伴い単位水量が変動すると,フレッシュコンクリ
193
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
ートの品質が変化しやすいと想定された.
そこで,コンクリート製造時に,①製造 5 台ごとに細骨材の表面水率を測定する,②コンクリ
ート練混ぜ時のミキサの電流負荷値およびミキサに設置したモニタリングカメラにより,全バッ
チのコンクリートの練上り状況を目視確認する,③午前午後1回ずつ,出荷時,荷卸し時および
繊維混入後のコンクリートの品質試験を実施する,などの対策を講じることでコンクリートの品
質変化が生じていないことを継続的に確認することにした.なお,事前に実施した実機試験の結
果から,出荷時のスランプフローの目標は 55±5cm に設定し,上述の表面水率管理を確実に行っ
た上で,施工時期によるコンクリート温度の変化に応じて,目標スランプフローが得られるよう
に高性能 AE 減水剤(増粘剤一液タイプ)の添加量を調整することとした.
実施工における出荷時,荷卸し時および繊維投入後のスランプフロー測定結果を図-8.2.8 に示
す.当初の計画通り,運搬に伴うスランプフローの変化量は概ね±3cm 以内と小さく,繊維投入
に伴うスランプフローの低下量は 10~15cm 程度の範囲であることを確認した.なお,施工時期
65
測定数:320個
60
55
50
+5cm
45
-5cm
40
40
45
50
55
60
65
出荷時のスランプフロー(cm)
繊維投入後のスランプフロー(cm)
荷卸し時のスランプフロー(cm)
による顕著な違いは認めらなかった.
65
60
測定数:320個
55
50
45
管理範囲
35~50cm
40
35
-5cm -10cm -15cm
30
30 35 40 45 50 55 60 65
荷卸し時のスランプフロー(cm)
図-8.2.8 運搬および繊維投入に伴うスランプフローの変化
コンクリート製造時の細骨材の表面水率は,図-8.2.9 に示すように,砕砂が 1~7%程度,海
砂が 4~11%程度の範囲で変化した.また,出荷時のコンクリート温度は外気温の変化に応じて 6
~32℃の範囲で変化した.
目標とする出荷時のスランプフローを得るために必要な高性能 AE 減水剤(増粘剤一液タイプ)
の添加量と外気温の関係を図-8.2.10 に示す.所要の混和剤添加量は,コンクリート温度が低い
冬期ほど少なく,温度の高い夏期ほど多くなる傾向を示している.本工事で使用した添加量範囲
(0.8~1.5%)は,混和剤メーカの推奨する添加量の範囲内(0.5~2.0%程度)であった.配合選定時に,
適切な単位水量に設定することと,混和剤の添加量を調整することで,冬期および夏期における
配合変更を行うことなく,所要の流動性を有する中流動コンクリートが製造できることが確認で
きた.
194
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
細骨材の表面水率(%)
12
8
6
4
砕砂S1
2
0
出荷時のコンクリート温度(℃)
海砂S2
10
0
20
40
60
80
100
測定スパン(BL)
120
140
160
0
20
40
60
80
100
測定スパン(BL)
120
140
160
35
30
25
20
15
10
5
0
高性能AE減水剤(増粘剤一液タイプ)
の添加量(単位粉体量×%)
図-8.2.9 細骨材の表面水率および出荷時のコンクリート温度の推移
2.0
1.5
1.0
0.5
支保パターンD
支保パターンC
0.0
0 5 10 15 20 25 30 35
出荷時のコンクリート温度(℃)
図-8.2.10 出荷時コンクリート温度と高性能 AE 減水剤(増粘剤一液タイプ)の添加量の関係
195
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
200
頻度
150
○配合の単位水量:175kg/m 3
○荷卸し時の単位水量測定値(測定数320個)
平均値:176.5kg/m3,標準偏差:6.0kg/m3
単位水量の管理範囲±15kg/m 3
100
50
0
155 160 165 170 175 180 185 190 195
単位水量(kg/m3)
図-8.2.11 荷卸し時の単位水量測定結果
50
40
50
支保パターンD(測定数52個)
支保パターンC(測定数86個)
平均値:40.0N/mm2,標準偏差:1.7N/mm
平均値:43.2N/mm
,標準偏差:3.0N/mm2
材齢28日,20℃水中養生
40
20
30
頻度
頻度
30
支保パターンC(測定数86個)
平均値:40.0N/mm2,標準偏差:3.0N/mm2
材齢28日,20℃水中養生
10
20
10
0
32.5 35.0 37.5 40.0 42.5 45.0 47.5 50.0
圧縮強度(N/mm2)
0
32.5 35.0 37.5 40.0 42.5 45.0 47.5 50.0
圧縮強度(N/mm2)
図-8.2.12 圧縮強度試験結果
荷卸し時点における単位水量測定結果を図-8.2.11 に,圧縮強度試験結果を図-8.2.12 に示す.
単位水量測定値の平均値は配合の単位量とほぼ等しく,標準偏差も小さな値が得られている.ま
た,圧縮強度の標準偏差も支保パターン D では 1.7N/mm2,支保パターン C では 3.0N/mm2 と小さ
いことも確認した.
これらの結果を踏まえると,一般的なレディーミクストコンクリート工場においても,適切な
製造管理を実施することで,製造時期によらず品質の安定した増粘剤系中流動コンクリートが製
造できると考えられる.
196
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
④施工管理方法の概要
側壁部でのコンクリートの打込みは,スパン中央の左右の打込み口より行った.1 回の打込み
量は,打上り高さが 50cm 程度となるように,アジテータ車 1 台のコンクリート(4m3)を左右に半
分ずつ振り分けた.コンクリート自体の流動が終わった後,打上り面が水平になる程度に補助的
に棒状バイブレータで締め固めた.
中流動コンクリートは流動性が高く,セントルに作用する側圧の増加が予測された.そこで,
打上り速度が 1.5m/h 以下となるよう管理した.更に,セントル側壁部 2 箇所に圧力計を設置し,
セントルに作用する圧力を確認しながら施工した.測定の結果,セントルに作用する側圧はコン
クリートの打上りに伴い直線的に増加した.最大値は 0.04N/mm2 程度で,標準的なセントルの設
計耐力(0.05N/mm2)の範囲内であった.打上り速度を適切に管理することで,従来と同じ設備のセ
ントルで施工できることを示す結果である.
天端部の打込みは,従来の覆工施工と同様に既設コンクリート側の吹上げ口より行った.増粘
剤系中流動コンクリートの流動状況を写真-8.2.20 に示す.写真中央が,吹上げ口からコンクリ
ートが打ち込まれている様子である.流動距離は最大 10m 程度となるが,粗骨材とモルタル分の
分離や,ブリーディング水の先走りなどは認められず,均質な状態でコンクリートが充塡できる
ことを確認した.なお,天端部でも,中流動コンクリートの特性を活かし,コンクリート自体の
流動が停止した時点で補助的に棒状バイブレータによる締固めを行った.
天端部にコンクリートが確実に充塡していることを確認するため,セントル天端部 3 箇所にも
圧力計を設置した.側壁部の施工と同様に,圧力計に表示される値をリアルタイムで確認しなが
らコンクリートを打込み,所要の覆工厚さに相当する圧力がセントルに作用していることを確認
したのち施工を終了した.
写真-8.2.20 天端部における中流動コンクリートの流動状況
197
天端部への作用圧力(N/mm2)
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
0.12
0.10
既設
コンクリート
覆工コンクリート
0.08
0.06
0.04
0.02
0.00
10
妻型枠
No.1 既設側天端圧力計
No.2 スパン中央天端圧力計
No.3 妻側天端圧力計
コンクリート
吹上げ口
増粘剤系中流動コンクリート
No.3
No.2
No.1
覆工厚さに相当する圧力
11
12
13
14
測定時刻(時)
15
16
図-8.2.13 天端部の圧力測定結果の一例
天端部の圧力測定結果を図-8.2.13 に示す.増粘剤系の中流動コンクリートを用いた場合は,
(1)で検証した従来の覆工コンクリートを用いた場合のようにコンクリートの打込み箇所である
吹上げ口やスパン中央部の圧力が上昇するような状況は認められず,天端部各所に作用する圧力
値はほぼ均等であり,セントル全体にわたりコンクリートが均質に流動し,充塡している結果が
得られた.中流動コンクリートが,狭い空間でかつ流動距離の長い部位においても型枠の隅々ま
で容易に充塡できることを示す結果と考えられる.
⑤増粘剤系中流動コンクリートで構築したトンネル覆工の品質検証
増粘剤系中流動コンクリートを用いたトンネル覆工の仕上り状況を写真-8.2.21 に示す.従来
の覆工コンクリートで生じるような天端付近での縞模様は発生しておらず,美観性が向上できて
いる.流動性の高い増粘剤系中流動コンクリートを用いることで,天端部でも容易にコンクリー
トが流動し,充塡できるためと推測される.
写真-8.2.21 増粘剤系中流動コンクリートにより構築したトンネル覆工の全景
198
流動先端箇所における反発度(-)
第8章
48
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
支保パターンC
測定数77個
44
40
36
32
28
-2
+2
24
24 28 32 36 40 44 48
打込み箇所における反発度(-)
図-8.2.14 側壁部における反発度測定結果
表-8.2.14 天端部における反発度および透気係数測定結果
支保
パターン
反発度(-)
透気係数(×10-16 m2 )
測定
スパン
No.
打込み
箇所
流動先端
箇所
打込み
箇所
流動先端
箇所
27
40.8
40.0
0.4
0.5
28
43.3
42.5
0.1
0.5
29
39.7
38.9
0.1
0.4
30
37.8
38.5
0.6
0.6
31
40.2
39.0
0.4
0.4
32
39.3
38.6
0.3
0.5
D
断面
C
断面
増粘剤系中流動コンクリートにより構築したトンネル覆工の均質性を検証するため,トンネル
覆工側壁部においてテストハンマーにより反発度を測定した.試験結果を図-8.2.14 に示す.側
壁部では,コンクリートの打込み口と流動先端までは約 5m の距離があるが,両者における反発
度の差異は±2 以内と小さく,
均質性に優れたトンネル覆工が構築できていることが確認できた.
トンネル覆工天端部の均質性を検証するため,テストハンマーにより反発度を,トレント法に
より透気係数を測定した.測定は,支保パターンごとにそれぞれ 3 スパンで行った.測定箇所は,
コンクリートの打込み箇所と流動先端箇所とし,5 点測定して平均値を求めた.なお,測定は覆
工施工の 3 ヶ月後に行った.
測定結果を表-8.2.14 に示す.支保パターンの種類によらず,打込み箇所と流動先端箇所で同
様の値が得られている.覆工天端部は,コンクリートの打込み箇所が限定され,コンクリートの
流動距離が長くなるが,増粘剤系中流動コンクリートの使用により,均質性に優れたトンネル覆
工が構築できることが確認できた.
199
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
⑥まとめ
中流動コンクリートを用いて,1.5 年間にわたり延長 1,800m のトンネル覆工を構築した.一連
の施工を通して,得られた知見を以下に示す.
(1) 増粘剤を含有した高性能 AE 減水剤を用いることで,従来の覆工コンクリートと同程度の単位
セメント量のまま,ブリーディングの少ないスランプフロー45cm 程度の中流動コンクリート
を製造できる.また,粗骨材のかさ容積は,レディーミクストコンクリート工場の標準配合
表に示されるスランプ 21cm のコンクリートの値を参考に設定できる.
(2) 細骨材の表面水率を定期的に測定し,その結果を製造に反映するとともに,施工時の外気温
に応じて高性能 AE 減水剤の添加量を調整することで,品質の安定したコンクリートが,通年
的に製造できる.
(3) 流動性のレベルがスランプフロー45cm 程度のコンクリートは,側壁部においてスパン中央か
ら打ち込んでも,5m 先の端部まで流動し,流動停止後に補助的に締固めを行うことで充塡で
きる.また,ブリーディングの少ないコンクリートを用いることで,打込み個所と流動先端
部における圧縮強度の差異は小さく,均質なトンネル覆工を構築できる.
(4) 上記のコンクリートは,覆工天端部においても,コンクリート自体の流動性により妻側端部
まで流動する.従来の覆工コンクリート施工時のように,吹上げ口周辺でのコンクリートの
堆積に伴う局所的な圧力上昇は認められず,補助的にバイブレータによる締固めを行うこと
で型枠の隅々まで充塡できる.また,打込み個所と流動先端部における硬化コンクリートの
品質の差異は小さく,均質なトンネル覆工が構築できる.
200
第8章
8.2.4
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
まとめ
トンネル覆工は,コンクリートの打込み個所が制限されること,締固めを行う作業スペースが
狭いこと,さらに天端部ではコンクリートを上方に吹き上げて,10m 以上流動させて充塡させる
必要があることから,締固め不足などの施工に起因した要因および材料分離などの配合に起因し
た要因により,不具合の生じやすい構造物である.
