第１章　五輪中継を隅々まで楽しむ中継のテーマ曲は、その大会の思い出につながる架け橋だ！歌は世につれ、世は歌につれ。昔のヒット曲を耳にすると当時の記憶が甦ったり、ある曲が自分の青春や恋愛とリンクして、思い出を色鮮やかにすることがあります。同じように、五輪の記憶は中継テーマ曲とともに心に刻まれるもの。大会のテーマ曲を耳にすれば、競技の記憶が甦り、栄光や挫折の名場面が脳裏に浮かぶのです。話番号など覚えづらいものを、歌に乗せた語呂合わせで覚えさせるＣＭがありますよね。「ゼ電ロイチニーサン」「サンヨンサンノキューレーロクー」とか。そのほうが記憶をしっかり定着させられるということです。同じように、テーマ曲と競技をリンクさせて記憶すれば、何年後何十年後もしっかりと記憶が残るのです。例えば、近年の夏季大会の主だったテーマ曲は以下のようなものです。どうせ中継を見るなら、思い出話のひとつもしたいもの。物覚えの悪い方は、意識的にテーマ曲を聴くようにしてみてはいかがでしょうか。ａｎｄＳＯＵＬ」（ＮＨＫ中継テーマ曲）【１９８８年ソウル大会】 ●浜田麻里「ＨＥＡＲＴ高音域の力強いシャウトが魅力的。サビの「ハータンソウッ！」の部分は力がこもる。オリンピックらしいメッセージ性、「ソウル」ならではという曲名、力と勇気がこみ上げるメロディ、すべてを兼ね備えた五輪中継テーマ曲史上屈指の名曲。　ＬＯＶＥ」（日本テレビ中継テーマ曲） ●ハウンドドッグ「ＯＮＬＹ１９９１年の世界陸上・東京大会でも中継テーマ曲として使われ、最近ではボクサー・亀田大毅さんが試合後のカラオケ大会でよく歌うことでおなじみの名曲。【１９９２年バルセロナ大会】ＷＩＮＤ」（ＮＨＫ中継テーマ曲） 46 47 ●寺田恵子「ＰＡＲＡＤＩＳＥ「バル女性ロックバンド「ＳＨＯＷＹＡ」のボーカルでもあった寺田さんのソロデビュー曲。セロナ＝太陽＝熱そう！」というイメージを刷り込んだ名曲。 − 第１章　五輪中継を隅々まで楽しむ ●中西保志「千年前から見つめていた」（日本テレビ中継テーマ曲）「もう建築家ガウディの街・バルセロナを「サグラダ・ファミリア建築はいつまでかかるの？」百年経ってるよ」「千年くらいかかるんじゃないの？」とチクリと風刺するかのようなタイトル。五輪中継のテーマ曲にしては珍しいしっとり系の名曲。 ●西田ひかる「ＴＲＵＴＨ」（ＴＢＳ中継テーマ曲）シングル「生きてるって素晴らしい」のカップリング曲。誕生日にネックレスをくれようとする彼氏に対して、そんなものより愛が欲しいの、愛があれば何もいらないのと諭す世界観で、メダルＳＱＵＡＲＥ「ＲＩＳＥ」（フジテレビ中継テーマ曲）よりも大切なものがあると教えてくれた名曲。 ●Ｔマクラーレン・ホンダ＆アイルトン・セナの黄金期を経て、Ｆ１世界選手権がもっとも盛り上がっていた時代だけあって、フジテレビはＦ１中継テーマ曲と同じ流れでＴＳＱＵＡＲＥさんを起用。歌詞がないのでイマイチ記憶が甦らないが、確か名曲。【１９９６年アトランタ大会】 ●大黒摩季「熱くなれ」（ＮＨＫ中継テーマ曲）曲。ＬｏｖｅＹｏｕｒＬｏｖｅ～たったひとりしかいないあなたへ～」（日本テレアトランタ大会のテレビ朝日中継は益子直美さんがメインキャスターをつとめており、ちょうどこの頃、アナウンサーとの交際が発覚したっけなぁ…などと、あの夏の余計な記憶が戻ってくる名 ●杏里「あの夏に戻りたい」（テレビ朝日中継テーマ曲）ことができる名曲。久保田利伸さんの曲に赤坂泰彦さんが歌詞をつけた。アトランタ大会のフジテレビ中継は赤坂泰彦さん、Ｖ６、ＴＯＫＩＯが司会という、やたらガチャガチャしたメンバーだったなぁと振り返る ●ＴＯＫＩＯ「ありがとう…勇気」（フジテレビ中継テーマ曲）されていた、という逸話を毎度思い出させてくれる名曲。谷亮子さんが渡辺美里さんの曲が好きで、自身の披露宴にも招待したものの、スケジュールが合わず美里さんは出席できなかったために、無人の席に「渡辺美里様」という名札だけがポツンと残ビ中継テーマ曲） ●渡辺美里「Ｍｙョンとかは無視して、もっと熱くなれと訴える名曲。大黒摩季さんのヒット曲のひとつ。