そこで,本節ではブリーディングを 3%程度以下に制御したスランプフロー45cm 程度のコンク
リートを用いることで,高品質なトンネル覆工が構築できることを検証するため,側壁部や天端
部を模擬した型枠を用いた施工実験を行うとともに,実際の道路トンネルの全線に適用しその効
果を検証した.今回の一連の検討において得られた知見を以下に示す.
(1) 高性能 AE 減水剤を用い高い流動性を確保しつつ,フライアッシュ等の混和材料を適切に用い
る,もしくは,増粘剤を含有した高性能 AE 減水剤を用いることにより,流動性のレベルをス
ランプフロー45cm 程度まで高めても,ブリーディングの少ないコンクリートを製造できる.
(2) コンクリート中の単位粗骨材かさ容積は,レディーミクストコンクリート工場の標準配合表
に示されるスランプ 21cm のコンクリートの値を参考に設定できる.
(3) 従来の普通コンクリートに比べ,流動性を高めつつ,ブリーディングを抑制したコンクリー
トは,従来の普通コンクリートと同様に,細骨材の表面水率の定期的測定や外気温に応じた
混和剤の添加量の調整などを行うことで,特別な設備を追加することなく,一般的なレディ
ーミクストコンクリート工場において,安定的に製造できる.
(4) 流動性のレベルをスランプフロー45cm 程度まで高めたコンクリートは,側壁部および覆工天
端部において,5~10m にわたり,コンクリート自身の流動性により流動できる.そして,流
動停止後に,補助的にバイブレータにより締固めを行うことで充塡できる.
(5) ブリーディングが少なく,単位粗骨材かさ容積を適切に設定したコンクリートを用いること
で,均質性および美観性に優れたトンネル覆工が構築できる.
201
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
8.3 地上式 LNG タンクの防液堤
8.3.1
防液堤の概要
東日本大震災を契機として,火力発電による電力供給依存が高まっており,液化天然ガス(LNG)
に対する需要は今後さらに増大すると予測される.この LNG を地上で貯留する設備としては,図
-8.3.1 に示すような従来の金属二重殻構造の地上式タンクと PC 製の防液堤を一体化した
PCLNG 貯槽が標準的に用いられている
7),8)
.従来の金属二重殻構造の地上式タンクは,LNG を
保持する低温鋼の内槽,LNG への入熱を低減する保冷材,および保冷材を保持する外槽から構成
されていた.PCLNG 貯槽は,この金属二重殻構造の地上式タンクと防液堤を一体化することによ
り,①防液堤スペースが不要となり敷地の利用効率が高まる,②万一の内槽からの漏液に際して,
その影響を局限化できるため保安レベルが高い,③タンク本体と防液堤の基礎が共有できるとと
もに,外槽が自立式からライナ構造となるため経済的である,などの利点を有する 7),8).
このように,防液堤コンクリートは,万一,内槽から LNG が漏洩した際に周囲への流出を防止
するための部材であり,高い密実性が求められる.これまで,施工に伴う温度ひび割れの発生を
防止する観点から低発熱型セメントの使用や各種のクーリング工法が用いられるとともに,施工
の合理化の観点から高流動コンクリートの適用などが行われてきた 9)~11).
保冷材
外槽
保冷材
外槽(ライナプレート)
冷熱抵抗緩和材
内槽
内槽
冷熱抵抗
緩和材
防液堤
防液堤
LNG
LNG
底部ヒータ
基礎杭
基礎杭
金属二重殻構造の地上式タンク
PCLNG 貯槽
図-8.3.1 従来の地上式 LNG タンクと PCLNG 貯槽の概要 7),8)
一方で,防液堤コンクリートは,高さ方向に高い構造物であることから,1 回の施工高さを 3
~4m 程度とし,10 回程度に分割して構築する工法が用いられてきた.通常の施工サイクルでは,
1 リフトあたり 1 か月程度の日数が必要となるため,防液堤コンクリートの構築には 1 年近い時
間が必要であった.そこで,施工期間の短縮や建設費の低減を図るため,PCLNG 貯槽の防液堤コ
ンクリートをスリップフォーム工法で構築することとなった.スリップフォーム工法を用いた場
合,防液堤コンクリートを 2m/日の速度で構築できるため,従来工法に比べて工期を 1/8~1/10 程
度に短縮できる.また,自昇式の型枠を用い,2m/週の速度で防液堤コンクリートを構築するスリ
ップジャンプ工法と比べても工期を 1/5 程度に短縮できる 9).
202
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
スリップフォーム工法は,型枠を上昇させながら連続的にコンクリートを打込み,躯体を構築
する工法である.このため,コンクリートの打継ぎ箇所が生じないという利点も有する.スリッ
プフォーム工法は,煙突やタワーなど,縦長で円筒状の構造物を構築する方法として,これまで
に多くの施工実績があり,近年では東京スカイツリーの芯柱の施工にも適用されている 12),13)が,
PCLNG 貯槽のような大口径の円筒構造物に適用された事例はない.コンクリートを連続的に薄層
で打ち込み,充塡させるには,流動性の高いコンクリートが必要である.
一方で,高流動コンクリートのレベルまで流動性を高めると,型枠への作用圧力の増大や,コ
ンクリートの材料コストの増大の要因となる.そこで,セメント量を強度や耐久性確保に必要な
最小量としつつ,補助的な締固めを行うことで充塡が可能な中流動コンクリートを適用した.な
お,コンクリートを 20 日間にわたり 24 時間連続して供給する必要があることから,中流動コン
クリートは現場内に設置したバッチャープラントで製造することにした.
本節では,スリップフォーム工法により構築する防液堤コンクリートに用いた中流動コンクリ
ートの室内試験における配合選定や検証実験結果,ならびに現場バッチャープラントで製造した
コンクリートの品質や施工結果について記述する.なお,施工は 2013 年 4 月に行った.
203
第8章
8.3.2
(1)
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
コンクリートに要求される品質
スリップフォーム工法による防液堤コンクリートの構築手順
対象とする防液堤コンクリートの概要を図-8.3.2 に示す.防液堤は,内径が 89.2m,
壁厚 80cm,
高さ 43.6m で,コンクリート数量は約 9,500m3 である.防液堤の設計基準強度は,高さ方向に 3
水準(60,40,30N/mm2)に分かれている.これは,防液堤の下端部分ほど大きな引張応力が生
じるためである.
スリップフォーム装置の断面図とイメージ図を図-8.3.3 に,スリップフォーム工法による防液
堤の構築順序を図-8.3.4 に示す.施工は,①型枠をジャッキで引き上げ,壁側面を滑らせながら
上昇させる,②コンクリートを薄層で打ち重ねながら連続して打ち込む,③ロッドや鉄筋をスリ
ップフォーム装置の上昇に合わせて順次継ぎ足す,といった各工種の作業を同時に進行させるも
のである.これに加え,施工途中で足場や型枠の組立・解体が不要となることから施工の急速化
を図ることができる.なお,型枠は1時間あたり 10cm(約 2m/日)で連続的に上昇させ,全高 40m
を 20 日間で構築する計画とした.型枠の全高は 1.2m であるため,打ち込んだコンクリートは材
齢 12 時間で型枠から外れ,外気に暴露されることになる.
躯体厚さ80cm
PC防液堤の内径 89.2m
設計基準強度
30N/mm2
設計基準強度
40N/mm2
設計基準強度
60N/mm2
基礎版中央部
8m
6m
26m
スリップフォーム工法 適用区間40m
PC防液堤 43.6m
C.L.
基礎版外周部
上段作業床
図-8.3.2 防液堤コンクリートの概要
クライミングロッド
コンクリートバケット
15t上昇ジャッキ
下段作業床
中段作業床
型枠パネル
PC防液堤
コンクリート
図-8.3.3 スリップフォーム装置の断面図とイメージ図
204
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
ロッドの
継ぎ足し
スリップフォーム
(SF)装置
鉄筋の
継ぎ足し
SF装置
の上昇
SF装置
の上昇
ロッド
ジャッキ
打設した
コンクリート
(10~15cm/層)
鉄筋
上昇
型枠パネル
上昇
図-8.3.4 スリップフォーム工法による防液堤コンクリートの構築順序図
(2)
コンクリートに要求される品質
スリップフォーム工法により防液堤を構築する際にコンクリートに要求される品質を 表-
8.3.1 に示す.上述のように,防液堤コンクリートの打込み・締固め作業は,型枠の上昇速度(10cm/h)
に合わせて行う必要があるため,薄層で広範囲に広がるように,コンクリートには高い流動性が
求められる.そのため,スランプフロー50cm の中流動コンクリートを用いることにした.この他
にも,スリップフォーム工法に適用する特有の要求性能として,材齢 12 時間で型枠から外れた際
にもコンクリートが自立するために,若材齢時の強度発現性も要求される.さらに,設計耐用期
間(50 年間)における耐久性(中性化や塩害)の確保や,施工時の温度ひび割れの防止も求められる.
若材齢時の強度発現性は,施工時のコンクリート温度に応じて,凝結遅延剤の添加量を調整する
ことで目標範囲内に制御する手法を確立した
14)
.耐久性に関しては,施工に先立ちコンクリート
の模擬部材を制作し,実施工と同様に材齢 12 時間で脱枠した試験体から採取したコアを用いた中
性化促進試験および塩分浸漬試験を行い,所要の耐久性を有することを確認した
14)
.また,温度
ひび割れについては 3 次元 FEM モデルを用いた温度応力解析を実施し,ひび割れ指数 1.85 以上
を確保できることを確認した.
表-8.3.1 コンクリートに要求される品質
項目
品質の特性値と目標範囲
スランプフロー
50±7.5cm
空気量
4.5±1.5%
(1) 型枠の取外し時(材齢12時間)に0.1N/mm2 以上であること(上限値の目安を0.3N/mm2 とする)
圧縮強度
(2) 管理材齢(91日)で設計基準強度を満足すること
中性化速度係数
*1
8(mm/√年)以下
塩化物イオン拡散係数 *1 30-50-20BB :5.0cm2 /年以下,40-50-20M :2.5cm2 /年以下,60-50-20M :1.2cm2 /年以下
温度ひび割れの防止
ひび割れ指数1.85以上
*1 適用した工事の構造条件,環境条件に対し設計耐用期間(50年)の耐久性確保に必要な値(2007年制定コンク
リート標準示方書[設計編]に準じて算出)
205
第8章
8.3.3
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
コンクリートの配合選定
施工に用いたコンクリートの配合を表-8.3.2 に示す.また,使用材料を表-8.3.3 に示す.
所要の耐久性の確保および温度ひび割れの発生を防止する観点から,設計基準強度が 30N/mm2
の部位には高炉セメント B 種を,40 および 60N/mm2 の部位には中庸熱ポルトランドセメントを
用いた.また,水セメント比は,材齢 12 時間で脱枠した場合にも,所要の強度や耐久性が確保で
きるように設定した.混和剤には,設計基準強度 30N/mm2 の部位は,強度や耐久性の観点から要
求されるセメント量のまま,流動性を高めると材料分離抵抗性が不足することから,高性能 AE
減水剤(増粘剤一液タイプ)を用いた.一方,設計基準強度が 40N/mm2 以上で,強度確保に必要な
単位セメント量が多い配合には,ポリカルボン酸系の高性能 AE 減水剤を用いた.また,単位粗
骨材かさ容積は,6 章での検討結果を踏まえ 0.56m3/m3 に設定した.
各種コンクリートのスランプフロー試験状況を写真-8.3.1 に,
経時変化の測定結果を図-8.3.5
に示す.いずれのコンクリートとも粗骨材が中央に偏在したり,周囲にブリーディング水がたま
るような状況は認められなかった.また,時間経過に伴うスランプフローの変化が小さいことも
確認した.
充塡試験結果を図-8.3.6 に,ブリーディング試験結果を図-8.3.7 に示す.本工事では,バイ
ブレータによる締固めを前提とするため自己充塡性は要求されないが,いずれのコンクリートも,
本工事の配筋条件に相当する障害条件(ランク 2)において,充塡高さ 30cm 以上を確保できており
十分な充塡性を有する配合であることを確認した.さらに,ブリーディング率はいずれも 1%程
度と小さいことも確認した.
表-8.3.2 コンクリートの配合
コンク
リート
の種類
目標
目標
セメ スラ
空気 W/C
ント ンプ
量
(%)
種類 フロー
(%)
(N/mm2 )
(cm)
設計
基準
強度
単位量(kg/m3 )
s/a
(%)
細骨材 粗骨材
容積 かさ容積
(L/m3 )
(m3 /m3 )
W
C
S1
S2
G1
G2
混和剤
(C×%)
30-50-20BB
30
BB
50
4.5
45.0
49.4
322
0.558
175
389
662
166
431
429
0.90
(VA)
40-50-20M
40
M
50
4.5
40.0
49.5
323
0.558
170
425
664
167
431
429
1.10
(SP1)
60-50-20M
60
M
50
4.5
33.0
47.2
295
0.558
170
515
607
152
431
429
1.05
(SP2)
30-50-20BB
40-50-20M
写真-8.3.1 中流動コンクリートのスランプフロー試験状況
206
60-50-20M
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
表-8.3.3 使用材料
分類
記号
セメント
細骨材
粗骨材
混和剤
種類,物理的性質など
BB
高炉セメントB種,密度3.04g/cm3
M
中庸熱ポルトランドセメント,密度3.22g/cm3
S1
海砂,表乾密度2.57g/cm3 ,吸水率2.24%,粗粒率2.60
S2
砕砂,表乾密度2.58g/cm3 ,吸水率1.60%,粗粒率2.87
G1
砕石2010,表乾密度2.62g/cm3 ,吸水率0.95%,実積率59.3%
G2
砕石1505,表乾密度2.61g/cm3 ,吸水率0.92%,実積率58.6%
SP1
高性能AE減水剤(ポリカルボン酸系)
SP2
高性能AE減水剤(ポリカルボン酸系)*高強度用
VA
高性能AE減水剤(増粘剤一液タイプ)
(減水成分:ポリカルボン酸系,増粘剤成分:グリコール系)
70
スランプフロー(cm)
温度条件20℃
30-50-20BB
40-50-20M
60-50-20M
60
50
40
30
スランプフローの目標範囲50±7.5cm
0
5
10
15
20
25
30
練上りからの静置時間(分)
35
図-8.3.5 スランプフローの経時変化
40
ブリーディング率(%)
35
5
障害条件:ランク2
充填高さ(cm)
30
25
20
15
10
5
0
30-50-20BB
40-50-20M
4
3
2
1
0
60-50-20M
図-8.3.6 充塡試験結果
30-50-20BB
40-50-20M
60-50-20M
図-8.3.7 ブリーディング試験結果
207
第8章
8.3.4
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
現場バッチャープラントで製造したコンクリートの品質検証
現場バッチャープラントの外観を写真-8.3.2 に示す.ミキサは容量 2.5m3 の強制 2 軸練りミキ
サである.1 バッチの練混ぜ量は 2m3 とし,2 バッチ製造してアジテータ車に排出した.コンクリ
ートの練混ぜは,事前の練混ぜ性能試験から,全材料を投入後 90 秒(30-50-20BB 配合および
40-50-20M),120 秒(60-50-20M 配合)とした.
写真-8.3.2 現場バッチャープラントの外観
施工時のコンクリートの荷揚げおよび打込み状況を写真-8.3.3 に示す.現場バッチャープラン
トで製造したコンクリートは,アジテータ車にて運搬(約 5 分)し,荷揚げ用バケットに荷卸しした.
荷揚げ用バケットをクレーンにて吊り上げ,スリップフォーム装置に設置した搬送用バケットに
コンクリートを移し替え,打込み位置まで運搬した.そして,搬送用バケットの底面に設置した
開閉口からシュートを介してコンクリートを打ち込んだ.
打ち込んだコンクリートの流動状況を写真-8.3.4 に示す.いずれの中流動コンクリートともコ
ンクリート自体の高い流動性により型枠の隅々まで容易に流動した.また,写真に示すように,
モルタル分と骨材とが一体で流動し,材料分離は認められなかった.コンクリートの打込み完了
後,上面が平坦になる程度に棒状バイブレータによる締固めを行った.
208
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
(a) 荷揚げ用バケットへの荷卸し(左)とクレーンによる吊り上げ(右)
(b)搬送用バケットによる運搬(左)と開閉口からのシュートを介しての打込み(右)
写真-8.3.3 コンクリートの荷揚げ・打込み状況
写真-8.3.4 中流動コンクリートの流動状況(左)と締固め(右)
209
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
10
細骨材の表面水率(%)
海砂S1
砕砂S2
8
6
4
2
0
0
20
40
60
80 100 120 140 160 180
測定回数(回)
図-8.3.8 細骨材の表面水率の推移
100
70
30-50-20BB
60
目標範囲:50±7.5cm
55
50
45
40
検査回数:50回
7日圧縮強度 平均値:28.4N/mm2 標準偏差:1.4N/mm2
28日圧縮強度 平均値:49.8N/mm2 標準偏差:1.7N/mm2
80
圧縮強度(N/mm2)
スランプフロー(cm)
65
検査回数:50回
平均値:47.9cm
標準偏差:2.3cm
60
40
20
35
30
30-50-20BB
0
10
20
30
40
0
50
0
7日圧縮強度
10
20
40-50-20M
60
検査回数:12回
平均値:50.5cm
標準偏差:1.9cm
圧縮強度(N/mm2)
65
スランプフロー(cm)
40
50
100
70
目標範囲:50±7.5cm
55
50
45
40
80
検査回数:12回
7日圧縮強度 平均値:35.3N/mm2 標準偏差:0.8N/mm2
28日圧縮強度 平均値:58.1N/mm2 標準偏差:1.6N/mm2
60
40
7日圧縮強度
20
35
40-50-20M
0
5
10
0
0
15
10
15
回数
100
70
60-50-20M
60
60-50-20M
検査回数:17回
平均値:51.6cm
標準偏差:2.5cm
圧縮強度(N/mm2)
65
目標範囲:50±7.5cm
55
50
45
40
5
10
回数
15
20
40
0
0
検査回数:17回
7日圧縮強度 平均値:44.8N/mm2 標準偏差:2.7N/mm2
28日圧縮強度 平均値:72.0N/mm2 標準偏差:3.3N/mm2
5
10
回数
図-8.3.9 施工時のスランプフローおよび圧縮強度試験結果
210
28日圧縮強度
60
20
0
7日圧縮強度
80
35
30
28日圧縮強度
5
回数
スランプフロー(cm)
30
回数
回数
30
28日圧縮強度
15
20
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
品質の安定した中流動コンクリートを製造するため,2 時間ごとに細骨材の表面水率を測定し,
製造に反映させた.また,製造 50m3 ごとにスランプフローおよび空気量試験を行った.施工時の
細骨材の表面水率の測定結果の推移を図-8.3.8 に,スランプフロー試験および圧縮強度試験結果
を図-8.3.9 に示す.
表面水率は,海砂 S1 が 3~7%,砕砂 S2 が 0.5~4%の範囲で変化しているが,いずれの配合の
コンクリートでも,スランプフロー値は目標範囲を満足する結果が得られた.圧縮強度は,いず
れの配合とも材齢 28 日において設計基準強度を満足していた.また,標準偏差は 30-50-20BB お
よび 40-50-20M 配合では 1.5N/mm2 程度で,高強度の 60-50-20M 配合でも 3N/mm2 程度と小さく,
ばらつきの小さい安定した品質のコンクリートが製造できることを確認できた.
防液堤コンクリートの構築は,当初計画通りに 20 日間で完了した.施工数量は,合計で約
9,500m3(30-50-20BB:6,263m3,40-50-20M:1,452m3,60-50-20M:1,818m3)であった.中流動コン
クリートを用いて構築した防液堤コンクリートの外観を写真-8.3.5 に示す.
写真-8.3.5 中流動コンクリートにより構築した防液堤コンクリートの外観
8.3.5
まとめ
スリップフォーム工法により PCLNG 貯槽の防液堤コンクリートを構築する際に,スランプフ
ロー50cm の中流動コンクリートを適用した.得られた知見を以下に示す.
(1) 水セメント比 45%,単位セメント量が約 390kg/m3 の配合でも,高性能 AE 減水剤(増粘剤一液
タイプ)を適用することにより,スランプフロー50cm の高い流動性を有するコンクリートを製
造できる.
(2) スランプフロー50cm の中流動コンクリートを用いることで,コンクリートを薄層で広範囲に
打ち込むことができ,補助的な締固めにより充塡できる.
(3) 細骨材の表面水率を定期的に測定して適切に製造に反映することで,現場バッチャープラン
トにて,品質の安定した中流動コンクリートを連続的に製造できる.
211
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
8.4 本章のまとめ
本章では,ブリーディングが小さく,単位粗骨材かさ容積を適切に設定したコンクリートを用
いることで均質性に優れたコンクリート構造物が構築できること,および従来の普通コンクリー
トと同様の製造設備および製造管理手法で品質の安定した中流動コンクリートが製造できること
を検証した.
トンネル覆工は,コンクリートの打込み箇所が制限されるとともに,締固めを行う作業スペー
スが狭いこと,さらにはコンクリートの流動距離が長くなるなど,施工および配合の両面から充
塡不良や均質性の低下などの施工不良が生じやすい構造物である.トンネル覆工にブリーディン
グの少ないスランプフロー45cm 程度のコンクリートを適用した結果,得られた知見を以下に示す.
(1) ブリーディングが少なく,粗骨材のかさ容積を適切に設定したスランプフロー45cm 程度のコ
ンクリートは,限られた打込み個所からコンクリートを打ち込んでも,側壁部では 5m,天端
部では 10m 以上にわたりコンクリート自体の流動性により型枠端部まで流動することが可能
であり,流動停止後に補助的にバイブレータにより締め固めることで密実に充塡できる.
(2) 流動に伴うコンクリートの品質低下はほとんど生じず,均質性に優れたトンネル覆工が構築
できるとともに,美観性の向上にも寄与できる.
(3) 表面水率測定を定期的に行い,その結果を適切に製造に反映するとともに,施工時の気温に
応じて高性能 AE 減水剤の添加量を適切に調整することで,一般的なレディーミクストコンク
リート工場において,通年にわたり,品質の安定したコンクリートを製造できる.
一方,スリップフォーム工法により薄層で広範囲にコンクリートを連続して打ち込むには,補
助的な締固めにより充塡が可能な流動性の高いコンクリートを用いる必要がある.地上式 LNG タ
ンクの防液堤にブリーディングが少ないスランプフロー50cm 程度のコンクリートを適用した結
果を以下に示す.
(1) ブリーディングを制御するとともに,流動性のレベルに応じて単位粗骨材かさ容積を適切に
設定したスランプフロー50cm のコンクリートを用いることで,薄くかつ広範囲にコンクリー
トを打ち込むことが可能で,補助的に締固めを行うことで充塡できる.
(2) 上記のコンクリートは,従来の普通コンクリートと同様に,表面水率の測定を定期的に実施
し,その結果を適切に製造に反映することで,現場バッチャープラントにおいて安定的に製
造できる.
これらの結果を踏まえると,水セメント比や流動性のレベルに応じて適切なモルタル配合を選
定してブリーディングの発生を抑制するとともに,流動性のレベルや配筋条件に応じて粗骨材の
かさ容積を適切に設定したコンクリートを用いることで,経済性を考慮しつつ耐久性に優れたコ
ンクリート構造物が構築できると考えられる.
212
第8章
適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用
第 8 章の参考文献
1)
土木学会:コンクリートライブラリー136 高流動コンクリートの配合設計・施工指針[2012
年度]
,資料編 資料 1 国内の現状・海外の実績,2012.6
2)
馬場弘二ほか;中流動覆工コンクリートの開発検討,土木学会トンネル工学報告集第 17 巻,
pp.227-232,2007.11
3)
城間博通,小川澄,佐伯徹;トンネル覆工専用中流動コンクリートの開発,土木技術,64 巻,
4 号,pp.49-57,2009.4
4)
東・中・西日本高速道路株式会社;トンネル施工管理要領「中流動覆工コンクリート編」
,2008.8
5)
日本トンネル技術協会;トンネルの高速施工技術に関する検討報告書
第四章 中流動覆工
コンクリートの適用性検討,2009.1
6)
日本コンクリート工学会:施工の確実性を判定するためのコンクリートの試験方法とその適
用性に関する研究報告書,pp.90-93,2009.7
7)
北村八朗,西崎丈能,園淳生,鎌田文男:わが国初の 14 万 kl PCLNG タンクの建設,コンク
リート工学,Vol.31,No.4,pp.42-56,1993.4
8)
中島一夫,西崎丈能:液化天然ガスの PC 製貯槽の開発―わが国初の PCLNG 地上式貯槽の開
発―,土木学会誌,Vol.75,No.11,pp.14-16,1990.10
9)
西崎丈能,岡井大八,近松竜一,奥立稔,鎌田文男:PCLNG 貯槽建設工事の合理化研究と実
構造物への適用,土木学会論文集,No.728/Ⅵ-58,pp.141-156,2003.3
10) 西崎丈能,奥立稔,近松竜一,川島宏幸:高強度・自己充てんコンクリートによる PCLNG
貯槽の建設,コンクリート工学,Vol.37,No.10,pp.40-44,1999.10
11) 川島宏幸,岡田茂,西崎丈能,近松竜一:PCLNG 貯槽における高強度・自己充てんコンクリ
ートの製造・施工管理,コンクリート工学年次論文集,Vol.21,No.2,pp.421-426,1999.