ただでさえ熱い大会期間中、長距離走出場選手のコンディシ − 48 49 − 第１章　五輪中継を隅々まで楽しむＵ‘ｒｅＤｒｅａｍ」（ＮＨＫ中継テーマ曲）【２０００年シドニー大会】 ●ＺＡＲＤ「ＧｅｔＮＨＫ中継のテーマ曲に起用されたことで、露出の少ないＺＡＲＤが紅白歌合戦に出場するのではないかと騒がれた。結局ＺＡＲＤの紅白出場は体調面の問題で叶わなず、「ＮＨＫ五輪中継テーマ曲」は思ったより紅白とは縁遠いということを示唆することになった名曲。 ●松任谷由実「ＰＡＲＴＮＥＲＳＨＩＰ」（日本テレビ中継テーマ曲）「ユーミンのこの曲覚えてる！」「オリンピックの！」「懐かしいー！」と思って聴いてみたら、それはコッチの曲ではなくアルベールビル五輪の中継テーマ曲「ＨａｐｐｙＢｉｒｔｈｄａｙｔｏ　ＷＩＳＨ」（ＴＢＳ中継テーマ曲）Ｙｏｕ～ヴィーナスの誕生」だった、というカンチガイを頻繁に生む名曲。 ●モーニング娘。「Ｉ谷亮子さん（当時・田村）初の金メダル獲得など、シドニー大会の名場面を多数中継したＴＢＳの中継テーマ曲。センターポジションで眩しく輝いた加護亜依メンバーの名前とかけた曲名となっている。年も経つと世間は大きく変わってしまうんだなぁと、ちょっと寂しい気持ちにさせる名曲。 ●久保田利伸「ポリリズム」（フジテレビ中継テーマ曲）Ｐｅｒｆｕｍｅさんではないほうの名曲。 ●福山雅治「ＨＥＹ！」（テレビ朝日中継テーマ曲）シドニー大会のハイライトである女子マラソン中継において、高橋尚子さんの激走と共に胸に刻まれた。あの沿道にいたのは福山雅治さんであり、「ＬＯＶＥ２０００」を歌ったｈｉｔｏｍｉさんではないということを思い出させてくれる名曲。 ●ニッキー・モンロー／小林幸恵「ＳＵＫＩＹＡＫＩ」（テレビ東京中継テーマ曲）何ひとつ思い出せないが、名曲。【２００４年アテネ大会】 ●ゆず「栄光の架橋」（ＮＨＫ中継テーマ曲）「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ！」という男子体操団体での名実況により、忘れたくても忘れられない印象を残した名曲。 ●嵐「ＨＥＲＯ」（日本テレビ中継テーマ曲）柔道中継にチカラを入れるものの、前回大会金メダリスト・井上康生さんのまさかの敗戦を中継することになり、大会の前後には『愛情イッポン！』なる谷亮子さん出演のドラマを放映するも、ド派手に大コケした二重のショックを思い出させる名曲。 50 51 12 第１章　五輪中継を隅々まで楽しむ ●ＳＭＡＰ「ススメ！」（ＴＢＳ中継テーマ曲）好結果がつづいたアテネ大会でもとりわけイイ場面を中継したＴＢＳの中継テーマ曲。陸上・女子マラソンでの野口みずきさん金メダル獲得、競泳・男子１００メートル平泳ぎでの北島康介さん金メダル獲得など、大会を振り返るのに欠かせない名曲。 ●森山直太朗「今が人生」（フジテレビ中継テーマ曲）バレーボール中継にチカラを入れるフジテレビは、大山加奈さん・栗原恵さんのメグカナコンビで人気沸騰した女子バレー中継などで高視聴率を獲得。そのバックで流れ、「あったかなぁ」くらいには印象に残った名曲。 ●Ｂ ‘ｚ「ＡＲＩＧＡＴＯ」（テレビ朝日中継テーマ曲）テレビ朝日が中継した野球日本代表の３位決定戦でも流れたこの曲。当時は「ありがとー！」という心境にはなれなかったものの、北京五輪を経て改めて振り返ると「やっぱりありがとうだな」という気にさせてくれる名曲。 ●島谷ひとみ「Ｚ！Ｚ！Ｚ！Ｚｉｐ！　Ｚａｐ！　Ｚｉｐａｎｇｕ！」（テレビ東京中継テーマ曲）「そ～れ～は～ぁ～」の歌い出しは、テレビ東京なのに意外と印象に残っている。それもそのはず、この大会でのテレビ東京はレスリング女子を狙い撃ちで中継しており、地上波での決勝中継を４種目とも担当していたのだ。民放最多となる７個のメダル獲得シーンの中継を彩った名曲。【２００８年北京大会】 ●Ｍｒ．Ｃｈｉｌｄｒｅｎ「ＧＩＦＴ」（ＮＨＫ中継テーマ曲）ＮＨＫの五輪中継テーマ曲で、初めてその年の紅白歌合戦にも登場することになった。一番キレイな色は何か、一番光っているものは何か、という疑問に対して「金だろ」「どう考えても金だろ」「金以外は全部負け！」とは答えにくくさせる名曲。 ●嵐「風の向こうへ」（日本テレビ中継テーマ曲）前回アテネ大会につづき嵐を中継テーマに起用した日本テレビは、北京大会ではメインキャスターにも嵐の櫻井翔さんを起用。