12) 坂井利光,矢島雄一,神代泰道,江村勝:東京スカイツリーにおけるスリップフォーム工法
による芯柱の構築,コンクリート工学,Vol.50,No.8,pp.677-682,(2012)
13) 河合勝美,加藤靖彦,一瀬賢一,原田恒則:スリップアップ工法による大規模石炭サイロの
施工,コンクリート工学,Vol.41,No.2,pp.32-38,(2003)
14) 近松竜一,桜井邦昭,大西俊輔,西崎丈能:大容量 LNG 貯槽の PC 防液堤を対象としたスリ
ップフォーム工法用コンクリートの基礎的性質,コンクリート工学年次論文集,Vol.35,No.1,
pp.1519-1524,2013
213
第9章
第9章
結論
結論
9.1 本研究の結論
近年では,耐震性能を向上させるため鉄筋が高密度に配置された部材が増加している.一方で,
厳しい経済情勢の中,これまで整備した膨大な社会資本ストックの維持管理を行っていく必要も
ある.このような現状において,今後も人々の安心・安全な生活に資する耐久性に優れたコンク
リート構造物を合理的に構築していくには,従来の普通コンクリートに比べ材料・施工コストの
増加を最小限に抑えつつ,補助的な締固めにより充塡できる程度の高い流動性を有するコンクリ
ートを用いる必要がある.セメントは,コンクリートの構成材料のうち最も材料コストが高いと
ともに,必要以上に多量に混入すると温度ひび割れの発生を助長し,耐久性が損なわれる場合も
ある.一方で,少ないセメント量のまま安易に流動性を高めると材料分離抵抗性が低下し,ブリ
ーディングの増大や,モルタルと粗骨材との分離が生じ,かえって構造物の耐久性が低下する要
因となる.
そこで,本研究では,構造物の設計基準強度や所要の耐用期間における耐久性を確保する観点
から与条件として設定される水セメント比,対象とする構造物の配筋条件や施工条件に応じて設
定される流動性のレベル,および使用する材料の物理的性質から,ブリーディングが少なく,か
つモルタルと粗骨材との分離の生じにくいコンクリート配合を選定する手法を構築することを目
的とした.そして,配合条件と材料の物理的性質からモルタル中の自由水量を推定する予測モデ
ルの構築,同様の条件からモルタルの流動性を推定する手法の構築,およびコンクリートとして
の材料分離抵抗性を確保するための単位粗骨材かさ容積の設定方法の検討を行い,これらを統合
させることで,材料分離抵抗性と流動性をともに考慮できるコンクリートの配合設計法を提案し,
その妥当性について検証した.また,材料分離抵抗性を適切に考慮したコンクリートを実工事に
適用することで,耐久性に優れたコンクリート構造物を構築できることも検証した.
各章で得られた知見を列記し,本研究の結論とする.
【第 2 章 既往の研究】
普通コンクリートおよび高流動コンクリートの配合設計法を整理するとともに,配合設計に関
する既往の研究を調査し,材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法の確立
に向けた課題の抽出ならびに活用できる事項の検討を行った.
(1) 現状の配合設計法ではブリーディングは考慮されていない.また,目標とする流動性のレベ
ルに対応した単位水量および高性能 AE 減水剤の添加量の具体的な設定方法は示されていな
い.このため,材料分離抵抗性と流動性をともに考慮したコンクリートの配合設計法を確立
するには,まずはブリーディングが生じるメカニズムをモデル化し,配合条件や使用材料の
物理的性質からブリーディング水量(自由水量)を予測できる手法を構築し,さらにそのモデル
に流動性のレベルを導入する必要がある.
215
第9章
結論
(2) 普通コンクリートおよび高流動コンクリートの配合設計法とも,単位粗骨材かさ容積は流動
性のレベルに応じて設定している.このため,流動性のレベルが両者の中間に位置する中流
動コンクリートの単位粗骨材かさ容積も流動性のレベルに応じて設定する必要がある.
(3) 流動性の予測を行うには,水が流動に寄与する影響に加え,高性能 AE 減水剤による分散効果
も考慮する必要がある.このためには,セメントの凝集・分散挙動を考慮した予測モデルの
構築が不可欠である.現状においては,水膜モデルが唯一のセメントの凝集挙動を考慮した
理論であり,本研究でも,これを準用することが望ましいと考えられる.
(4) ブリーディングの予測を行う上では,セメントのみならず細骨材が拘束できる水量も把握す
る必要がある.相対フロー面積比と水粉体容積比の関係から,流動に寄与しない細骨材の見
掛けの拘束水比を算出する手法が準用できると考えられる.
【第 3 章 モルタルにおける自由水量の推定】
材料分離抵抗性を考慮した配合設計法を確立するための第一段階の検討として,使用材料の物
理的性質や配合条件からモルタル中の自由水量を予測する物理モデルを提案し,その妥当性を実
験により検証した.
(1) 粉体がその粒子表面に拘束できる水量を予測するには,配合条件に応じて粉体の凝集の程度
が相違することを考慮する必要がある.この具体的な手法として,水と粉体の混合比から完
全分散状態における粉体の平均粒子間距離を求め,この値をもとにファンデルワールス力に
よる凝集力と粒子の回転慣性による分散力の関係から凝集後の粉体の表面積を算出する方法
を提案した.
(2) 上記により凝集を考慮した後のセメント(粉体)の表面積の総和は,粒度分布や水との水和活性
の異なる粉体を用いた場合においても,実際に粉体が拘束できた水量と高い相関係数の直線
関係にある.このため,凝集後のセメント(粉体)がその表面に拘束できる水量(水膜厚さ)は,
凝集後の個々の粉体の粒子径には依存せず,一様であると考えられる.
(3) また,粉体が表面に拘束できる水膜厚さは,粉体の種類により相違する一方で,水との混合
比率によらずほぼ一定である.このため,水膜厚さは粉体固有の物理的性質として捉えるこ
とができ,予め水膜厚さを把握しておくことで,配合条件が与えられた時点でセメント(粉体)
が拘束できる水量を推定することができる.
(4) 細骨材がその表面に拘束できる水量は,水セメント容積比を変化させたペーストおよびモル
タルフロー試験により得られる相対フロー面積比と水セメント容積比の関係から求めること
ができる.
(5) 上記により求めたセメントおよび細骨材が表面に拘束できる水量を用いることで,配合条件
や使用材料の異なるモルタルの自由水量を概ね算定できる.
【第 4 章 高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定】
構造条件に応じた適切な流動性をコンクリートに付与するため,今日では高性能 AE 減水剤が
広く活用されている.高性能 AE 減水剤は,セメント粒子表面に吸着して,セメントをより分散
216
第9章
結論
させることで高い流動性を付与していると考えられている.このため,水,セメントおよび細骨
材の混合比率が同一の場合でも,高性能 AE 減水剤の添加量の差異によって,流動性のレベルが
変化するため,それに見合った材料分離抵抗性が確保できているかを評価する必要がある.
そこで,3 章で提案したモルタルの自由水量の予測モデルに,高性能 AE 減水剤によるセメント
の分散効果を組み込むことで,与条件として与えられる水セメント比や使用するセメントや細骨
材の物理的性質から自由水量を予測するモデルを提案した.
(1) 水セメント比や高性能 AE 減水剤の使用有無によらず,流動性が等しいペーストではペースト
中のセメントの分散状態は等しいと仮定し,水とセメントの混合比から求まるファンデルワ
ールス力による凝集力と回転慣性力による分散力の関係から得られる凝集挙動と,高性能 AE
減水剤によるセメント粒子の分散効果を考慮することで,セメント表面に拘束できる水膜厚
さおよび高性能 AE 減水剤の膜厚さを求めることができる.
(2) 上記により得られる水膜厚さと高性能 AE 減水剤の膜厚さには相関関係が認められ,高性能
AE 減水剤の膜厚さが増加するに従い,拘束できる水膜厚さは小さくなる.
(3) 上記により得られる凝集・分散挙動を考慮した後のセメント粒子表面に拘束できる水量と,
前章で示した相対フロー面積比と水粉体容積比の関係から得られる細骨材の拘束水量を用い
ることで,高性能 AE 減水剤を用いた場合においても,配合条件からモルタルの自由水量を推
定できる.
【第 5 章 モルタルにおける流動性の推定】
材料分離抵抗性に優れたコンクリート配合を選定するには,材料の物理的性質や配合条件から
材料分離抵抗性を推定するだけでなく,流動性も予測することが不可欠である.そこで,配合条
件や使用するセメントや細骨材の物理的性質からモルタルの流動性を予測する手法について検討
した.4 章での検討結果と合わせて,配合条件や材料の物理的性質から,所要の流動性を有しつ
つ,ブリーディング水量(自由水量)が最小となるモルタルの配合条件を予測するモデルを提案し,
実験結果と比較して妥当性を検証した.
(1) モルタルにおいて所要の流動性を確保するには,モルタル中の細骨材容積比が増加するほど,
モルタル中のペーストの流動性を高める必要があり,セメント粒子をより分散させる(セメン
トの単位表面積を増加させる)必要がある.
(2) 流動性のレベル,水セメント比および使用する細骨材の種類が相違しても,モルタル中の細
骨材かさ容積と,ペーストにおいて目標とする流動性の確保に必要なセメントの単位表面積
とモルタルにおいて同じ流動性の確保に必要となるセメントの単位表面積との比の間には一
意的な関係がある.
(3) 流動性レベルの指標としてセメントの単位表面積を用いることで,細骨材のかさ容積に応じ
て目標とする流動性の確保に必要なセメントの単位表面積を設定することが可能となる.そ
して,流動性レベル,水セメント比および材料の物理的性質を与条件として,ブリーディン
グ水量(自由水量)が最小となるモルタルの配合条件(材料の単位量および高性能 AE 減水剤の
添加量)を概ね算出できる.
217
第9章
結論
【第 6 章 単位粗骨材かさ容積の影響】
材料分離抵抗性に優れたコンクリートの配合設計を行う際に,単位粗骨材かさ容積をどのよう
に設定すべきであるかを検討するため,単位粗骨材かさ容積がコンクリートのブリーディング特
性や振動作用に伴い鉄筋間隙を通過した後の均質性に及ぼす影響について実験的に検討した.ま
た,流動性レベルと単位粗骨材かさ容積の関係について,土木学会や日本建築学会の指針類,お
よび日本各地のレディーミクストコンクリート工場の保有する標準配合一覧表から整理した.さ
らに,各地域の材料を用いてブリーディングの少ないスランプフロー45cm の中流動コンクリート
の配合を選定し,選定結果から実務における合理的な単位粗骨材かさ容積の設定方法についても
考察した.
(1) ブリーディングの少ないモルタルから構成されるコンクリートはブリーディングが少ない.
また,単位粗骨材かさ容積が等しい場合,ブリーディングの少ないコンクリートほど,鉄筋
間隙の通過前後における粗骨材量の変化が小さい.このため,3~5 章において提案した予測
モデルを用いて自由水量が少ないモルタル配合を選定することで,ブリーディングが少なく,
モルタルと粗骨材との分離の少ないコンクリート配合を選定できる可能性が高い.
(2) 鉄筋間隙の通過に伴う粗骨材量の低下を抑制し,均質性に優れた構造物を構築するには,対
象とする構造物の配筋条件に応じて,単位粗骨材かさ容積を設定する必要がある.そして,
配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の目安として,土木学会の高流動コンクリートの配合
設計・施工指針に示される値が活用できる.
(3) 一方で,流動性のレベルに応じて単位粗骨材かさ容積を設定する場合には,土木学会や日本
建築学会の指針に示されるスランプ(フロー)と単位粗骨材かさ容積の関係図が活用できる.
(4) 日本各地の材料を用いて選定したスランプフロー45cm の中流動コンクリート配合の単位粗骨
材かさ容積は,各レディーミクストコンクリート工場の所有する配合一覧表に示されるスラ
ンプ 21cm のコンクリートの単位粗骨材かさ容積とほぼ一致する.レディーミクストコンクリ
ート工場の配合一覧表に示される単位粗骨材かさ容積を活用することで,実務において中流
動コンクリートの配合設計を合理的に行える可能性がある.
【第 7 章 材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法】
3~6 章での検討結果を踏まえ,材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
を提案した.そして,提案した配合設計法を用いてコンクリート配合を選定するとともに,自由
水量を推定した.さらに,選定した配合を用いて実際にコンクリートを製造し,流動性およびブ
リーディング水量を測定し,提案した配合設計法の妥当性を検証した.
(1) 3 章および 4 章で提案したモルタルの自由水量の予測モデル,および 5 章で提案したモルタル
の流動性の予測手法を用いるとともに,6 章で検討した流動性レベルもしくは配筋条件に応じ
て単位粗骨材かさ容積を設定することで,ブリーディングの少ないスランプフロー45cm 程度
の中流動コンクリートの配合を選定することができる.
(2) 混和剤に AE 減水剤を用いる場合,与条件として水セメント比と流動性のレベルが与えられる
と,単位粗骨材かさ容積に応じて,与条件を満足できる水,セメントおよび細骨材の混合比
218
第9章
結論
率が一意的に算定される.また,AE 減水剤を用いた場合においても,本研究で提案した手法
を用いることで,目標とする流動性を有するコンクリート配合を選定でき,ブリーディング
水量を推定できる.
【第 8 章 適切な材料分離抵抗性を有するコンクリートの実工事への適用】
ブリーディングが少なく,単位粗骨材かさ容積を適切に設定したコンクリートを用いることで
均質性に優れたコンクリート構造物が構築できること,および従来の普通コンクリートと同様の
製造設備および製造管理手法で品質の安定したコンクリートが製造できることを検証するため,
他の構造物に比べ作業空間が狭く,コンクリートを長距離にわたり流動させるとともに,最終的
にはコンクリートを上方に吹き上げて充塡させる必要のある山岳トンネルの覆工,およびスリッ
プフォーム工法により短期間で構造物を構築する際に,連続的にコンクリートを薄く広範囲に流
動し充塡させる必要のある地上式 LNG タンクの防液堤に適用した結果を示した.
(1) ブリーディングが少なく,単位粗骨材かさ容積を適切に設定した中流動コンクリートは,限
られた打込み個所からコンクリートを打ち込んでも,5~10m にわたりコンクリート自体の流
動性により流動することが可能であり,流動停止後に補助的にバイブレータにより締め固め
ることで密実に充塡できる.
(2) 材料分離抵抗性に優れた中流動コンクリートは,流動に伴うコンクリートの品質低下はほと
んど生じず,均質性に優れたコンクリート構造物が構築できるとともに,美観性の向上にも
寄与できる.
(3) 表面水率の定期的な測定など,従来の普通コンクリートと同様の製造管理を行うことで,設
備を追加することなく,一般的なレディーミクストコンクリート工場および現場バッチャー
プラントにおいて,通年にわたり,品質の安定したコンクリートを製造できる.
以上の結果を総括すると,本研究で提案した使用材料の物理的性質や配合条件に基づくモルタ
ルの自由水量の予測モデルと流動性の予測手法,ならびに流動性のレベルや配筋条件に応じた単
位粗骨材かさ容積の設定手法を用いることで,流動性のレベルを考慮しつつ,ブリーディングの
少ない材料分離抵抗性に優れたコンクリートの配合設計が行えるとともに,このようなコンクリ
ートを用いることで均質性に優れたコンクリート構造物を合理的に構築することができる.
219
第9章
結論
9.2 今後の課題
本研究では,今後も人々に安心・安全な生活を提供するための社会基盤整備を着実に行ってい
く上では,耐久性に優れたコンクリート構造物を合理的に構築することが重要との観点に立ち,
その一助となるために,材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮できるコンクリートの配合設計法
を開発した.提案した配合設計法をこれから広く活用していく上で検討すべき課題,ならびに耐
久的なコンクリート構造物を合理的に構築していくための課題を以下に示す.
①ブリーディングが多量に発生する配合条件における予測精度の向上
本研究で提案した自由水量の予測モデルは,セメントが水中に均等に分散している状態を前提
としているため,この前提条件が崩れるような配合条件では,予測モデルにより得られる自由水
量の計算値が,ブリーディング試験により得られるブリーディング水量の実測値に対して小さく
算出される場合がある.セメントと水が均質な状態で存在できる範囲を明確に把握できていない
ことが原因である.セメントと水との均質性が崩れるのは,配合条件が示方書などの規定(水セメ
ント比や単位水量の上限)の範囲外の場合であることを確認しており,実用上は大きな問題はない
と考えられるが,ブリーディングの多いコンクリートを用いると構造物の耐久性の低下を招くた
め,万が一にも,このようなコンクリートが適用されないためにも,セメントと水とが均質に存
在できる状態の限界値を見出し,本モデルに組み込むことが必要である.
②物理モデルによる単位粗骨材かさ容積の設定方法の構築
本研究では,単位粗骨材かさ容積は,規準類や各地のレディーミクストコンクリート工場の調
査結果ならびに実験結果に基づき,流動性のレベルや配筋条件に応じて設定する手法を提案した.
この手法は合理的であるが,理論的に導き出されたものではない.後述するコンピュータによる
シミュレーションを行う上では,粗骨材の物理的性質に基づく理論的なモデルにより,モルタル
と粗骨材との材料分離を抑制するために,単位粗骨材かさ容積をどのように設定すべきかを算定
できる手法を確立する必要があると考えられる.
③練り混ぜ方法や時間経過に伴う流動性の変化の推定の導入
本研究では,ペーストおよびモルタルの流動性や自由水量の推定の検証実験において,同一の
練混ぜ量や練り混ぜ方法で検討を行っている.3 章の検証において,練り混ぜ時間が長くなると
ブリーディング水量が低下することを確認しているが,予測モデルにはその影響は考慮されてい
ない.一方,コンクリートは時間経過に伴い徐々に流動性が低下し,いずれ凝結を迎える.しか
し,本研究では,時間経過に伴う流動性の変化については考慮していない.
練り混ぜ方法の相違や時間経過に伴う流動性の変化は,本研究の考え方に基づけば,セメント
の分散・凝集の程度が相違しているためと考えられる.実施工において,不具合のないコンクリ
ートを提供するには,これらの要因に伴う流動性や自由水量の変化についても考慮できることが
望ましい.そのため,本研究で提案した予測モデルに,これらの要因を導入することも今後の検
討課題といえる.
220
第9章
結論
④高性能 AE 減水剤(増粘剤一液タイプ)による材料分離抑制効果の導入
本研究では,高性能 AE 減水剤によるセメントの分散効果を考慮することで流動性レベルを考
慮しつつブリーディングの少ない配合条件を見出す予測モデルを提案した.また,AE 減水剤を用
いた場合にも,本研究で提案した手法により,目標とする流動性を有するコンクリート配合を選
定でき,ブリーディング水量が推定できることを確認した.一方で,8 章の実工事への適用にお
いて,一部の工事で用いたように,近年では,増粘剤成分を含有した高性能 AE 減水剤(正式名
称は,高性能 AE 減水剤(増粘剤一液タイプ))が複数の混和剤メーカから市販され,実工事に適用
されている.これまでの実験的な検討に基づくと,増粘剤を混和した高性能 AE 減水剤を用いる
ことで,それを用いない場合に比べて,より少ないセメント量で材料分離抵抗性が確保できるこ
とが確認されている.
しかしながら,そのメカニズムについてはほとんど明らかにされていない.より合理的に耐久
的なコンクリート構造物を構築する上では,セメント量は少ないことが望ましく,この混和剤に
よる材料分離抑制効果を表現できる物理モデルの構築が望まれる.
⑤耐久的なコンクリート構造物を合理的に構築していくための課題
本研究で提案した配合設計法を用いることで材料分離抵抗性と流動性を適切に考慮したコンク
リート配合を選定することが可能である.しかし,耐久性に優れたコンクリート構造物を合理的
に構築していく上では,優れた材料を用いるだけでなく,対象とする構造物の部材形状や配筋条
件に応じて,適切なコンクリートの打込み・締固め作業を行うことが不可欠である.今日ではコ
ンピュータ技術が発達し,地震や津波の予測など複雑なシミュレーション解析も可能となってい
る.コンクリート工事においても,使用するコンクリートの性能,対象とする構造物の構造条件,
および施工条件等を考慮した施工シミュレーションシステムを構築し,施工前に検証することで,
はじめて施工欠陥のない耐久的なコンクリート構造物が確実に構築できるものと考えられる.
221
謝辞
謝辞
本論文は,私が長岡技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程材料工学専攻において研究し
た成果を取りまとめたものです.
まず,お忙しい中,本論文を審査いただきました長岡技術科学大学環境・建設系
授,大塚悟教授,高橋修教授,下村匠教授,新潟大学工学部建設学科
丸山久一教
佐伯竜彦教授に厚くお礼
申し上げます.
丸山久一教授には,私が長岡工業高等専門学校および長岡技術科学大学の学部・修士課程の学
生であった当時よりご指導を賜り,コンクリートの基礎や研究の進め方から,大林組の入社にお
ける指導教官としてもご指導をいただきました.社会人として 10 数年を経たのち,再び先生のも
とで論文を取りまとめる機会をいただくことができ深く感謝しております.本論文の要となるモ
ルタルにおける自由水量の予測モデルおよび流動性の予測手法の構築に際しては,多くのご教鞭
をいただきました.
「研究とは自然現象と整合する物理モデルを用いて,ものごとの本質に少しで
も近づくことである」
,「本当の意味での本質が分かったとき,それは意外と単純であることが多
い」など,研究に対する考え方を多くご教授いただきました.深くお礼申し上げます.
株式会社大林組 技術本部技術研究所
汐川孝所長,松田隆副所長,勝俣英雄副所長には本研
究の実施および取りまとめを行う機会をいただきました.ありがとうございました.
同生産技術研究部
一瀬賢一部長には,本論文を取りまとめるにあたり,業務の調整を行って
いただくとともに,終始励ましの言葉をかけていただきました.ありがとうございました.また,
竹田宣典主席技師,近松竜一主席技師,平田隆祥担当課長を始め多くの方々に,ご支援・ご指導
をいただきました.ありがとうございました.
近松竜一主席技師には,私が技術研究所に配属されて以来,研究所の職員としての業務の進め
方,報告書や論文の書き方,発注機関や現場との折衝など,常に丁寧なご指導を賜りました.ま
た,コンクリートの配合設計に関する考え方についても広くご教授をいただきました.本論文を
取りまとめる際におきましても,業務の調整で格別の配慮をしていただくとともに,論文の内容
について貴重なご助言をいただきました.ありがとうございました.
本論文で提案したモデルを検証する際には,生産技術研究部の方々にご協力いただくとともに,
研究スタッフの永島明夫氏,山野義貞氏,小野敏昭氏,谷原和義氏,四十萬寛郎氏,杉本淳氏に
多くの実験を行っていただきました.ありがとうございました.
株式会社大林組 土木本部生産技術本部トンネル技術部
中間祥二部長,秋好賢治課長,西浦
秀明担当課長(現大阪本店天ヶ瀬減勢池部 JV 工事事務所工事長)をはじめとするトンネル技術部の
方々,同技術第一部 新村亮上級主席技師,上垣義明課長をはじめとする技術第一部の方々には,
中流動コンクリートの開発・実用化に際して多くのご配慮,ご指導をいただきました.ありがと
うございました.
中流動コンクリートの実工事への適用に際しては,札幌支店大夕張西 JV 工事事務所に在籍して
おられた白旗秀紀氏(現名古屋支店新名神野登 JV 工事事務所副所長),柏原宏輔氏(現大阪本店見草
223
謝辞
トンネル工事事務所主任),九州支店津奈木トンネル工事事務所に在籍しておられた松野徹氏(現ト
ンネル技術部担当部長),泉水大輔氏(現トンネル技術部副課長),大阪本店大阪ガス泉北工事事務
所の畑修二所長,川島宏幸工事長をはじめとする多くの方々にご協力をいただきました.ありが
とうございました.このほかにも,九州支店赤尾第一トンネル工事事務所,名古屋支店第二東名
稲木工事事務所,名古屋支店第二東名雁峰工事事務所,東京本店樽峠トンネル工事事務所,東京
本店黒目川 JV 工事事務所,東京本店成田木の根 T 補強工事事務所,札幌支店釧路 LNG 工事事務
所,札幌支店新茂辺地西 JV 工事事務所など多くの施工現場の方々からご協力をいただきました.
ありがとうございました.
私が入社以来,約 6 年間にわたるトンネル現場の配属時には,岩本俊一氏(現大阪本店見草トン
ネル工事事務所所長),五十嵐正剛氏(現北陸支店)を始め多くの先輩方にご指導をいただきました.
今回,このような論文としてまとめることができましたのも,トンネル現場配属時に多くの方々
から,施工管理の方法や現状の問題点などをご指導頂いた賜物であり,深く感謝しております.
広島工業大学 十河茂幸教授には,大林組技術研究所の副所長として在職中の頃より,常に暖
かいお言葉をかけていただきました.ありがとうございました.徳島大学 橋本親典教授,東京
大学
岸利治教授をはじめ多くの先生方からは,委員会活動を通して多くのご指導をいただきま
した.ありがとうございました.また,長岡技術科学大学の先輩である鹿島建設株式会社
坂田
昇博士をはじめ多くの同業他社の方々からもご指導をいただきました.ありがとうございました.