今をときめくなでしこＪＡＰＡＮの女子サッカー３位決定戦中継などでも流れ、２０１２年へとつながった名曲。 ●ＳＭＡＰ「この瞬間、きっと夢じゃない」（ＴＢＳ中継テーマ曲）前回アテネ大会につづきＳＭＡＰさんを中継テーマに起用したＴＢＳは、北京大会ではメインキャスターにもＳＭＡＰの中居正広さんを起用。野球準決勝など残念な場面を多数放映したＴＢＳの中継に流れていた名曲。 ●レミオロメン「もっと遠くへ」（フジテレビ中継テーマ曲）北京大会で最大の大コケを見せた野球の３位決定戦を中継したフジテレビ。もう完全に負けムー 52 53 第１章　五輪中継を隅々まで楽しむＳＴＡＧＥ」（テレビ朝日中継テーマ曲）ドの中で、ＣＭに入るたびに「諦めるなよ」「諦めないでよ」「諦めちゃダメ！」と視聴者の感情を逆撫でした名曲。 ●福山雅治「ＨＩＧＨＥＲメインキャスターに松岡修造さんを起用し、大会直前には『金メダルの取り方教えます！！』などという修造さんには絶対教えられない内容の特番を放映したテレビ朝日は、大会２番目の大コケとなった男子サッカーや、惨敗となった男子バレーボールなど、残念な名場面を積極的に中継した。ＡＷＡＹ」（テレビ東京中継テーマ曲）敗戦の記憶が甦る名曲。 ●ＥＸＩＬＥ「ＦＬＹまだ７人だった頃のＥＸＩＬＥさんを起用したテレビ東京。中継競技が少なく五輪の思い出とはリンクしづらいものの、ＥＸＩＬＥさん自身がよく歌うので何となく聞き覚えがある名曲。このように並べて見ると、各局の好みや傾向が見えてくるというもの。一部の局はすでに中継テーマ曲を発表していますし、発表していない曲も予想できそうな気もしないではありません。どんな曲がロンドン大会の思い出とリンクするのか夢想しながら、正式発表と本番での中継を楽しみに待ちたいものですね。【予想１・ＮＨＫ】ＮＨＫのテーマ曲は、年を追うごとに「誰もが知っている」大物感を重視するようになってきた。福山雅治さん、ＡＫＢさん、ＥＸＩＬＥさんあたりが候補か…と本書の原稿を書いている間に、いきものがかりさんの起用が発表された。予想して外すという無駄なリスクを避けられたことに、思わず僕も「ありがとう」「最近ＮＨＫ多いですね」「いきものがかりってよりは、放送係」と伝えたくなった次第。【予想２・日本テレビ】日テレは嵐さん一択。ドラマ、ニュース、バラエティと蜜月関係がつづく嵐さんは他局に譲れない。メインキャスターも櫻井翔さんしか考えられない。予想終了！【予想３・ＴＢＳ】ＢＳは前回に引きつづいてのＳＭＡＰさんを本命視しつつ、「日本レコード大賞」での関係性ＴなどからＥＸＩＬＥさんも対抗で押さえておきたい。 54 55 48 第１章　五輪中継を隅々まで楽しむ【予想４・フジテレビ】一番予想が難しいのがフジテレビ。過去大会においても選び方に一貫性やポリシーがなく、何となく雰囲気で決めていた印象だった。流行っているけれど、そんなに見飽きてはいない、少し前に大ヒットしたアーティストを狙ってくる傾向はあるので、２０１０年か２０１１年のヒット歌手が有力か。あるいはトチ狂って少女時代とかＫＡＲＡとかが出てくるかもしれないぞ…なんて思っていたら、トータス松本さんとｓｕｐｅｒｆｌｙさんのユニットを起用すると発表。「曲名は『タマシイだぜ！』かな」「いや『ガッツレボリューション』だろ」「何だ『ＳＴＡＲＳ』か」と拍子抜け。【予想５・テレビ朝日】他局が先行して発表したことで、多くのアーティスト候補が残ってしまったテレビ朝日。ミスチルも福山もＢ‘ｚも残っている。そして、あのＡＫＢさんも残っているではないか。嬉しい選び放題。これだけ残っている状態から、ついうっかり、間違って、最近人気急上昇中のももいろクローバーＺさんあたりを起用してしまう蛮勇に期待したい。【予想６・テレビ東京】ともにオファーを出してもどうせ受けてはもらえないので、「流行る直前」か「そこまで流行まってはいない」か「誰？」を狙うのがテレビ東京流。予想を進める中、テレビ東京から、音楽プロデューサーの小林武史氏がテーマ曲を書き下ろすとの正式発表が。「逆にミスチルがきたら困る」「ミスチルは僕の中の予想集団も「少なくともミスチルではない」手に余る」と、いまだ混迷の只中にあります。 56 57 48