中流動コンクリートの配合を試し練りにより選定する際には,日本各地のレディーミクストコ
ンクリート工場の方々にご協力をいただくとともに,花王株式会社
ン株式会社
阿合延明氏,竹本油脂株式会社
玉石竜介氏,BASF ジャパ
原田健二氏,フローリック株式会社
梶本浩史氏
をはじめとする多くの混和剤メーカの方々にご指導・ご協力をいただきました.ありがとうござ
いました.また,本研究で使用した粉体の粒度分布は,三菱マテリアル株式会社セメント研究所
中里剛氏に測定を行っていただきました.ありがとうございました.
長岡工業高等専門学校環境都市工学科
故佐藤國雄教授には,私が同校在学中に,コンクリー
トに関する勉強を始めるきっかけを与えていただくとともに,コンクリートの基本事項に関して
多くのご教鞭をいただきました.20 年近くの時間を要しましたが,ようやくコンクリートに関す
る博士論文を取りまとめることができました.ありがとうございました.
最後に,業務や論文の取りまとめのために,週末もほとんど留守にしていた私の健康を常に気
遣い支えてくれた妻 千晶に深く感謝します.また,私を育て,常に陰ながら支えてくれた両親
と弟,そして妻の家族に感謝します.
224
論文リスト
本研究に関連した論文リスト
1.査読付き論文
1)
桜井邦昭,丸山久一,近松竜一:セメントの凝集や細骨材による拘束水量を考慮したブリー
ディングの予測モデル,土木学会論文集 E2,Vol.69,No.3,pp.295-308,2013.
2)
Sakurai, K.,Maruyama, K. and Chikamatsu, R.:Influence of mix proportions on the segregation
resistance of flowable concrete,Third International Concrete on Sustainable Construction Materials
and Technologies(SCMT3),2013.
3)
桜井邦昭,近松竜一:振動作用下におけるコンクリートの充てん性の評価に関する検討,コ
ンクリート工学年次論文集,Vol.31,No.1,pp.1387-1392,2009
4)
桜井邦昭,近松竜一,谷口信博,秋好賢治:増粘剤を用いた中流動コンクリートのトンネル
覆工への適用性に関する検討,コンクリート工学年次論文集,Vol.32,No.1,pp.1301-1306,
2010
5)
桜井邦昭,近松竜一,谷口信博,秋好賢治:トンネル覆工用増粘剤系中流動コンクリートの
実用化検討,コンクリート工学年次論文集,Vol.33,No.1,pp.1343-1348,2011
6)
桜井邦昭,近松竜一:加振併用型の高流動コンクリートの材料分離抵抗性の評価に関する一
考察,コンクリート工学年次論文集,Vol.34,No.1,pp.1180-1185,2012
7)
桜井邦昭,近松竜一:中流動コンクリートの合理的な配合設計方法に関する一提案,コンク
リート工学年次論文集,Vol.35,No.1,pp.1225-1230,2013
2.参考論文
8)
中間祥二,谷藤義弘,森俊介,桜井邦昭:中流動コンクリートを用いたトンネル覆工の施工
―北海道横断自動車道 久留喜トンネル―,コンクリート工学,Vol.48,No.6,pp.25-30,2010.6
9)
諏訪薗和彦,松野徹,泉水大輔,桜井邦昭:増粘剤系中流動コンクリートによるトンネル覆
工の施工―南九州西回り自動車道
津奈木トンネル(仮称)―,コンクリート工学,Vol.50,
No.4,pp.366-371,2012.4
10) 村崎慎一,森俊介,中間祥二,桜井邦昭:トンネル全線に中流動コンクリートを適用し高品
質覆工に挑戦―北海道横断自動車道
久留喜トンネル―,トンネルと地下,Vol.41,No.12,
pp.7-16,2010.12
225
添付資料
添付資料
ここでは,本研究に関して実施した実験のうち,本文中に記載していない以下の実験データを
示す.
3 章 モルタルにおける自由水量の推定
添付資料-1 各種粉体の粒度分布測定結果
添付資料-2 各種粉体の凝集前後の粒度分布の変化
添付資料-3 各種粉体を用いたペーストのフローおよびブリーディング試験結果
添付資料-4 温度条件を変化させたペーストのフローおよびブリーディング試験結果
添付資料-5 細骨材の拘束水比を算出するためのモルタル実験結果
4 章 高性能 AE 減水剤を用いたモルタルの自由水量の推定
添付資料-6 温度条件を変化させた高性能 AE 減水剤を用いたペースト実験結果
6 章 単位粗骨材かさ容積の影響
添付資料-7 コンクリートのブリーディング特性に及ぼすモルタル品質の影響に関する実験
添付資料-8 配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の設定方法に関する検討実験
7章 材料分離抵抗性と流動性を考慮したコンクリートの配合設計法
添付資料-9 AE 減水剤を用いたペーストのフローおよびブリーディング試験結果
添付-1
添付資料
添付資料-1 各種粉体の粒度分布測定結果
本研究で使用した各種粉体の粒度分布測定結果を付表-1 に示す.
付表-1 各種粉体の粒度分布測定結果
試料名
粒子径(μm)
普通
ポルトランドセメント
積算(%)
頻度(%)
高炉セメントB種
積算(%)
頻度(%)
石灰石微粉末
積算(%)
頻度(%)
フライアッシュ
積算(%)
頻度(%)
1000.00
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
811.98
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
659.30
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
535.34
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
434.68
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
352.95
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
286.59
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
232.70
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
188.95
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.0
153.42
100.0
0.0
100.0
0.0
100.0
0.2
100.0
0.0
124.57
100.0
0.0
100.0
0.0
99.8
1.1
100.0
0.0
101.15
100.0
0.5
100.0
0.0
98.7
0.2
100.0
1.0
82.13
99.5
2.2
100.0
0.7
98.5
0.4
99.0
0.3
66.69
97.4
4.3
99.3
1.2
98.1
1.3
98.7
0.0
54.15
93.1
6.3
98.1
1.6
96.9
2.2
98.7
0.0
43.97
86.8
7.9
96.4
2.3
94.7
3.0
98.6
0.6
35.70
78.9
8.7
94.1
3.3
91.7
3.8
98.1
2.2
28.99
70.2
9.1
90.7
4.6
87.9
4.8
95.8
4.4
23.54
61.1
8.8
86.2
5.9
83.1
6.3
91.4
6.4
19.11
52.3
7.9
80.2
6.8
76.8
7.5
85.0
7.6
15.52
44.4
6.5
73.4
7.0
69.3
8.0
77.4
7.8
12.60
37.9
4.8
66.4
7.0
61.3
7.9
69.6
7.7
10.23
33.2
4.6
59.4
7.8
53.4
8.3
61.8
8.3
8.31
28.6
4.3
51.6
7.2
45.0
7.5
53.5
8.0
6.75
24.3
3.3
44.4
5.9
37.6
5.9
45.4
6.9
5.48
21.0
2.5
38.5
5.2
31.6
4.8
38.6
6.0
4.45
18.4
2.7
33.4
5.5
26.8
4.4
32.6
5.8
3.61
15.7
2.4
27.9
4.9
22.4
3.7
26.8
5.0
2.93
13.4
1.7
23.0
3.7
18.7
3.0
21.8
4.2
2.38
11.7
1.8
19.3
3.5
15.6
2.6
17.6
4.1
1.93
9.8
1.6
15.8
3.4
13.1
2.4
13.5
3.7
1.57
8.3
1.0
12.4
2.8
10.6
2.4
9.8
2.9
1.28
7.3
1.2
9.6
2.2
8.2
2.3
6.9
2.1
1.04
6.1
1.7
7.4
2.2
6.0
1.9
4.8
2.2
0.84
4.4
1.1
5.2
2.2
4.1
1.2
2.6
1.7
0.68
3.3
0.3
3.1
1.8
2.9
0.6
0.9
0.7
0.55
3.0
0.0
1.2
0.9
2.3
0.5
0.3
0.1
0.45
3.0
0.5
0.3
0.3
1.8
0.8
0.2
0.2
0.37
2.5
2.2
0.0
0.0
1.0
0.9
0.0
0.0
0.30
0.3
0.3
0.0
0.0
0.1
0.1
0.0
0.0
0.24
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.20
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.16
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.13
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.11
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.09
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.07
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.06
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
添付-2
添付資料
添付資料-2 各種粉体の凝集前後の粒度分布の変化
本研究で用いた普通ポルトランドセメントの各水粉体比における凝集後の粒度分布の計算結果
を付表-2 に示す.
付表-2 各水粉体比における凝集後の粒度分布の計算結果(普通ポルトランドセメント)
普通ポルトランドセメント
凝集後
凝集前
W/P25%
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
101.15
82.13
66.69
54.15
43.97
35.70
28.99
23.54
19.11
15.52
12.60
10.23
8.31
6.75
5.48
4.45
3.61
2.93
2.38
1.93
1.57
1.28
1.04
0.84
0.68
0.55
0.45
0.37
0.30
0.24
0.20
0.16
0.13
0.11
0.09
0.07
0.06
累積
(%)
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
99.5
97.4
93.1
86.8
78.9
70.2
61.1
52.3
44.4
37.9
33.2
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3.0
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0.0
0.0
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0.0
0.0
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添付-3
W/P40%
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188.95
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101.15
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0.0
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W/P45%
粒子径
(μm)
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累積
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W/P50%
粒子径
(μm)
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188.95
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101.15
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18.94
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33.8
5.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
添付資料
本研究で用いた高炉セメント B 種の各水粉体比における凝集後の粒度分布の計算結果を付表-
3 に示す.
付表-3 各水粉体比における凝集後の粒度分布の計算結果(高炉セメント B 種)
高炉セメントB種
凝集後
凝集前
W/P25%
粒子径
(μm)
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188.95
153.42
124.57
101.15
82.13
66.69
54.15
43.97
35.70
28.99
23.54
19.11
15.52
12.60
10.23
8.31
6.75
5.48
4.45
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累積
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19.3
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5.2
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0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
131.96
123.11
114.85
107.15
99.96
93.26
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81.17
75.72
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65.90
61.48
57.36
53.51
49.92
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37.82
35.28
32.91
30.71
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18.88
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累積
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100.0
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W/P30%
粒子径
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659.30
535.34
434.68
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286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
109.99
102.61
95.73
89.30
83.32
77.73
72.51
67.65
63.11
58.88
54.93
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47.81
44.60
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36.21
33.79
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W/P35%
粒子径
(μm)
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811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
101.15
91.76
85.60
79.86
74.50
69.51
64.84
60.49
56.44
52.65
49.12
45.82
42.75
39.89
37.21
34.71
32.38
30.21
28.19
26.30
24.53
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19.92
18.58
17.34
16.18
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99.8
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82.6
78.9
74.1
68.9
63.9
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添付-4
W/P40%
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
101.15
83.97
78.34
73.08
68.18
63.61
59.34
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44.95
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47.75
44.54
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粒子径
(μm)
1000.00
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659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
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0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
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添付資料
本研究で用いた石灰石微粉末の各水粉体比における凝集後の粒度分布の計算結果を付表-4 に
示す.
付表-4 各水粉体比における凝集後の粒度分布の計算結果(石灰石微粉末)
石灰石微粉末
凝集後
凝集前
W/P25%
粒子径
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153.42
124.57
101.15
82.13
66.69
54.15
43.97
35.70
28.99
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19.11
15.52
12.60
10.23
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535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
135.67
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99.9
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99.9
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188.95
153.42
124.57
101.15
94.33
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62.20
58.02
54.13
50.50
47.11
43.95
41.01
38.25
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19.10
17.82
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99.9
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0.0
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0.0
0.0
添付-5
W/P40%
粒子径
(μm)
1000.00
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659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
101.15
86.38
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56.95
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20.10
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101.15
82.13
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28.19
26.30
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19.92
18.59
17.34
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15.09
14.08
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粒子径
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1000.00
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286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
101.15
82.13
69.47
64.81
60.46
56.40
52.62
49.09
45.80
42.73
39.86
37.19
34.69
32.37
30.19
28.17
26.28
24.52
22.87
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19.91
18.57
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15.08
14.07
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累積
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76.3
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67.8
63.5
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26.6
22.7
18.8
11.8
1.5
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
添付資料
本研究で用いたフライアッシュの各水粉体比における凝集後の粒度分布の計算結果を付表-5
に示す.
付表-5 各水粉体比における凝集後の粒度分布の計算結果(フライアッシュ)
フライアッシュ
凝集後
凝集前
W/P25%
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
101.15
82.13
66.69
54.15
43.97
35.70
28.99
23.54
19.11
15.52
12.60
10.23
8.31
6.75
5.48
4.45
3.61
2.93
2.38
1.93
1.57
1.28
1.04
0.84
0.68
0.55
0.45
0.37
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0.16
0.13
0.11
0.09
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累積
(%)
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
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100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
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98.7
98.7
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69.6
61.8
53.5
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38.6
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26.8
21.8
17.6
13.5
9.8
6.9
4.8
2.6
0.9
0.3
0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
154.87
144.48
134.79
125.75
117.32
109.45
102.11
95.26
88.87
82.91
77.35
72.16
67.32
62.80
58.59
54.66
50.99
47.57
44.38
41.41
38.63
36.04
33.62
31.37
29.26
27.30
25.46
23.76
22.17
20.67
19.30
18.00
16.80
15.67
14.62
13.65
12.72
11.87
11.07
累積
(%)
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
99.9
99.9
99.9
99.9
99.6
98.9
97.7
96.0
93.8
91.1
87.5
83.3
78.8
74.1
68.4
62.3
56.0
48.6
40.2
32.2
24.8
15.7
6.8
2.5
2.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
W/P30%
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
127.87
119.29
111.29
103.82
96.86
90.36
84.30
78.65
73.37
68.45
63.86
59.58
55.58
51.85
48.38
45.13
42.10
39.28
36.64
34.19
31.89
29.76
27.76
25.90
24.16
22.54
21.03
19.62
18.30
17.08
15.93
14.87
13.87
12.94
12.08
11.26
10.50
9.80
累積
(%)
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
99.9
99.9
99.9
99.9
99.6
98.9
97.7
96.0
93.8
91.1
87.5
83.3
78.8
74.1
68.4
62.3
56.0
48.6
40.2
32.2
24.8
15.7
6.8
2.5
2.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
W/P35%
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
107.74
100.51
93.77
87.48
81.61
76.14
71.03
66.27
61.82
57.68
53.81
50.20
46.83
43.69
40.76
38.03
35.48
33.10
30.88
28.80
26.88
25.07
23.39
21.82
20.35
18.99
17.72
16.53
15.43
14.39
13.43
12.53
11.68
10.91
10.17
9.48
8.85
累積
(%)
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
99.9
99.9
99.9
99.9
99.6
98.9
97.7
96.0
93.8
91.1
87.5
83.3
78.8
74.1
68.4
62.3
56.0
48.6
40.2
32.2
24.8
15.7
6.8
2.5
2.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
添付-6
W/P40%
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
101.15
91.87
85.71
79.96
74.60
69.60
64.93
60.57
56.51
52.72
49.18
45.88
42.81
39.94
37.26
34.76
32.43
30.25
28.22
26.33
24.57
22.92
21.38
19.94
18.60
17.36
16.20
15.11
14.10
13.15
12.28
11.45
10.68
9.97
9.29
8.67
8.09
累積
(%)
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
99.9
99.9
99.9
99.9
99.6
98.9
97.7
96.0
93.8
91.1
87.5
83.3
78.8
74.1
68.4
62.3
56.0
48.6
40.2
32.2
24.8
15.7
6.8
2.5
2.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
W/P45%
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
101.15
85.01
79.31
73.99
69.03
64.40
60.08
56.05
52.29
48.78
45.51
42.46
39.61
36.95
34.47
32.16
30.00
27.99
26.11
24.36
22.73
21.21
19.78
18.45
17.21
16.06
14.99
13.98
13.05
12.17
11.36
10.60
9.88
9.23
8.60
8.02
7.48
累積
(%)
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
99.9
99.9
99.6
99.0
97.8
96.0
93.8
91.1
87.6
83.3
78.9
74.1
68.4
62.3
56.0
48.6
40.2
32.2
24.8
15.7
6.8
2.5
2.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
W/P50%
粒子径
(μm)
1000.00
811.98
659.30
535.34
434.68
352.95
286.59
232.70
188.95
153.42
124.57
101.15
82.13
73.95
68.99
64.36
60.05
56.02
52.26
48.76
45.49
42.44
39.59
36.93
34.46
32.14
29.99
27.98
26.10
24.35
22.72
21.19
19.77
18.45
17.21
16.05
14.98
13.97
13.03
12.17
11.35
10.59
9.88
9.21
8.60
8.02
7.48
6.98
累積
(%)
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
99.9
99.6
99.0
97.8
96.0
93.8
91.1
87.6
83.3
78.9
74.1
68.4
62.3
56.0
48.6
40.2
32.2
24.8
15.7
6.8
2.5
2.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
添付資料
100
普通ポルトランドセメント
累積百分率(%)
80
60
40
凝集前
凝集後W/P25%
凝集後W/P30%
凝集後W/P35%
凝集後W/P40%
凝集後W/P45%
凝集後W/P50%
20
0
0.01
0.1
1
粒子径(μ m)
10
100
付図-1 各水粉体比における凝集後の粒度分布(普通ポルトランドセメント)
100
高炉セメントB種
累積百分率(%)
80
60
40
凝集前
凝集後W/P25%
凝集後W/P30%
凝集後W/P35%
凝集後W/P40%
凝集後W/P45%
凝集後W/P50%
20
0
0.01
0.1
1
粒子径(μ m)
10
100
付図-2 各水粉体比における凝集後の粒度分布(高炉セメント B 種)
100
石灰石微粉末
累積百分率(%)
80
60
40
凝集前
凝集後W/P25%
凝集後W/P30%
凝集後W/P35%
凝集後W/P40%
凝集後W/P45%
凝集後W/P50%
20
0
0.01
0.1
1
粒子径(μ m)
10
100
付図-3 各水粉体比における凝集後の粒度分布(石灰石微粉末)
添付-7
添付資料
100
フライアッシュ
累積百分率(%)
80
60
40
凝集前
凝集後W/P25%
凝集後W/P30%
凝集後W/P35%
凝集後W/P40%
凝集後W/P45%
凝集後W/P50%
20
0
0.01
0.1
1
粒子径(μ m)
10
100
付図-4 各水粉体比における凝集後の粒度分布(フライアッシュ)
添付-8
添付資料
添付資料-3 各種粉体を用いたペーストのフローおよびブリーディング試験結果
各種粉体を用いた,高性能 AE 減水剤を用いないペーストのフローおよびブリーディング試験
結果を付表-6 に示す.
付表-6 各種粉体を用いたペーストのフローおよびブリーディング試験結果
(高性能 AE 減水剤を用いない場合)
配合条件
No.
粉体
種類
温度
条件
(℃)
単位量(kg/m3 )
Vp
Va
Vs
1000
67
0
0
1000
67
0
1000
67
1000
5
W/C
Vs/Vm
(%)
(L/m3 ) (L/m3 ) (L/m3 )
高性能
AE
減水剤
添加率
(C×%)
試験結果
練混
ブリー
ぜ量 フロー ディング 温度
値
(L)
水量
(℃)
(mm)
(kg/m3 )
W
C
S
25.0
441
1765
0
0
105
0.2
27.5
0
30.0
487
1622
0
0
111
1.8
21.3
0
0
35.0
525
1500
0
0
138
10.7
20.7
67
0
0
40.0
558
1396
0
0
186
25.2
21.0
1000
67
0
0
45.0
587
1305
0
0
221
45.6
20.4
6
1000
67
0
0
50.0
612
1225
0
0
247
62.3
20.7
7
1000
67
0
0
25.0
432
1727
0
0
104
0.0
20.8
8
1000
67
0
0
30.0
477
1590
0
0
110
2.9
21.0
1000
67
0
0
35.0
516
1473
0
0
123
8.5
20.6
1000
67
0
0
40.0
549
1372
0
0
165
15.0
20.0
11
1000
67
0
0
45.0
578
1284
0
0
193
27.4
19.8
12
1000
67
0
0
50.0
603
1206
0
0
227
39.0
19.8
1
2
3
4
9
10
普通
ポルト
ランド
セメント
高炉
セメント
B種
20
20
2
13
1000
67
0
0
25.0
405
1619
0
0
109
11.1
19.8
14
1000
67
0
0
30.0
449
1498
0
0
130
23.8
19.4
1000
67
0
0
35.0
488
1393
0
0
191
36.4
19.3
1000
67
0
0
40.0
521
1303
0
0
244
57.3
19.2
17
1000
67
0
0
45.0
550
1223
0
0
293
84.7
19.2
18
1000
67
0
0
50.0
576
1153
0
0
303
106.7
19.0
19
1000
67
0
0
25.0
371
1484
0
0
101
0.0
21.0
20
1000
67
0
0
30.0
415
1382
0
0
107
1.4
18.9
1000
67
0
0
35.0
452
1292
0
0
151
4.8
18.2
1000
67
0
0
40.0
486
1214
0
0
214
11.0
19.0
23
1000
67
0
0
45.0
515
1145
0
0
264
17.0
18.5
24
1000
67
0
0
50.0
541
1083
0
0
302
21.7
19.0
15
16
21
22
石灰石
微粉末
フライ
アッシュ
20
20
添付-9
添付資料
添付資料-4 温度条件を変化させたペーストのフローおよびブリーディング試験結果
温度条件を変化させたペーストのフローおよびブリーディング試験結果を付表-7 に示す.
付表-7 温度条件を変化させたペーストのフローおよびブリーディング試験結果
(高性能 AE 減水剤を用いない場合)
配合条件
No.
粉体
種類
温度
条件
(℃)
単位量(kg/m3 )
Vp
Va
Vs
1
1000
67
0
0
2
1000
67
0
1000
67
4
1000
5
W/C
Vs/Vm
(%)
(L/m3 ) (L/m3 ) (L/m3 )
高性能
AE
減水剤
添加率
(C×%)
試験結果
練混
ブリー
ぜ量 フロー ディング 温度
値
(L)
水量
(℃)
(mm)
(kg/m3 )
W
C
S
25.0
441
1765
0
0
104
0.2
20.7
0
30.0
487
1622
0
0
112
4.8
20.4
0
0
35.0
525
1500
0
0
144
12.8
20.4
67
0
0
40.0
558
1396
0
0
187
23.9
20.7
1000
67
0
0
45.0
587
1305
0
0
225
38.5
21.0
6
1000
67
0
0
50.0
612
1225
0
0
259
55.4
20.4
7
1000
67
0
0
25.0
441
1765
0
0
103
0.0
11.5
1000
67
0
0
30.0
487
1622
0
0
113
4.8
10.8
1000
67
0
0
35.0
525
1500
0
0
158
15.5
10.2
3
20
8
9
10
普通
ポルト
ランド
セメント
10
2
1000
67
0
0
40.0
558
1396
0
0
203
26.4
10.0
11
1000
67
0
0
45.0
587
1305
0
0
248
40.0
9.8
12
1000
67
0
0
50.0
612
1225
0
0
283
57.3
9.7
13
1000
67
0
0
25.0
441
1765
0
0
102
0.0
31.0
14
1000
67
0
0
30.0
487
1622
0
0
109
0.0
31.0
1000
67
0
0
35.0
525
1500
0
0
131
4.8
30.0
16
1000
67
0
0
40.0
558
1396
0
0
173
12.4
29.5
17
1000
67
0
0
45.0
587
1305
0
0
209
27.2
29.0
18
1000
67
0
0
50.0
612
1225
0
0
243
47.7
30.4
15
30
添付-10
添付資料
添付資料-5 細骨材の拘束水比を算出するためのモルタル実験結果
細骨材の拘束水比を把握するために実施したモルタルフロー試験結果を付表-8 に示す.
付表-8 各種細骨材を用いたモルタルのフロー試験結果
(細骨材の拘束水比の検討)
配合条件
単位容積(L/m3 )
細骨材
細骨材 密度 細骨材 水粉体
No.
Vp
Va
Vw
Vc
Vm
の種類
容積比 容積比
3
3
3
3
3
(g/cm3 )
(L/m
)
(L/m
)
(L/m
)
(L/m
)
(L/m
)
V S /V m V W /V P
1
単位量(kg/m3 )
W
C
S
フロー試験結果
練混
ぜ量
(L)
フロー
(mm)
相対フロー 温度
(℃)
面積比
Τ P or Τ m
-
0.0
1.0
1000
67
467
467
0
467
1474
0
118
0.39
21.1
-
0.0
1.1
1000
67
489
444
0
489
1404
0
143
1.03
21.2
-
0.0
1.2
1000
67
509
424
0
509
1340
0
168
1.81
21.8
-
0.0
1.3
1000
67
527
406
0
527
1282
0
197
2.88
21.3
5
-
0.0
1.4
1000
67
544
389
0
544
1228
0
224
4.02
21.9
6
2.63
0.1
1.0
900
67
417
417
100
417
1316
263
102
0.05
23.2
7
2.63
0.1
1.1
900
67
436
397
100
436
1253
263
132
0.75
22.8
8
2.63
0.1
1.2
900
67
454
379
100
454
1196
263
166
1.74
22.3
9
2.63
0.1
1.3
900
67
471
362
100
471
1144
263
190
2.60
21.9
10
2.63
0.1
1.4
900
67
486
347
100
486
1097
263
219
3.80
22.9
11
2.63
0.2
1.1
800
67
384
349
200
384
1103
526
120
0.45
22.7
12
2.63
0.2
1.2
800
67
400
333
200
400
1053
526
156
1.43
22.5
2.63
0.2
1.3
800
67
414
319
200
414
1007
526
187
2.50
22.2
14
2.63
0.3
1.4
700
67
369
264
300
369
833
789
210
3.41
22.3
15
2.63
0.3
1.1
700
67
332
301
300
332
953
789
107
0.15
22.1
16
2.63
0.3
1.2
700
67
345
288
300
345
909
789
142
1.02
22.3
17
2.63
0.3
1.3
700
67
358
275
300
358
870
789
165
1.72
22.2
18
2.63
0.3
1.4
700
67
369
264
300
369
833
789
194
2.76
21.8
19
2.63
0.3
1.5
700
67
380
253
300
380
800
789
223
3.99
21.7
20
2.56
0.1
1.0
900
67
417
417
100
417
1316
256
109
0.19
22.3
21
2.56
0.1
1.1
900
67
436
397
100
436
1253
256
135
0.82
22.3
22
2.56
0.1
1.2
900
67
454
379
100
454
1196
256
160
1.54
22.4
23
2.56
0.1
1.3
900
67
471
362
100
471
1144
256
189
2.55
22.9
24
2.56
0.1
1.4
900
67
486
347
100
486
1097
256
208
3.31
22.5
25
2.56
0.2
1.1
800
67
384
349
200
384
1103
512
129
0.66
22.2
26
2.56
0.2
1.2
800
67
400
333
200
400
1053
512
157
1.45
21.8
2.56
0.2
1.3
800
67
414
319
200
414
1007
512
182
2.31
22.4
28
2.56
0.2
1.4
800
67
428
305
200
428
965
512
200
2.99
22.1
29
2.56
0.3
1.1
700
67
332
301
300
332
953
768
120
0.43
22.9
30
2.56
0.3
1.2
700
67
345
288
300
345
909
768
151
1.27
22.9
31
2.56
0.3
1.3
700
67
358
275
300
358
870
768
177
2.12
22.2
32
2.56
0.3
1.4
700
67
369
264
300
369
833
768
200
2.98
21.9
33
2.56
0.3
1.5
700
67
380
253
300
380
800
768
217
3.71
21.7
34
2.63
0.1
1.1
900
67
436
397
100
436
1253
263
134
0.81
23.3
35
2.63
0.1
1.2
900
67
454
379
100
454
1196
263
164
1.69
22.8
36
2.63
0.1
1.3
900
67
471
362
100
471
1144
263
190
2.59
22.5
37
2.63
0.1
1.4
900
67
486
347
100
486
1097
263
209
3.37
22.2
38
2.63
0.2
1.1
800
67
384
349
200
384
1103
526
125
0.56
22.8
39
40
41
42
43
44
45
46
2.63
2.63
2.63
2.63
2.63
2.63
2.63
2.63
0.2
0.2
0.2
0.3
0.3
0.3
0.3
0.3
1.2
1.3
1.4
1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
800
800
800
700
700
700
700
700
67
67
67
67
67
67
67
67
400
414
428
332
345
358
369
380
333
319
305
301
288
275
264
253
200
200
200
300
300
300
300
300
400
414
428
332
345
358
369
380
1053
1007
965
953
909
870
833
800
526
526
526
789
789
789
789
789
158
182
199
112
148
169
194
214
1.48
2.31
2.98
0.24
1.18
1.86
2.76
3.58
22.4
22.1
22.0
23.8
22.8
22.1
22.0
21.8
2
3
4
13
27
なし
(ペース
ト)
陸砂
海砂
砕砂
添付-11
2
添付資料
添付資料-6 温度条件を変化させた高性能 AE 減水剤を用いたペースト実験結果
高性能 AE 減水剤を用いたペーストの温度条件を変化させた場合のフローおよびブリーディン
グ試験結果を付表-9 に示す.
付表-9 温度条件を変化させた高性能 AE 減水剤を用いたペースト実験結果
配合条件
No.
粉体
種類
温度
条件
(℃)
単位量(kg/m3 )
Vp
Va
Vs
1
1000
67
0
0
2
1000
67
0
1000
67
4
1000
5
6
W/C
Vs/Vm
(%)
(L/m3 ) (L/m3 ) (L/m3 )
高性能
AE
減水剤
添加率
(C×%)
試験結果
練混
ぜ量
(L)
ブリー
フロー値 ディング 温度
水量
(mm)
(℃)
(kg/m3 )
W
C
S
30
487
1622
0
0.0
111
2.4
21.3
0
30
487
1622
0
0.5
215
2.4
21.5
0
0
30
487
1622
0
1.0
294
1.9
22.0
67
0
0
30
487
1622
0
1.3
336
1.9
20.3
1000
67
0
0
30
487
1622
0
1.5
355
2.0
20.2
1000
67
0
0
30
487
1622
0
0.0
113
4.8
11.8
1000
67
0
0
30
487
1622
0
0.5
217
3.1
11.3
1000
67
0
0
30
487
1622
0
1.0
276
2.4
11.2
1000
67
0
0
30
487
1622
0
1.3
304
1.7
11.5
10
1000
67
0
0
30
487
1622
0
1.5
320
1.7
11.3
11
1000
67
0
0
30
487
1622
0
0.0
109
2.0
31.0
12
1000
67
0
0
30
487
1622
0
0.5
203
2.8
31.4
1000
67
0
0
30
487
1622
0
1.0
312
3.4
31.8
14
1000
67
0
0
30
487
1622
0
1.3
372
1.7
31.4
15
1000
67
0
0
30
487
1622
0
1.5
390
1.7
31.4
20
3
7
8
9
13
普通
ポルト
ランド
セメント
10
30
添付-12
2
添付資料
添付資料-7 コンクリートのブリーディング特性に及ぼすモルタル品質の影響に実験結果
コンクリートのブリーディング特性に及ぼすモルタル品質の影響について検討した実験に用い
たコンクリート配合および各試験結果を付表-10 および付表-11 に示す.
付表-10 コンクリートの配合(モルタル品質の影響の検討実験)
目標
スラ
目標
W/C
No. ンプ 空気量
(%)
フロー (%)
(cm)
1
2
s/a
(%)
細骨材容積
ペースト
容積
Vp
(L/m3 )
絶対
容積
かさ
容積
粗骨材容積
絶対
容積
単位量(kg/m3 )
かさ
容積
W
C
S
G
180
309
939
VS(L/m3 ) (m3 /m3 ) Vg(L/m3 ) (m3 /m3 )
52.7
323
357
0.525
高性能
AE
減水剤
(C×%)
1.1
53.3
315
365
0.536
175
300
959
3
53.7
307
372
0.547
170
292
979
1.6
4
54.2
300
380
0.559
165
283
999
1.8
52.2
331
349
0.514
175
350
919
1.0
52.8
323
357
0.526
170
340
940
1.2
58.3
5
45
4.5
6
7
50.0
320
320
0.54
0.54
1.4
849
53.3
314
366
0.538
165
330
962
8
53.9
306
374
0.550
160
320
983
849
1.5
1.9
9
54.4
298
382
0.561
155
310
1004
2.4
付表-11 試験結果(モルタル品質の影響の検討実験)
コンクリート
スクリーニングモルタル
振動充塡試験(障害条件:R1)
空気量
(%)
ブリー
ディング
率
(%)
漏斗流
下時間
(秒)
43.5
4.9
3.1
6.4
24
1.8
43.5
5.8
3.0
6.5
26
0.7
3
45.5
4.2
2.7
8.0
19
4
43.5
5.0
5.9
14.3
5
47.5
4.9
3.2
4.9
6
48.0
5.2
1.5
7
47.0
5.3
1.6
8
45.0
5.8
9
43.0
6.0
No.
スランプ
フロー
(cm)
1
2
モルタル
フロー
(mm)
ブリー
ディング
率
(%)
漏斗流
下時間
(秒)
-2.4
185
2.0
4.8
-1.9
191
1.6
5.8
3.0
-5.6
185
0.9
7.0
14
7.2
-8.1
133
2.6
15.0
21
2.0
2.3
182
1.1
4.5
5.9
24
3.6
1.3
179
0.6
5.5
8.9
21
2.8
-9.2
184
0.1
8.0
2.5
7.8
15
5.3
-8.0
160
0.5
9.4
6.7
10.1
5
15.0
-16.0
150
1.8
11.5
充塡に
充塡高さ 要した
(cm)
振動時間
(秒)
添付-13
粗骨材
変化率
(%)
添付資料
添付資料-8 配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の設定方法に関する検討実験
配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の設定方法に関する実験に用いたコンクリート配合およ
び各試験結果を付表-12 および付表-13 に示す.
付表-12 コンクリートの配合(配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の検討)
目標
スラ
目標
W/C
No. ンプ 空気量
(%)
フロー (%)
(cm)
s/a
(%)
細骨材容積
ペースト
容積
Vp
(L/m3 )
絶対
容積
粗骨材容積
かさ
容積
絶対
容積
かさ
容積
単位量(kg/m3 )
W
C
S
G
混和剤
(C×%)
VS(L/m3 ) (m3 /m3 ) Vg(L/m3 ) (m3 /m3 )
1
56.2
385
0.57
300
0.51
1013
795
1.7
2
53.3
365
0.54
320
0.54
959
849
1.4
345
0.51
340
0.58
908
901
1.2
3
45
4.5
58.3
315
50.4
175
300
4
47.5
325
0.48
360
0.61
855
954
1.0
5
44.5
305
0.45
380
0.64
802
1007
0.9
付表-13 試験結果(配筋条件に応じた単位粗骨材かさ容積の検討)
スクリーニング
モルタル
コンクリート
No.
スラ
空気
ンプ
量
フロー
(%)
(cm)
振動充塡試験
ブリー
ブリー
充塡に要した 粗骨材変化率
漏斗流
漏斗流
充塡高さ(cm)
ディング
ディング
振動時間(秒)
(%)
下時間
下時間
率
率
(秒)
(秒)
(%)
(%)
ランク ランク ランク ランク ランク ランク ランク
1
2
3
1
2
1
2
1
45.0
4.6
3.2
5.4
13.5
20.5
31.5
4.8
3.1
0.1
-0.2
1.6
8.8
2
46.0
4.0
2.8
6.5
12.5
26.0
31.0
5.8
0.7
-1.9
-1.9
1.2
5.8
3
43.5
5.6
2.8
8.2
14.0
20.5
32.0
7.9
2.1
-8.0
-4.0
0.8
4.8
4
43.8
5.1
4.3
9.4
11.5
16.5
31.0
14.1
3.7
-11.1
-7.6
2.0
2.3
5
45.0
5.3
5.2
11.2
5.5
12.0
31.5
40.9
3.3
-16.9
-7.3
2.6
2.0
添付-14
添付資料
添付資料-9 AE 減水剤を用いたペーストのフローおよびブリーディング試験結果
AE 減水剤を用いたペーストのフローおよびブリーディング試験結果を付表-14 に示す.
付表-14 AE 減水剤を用いたペーストのフローおよびブリーディング実験結果
配合条件
No.
粉体
種類
温度
混和剤の
条件
使用有無
(℃)
Vp
Va
Vs
1
1000
67
0
0
2
1000
67
0
1000
67
1000
3
20
5
7
W/C
Vs/Vm
(%)
(L/m3 ) (L/m3 ) (L/m3 )
AE
減水剤
添加率
(C×%)
練混
ブリー
ぜ量 フロー ディング 温度
値
(L)
水量
(℃)
(mm)
(kg/m3 )
W
C
S
25.0
441
1765
0
0
105
0.2
21.5
0
30.0
487
1622
0
0
111
1.8
21.3
0
0
35.0
525
1500
0
0
138
10.7
20.7
67
0
0
40.0
558
1396
0
0
186
25.2
21.0
1000
67
0
0
45.0
587
1305
0
0
221
45.6
20.4
1000
67
0
0
50.0
612
1225
0
0
247
62.3
20.7
なし
4
6
試験結果
単位量(kg/m3 )
普通
ポルト
ランド
セメント
2
1000
67
0
0
25.0
441
1765
0
0.25
105
0.0
21.2
1000
67
0
0
30.0
487
1622
0
0.25
111
3.7
21.8
1000
67
0
0
35.0
525
1500
0
0.25
161
12.9
22.4
1000
67
0
0
40.0
558
1396
0
0.25
211
25.1
21.7
11
1000
67
0
0
45.0
587
1305
0
0.25
257
43.0
21.2
12
1000
67
0
0
50.0
612
1225
0
0.25
283
60.0
21.7
8
9
20
10
AE
減水剤
添付-15